連載⑳私の緑内障薬チョイス企画・監修山本哲也連載⑳私の緑内障薬チョイス企画・監修山本哲也20.配合剤か?多剤併用か?澤田明岐阜大学医学部眼科学教室2010年にわが国で初めて眼圧下降薬の配合剤ザラカムRが登場して以来,つぎつぎと配合剤が上市されている(表1).わが国では正常眼圧緑内障が多いため,プロスタグランジン関連薬以外の眼圧下降薬はその効果がわかりにくいことが多い.配合剤は利便性には非常に優れたところが確かにあるが,1剤1剤の効果を判定しながら薬物追加をするといった理念は失われないのだろうか?自験例での考察現在,眼圧下降薬における配合剤のシェアはうなぎのぼりのようであるが,本来はすべての緑内障患者に処方されるべきではない.配合剤と単剤2種の眼圧下降効果を比較した非劣性試験において,統計学的には両者はほぼ同等となっている.だが,たとえばプロスタグランジン製剤とb遮断薬の合剤では,従来1日2回点眼であったb遮断薬が実際のところ1日1回点眼となっている.したがって,眼圧下降効果はやや劣ると考えるのが自然である.図1に当科で施行したA配合剤とその併用2剤とのクロスオーバー試験(preliminaryresults)11症例の結の論文1)をみても,そうした傾向は変わらないものが多い(図2).1mmHg未満であるので問題にならないと一部の読者は思うかもしれないが,現在,一番眼圧下降作用が強いプロスタグランジン関連薬でさえ,正常眼圧緑内障症例では平均2.5mmHg程度しか眼圧下降を得ることができない2)ことから考えると,この眼圧差は無視できないものだと思う.171615平均14.813平均14.6眼圧(mmHg)果を示す.平均年齢は65.3歳,すべて女性が対象である.眼圧測定はほぼ同時刻にGoldmann圧平眼圧計で14施行した.全員,当院緑内障外来通院中の患者であり,平均14.2平均13.5点眼をしっかり守る方々だと理解していただいてさしつ12平均14.0かえないと思う.統計学的に有意な差は,A配合剤と211種併用時の眼圧で認められなかった.しかしながら,眼BaselineA配合剤2種併用A配合剤2種併用1カ月2カ月圧実測値の平均をみてみると,A配合剤使用時と2種図1自験例の結果併用時の眼圧差は0.7~0.8mmHgとなっている.海外Baselineにおいては,A配合剤1種あるいは併用2種使用.表1わが国で利用可能な眼圧下降薬の配合剤商品名発売年使用回数/日内容併用時回数/日ザラカムRデュオトラバRタプコムRコソプトRアゾルガR2010201020142010201311122ラタノプロスト+(0.5)チモロールトラボプロスト+(0.5)チモロールタフルプロスト+(0.5)チモロール(1)ドルゾラミド+(0.5)チモロールブリンゾラミド+(0.5)チモロール33354本欄の記載内容は,執筆者の個人的見解であり,関連する企業とは一切関係ありません(編集部).(107)あたらしい眼科Vol.32,No.1,20151070910-1810/15/\100/頁/JCOPY■B配合剤群(n=255)■2種併用群(n=247)ベースライン眼圧:25.4±2.325.2±2.4AveAM8PM0PM4眼圧変化値(mmHg)-12-11-10-9-8-7-6-5-4-3-2-10-8.7-9.0-9.1-9.5-8.7-9.1-8.2-8.3p=0.15p=0.12p=0.06p=0.78図2B配合剤1種と併用2種使用の眼圧比較(文献1より改変引用)では,配合剤って悪いの?配合剤使用は2種併用よりも眼圧下降効果は総じて劣ることが多いようだが,配合薬使用のメリットもまた多い.現在,プロスタグランジン関連薬,b遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬にa2刺激薬を加えた4種類の眼圧下降薬が緑内障薬物治療の主流を形成している.もしこの4種を点眼併用すると,少なく見積もっても1日6回点眼しなければならない計算となるが,配合剤使用により点眼回数を減少させれば,アドヒアランスを向上させることができる.また,3種類の点眼薬投与が,薬物治療と手術療法選択との境界と考えている臨床家が多いが,そうした症例での配合剤切り替えは,もう1種類の追加点眼薬スペースを確保することになる.さらに,ほとんどの点眼薬に含有されている塩化ベンザルコニウムによる副作用軽減にもつながる.しかしながら,単に配合剤に点眼変更するのみでアドヒアランスが向上するというのは,医療側の思い込みで●ある.アドヒアランスを向上させるためには,点眼数や点眼回数のほかに,医師と患者のコミュニケーションや治療目的の理解といった患者.医師間の信頼関係にかかわる要素がからんでくる.植田ら3)は,すでに眼圧下降薬にて加療されている緑内障患者に対し,医師による小冊子を用いた疾患に関する説明(1カ月に1度,3カ月間)を行い,介入後のほうが眼圧下降効果は大きかったと報告している.配合剤の本来の目的がアドヒアランスを向上させ,さらなる確実な眼圧下降を得るところにあるため,治療目的や点眼変更の必要性をしっかり説明したうえで処方するのが望ましい.また,なかなかむずかしい問題ではあるが,配合剤変更が効果的な患者を見きわめることも重要である.そうした患者.医師間のコミュニケーションにかかわる問題をおろそかにすると,それは単なる配合剤の“乱用”にほかならなくなり,逆にアドヒアランスを低下させる要因となる.文献1)DiestelhorstM,LarssonLI:European-CanadianLatanoprostFixedCombinationStudyGroup:A12-week,randomized,double-masked,multicenterstudyofthefixedcombinationoflatanoprostandtimololintheeveningversustheindividualcomponents.Ophthalmology113:70-76,20062)SawadaA,YamamotoT,TakatsukaN:Randomizedcrossoverstudyoflatanoprostandtravoprostineyeswithopen-angleglaucoma.GraefesArchClinExpOphthalmol250:123-129,20123)植田俊彦,笹元威宏,平松類ほか:緑内障における患者教育が眼圧下降とその持続に及ぼす効果.あたらしい眼科28:1491-1494,2011108あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(108)