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コンタクトレンズ:コンタクトレンズの弾性率

2018年11月30日 金曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方さらなる一歩監修/下村嘉一49.コンタクトレンズの弾性率●はじめにコンタクトレンズ(CL)は,ハードCCLとソフトCCL(SCL)に大別される.現在主流となっているCSCLは,含水性ゲル素材でできているため,その柔らかさゆえに装用感に優れる.SCLの弾性率(モジュラス)は柔らかさの指標の一つであり,装用感のみならず,前眼部への物理的な影響を考える場合においても重要である.本稿では,SCLの弾性率の臨床的意義について概説するとともに,弾性率とは何か,そして各種CSCLの弾性率の測定結果も紹介する.C●ソフトコンタクトレンズの弾性の臨床的意義弾性率の高いCSCLは,SCLを装着する際の取り扱いを容易にさせる.なぜならば,弾性率が高いと,SCLを指に乗せたときにレンズ形状(お椀のような形状)を保持しやすいので,指との接地面積が小さくなり,指からCSCLが離れやすく,眼に装着しやすくなるからである.一方で,弾性率が低いと,角結膜の形状にCSCLがフィットしやすくなり,装用感はよくなる.実際に,SCL装用時の装用感が弾性率と逆相関するという臨床結果も報告されている1).また,SCLの弾性率が眼表面に与える物理的な影響としては,epithelialCsplitting〔またはCsuperiorCepitheC-lialCarcuatelesions(SEALs)ともよばれる〕2)および乳頭性結膜炎〔CLにより生じる乳頭性結膜炎をCcontactClens-relatedpapillaryCconjunctivitis(CLPC)とよぶ〕3)などの合併症が知られている(図1).SEALsとは,上方の角膜輪部に沿った弓上の角膜上皮障害のことであり,輪部から角膜側へC3mm程度の部位にみられる.SEALsは弾性率の高いCSCLで発症しやすく,おもに弾性率の高い第一世代のシリコーンハイドロゲルレンズ(SHCL)で発症しやすいことが報告されている4).また,SEALsはCSCLの高い弾性率だけでなく,レンズデザインとも関係する.強度近視のような強いマイナス度数のSCLは周辺が厚くなり,SEALsが発症しやすくなる.(57)C0910-1810/18/\100/頁/JCOPY丸山邦夫ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニーEpithelialSplitting(Superiorepithelialarcuatelesions:SEALs)図1高い弾性率を有するSCLが眼表面に与える影響(イメージ図)CLPCとは,SCL装用によって生じる上眼瞼結膜の乳頭性結膜炎の総称であるが,とくに乳頭がC1.0Cmm以上のものを巨大乳頭性結膜炎(giantCpapillaryCconjunctivi-tis:GPC)とよぶ.GPCは,CLに付着した汚れ(おもに変性した蛋白質)による免疫学的反応と物理的刺激の関与が考えられている.CLPCは弾性率の高い第一世代のCSHCLで発症しやすいことが報告されており5),高い弾性率のCSCLはCCLPCのリスクになりうると考えられる.C●ソフトコンタクトレンズの弾性率の測定弾性率とは,18世紀にCThomasYoungが提唱した弾性特性の指標であり,引張,圧縮,せん断などによる応力負荷をかけることで得られる.SCLにおいては,一般的に引張強度試験が採用されてきた.弾性率は,ひずみに対する応力の比として計算でき,単位はメガパスカル(MPa)で表示され,メーカーの製品カタログなどでは「モジュラス」と記されている.応力は,試験サンプルに加えられる力をその断面積で割って算出され,ひずあたらしい眼科Vol.35,No.11,2018C1505A図2弾性率の応力-ひずみ曲線みは,試験サンプルが変形した量(サンプルの元の長さに対するサンプル長の変化率)を示す.図2に応力.ひずみ曲線を示すが,この曲線における立ち上がりの線形領域(B点-C点)の傾きが「弾性率」となる.SCLの柔らかさの指標である弾性率は,臨床的に重要な指標であるにもかかわらず,統一された測定方法がなく,各製造業者が独自の方法で測定しているため,異なる製造元の製品の弾性率を単純に比較することはむずかしい.そこで,同一方法にて測定した各社製品の測定値を図3に示した.この結果からわかるように,製品によって弾性率が異なることがわかる.C●おわりにSCLを処方する医療従事者は,ときとしてフィッティング不良やCCLに起因する合併症に遭遇する.そのよう1.000.900.900.780.800.690.680.670.650.630.600.470.700.500.400.300.260.200.100.00eta.lconoma.lconneso.lconnara.lconsten.lconseno.lconsomo.lcondele.lconnel.lconAAAAAAAAA弾性率(MPa)図3各社製品の弾性率の測定値(JohnsonandJohnson,Inc.,2017)な場合,対策を考えるうえでCSCLの弾性率も念頭におくことが大切である.眼表面への物理的な刺激による合併症や装用感を考慮すれば,弾性率の低いCSCLを選ぶことが望ましいという結論に至る.文献1)BrennanN:ContactClensCbasedCcorrelatesCofCsoftClensCwearingcomfort.AAOC86:E-abstract90957,20092)KlineCLN,CDeLucaTJ:AnCanalysisCofCarcuateCstainingCwiththeB&LSOFLENS.PartI.JAmOptomAssocC46:C1126-1132,C19753)SpringTF:Reactiontohydrophiliclenses.MedJAustC1:C449-450,C19744)DumbletonK:Nonin.ammatorysiliconehydrogelcontactlenscomplications.EyeContactLensC29:S186-S189,C20035)CarntNA,EvansVE,NaduvilathTJetal:Contactlens-relatedCadverseCeventsCandCtheCsiliconeChydrogelClensesCanddailywearcaresystemused.ArchOphthalmol127:C1616-1623,C2009CPAS111

写真:Stevens-Johnson症候群におけるLid Wiper部の異常に起因する角膜上皮障害

2018年11月30日 金曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦414.Stevens-Johnson症候群における吉川大和*,**横井則彦***大阪医科大学眼科**LidWiper部の異常に起因する角膜上皮障害京都府立医科大学眼科●①●②図2図1のシェーマ①病的角化を生じている眼結膜領域②耳側に生じている眼球癒着図1SJS発症1カ月後Lidwiperを含んで眼瞼結膜に幅をもって病的角化を生じている.図3眼表面のフルオレセイン染色所見眼瞼結膜の異常部位との摩擦亢進が生じる部位に高度の角膜上皮障害を生じている.図4眼瞼結膜のフルオレセイン染色所見(図1の8年10カ月後)健常結膜と病的角化の境界が明瞭である.慢性期でも病的角化領域の範囲が変化しうることがわかる.(55)あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018C15030910-1810/18/\100/頁/JCOPYStevens-Johnson症候群(Stevens-Johnsonsyn-drome:SJS)は高熱や全身倦怠感などの症状を伴って全身に紅斑・びらん・水疱が多発し,皮膚・粘膜の壊死性障害をきたす重症薬疹の一つである.発症数日の急性期に眼病変を生じはじめることが多く,皮膚粘膜移行部はとくに障害されやすい.慢性期の眼合併症としてもっとも多いのはドライアイであるが1),その機序として,結膜の瘢痕性変化による涙液減少に加えて,結膜上皮の扁平上皮化生・病的角化による水濡れ性低下やマイボーム腺機能不全による涙液層の安定性低下がある.この涙液層の安定性低下に加えて,他のドライアイの他覚所見,自覚症状の悪化の原因として,皮膚粘膜移行部の後方移動やその領域の結膜の病的角化があり,これらは,瞬目時の摩擦を増強する要因となり,慢性期のCSJSにしばしばみられる異常である.症例はC52歳,女性.SJS発症当時はC40歳.2006年9月C23日より感冒様症状を自覚し,発熱に対して非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidalCanti-in.ammatorydrugs:NSAIDs)を内服した後にCSJSを発症した.急性期は広範囲の角膜上皮欠損や結膜の偽膜形成,体幹の発疹,口腔内潰瘍などの局所および全身所見を認めたが,局所および全身のステロイドによる消炎治療により全身状態は回復し,眼表面の急性期病変も治癒した.発症後C1カ月となるC2006年C10月C19日,今後の管理目的に京都府立医科大学附属病院眼科を紹介受診となった.紹介時には眼表面の上皮化は得られており,角膜への結膜侵入は伴っておらず,経過は良好であったが,眼球表面と眼瞼縁が接触するClidwiperから瞼結膜に幅をもって瘢痕化と病的角化を生じていた(図1,2).その後,矯正視力は比較的良好なものの,眼痛および眼の開けづらさといったドライアイ症状を訴えていた.そして,その原因として上眼瞼結膜のClidCwiper2)を含む病的角化部位と眼球表面との瞬目時の摩擦亢進が考えられた.2015年C8月の時点においても同部位の異常所見は持続し,SJSに伴う涙液層の安定性低下も加わり,瞬目時の摩擦亢進によると考えられる角膜上皮害は遷延していた(図3).ドライアイと上眼瞼結膜の瘢痕化,病的角化(図1,4)に伴う摩擦亢進に対してレバミピド点眼液のC1日C4回点眼,および防腐剤無添加の人工涙液点眼をC1日C4回開始することで症状の改善が得られた.また,同部位には白い蝋状の付着物がたえず生じており,瞬目時の摩擦を増強する要因になっていると考えられたため,それを除去したことで自覚症状はさらに改善した.SJSで眼表面上皮に高度の病的角化を伴う例では,角化した部位に本症例と同様の分泌物が生じることが知られており,脂質または角質と考えられている.SJSの上眼瞼縁の瘢痕化や病的角化に伴う摩擦亢進に対する治療としては,点眼治療だけではなく白色蝋状の分泌物の除去も重要と思われる.上眼瞼縁の瘢痕化や病的角化は,SJSに合併する涙液層の安定性低下に加えて,眼球表面上皮を障害する要因となる.レバミピド点眼薬は,結膜杯細胞増加を介した至適なムチンの産生作用によって,結膜に瘢痕形成を伴うCSJSの眼表面においても摩擦の軽減作用が期待できる3).より重症例では,眼瞼の瘢痕化組織を除去し,口唇粘膜を移植することで眼表面の障害と疼痛症状が改善するとの報告がある4).本症例のように,輪部疲弊を生じずに急性期を脱しても,眼瞼縁の瘢痕化やドライアイに伴う眼症状で長期にわたって苦しむCSJS患者が存在する.多くの眼科医がこの疾患を理解し,継続的に経過観察および治療してゆくことが必要であると思われる.文献1)SotozonoCC,CUetaCM,CNakataniCECetal:PredictiveCfactorsCassociatedwithacuteocularinvolvementinStevens-John-sonCsyndromeCandCtoxicCepidermalCnecrolysis.CAmCJCOph-thalmolC160:228-237,C20152)KorbDR,GreinerJV,HermanJPetal:Lid-wiperepithe-liopathyCandCdry-eyeCsymptomsCinCcontactClensCwearers.CCLAOJC28:211-216,C20023)UetaM,SotozonoC,YokoiNetal:Rebamipidesuppress-esPolyI:C-stimulatedcytokineproductioninhumancon-junctivalepithelialcells.JOculPharmacolCTherC29:688-693,C20134)IyerCG,CPillaiCVS,CSrinivasanCBCetal:MucousCmembraneCgraftingCforClidCmarginCkeratinizationCinCStevens-Johnsonsyndrome:Results.Cornea29:146-151,C2010

