CRISPR/Cas9を用いた遺伝子治療CRISPR/Cas9とはClusteredCregularlyCinterspacedCshortCpalindromicCrepeats/CRISPRCassociatedproteins9(CRISPR/Cas9)とは,2013年に報告された遺伝子編集技術です1).プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)=5’-NGGという特定の配列の直前C20塩基の配列を標的として結合するCguideCRNA(gRNA)と,DNAの二本鎖切断を起こすCCas9蛋白がセットになって働き,特定部位でのCDNAの切断を起こすことができます.切断された部位は非相同末端結合によって修復されますが,その際に塩基の挿入や欠損が起きることで,その部位をCknock-outすることができます.さらに,ドナーとなる一本鎖CDNAを同時導入することで相同配向型修復を起こすことも可能であり,ドナーのCDNAを設計することにより任意の変異を組み込むことも可能です.それまでもTALEN,ZFNといった遺伝子編集技術がありましたが,それと比較して高率かつ自由度が高い遺伝子編集が可能であることから,基礎研究で広く使われるようになりました.CCRISRP/Cas9の臨床応用CRISPR/Cas9が登場して以来,この遺伝子編集技術を生かした遺伝子治療の研究がなされてきました.眼科ではCEP290という遺伝子が原因となっているCLeber先天黒内障C10型の臨床研究が現在海外で行われています.Leber先天黒内障はC10型イントロンというCDNAの通常は読み取られない領域にCIVS26という変異が生じ,そこでCDNAの読み取りが終了してしまうためにCCEP290蛋白の合成が阻害されてしまう病気です.そこでCCRISPR/Cas9を用いて異常部位の前後の部分を切断します.そうするとその範囲のDNAがなくなり,さらに非相同末端結合により断端がつなぎ合わされることで遺伝子が正常に読み取られ,その結果,正常なCCEP290蛋白が作られるようになります.Maederらはアデノ随伴ウイルスベクターを用いてこのCCRISPR/Cas9システムを変異マウスの網膜に導入し,CEP290遺伝子のinvivoでの編集が可能であったことを報告しています2).筆者のグループではCCRISPR/Cas9を用いたCtransformingCgrowthCfactorCbetainduced(TGFBI)角膜ジストロフィの遺伝子治療について研究をしています.まだCinvitroの段階ではありますが,顆粒状角膜ジストロフィ患者の角膜検体から得た初代培養細胞に対し,CRISPR/Cas9を用いてCTGFBI遺伝子の修正が可能であったことを報告しています3).(79)C0910-1810/22/\100/頁/JCOPY北本昂大東京大学医学部眼科学教室図1CRISPR.Cas9システムの概略標的部位にCguideRNAが結合し,二本鎖切断を起こす.切断後は非相同末端結合により修復される過程で挿入欠損が起こる.ドナーとなる一本鎖CDNAが同時に導入されると,相同配向型修復も一部で生じ,任意の変異を挿入することができる.今後の展望現在さまざまな領域で,CRISPR/Cas9を用いるものを含め,遺伝子治療の研究が盛んに行われています.現時点ではまだ実用化されているものは少ないですが,今後の研究の発展に伴い,これまで治療方法がなかった疾患も治療ができるようになるのではないかと期待しています.文献1)MaliCP,CYangCL,CEsveltCKMCetal:RNA-guidedChumanCgenomeCengineeringCviaCCas9.CScienceC339:823-826,C20132)MaederCML,CStefanidakisCM,CWilsonCCJCetal:Develop-mentCofCaCgene-editingCapproachCtoCrestoreCvisionClossCinCLeberCcongenitalCamaurosisCtypeC10.CNatCMedC25:229-233,C20193)TaketaniCY,CKitamotoCK,CSakisakaCTCetal:RepairCofCtheCTGFBICgeneCinChumanCcornealCkeratocytesCderivedCfromCaCgranularCcornealCdystrophyCpatientCviaCCRISPR/Cas9-inducedhomology-directedrepair.SciRepC7:1-7,C2017あたらしい眼科Vol.39,No.5,2022C629