特集●わかりやすい緑内障薬物のお話あたらしい眼科29(4):479.485,2012特集●わかりやすい緑内障薬物のお話あたらしい眼科29(4):479.485,2012知っておきたい配合剤(炭酸脱水酵素阻害薬+b遮断薬)Need-to-knowTopicsofCombinationTopicalGlaucomaMedication(Dorzolamide-TimololFixedCombination)中谷雄介*大久保真司*はじめに早期緑内障を対象としたEarlyManifestGlaucomaTrialにおいて1mmHgの眼圧下降が緑内障進行の危険性を約10%減少させると報告され1),また,正常眼圧緑内障(NTG)患者を対象としたCollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudyでは30%の眼圧下降を行うことで視野障害の進行を抑制することが報告された2).これらの報告からNTGの目標眼圧はベースラインから30%の低下が一つの目安といえる.しかし,現在の第一選択薬とされるプロスタグランジン関連点眼薬(PG剤)のみでは20%近くの眼圧下降は得られるが,目標とする30%には不十分といわれている3).たとえば,NTGに対するビマトプロストとラタノプロストの有効性を検討したところ,いずれのPG剤を使用した場合も眼圧下降率は16%であった3).多治見スタディによると日本人の40歳以上における広義原発開放隅角緑内障の有病率は3.9%,NTGは3.6%であり,NTGの広義原発開放隅角緑内障に占める割合が91.8%と非常に多い4)日本においてNTGのもともと低い眼圧をさらに下げることに苦労する場合が多いと思われる.目標眼圧まで単剤では十分下降が得られない場合,まずは単剤を別の単剤に変更する.その後目標眼圧にまで下降しない場合EGSG(EuropeanGlaucomaSocietyGuidelines)では薬剤の追加を勧めている.その場合,コンプライアンスを良好にするため配合剤がより好ましいとしている5).日本では緑内障診療ガイドライン(第3版)に薬物併用の留意点として「薬剤の効果がない場合,効果が不十分な場合,あるいは薬剤耐性が生じた場合は,まず薬剤の変更を考慮し,単剤(単薬)治療をめざす」「単剤(単薬)での効果が不十分であるときには多剤併用療法(配合点眼薬を含む)を行い,追加眼圧下降効果とともに副作用に留意する」とある6).一般に複数点眼する際には点眼間隔をあけなければならないが,配合剤の場合,点眼間隔に関する配慮が不要となる.また,配合剤は複数点眼するより防腐剤にさらされる影響を軽減できるなどの利点がある.現在日本で使用できる配合剤はb遮断薬とPG剤を組み合わせた2剤(ザラカムR,デュオトラバR)およびb遮断薬と炭酸脱水酵素阻害薬を組み合わせた1剤(コソプトR)である.炭酸脱水酵素阻害薬(ドルゾラミド塩酸塩)とb遮断薬(チモロールマレイン酸塩)の配合剤であるコソプ図1コソプトR(炭酸脱水酵素阻害薬+b遮断薬)の外観*YusukeNakatani&ShinjiOhkubo:金沢大学医薬保健研究域医学系視覚科学(眼科学)〔別刷請求先〕大久保真司:〒920-8641金沢市宝町13-1金沢大学医薬保健研究域医学系視覚科学(眼科学)0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(45)479トR(図1)は1998年に米国の食品医薬品局(FoodandDrugAdministration:FDA)で承認され1999年にMerck社から発売され,日本でも2010年から導入され多剤併用する患者にさらなる利便性を提供している.以下,コソプトRはDTFC(dorzolamide-timololfixedcombination)と表記する.なお,海外の市販製剤のドルゾラミド塩酸塩は2%であり,わが国の1%とは異なっている点は考慮すべきであるが,わが国における第II相試験において有効性が1%と2%では変わらなかった7)と報告されているので,海外の報告も参考にしてよいと思われる注).注)本稿で紹介したデータのうち,文献11のみが1%ドルゾラミド塩酸塩を含有するDTFCを用いたものであり,他は2%製剤によるものである.IDTFCの眼圧下降効果緑内障点眼において最も重視されるのが眼圧下降効果と思われる.DTFCに配合されている2成分はどちらも房水産生抑制に働くが機序が異なるため相加的な眼圧下降効果が得られるとされているが,本当に相加効果があるのか,あるいはチモロールマレイン酸塩とドルゾラミド塩酸塩の2剤点眼した場合と比較して眼圧はどうなのかという点を文献的に整理した.