カラーコンタクトレンズの将来(なにを求めるか)

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズの将来(なにを求めるか)TheFutureofColorContactLenses渡邉潔*はじめにカラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)は,透明なコンタクトレンズ(CL)と同様に,見えやすく,装用感がよく,安全なCLである必要がある.透明なCLとの大きな違いは,色素(金属)が含まれていること,酸素透過性の低いヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethylmethacrylate:HEMA)の素材のCLが多いことである.生産国は,欧米と東アジア(台湾,韓国など)に大別できる.カラーCLの購入ルートは,眼科医の処方を受けるルートは少なく,診察を受けずに通販や大型ディスカウントショップで購入するルートがほとんどである.したがって,正しい装脱方法や消毒方法を知らない装用者がほとんどである.また,眼痛や充血が生じても,眼科に行くと医者に怒られるから薬局の市販目薬でなんとか治そうとする者がほとんどである.数年前までは,カラーCL装用者のコンプライアンスは悪いから診察はしたくないという眼科医もいたが,眼科離れした現在では,受診してきたら「よくぞ,眼科に来てくれました」と患者を褒めるべきであろう.カラーCLの将来を語るためには,これまでの歴史と現状も把握する必要がある.IカラーCLの歴史カラーCLは,白内障手術による虹彩欠損や広範な角膜白斑を自然な虹彩色に見せるために,治療目的に近い意味で開発使用されていた.現在は,シード社がその目的の「シード虹彩付きソフト」を販売してくれている.1990年頃までは,ハードのカラーCLも販売されていた.1990年頃から,虹彩色がいろいろな人種のいる米国では,髪の毛の色を変えるのと同様に虹彩色を変えたいということで,グレー,グリーン,ブルー,ブラウンなどのソフトのカラーCLが販売された.日本でも米国製のカラーCLが輸入され,カラーCLの第一次のブームになったが,素材が酸素透過性の低いグループ1(用語解説参照)のHEMAという素材で酸素不足を起こし,色素は表面に露出しており,角膜や結膜を擦って眼障害を起こした.しかも,1年以上使う従来型のタイプであり,HEMAのCLは熱に比較的強いため煮沸消毒を用いることが多く,6カ月以上使っているとCLは熱でオムレツ状に丸まって変形することが多かった.その後,2004年にジョンソン・エンド・ジョンソン社のワンデーアキュビューカラー(グループ4)が発売され,カラーCLの第二次のブームが始まった.茶色の虹彩色のアジア人などが角膜径を大きく見せるエンハンスタイプのカラーCLを希望し,台湾や韓国でグループ1のHEMAのレンズ表面に色素を印刷したようなカラーCLが安価に製造され,一気に市場を拡大した.2005年頃より,度数が入っていないカラーCLによる眼障害が多発したため,日本眼科医会と日本コンタクトレンズ学会などが厚生労働省に要望書を出し,2009年に厚生労働省は度数の入いっていないカラーCLも*KiyoshiWatanabe:ワタナベ眼科〔別刷請求先〕渡邉潔:〒530-0001大阪市北区梅田1丁目大阪駅前ダイヤモンド地下街5-5270ワタナベ眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(49)1497ハード1950年1970年→RGP現在に至るソフト1970年1980年1991年2006年高含水使い捨てシリコーングループ2グループ4ハイドロゲルグループ51984年図1CLの歴史(日本)・透明なソフトCL1970年1980年1991年2006年2000年にはほぼ使用されなくなった・カラーCL2009年図2ソフトCLの歴史(日本)180156160140120100806040200201320142015(年度)図3ワタナベ眼科においてカラーCLによる中等度以上の眼障害を認めた医療機器安全性情報報告件数の年次変化症例数■オパーク(opaque)タイプ■エンハンス(enhancers)タイプ図4カラーCLのデザインによる分類201816141210864202012201320142015201620172018(年)(451)(454)(457)(465)(482)(493)(493)(女子高生総数)■オパークタイプ■エンハンスタイプ図5女子高校生の健診時にカラーCLを装用していた生徒の頻度頻度(%)頻度(%)10090807060504030201002011201320152017(年)(152)(145)(173)(186)(調査人数)■オパークタイプ■エンハンスタイプ図6接客業の女性のカラーCL装用者の頻度表1カラーCLの安全性の見きわめの要因安全性が高い安全性が低い1.色素封入の部位2.Dk/t値素材(ISO分類)厚み3.使用サイクル眼瞼側近くにサンドイッチ表面が平滑24以上グループ5,4,2(高含水)0.10mm以下毎日2週間角膜側or近くに色素が露出レンズ表面に凹凸24未満グループ1(低含水)0.11mm以上1カ月交換従来型図7ソフトCLの素材による分類厚生労働省・FDA分類とISO分類の違い.■用語解説■厚生労働省分類,FDA分類,ISO分類:2006年に日本でもシリコーンハイドロゲルのSCLが販売されるようになり,厚生労働省のソフトCLの分類では,無理やりグループ1や3に分類している.ISO分類では,シリコーンハイドロゲルはグループ5として分類している(図7).たとえば,HEMAを素材とするカラーコンタクトレンズ(カラーCL)はグループ1に分類され,Dk/t値が10くらいである.シリコーンハイドロゲルレンズのエアーオプティクスカラーズというカラーCLも厚生労働省の分類では同じグループ1に分類されるが,Dk/t値は138であり,とても同じグループのレンズとはいえない.日本コンタクトレンズ学会の理事会(2016年1月)でも議論し,厚生労働省の含水性SCLの分類はあくまで消毒液の申請のための分類と考え,学術的にはISO分類を用いることを推奨することになった.

コンタクトレンズトラブルへの対応(カラーコンタクトレンズを含む)

2018年11月30日 金曜日

コンタクトレンズトラブルへの対応(カラーコンタクトレンズを含む)HowtoDealwithContactLensTroubles佐渡一成*はじめにコンタクトレンズ(以下,CL)を取り巻く問題について,これまでいろいろと対処してきたが,解決されたとはいえない.われわれ眼科医は,CL装用者の眼の安全を守ることを第一に考えて,CLを取り巻く諸問題の解決を図らなければならない.このためにはCL診療の質を向上させることに加えて,販売などに関する問題も解決しなければならない.さらに厚生労働省などにも働きかけを強化する必要がある.本稿では,諸問題の背景から現状を整理し,これらを踏まえて眼科医が行うべき対応について,私見を述べる.ICLを取り巻く諸問題の背景①CLは,ユーザーにとって日用品・生活必需品である反面,高度管理医療機器である.②高度管理医療機器であるにもかかわらず,唯一管理をユーザーに委ねている商品である.③販売店もメーカーも医師の処方を守る法的な義務がない1).④個々の「株式会社の第一の使命は株主への利益還元を最大にすること」である2).⑤CL関連企業では社会的責任(corporatesocialresponsibility:CSR)よりも利益が優先されている.また,法令を遵守するより自分たちの組織が生き残ることが優先される「集団の凝集性」が存在している2).⑥ユーザーとメーカーでは情報量にきわめて大きな格差がある.⑦購入(販売)額は流通経路によって大きく異なっている1,3).⑧CL協会はメーカーや販売店などへの通知の周知や遵守の呼びかけを積極的に行っているが,協会に加入しているメーカーへの指導すらできない2).⑨保健所なども指導を行っているが,局長通知には強制力がないため,効果は認められない.⑩眼科医のCLを取り巻く問題への関心が低いのか,CLトラブルの実情を正確に伝えるためのチャンネルすべてで,眼科医からの報告がきわめて少ない.これでは厚生労働省(厚労省)が問題を過小評価し,有効な対策が遅れるのも無理はない2).II上記の背景が招いている現状①通知を守っていない販売店の乱立:店舗販売(図1)とネット販売(図2,3).②代表症例が示すこと.1)CL処方の禁忌例でも容易にCLが購入できることと国内未承認のカラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)の流通:<症例1>19歳,女子学生のカラーCLによる角膜びらん(図4).メーカーのホームページにはサンドイッチ構造という記載があった.販売していた雑貨店では「当店では装用の指導,処方は一切できません」と記載のある書類*KazushigeSado:さど眼科〔別刷請求先〕佐渡一成:〒980-0021宮城県仙台市青葉区中央2-4-11水晶堂ビル2Fさど眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(41)1489図1通知を守っていない店舗販売図2通知を守っていないネット販売図3受診しなくてもそのままクリックすれば,なんらこれまでと変わらず容易に購入できる状態図4カラーCLによる角膜びらん(2012年11月5日,19歳,女子学生)図5定期検査を受診していればもっと早期に見つかったはずのPPGまたは原発開放隅角緑内障(2017年9月22日,29歳,女性医師)Q5:コンタクトレンズの定期検査を受けていますか(n=59)■受けている■受けていない■受けたり受けなかったり対象:眼科外来・病棟を中心とした病院スタッフ図6眼科・病院スタッフのアンケート結果Q10:定期検査を受けていない理由を教えてください(n=27複数選択可)■定期検査は必要ない■時間がない■検査を受けると費用がかかる■レンズ代金が高い■その他図7定期検査を受けていない理由図8PMDAおよび保健所への報告(FAX)図9国民生活センターへの報告(WEB)図10報告を受理したとPMDAから届いた葉書■用語解説■企業の社会的責任(corporatesocialresponsibility:CRS):「企業が,社会に及ぼす自己の事業のマイナスの影響を最小限にとどめる一方で,プラスの影響を最大化することを確保する経営上の実践である」(カナダ・フィランソロピー・センター)社会心理学でいう「集団の凝集性」:法令を遵守するより優先されるのは,自分たちの組織が生き残ること.集団規範は同調者に対する報酬として機能する一方で,逸脱者に対する制裁機能ももつため,同調圧力に抗して疑問の声を上げることは困難となる.

