‘記事’ カテゴリーのアーカイブ

基礎研究コラム 9.三次元組織再生が描く再生医療の未来

2018年2月28日 水曜日

三次元組織再生が描く再生医療の未来“細胞”ではなく,“機能する臓器・器官”を再生する「形には意味がある」というように,臓器・器官における多種類の細胞の機能的な配置は,進化により達成された効率的,かつ不可欠な構造です.たとえば,神経細胞は脳を形成する重要な細胞ですが,認知や記憶といった機能の発現は,神経細胞が互いに構築するネットワーク回路や周辺細胞との相互作用が担っています.こうした緻密で立体的な組織構造を生体外で再現するのが三次元組織再生技術であり,これにより生体外で器官が発生するプロセスを連続的に観察することができます.多能性幹細胞を三次元培養すると,自己組織化とよばれる現象により,生体外で細胞が増殖・分化し,脳の一部や眼杯の一部を自律的に形成します1).これまで,複雑な立体構造を人為的な細胞操作により組み立てることは不可能とされていたため,自己組織化による三次元組織再生は,まさに“生命の神秘”である器官形成の仕組みを明らかにする手法です.器官形成メカニズムを応用した三次元組織再生により得られる組織は,生物がもつ発生プロセスを再現し,周辺細胞との相互作用を含めた分化誘導が行われるため,より生物学的に近い目的細胞を含むと考えられ,詳細な疾患モデルの確立に役立つとされています.眼科の領域ではどうでしょうか眼科学は,組織再生医学のトップランナーです.角膜上皮や口腔粘膜上皮をシート状に培養して移植する再生シート医療はすでに臨床に貢献しており,iPS細胞から誘導した網膜色素上皮シート移植の臨床応用も大きなニュースとなっています.基礎研究においても,二次元,三次元で自己組織化のメカニズムを利用して再生された眼杯や前眼部組織には,網膜の層構造や,角膜上皮,水晶体上皮が生理的に近い形で再現され,これからの臨床応用が期待されています2).涙腺の再生では,細胞を組織工学的に再配置して移植することで,周囲血管や神経を引き込んだ機能的な涙腺を再生できるなど,今後,再生医学における眼科学に期待される役割はますます大きくなっています3).今後の展望再生医学の進歩により,多能性幹細胞から臓器・器官を構成する各々の細胞への分化誘導が可能となり,誘導細胞を移平山雅敏慶應義塾大学医学部眼科学教室●細胞から二次元組織,三次元臓器再生に向けた技術開発へ●幹細胞の同定と分離●組織の再構築●臓器の再構築●ES,iPS細胞の開発一種類の細胞複数種の細胞各種幹・前駆細胞二次元的な細胞操作三次元的な細胞操作細胞シート工学周囲構造との連絡からだを構成する複数種の細胞図1再生医療における技術開発トレンド造血幹細胞移植に始まる細胞移植医療から,生体外における細胞培養シートなどの二次元組織再生技術を経て,現在の三次元組織再生技術へと連なり,それぞれの利点を生かしながら発展している.今後,アンチエイジングのための四次元組織再生技術(!?)へと進展するのかもしれない.植する治療が試みられるなかで,より移植に有利な再生組織を生み出す戦略が必要とされています(図1).移植された再生組織とレシピエント組織のネットワーク形成にかかる時間を短縮し,かつ再生範囲を大きくできるかが鍵であり,生体外でCreadytofunctionな状態に培養する三次元組織再生技術が威力を発揮します.そのためには生物学的なアプローチだけではなく,バイオマテリアルやC3Dプリンティングなどの工学を含めた集学的アプローチが発展のヒントとなるかもしれません.三次元組織再生技術に期待される“生体外で即時に機能可能な臓器を再生し,障害臓器と置き換える臓器置換再生医療”は,これからがエキサイティングな研究領域なのです.文献1)EirakuCM,CSasaiCY:MouseCembryonicCstemCcellCcultureCforCgenerationCofCthree-dimensionalCretinalCandCcorticalCtissues.NatProtocC472:51-56,C20112)HayashiCR,CIshikawaCY,CSasamotoCYCetCal:Co-ordinatedCoculardevelopmentfromhumaniPScellsandrecoveryofcornealfunction.NatureC531:376-380,C20163)HirayamaM,OgawaM,OshimaMetal:FunctionallacriC-malCglandCregenerationCbyCtransplantationCofCaCbioengi-neeredorgangerm.NatCommunC4:2497,C2013(71)Cあたらしい眼科Vol.35,No.2,2018C2310910-1810/18/\100/頁/JCOPY

