強度近視眼に生じる網膜疾患による視野障害2.近視性脈絡膜新生血管とその予後(萎縮)Long-termVisualandAnatomicalOutcomeafterAnti-VEGFTherapyinEyeswithMyopicChoroidalNeovascularization(CNV-relatedMacularAtrophy)佐柳香織*はじめに強度近視は眼軸長延長,後部ぶどう腫形成に伴いさまざまな眼合併症を生じ,日本の視覚障害原因疾患のC5位である.なかでも近視性脈絡膜新生血管(myopicCchoC-roidalCneovascularization:mCNV)は自然経過では高度の視力低下をきたすことが知られている.mCNVに対する治療の中心は抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialCgrowthCfactor:VEGF)療法であり,短期では良好な成績を示しているが,長期ではCCNV周囲に網脈絡膜萎縮を生じ,視力は低下していく.CI近視性脈絡膜新生血管とはmCNVは強度近視の約C5~10%に発症する疾患で,加齢黄斑変性(age-relatedCmacularCdegeneration:AMD)と比較して若年者に発症する.CNVは網膜色素上皮上に存在するC2型CCNVの形をとり,AMDのCCNVより小型で,滲出性変化も軽度であることが多い.mCNVの病態は未だ解明されていないが,眼軸長延長に伴うCBruch膜の断裂(lacquerCcracks)や脈絡膜循環障害が発症に関与すると報告されている.自然軽快はまれで,多くは黒い色素沈着を伴うCFuchs斑を経て周囲に広範な網脈絡膜萎縮を形成し,高度の視力障害をきたす.既報によると自然経過ではC10年後にC96.3%の症例でCCNV周囲に網脈絡膜萎縮を生じ,視力がC0.1以下になるとされている1)(図1).強度近視眼の眼底に網膜下出血や灰白色病変を認めた図1mCNVに黄斑部萎縮を生じた症例39歳,女性.CNVは黒い色素沈着を伴うCFuchs斑()となり,周囲に黄斑部萎縮()を形成している.視力は矯正0.03と高度に低下している.場合,本疾患を疑う.診断には光干渉断層計(opticalcoherenceCtomography:OCT)が簡便であるが,確定診断には蛍光眼底造影検査を用いる.OCTでは周囲にわずかの滲出性変化を伴う隆起性病変が網膜色素上皮ラインを越えて観察される.フルオレセイン造影検査では初期から網目状過蛍光を示し,時間の経過とともに蛍光漏出をきたすCclassicCNVのパターンを示す.インドシ*KaoriSayanagi:大阪大学大学院医学研究科眼科学教室〔別刷請求先〕佐柳香織:〒565-0871大阪府吹田市山田丘C2-2大阪大学大学院医学研究科眼科学教室0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(47)C207図2mCNV症例(治療開始前)60歳,女性.眼底写真では薄い黄斑部の網膜下出血を認める.OCT(上段中央)でみると網膜色素上皮のラインの断裂とその部位より網膜下へ進展する隆起性病変(CNV,)が確認できる.フルオレセイン造影検査(下段左)ではCCNVが蛍光漏出を伴う過蛍光として描出され(),インドシアニングリーン蛍光造影(下段中央)では初期よりCCNVの血管影が描出されている().OCTAではCCNVは網膜外層,脈絡膜毛細血管板層で高輝度病変()として描出される.==報告はない.C2.長期予後上記に述べたようにCmCNVに対する抗CVEGF療法後の長期予後についての大規模臨床試験の結果はまだない.しかし,長期経過を追った症例報告はいくつか散見されるため,それらの結果を紹介する.Ruiz-MorenoらはCmCNVに対する抗CVEGF療法(ベバシズマブあるいはラニビズマブ)のC4年経過後とC6年経過後の結果を報告している.92眼のCmCNVに対し抗VEGF療法施行後,4年間経過観察を行った報告では,4年後まで視力はベースラインよりも有意に改善したままであったことを報告した4).