特集●全身疾患と眼:これがホットなトピックス!あたらしい眼科33(7):971〜979,2016腫瘍関連網膜症ParaneoplasticRetinopathy上野真治*はじめに悪性腫瘍患者において腫瘍細胞の直接の浸潤や転移などによらず,自己免疫機序の遠隔効果によって中枢神経系に異常を生じるものを腫瘍随伴症候群(paraneoplasticsyndrome)とよぶ.病因としては神経組織に発現している蛋白が腫瘍組織に異所性に発現することにより,腫瘍組織に発現した蛋白と神経組織の蛋白がともに非自己と認識され,自己抗体が発現し攻撃を受けることによると考えられている.腫瘍随伴症候群でもっとも有名なのがLanbert-Eaton症候群で,これは腫瘍中に神経終末に発現するカルシウムイオンチャネルに対し自己抗体が出現することにより神経終末のカルシウムチャンネルが傷害され,筋肉の脱力と易疲労性が生じる.同様の機序で網膜に障害を生じるものは腫瘍関連網膜症(paraneoplasticretinopathy)とよばれる.上皮由来の悪性腫瘍により視細胞を傷害するものは癌関連網膜症(cancerassoicatedretinopathy:CAR)1),また,おもにメラノーマにより双極細胞に対する自己抗体が発現し双極細胞の機能障害を生じるものはメラノーマ関連網膜症(melanomaassociatedretinopathy:MAR)2)とよばれている.メラノーマ患者の数が多くないため,MARはCARに比べてまれな疾患である.それ以外にも,上皮由来以外の悪性腫瘍であるリンパ腫や肉腫などによる視細胞の傷害も腫瘍関連網膜症の一つとして知られている.今回は自己抗体の抗原がみつかり,筆者らのグループがその病態の解明を行っているMARを中心とした双極細胞に対する自己抗体による腫瘍関連網膜症を中心に概説する.I視細胞に対する自己抗体の出現による網膜症(癌関連網膜症,cancerassociatedretinopathy:CAR)はじめに,視細胞に対する自己抗体が発現し,視細胞の細胞死を生じるCARについて説明する.CARの原因となる疾患の中でもっとも多いのは肺癌で,この中でも小細胞癌がもっとも多い,ついで婦人科系の悪性腫瘍,乳癌,消化器癌などがあげられる.癌関連網膜症の患者の血清中に存在する自己抗体の抗原として有名なものにリカバリンがある3).それ以外にもHsp70,エノラーゼなどがある.自己抗体の抗原の種類により病状の進行速度は異なるとされている.これらの蛋白はすべてが視細胞特異的に発現しているわけではないが,なぜこれらの自己抗体が視細胞の特異的な変性を起こすかは詳細には解明されていない.症状は比較的急速に進行する夜盲と視野狭窄である.視野障害は周辺の視野から障害されていき,中心の視野のみが残る求心性の視野狭窄を呈することが多く,網膜色素変性様の視野を呈する.光を眩しく感じる光視症を訴えることも多いとされている.しかしながら初期には視力低下を認めないことが多い.これは視力が網膜の中心窩の機能であり,CARでは初期には障害されないためである.血液中の自己抗体による症状という点から,両眼に発症することが多いが,発症時期に差がみられこともある.癌が診断されてから眼症状が出ることもあるが,眼症状が先行することもある.CARが進行し周辺だけでなく中心の網膜まで障害されると,視力も著しく低下し,場合によっては視力を失うこともある.CAR診断にもっとも有用なものは網膜電図(electroretinogram:ERG)である.ERGは視細胞の障害のため,著しい振幅の減弱がみられる.光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)でも網膜外層の異常がみられ診断に有用である.OCTを用いた網膜の観察では,視細胞が障害されるタイプのCARでは,視細胞の変性により視細胞層と外顆粒層が消失する.1.症例1図1にCARの典型的な1例を示す.58歳の男性で2カ月前から急激に進行する夜盲を主訴に受診した.前医では診断がつかなかったが,症状が進行するため不安になり当施設を受診した.視力は両眼矯正1.0と悪化はなかったが,視野検査では求心性の視野狭窄であった.眼底は図1に示すように明らかな異常はみられなかった.OCTでは両眼の網膜外層が菲薄化しており,視細胞の変性所見がみられた.網膜電図でも両眼の著しい振幅の低下がありこれも視細胞の変性を示唆していた.両眼に急速に進行する視細胞変性を認めたため,CARを疑い全身の精査を行ったところ,胸部X線写真にて肺に陰影を認め,内科で精査により肺の小細胞癌と診断された.この患者は診断された時点で進行癌の状態であり,化学療法を行ったが眼科受診後6カ月後に亡くなった.このようにCARは眼症状が初発のことも多く,癌の早期発見のためには眼科での早期の診断が必要である.2.CARの鑑別診断鑑別としては遺伝性疾患である網膜色素変性などがあげられる.網膜色素変性も求心性の視野狭窄を認めるが,進行は緩徐であり,眼底検査では色素沈着や血管の狭細化がみられることにより鑑別される.