二次元から三次元を作り出す脳と眼 21.固視を安定させるしくみ

2018年2月28日 水曜日

雲井弥生連載.二次元から三次元を作り出す脳と眼淀川キリスト教病院眼科はじめに三次元空間を脳内に再現し,物の位置を定めるには,安定した固視が必要である.眼や頭が動いても視野が揺れず安定するように,脳は入ってくる情報を補正し,環境の変化に応じて補正方法を変える.視覚の空間的恒常性部屋で本を読んでいるとき,視野の左端に動きを感じて目を向ける.ネコがボールにじゃれている.動くのはネコだけ,目の前の本も景色も静止している.両眼を左に動かすとき景色は実際には右に同じ速さで同じ量だけ流れるが,私たちの眼には静止して見える.網膜上で景色は左に流れるが,脳は「両眼を左へ動かしている」という情報をもち,網膜上の像の動きから眼の動きを差し引いて補正する.今度は指で片眼を押して動かすと,景色は動いて見える.たとえば,右眼を指で耳側から鼻側に押して回転さ図1前庭眼反射(vestibuloocularre.ex:VOR)鉛筆を見ながら頭を左に回転するとき,両眼は右に回転し,眼の位置は変わらない.網膜上の像がぶれないよう頭の動きを眼の動きで補正する反射である.人形の眼試験として眼球運動異常が核上性かどうかの判定に使われる.FR:右中心窩,FL:左中心窩.(69)せると,景色は正面から右に流れる.網膜上を像が左に流れるのは先ほどと同じだが,自発的に眼を動かしていないので脳が補正を行わなかったのだ.このような現象を視覚の空間的恒常性とよぶ1).前庭眼反射(vestibuloocularre.ex:VOR)次に眼前の鉛筆を固視したまま,頭を左右に振ってみる(図1).鉛筆は静止して見える.頭の回転分だけ両眼は反対方向に回転して,眼の位置が変わらないからである.これは網膜上の像が動かないよう,頭の動きを眼の動きで補正する反射である.これにより電車のなかで頭が揺れても本を読めたり,歩きながら看板の字を読んだりできる.この反射は,頭が動くときに加わる重力・直線および回転方向の速度を前庭器官が感じ,視野を安定させ平衡感覚を保つためのしくみである.前庭器官は三半規管と耳石器(卵形.と球形.)からなる.前者は回転加速度を,後者は重力と直線加速度を検出する.水平面の回転では,三半規管のうち水平半規管が反応し,前庭神経核を介して動眼神経核・外転神経核に信号を送り,反対側に両眼を回転させる.おもな神経回路を図2に示す.頭を左に回転させたとき(①),左水平半規管には興奮信号(+)が,右の半規管には抑制信号(.)が発生する(②).興奮信号(+)は前庭神経核外側核と内側核に伝わる.外側核からは左動眼神経核(③)を経て左眼内直筋に伝わる.内側核からは右外転神経核(④)を経て右眼外直筋に伝わる.抑制信号(.)は左外転神経核(④)を経て左眼外直筋と右内側縦束(⑤),右動眼神経を経て右眼内直筋に伝わる.右外直筋・左内直筋は収縮し,右内直筋と左外直筋は弛緩し,眼球は右に回転する(⑥).これが前庭眼反射であり,垂直・回旋方向にも同様のしくみが存在する.VORが正常であれば,眼球運動神経核から眼筋までの経路には異常がないといえる.この現象は人形の眼試験(doll’seyephenomenon)として眼球運動異常が核上性かどうかの判定に使われる.Sac-cade,persuit,視運動性眼振(optokineticnystag-mus:OKN,連載⑱参照),VORはすべて両眼共同運動であり,眼球運動神経核より末梢の眼筋に至る経路はあたらしい眼科Vol.35,No.2,20182290910-1810/18/\100/頁/JCOPY左眼⑥右眼①頭が左に回転↓②左水平半規管に+の情報,右水平半規管には-の情報左前庭神経核外側核→③左動眼神経核に+→左眼内直筋に+→右動眼神経核に-→右眼内直筋に-↓⑥両眼が右に回転興奮性信号抑制性信号図2前庭眼反射のしくみ内側縦束(mediallongitudinalfasciculus:MLF)共通である.乳児内斜視ではVORは正常だが,頭を固定した状態での自発的な外転運動は不良であり,「見かけ上の外転不良」とよばれる(連載⑦参照).前庭眼反射の適応性VORの恩恵を感じることはふだんほとんどないが,両側の前庭障害を起こして激しい動揺視に襲われると存在を実感する.また,宇宙飛行士が帰還後に動揺視を訴えるのは,宇宙でのVORの変化による.無重力では前庭器官への入力が変わる.視野の安定のため,前庭入力への依存が減り,視覚入力への依存が高まる.地球に帰還直後は動揺視を感じるが,地球環境で過ごすと元に戻る.同じ理由から,動きながら見る力が落ち,歩きながら看板や標識の字を読むのに困難を覚えるが,これも回復する.斜視の患者が同様のことを訴える場合があり,VORがうまく機能していない可能性が考えられる.このような環境の変化への適応には小脳片葉がかかわる.逆さめがねをかけると当初視野全体が大きく揺れて見える(連載⑳参照).景色が逆さまに見えるせいもあるが,本来視野を安定させるしくみであるVORが逆に不安定さを増幅させるからでもある.頭の左回転で視野は右に流れるが,逆さめがね下では左に流れる.両眼が右へ回転する反射は,それをさらに強め,激しいめまいや悪心を引き起こす.しかし時間とともに,頭を回転時の両眼の逆方向への回転量は減少していく.網膜像の揺れが小さくなるような補正方法を脳が探っているのだ.もっともよい補正方法を見つけだし,2週間ほどで視野は安定する.サルに特殊なレンズを装用させ,視野を2倍に拡大したり,1/2に縮小したりすると,それに応じて眼球の回転量が2倍あるいは1/2に変化することも示された.環境の変化に合わせて脳の神経細胞が信号の出し方を変えること,これに小脳のPurkinje細胞がかかわることを初めて示唆したのが日本の伊藤である2).外側膝状体系のM系は脳内に三次元空間を再現し,物の位置を定め,自分との位置関係をつかむ.動く物体の方向と速さを見きわめ,追視する.それを上丘を含む膝状体外系,OKN,VORなどの機能が補完する.正常人ではこれらの連携がスムーズであり,その恩恵を意識しないが,斜視患者では連携がうまくいかないために問題が起こる.走りながら飛んでくるボールを受けたり蹴ったり,多くの車の走る中で進路変更したり,ふだん意識せずにしている動作がとても高度でむずかしいものだとわかる.文献1)篠田義一:眼球運動の生理学.眼球運動の神経学(小松崎篤,篠田義一,丸尾敏夫),p1-146,医学書院,19852)甘利俊一:脳は理論がわかるか─学習,記憶,認識の仕組み.脳研究の最前線下(理化学研究所脳科学総合研究センター編),p300-364,講談社,2007230あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018(70)

硝子体手術のワンポイントアドバイス 177.糖尿病硝子体手術後に生じる硝子体腔内フィブリン索状物(初級編)

2018年2月28日 水曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載177177糖尿病硝子体手術後に生じる硝子体腔内フィブリン索状物(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに血管透過性が亢進した増殖糖尿病網膜症(prolifera-tivediabeticretinopathy:PDR)に対して硝子体手術を施行すると,術後硝子体腔に索状もしくは紐状のフィブリン索状物が生じることがある1).これが高度になると,フィブリン索状物が網膜面に付着して再増殖や牽引性網膜.離の原因となることもある.筆者らは以前に,術後早期および晩期にフィブリン索状物をきたした症例について,その誘因を検討し報告したことがある2).●術後早期に生じるフィブリン索状物危険因子としては長時間の増殖膜処理や強膜圧迫などによる手術侵襲,血管新生緑内障併発例,大量の術中眼内レーザー,高度の糖尿病黄斑浮腫併発例などがあげられる.これらのフィブリン索状物は,通常は1週間以内に消退するので,軽度であればステロイドの点眼のみで経過観察するが,高度な場合にはステロイドの結膜下注射を考慮する.Tissueplasminogenactivatorの硝子体腔内投与が有効であるとする報告もある3).予防としては,手術終了時にトリアムシノロンアセトニドの硝子体注射やTenon.下投与が効果的である.●術後晩期に生じるフィブリン索状物一方,術後一定期間眼底の状態が落ち着いていたにもかかわらず,晩期にフィブリン索状物をきたす症例は要注意で,多くの場合,網膜.離が再発している.眼底の透見性が良好な場合には網膜.離の有無をとらえることは容易であるが,硝子体出血や硝子体腔内のフレアが高い症例では網膜.離の検出がむずかしいこともある.このような場合には必ず超音波Bモード検査を眼底広範囲にわたって施行し,扁平な網膜.離を見落とさないように注意深く観察する.もし網膜.離を認めた場合には(67)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1術3日後のフィブリン索状物過剰なレーザー光凝固が原因と考えられる.約1週間でフィブリン索状物は消退した.(文献2より引用)図2術約6週間後のフィブリン索状物扁平な網膜再.離を併発していたため再手術を施行した.(文献2より引用)可及的速やかに再手術を施行すべきである.PDRの硝子体手術後の再.離例は早期に網膜が器質化,短縮化するので,難易度が高くなりがちである.網膜の伸展が十分に得られない場合には,網膜切開や切除を余儀なくされることも多い.●おわりにPDRに対する硝子体手術後,硝子体腔内に形成されるフィブリン索状物の発生要因について,早期のものは術前の血管透過性亢進と術中の過剰網膜光凝固,晩期のものは網膜.離の併発による眼内の血液眼関門の破綻がおもな誘因と考えられる.文献1)SebestyenJG:Fibrinoidsyndrome:Aseverecomplica-tionofvitrectomysurgeryindiabetics.AnnOphthalmol14:853-856,19822)金村萌,鈴木浩之,河本良輔ほか:増殖糖尿病網膜症術後に生じる硝子体腔内フィブリン索状物の臨床的意義.眼臨紀10:897-900,20173)WilliamsGA,LambrouFH,Ja.eGAetal:Treatmentofpostvitrectomy.brinformationwithintraoculartissueplasminogenactivator.ArchOphthalmol106:1055-1058,1988あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018227