カラーコンタクトレンズに関する診療のあり方

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズに関する診療のあり方ClinicalPracticeRelatingtoColorContactLenses宇津見義一*はじめに若い女性にとってカラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)は美容上必須アイテムともなっている.2000年以前からもカラーCLは装用されていたが,その頃のカラーCLはグループIの低含水性2-hydroxyethyl-methacrylate(以下,HEMA)の酸素透過性の低いもので,品質的にも問題があった.2004年2月にグループIVの高含水素材の1日使い捨てタイプのカラーCLの販売が開始された.現在,カラーCLの種類は約400種類にも達しているが,そのほとんどはグループIであり,その品質,不適切な販売と購入,そして不適切な使用法などが大きな問題となっている.日本眼科医会(以下,日眼医)が実施した「平成27年度全国学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査」(2015年)では,カラーCLの使用率は6年間で中学生が25.5倍,高校生が6.5倍に増加した.購入場所では,医師の処方を必ずしも必要としない利便性のよいインターネット・通信販売,雑貨店などが中学生81.4%,高校生68.8%であり,不適切購入・販売・使用と多くの問題を抱えていることが明白となった1).本稿では,カラーCL診療の変遷,学校でのカラーCL使用状況と行政の対応,そしてカラーCL装用者のコンプライアンスと啓発活動などについて述べる.IカラーCL診療の変遷2000年以前からもカラーCLは装用されていたが,その頃のカラーCLはグループIのHEMA素材の透過性の低いもので,品質的にも問題があった.一般眼科医療機関では処方されておらず,そのほとんどがCLの営利的処方,販売を主とする医療機関,販売店,ネット・通販で処方されていた.眼科医はカラーCLによる重症な角膜潰瘍など多くの重症例を経験するとともに,その患者の中にはコンプライアンスが低く,診療態度に問題がある者が少なくなかった.そのためか,眼科医にとって,カラーCLは問題が多く,処方をすることに疑念をもたざるを得なかった.2005~2008年の日眼医による全国調査にてカラーCLによる眼障害が167例報告され,そのうちの21名が失明の恐れがある重症例であった.2009年日眼医のインターネット・通信販売による購入者のCL眼障害調査の種類別では,カラーCLによる眼障害者が全体の45.9%ともっとも高率であった2).種類も視力補正・非視力補正(度なしおしゃれ)用が混在しており,レンズ素材と使用者の低いコンプライアンスが問題となっていた.それに伴い,それまで雑貨扱いであった度なしのカラーCL(非視力補正用CL)が2009(平成21)年11月4日以降は通常のCLと同様に医師の処方が必要な高度管理医療機器となり,2011(平成23)年2月4日以降は薬事法〔現,医薬品医療機器等法(以下,薬機法)〕にて認可されたものでないと販売できないようになった.以後,厚労省は,過去に承認されているCL素材であ*YoshikazuUtsumi:宇津見眼科医院〔別刷請求先〕宇津見義一:〒231-0066神奈川県横浜市中区日ノ出町2-112宇津見眼科医院0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(31)1479れば,色素の有無とは関係なく承認しており,まったく同じカラーCL製品であっても製品名が異なれば,それを別のCLとして承認しているために,現在,400種類にも及ぶカラーCLが販売されている.2011年以前より,CL販売店(ネット・通販を含む)は医師の処方を経ずにCLを販売しても処罰されることがないために,堂々と処方せん不要とする販売を広告している.装用者は低価格で利便性がよく,医師の処方を経なければ診療費もかからないために,そのような販売店で購入する者が増加した.2011年と2015年に日本コンタクトレンズ学会は処方せんの法制化を認めるよう日眼医に要望したが,日眼医は反対していた.2014年の神奈川県眼科医会調査では,神奈川県内8,000名の中高生のCL全種類の購入先は,一般眼科隣接販売店が高校生11.5%,中学生20.0%であり,カラーCLでも同様であり,一般眼科を受診する子どもたちが激減してきていた(宇津見義一,坂本則敏,小口和久ほか:平成26年度神奈川県の学校のコンタクトレンズ・カラーコンタクトレンズ使用調査.第57回日本コンタクトレンズ学会総会一般口演.2015).2016年4月になり,日眼医はやっとCL販売における処方せんの法的規制に同意し,行政への働きかけをしてきたが,罰則がないために現在でも不適正販売の歯止めとはなっていない.II国民生活センターの注意呼びかけ2014年5月22日に国民生活センターはカラーCLの使用について,注意をよびかけた3).2009年から5年間に全国消費生活センターにはカラーCLトラブルの相談が541件あった.カラーCLは酸素の通りにくい素材の使用が多く,着色の影響などにより透明のCLより眼障害が生じやすいため注意が必要であると報告した.薬事法で認可された17製品のカラーCLを調査し,11製品は色素が角膜・まぶたに直接触れていたが,製品表示には内部に色素が封入と記され,6製品はレンズの厚さ,直径,曲率半径,度数などの基準を満たしていなかった.さらに,度数入りのカラーCL16製品のうち,15製品は8時間装用で角膜浮腫,角結膜上皮障害,輪部充血などの治療や使用中止が必要な眼障害を生じた.アンケート調査(10~20代使用者1千人)では,購入先はインターネット通販が約39%,約43%は購入時に眼科を受診せず,眼異常があった約23%のうち半数も眼科を受診しなかったと報告した.カラーCLを使用する場合はそのリスクを理解したうえで,必ず眼科医を受診し,眼科医の処方に従ったレンズを選ぶこと.粗悪品を消費者が見分けることが困難であるため,必ず眼科を受診して眼科医と相談のうえで商品を選んでほしい.異常時は眼科を受診し,異常がなくても必ず眼科医の定期検査の受診を推奨し,業界団体に安全な商品開発を,厚生労働省に業者に品質管理を指導するよう要望など,国民に使用注意のよびかけをした.それに伴い,消費者庁からは2018年5月28日にカラーCLの販売業者に対する指導要請の通知があった4).III学校でのCLの使用状況日眼医の2015年度の調査では,全国の学校の子どもたちのCL使用率は小学生が0.2%,中学生が8.0%,高校生が27.0%である(表1,図1).とくに中学生は年々使用者が増えている.この調査では,使い捨てソフトCL(以下,ソフト)は1日使い捨てソフト,1週間連続装用ソフト,2週間頻回交換ソフト,消毒して1~6カ月使用する定期交換ソフトとの名称を使用しているために,この報告でも同様の名称とした.2015年の調査でのCLの種類は,小中高生ともに使い捨てソフトがもっとも多く,小学生はオルソケラトロジー(以下,オルソK)が15.9%と多く,オルソKガイドラインを守っていないことが危惧された.中高生はソフト通常が使い捨てソフトに続いた(表2).CLの種類の年度別変化では,中高生は使い捨てソフトがもっとも多く,中学生は2000~2012年まで増加したが,2015年は80.3%と低下した.高校生は2000~2009年まで増加したが,2012年以降低下し,2015年は78.6%と低下した(図2).カラーCL使用者では2009年は中学生が0.2%,高校生が0.6%,2015年は中学生が5.1%,高校生が3.9%であり,6年間で中学生が25.5倍,高校生が6.5倍と増加した.とくに中学生に急速に広まっていることが危惧された(図3).2015年カラーCLの種類では,カラーCL1480あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018(32)表12015年度全国の学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査2000年調査人数2003年調査人数2006年調査人数2009年調査人数2012年調査人数2015年調査人数102,924名92,797名101,571名99,751名97,233名100,239名44校30校54校55校55校56校小学生19,235名中CL使用者12,714名中CL使用者29,792名中CL使用者30,683名中CL使用者30,194名中CL使用者30,402名中CL使用者31名12名36名53名54名63名(0.2%)(0.1%)(0.1%)(0.2%)(0.2%)(0.2%)61校63校53校54校53校55校中学生33,265名中CL使用者30,627名中CL使用者25,598名中CL使用者26,296名中CL使用者25,555名中CL使用者25,174名中CL使用者1,544名(4.6%)1,727名(5.6%)1,511名(5.9%)1,687名(6.4%)1,877名(7.3%)2,008名(8.0%)56校60校55校53校54校57校高校生50,424名中CL使用者49,456名中CL使用者46,181名中CL使用者42,772名中CL使用者41,484名中CL使用者44,663名中CL使用者11,027名(21.9%)11,492名(23.2%)11,640名(25.2%)11,366名(26.6%)11,484名(27.7%)12,075名(27.0%)各調査年度別の小学生,中学生,高校生の調査対象者とコンタクトレンズ使用者の割合.(文献1より引用)■2015年■2012年■2009年■2006年■2003年■2000年27.0%27.7%高校生中学生小学生図1小中高校生のコンタクトレンズ使用割合と年度別変化(文献1より引用)表22015年度調査でのコンタクトレンズの種類小学生中学生高校生ハード通常0.0%3.8%5.6%ハード連続装用0.0%0.4%0.5%オルソK15.9%1.3%0.2%ソフト通常3.2%9.0%13.1%カラーCL0.0%5.1%3.9%使い捨てソフト81.0%80.3%76.6%この調査では,1日使い捨てソフト,1週間連続装用ソフト,2週間頻回交換ソフト,消毒して1~6カ月使用する定期交換ソフトを総称して「使い捨てソフト」とした.オルソケラトロジーはオルソKと略す.(文献1より改変引用)(%)中学生(%)高校生100100808060604040202000図2中高生が使用していたコンタクトレンズ種類と年度別変化2015年と比較し高校生は使い捨て,ソフト通常,定期交換はすべて有意差あり,*p<0.01,c2検定(文献1より改変引用)20%10%0%図3小中高生カラーコンタクトレンズの年度別変化2015年と比較:**p<0.01,*p<0.05,c2検定(文献1より改変引用)■高校生■中学生カラーCL合計カラーCL(度数入)カラーCL(度数なし)カラーCL(度数入)透明CL併用0%1%2%3%4%5%6%図42015年の中高生のカラーコンタクトレンズの種類(文献1より改変引用)50%40%30%20%10%図52015年の中高生カラーコンタクトレンズ購入場所必ずしも医師の処方に基づかない購入が可能な販売店のインターネット・通信販売と雑貨店・化粧品店・CLショップ・薬局の総計は,中学生が81.4%,高校生が68.8%であった.