一方,抗CVEGF療法後のmCNV眼C97眼(ベバシズマブ投与C78眼,ラニビズマブ投与C19眼)をC6年間観察した結果は,視力はC3年まではベースラインよりも有意に改善していたが,4年目以降有意差がなくなったと報告している5).OishiらはC22眼のCmCNVを対象にベバシズマブ投与後C4年間の経過観察を行い,3年目まではベースライン視力より有意に改善していていたが,4年目には有意差がなくなったことを報告している.また,視力低下の原因として黄斑部萎縮の発生,あるいは拡大をあげている6).SaraoらはC32眼のベバシズマブ投与を行ったCmCNVを対象にC5年以上の経過観察を行った結果,治療開始後早期では視力がいったん改善するものの,30カ月以降はCCNV周囲の網脈絡膜萎縮により緩やかに視力が低下したことを報告している7).KasaharaらはC36眼のベバシズマブ投与後のCmCNVをC6年間経過観察した結果,視力はC4年目まではベースラインと比較して有意に改善していたものの,徐々に低下し,6年目には有意差がなくなったことを報告している.また,同報告では,6年目での視力はCCNV周囲の網脈絡膜萎縮の有無,ベースライン視力とCCNVサイズに関連があったことも報告している8).これらの症例報告から,mCNVに対し抗CVEGF療法を行うことでC3,4年目までの視力は維持されるが,その後はCCNV周囲の網脈絡膜萎縮が生じ視力が低下することが予想される.CNV周囲の萎縮は限局性萎縮と同様に萎縮部位は絶対暗点となるため,視力は高度に低下する.C3.治療後の網脈絡膜萎縮mCNV発症後の黄斑部萎縮の頻度は,自然経過例の場合,3年目でC74.1%,5年目でC77.8%,10年目でC96.3%と報告されている1).一方,抗CVEGF療法後はC1年目でC40.9%,2年目でC63.6%,3,4年目でC72.7%との報告がある6).直接比較でないため正確ではないかもしれないが,抗CVEGF療法によりCCNVを早期に退縮させることで,萎縮の発生を若干ではあるものの抑えられるのかもしれない.mCNVと同じようにCCNVを生じるCAMDでも長期経過では地図状萎縮が発生することが知られているが,頻度はCAMD全体ではC1年でC10%台と低い.AMDサブタイプでは網膜内血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)がC23.8%と若干高いが,RAP以外のCAMDでは,ラニビズマブ投与後でC3.8%,アフリベルセプト投与後でC10.6%と,mCNVと比較するとさらに低い発生率である9,10).黄斑部萎縮の発生機序は不明である.関連する因子として,これまでの報告ではCCNVの位置や年齢,中心窩とC3Cmm下方の脈絡膜厚の比などがあげられているが,関連する因子はないとする報告もある.Ohno-MatsuiらはCSwept-sourceCOCTでの報告で,黄斑部萎縮部にはCBruch膜に孔がみられると報告している11).筆者らは,OCTAを用いて黄斑部萎縮を含む近視性黄斑症症例の脈絡膜毛細血管板層を観察したところ,びまん性萎縮部位では脈絡膜毛細血管板が疎になること,黄斑部萎縮部や限局性萎縮部では脈絡膜毛細血管板が脱落し,脈絡膜血管が透見可能となることがわかった12)(図4).また,CNV周囲の網脈絡膜萎縮と脈絡膜循環との関連について考えてみると,抗CVEGF療法によって脈絡膜厚が変化するとの報告は多く,アフリベルセプト投与ではどの報告でも有意に減少しているのに対し,ラニビズマブ投与では有意に減少する報告と変わらないとする報告がある.脈絡膜菲薄化がCmCNV発生,再発ともに関連することが示唆されており,抗CVEGF療法による(49)あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018C209治療開始前30カ月後図3加齢黄斑変性での地図状萎縮(黄斑部萎縮)74歳,女性.網膜血管腫状増殖に対し抗CVEGF療法を行い,病変自体は鎮静化し視力は矯正C0.4まで改善したが,地図状萎縮()により視力は矯正C0.3Cpに低下した.図4CNV周囲の網脈絡膜萎縮のOCTA所見69歳,女性.黄斑部のCCNV周囲に網脈絡膜萎縮を生じている.自発蛍光では萎縮部位は低蛍光を示している.OCTA(3×3mm,眼底写真でので囲まれた部位)画像では,脈絡膜毛細血管板が脱落し,脈絡膜血管が透見できる.—