眼瞼・結膜:ドライアイと炎症

2018年2月28日 水曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人福田憲35.ドライアイと炎症高知大学医学部眼科学講座ドライアイでは,共焦点顕微鏡検査や涙液中の起炎因子の検査をしないとわからない細隙灯顕微鏡では見えない炎症や,角結膜角結膜上皮傷害の結果生じる炎症などの関与が示唆され,炎症の抑制がドライアイの病態,自覚症状の改善に貢献する可能性がある.●はじめに日常診療において充血がみられることが少ないドライアイに炎症の関与を認識することは少ないかもしれないが,治療にステロイド点眼薬を用いることは少なくないのではないか.ドライアイにおいて,日本では眼表面の水濡れ性の低下が病態の中心で,炎症は悪循環の「結果」として生じると考えられるのに対し,欧米では涙液浸透圧の上昇とそれに伴う炎症が「原因」と考えられている.本稿では,ドライアイと炎症のかかわりについて概説する.C●細隙灯顕微鏡では見えない炎症ドライアイはさまざまな疾患を含み,Sjogren症候群のように炎症の関与が明らかな疾患もあれば,涙液層破壊時間(tearC.lmCbrake-upCtime:BUT)短縮型では一見炎症の関与がないようにみえる.しかしながらドライアイの眼表面には,角結膜上皮障害やCBUT短縮などの細隙灯顕微鏡で見える変化だけでなく,細隙灯顕微鏡では見えない異常もある.ドライアイ患者では,共焦点顕微鏡で樹状細胞の増加や形態変化,impressioncytologyで結膜上皮細胞のChumanCleucocyteCantigenCD-related(HLA-DR)の発現亢進,涙液の検査によりサイトカインやCmatrixmetalloproteinase(MMP)-9の上昇などの,細隙灯顕微鏡では見えないサブクリニカルな炎症が報告されている1,2).米国ではドライアイ診断のために涙液MMP-9の簡易測定キットが発売されている.さらにドライアイ患者では細隙灯顕微鏡で見える角結膜上皮傷害などの他覚所見と自覚症状がしばしば乖離するが,涙液中や結膜上皮の炎症性サイトカインと眼不快感・眼痛などの自覚症状の程度の相関が報告されており2),見えない炎症がドライアイの治療の標的であることが示唆される.(65)C0910-1810/18/\100/頁/JCOPY●炎症の概念の変化炎症反応は自己と非自己を識別する獲得免疫を中心に研究が始まり,ついでCToll様受容体の発見により病原微生物に対する自然免疫が解明された.さらに近年では無菌性炎症や自然炎症など,免疫や感染が関与しない炎症の概念がより広くなっている.単なる外傷でも,細胞が壊死するとCalarminと呼ばれる細胞内の起炎物質が細胞外に放出され,それを健常な細胞が危険信号(dangersignal)として感知し炎症反応が生じる.ドライアイにおいても,乾燥,摩擦や高浸透圧ストレスなどにより角結膜上皮細胞が傷害されると,alarminが放出され充血がなくてもサブクリニカルな炎症が生じていると考えられる.実際に壊死した角膜上皮細胞から放出されたalarminは,健常な角膜上皮に作用し炎症性サイトカインの産生やバリア機能の低下を引き起こす3)(図1).C●ドライアイ治療薬の抗炎症作用ドライアイ治療薬の作用機序は,保水,角膜保護剤・創傷治癒促進剤,涙液・ムチン産生促進薬,抗炎症薬などに大別される.米国で処方可能な点眼薬はシクロスポリンとClymphocyteCfunction-associatedCantigenC1(LFA-1)阻害薬でいずれも抗炎症薬である.わが国では抗炎症を作用機序として開発された治療薬はないが,ムチン産生促進薬として用いているレバミピドには,角膜上皮細胞において腫瘍壊死因子(tumornecrosisfac-tor:TNF)C-aによる炎症性サイトカインの産生やバリア破壊を抑制する抗炎症作用も有しており4,5)(図2),ステロイド点眼薬と同様に意識せずに抗炎症治療を行っている可能性がある.あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018C225ab5,000**4,000100経上皮電気抵抗(%control)IL-6産生(pg/ml)****7550**3,000**2,000**1,000025050100050100壊死細胞の上清(%v/v)壊死細胞の上清(%v/v)図1角膜上皮細胞におけるalarminによる炎症性サイトカイン産生およびバリアの低下作用壊死させた角膜上皮細胞の上清を,健常な角膜上皮細胞に添加するとCIL-6の産生が促進され(Ca),バリア機能が低下する(Cb).(文献C3より転載)C10.0a+TNF-ab*IL-6産生(ng/ml)7.5****5.02.50***TNF-a:-+レバミピド:--00.51.02.0レバミピド(mM)図2レバミピドによる角膜上皮細胞のサイトカイン産生およびタイトジャンションに対する作用++a:角膜上皮細胞に種々の濃度のレバミピドの存在下でCTNF-aを添加して培養すると,TNF-aによって誘導されたCIL-6の産生がレバミピドの濃度依存的に有意に抑制される.b:TNF-aの添加によりタイトジャンションのCzonulaoccludens-1(緑色)の発現が低下するが,レバミピドの添加により抑制される.青色は細胞核を示す.(文献C4より転載)●おわりに今後,細隙灯顕微鏡では見えない炎症を検出する診断法の開発や,抗炎症作用を有するドライアイ治療薬の登場により,ドライアイの病態における炎症の詳細がさらに解明されていくと考えられる.文献1)BaudouinC,IrkecM,MessmerEMetal:ClinicalimpactofCin.ammationCinCdryCeyeCdisease:proceedingsCofCtheODISSEYCgroupCmeeting.CActaCOphthalmol,C2017.Cdoi:C10.1111/aos.134362)NaKS,MokJW,KimJYetal:Correlationsbetweentearcytokines,Cchemokines,CandCsolubleCreceptorsCandCclinicalCseverityCofCdryCeyeCdisease.CInvestCOphthalmolCVisCSciC53:5443-5450,C20123)FukudaCK,CIshidaCW,CMiuraCYCetCa:A.CCytokineCexpresC-sionCandCbarrierCdisruptionCinChumanCcornealCepithelialCcellsinducedbyalarminreleasedfromnecroticcells.JpnJOphthalmolC61:415-422,C20174)TanakaH,FukudaK,IshidaWetal:RebamipideincreasC-esbarrierfunctionandattenuatesTNFa-inducedbarrierdisruptionCandCcytokineCexpressionCinChumanCcornealCepi-thelialcells.BrJOphthalmolC97:912-916,C20135)KimuraCK,CMoritaCY,COritaCTCetCal:ProtectionCofChumanCcornealepithelialcellsfromTNF-a-induceddisruptionofbarrierfunctionbyrebamipide.InvestOphthalmolVisSciC54:2572-2760,C2013226あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018(66)C