また,癌がなくても自己免疫機序により視細胞障害が起きる場合を自己免疫網膜症(autoimmuneretinopathy;AIR)とよび,CAR同様の病態を起こすことが知られている.現在日本人は一生の間に約半数の人が癌になるともいわれており,癌を治療した患者も多く,急激な視細胞変性がCARなのかAIRなのかを判別することはむずかしい症例も多くある.また,それ以外に急性帯状潜在性網膜外層症(acutezonaloccultouterretinopathy:AZOOR)などの眼底所見に異常がみられず急激に視野障害を呈する疾患も鑑別にあげられる.AZOORの場合は求心性の視野をとることは少なく,若年女性に好発することから鑑別されるが,比較的に広範囲に視野障害を認めることもあり,鑑別を要する.II双極細胞に対する自己抗体の出現による網膜症(メラノーマ関連網膜症,melanomaassociatedretinopathy:MAR)双極細胞に対する自己抗体による双極細胞障害はMilamら2)によってメラノーマに付随する腫瘍関連網膜症(melanomaassociatedretinopathy:MAR)として報告された.この疾患は前述のCARとは異なり,とくにメラノーマの患者に多く発症することが知られており,他の癌に伴って発症することはまれとされている.症状はCARと同様に両眼の夜盲と光視症が主である.視力は保たれていることが多く,眼底所見やOCTで異常がみられないため診断がむずかしい.CARの場合とは異なり,OCTでは双極細胞の存在する内顆粒層の変化はとらえにくいため,OCTでは診断はできない.診断は網膜電図によって行われる.通常の網膜電図を記録すると,視細胞の電位が正常で双極細胞の電位が障害されているため,視細胞の電位であるa波は正常だが,双極細胞由来のb波の振幅が減弱し,陰性型ERGとよばれる特殊な波形になる(図2).CAR同様に全身のメラノーマがみつかる前からMARの症状が発症することも多い.MARはCARと異なり進行して失明することはほとんどない.MARがまれな疾患であることに加え,メラノーマ自体が欧米に比べ日本人では頻度が低いことから,日本での報告は限られている.1.MARの患者の自己抗体の抗原として報告されたtransientreceptorpotentialmelastatin1(TRPM1)MARの抗原は最近まで同定されておらず,なぜ双極細胞に対する自己抗体がメラノーマという限られた癌に伴って生じるのか謎であった.双極細胞は大きく2つに分類され,光刺激により脱分極するものをON型双極細胞,過分極するものがOFF型双極細胞とよばれている.最近MARの抗原の1つがtransientreceptorpotentialmelastatin1(TRPM1)という陽イオンチャンネルであることがわかり,病態の解明が進んできた.TRPM1は当初メラノサイトに発現する蛋白として1998年にDuncan4)らによって報告された.その後,このTRPM1が網膜のON型双極細胞の陽イオンチャンネルそのものであることが証明された5,6).さらに双極細胞の機能不全を呈する遺伝性疾患の原因遺伝子の一つであり7),TRPM1がON型双極細胞の機能に必須な蛋白であることがわかってきた.ヒトではTRPM1遺伝子に異常があっても皮膚などのメラノサイトの異常は報告されてないが,この遺伝子変異のあるウマでは夜盲と皮膚の異常があることが報告されている.このようにTRPM1がメラノサイトとON双極細胞に発現することから,MARの原因抗原であることが推察され,筆者らともう一つのグループにより,MAR患者の血清からTRPM1に対する自己抗体が検出されたという報告がなされた8,9).筆者らのグループはWesternblotを行い,患者血清中にTRPM1に対する自己抗体の有無を検討した.欧米人でMARと診断された患者26人中,2人の血清中にTRPM1に対する自己抗体があることを報告した9).IIIメラノーマ以外による双極細胞機能障害筆者らはメラノーマではなく肺の小細胞癌に付随して抗TRPM1抗体を発現し双極細胞の機能障害を引き起こす症例に遭遇した.メラノーマだけでなく未分化な癌はTRPM1を発現する可能性もあり,MAR同様の症状を呈する可能性が示唆された.1.症例2症例は69歳の男性で両眼の急激な夜盲と光視症を主訴に来院.視力は矯正右眼0.9,左眼0.6であった.視野は全体的な感度低下を示していた.眼底所見やOCTでは異常を認めなかった(図2).ERGの検査の結果は図2に示すように陰性型を示し,双極細胞の機能障害を示していた8).所見からMARを疑い全身の検索を行ったがメラノーマは検出されず,精査にて肺に小細胞癌がみつかった.図2に示すようにWesternblotでTRPM1に対する自己抗体の検索にて,この患者血清には抗TRPM1抗体が存在していた9).患者は肺癌の治療を行い3年が経過しているが,再発もなく経過良好である.