(文献1より改変引用)■毎日■週3~6日■週1~2日■月1~3日■遊びに行く時高校生図62015年の中高生カラーコンタクトレンズの使用頻度(文献1より改変引用)図72015年の中高生カラーコンタクトレンズ購入時の使用方法の説明(文献1より改変引用)6.0%5.7%3.9%中学生3.5%■眼科を受診しなかった■眼科を受診した高校生■ある■ない高校生中学生中学生図82015年の中高生カラーコンタクトレンズで充血,痛み図92015年の中高生カラーコンタクトレンズの使用を中止で使用を中止した割合(文献1より改変引用)した時の対処(文献1より改変引用)中学生CL全体合併症高校生CL全体合併症中高生カラー合併症カラーCL高校生購入前の検査(2015年)中学生カラーCL高校生購入後の検査(2015年)中学生カラーCL高校生定期検査状況(2015年)中学生33.2%66.8%19.0%81.0%30.5%69.5%14.3%85.7%41.1%36.5%22.3%36.7%36.7%26.7%図102015年の中高生カラーコンタクトレンズ購入前後の検査と定期検査(文献1より改変引用)角膜炎・角膜むくみ角膜のキズ角膜新生血管アレルギー性その他病名不明角膜潰瘍中学生は有意差なし結膜炎18.3%16.4%*0.7%1.0%0.9%43.8%*40.7%37.7%38.1%39.3%*13.9%7.4%10.6%5.3%*角膜炎・角膜潰瘍角膜むくみ角膜のキズ角膜新生血管アレルギー性結膜炎その他病名不明■2009年■2012年■2015年*2p<0.01(2015年との比較,x検定)80.0%(2015年)0%角膜炎・角膜むくみ角膜のキズ角膜新生血管アレルギー性その他病名不明角膜潰瘍結膜炎図112015年の中高生コンタクトレンズ(全体,カラーCL)合併症(複数回答))有効回答数CL全体:中学生211名(10.5%),高校生1,864名(15.4%)カラーCL:中学生5名(4.9%),高校生466名(19.5%)(文献1より改変引用)40%20%0%60%40%20%0%80%60%40%20%表3まとめ(文献1より改変引用)表4平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業「カラーコンタクトレンズの規格適合性に関する調査研究」(文献5より改変引用)売している.また,カラーCLを含むCL使用者は眼科を受診しないでCLを購入している方が増加している.今までの多くのCL(カラーCLを含む)調査ならびに啓発活動が実施されているが,CL販売側とCL使用者のコンプライアンスが改善する見通しはきわめて暗い.罰則を含めた行政の対応が必須である.2016年6月~2017年4月に日眼医と日本コンタクトレンズ学会は共同で,CL処方せん,適正販売などに関する検討会を立ち上げた.オブザーバーとして,日本CL協会とともに厚労省医薬・生活衛生局,医政局と保険局の担当者を迎えて協議した.その後,2017年5月に日本コンタクトレンズ学会,日眼医と日本CL協会は共同でCL処方せんと適正販売についての要望書を厚労省へ提出した.要望の概要は,「CLの不適正な販売に対する罰則規定を定める法律改正」「CL処方せん不要,検査不要の広告等への行政指導を行う通知の発出」「CLに関する話題を提供し,適正販売への一層の注意喚起」などである.その結果,厚労省は2017年6月29日から1カ月間にCL適正販売に対するパブリックコメントを求め,その後に正式な通知を発出する予定とした.2017年9月26日に厚労省医薬・生活衛生局長から「CLの適正使用に関する情報提供等の徹底について」の通知10)が発出された.その概要では,今までの通知ではCL販売・製造販売業者に対しては日本CL協会の販売自主基準の周知徹底を図ることとしているが,今回の通知は,厚労省が自らの基準を守るよう通知しているために,CL販売・製造販売業者がその基準に違反した場合に,都道府県がCL販売の規制ができることであるが,CLの不適正な販売に対する罰則規定は含まれていない.2018年8月現在,CL処方せん不要を広告するなどの不適切販売は収まっていないのが現状である.VカラーCL装用者のコンプライアンスと啓発活動カラーCLを含めてCL装用者のコンプライアンスを改善するためには,啓発活動がある.CLを初めて装用する時期は,前述のように中学生以上が多い1).初めてCLを装用する者に適切な指導があれば,医師の処方を経て,CLを購入し装用するし,医師の指導に従いやすい.さらに将来にわたってCLの基礎知識として記憶に残る.最初に適切な処方を受けないで,数年以上経過し問題がなかった装用者は,説明しても聞こうとしない場合が多くなり,コンプライアンスが低くなる.学校の眼科学校医はCLの健康教育,学校保健委員会などを有効に利用して,子どもたちにCLの基本的な知識を周知すべきである.さらに,保護者,養護教諭などの学校関係者,教育委員会,医師会などへの啓発活動も同様である.横浜市では学校や学校関係者,教育委員会,医師会などCLの啓発活動を積極的に実施してきた(宇津見義一,池田桐子,戸倉純ほか:横浜市中学・高等学校のコンタクトレンズ教育による装用状況の効果.第44回日本コンタクトレンズ学会総会,展示,2001).2000年頃は定期健康診断にて中学生に「CLはトラブルを生じやすいでしょうか」と問うとほとんどが返答できなかった.帰宅したらCLをはずしてメガネを使用するようにと指導しても,怒りだす子どももいた.しかし,啓発活動を実施してからは,それに従う子どもたちがほとんどとなった.学校,地区での啓発活動,そしてマスコミ報道などにより,正しいCLの基礎知識の周知が必要である.もっとも有効な啓発活動はTVなどのマスコミ報道であるが,マスコミ報道が数年ないと再度コンプライアンスは低下する.カラーCLを含むCLのコンプライアンスの向上を図るために日本コンタクトレンズ学会,日眼医,日本CL協会は個々で,さらにその3団体で構成されている日本CL協議会,そして日本学校保健会などの各団体は,今までに学会発表,論文,ポスター,冊子・チラシ,ネットでの注意喚起,メディア(TV,新聞など),学校など地域での啓発活動,そして前述のような行政対応などによっても,コンプライアンスの向上を図ってきたが,その改善はむずかしい.啓発活動は継続的に実施することが不可欠である.現在,費用負担や時間が必要となる医師の処方を受けないCL装用者は激増し,価格が安く,ネットなどで簡単に手に入る利便性に優れた方法で装用しているCL装用者は激増している.CL添付文書には,「定期検査を受けること」と必ず記載されている.「自覚症状がなく装用していても,眼(39)あたらしい眼科Vol.35,No.11,20181487やレンズにキズがついたり,眼障害が進行していることがあります.異常がなくても医師に指示された定期検査を必ず受けてください」と赤字の警告として表紙に記載されている.禁忌として,「医師の指示に従うことができない人」ともある.一方,インターネットの書込みどには,「眼科医は自らの利益のために眼科受診を勧めている」などの主張がある.高度管理医療機器であるCLを安全に使用するには,添付文書のように定期検査は不可欠であることを理解しているのであろうか.VIカラーCLの処方筆者は平成20年(2008年)頃まではカラーCL処方には否定的であった.しかし,一般眼科での処方を拒めば,装用者は医師の処方なしで,不適切な販売所で購入する.CL販売業者は医師の処方は不要であるとして,不適切な販売していることで,さらなる眼障害の増加が懸念されたために,どうしてもカラーCLを希望する場合には処方している.現在,薬機法で認可されたカラーCLは約400品目である.その多くはグループIのHEMA素材であり,前述したように多くの問題点がある.一部,酸素透過性の高い素材のカラーCLもある.筆者は従来からグループIのカラーCLは角結膜上皮への影響が大きいために,酸素透過性の高いグループのカラーCLを処方してきている.筆者らは,グループIのカラーCLを使用していた者が,グループIVのカラーCLに変更すると,著明に角結膜上皮障害が軽減することを報告した(植田喜一,宇津見義一,渡邉潔:カラーコンタクトレンズの安全使用を目指して,日本コンタクトレンズ学会モーニングセミナー講演,2017).以上より筆者のカラーCL処方は,コンプライアンスが保たれている者,酸素透過性の高い素材,1日使い捨てタイプ,1日6~8時間の短い時間での使用を条件に,通常は透明なCLを使用し,カラーCL使用が必要な場合のみの使用を推奨している.カラーCLの使用は美容目的であり,風紀上の問題もあるため学校現場には好ましくないと考える.おわりに「カラーCLの使用は通常のCLに比して眼に負担がかかる.通常のCLは酸素透過性の高い素材が多いが,カラーCLはまったく逆で酸素透過性の低い素材が多くを占めていることに,十分に注意してほしい.現在,装用者のコンプライアンスを上げることが困難となっており,カラーCLを含めて,CL販売には罰則のある行政の積極的な介入が不可欠となっている.文献1)宇津見義一,柏井真理子,宮浦徹ほか:平成27年度学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査,日本の眼科88:179-199,20172)植田喜一,宇津見義一,佐野研二ほか:インターネット・通信販売による購入者のコンタクトレンズ眼障害の集計結果報告(平成21年度).日本の眼科81:75-84,20103)国民生活センター:カラーコンタクトレンズの安全性─カラコン使用で目に障害も─.国民生活センター報道発表資料,平成26年5月22日4)消費者庁消費者安全課長:カラーコンタクトレンズの安全性,消費者庁消費者安全課長通知,消安全第186号,平成26年5月28日5)渡邉潔,植田喜一,佐渡一成ほか:カラーコンタクトレンズ装用にかかわる眼障害調査報告.日コレ誌56:2-10,20146)金井淳,澤充,小野浩一:学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査データの2次解析(分担研究課題),平成26年度厚生科学研究費補助金特別研究事業カラーコンタクトレンズの規格適合性に関する調査研究(H26-特別-指定-009).50-60,平成27(2015)年3月7)厚生労働省医薬食品局長:コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について,厚生労働省医薬食品局長通知,薬食発0718第17号,平成24年7月18日8)厚生労働省医薬食品局長:コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について(再周知).厚生労働省医薬食品局長通知,薬食発0628第17号,平成25年6月28日9)厚生労働省医薬食品局長:コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について(再周知).厚生労働省医薬食品局長通知,薬食発0628第17号,平成26年10月1日10)厚生労働省医薬生活衛生局長:コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について.厚生労働省医薬生活衛生局長通知,薬生発0926第5号,平成29年9月26日1488あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018(40)