抗VEGF治療:抗VEGF治療実践の注意点-長期管理を目的とした水晶体再建術-

2018年2月28日 水曜日

●連載監修=安川力髙橋寛二49.抗VEGF治療実践の注意点三浦真二あさぎり病院眼科―長期管理を目的とした水晶体再建術―加齢黄斑変性(AMD)患者の大部分は高齢者であり,抗CVEGF薬の硝子体内注射治療(IV)開始時に白内障を認めることが少なくない.IV既往患者における白内障手術の施行時期については未だ統一指針がなく,判断に苦慮する施設も多いと考える.本稿では筆者の施設でのCIV既往患者白内障治療方針を紹介するとともに私見を述べる.IVと白内障手術筆者が抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialgrowthfactor:VEGF)薬の硝子体内注射治療(intravit-realCinjections:IV)既往患者の白内障手術の安全性に疑問を感じたのはC2012年頃であった.当時,lensCtrauma(水晶体損傷)の症例を除けばCIV施行後の白内障手術は安全とされていた1).だが,筆者の施設(以下,当院)での症例経験を重ねるにつれ,術中硝子体脱出,核全落下,術後眼内レンズ偏位などの合併症に遭遇することがふえていった.なお,当院では年間C1,300例のCIVを行っており,筆者は年間約C600例の手術を執刀するごく平均的な市中病院術者であることを付記しておく.IV施行時に微細なCZinn小帯断裂や水晶体.損傷が生じ,それらが白内障進行に関与していると筆者は推測した.それ以降,当院では徐々にCIV既往のある高齢の加齢黄斑変性(age-relatedCmacularCdegeneration:AMD)患者の白内障手術施行時期を早めるようになった.CIVは白内障手術合併症のリスク因子2016年,IV既往眼は白内障術中・術後合併症の発生率が高いという報告が相ついだ.Leeらは術前のCIVがC1回増すごとに後.破損のオッズ比がC1.04増加し,10回以上のCIV既往眼では後.破損はC2.59倍に達すると報告した2).また,HarnらはC20万件以上にも及ぶCMedicareデータから,IV既往眼では白内障術後に水晶体除去再手術(後.破損や核落下と同義とみなしてよいだろう)のリスクが高く,また術後に眼内炎の診断を受けるリスクも高かったことを報告した3).(63)水晶体近傍から刺入するCIV手技,治療毎の抗菌薬点眼で結膜.に耐性菌を誘導しうること4)を考慮すると,これらC2報の合理性は自明であろう.現在の治療方針―白内障手術合併症を回避するために現在,当院ではCIVが長期に及ぶと予想される高齢AMD患者に対しては,治療開始後,速やかにCIV併用白内障手術を施行している.通常の高齢CAMD治療プロトコールでは,2回目CIVが併用手術である.2回目CIVを併用手術とする理論的根拠はない.多分に術前検査などの院内オペレーション事情による.したがって,初回治療で併用手術を選択する症例ももちろん存在する(図1,2).通常,初回CIVからC2回目CIVまではC1カ月程度の間隔があるので,その間に白内障術前検査を施行する.また,IV既往眼の白内障手術合併症リスク,白内障術後のCAMD進行リスクなどを説明し,治療戦略を患者や家族と共有するのもこの期間である.IV併用白内障手術の長所最大の長所は,白内障手術の安全性が毀損されないこと,以降の水晶体損傷リスクから解放されることである.現在の治療方針に変更後,当院では前述のような白内障手術合併症も術後CIVに反応不良となった高齢AMD症例も経験していない.黄斑下血腫に対するガス血腫移動術との相性も良好である.ガス白内障の懸念からは解放され,前房深度や眼圧の管理も格段に容易である.また,光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomogra-phy:OCT)や蛍光眼底造影など,抗CVEGF治療の命綱である画像検査の画質が術後格段に向上する.眼底視認あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018C2230910-1810/18/\100/頁/JCOPY術前術翌日図1症例84歳,男性.唯一眼.偽落屑症候群による水晶体亜脱臼(上)を伴う加齢黄斑変性症で紹介受診.初回治療で水晶体超音波乳化吸引+眼内レンズ毛様溝縫着+抗CVEGF薬硝子体注射施行(下).性の改善は光線力学療法の施行に有利かもしれない.問題点と課題上記治療戦略の成否は執刀医の技量に依存する.後.破損,硝子体脱出などの術中合併症が,以後のCAMD管理に悪影響を及ぼしうることはいうまでもない.また,術後視機能の改善が期待できないことが問題であろう.当院術後成績も視力維持にとどまっており,この点は術前に強調して患者に説明する必要がある.高齢CAMD患者への眼内レンズ挿入が長期予後に及ぼす影響は今後の検討課題であり,当院でも各患者を追跡中である.一方,Zinn小帯断裂がCIV手技そのものにより生じるのであれば,早期に白内障手術を施行したところでその進行を止めることはできないはずである.われわれは将来,IV既往患者の眼内レンズ脱臼・落下と向図2図1の症例の初診時(上)および抗VEGF薬硝子体注射治療後(下)のOCT所見き合わなければならないのかもしれない.かつて,硝子体手術は白内障同時手術の誕生により安全性と術後成績が飛躍的に向上し,長足の進歩を遂げた.今後,高齢CAMD患者に対するCIV併用白内障手術は有力な治療オプションとなるであろう.その適応,年齢,施行時期など,かつての硝子体手術と同様の議論が待たれるところである.文献1)RosenfeldP,ShapiroH,EhrlichJetal:CataractsurgeryinCranibizumab-treatedCpatientsCwithCneovascularCage-relatedmaculardegenerationfromthephase3ANCHORandCMARINACTrials.CAmCJCOphthalmolC152:793-798,C20112)LeeA,DayA,EganCetal:Previousintravitrealtherapyisassociatedwithincreasedriskofposteriorcapsulerup-tureCduringCcataractCsurgery.COphthalmologyC123:1252-1256,C20163)HahnCP,CYashkinCA,CSloanCF:E.ectCofCpriorCanti-VEGFCinjectionsontheriskofretainedlensfragmentsandendo-phthalmitisaftercataractsurgeryintheelderly.Ophthal-mology123:309-315,C20164)KimCSJ,CTomaCHS:AntimicrobialCresistanceCandCophthal-micantibiotics:1-yearresultsofalongitudinalcontrolledstudyCofCpatientsCundergoingCintravitrealCinjections.CArchCOphthalmolC129:1180-1188,C2011224あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018(64)

