写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦463.免疫チェックポイント阻害薬を使用中に富永千晶福岡秀記京都府立医科大学眼科生じたSjogren症候群様の角結膜上皮障害図1前眼部所見(ディフューザーによる観察)軽度の結膜充血を認める.図2前眼部所見(フルオレセイン染色のブルーフリーフィルターによる観察)角膜下方に点状表層角膜症を認める(中央).耳側鼻側結膜に高度の点状染色がみられる(左右).図3図2のシェーマ①結膜上皮障害②角膜下方の点状表層角膜症(63)あたらしい眼科Vol.39,No.12,2022C16310910-1810/22/\100/頁/JCOPY症例は67歳の男性.中咽頭癌肺転移に対して2020年4月より京都府立医科大学附属病院(以下,当院)耳鼻咽喉科で化学療法が開始された.2020年5月から11月までニボルマブを投与され,2021年5月からはペンブロリズマブ+シスプラチン,2021年C10月からはペムブロリズマブ単剤が使用開始となった.2022年6月頃より両眼の痛みを生じたため,当院眼科へ紹介となった.それまでドライアイの既往はない.SchirmerテストCI法では右眼C5Cmm,左眼C0Cmmと著明に低下していた.また,角膜よりも結膜優位の上皮障害を認め,Sjogren症候群様のドライアイであった(図1~3).血液検査では抗CSS-A抗体,抗CSS-B抗体,抗核抗体,リウマチ関連因子はすべて陰性であった.0.1%フルメトロン点眼(両眼C1日C4回)で治療を開始し,経過観察中である.免疫チェックポイント阻害薬(immuneCcheckpointinhibitor:ICI)は,免疫チェックポイント分子へのシグナル伝達を阻害して免疫応答を増強する,比較的新しい癌の治療薬である.ICIは,T細胞上に発現するCcytoC-toxicT-lymphocyteCantigen-4(CTLA-4)やCpro-grammedCcelldeath-1(PD-1),抗原提示細胞や癌細胞表面上に発現するCprogrammedCcellCdeathCligandC1(PD-L1)を標的とする特異的な抗体である1).従来から使用されている抗癌剤や分子標的治療薬は,癌細胞そのものを治療標的としており,腫瘍内に異なる遺伝学的背景をもった複数の治療抵抗性のクローンが残存する可能性があり,効果にも限界があった.ICIはCT細胞免疫を介して,非自己と認識した癌細胞を攻撃することができ,生存率向上に寄与するため,使用の適応は拡大している.しかし,その一方で,治療を契機に免疫を正常に調整できなくなり,自己免疫疾患や炎症性疾患様の副作用を生じる事象が報告されている2).これらは免疫関連有害事象(immune-relatedCadverseevents:irAE)とよばれる.ICI使用による眼毒性は比較的まれとされているが,なかでもドライアイ,ぶどう膜炎は多く報告されている3).その理由として,ICIはCCD8陽性CT細胞のリンパ球浸潤とCIL-2の分泌を誘発し,涙腺のサルコイドーシス様の肉芽腫性炎症につながるという説と,ICIのなかでもとくに抗CPD-1抗体薬が眼表面へのCT細胞の浸潤を引き起こすとされている説が提唱されている4).ほとんどの症例がCICI開始後C6カ月以内にCirAEを発症していた.重度のドライアイを生じた例ではCICIの中止を余儀なくされている.irAEによる眼障害は,症状,眼所見,視力によりCGrade分類されており,それぞれ異なった治療が示されている(CTCAEGrade)1).もっとも重度のCGrade4ではCICIの投与中止と,ステロイド全身投与が推奨されている.重度のドライアイに対してはシクロスポリンの局所投与が効果的であったとの報告もある5).ニボルマブやペムブロリズマブなどの抗CPD-1抗体が腫瘍細胞に対するT細胞の作用を促進することを考えると,シクロスポリンは反対に抑制するためと考えられる.わが国で承認されている抗CPD-1抗体のCICIはニボルマブ,ペムブロリズマブであり,本症例においても使用されていた.irAEはCICI使用中止後も生じることもあり,他科との連携が重要と考えられる.文献1)岩田大樹:チェックポイント阻害薬と眼副作用-抗CPD1抗体,抗CPD-L1抗体,抗CCTLA-4抗体治療に伴う眼副作用.あたらしい眼科39:179-186,C20222)ParkRB,JainS,HanHetal:Ocularsurfacediseaseasso-ciatedCwithCimmuneCcheckpointCinhibitorCtherapy.COculCSurfC20:115-129,C20213)Abdel-RahmanO,OweiraH,PetrauschUetal:Immune-relatedCocularCtoxicitiesCinCsolidCtumorCpatientsCtreatedCwithCimmuneCcheckpointinhibitors:aCsystematicCreview.CExpertRevCAnticancerTherC17:387-394,C20174)HoriJ,KunishigeT,NakanoY:Immunecheckpointscon-tributeCcornealCimmuneprivilege:ImplicationsCforCdryCeyeCassociatedCwithCcheckpointCinhibitors.CIntCJCMolCSciC21:3962,C20205)NguyenAT,EliaME,MaterinMAetal:CyclosporinefordryCeyeCassociatedCwithNivolumab:ACcaseCprogressingCtocornealperforation.CorenaC35:399-401,C2016