●連載抗VEGF治療セミナー監修=安川力髙橋寛二14.ラニビズマブとアフリベルセプトの大中誠之関西医科大学医学部眼科学教室使い分け現在,ラニビズマブとアフリベルセプトはともに,加齢黄斑変性(AMD),近視性脈絡膜新生血管,網膜中心静脈閉塞症および糖尿病に伴う黄斑浮腫の4つの疾患に適応がある.難治性AMDに対してはアフリベルセプトの投与が有効とされるが,他の疾患においては明確な使い分けの基準はない.本稿では,それぞれの特徴をまとめ,AMD治療を中心に,現時点での2剤の使い分けについて述べる.わが国では,滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)に対して2009年にラニビズマブ,2012年にアフリベルセプトが承認された.その後,両薬剤ともに適応が拡大され,治療の選択肢が増えたことは喜ばしい.しかし,両薬剤ともに滲出型AMD,近視性脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV),網膜中心静脈閉塞症(centralretinalveinocclusion:CRVO)に伴う黄斑浮腫,糖尿病黄斑浮腫(diabeticmacularedema:DME)に適応があり,現時点では使い分けに関する明確な基準はなく,その選択は診察医に委ねられている(表1).これまでの大規模臨床試験を単純に比較すると,滲出型AMD,近視性CNV,DMEにおいてはラニビズマブとアフリベルセプトの間で視力の予後に差はなく,CRVOに伴う黄斑浮腫においてはアフリベルセプトがやや視力の改善効果が良いようである.一方,眼内の血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)を抑制する期間については,ラニビズマブ(平均36日)1)よりアフリベルセプト(平均71日)2)のほうが長く,AMD治療の維持期においては,アフリベルセプトの2カ月毎投与の有効性はラニビズマブの毎月投与に対して非劣性であることが確認されており,アフリベルセプトのほうが少ない回数で治療が行える可能性がある.さらに,最近の研究において,ラニビズマブは血中VEGFに与える影響が少なく,アフリベルセプトは投与後1カ月間は血中VEGFを抑制すると報告されている3)ことから,理論上はラニビズマブのほうが全身合併症のリスクが低いと考えられる.近年,滲出型AMDに対する抗VEGF薬硝子体内投与の大規模臨床試験4,5)の結果,眼局所の合併症として,長期にわたる継続した治療により地図状萎縮(geographicatropathy:GA)が進行することが報告され,維持期表1ラニビズマブとアフリベルセプトの特徴ラニビズマブアフリベルセプト日本での発売薬価2009年4月17万6,235円2012年11月15万9,289円創薬デザインヒト化抗VEGF抗体断片VEGF受容体融合糖蛋白分子量48kDa115kDaブロックする分子VEGF-AVEGF-A,VEGF-B,PlGFVEGF165に対する解離定数46.192pM0.5pM(結合親和性高い)1回投与量0.5mg(0.05ml)2.0mg(0.05ml)硝子体内半減期7.1日(ヒト)3.3.2日(サル)2.6.2.88日(ウサギ)4.5.4.7日(ウサギ)ヒト血清中半減期0.25日18日適応疾患滲出型加齢黄斑変性近視性脈絡膜新生血管網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫糖尿病黄斑浮腫滲出型加齢黄斑変性近視性脈絡膜新生血管網膜中心静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫糖尿病黄斑浮腫(69)あたらしい眼科Vol.32,No.3,20153790910-1810/15/\100/頁/JCOPYの管理や薬剤の選択に関心が集まっている.維持期の管理としては,AMD治療において最近TreatandExtend法を取り入れる施設が多くなっているが,長期成績の報告は少なく6),過剰投与の問題も含め,今後PRN(prorenata)投与との比較試験など,さらなる検討が必要であると思われる.AMD治療における薬剤選択としては,ラニビズマブに抵抗性を示す網膜色素上皮下病巣に対してアフリベルセプトが有効であったとする報告が多く,導入期治療の第一選択はアフリベルセプトで問題はないと考える.しかし,AMDは慢性疾患であり,長期かつ頻回の抗VEGF薬硝子体内投与を必要とするため,全身合併症およびGAを含む眼局所の合併症の発症を念頭に置いて治療方針を決めるべきであろう.これまでの滲出型AMDの大規模臨床試験の結果からは,ラニビズマブとアフリベルセプトの間で全身合併症の発症リスクに差はないとされているが,血中VEGFを長期間抑制するアフリベルセプトの投与回数を少なくすることにより全身合併症の発症リスクをさらに下げることができる可能性があり,維持期の薬剤選択についてはさらに詳細な検討が必要と考える.また,ラニビズマブとアフリベルセプトはともにinvitroの実験では細胞毒性がないと報告されている7)が,サルを用いたinvivoの実験では,アフリベルセプトにより網膜色素上皮細胞死が誘導され,ラニビズマブと比較して脈絡膜毛細血管板に強く影響することから,GAの発症リスクを上げる可能性が指摘されている8).