緑内障:器具を留置しない流出路再建術

2018年2月28日 水曜日

●連載212監修=岩田和雄山本哲也212.器具を留置しない流出路再建術庄司信行北里大学医学部眼科眼内から行われる流出路再建術のうち,器具を留置しない術式,すなわちトラベクトームやフック,糸などを用いた切開術について簡単に述べる.これらの術式においては,術前の隅角の確認と術中の隅角鏡の操作が重要なポイントである.また,カテーテルを用いたCSchlemm管拡張術であるCabinternocanaloplastyについても少し触れる.C●トラベクトーム手術ハンドピースの先端のフットプレートをCSchlemm管に刺入し,フットプレートの手前にある電極から発生するプラズマで線維柱帯を切開する術式である.フットプレートは絶縁処理がされているので,Schlemm管に開口している集合管は傷つけず,線維柱帯を帯状に切開できることが特徴である(図1,2).海外では切開でなく切除,つまりCtrabeculectomyCabCinternoとよばれることも多い.1.7Cmmの角膜小切開創からハンドピースの先端を前房内に挿入し,対側の線維柱帯を隅角鏡で確認しながらC120°程度切開する.灌流により前房を維持し,切開時に生じる逆流性出血を吸引しながら行うことができる.これまでの報告では,術前の眼圧にかかわらず,術後16~7CmmHg程度で安定し,点眼スコアはC1~2減る程度とされている1,2).なお,これまで落屑緑内障の成績は良好であったが1),4,5年経過すると眼圧が再上昇する症例も多く,線維柱帯というフィルターがなくなることによって,直接CSchlemm管内部や集合管に落屑物質図1トラベクトーム:切開前これから刺入し切開する線維柱帯に,フットプレートを押し当てているところ.(61)0910-1810/18/\100/頁/JCOPYが沈着し,眼圧が上昇する可能性も否定できない.本術式は,装置本体やハンドピースなどのディスポ部分が高価であることが難点である.C●Kahookdualhook先端部分の両サイドにC2枚の刃を付けたことで,トラベクトーム手術と同様に帯状に幅広く切開することが可能となった(図3).灌流ポートがないため逆流性出血で視認性が悪くなりやすいので,粘弾性物質で十分に前房を形成しておく必要がある.成績はトラベクトームとの比較試験でほぼ同等と報告されている3).Schlemm管への刺入も比較的容易だが,Schlemm管の内腔(幅や奥行き)が狭い症例では,フックが引っかかって切開しにくい場合もある.ディスポーザル製品である.C●谷戸氏abinternoトラベクロトミー・マイクロフック(マイクロフック)フックの先端の形状は図4のようになっていて,Sch-図2トラベクトーム:切開中正面から左に向かって切開したあと,フットプレートの向きをC180°回転させて右側を切開しているところ.切開開放されたCSchlemm管の内壁が白く見えている.あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018C221図3Kahookdualbladeによる線維柱帯の切開長靴のような先端部分が観察できる.線維柱帯は幅広く切開できている.Schlemm管の内壁にところどころ逆流性出血がみられるが,おそらく集合管の開口部と思われる.lemm管に刺入して線維柱帯を切開する.ストレートタイプと左右向きのアングルドタイプの計C3種類あり,切開部位に応じて選択することで隅角の半周以上の範囲を切開できる.Tanitoらの報告4)によれば,術前C26CmmHgが術後C15CmmHg前後に下降している.マイクロフックはリユーザブルであり,コストパフォーマンスは高い.C●360°スーチャー・ロトミー眼外から行う方法も知られているが,眼内から行う方法はCGroverら5)によってCgonioscopy-assistedCtranslu-minalCtrabeculotomy(GATT)として紹介された.粘弾性物質で前房を満たして行うが,逆流性出血のために視認性が悪くなったり,眼内の操作がむずかしく,全周通糸できず,何回かに分けて切開していく場合もある.Satoら6)は,19.4CmmHgから術後半年でC13.8CmmHgに下降し,点眼も約C2剤程度減らすことができたと報告している.C●abinternocanaloplasty(ABiC)以前,強膜弁下からカテーテルをCSchlemm管に通し,一周してCSchlemm管の反対の断端から出てきた先端に糸(9-0やC10-0プロリン糸)を結びつけ,引き戻して糸を留置する方法(canaloplasty)が知られていたが,糸の代わりに粘弾性物質を残しておいても,Schlemm管が拡張し,同様の眼圧下降効果が得られると報告されている.この方法を眼内から行うようにしたのがCABiCであり2,7),カテーテル刺入部以外はCSchlemm管を切開せず,Schlemm管と集合管の拡張による流出量の増加をめざした術式であるため,流出路再建術という言葉にもっとも近い術式かも知れない.わが国ではまだ導入されていないが,海外での報告は比較的良好である2,8).他222あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018図4谷戸式abinternoトラベクロトミー・マイクロフックの先端部先端部をCSchlemm管に刺入して,線維柱帯を切開する.(Inami&Co.,Ltdのホームページより)の術式と異なり,カテーテルの挿入部位を変えれば何度も施行できるし,Schlemm管や集合管の拡張が得られるのであれば,他のCminimallyCinvasiveCglaucomaCsur-gery(MIGS)を追加で行ってその効果を高められる可能性もあるだろう.C●器具を留置しない術式の問題点単純に考えれば,広い範囲でCSchlemm管を開放したほうが眼圧はより低く保たれるように思われるが,術後眼圧は線状切開の術式とあまり変わりないように思われる.また,実際には周辺虹彩前癒着(peripheralanteri-orsynechia:PAS)が生じやすく,切開部位が閉じたり閉塞する可能性もある.線状切開か帯状切開か,あるいは拡張だけでよいのか,長期的な観察が必要だろう.文献1)ShojiCN,CKasaharaCM,CIijimaCACetCal:Short-termCevalua-tionCofCtrabectomeCsurgeryCperformedConCJapaneseCpatientswithopen-angleglaucoma.JpnJOphthalmolC60:C156-165,C20162)FrancisCBA,CAkilCH,CBertCBB:AbCinternoCSchlemmC’sCcanalsurgery.DevOphthalmolC59:127-146,C20163)SeiboldCLK,CSoohooCJR,CAmmarCDACetCal:PreclinicalCinvestigationCofCabCinternoCtrabeculectomyCusingCaCnovelCdual-bladedevice.AmJOphthalmol155:524-529,C20134)TanitoCM,CSanoCI,CIkedaCYCetCal:Short-termCresultsCofCmicrohookCabCinternoCtrabeculotomy,CaCnovelCminimallyinvasiveCglaucomaCsurgeryCinCJapaneseCeyes:initialCcaseCseries.ActaOphthalmolC95:e354-e360,C20175)GroverDS,GodfreyDG,SmithOetal:Gonioscopy-assist-edCtransluminalCtrabeculotomy,CabCinternoCtrabeculotomy.COphthalmologyC121:855-861,C20146)SatoT,HirataA,MizoguchiT:Outcomesof360°Csuturetrabeculotomywithdeepsclerectomycombinedwithcata-ractCsurgeryCforCprimaryCopenCangleCglaucomaCandCcoex-istingCcataract.CClinicalCOphthalmologyC8:1301-1310,C20147)KhaimiCMA:Canaloplasty:ACminimallyCinvasiveCandCmaximallyCe.ectiveCglaucomaCtreatment.CJCOphthalmolC2015:485065,C2015(62)