また,他の薬剤とDTFCとの比較およびPG剤へのDTFCの追加効果についても併せて整理した.海外では他にもさまざまな配合剤があり,コソプトRと比較した論文がでているが,ここでは現在日本で使用することのできる組み合わせにしぼってまとめた.1.相加効果はみられるか?(チモロールまたはドルゾラミドの単剤とDTFCの比較)配合剤をそれに含まれている成分の単剤のみと比較した試験では,いずれも配合剤で単剤よりも優れた眼圧下降効果が得られている.Boyleら8)は,点眼をwashoutしたあとのランダム化試験で朝のトラフ値でベースライン値よりDTFCは27.4%(.7.7mmHg),ドルゾラミド15.5%(.4.6mmHg),チモロール22.2%(.6.4mmHg),朝のピーク値でそれぞれ32.7%(.9.0mmHg),19.8%(.5.4mmHg),22.6%(.6.3mmHg)下がり,480あたらしい眼科Vol.29,No.4,2012DTFCで最も大きく下がったとしている.また,Clineschmidtら9)は,チモロールでコントロールされない症例253眼にチモロール,ドルゾラミド,DTFCをそれぞれランダムに分け,DTFCはトラフ値でベースラインよりさらに1.1mmHg,ピーク値(点眼後2時間)ではさらに2.8mmHgの眼圧下降が得られたと報告している.これらは単剤の成分のみと比較しているため2剤含まれている配合剤のほうが下がるのは当然とも思われるが,これらのことよりDFTCは2剤の相加効果がみられると思われる.2.チモロール+ドルゾラミド併用とDTFCの眼圧下降効果は同等か?(チモロール+ドルゾラミド併用からDTFCへ変更)つぎに,配合剤をそれに含まれている2剤を併用した場合と比較すると,ほぼ同等の眼圧下降効果が得られるとされるが,配合剤の眼圧下降効果が大きかったとの報告もみられる.同等の眼圧下降効果としてはStrohmaierら10)がチモロールを投与している患者をDTFCへ切り替えた群,またはチモロールとドルゾラミドの併用群に分けチモロールのベースライン眼圧よりDTFCではさらに14.20%の眼圧下降が得られ,併用群でも16.20%の眼圧下降が得られたと報告している.日本ではKitazawaら11)がチモロールを観察期に点眼して18mmHg未満にコントロールできなかった症例にコソプトR,チモロール,ドルゾラミド併用の3群に分けて投与8週の眼圧変化を評価し,コソプトRは.2.5mmHg,併用は.2.78mmHg,チモロールは.1.82mmHgの眼圧下降でありコソプトRはチモロール単独より有意に低下,さらに併用群に比べても劣らなかったことを証明している(図2).Francisら12)は,ランダム化比較試験でDTFCと併用療法の間に眼圧の差はなかったが,併用をDTFCに切り替えるとさらに1.7mmHgの眼圧下降が得られたとしている.理由として,コンプライアンスの向上と配合剤によりwashoutの影響が弱まったことがあるのではないかと考察している.併用療法と比較すると配合剤は眼圧下降の点でほぼ同じだが,コンプライアンスにすぐれている点が有用であると思われる.(46)+1.00の眼圧g)-1.0からmmH-2.0変化量(ライン-3.0ベース-4.0症例数048(週)MK-0507A=189185180チモロール=929088併用療法=191187183図2チモロールをベースラインとしてチモロール+ドルゾラミド併用またはDTFCへ変更した場合の眼圧変化量チモロールを観察期に点眼して18mmHg未満にコントロールできなかった症例にDTFC,チモロール,併用の3群に分けて投与し,DTFCは.2.5mmHg,併用は.2.78mmHg,チモロールは.1.82mmHgの眼圧下降であり,DTFCはチモロール単独より有意に低下,さらに併用群に比べても劣らなかった(▲:MK-0507A=DTFC,○:チモロール,●:チモロールとドルゾラミドの併用療法).(文献10より)3.PG剤を超えることができるか?(ラタノプロスト単剤とDTFCの比較)現在の緑内障の第一選択薬とされるPG剤との眼圧の比較では,PG剤と同じ13)というものからDTFCがやや劣るという報告がある.しかし,DTFCが劣っていたとする報告は,すでにb遮断薬の反応が良くない例をDTFC,ラタノプロストに分けているためバイアスがかかっている可能性がある.また,DTFCとラタノプロストを比較した論文が多いが,ビマトプロストとの比較ではビマトプロストの眼圧がより下降したという報告がある14).