カラーコンタクトレンズの眼障害

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズの眼障害OcularComplicationsofColorContactLensWear糸井素純*はじめにソフトコンタクトレンズ(SCL)の素材は低含水性ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethylmethac-rylate:HEMA),中含水性HEMA,高含水性HEMA,シリコーンハイドロゲルの四つの素材に分けることができる.酸素透過性は低含水性HEMA,中含水性HEMA,高含水性HEMA,シリコーンハイドロゲルの順に高くなる.一般に流通している透明なSCLは高含水性HEMA素材,中含水性HEMA素材,あるいはシリコーンハイドロゲル素材が主流であるが,カラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)は低含水性HEMA素材のものが多い.とくに台湾,韓国で製造され,日本で販売されているカラーCLは,一部の製品を除き酸素透過性が低い低含水性HEMA素材である.日本では低含水性HEMA素材のSCLの歴史は長いため,たとえカラーCLであっても,新たな臨床試験を実施せずに,書類上の手続きだけで高度管理医療機器として承認を受けることができる.多くのカラーCL装用者は,度あり,度なしカラーCLともに,眼科医の処方を受けずに,インターネット,通信販売,雑貨店,薬局,カラコンショップなどでCLを購入している1).近年,とくに非対面販売であるインターネットによる購入が増えている.日本コンタクトレンズ学会が2012年7~9月に実施したカラーCLの眼障害調査によると,インターネット,通信販売,雑貨店,大型ディスカウントショップでのカラーCLの購入が81.0%,購入時に眼科を受診していない人が80.5%と報告された2).国民生活センターが10代,20代のカラーCL使用者に行ったアンケート調査でも,インターネット,通信販売でカラーCLを購入した人が39.2%ともっとも多く,とくに10代では45.6%を占めていた.購入時に眼科を受診していない人も43.5%,10代では52.6%と半数以上を占めた3).現在,流通しているカラーCLで眼科医の処方に基づいて販売されているカラーCLは10品目以下と推測される.トライアルレンズが流通し,眼科医の処方に基づいて販売されているカラーCLの多くは高含水性HEMA,中含水性HEMA,あるいは,シリコーンハイドロゲル素材のカラーCLで,低含水性HEMA素材のカラーCLでは数品目にかぎられる.ほとんどの低含水性HEMA素材のカラーCLは,トライアルレンズが流通していない.低含水性HEMA素材のカラーCL装用者の多くは,眼科医の処方を受けず,レンズの素材やフィッティングなどに左右される安全性を無視して,パッケージやカラーCLを装用しているモデルの写真などをみて,好みのデザインのカラーCLを選択し,インターネットや大型雑貨店で購入している.カラーCL装用者に眼障害が多いことが問題となっているが,中含水性HEMA,あるいは,高含水性HEMA素材のカラーCL装用者の眼障害は,通常の透明なSCL(1日使い捨てSCL,2週間交換SCL)の装用者と眼障害の内容や発症頻度も大きく変わらない印象がある.臨*MotozumiItoi:道玄坂糸井眼科医院〔別刷請求先〕糸井素純:〒150-0043東京都渋谷区道玄坂1-10-19糸井ビル1F道玄坂糸井眼科医院0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(23)1471表1低含水性HEMA素材のカラーコンタクトレンズの問題点図1前眼部OCT(SS.1000)CASIAの2D画像色素が眼瞼側の低含水性HEMA素材のカラーコンタクトレンズの断面像.図2前眼部OCT(SS.1000)CASIAの2D画像色素が角膜側の低含水性HEMA素材のカラーコンタクトレンズの断面像.表2おもな低含水性HEMA素材の従来型ソフトコンタクトレンズの規格販売名含水率(%)中心厚(mm).3.00Dの場合レンズ径(mm)ベースカーブ(mm)シードスカイ37.60.0714.08.4,8.7,9.0クララソフトファシル1437.60.0714.08.1~9.9クララソフトファシル1337.60.1214.07.9~9.3図3低含水性HEMA素材の1日使い捨てカラーコンタクトレンズ装用者にみられた色素の露出による角膜上皮障害図4図3と同一眼図5低含水性HEMA素材の1カ月交換カラーコンタクトレン角膜上皮障害の部位に色素の沈着がみられる.ズ装用者にみられた角膜上皮障害色素による角膜側のレンズ表面の凹凸が原因と考えられた.図6各種カラーコンタクトレンズ装用(8時間)による角膜浮腫の違い左上:非装用.右上:中含水性C1日使い捨てカラーコンタクトレンズ.左下:低含水性C1日使い捨てカラーコンタクトレンズ.右下:低含水性C1カ月交換カラーコンタクトレンズ.図7約1年間の低含水性HEMA素材の1日使い捨てカラーコンタクトレンズ装用者にみられた角膜内皮細胞障害(右).左は正常角膜図8低含水性HEMA素材の1カ月交換カラーコンタクトレンズ装用者にみられた慢性酸素不足が原因と考えられた点状表層角膜症図9カラーコンタクトレンズ装用者にみられた角膜変形カラーCCLの装用歴:13年.上段:初診時(左:instantaneousradiusmap,右:pachymetrymap),下段:SCL装用中止C1カ月後(左:instantaneousradiusmap,右:pachymetrymap)図10低含水性HEMA素材の従来型カラーCL装用者に図11低含水性HEMA素材の1カ月交換カラーコンタクトみられた角膜上皮障害(角膜上方)レンズ装用者にみられた結膜ステイニングタイト症状が原因と考えられた.タイト症状が原因と考えられた.図12低含水性HEMA素材の1日使い捨てカラーコンタクトレンズ装用者にみられた輪部充血タイト症状が原因と考えられた.図13低含水性HEMA素材の1カ月交換カラーコンタクトレンズの短時間(8時間)装用後にみられた角膜変形右:装用前,左:装脱直後.図14低含水性HEMA素材のサークルタイプ1日使い捨て図15低含水性HEMA素材の1カ月交換カラーコンタクトカラーコンタクトレンズ装用者にみられた角膜潰瘍レンズ装用者にみられた角膜浸潤,輪部充血,球結上方の角膜輪部に病変がみられる.膜充血