今後の長期成績の報告に注目しながら,現状においては漫然と投与し続けるのではなく,できる限り少ない投与回数で病状の安定化が図れるように投与方法を工夫しながら治療を進めるべきである.現在当院では,滲出型AMDに対しては,脳・心血管イベントの有無,年齢に応じて抗VEGF薬の使い分けをしており,半年以内に脳・心血管イベントがあった場合はペガプタニブ,85歳以上ではラニビズマブ,それ以外はアフリベルセプトを第一選択としている(図1).維持期には多くの症例でTreatandExtend法を採用しているが,オリジナルの方法では過剰投与になることがあることから,滲出性所見の消失後に一度経過観察を行い,再度滲出性所見を認めた時点からTreatandExtend法を採用するという独自の方法を取り入れている.近視性CNVに対しては,治療前から強い網脈絡膜萎縮が存在する場合は,アフリベルセプトによる萎縮の進行の可能性を考慮してラニビズマブを第一選択としているが,明確なエビデンスは存在しない.CRVOとDMEに関してはまだ決まった方針はない380あたらしい眼科Vol.32,No.3,2015半年以内に脳・心血管イベントの既住があるいいえはい85歳以上であるPegaptaniborPegaptanib+PDTいいえはいAfliberceptRanibizumab図1関西医大枚方病院における滲出型AMDに対する薬剤選択基準が,これらの2疾患をもつ患者にはもともと高血圧と糖尿病が存在し,脳・心血管イベントの準備状態が高い状態にあると考えてよいため,riskとbenefitを十分に検討したうえで,個別に抗VEGF薬の適切な使用方法を考慮する必要があると考えている.文献1)MuetherPS,HermannMM,DrogeKetal:Long-termstabilityofvascularendothelialgrowthfactorsuppressiontimeunderranibizumabtreatmentinage-relatedmaculardegeneration.AmJOphthalmol156:989-993,20132)FauserS,SchwabeckerV,MuetherPS:Suppressionofintraocularvascularendothelialgrowthfactorduringaflibercepttreatmentofage-relatedmaculardegeneration.AmJOphthalmol158:532-536,20143)WangX,SawadaT,SawadaOetal:Serumandplasmavascularendothelialgrowthfactorconcentrationsbeforeandafterintravitrealinjectionofafliberceptorranibizumabforage-relatedmaculardegeneration.AmJOphthalmol158:738-744,20144)RofaghaS,BhisitkulRB,BoyerDSetal:SEVEN-UPStudyGroup:Seven-yearoutcomesinranibizumab-treatedpatientsinANCHOR,MARINA,andHORIZON:amulticentercohortstudy(SEVEN-UP).Ophthalmology120:2292-2299,20135)GrunwaldJE,DanielE,HuangJetal:CATTResearchGroup:Riskofgeographicatrophyinthecomparisonofage-relatedmaculardegenerationtreatmentstrials.Ophthalmology121:150-161,20146)RayessN,HoustonSK3rd,GuptaOPetal:Treatmentoutcomesafter3yearsinneovascularage-relatedmaculardegenerationusingatreat-and-extendregimen.AmJOphthalmol159:3-8,20157)SchnichelsS,HagemannU,JanuschowskiKetal:Comparativetoxicityandproliferationtestingofaflibercept,bevacizumabandranibizumabondifferentocularcells.BrJOphthalmol97:917-923,20138)JulienS,BiesemeierA,TaubitzTetal:Differenteffectsofintravitreallyinjectedranibizumabandafliberceptonretinalandchoroidaltissuesofmonkeyeyes.BrJOphthalmol98:813-825,2014(70)