しかしながら眼所見やERGに変化なく,夜盲は持続したままである.IV抗TRPM1抗体の自己抗体の作用機序腫瘍関連網膜症の作用機序は不明な点が多い.CARにおいてはOCTなどで視細胞層が菲薄化することから,視細胞に対する自己抗体が視細胞を傷害し視細胞の変性を引き起こすと考えられるが,MARにおいては結論が得られていない.MARと診断された患者の剖検眼からは,組織では内顆粒層の変性がみられたという報告と,異常がみられなかったという報告がある.現在のOCTの精度ではON型双極細胞の形態まではみることができないので,ON型双極細胞が変性を起こしているのか,それとも変性は生じていないが機能低下しているのか判定できない.1.患者血清のマウス網膜に対する作用そこで筆者らは,TRPM1に対する自己抗体をもつ患者の血清をマウスの硝子体内に投与し,患者血清中の抗TRPM1抗体のマウス網膜に対する作用機序を検討した10).実験は正常マウスと遺伝子改変TRPM1欠損マウスに,前述した患者もしくは正常者の血清を硝子体内に投与しERGと組織にて評価を行った.マウス硝子体内に血清投与後3時間では,正常者の血清を投与したものでは異常はみられなかったが,患者の血清を投与した正常マウスでは,ERGが患者自身の波形と同様に陰性型となった.これは患者と同じくこのマウスが双極細胞の機能不全を示していると考えられた.また,組織学的検討では,図3の矢印で示されるように患者の血清を投与されたマウスでは5時間後に内顆粒層の視細胞寄りに位置する部位にトルイジンブルー染色で核の濃染が多数みられた(図3b➡).これは透過型電子顕微鏡で確認すると図3hの星印に示されるように核の断片化を認め細胞死が起きていた.このような変化は正常者の血清を投与したマウスや遺伝子改変TRPM1欠損マウスの網膜組織にはみられなかった.ON型双極細胞は内顆粒層のなかでも視細胞寄りに配列していることが知られており,ERGの結果と組織の結果より抗TRPM1抗体は双極細胞の細胞死を引き起こすことが推測された.また,免疫組織染色でも患者の血清を投与したマウスでは,ON型双極細胞のマーカーであるPKCaの染色が血清投与24時間で消失していた(図3k*印).このことは患者の抗TRPM1抗体を含む血清が急激なON型双極細胞の変性を引き起こすことを示していた.患者の血清を投与された正常マウスのERGを経時的に血清投与後3カ月まで記録したが,ERGは陰性型を示したままで回復することはなかった.筆者らはこれらの実験結果から,抗TRPM1抗体をもつMAR患者に網膜双極細胞の変性が起きていると推測している10).2.症例の経過筆者らは日本人のMARを含むON型双極細胞の機能障害を呈した腫瘍関連網膜症患者10人を検討した結果,今までに,MAR患者2名,肺の小細胞癌によるCAR患者2名から抗TRPM1抗体を検出した.癌の治療が奏効し最長4年までの経過を終えている患者も含め,ERGは陰性波形が改善した患者はない.このことは,マウスの実験結果と同様に,抗TRPM1抗体がヒトでもON型双極細胞の変性を起こしために網膜機能が回復しないと筆者は考えている.3.抗TRPM1以外の自己抗体によると考えられたCARの1例MARやON型双極細胞の機能障害を呈したCAR患者のなかで抗TRPM1抗体が陽性にならない患者も多く他の抗原もあると考えられる9).ここで抗TRPM1抗体が陰性で症状が軽快した1例を紹介する.4.症例3症例は71歳の女性で,両眼の急激な夜盲の主訴にて精査目的で来院.視力は矯正両眼1.0であった.視野は全体的な感度低下を示していた.眼底所見,OCT,蛍光眼底造影では夜盲の原因となるような異常を認めなかった(図4).ERGの検査結果は図5に示すように,フラッシュERGで陰性型を示し,国際臨床視覚電気生理学科の示すプロトコールに従ったERGではON型双極細胞の機能障害を示していた11).所見からMARを疑い全身の検索を行ったがメラノーマは検出されず,positronemissiontomography(PET)検査精査にて卵巣癌がみつかった.この患者の血清をWesternblotでTRPM1に対する自己抗体の検索を行ったが陰性であった.患者は卵巣癌の手術加療ならびに抗癌剤治療を受け,癌は寛解した.癌治療後1年程度より夜盲の所見が改善したとの自覚症状があり,ERGを再検査すると左眼のERGはほぼ正常波形に,右眼もrod反応が回復しており,網膜電図は改善していた.この症例のようにMARでも機能が回復したという報告も散見され,TRPM1以外のものが抗原の場合は改善する可能性も考えられた.V腫瘍関連網膜症の治療治療に関しては,悪性腫瘍に対する治療が優先される.腫瘍関連網膜症に関しては,有効な治療法は確立されていない.視細胞や双極細胞は神経であり,現在のところそれらの細胞を再生させる治療はできない.過去の報告では,腫瘍の摘出によって症状が軽快したという報告,免疫抑制薬,免疫グロブリンの投与やステロイドの全身投与の効果があったという報告などあるが12),決定的な治療法がないのが現実である.