カラーコンタクトレンズの処方

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズの処方CosmeticColorContactLensPrescription月山純子*,**はじめにカラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)の処方は,基本的には通常の透明なレンズの処方と同様であるが,カラーCL独特の留意点がいくつかある.色素があるために,透明なレンズよりも処方時に注意すべき点,定期検診時にチェックすべきポイントなどを解説する.また,本来CL処方は視力補正目的であるが,これに美容効果が絡んでくることが,カラーCL処方の面倒臭さであると思う.カラーCLを希望するのは,男性もいるものの圧倒的に女性が多く,若い人が多い.男性医師にとっては,女性の美容に関する熱い情熱は理解しがたいと思われる.筆者は女性であるが,世代がかなり違うので,コミュニケーションに難渋することも多々ある.本稿では,カラーCLを処方する際,男性医師でも対応しやすい方法について筆者なりに考えてみた.IどのようなカラーCLを選べばよいか当然のことであるが,カラーCLであっても透明なレンズと同等の安全性をもつレンズを処方したい.素材については,低含水性ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethylmethacrylate:HEMA)素材は酸素透過率の低さから避けたい.しかし,パッケージや添付文書,ホームページの製品紹介には低含水性HEMAとは書かれてはいない.見分け方は,含水率が38%前後で,素材のところにはHEMA(2-hydroxyethylmethacry-late),EGDMAあるいは2-HEMA,EGDMA(ethyleneglycoldimethacrylate)と記載されている.EGDMAは架橋剤である.低含水性HEMAは約50年前に開発された素材で,当時は画期的な素材であったが,酸素透過率の低さから,近年,透明なレンズではほとんど使用されなくなっていた.しかし,カラーCLの流行とともに再び復活してきてしまった.汚れにくく安定した素材であるはあるが,シリコーンハイドロゲルレンズなどDk/L値(酸素透過率)が100を超えるようなレンズが主流となってきている現在において,低含水性HEMA素材のDk/L値は6~8程度とかなり低い1).厚みによってはさらに低くなる.雑貨店やインターネット通販などで販売されているカラーCLの多くは,未だにこの素材が使われていることが多い.インターネット通販や雑貨店で購入したカラーCLを使用しており,トラブルを起こして眼科を受診し,トラブルが改善してCLを処方するときに,こちらが勧めるカラーCLに対して抵抗されることも多いが,酸素透過率について説明すると聞き入れてくれることが多い.患者には,「トラブルを起こしたレンズは,約50年前に開発された素材なので,最新のレンズと比べて酸素が1/10~1/20ぐらいしか通りません.酸素が不足すると,角膜の一番内側の内皮細胞という細胞が死んで,残念ながら一生元に戻りません.あなたの細胞の一部もカラーCLによる酸素不足で,すでに死んでしまっています」などと,実際のスペキュラーマイクロスコープの画JunkoTsukiyama:博寿会山本病院眼科,近畿大学医学部眼科学教室**,*〔別刷請求先〕月山純子:〒648-0072和歌山県橋本市東家6-7-26博寿会山本病院眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(17)1465図1各種乱視用カラーCLa,b:厚生労働省承認レンズ.c~f:個人輸入の厚生労働省未承認レンズ.~~図2図1のレンズのシュリーレンスコープ(SLM.20,溝尻光学)による観察a,b:レンズには乱視用のガイドマークがある.c~f:レンズに乱視用のガイドマークがない.図4インターネット通販で購入したカラーCLを装用すると,夜間の運転が困難という訴えで受診した患者のフィッ図3図2cの拡大図ティング切削痕と思われる筋がレンズに入っている.フィッティングが不良である.-a図5カラーCLのフィッティングa:上を見たときにずれる.b:横を見たときにずれる.Ca図6カラーCLをはずした状態でのフルオレセイン染色a:SEALs様の角膜上方の上皮障害.Cb:結膜への圧痕.図7アプリを使ってのシミュレーション画像カラーCCLよりも,髪型を変えたほうが印象が大きく変化する.Ca:元の写真.b:ブルーのオパークレンズ.c:茶色のサークルレンズ.d~f:カラーCCLを装用せず,髪型のみ変更.~

カラーコンタクトレンズの品質

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズの品質ColoredContactLensQuality植田喜一*はじめにカラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)は若い女性を中心に広がっているが,カラーCLの装用によって眼障害をきたした患者を診ることが多い.不適正な取り扱いが原因のことがあるが,眼所見から明らかにレンズの品質が問題だと推察することもある.そこで,レンズの品質について行われた二つの大規模な調査研究について概説する.I独立行政法人国民生活センターによるカラーCLの安全性の調査研究全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)にカラーCLに関する相談件数が増加していることに加えて,2012年に実施した日本コンタクトレンズ学会のカラーCLによる眼障害調査の報告から,カラーCLの安全性について国民生活センターと日本コンタクトレンズ学会,日本眼科医会が共同研究を行うことになり,レンズの品質については国民生活センターが試験を実施した.2013年8月にインターネットで「カラーコンタクト通販」と検索して上位に表示された販売サイトやCL専門店のホームページなどを調査して,使用者数が多いと考えられ承認された17製品をテスト対象とした.1日使い捨てタイプが8製品,2週間交換タイプが2製品,1カ月交換タイプが6製品,2週間~1年交換タイプが1製品であった.参考として1年交換の個人輸入の3製品も含まれたが,以下の結果は承認された17製品について述べる.1.直径,ベースカーブ,頂点屈折力,中心厚カラーCLは厚生労働省が定める「ソフト(ハイドロゲル)コンタクトレンズ承認基準」に適合することが求められるが,これらに規定されている事項のうち,直径,ベースカーブ(basecurve:BC),頂点屈折力(レンズ度数)を測定した.参考までに酸素透過率に影響するレンズ中心部の厚さ(以下,中心厚)についても測定を行った.頂点屈折力については許容差を超える製品はなかったが,直径については2製品,BCについては5製品が承認基準の許容差を超えていた.前眼部三次元光干渉断層計(opticalcoherencetomo-graphy:OCT)を用いて中心厚を測定したところ,製品によって差があり,もっとも厚い製品はもっとも薄い製品の2倍程度であった.添付文書に記載していた表示値の2倍程度厚い製品もあった.2.着色の状態の観察レンズの切断面をデジタルマイクロスコープを用いて観察して,着色部分の位置を確認したところ,9製品は角膜側に,8製品が眼瞼側にあった.走査型電子顕微鏡(scanningelectronmicroscope:SEM)で観察すると,着色部分がレンズ最表面に確認されたものは11製品であったが,9製品を提供する企業は着色部分がレンズ内*KiichiUeda:ウエダ眼科〔別刷請求先〕植田喜一:〒751-0872山口県下関市秋根南町1-1-15ウエダ眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(11)1459部に埋め込まれていると反論した.3.レンズケアよる色落ちレンズケアを必要とする9製品について,マルチパーパスソリューション(multi-purposesolution:MPS)で通常のケアをすると,色落ちしたものが1製品あった.II国立医薬品食品衛生研究所によるカラーCLの規格適合性に関する調査研究国としてカラーCLの問題を調べるために規格適合性試験を行った.この研究は平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別事業として,国立医薬品食品衛生研究所(NationalInstituteofHealthSciences:NIHS)が実施したが,日本コンタクトレンズ学会,日本眼科医会,日本コンタクトレンズ協会も協力した.国民生活センターが対象とした承認レンズ17製品に,個人輸入の1製品を加えた18製品について試験を行った.1.直径,BC,頂点屈折力,中心厚レンズの規格の測定についてはその条件や装置によって異なることから,企業が指定している標準作業手順書(standardoperatingprocedure:SOP)に準拠(承認申請用)して行った試験(企業SOP法)に加えて,企業が指定する条件(溶液組成,温度,時間など)に従ってレンズを膨潤させてNIHSが所有している装置を用いた試験(NIHS-SOP法)と,企業指定の膨潤液がリン酸緩衝生理食塩液(phosphatebu.eredsaline:PBS)の場合にはNIHSが所有している装置を用いた試験(NIHS-PBS法)の3種を実施した.このNIHS-PBS法は国民生活センターが実施した試験に近いものである.a.企業SOP法による試験(対象は10製品)直径,BC,頂点屈折力,中心厚ともに基準値を逸脱する製品は認められなかった.b.NIHS.SOP法による試験(対象は8製品)頂点屈折力については8製品ともに適合した.一方,直径については6製品が適合したが,1製品については基準値をわずかに逸脱する検体が,残りの1製品についてはすべての検体が基準値を大きく逸脱していた.中心厚については投影法を行った8製品のうち3製品が基準値を超える検体があり,そのうち大きく逸脱した1製品についてはゲージ法を行っても基準値を大きく超えていた.c.NIHS.PBS法による試験(対象は18製品)頂点屈折力については18製品ともに適合した.一方,直径については3製品が基準値を下回っており,そのうち1製品が大きく逸脱していた.BCについては2製品が基準値を下回っており,そのうち1製品は上述した直径と同様に大きく逸脱していた.中心厚については投影法では基準値を超える検体が5製品あり,ゲージ法を行っても2製品が超えており,そのうち1製品は大きく超えていた.2.色素局在解析カラーCLの製造工程は,①ポリマー層形成→色素印刷→モノマー充.→重合,②モノマー充.→色素印刷→モノマー充.→重合,③色素印刷→重合→モノマー充.→重合,④色素印刷→モノマー充.→重合の四つに大別される.①の工程による製品はサンドイッチ構造を有するといわれるが,その構造が明らかではない製品がある.形成されるポリマー層の厚さが不均一であることが原因と考えられる.色素の局在をみるために光学顕微鏡観察,OCT解析,共焦点蛍光顕微鏡(Z-Stack)解析,SEM解析,X線光電子分光解析,エネルギー分散型X線解析,飛行時間二次イオン質量(TOF-SIMS)解析が検討された.色素成分がモノマーと混合されて色素上にポリマー被膜が存在する場合には,理論的に考えられるもっとも薄い被膜はナノメータ(nm)オーダーの単分子膜になるため,これを検出するにはTOF-SIMSがもっとも有用と考えられた.一方,OCT解析はカラーCLを切断せずに簡便に色素の分布状態が確認できるので,臨床的に活用できる.Z-Stack解析は色素局在の深度(レンズ表面からの距離)が測定できるというメリットがある.これらの特徴を表1に示す.a.光学顕微鏡検査と共焦点蛍光顕微鏡(Z.Stack)による解析解析結果は次のグループに分けられた.①色素が観測視野のすべてまたは一部でレンズ内に包1460あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018(12)表1色素局在解析法の特徴分類解析方法破壊・非破壊測定深度単分子層の存在の有無の判定理由光干渉断層計(OCT)解析非破壊─×解像度不足形態観察共焦点蛍光顕微鏡(Z-Stack)解析非破壊─×解像度不足切片化/光学顕微鏡観察破壊─×解像度不足走査型電子顕微鏡(SEM)/形態観察破壊─×形態変化の可能性X線光電子分光(XPS)分析破壊数nm~10nm×感度不足元素解析走査型電子顕微鏡(SEM)/エネルギー分散型X線(EDX)分析破壊1um×測定深度が単分子層の厚さを超えている飛行時間二次イオン質量(TOF-SIMS)分析破壊1-3nm〇単分子層の厚さの範囲内で解析可能(平成26年度総括・分担研究費より引用)・色素成分はモノマーと混合されて印刷されるため,色素上にポリマー被膜が存在する可能性がある(理論的に考えられるカラーCLの最表面のもっとも薄い被膜はポリマー分子一層からなるnmオーダーの単分子膜).・光学的顕微鏡観察,OCT解析,Z-Stack解析では色素の分布状態を確認できる.Z-Stack解析では色素の存在深度(表面から1um以内)を数値化できる.・XPS解析は測定深度が数~10nm程度であるが,色素成分(数+ug/レンズ)を検出するためには感度が不十分である.・SEM/DEX解析はumオーダーの測定深度であるため,nmオーダーの単分子膜の存在を否定できない.・TOF-SIMS解析の測定深度は1~3nmであり,感度も高いので,色素の露出状況を科学的に判定するもっとも優れた手法である.表2Z.Stack解析により測定した各製品のレンズ表面からの色素局在深度レンズNo.焦点位置のズレ(枚数)表面からの距離(um)色素局在レンズNo.焦点位置のズレ(枚数)表面からの距離(um)色素局在1575.7レンズ内10-7-0.7表面付近210.1表面付近11-16-1.6レンズ外3-6-0.6表面付近12-10-1表面付近4-8-0.8表面付近13-30-3レンズ外5-2-0.2表面付近14-12-1.2表面付近6-10-1表面付近15-1-0.1表面付近710.1表面付近16434.3レンズ内8-11-1.1表面付近17-10-1表面付近9-9-0.9表面付近18181.8レンズ内(平成26年度総括・分担研究費より引用)黒色黒色赤褐色測定領域①測定領域②x102Ti+x103Fe+5002.05004001.8400黒色1.21.00.83001.6300赤褐色1.00.80.60.40.6C4H8+2001.42000.4C3H4O+1001.21000.20.201.000.0mm0400mm040047.8547.9548.0548.1555.9556.0056.05m/z47.94,i+m/z55.93,e+Mass(u)Mass(u)MC:1;TC:2.043e+003MC:17;TC:4.135e+004T200F200図1TOF.SIMS解析における典型的な陽性例金属色素(Fe,Ti)がレンズ表面下のきわめて浅い位置(3nm以内)に存在すると考えられる.(平成26年度総括・分担研究費より引用)表3TOF.SIMS解析結果レンズNo.色素面色素検出の有無検出された色素成分(検出部位)レンズNo.色素面色素検出の有無検出された色素成分(検出部位)12まぶた側角膜側××─#1Fe(全体)1011まぶた側角膜側〇〇Ti(褐色),sigmentoBlue15(黒色)Fe(黒色)3角膜側〇Ti(赤褐色),Fe(赤褐色)12角膜側×─4まぶた側△#2Fe(全体),PigmentBlue15(褐色)13まぶた側〇Fe(黒色)5角膜側×─14角膜側×─67まぶた側角間側△〇Fe(全体),スルホン酸#3Ti(赤褐色),Fe(赤褐色)PigmentYellow139(褐色)1516角膜側まぶた側〇×PigmentoYellow139(赤紫色)─89角膜側まぶた側×〇─#3Ti(全体),Fe(全体)PigmentBlue15(おもに紫色)17まぶた側〇Fe(黒色)#1Feがわずかに検出されたが,n=2で再現していない.(平成26年度総括・分担研究費より引用)#2光学顕微鏡で観察される色素の分布とFeの分布は一致していない.#3非常に少ない._

