0910-1810/12/\100/頁/JCOPYそれ以外にも小児では視機能発達の成長段階であり術後の視機能管理(弱視治療)が重要となる.低年齢では患児の協力が得られず意識下での診察が困難なことが多く,眼圧,角膜径,角膜厚,眼軸長,視神経乳頭陥凹などの検査や手術後の診察も十分行えない.苦労して得られた結果が正確性に欠けることがあるため,催眠下または全身麻酔下での評価が必要になる.高度の隅角発達異常,他の先天異常を合併した場合には,眼圧下降治療や弱視治療に限界があることがある.成人での緑内障治療の評価は,近年では光干渉断層計(OCT)による視神経や網膜の構造的評価がなされるようになったが,眼圧と視野による評価が主となっている.一方小児では,現在のところ正常小児のデータベースがないためOCTでの評価ができない.視機能を評価するための視野測定についても動的視野測定では5歳以上でないとできないことが多いため,眼圧だけが最も治療効果を評価する指標となってしまう.乳幼児では組織の弾性が高いため,特に発症が低年齢であるほど眼球組織の構造的障害をきたしやすく,持続的な高眼圧により緑内障性視神経障害だけでなく,牛眼といわれる角膜・眼球拡大をきたす.高眼圧による眼球の構造的な障害は眼圧下降後も残存することがあり,視機能発達の成長を妨げてしまうことが多い4).II小児緑内障の他覚的所見と検査自覚症状としては,流涙,羞明,眼瞼痙攣をきたすとはじめに緑内障診療ガイドライン1)では,小児期に認められる緑内障は発達緑内障と続発緑内障に分類される.発達緑内障は胎生期の前房隅角の形成異常のため眼圧が上昇する緑内障で,形成異常が隅角に限局する発達緑内障と他の先天異常を伴う発達緑内障に分類される.隅角形成異常の程度により発症時期が異なり早発型と遅発型に分けられ,遅発型では学童期や成人になってから発症することさえある.早発型発達緑内障はわが国では10万人に1人といわれている稀な疾患で,一般の眼科医が診察する機会は非常に少ない.治療については,続発緑内障では原疾患の治療と眼圧下降治療を並行し,それによる眼圧下降が不十分であれば観血的治療を行う.一方,乳幼児期に発症するような早発型発達緑内障は薬物治療だけでは十分な眼圧下降が得られることが少ないため,治療の第一選択はトラベクロトミーや隅角切開術といった観血的手術になることが多い.その眼圧コントロールは長期に良好であり成功率は70?90%と報告されている2,3)が,薬物治療が手術前の短期的治療あるいは手術後の追加治療として必要になる患児は少なくない.数回の隅角手術で効果がなければトラベクレクトミーを行うことになる.I小児緑内障の治療の問題点小児緑内障の治療方針は,手術による速やかな眼圧下降と必要に応じた薬物の追加治療を行うことであるが,(13)13*YoshiakiSaito:金沢大学大学院医学系研究科視覚科学(眼科学)〔別刷請求先〕齋藤代志明:〒920-8641金沢市宝町13-1金沢大学大学院医学系研究科視覚科学(眼科学)特集●小児と高齢者の緑内障:ここがポイントあたらしい眼科29(1):13?17,2012小児の緑内障管理ManagementofDevelopmentalGlaucoma齋藤代志明*14あたらしい眼科Vol.29,No.1,2012(14)発達緑内障では特徴的な視神経乳頭所見が得られる.高眼圧により視神経乳頭陥凹が乳頭縁と同心円状に拡大する点が大人の緑内障と異なる(図5).小児緑内障の視神経乳頭陥凹は眼圧下降とともに大きさや深さが減少することが特徴であり7),治療効果の判定に重要である.小児緑内障の管理では,速やかな手術加療と術後の眼圧と視機能の両方を経過観察していく必要があるが,小児では成長に伴う眼圧変化(図6)8)や成長と眼圧下降による眼球形態の変化がある.手術加療が奏効すれば,角膜は透明化し,視神経乳頭陥凹も減少する.術後の評価は定期的な眼圧測定だけでなく,角膜厚,角膜径,眼軸長,屈折値,視神経乳頭所見を定期的にみていく必要があり,そのためには患児の経時的変化と正常小児の成長変化を知っておかなければならない.いわれる.他覚的所見では,角膜浮腫から角膜混濁(図1)をきたし,さらに高眼圧が持続すると角膜が伸展され角膜径が増大し,中央部にDescemet膜破裂を生じる.線状に生じるDescemet膜破裂をHaabstriae(図2)といい,不可逆的な角膜混濁は視機能発達障害の原因となる4).乳幼児は組織の弾性が高いため3?5歳頃までは眼圧上昇によって眼球組織が伸展して,角膜の菲薄化や角膜径の増大,眼軸の延長がみられる.通常,新生児の角膜径は10mm程度であり,生後1年頃までに11mm程度になるが,12mmを超える場合は発達緑内障を疑う(図3)5).眼軸長は出生時に17mm,1歳時に20?21mm,3歳時に22mm程度(図4)6)で,測定値がこれらの値をはるかに超えるときは診断の補助となる.図1角膜混濁生後1カ月,男児,発達緑内障.角膜浮腫と混濁を認め,スリット照明で虹彩の平坦化が確認できる.17019212325271020304050607080年齢(カ月)眼軸長(mm)図4正常小児の眼軸長変化(文献6より改変):先天緑内障:正常範囲(95%)角膜径(mm)年齢(カ月)1111213141516248163264120図3先天緑内障眼の角膜径角膜径が12mmを超える場合は発達緑内障を疑う.(文献5より改変)図2Haabstriae39歳,男性,発達緑内障.Descemet膜破裂の治癒瘢痕(Haabstriae)が残存(矢印)している.