屈折矯正手術:SMILEとドライアイ

2018年2月28日 水曜日

監修=木下茂●連載213大橋裕一坪田一男213.SMILEとドライアイ戸田郁子南青山アイクリニックSMILEはフラップを作製しない新しいレーザー屈折矯正手術で,LASIKに比較して角膜垂直切開の長さが10%程度であるため,術後ドライアイが少ない可能性が示唆されている.過去の報告や自験例より,LASIKに比較して術後のドライアイ症状が少なく,ドライアイ関連他覚所見が良好であることが証明された.●はじめにレーザー角膜屈折矯正手術はもっとも普及した屈折矯正手術であるが,第一世代のCphotorefractiveCkeratec-tomy(PRK)では,上皮.離に伴う術後の易感染性,疼痛,一時的視力不良,上皮下混濁など,第二世代のLASIK(laserinsitukeratomileusis)では,フラップ関連合併症〔不完全フラップ,上皮迷入,di.uselamellarkeratitis(DLK),ドライアイなど〕が課題であった.第三世代であるCsmall-incisionClenticuleCextraction(SMILE)は,フラップレス手術として,フラップ関連合併症を回避できる可能性が考えられる.LASIK後のドライアイは術後C1カ月程度の一時的合併症であるが,術後の不快な症状や視機能低下に伴う満足度低下を起こすため,できるだけ避けたい合併症である.また,術前LASIK図1LASIKとSMILEa,c:LASIKとCSMILEの角膜垂直切開の長さの差.SMILEはCLASIKのC10%程度である.Cb,d:術後C1日目のCLASIK眼(b)とSMILE(d)の前眼部所見.LASIK眼でのみフルオレセイン染色が認められる.からドライアイがあると長期化,重症化することがある.C●術後ドライアイの比較LASIK後のドライアイ発症のメカニズムには,複合要因が関与しているとも考えられているが,主因はフラップ作製時の角膜内神経切断による神経麻痺性効果と推測されている.SMILEはフェムトセカンドレーザーを用いて作製したレンチクル(矯正度数に応じた角膜実質片)を,3Cmm程度の小さい切開層から摘出する屈折矯正手術である.LASIKに比較して角膜の垂直切開の長さが約C90%少ない(図1).このため,LASIKに比較してドライアイが発症しにくい可能性が示唆され,SMILEの臨床応用直後からすでに多くの比較検証が行われている.術後ドライアイについてのCLASIKとCSMILEの比較SMILE(59)あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018C2190910-1810/18/\100/頁/JCOPY表1LASIKとSMILEの術後ドライアイ比較ドライアイの症状CSMILEvsLASIKSMILE術後症状(乾く)BUTSchirmerテストフルオレセイン染色角膜知覚S>L(1カ月)S>L(1日,1週,1カ月,3カ月)S>L(1カ月,3カ月)S>L(1週)S>L(1カ月,3カ月)悪化なしC低下なし低下なし1日のみ増加1カ月のみ低下S>L:SMILEがCLASIKに比較して優位SMILEで影響される上皮下神経叢角膜内神経図2角膜内神経分布a:角膜輪部から侵入した神経束から垂直方向に分枝し,上皮化神経叢を形成する.Cb:LASIKとCSMILEでの角膜垂直切開で影響される角膜内神経.このほか,矯正に伴う実質切除によって,両方法とも同程度に角膜内神経に影響すると推測される.に関しては,2017年C9月現在,3報のメタアナリシスが報告されている1~3).これらは最大C186件の関連論文をシステマティックレビューしたもので,そのC3報の結果をさらに総合してみると,術後ドライアイ症状,涙液層破壊時間(tearC.lmCbreak-upCtime:BUT),角膜知覚,角膜内神経密度において,SMILEがCLASIKよりもドライアイの観点から優位と結論された.筆者は,筆者らの施設において同時期に施行したLASIKとCSMILEの術後のドライアイを評価した.対象はCLASIKがC72人C131眼(28.8C±7.2歳,C.3.91±1.88D)SMILEがC58人C114眼(29.9C±6.9歳,C.4.53±1.38D),である.結果を両方法の比較とCSMILE術前後の比較として表1にまとめた.両方法の比較では,術前と術後の症状(乾く),BUT,Schirmerテスト,フルオレセイン染色スコア,角膜知覚のすべての検査所見において,SMILEがCLASIKに比較して,術後ドライアイの観点から優位であることがわかった.また,SMILE術後において,角膜知覚の低下はあるものの,臨床的なドライアイは発症しないことがわかった.C●推測されるメカニズム角膜内への神経分布は,三叉神経第一枝(眼神経)か220あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018らの知覚神経分枝(鼻毛様体神経)が角膜輪部にて角膜周囲に輪状神経叢を形成し,そこから伸びたC70~80本の神経束が強膜深層か角膜実質内のC1/3前方より角膜内に侵入し,実質内神経叢を形成しつつ放射状に中央へと向かう.その過程で垂直方向に向かう枝がCBowman膜を貫いて上皮基底膜下で上皮下神経叢および上皮内神経叢を形成する4).ConfocalCmicroscopeにて観察したLASIK後の角膜では,垂直方向の切断によって実質内神経叢や上皮下神経叢が切断され,神経密度は術後に極端に減少することが報告されている5).一方,SMILE術後では,この垂直断の長さがCLASIKのC10%程度であることから,残存神経が多いことが推測される.実際,LiらはCSMILE後とCLASIK後の角膜内神経密度を比較したところ,術後C1週間では,LASIKでは術前のC1%未満となるのに対し,SMILEではC30%程度であることがわかり,この差が術後のドライアイの程度差と関連していると推測している5).C●おわりにSMILE術後ではドライアイは発症しないことがわかった.したがって,術前よりドライアイがあるなど,術後ドライアイが懸念される患者ではCSMILEはよい適応であると考えられる.文献1)ShenZ,ZhuY,SongXetal:DryeyeaftersmallincisionlenticuleCextraction(SMILE)versusCfemtosecondClaser-assistedinsitukeratomileusis(FS-LASIK)formyopia:Ameta-analysis.PLoSOneC11:e0168081,C20162)CaiWT,LiuQY,RenCDetal:Dryeyeandcornealsen-sitivityaftersmallincisionlenticuleextractionandfemto-secondClaser-assistedCinCsituCkeratomileusis:aCmeta-anal-ysis.OphthalmolC10:632-638,C20173)KobashiCH,CKamiyaCK,CShimizuCK:DryCeyeCafterCsmallCincisionClenticuleCextractionCandCfemtosecondClaser-assist-edLASIK:Meta-analysis.CorneaC36:85-91,C20174)MullerCLJ,CMarfurtCCF,CKruseCFCetCal:CornealCnerves:Cstructure,CcontentsCandCfunction.CExpCEyeCResC76:521-542,C20035)LiCM,CNiuCL,CQinCBCetCal:ConfocalCcomparisonCofCcornealCreinnervationCafterCsmallCincisionClenticuleCextraction(SMILE)andCfemtosecondClaserCinCsituCkeratomileusis(FS-LASIK).PLoSOneC8:e81435,C2013(60)