逆に悪性腫瘍にステロイドなどを使うと腫瘍に対する免疫がなくなり生命予後が悪くなるという報告もあり,判断に迷うところである.いずれにしろ原因となる悪性腫瘍の治療が必要であり,眼科における早期の診断が重要である.おわりに腫瘍関連網膜症はまれな疾患であるが,悪性腫瘍が背景にあることから眼科医による適切な診断が重要である.また,同時に悪性腫瘍を治療している医師は,患者が光視症や夜盲などの眼症状を訴える場合,腫瘍関連網膜症を念頭に入れる必要がある.とくにON型双極細胞の機能障害をきたす腫瘍関連網膜症の場合は,OCTでは異常をとらえられず,ERGで異常をとらえることができる.夜盲を訴える患者をみた場合には,ぜひERGを記録していただきたい.また,ON型双極細胞の機能障害をきたす腫瘍関連網膜症はメラノーマに特異的に発症すると考えられていたが,筆者らの検討では肺の小細胞癌や卵巣癌でも生じることがわかり,メラノーマが少ない日本にもこのような病態を呈する患者がそれなりにいるのではと考えられる.現在抗TRPM1抗体を検索する方法は商業ベースでは行ってないので,研究を行っている施設で調べてもらうしかないのが現状である.本稿を終えるにあたり,今後このような疾患の病態が一層解明され,有効な治療法が開発されることを願う.文献1)SawyerRA,SelhorstJB,ZimmermanLEetal:Blindnesscausedbyphotoreceptordegenerationasaremoteeffectofcancer.AmJOphthalmol81:606-613,19762)MilamAH,SaariJC,JacobsonSGetal:Autoantibodiesagainstretinalbipolarcellsincutaneousmelanoma-associatedretinopathy.InvestOphthalmolVisSci34:91-100,19933)PolansAS,BuczyłkoJ,CrabbJetal:Aphotoreceptorcalciumbindingproteinisrecognizedbyautoantibodiesobtainedfrompatientswithcancer-associatedretinopathy.JCellBiolog112:981-989,19914)DuncanLM,DeedsJ,HunterJetal:Down-regulationofthenovelgenemelastatincorrelateswithpotentialformelanomametastasis.CancerRes58:1515-1520,19985)MorgansCW,ZhangJ,JeffreyBGetal:TRPM1isrequiredforthedepolarizinglightresponseinretinalONbipolarcells.ProcNatlAcadSciUSA106:19174-19178,20096)KoikeC,ObaraT,UriuYetal:TRPM1isacomponentoftheretinalONbipolarcelltransductionchannelinthemGluR6cascade.ProcNatlAcadSciUSA107:332-337,20107)NakamuraM,SanukiR,Yasumaetal:TRPM1mutationsareassociatedwiththecompleteformofcongenitalstationarynightblindness.MolVis16:425-437,20108)DhingraA,FinaME,NeinsteinAetal:Autoantibodiesinmelanoma-associatedretinopathytargetTRPM1cationchannelsofretinalONbipolarcells.JNeurosci31:3962-3967,20119)KondoM,SanukiR,UenoSetal:IdentificationofautoantibodiesagainstTRPM1inpatientswithparaneoplasticretinopathyassociatedwithONbipolarcelldysfunction.PLoSOnee19911:e19116,201110)UenoS,NishiguchiKM,Taniokaetal:DegenerationofretinalONbipolarcellsinducedbyserumincludingautoantibodyagainstTRPM1inmousemodelofparaneoplasticretinopathy.PLoSOne25:e81507,201311)UenoS,NakanishiA,NishiKetal:CaseofparaneoplasticretinopathywithretinalON-bipolarcelldysfunctionandsubsequentresolutionofERGs.DocOphthalmol130:71-76,201512)KeltnerJL,ThirkillCE,YipPT:Clinicalandimmunologiccharacteristicsofmelanoma-associatedretinopathysyndrome:Elevennewcasesandareviewof51previouslypublishedcases.JNeuroOphthalmol21:173-187,2001図1癌関連網膜症の1例a:眼底に明らかな異常はみられない.b:光干渉断層計(OCT)にて周辺部の網膜外層が正常者に比べて菲薄化している(⇨).c:暗順応下のフラッシュERG.右は消失し左は著しい振幅の低下を認める.d:患者の胸部X線写真にて肺癌による異常陰影がみられる.図2Transientreceptorpotentialmelastatin1(TRPM1)に対する自己抗体が検出された肺癌患者の眼底,ERG,Westernblotでの抗TRPM1抗体の確認a:眼底には異常はない.b:ERGは陰性波の後の陽性波が小さい特殊な波形となる.➡は光刺激のタイミング.c:患者血清では200kDa付近にバンドが検出されるが,正常者の血清ではみられない.TRPM1についているflagに対する抗体を用いると200kDa付近にバンドが検出され.これにより検出されたバンドがTRPM1であることがわかる.(文献9より改変引用)正常者血清投与眼(野生型マウス)患者血清投与眼(野生型マウス)患者血清投与眼(TRPM1欠損マウス)図3抗TRPM1抗体を含む血清をマウス硝子体に投与後のマウス網膜の組織像a,d,g:野生型マウス硝子体内にコントロール血清を投与.b,e,g,j,k:野生型マウス硝子体内に抗TRPM1抗体を含む患者血清を投与.c,f,i:遺伝子改変TRPM1欠損マウスの硝子体内に抗TRPM1抗体を含む患者血清を投与.a~c:トルイジンブルーによる染色.d~i:電子顕微鏡像.j,k:抗PKCa抗体による免疫組織染色.k以外は血清投与5時間後の組織像.k:血清投与後24時間の組織像.b:➡に示すように内顆粒層にトルイジンブルーで濃染する核がみられる.e,h:患者血清を投与した網膜の内顆粒層を電子顕微鏡で確認すると核の断片化が起こり,bでみられた核の濃染はアポトーシスであることがわかる(*).k:患者血清投与24時間後に,わずかに周辺部に染色(⇨)がみられるだけで,他の部位では染色が消えており(*),ON型双極細胞が消失していることがわかる.正常者の血清を投与したマウス,ならびに抗TRPM1抗体陽性の血清を投与したTRPM1欠損遺伝子改変マウスでは,内顆粒層にアポトーシスはみられない.(文献10より)図4TRPM1に対する自己抗体が陰性の卵巣癌患者の左眼の眼底写真,蛍光眼底造影,OCT,PET検査の結果眼底,蛍光眼底造影,OCTで夜盲の原因となるような異常はみられず,PETにて腹部に異常がみられた(➡).(文献12を改変引用)図5TRPM1に対する自己抗体が陰性の卵巣癌患者のERG国際臨床視覚電気生理学会のプロトコールに従った全視野ERGでは,治療直後の段階である2011年10月では両眼ともrodの反応がなく,brightflashではb波がa波より小さい陰性型を示していた.癌の治療を行い,夜盲の症状が改善した後の2013年5月のERGでは,左眼はほぼ正常まで回復しており,右眼のrodの反応がみられ,ON型双極細胞の機能が改善していることがわかる.*ShinjiUeno:名古屋大学大学院医学系研究科眼科学・感覚器障害制御学〔別刷請求先〕上野真治:〒466-8550名古屋市昭和区鶴舞町65名古屋大学大学院医学系研究科眼科学・感覚器障害制御学0910-1810/16/¥100/頁/JCOPY(45)971972あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016(46)(47)あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016973974あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016(48)(49)あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016975976あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016(50)(51)あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016977978あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016(52)(53)あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016979