大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学教授本ほん田だ茂しげる先生大阪市立大学の視覚病態学教室のホームページを開いてみていただきたい.スタッフ紹介のページに全員の専門分野や研究業績が記載されているのはごく普通だが,それらと並んでなぜか「モットー・趣味など」欄がしっかり存在する.見ると多種多彩な趣味が満載で,スタッフのみなさんの「リア充」ぶりが伝わってくる.そこで本田教授の欄は,と見ると「とにかく多趣味」とある.これだけ多趣味な人々の中にあって,さらに上を行く多趣味人ということか?本田教授に伺ってみよう.***昨年4月に大阪市立大学視覚病態学教室の第六代教授に就任した本田茂先生は,香川県坂出生まれの京都育ち.小学生の頃はプラモデルと工作,絵描きに没頭.私立洛星中学・高校時代は,硬式テニス部に所属しつつ,ギター演奏,エアチェック(懐かしい言葉!ご存じないかたはネットで検索を),漫画・イラスト描きなど,当時から多趣味だったそうだ.ただし,高校最後の1年間はそれらのすべてを封印して受験勉強.そして1985年に神戸大学医学部に入学した.大学でも硬式テニス部に所属し,幹部学年時には西医体で優勝したそうだ.テニスは今でも機会があれば楽しんでいるとのことである.ただし,先生の「多趣味」は一通りやってみる的なものとは本質的に違う.先生のモットーは「何事にも興味を持って挑戦してみること」だが,その精神がスポーツにも絵にも音楽にも発揮されたとみるべきだろう.同じことが眼科医としての先生の姿勢にも現れている.先生のご専門は神戸大学入局以来一貫して網膜硝子体疾患だが,臨床で必要とされれば小児眼科,神経眼科領域の勉強を徹底してやり,手術手技も(角膜移植を除く)ほとんどの手術を手がけ,自分のものとしてきた.基本的に勉強家であり,研究熱心なタイプなのである.神戸大学眼科でキャリアの第一歩を踏み出した頃は,当時最新の手技を学びながら網膜の神経伝達に関する研究,近視の分子メカニズム解明に向けた研究プロジェクトを独力で立ち上げ,連日深夜まで研究を行う日々だったそうだ.研究室の機器を独り占めできる週末は「至福の時だった」と先生は当時を振り返る.カリフォルニア大学留学中には,網膜色素上皮細胞の老化に関する研究で3年間に7本もの原著論文を発表した.その後,市中病院などを経て神戸大学に帰学後は,黄斑外来と網膜外来,および未熟児網膜症診療を中心となって担い,昨年の大阪市立大学赴任まで,精力的に臨床と研究のキャリアを築いてきた.***さて,大阪市立大学眼科は長年にわたって網膜疾患の臨床と研究の実績を積み重ねてきた伝統があり,とくに加齢黄斑変性や中心性漿液性脈絡網膜症などの黄斑疾患に強みをもつ.これは先生の専門領域と完全に一致するものであり,先生にも教室にとっても幸せなカップリングだったと言えるだろう.先生は加齢黄斑変性の病態解明,糖尿病網膜症や未熟児網膜症の治療法の研究などを主宰する一方,他大学や他領域の研究機関とも共同して新たな研究にも乗り出している.また,手術の安全性と効果をより高めるためのデバイスの開発,臨床応用に向けた研究も行っている.このような多方面にわたる活動の中で,先生が常日頃から心がけ,後進にも行動をもって示していることがある.それは,自分(たち)だけで分からないことは,その道の専門家にどんどん聞きに行くことである.また,各人の価値観や仕事の多様性を認め,そのうえで絶えずコミュニケーションを図ることである.その中から新しい発見も生まれ,組織も健全に発展してゆくと先生は考えている.「自分と違う外の世界に興味を抱くこと」を先生は子どもの時から大切にしていた.今もその気持ちが「基本,家でじっとしていることは病気の時以外はない」というぐらい活動的な先生の原動力となっているに違いない.(61)あたらしい眼科Vol.36,No.3,20193630910-1810/19/\100/頁/JCOPY