近年,夜間の眼圧上昇と全身血圧低下による視神経乳頭血流障害が緑内障性視神経障害の原因の一つである可能性が指摘されており,昼間のみならず夜間も含めた24時間眼圧コントロールの重要性が高まっている.PG剤はいずれも24時間をとおして眼圧を著明に下降させる15).DTFCの場合,房水産生抑制効果のあるb遮断薬だけでは夜間の眼圧下降効果は減弱するが,配合成分である炭酸脱水酵素阻害薬の房水産生抑制により,夜間の眼圧下降効果も期待できる16,17).Konstasら18)は,24時間眼圧で平均値は同じくらいだが,夜間(午後10時)ではDTFCがラタノプロストより有意に下がったと報ベースライン告している.また,いくつかの研究から拡張期眼灌流圧が緑内障の発症および進行に関与しているといわれている.拡張期眼灌流圧の計算方法はさまざまであるが,簡単にいえば拡張期血圧と眼圧の差のことである.Sungら19)は,1mmHgごとの平均眼灌流圧の変動の上昇につき27%視野障害進行リスクが増加することを示した.ラタノプロストは24時間眼圧を均一に下げ血圧には影響しないので,結果として拡張期眼灌流圧を増加させるといわれている.DTFCとラタノプロストを比較するとPG剤はやはり収縮期,拡張期血圧ともに影響はなかったが,DTFCはb遮断薬の作用として血圧を下げた.しかし,24時間眼圧はDTFCもラタノプロストも下降するがDTFCの下降効果が大きく,拡張期眼灌流圧はPG剤とDTFCの間には有意差はなかった.血圧に対する影響はDTFCのほうが大きいにもかかわらず,拡張期眼灌流圧に差がみられなかったのはドルゾラミドの夜間眼圧に対する影響かもしれないと考察している20).これらのことから,夜間眼圧,拡張期眼灌流圧を考えたコントロールを目指した場合DTFCが有力な選択肢になるといえる.4.他の配合剤との比較:LTFC(latanoprost.timololfixedcombination:ザラカムR)とDTFCLTFCとDTFCの比較では眼圧下降効果は同等とするものとLTFCのほうが眼圧下降効果が大きいという報告21,22)の両者がみられる.たとえば253人を対象とした3カ月のランダム化試験ではLTFCがDTFCより日中の平均眼圧で1mmHg下がったと報告されている22).しかし同等との報告もある23,24).最近の多施設,ランダム化比較試験ではb遮断薬でコントロールできない症例を対象にDTFC群とLTFC群に分け,ほぼ同じ眼圧下降が得られ,お互いの薬剤に対し非劣性であったが16mmHg以下に抑えることのできた割合はLTFC群で有意に多かった25)(図3).また,1日1回点眼のLTFCのほうが患者に好まれるという報告があった.(47)あたらしい眼科Vol.29,No.4,2012481:Fixed-combinationlatanoprost/timolol表1正常眼圧緑内障におけるPG剤へのDTFCの追加効果患者の割合(%)100:Fixed-combinationdorzolamide/timolol908070605040*30*20100ベースライン眼圧からの8週後の眼圧下降率患者数(%)≧10%25(62.5)≧20%9(22.5)≧30%2(5)すでにPG剤を受けている正常眼圧緑内障を対象にDTFCを追加することでPG剤をベースラインとした眼圧よりさらに10%以上の眼圧低下を示したものは62.5%,20%以上は22.5%,30%以上は5%であった.(文献27より)24≦15≦16≦17≦18≦19≦20≦21≦2223日中眼圧値(mmHg)図3LTFCとDTFCの比較b遮断薬でコントロールできない症例を対象にDTFC群とLTFC群に分け,目標眼圧に到達した割合を示す.LTFCとDTFCはほぼ同じ眼圧下降が得られ,互いの薬剤に対し非劣性であったが,16mmHg以下に抑えることのできた割合は眼圧(mmHg)22212019181716LTFC群で有意に多かった(*p<0.01).(文献25より)5.PG剤へのDTFCの追加効果(ラタノプロストに156:0010:0014:0018:0022:002:00眼圧測定時間DTFCを追加した場合)PG剤は1996年に登場して以来,それまで第一選択薬であったb遮断薬に代わり単剤での第一選択薬となった.しかし,すべての症例で目標眼圧を達成できるわけではなく,目標とする眼圧下降を得るために,点眼薬の変更または追加が必要となる.Martinezら26)は,PG剤ノンレスポンダーの場合(ベースラインから15%以上下がらない場合)DTFCを追加することでさらに眼圧を下げ(25.4mmHgから20.2mmHgへ),眼圧変動も小さくなった(8.6mmHgから4.3mmHgへ)と報告した.またNTGに対してもPG剤にDTFCを追加することでさらなる眼圧下降が得られている27,28).