●連載178緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也178.緑内障の進行解析三木篤也大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室進行の判定は,緑内障の治療方針決定に不可欠である.進行している症例に対しては治療の強化が必要になり,逆に長年進行を認めない症例では薬物を減量することも可能かもしれない.本項では,緑内障の進行解析法について概略を説明したい.●はじめに緑内障の3大要素は眼圧,視神経,視野であり,このうち視神経と視野が経時的に悪化するかどうかをみるのが進行解析である.検査にはばらつき(変動)があるので,検査パラメータが低下したとしても,低下の程度が小さければ真の進行か単なる変動かをみわけるのはけっして簡単ではない1.3).変動の影響を取り除いて真の進行を捉えるために,統計学的な手法が必要とされるのである.●トレンド解析とイベント解析(表1)進行解析の手法には,大きく分けてトレンド解析とイベント解析がある.トレンド解析とは,注目するパラメータの単位時間あたりの変化量(進行速度)を求めるもので,進行の速度がわかることが最大の利点である(図1).しかし,変動の影響を除くためには数回検査を繰り返す必要があり,結果を得るまでに時間がかかる.また,進行の有無は統計学的に有意であるかどうかで決定され,臨床的な意義が明確ではない.A一方,イベント解析では,最初の何回かの検査(ベースライン)からある一定以上低い閾値を決める.計測値が閾値を下回ったときにイベント発生とする.実際には,複数回閾値を下回って初めてイベント発生とすることが多い.一般的に,イベント解析はトレンド解析よりも短期間で進行の有無を判定できる.また,進行の有無についてはっきりした答えが出るので,介入の効果を検証する研究には向いている.一方,イベント解析の最大の欠点は,進行の速度がわからないことである.進行の指標とするパラメータとして何を選択するかという問題もある.視野では,meandeviation(MD)やvisualfunctionindex(VFI)などのグローバルインデッ表1トレンド解析とイベント解析トレンド優劣イベント経過観察長い<短い進行判定の基準曖昧<明確進行速度わかる>わからないBベースラインパラメータ(MDなど)イベント閾値時間図1トレンド解析とイベント解析A:トレンド解析では,パラメータ(MDなど)を縦軸に,時間を横軸にとって直線回帰し,単位時間あたりの変化(スロープ)を求める.B:イベント解析では,最初の何回かの検査をベースラインとし,ベースラインより統計学的に有意な減少を閾値と設定するフォローアップ検査の測定値が閾値を下回れば,イベント発生とする(実際には複数回下回ったときにイベントとすることのほうが多い).(51)あたらしい眼科Vol.32,No.4,20155150910-1810/15/\100/頁/JCOPY図2GPAのフォローアップレポートの一例パターン偏差プロットにおいて,ベースラインよりも1度低下していれば△,2度連続して低下していれば,3度連続して低下していれば▲で示される.この場合▲が3カ所あるので,likelyprogression(日本語版では「進行の可能性が高い」)と判定される.クスを用いるほかに,各刺激点の閾値を対象とするポイントワイズ法,いくつかの刺激点をグループにして解析するクラスター法などがある.概して,グローバルインデックスを用いる方法は全体的な進行度が把握しやすく,信頼度の高い結果が得られやすいが,局所の変化に対する検出力が劣る.ポイントワイズ法はグローバルインデックスと反対の特徴があり,クラスターは両者の中間の性質をもっている.●視野の進行解析これまで緑内障進行の詳細な統計解析は,自動静的視野検査において普及,発展してきた.そのうち代表的なトレンド解析法はMDスロープである.自動静的視野検査のMD値を時系列でプロットし,1年あたりの下降速度を求める方法である.Humphrey静的視野計のguidedprogressionanalysis(GPA)でも測定可能であるし,電子カルテプログラムから自動で測定してくれるものもある.最近のバージョンのGPAではVFIスロープもある.ポイントワイズのトレンド解析プログラムも種々開発されている.GPAプログラムのglaucomachangeprobabilitymap(GCPM)は代表的なイベント解析法である.GPAではパターン偏差プロットを使用し,最初の2回の検査からベースラインを決定する.そして,フォローアップ検査において連続2回以上の進行が3カ所以上で認められると進行の可能性あり,連続3回以上の進行が3カ所以上認められると進行の可能性が高いと判定される(図2).GPAのほかにもさまざまなイベント解析の方法が開発されている.●構造的進行解析従来の視神経観察は眼底検査,眼底写真を中心として516あたらしい眼科Vol.32,No.4,2015行われてきたが,これらの検査は主観的,定性的であるために統計学的な解析に不向きであった.しかし,最近の画像診断機器の発展により,視神経障害についても視野と同様の定量的進行解析が可能となった.視神経障害の定量解析として,現在もっとも期待されるのはOCTである.現時点では,OCTの進行解析は研究者が統計プログラムを用いて自ら解析するものが多く,臨床の現場に広く普及しているとはいえない.しかし,各OCTメーカーは進行解析プログラムを続々と開発,搭載しており,近い将来臨床の現場においてもOCTの進行解析が標準化するものと考えられる.●おわりに緑内障の進行解析は,最近急速に発展した分野の一つである.進行が緩徐な正常眼圧緑内障などでは,トレンド解析やイベント解析などの統計的な解析を用いないと正確な進行判定はほぼ不可能である.進行判定の原理を理解し,日常臨床に活かすことは緑内障のフォローアップを担当する眼科医にとって最低限の責務である.文献1)KeltnerJL,JohnsonCA,LevineRAetal:NormalvisualfieldtestresultsfollowingglaucomatousvisualfieldendpointsintheOcularHypertensionTreatmentStudy.ArchOphthalmol123:1201-1206.20052)TannaAP,BudenzDL,BandiJetal:Glaucomaprogressionanalysissoftwarecomparedwithexpertconsensusopinioninthedetectionofvisualfieldprogressioninglaucoma.Ophthalmology119:468-473,20123)HeijlA,BuchholzP,NorrgrenGetal:Ratesofvisualfieldprogressioninclinicalglaucomacare.ActaOphthalmol91:406-412,2013(52)