三次元組織再生が描く再生医療の未来“細胞”ではなく,“機能する臓器・器官”を再生する「形には意味がある」というように,臓器・器官における多種類の細胞の機能的な配置は,進化により達成された効率的,かつ不可欠な構造です.たとえば,神経細胞は脳を形成する重要な細胞ですが,認知や記憶といった機能の発現は,神経細胞が互いに構築するネットワーク回路や周辺細胞との相互作用が担っています.こうした緻密で立体的な組織構造を生体外で再現するのが三次元組織再生技術であり,これにより生体外で器官が発生するプロセスを連続的に観察することができます.多能性幹細胞を三次元培養すると,自己組織化とよばれる現象により,生体外で細胞が増殖・分化し,脳の一部や眼杯の一部を自律的に形成します1).これまで,複雑な立体構造を人為的な細胞操作により組み立てることは不可能とされていたため,自己組織化による三次元組織再生は,まさに“生命の神秘”である器官形成の仕組みを明らかにする手法です.器官形成メカニズムを応用した三次元組織再生により得られる組織は,生物がもつ発生プロセスを再現し,周辺細胞との相互作用を含めた分化誘導が行われるため,より生物学的に近い目的細胞を含むと考えられ,詳細な疾患モデルの確立に役立つとされています.眼科の領域ではどうでしょうか眼科学は,組織再生医学のトップランナーです.角膜上皮や口腔粘膜上皮をシート状に培養して移植する再生シート医療はすでに臨床に貢献しており,iPS細胞から誘導した網膜色素上皮シート移植の臨床応用も大きなニュースとなっています.基礎研究においても,二次元,三次元で自己組織化のメカニズムを利用して再生された眼杯や前眼部組織には,網膜の層構造や,角膜上皮,水晶体上皮が生理的に近い形で再現され,これからの臨床応用が期待されています2).涙腺の再生では,細胞を組織工学的に再配置して移植することで,周囲血管や神経を引き込んだ機能的な涙腺を再生できるなど,今後,再生医学における眼科学に期待される役割はますます大きくなっています3).今後の展望再生医学の進歩により,多能性幹細胞から臓器・器官を構成する各々の細胞への分化誘導が可能となり,誘導細胞を移平山雅敏慶應義塾大学医学部眼科学教室●細胞から二次元組織,三次元臓器再生に向けた技術開発へ●幹細胞の同定と分離●組織の再構築●臓器の再構築●ES,iPS細胞の開発一種類の細胞複数種の細胞各種幹・前駆細胞二次元的な細胞操作三次元的な細胞操作細胞シート工学周囲構造との連絡からだを構成する複数種の細胞図1再生医療における技術開発トレンド造血幹細胞移植に始まる細胞移植医療から,生体外における細胞培養シートなどの二次元組織再生技術を経て,現在の三次元組織再生技術へと連なり,それぞれの利点を生かしながら発展している.今後,アンチエイジングのための四次元組織再生技術(!?)へと進展するのかもしれない.植する治療が試みられるなかで,より移植に有利な再生組織を生み出す戦略が必要とされています(図1).移植された再生組織とレシピエント組織のネットワーク形成にかかる時間を短縮し,かつ再生範囲を大きくできるかが鍵であり,生体外でCreadytofunctionな状態に培養する三次元組織再生技術が威力を発揮します.そのためには生物学的なアプローチだけではなく,バイオマテリアルやC3Dプリンティングなどの工学を含めた集学的アプローチが発展のヒントとなるかもしれません.三次元組織再生技術に期待される“生体外で即時に機能可能な臓器を再生し,障害臓器と置き換える臓器置換再生医療”は,これからがエキサイティングな研究領域なのです.文献1)EirakuCM,CSasaiCY:MouseCembryonicCstemCcellCcultureCforCgenerationCofCthree-dimensionalCretinalCandCcorticalCtissues.NatProtocC472:51-56,C20112)HayashiCR,CIshikawaCY,CSasamotoCYCetCal:Co-ordinatedCoculardevelopmentfromhumaniPScellsandrecoveryofcornealfunction.NatureC531:376-380,C20163)HirayamaM,OgawaM,OshimaMetal:FunctionallacriC-malCglandCregenerationCbyCtransplantationCofCaCbioengi-neeredorgangerm.NatCommunC4:2497,C2013(71)Cあたらしい眼科Vol.35,No.2,2018C2310910-1810/18/\100/頁/JCOPY