すでにPG剤を受けている40眼のNTGのみを対象にした報告ではDTFCを追加することでPG剤をベースラインとした眼圧よりさらに10%以上の眼圧下降を示したものは62.5%,20%以上は22.5%,30%以上は5%であった27)(表1).Konstasら29)は,ラタノプロストだけで十分に眼圧コントロールが得られない(21mmHg以上)31眼に対しDTFCあるいはLTFCに切り替えるか,あるいはラタノプロストにDTFCを追加するかを行い,どれもラタノプロスト単剤より24時間眼圧を下げるがDTFC+ラ482あたらしい眼科Vol.29,No.4,2012図4PG剤へのDTFCの追加効果(ラタノプロストにDTFCを追加した場合)ラタノプロストで効果不十分であった患者を対象にDTFCまたはLTFCへの切り替え,あるいはラタノプロストにDTFCの追加を行って眼圧を検討した結果,DTFCとLTFCはラタノプロスト使用時よりも24時間にわたり下降させ,さらにラタノプロストにDTFCを追加した場合24時間にわたりラタノプロスト群より有意な眼圧下降を示した(p<0.0032,反復測定データの分析)(◆:ラタノプロスト,●:DTFC,■:LTFC,▲:ラタノプロストとDTFCの併用療法).(文献29より)タノプロストは24時間眼圧のどの時点においても,また他のいずれの群においても最高,最低眼圧ともに最も有意に下がった(ラタノプロスト→LTFC=2.7mmHg,ラタノプロスト→DTFC=2.2mmHg,ラタノプロスト→ラタノプロスト+DTFC=5.6mmHg)と報告している(図4).DTFCの追加によりPG剤単独より約2倍の眼圧下降が得られると考えられる.今のところPG剤+DTFCが最も強い眼圧下降効果をもつといえる.II血流改善効果は?NTGにおいても眼圧は重要な要素であるが,十分な眼圧下降が得られても視野障害が進行する緑内障症例が存在するので,眼圧だけではNTGの病態が説明できな(48)い.そのような症例では,今のところエビデンスは乏しいが,循環改善効果も考慮する必要がある.PG剤にも視神経乳頭血流の増加作用が報告されている30)が,ドルゾラミドには血流増加作用の報告が多い31,32).140人の原発開放隅角緑内障(POAG)または高眼圧症(OH)を70名ずつドルゾラミドまたはチモロールに分け6カ月後にそれぞれ切り替え,scanninglaserDopplerflowmetryで耳側リムと視神経乳頭の血流を,またlaserinterferometryで脈絡膜血流を測定した結果では,ドルゾラミドはいずれの部位もチモロールより有意に血流を増加させた31).NTGの長期studyで後眼部の血流が視野障害の進行にかかわっていたという報告もある32).また,チモロール,ドルゾラミドをDTFCへ切り替えた報告で,scanninglaserDopplerflowmetryによるperipapillaryretinaとneuroretinalrimの血流評価を行い,DTFCは視神経乳頭リムの血流をどちらの群も合わせて20.8%増加させた33).DTFCとラタノプロスト+チモロールの比較でもscanninglaserDopplerflowmetry,colorDopplerimaging,scanninglaserophthalmoscopyなどを用いて眼血流量を測定したところ,ラタノプロスト+チモロール併用とDTFCは眼圧下降には差がなかったが,DTFCは網膜中心動脈の拡張期眼血流,耳側後毛様動脈(temporalposteriorciliaryartery)の血流速度を増やした34).一方で,ラタノプロスト+チモロール併用は眼血流に影響がなかった.後眼部の血流測定でもDTFCは眼動脈,後毛様動脈の血流速度を増加させ血管の抵抗係数を減少させたが,逆にLTFCは血流速度を減少させ抵抗係数を増加させた35).ドルゾラミドには眼血流改善効果を示す文献が多くあり,それを含むDTFCにも眼血流改善効果の報告がみられることより,DTFCは眼血流改善効果が期待される.IIIアドヒアランスの向上点眼薬自体の眼圧下降効果も重要であるが,実際の臨床で眼圧下降効果を得るためにはアドヒアランスを向上させることも重要である.1日に点眼する回数が増える(49)とアドヒアランスは下がるといわれている36).Claxtonら37)は,monitoringdevicesを用いて観察した結果,1回の点眼では79%が,2回では69%,3回では65%,4回では51%が正確に点眼していたとしている.緑内障患者のコンプライアンスは点眼の回数が1日3回以上になると不良になり朝,夜および就寝前と比較して昼の点眼忘れが有意に多いとの報告がある38).DTFCは多剤併用している患者の点眼回数を減らすことができるのでアドヒアランスの向上が期待できる.