眼内レンズ:白内障手術中の粘弾性物質の動態

2018年2月28日 水曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋375.白内障手術中の粘弾性物質の動態鈴木久晴日本医科大学武蔵小杉病院白内障手術中の角膜内皮保護において,粘弾性物質(OVD)の使用は必須といえる.OVDにはいくつか種類があるが,その性質を把握しておくことは重要である.しかし,OVDは無色透明であり,前房内の動態を把握することは困難である.そこで,今回筆者らは,実験的に豚眼を用い,OVDを黄色に染色して細隙灯顕微鏡を用いて,その動態を観察した.●SlitSideViewの開発(図1)現在の白内障手術は安全性が非常に高く,合併症が生じることは少なくなっている.しかし,術中に角膜内皮が障害されることによって生じる水疱性角膜症は,さらなる加療が必要とされる大きな合併症であることに変わりはない.そこで,角膜内皮細胞を保護するために,術中に粘弾性物質(ophthalmicviscosurgicaldevice:OVD)を前房内に滞留させることは有用であると考えられている.しかし,OVDは無色透明であり,また手術用顕微鏡は正面から観察しているため,前房におけるOVDの残存状況と動態を把握することはむずかしい.そこで,まずOVDをフルオレセインで染色・可視化し,摘出豚眼を用いて,細隙灯顕微鏡にて術中OVDの動態を観察する方法を開発した.筆者らは,この方法をSlitSideView(SSV)と名付けた.●凝集型OVD(図2)凝集型OVDはペダルを踏み,吸引をかけてからわずか数秒で灌流液がOVDと角膜内皮細胞の間に入り込み,前房内から吸引除去されてしまった.よって,凝集型OVDは角膜内皮保護作用が弱いと考えられる.しかし,眼内レンズ挿入時の水晶体.の空間保持などにおいては,むしろ吸引除去しやすいほうが有用と考えられるため,一時的な空間保持能が必要な場合は有用であるといえる.●分散型OVD(図3)分散型OVDは吸引をかけた瞬間にチップの周りからすぐに吸引除去されたが,角膜内皮側に接着したOVDは吸引されなかった.そして時間がたつにつれ,角膜内皮に接着したOVDが前房側へ垂れ下がって吸引され,網目状にOVDが残存している状況も観察された.この結果により,臨床上,核片や空気がトラップされやすい(57)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1SSVの実験画像術中の前房内の状態を詳細に観察できる.ことが視覚的に理解できる.また,灌流液が流れていくことによって,OVDが次第に削り取られるように吸引除去されることもわかった.よって,トラップされた核片などは,灌流液の流れの方向をうまく利用して処理することが,角膜内皮に侵襲を与えない方法として有用であると考えられた.●ソフトシェルテクニック(図4)上記のように分散型OVDは核や空気をトラップしやすく,単独で使用すると術中の視認性が落ちてしまうことを経験する.そこでArshino.が提唱した,分散型OVDを注入後に凝集型OVDを注入するソフトシェルテクニック1)を検証した.吸引をかけた瞬間にやはり凝集型OVDは吸引除去されてしまうが,分散型OVDは長い時間,ある一定の厚みをもって角膜内皮に接着してあたらしい眼科Vol.35,No.2,2018217いた.よって,ソフトシェルテクニックは視認性を確保するのと同時に,角膜内皮保護作用に優れていることが視覚的にも実証された.●おわりにSSVは術中のOVDの動態を把握するために優れた方法であると考えられた.機械のセッティングや術式の評図2凝集型OVDa:吸引をかける前,b:吸引をかけて数秒後.図上の白線で示したXY軸スケールの単位はmm,他の写真も同様図3分散型OVDa:矢状断面,b:横断面.図4ソフトシェルテクニックa:矢状断面,b:横断面価など,今後もさまざまな評価に有用である可能性が示唆された.文献1)Arshino.SA:Dispersive-cohesiveviscoelasticsoftshelltechnique.JCataractRefractSurg25:167-173,1999

コンタクトレンズ:屈折検査(自覚検査)

2018年2月28日 水曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方さらなる一歩監修/下村嘉一40.屈折検査(自覚検査)●はじめに自覚屈折検査は,遠見視力検査(5Cm)に提示した視力検査視標(おもにCLandolt環)注視時の自覚的応答から屈折値を測定する検査法である.視力検査は眼科検査においてもっとも社会的認知の高い,眼科検査を象徴する検査である.それゆえ,視力検査装置,検査法および評価法について,改めて考える機会が少ない.今回は患者満足度の高いコンタクトレンズ処方をめざして,自覚的屈折検査について改めて紹介する.C●目標と限界自覚屈折検査の目標は球面度数,円柱レンズ度数ともに完全屈折矯正を行うことである.しかしながら,矯正レンズを交換しながら患者の自覚的応答から屈折度を測定する検査法であり,乳幼児や姿勢維持が困難な患者においては,他覚的屈折検査値を含めて総合的に判断する必要がある.矯正精度はC0.25D(矯正レンズの最小単位)であり,乱視軸に関してC5°である.矯正精度に関して,検査中の調節の揺らぎと頭位の変動を勘案すると,矯正精度C0.25D,乱視軸C5°は妥当と考えられ,自覚的屈折検査の精度限界と考えられる.C●検査の流れ自覚的屈折検査は,調節の介入をできる限り抑えることに最大限配慮して行われる.調節の介入を常に考え,原則として最良視力が得られるもっともプラス(凸)レンズ寄りのレンズを自覚的屈折値として評価することはもちろん,レンズ交換中にも凸レンズを交換する際には,次に挿入する凸レンズを重ねてから交換前のレンズを抜き,凸レンズを装用するなど,検査手技の細部にまで調節の介入の除去を徹底する.調節力の強い若年者においては,調節の介入の除去を目的に雲霧法を行う.これは,凸レンズ(加入度数は施設によって異なるが,+2~3Dが一般的である)を付加して焦点を網膜面より前方に移動させ,調整の介入ができない状態にしてから,(55)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY半田知也北里大学医療衛生学部視覚機能療法学①②③④⑤図1乱視矯正(直乱視)における焦点位置のイメージ凸レンズを漸減させてもっとも凸レンズ寄りの屈折値を求める手法である.乱視矯正には,乱視表を用いる雲霧法(予測する乱視量のC1/2相当の凸レンズを加える)とクロスシリンダー法がある.雲霧法は,乱視量が小さい場合(乱視量C1.5D未満を目安)には雲霧下においても乱視表を視認できるため自覚応答を求めやすく,クロスシリンダー法は,乱視量が大きい場合(乱視量C1.5D以上を目安)に患者の自覚応答を求めやすい.いずれの乱視矯正法を行う場合においても,患者の乱視の光学的状態(前焦線,最小錯乱円,後焦線,と網膜位置)をイメージし(図1),乱視量と被検者の応答の状況から判断して乱視矯正法を選択することが必要である.乱視矯正を行った後に,矯正精度の正確性を確認することを目的に球面レンズの微調整を行い,最良視力を得られる凸レンズ寄りのレンズを自覚的屈折値として評価する.調節の介入を防ぐことは調節緊張の予防の観点から重要であるが,いたずらに凸レンズ寄りの矯正(低矯正)を行い過ぎることも,患者の見え方の向上の観点から望ましくない.自覚屈折検査においては適矯正(適切な屈折矯正)を念頭に,調節には揺らぎがあることも十分に考慮して,視力値,屈折値,患者の自覚応答を総合的に判断して決定するべきである.実際のコンタクトレンズ矯正において,自覚屈折検査あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018C215両眼開放下(左眼)片眼遮閉下(左眼)図2両眼開放下と片眼遮閉下の瞳孔径変化両眼開放下と比較し,片眼遮閉下では明らかな瞳孔散大が認められる.では乱視矯正されるにもかかわらず,球面矯正のみの処方選択が多い1).これには経済的な問題,処方の問題,装用感の問題などさまざま考えられるが,患者の見え方の質の向上の観点から,乱視矯正(乱視用コンタクトレンズ)の必要性を改めて考える必要がある.C●おわりに自覚的屈折検査(視力検査)は通常,自然瞳孔で測定することが原則とされ,散瞳薬などの点眼後はピンホール装用にて測定される2).通常の視力検査においては,遮閉板で非測定眼を遮閉することで非遮閉眼の視力測定が行われる.しかしながら,日常臨床において,この片眼遮閉が瞳孔径の散大を起こすことを意識することは少ない.この瞳孔散大効果には個人差があるが,約C3割程度の瞳孔散大が認められる3)(図2).自覚的視力・屈折検査結果において瞳孔径の寄与は大きく,瞳孔径の散大による焦点深度の低下,収差の増大により,自覚屈折度数の増大,すなわち調節の介入(過矯正の恐れ)が懸念される.これまでの臨床研究において片眼遮閉下での自覚屈折値は,両眼開放下での自覚屈折値に比べて平均0.25D(最大でC1.0D)の過矯正が報告されている4).自覚的屈折検査において,調節介入の除去に配慮するうえで,瞳孔径の影響は無視できない.両眼開放下自覚屈折検査には,片眼に凸レンズ,もしくはすりガラスを装用する方法,両眼分離下で片眼のみに視力表を提示する方法などがある.日常視は両眼開放下であり,両眼開放下で各眼の自覚屈折矯正を行うことが望ましい.今後,患者の日常視における適矯正を行う観点から,両眼開放下の自覚的屈折検査の重要性について改めて考える必要がある.文献1)MorganPB,WoodsCA,TranoudisIGetal:InternationalcontactClensCprescribingCinC2016.CContactCLensCSpectrumC32:30-35,C20172)所敬:屈折異常とその矯正改訂.第C4版,p43,金原出版,C20043)KawamoritaCT,CUozatoCH:NaturalCpupilCsizeCandCocularCaberrationCunderCbinocularCandCmonocularCcondition.CJComputSciSysBiolC7:15-19,C20144)KobashiH,KamiyaK,HandaTetal:Comparisonofsub-jectiveCrefractionCunderCbinocularCandCmonocularCcondi-tionsinmyopicsubjects.CSciRepC5:2606,C2015CPAS102