カラーコンタクトレンズの種類

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズの種類CosmeticSoftContactLensClassi.cations東原尚代*はじめにカラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)は女性に圧倒的な人気があり,お洒落アイテムの一つとして広く使われている.2009年に非視力補正用(度なし)CLが高度医療管理機器に指定され,カラーCLも薬事法で規制されるようになったが,現在もインターネットや雑貨店などで簡単にカラーCLを購入できる状況であり,市場に出回るカラーCLの数・種類を把握することは困難である.そこで本稿では,承認カラーレンズに焦点を当て,「トライアルレンズがなく眼科医の診察なしで購入されるカラーCL」と,「眼科医療機関で取り扱うカラーCL」に大別して考えることにする.Iなぜカラーコンタクトレンズは増えるのか現在,承認されたカラーCLは把握できないほど無数に存在する.その背景として,メーカーが工場をもたずに商品を企画して,製造を別会社に委託して生産を行っている点があげられる.1種類のカラーCLが承認されるとする.すると,同素材のカラーCLであれば,新たな商品もサブ番号のみ異なる形で承認されていく(図1)1).つまり,商品名は違っても元をたどれば同じ種類のCLであり,表現型を変えて同じ素材のカラーCLが市場に出回わるという図式である.インターネットや雑貨店で購入できるカラーCLの多くがこのタイプに該当し,パッケージや色素デザイン,商品名が次々に変わりながら,販売終了と新発売を繰り返すことでカラーCLは増え続ける.IIカラーコンタクトレンズ市場におけるODM,OEMインターネットや雑貨店で入手できるカラーCLの製品情報をみると,製造元と販売元が異なることが多い.「ODM」とは,IT用語辞典(http://e-words.jp/)によるとoriginaldesignmanufacturingの略語であり,製品の受注生産をさす.おもに発注元企業のブランド名で販売される製品の企画や設計,製造までを行う.カラーCLの場合,ODM企業も自社製品をもって販売していることが多いが,自社製品として掲載していないカラーCLも製造元をたどるとこれらの企業に行きつく(表1).実際,ODM企業のホームページ(HP)には,異なる発注企業(販売元)の商品が数多くラインナップされている(表2).また,驚くことに,カラーCLの商品化までの流れが明記され,「独自のプライベートブランドとしてカラーCLを商品化しませんか?」と受注生産を誘う文言が記載されている.一方,「OEM」とは,originalequipmentmanufac-turingまたはoriginalequipmentmanufacturerの略語で,製品の企画や設計,開発などを原則として発注企業(販売元)で行い,ODM生産で納品された商品を独自のプライベートブランドとして取り扱い,自らの営業・販売ルートで顧客へ販売する.事業生産コストを削減するために製品をほかの国内企業や海外企業に委託すれば,*HisayoHigashihara:ひがしはら内科眼科クリニック〔別刷請求先〕東原尚代:〒621-0861京都府亀岡市北町57-13ひがしはら内科眼科クリニック0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(3)1451例アルファコーポレーション(テクノメディカル,メリーサイトが承継)医療機器センターホームページ371商品目(55承認)2010年10月5日~2014年6月12日単回使用非視力補正用色付CL承認番号16桁(一連番号とサブ番号)新承認番号は,承認した年,厚生大臣承認か知事承認かの別,承認の種類(国産か輸入かの別),当該年における承認一連番号,およびサブ番号の組み合わせとする.例20900BZZ01234000年大臣種類一連番号サブ番号承認番号商品名22200BZX00842000ワンデーアイ22200BZX00842A01ミセマスカラー22200BZX00842A02コイワナワンデー22200BZX00842A03ハニートラップワンデー22200BZX00842A04ビーハートビーワンデー22200BZX00842A05ベビークイーンワンデー22200BZX00842A06トゥインクルビーワンデー22200BZX00842A07ガンリキクイーンワン22200BZX00842A08トゥインクルカラーワンデー22200BZX00842A09フラッシュレーベル1製品の状況が把握しにくい図1カラーコンタクトレンズの承認番号はじめに承認を得たアルファコーポレーションの1日使い捨て度なしカラーCLがテクノメディカル,メリーサイトにより継承される.9種類の商品目が加わっているが,サブ番号が異なるだけで元は同じ1種類のレンズであることがわかる.(文献1より引用)表1カラーコンタクトレンズの製造会社一覧筆者が調べたところ,市場に出回るカラーCLは表に示す製造元に行きつくことが多かった.アイクオリティ株式会社株式会社ティー・アンド・エイチ株式会社シーンズエイショウ光学株式会社株式会社アジアネットワークスメリーサイト株式会社株式会社I・VICEPegavisionJapan株式会社フロムアイズ株式会社株式会社ElDorado株式会社シンシア株式会社アイセイPIA株式会社株式会社フロンティアステージ株式会社アイレhttp://eyequality.JP/http://tandh.co.jp/?page_id=39https://scenes.co.jp/business/eyecare-and-beauty/http://www.hydron-japan.com/http://www.asia-networks.co.jp/productshttp://ms2012.jp/index.htmlhttp://i-vice.jp/http://www.pegavision.com/jp/index.phphttp://refrear.jp/aboutus/http://www.eldorado2007.co.jp/http://www.sincere-vision.com/http://www.aiseis.jp/index.phphttps://www.pia-corp.co.jp/http://fstage.jp/http://aire-cl.com/表2ODM企業のホームページに紹介されているカラーCLラインナップ(一例)異なる商品名で多くのカラーCCLが販売されるが,製品はすべて同じ製造元(ODM企業)で造られているのがわかる.承認番号下3桁(サブ番号)以外は同じであり,一つの承認番号で多くのカラーCCLの商品目が加わっていることがわかる.商品名製造元販売元承認番号エンジェルカラーデイリーズフラワーアイズワンデーアンヴィーセクシービジョンワンデーCaリッチベイビーワンデーシジーナDAZZSHOPカラーコンタクトレンズCONEDAYベビーアイズワンデージーヴルアシストシュシュCHANABIワンデー株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社CT-GardenC株式会社ビューフロンティアC株式会社ジャパンゲートウェイC株式会社ベルC株式会社ノベルフォースC株式会社アジアネットワークスC株式会社エステティクスC株式会社CdazzyC株式会社CANWC株式会社エヌ・アイ・アイC22600BZX0001100022600BZX00011A0122600BZX00011A0222600BZX00011A0322600BZX00011A0522600BZX00011A0622600BZX00011A0822600BZX00011A0922600BZX00011A1222600BZX00011A16カラーCLのOEM企業図2カラーCLにおけるODM企業とOEM企業の関係カラーCCLを受注製造するCODM企業とともに,発注するCOEM企業が増えている.ODM企業の主力製品は透明なCCLではなくカラーCCLである.また,OEM企業はカラーCCLだけでなく,ヘアケア用品や化粧品を取り扱うことが多い.