この点が配合剤の最大の利点と思われる.IVDTFCの安全性は?(b遮断薬が含まれることをお忘れなく!)配合剤による副作用は,その成分がそれぞれもつ副作用となんら変わらず,配合剤であることで起こるものはないとされている.FDAの承認のため1,035人に行った臨床試験では5%が何らかの有害事象のため中止となり,そのうちの30%は刺激感であった39).その他眼周辺部に白い沈着物がつく,しみる(刺激感),にがみなどがあるが,一過性であった.最も多い有害事象は滴下投与部位刺激感であったが,併用療法との差はみられなかった10).点眼回数が減るので角膜炎はDTFCで併用療法より有意に低かった40).配合剤の登場で,b遮断薬を投与される患者数は増加すると予想される.b遮断薬は収縮力の低下した心不全や心機能を改善するともいわれているが,その有効性は脈拍の低下と深くかかわっている.脈拍や駆出率を指標に低用量から慎重に導入されるが,高齢者では一般に薬剤の副作用が強く現れ,重大な結果を招く恐れがある.処方する医師は配合剤にb遮断薬が含まれていることを認識して,副作用に対する配慮を十分に行い,必要なら内科主治医に問い合わせるなどして安易な処方を避けなければならない.おわりにここまで海外の文献をおもに紹介してきたが,DTFCは,チモロールマレイン酸塩とドルゾラミド塩酸塩を合わせた眼圧下降効果がみられ,眼圧下降効果はPG剤とほぼ同等である.特に多剤併用患者において,DTFCを用いることにより利便性の向上によりアドヒアランスあたらしい眼科Vol.29,No.4,2012483の向上が期待される.■用語解説■点眼間隔:同じ時間帯に2種類の点眼薬を点眼する場合は,1剤目と2剤目の間隔を5分以上あけて点眼するのが望ましい.間隔をあけないで2剤目を点眼した場合,1剤目を洗い流してしまい(washout:洗い流し効果),薬剤の効果が弱まる.拡張期眼灌流圧:眼灌流圧は動脈圧と眼圧の差として定義される(拡張期眼灌流圧は拡張期血圧と眼圧の差).緑内障発症,進行の危険因子であるといわれる.文献1)LeskeMC,HeijlA,HymanLetal:Predictorsoflong-termprogressionintheearlymanifestglaucomatrial.Ophthalmology114:1965-1972,20072)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudyGroupetal:Comparisonofglaucomatousprogressionbetweenuntreatedpatientswithnormal-tensionglaucomaandpatientswiththerapeuticallyreducedintraocularpressures.AmJOphthalmol126:487-497,19983)QuarantaL,PizzolanteT,RivaIetal:Twenty-four-hourintraocularpressureandbloodpressurelevelswithbimatoprostversuslatanoprostinpatientswithnormal-tensionglaucoma.BrJOphthalmol92:1227-1231,2008,Epub2008Jun274)IwaseA,SuzukiY,AraieMetal:Theprevalenceofprimaryopen-angleglaucomainJapanese:theTajimiStudy.Ophthalmology111:1641-1648,20045)EuropeanGlaucomaSociety:TerminologyandGuidelinesforGlaucoma,3rded.DOGMA,Srl:Savona,Italy,20086)日本緑内障学会:緑内障診療ガイドライン(第3版).日眼会誌116:22-29,20127)KitazawaY,AzumaI,IwataKetal:Dorzolamide,atopicalcarbonicanhydraseinhibitor:atwo-weekdose-responsestudyinpatientswithglaucomaorocularhypertension.JGlaucoma3:275-279,19948)BoyleJE,GhoshK,GieserDKetal:Arandomizedtrialcomparingthedorzolamide-tim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