●シリーズ⑰後期臨床研修医日記千葉大学医学部眼科学教室新沢知広千葉大学医学部附属病院眼科では現在3名の後期研修医が研修に励んでいます.山本修一教授をはじめ,各専門の先生方の指導のもと,多忙ながらも充実した日々を送っています.女性医師の多いイメージの眼科ではありますが,今年の後期研修医は男子3人です.お互い神経を使わず自由にできるところは気持の面で楽でとても良いと感じています.簡単にではありますが,3人を代表して研修医生活を紹介させていただきたいと思います.眼科は朝の診察からずいぶん朝早くからやるんだね~と入院した患者さんはきまって驚く,患者さんで満ちた朝の診察室.毎日ここからスタートです.8時から患者さんは朝食,私たちは朝のカンファレンス(月水金)もしくは手術(火木)となるため,それまでに担当患者さんの診察を終える必要があります.当院では一人の患者さんに対し,基本的には外来・病棟ともに同じドクターが担当することになっています.後期研修医はオーベンの先生や術者の先生とともに患者さんを担当します.術後の患者さんの眼底は見づらく,ガスなんて入っていればもう全然,ガス越しに眼底なんか見えるのか,という感じでしたが,人間とは慣れるものですね.徐々に見えるようになってきました.所見はまだまだですが….朝のカンファレンス・教授回診月水金の朝8時より,朝のカンファレンスと教授回診が行われます.術前患者さんのプレゼンと術後患者さんの報告が主になります.何言ってるかわかんねえよ!という心の声が聞こえてこないように(たまに本当に聞こえてくる?),限られた時間のなかで,ポイントをついたプレゼンが要求されます.(95)0910-1810/12/\100/頁/JCOPY▲後期研修医(左から林田,新沢,三田村.外来にて)外来朝の診察・回診が終わると,もう一仕事した感じがして疲れが襲ってくるのですが,ほっと一息,ではなく外来が始まります.後期研修医は6カ月の研修期間を過ぎると,一般外来の初診とその患者さんの再診を受け持つことになります.初期研修医の選択科目として眼科研修を行っていると,その分外来に出るタイミングが早くなります.僕は7カ月選択研修を行っていたため,4月から外来に出ることになりました.外来はチーフの先生,専門外来の先生とともに診ていくことになります.散瞳時間,種々の検査,時間によっては食事などを考えて診察だけでなく,患者さんのマネジメントが必要であり,これが狂うと外来は大惨事になりかねません.診療時間内にすべての患者さんの診察を終えるのにもう必死です.手術月火木曜日は手術日です.研修医3人の担当する曜日が分かれており,週に1日ないし2日が手術日になります.手術は3列同時に行っており,自分の担当患者さんあたらしい眼科Vol.29,No.6,2012817▲FAカンファレンス風景(写真手前側に写っていない先生方多数)の助手や,各部屋の状況をみながら助手・外回り・器械出し(夜勤帯では)を行います.またもちろん,自分執刀の手術もあります.当院では後期研修医1年目の目標に白内障手術の完投があります.上級医の先生方が簡単そうにやっていることが,できません.目の前の眼が思い描いている光景に,なりません.助手側からの顕微鏡に慣れているため,なぜか術者側の顕微鏡のほうが見にくい?なんて….まだまだ修行が足りません.カンファレンス・勉強会全体では,毎週月曜日夜に行われるFAカンファレンス,第一水曜日夜に行われる緑内障カンファレンス,第2,4週月曜日朝に行われる抄読会などがあります.FAカンファレンスでは,FA・IAを施行した症例の検討,またFAに限らず,症例報告や難症例の検討などを行っています.緑内障カンファレンスでは,検討症例を持ちよりディスカッションなど.抄読会は,2~3カ月に1回自分の発表の順番がまわってきます.この会はすべて英語で行われます.自分の読んだ論文を英語でプレゼンし,ディスカッションも英語で行うことになります.皆普通に英語でディスカッションできるのが,僕には非常に不思議な思いです.病棟業務眼科という科の特性なのでしょうが,日中はどうしても外来や手術がありますので,入院患者さんの診療は朝と夜になります.患者さんからすると,朝食前と夕食後の診察になるので,入院すると患者さんは,朝早くから818あたらしい眼科Vol.29,No.6,2012▲上級医指導のもと,豚眼で練習する筆者夜遅くまで大変~とだいたい僕らの体を心配してくれます.ん,もしかして,僕が不健康そうに見えるだけなのでしょうか?術前の眼底スケッチをしたり,オーダーを出したり,手術予定を組んだり,外来の残務をしたり,調べ物をしたり,学会発表の準備をしたりと夜が更けていきます.もうこれは明日にしよう,と心からの声と薄れゆく意識と戦い,だいたい負けます(笑).後回しにするともっと面倒な事態になることが多いので,なるべく早く片付けるようにはしているつもりですが,この紹介記事も締め切りギリギリに書いている現実からするとやはり負けているのでしょう.当直・待機・土日平日夜と土日は月3~4回程度,当直と待機があります.上級医の先生が待機についてくれているので困ったことがあったら,深夜に心苦しくも相談です.土日には決まった業務はありませんが,担当患者さんが入院していることがほとんどですので診察を行います.おわりに当院での研修生活について簡単ですが,紹介させていただきました.当科は,千葉大学だけでなく,他大学出身の先生も多く,医局全体の雰囲気はとてもよく働きやすい環境だと思います.病棟や外来スタッフともとても仲良くやっており,飲み会や医局旅行などのイベントはとても面白いです.だいたい後でびっくりするような写真が出てきますが….千葉市という人口100万人都市にありながら,房総(96)半島の地域医療の拠点でもある当院では,さまざまな疾患を経験することができます.その分ハードな毎日ではありますが,幅広い疾患に対応できるようになるため,研修医としてはとてもよい環境であると思います.未熟な点を痛感する毎日ですが,一人前の眼科医になれるよう日々努力していきたいと思います.〈プロフィール〉新沢知広(にいざわともひろ)平成21年弘前大学医学部医学科卒業,同年より千葉大学医学部附属病院(B1プログラム)で初期研修医(平成21年度千葉労災病院,平成22年度千葉大学附属病院),平成23年度千葉大学医学部眼科学教室入局後期研修医.千葉大学医学部学生に対して,また他大学の学生や研修医が見学に来るときなどにアピールする点は,①まず大学に入るべし,②眼科に入るべし,③プラス,千葉はGoodの3点です.①②では他大学の眼科に入局されてしまうかもしれないし,大学以外でも眼科以外でも,専門を決めるのは恋愛と同様に運命的な相性(タイミング)なので,今回の3人の入局にどれだけ影響があったかわかりません.最初から決まっていたかもしれません.ここは外人部隊で母校出身者は少ないけど,風に吹かれて同じ船に乗って新世界に航海しています.①他の施設から大学へのベクトル(流れ)はないか指導医からのメッセージら,リストラのない医師が30年以上仕事を続けるなら大学からスタートしたほうが選択肢が多い.先のことはわからない.②眼は小宇宙.小さいけど緻密に無限大.オペ中に観る世界は美しい世界.サージカル苦手になってもメディカルで活かせる.サブスペシャリティーは沢山ある.③千葉県は対人口比では眼科医がものすごく少ない.都心に近いのに自然が豊富で温暖,海も綺麗,大きな空港にも近い,ディズニーランドもある.よく遊びよく学ぼう.(千葉大学医学部附属病院眼科・講師菅原岳史)☆☆☆(97)あたらしい眼科Vol.29,No.6,2012819