表3視力矯正用クリアCLを主力とするメーカーが発売するカラーCL一覧商品名ワンデーアキュビューディファインモイスト2ウィークアキュビューディファインCJILLSTUARTC1dayUVCEyeco.ret1dayUVヒロインメイクC1dayUVCPlusmodeC1-DayHommeメーカージョンソン・エンド・ジョンソンシード使用方法1日終日装用2週間終日装用1日終日装用枚数1色30枚入り1色6枚入り1箱30枚入り(トライアルレンズ1箱C10枚入り)1色C30枚入り,1色10枚入り1色30枚入り1色30枚入り製造方法SSM製法キャストモールド製法キャストモールド製法素材Ceta.lconAC2-HEMA,MAA,ECDMA,TMPTMA2-HEMA,EGDMA含水率58%58%38%CBCC8.5CmmC8.3CmmC8.7C8.7パワー+1.00,+0.50,C±0.00C‘.0.50.C.6.00(C0.25ステップ)C.6.50.C.9.00(C0.50ステップ)C±0.00,+0.50,+1.00C‘.0.50.C.6.00(C0.25ステップ)C‘.6.50.C.9.00(C0.50ステップ)C±0.00D,C.0.25D.C.6.00D(C0.25ステップ)C.6.50D.C.10.00D(C0.50ステップ)C±0.00,C.0.50.C.6.00(C0.25Dステップ),C.6.50.C.12.00(C0.50Dステップ)C±0.00,C.0.50.C.6.00(C0.25Dステップ),C.6.50.C.10.00(C0.50Dステップ)CDIAC14.2CmmC14.0CmmC14.2CmmC14.0Cmm中心厚*C0.084CmmC0.08CmmC0.05CmmDk値C28C19.73C12CDk/LC33.3C24.6C24FDA分類グループCIVグループCIVグループCICUVカットありあり(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)ありカラーCNaturalCShineCVividCAccentCRadiantCBrightCRadiantCCharmCRadiantCSweetCRadiantCChicCVividフローラルピンクC/オートクチュールオリーブC/ブリリアントブルーCBasemakeCNaturalmakeCRichmakeCHeroinebrownヒロインブラウンforビジネスforプライベート環状着色外径C12.7C12.8C12.5C12.7C12.7C12.7C12.7C12.8C13.6C12.8C13.0C13.2C13.4C13.5環状着色内径C6.6C6.2C8.7C6.7C6.5C6.9C6.4C6.2C6.6C7.3C7.0C7.0C7.0C7.2商品名フレッシュルックデイリーズイルミネートエアオプティクスブライトC/カラーズフレッシュルックデイリーズボシュロムメダリストナチュレールスターリーメニコンC2WeekRayメーカー日本アルコンボシュロム・ジャパンメニコン使用方法1日終日装用シリコーンハイドロゲル素1日終日装用1日終日装用1日終日装用2週間終日装用枚数1色C10枚入り,1色C30枚入り1箱6枚入り1色10枚入り1色30枚入り1色10枚入り1色6枚入り製造方法モールド製法CDSMモールド製法素材Cnel.lconACLotra.lconBCnel.lconACHila.lconBC2-HEMAEGDMA含水率69%33%69%59%38%7200%CBCC8.6CmmC8.6C8.6CmmC8.6mm4mm,8C.6mm,C8.8CmC8.6パワー0.00D.C.6.00D(C0.25Dステップ)C.6.50D.C.8.00D(C0.50Dステップ)0.00D.C.6.00D(C0.25Dステップ)C.6.50D.C.8.00D(C0.50Dステップ)0.00D.C.6.00D(C0.25Dステップ)C.6.50D.C.8.00D(C0.50Dステップ)C±0.00C.0.25.C.6.00(0C.25Dstep)C.6.50.C.9.00(0C.50DStep)C±0.00C.0.50.C.6.00D(C0.25ステップ)C.6.00.C.10.00(C0.50ステップ)C±0.00,C.0.25.C.6.00D(C0.25ステップ)C.6.00.C.10.00(C0.50ステップ)CDIAC13.8CmmC14.2C13.8CmmC14.2Cmm14.20.C14.60CmmC14.5Cmm中心厚C0.10CmmC0.08C0.10CmmC0.090.07.C0.12C0.11CmmDk値C26C112C26C22C9C34CDk/LC26C138C26C24.4C12.9C31FDA分類グループCIIグループCIグループCIIグループCIIグループCIグループCIIUVカットなしC─なしなしなしなしカラージェットブラックリッチブラウンライトブラウンエアオプティクスブライトピュアヘーゼルC/グリーン/グレー/ブルーピュアブラックエレガントブラウンマイルドブラックヌーディーブラウン環状着色外径C12.6C─C12.8C12.5C12.7C13C13.1C13.3環状着色内径C6.3C─C5.4C8.2C8.25.5.C5.8CmmC7C7Dk:C×10.9(cmC2/sec)・(mlOC2/ml×mmHg)Dk/L:C×10.11(cmC2/sec)・(mlOC2/ml×mmHg),UVカット:メーカーからの公開情報(HP・製品カタログ)においてCUVカットの記載の有無.*中心厚は.3.00Dでの計測値.商品名ワンデーアキュビューディファインモイストJILLSTUART1dayUVEyeco.ret1dayUVメーカージョンソン・エンド・ジョンソンシードデザイン商品名フレッシュルックデイリーズイルミネートエアオプティクスブライトカラーズボシュロムメダリストナチュレールメニコン2WeekRayメーカーアルコンボシュロム・ジャパンメニコンデザイン図3眼科医療機関で取り扱う代表的なカラーCL多くがCenhanceタイプであるが,製品によって着色デザイン(模様)や着色径が異なる(図はすべて各メーカーからの提供で,商品の一つを提示).a.着色部分がレンズ最表面に確認された銘柄の例(No.1)表面着色部分透明部分着色部分透明部分断面透明部分着色部分を最表面に確認50mm10mmb.着色部分がレンズ最表面に確認されなかった銘柄の例(No.4)表面着色部分がレンズ内に埋め込まれている断面50mm10mm透明部着色部50mmc.アイコフレの走査型電子顕微鏡(SEM)像着色顔料はレンズ素材でラミネートされており,表面に露出していない,観察時の乾燥で,ラミネートしている薄いレンズ素材に皺が形成されている.図4カラーコンタクトレンズの色素の分析インターネットや雑貨店で購入できるカラーCCL(Ca)は色素がレンズ表裏面にプリントされていることが多いが,眼科医療機関で取り扱うカラーCCL(Cb,c)は色素が埋没しているかラミネートされたものである.(a,bのC4枚は文献C4より引用したCCL断面像,cは文献C7より引用したCCL表面からの観察)図5カラーCLのパッケージ外観(例)カラーCCLを好む多くのユーザーが女性であることから,花柄の優しく可愛らしい絵柄になっている.(メニコン,シードからの提供)

序説:カラーコンタクトレンズの今を知る

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズの今を知るTheActualStateofColorContactLenses植田喜一*小玉裕司**カラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)は白子症,虹彩欠損症や無虹彩症などの虹彩異常眼,角膜混濁や角膜白斑などの角膜異常眼の整容補正,羞明防止を目的として開発されたが,その後に美容(おしゃれ)を目的としたものが製品化されるようになった.屈折異常の矯正を目的としない(非視力補正用,度なし)CLは,高度管理医療機器ではなく雑貨品としてとらえられていたが,2009年の「薬事法施行令の一部を改正する政令」で,非視力補正用CLは高度管理医療機器に指定されたので,おしゃれを目的とした度なしカラーCLも薬事法(現行の医薬品医療機器法)で規制されることになった.現在,多くのカラーCLが販売されており,装用スケジュールから1日交換型,2週間交換型,1カ月交換型,従来型が,着色のタイプから虹彩の色を大きく変化させるものと,わずかに変化させるもの(いわゆるサークルレンズ)がある.一方で,整容を目的とした虹彩付きレンズもある.眼科医はメーカーから提供されたトライアルレンズを使用してカラーCLを処方するが,トライアルレンズを提供されていない製品も多い.カラーCL希望者はインターネット販売や雑貨店などで眼科医の知らない製品を購入していることもしばしばである.こうした現状では眼科医はカラーCLの種類について知らないことがあると思われる.そこで,東原尚代先生にカラーCLの種類について述べていただいた.日本コンタクトレンズ学会が2012年7.9月の3カ月間にカラーCLによる眼障害調査を実施したところ,395例の報告があり,点状表層角膜症,アレルギー性結膜炎,毛様充血,角膜浸潤,角膜びらんなどの眼障害が多かった.日本コンタクトレンズ学会,日本眼科医会,国民生活センターによる共同研究で,カラーCLの品質について調べたところ,サイズ,ベースカーブ,厚みに問題がある製品や着色部分がレンズの最表面に確認された製品がみられた.メーカーの広告には色素がレンズ内部に埋め込まれている(サンドウィッチ構造)と表示されていても,レンズ表面に漏出していると推察される製品があった.こうした問題を背景にして,平成26年度厚生労働省科学研究費補助金特別研究事業として「カラーコンタクトレンズの規格適合性に関する調査研究」が行われた.一連の調査に関与した植田喜一がカラーコンタクトレンズの品質についてまとめ,カラーコンタクトレンズの眼障害については糸井素純先生に調査結果をわかりやすくまとめていただいた.カラーCLによる不調を訴えて来院した患者を診*KiichiUeda:ウエダ眼科**YujiKodama:小玉眼科医院0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(1)1449