写真:角膜穿孔に対する羊膜移植

2018年2月28日 水曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦405.角膜穿孔に対する羊膜移植難波広幸山形大学医学部眼科学講座図2図1のシェーマ①羊膜スタッフ部②羊膜カバー③C10-0ナイロン糸で縫着C図1角膜穿孔に対する“Pleatsfold”法での羊膜移植羊膜スタッフ部の表面をさらに羊膜でカバーし,術後の上皮進展を促す.図3術前金属片が右眼角膜周辺部に刺入し,前房に達していた.図4術後3カ月充.羊膜は器質化し,10-0ナイロンを抜糸して矯正視力C1.0が得られた.(53)あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018C2130910-1810/18/\100/頁/JCOPY角角膜穿孔は細菌,真菌などの感染症のほか,Mooren潰瘍などの炎症性疾患や外傷など多彩な原因によって起こりうる.いずれにしても重篤な視力障害や眼球構造の破綻を引き起こしうるため,恒常性維持のためには迅速な治療を要する.感染の場合,抗菌薬,抗真菌薬での治療で不十分という局面であれば,治療的角膜移植を検討する.感染以外の場合,疾患によっては全身投与も含めた消炎が必要になることもある.そのうえで穿孔創が小さければソフトコンタクトレンズ装用,生体接着剤などが適応となる.直接縫合は裂創の閉鎖には有効であるが,円孔や不整な創では乱視の励起が大きい.角膜移植は最終的な治療法であるが,感染や拒絶反応のリスク,構造の脆弱化,乱視の励起など問題は多い.羊膜移植は上皮化の促進,眼表面炎症の鎮静化などの目的で使用するほか,角膜潰瘍・穿孔において角膜実質厚を補.するのに有用と報告されている.移植された羊膜は炎症を起こさず,実質内に生着する1).Rodriguez-Aresらは径C1.5Cmm未満の角膜穿孔の治療において羊膜移植の有効性を示唆しているが,径C1.5Cmm以上の創では閉鎖率がC40%程度であった2).Hanadaらの報告3)にあるように,穿孔創に細切した羊膜を充.し,シート状羊膜で上皮化を促す方法が行われているが,大きい創では充.がむずかしい.一方,筆者らは以前に“Pleatsfold”法を用い,より大きい創でも閉鎖が得られることを報告している4).症例はC61歳,男性.電動草刈り機での作業中に,右眼に異物が飛入して近医眼科を受診した.当院紹介受診時,小金属片が右眼角膜の鼻側周辺部に刺入し,前房に達していた.緊急手術で異物を抜去し,羊膜移植を行った.穿孔創は長径C2.2Cmm,10-0ナイロン糸をC2針並列に通糸し,“PleatsCfold”法で閉鎖した.術後C3カ月で抜糸を行い,矯正視力C1.0が得られた.ケラトメトリーでの円柱度数も術後C1カ月ではC12D以上あったが,その後抜糸を行って術後C3カ月でC3.00D,6カ月でC1.75Dと経時的に軽快した.角膜穿孔に対する羊膜移植術は,瘢痕性混濁を残すため適応が周辺部に限られるものの(一時的閉鎖の場合,また視力を鑑みない場合は中央部へも可),治療のオプションとして有用である.“Pleatsfold”法は径C1.5Cmm以上の大きい創にも対応が可能であり,筆者らが報告したC6例(長径C0.7~2.7Cmm)では,すべてで穿孔創の閉鎖が得られた4).周辺部の角膜移植は惹起乱視が大きいことを考慮すると,確実な創閉鎖と術後視力を両立させるうえで,羊膜移植術は有効と考える.しかし,2014年に保険適用となって以降,羊膜移植術の施行施設は減少し,とくに緊急手術に対応可能な施設は羊膜バンクをもつ施設とその近隣に限られる.羊膜は穿孔創閉鎖のほかにも,再発翼状片や瞼球癒着の再建,遷延性角膜上皮欠損での上皮進展の促進などでも使用する.医療材料として非常に有用であるため,今後,再び多くの施設で使用できるようになることを望む.文献1)ConnonCJ,NakamuraT,QuantockAJetal:Thepersis-tenceCofCtransplantedCamnioticCmembraneCinCcornealCstro-ma.AmJOphthalmolC141:190-192,C20062)Rodriguez-AresCMT,CTourinoCR,CLopez-ValladaresCMJCetal:MultilayerCamnioticCmembraneCtransplantationCinCtheCtreatmentCofCcornealCperforations.CCorneaC23:577-583,C20043)HanadaCK,CShimazakiCJ,CShimmuraCSCetCal:MultilayeredCamnioticCmembraneCtransplantationCforCsevereCulcerationCofthecorneaandsclera.AmJOphthalmol131:324-331,C20014)NambaCH,CNarumiCM,CNishiCKCetCal:”PleatsCfold”tech-niqueCofCamnioticCmembraneCtransplantationCforCmanage-mentofcornealperforations.CorneaC33:653-657,C2014