(15)あたらしい眼科Vol.29,No.1,201215ル(エスクレR座薬)30?50mg/kgを使用するが,呼吸抑制をきたすことがあり,保護者への十分な説明と理解,投与後の注意深い観察が必要である.呼吸抑制が少ないパモ酸ヒドロキシジン(アタラックス-PシロップR)0.4ml/kgを混合することもある(トリクロホスナトリウム:パモ酸ヒドロキシジン=2?5:1).2?3歳ではトリクロールシロップRを20ml程度内服する必要があることもあり患児も嫌がり催眠しづらい.2?3歳が最も催眠剤の効果がない年齢であり(図9),3?6カ月間諸検査不可能の場合には全身麻酔下で検査を行う.III催眠法患児の年齢によっては,外来診察での検査に協力が得られないことがある.3歳以上であれば,細隙灯顕微鏡検査が可能であり,非接触の眼圧計,現在ではペンタカムRによる角膜厚測定や光学式眼軸長測定により非接触での検査が可能である.5歳以上であればGoldmann眼圧計(図7)や動的視野測定が可能である.2歳未満では,検査に協力が得られないため催眠剤を使用することが多い(図8).催眠では,トリクロホスナトリウム(トリクロールシロップR)0.7?1.0ml/kgや抱水クロラー図5同心円状の陥凹拡大生後4カ月,Sturge-Weber症候群.視神経乳頭陥凹に左右差がある.左:正常眼,右:患眼.02468101214166789101112131415161718年齢(歳)眼圧(mmHg)図6正常小児の眼圧変化非接触眼圧計,無麻酔下での眼圧.(文献8より)図7Goldmann眼圧計測定5歳,男児,発達緑内障.暗室測定にこだわらない.明室で測定可能.図8セデーションが有効男児,発達緑内障.催眠が十分であり開瞼器を挿入して角膜径の測定が可能.16あたらしい眼科Vol.29,No.1,2012(16)常,Sturge-Weber症候群,神経線維腫症(vonRecklinghausen病)などがある.隅角形成異常が高度な場合や他の先天異常がある場合には,眼圧コントロールに限界があることがある.十分な眼圧コントロールが得られない場合や患児に精神発達遅滞がある場合には,視機能の成長に限界がある.VI治療と術後管理治療は手術療法が基本となる.薬物療法による眼圧下降は,通常術前および術後の補助的治療となる.しかしながら,比較的軽症で薬物により眼圧が下降する症例では,薬物療法のみで経過観察を行う場合もある.点眼薬を選択する場合は,b遮断薬は気管支喘息,徐脈などのIV全身麻酔下での検査初診時に緑内障が疑われる場合や緑内障術後に外来での検査が不十分な場合に,全身麻酔下での検査を行う.検査項目としては,緑内障評価項目だけでなく弱視治療も念頭において,屈折,角膜局率,眼圧,角膜厚,角膜径,前眼部撮影,隅角(図10),超音波生体顕微鏡検査(ultrasoundbiomicroscopy:UBM),散瞳後に視神経乳頭および眼底後極部撮影,散瞳後屈折,眼底検査を行う.画像はできるかぎり写真またはデジタル画像で保存しておく.全身麻酔下という限られた時間のなかでスムーズに検査を行うため,当科ではサマリーシートに沿って手早く検査を行っている.上記の検査は他の検査結果に影響を与えない順序で行い(表1),必ず両眼のデータを取っておく.初回検査時の治療方針の決定や経過観察時の評価は,上記の検査結果をもとに角膜浮腫・混濁,角膜径の増大,前房深度の増加,隅角形成異常,視神経乳頭変化などの所見を総合して行う.V全身性疾患の有無発達緑内障のなかには,隅角線維柱帯の発達異常に加え,他の眼組織あるいは他の全身的な先天異常を伴うものもある.診断を確定するために眼科および全身的検索を十分に行う必要がある.他の先天異常を伴う発達緑内障には,無虹彩症,Axenfeld-Rieger症候群,Peters異表1全身麻酔下での検査順序1.屈折・角膜曲率(手持ちオートレフ・ケラトメータ)2.眼圧(トノペンR,Perkins)3.眼軸長(超音波Aモード)4.角膜厚(超音波パキメータ)5.角膜径(キャリパー)6.超音波生体顕微鏡検査(UBM)7.前眼部撮影8.隅角鏡検査9.視神経乳頭および眼底後極部撮影10.散瞳後屈折11.眼底検査図10全身麻酔下での隅角検査3歳,線維柱帯切開術後の隅角.線維柱帯切開術により隅角が切開されている部位(上方)と虹彩高位付着と虹彩突起が残存している部位(下方)を確認できる.図9セデーションが無効男児,発達緑内障.催眠が十分でなく眼圧測定が不可.(17)あたらしい眼科Vol.29,No.1,201217視治療が必要である.文献1)日本緑内障学会:緑内障診療ガイドライン(第2版).日眼会誌110:777-814,20062)IkedaH,IshigookaH,MutoTetal:Long-termoutcomeoftrabeculotomyforthetreatmentofdevelopmentalglaucoma.ArchOphthalmol122:1122-1128,20043)TanimotoSA,BrandtJD:Optionsinpediatricglaucomaafteranglesurgeryhasfailed.CurrOpinOphthalmol17:132-137,20064)中村誠,調廣子,溝上國義ほか:早発型発達緑内障の弱視化要因.日眼会誌113:1145-1152,20095)KiskisAA,MarkowitzSN,MorinJD:Cornealdiameterandaxiallengthincongenitalglaucoma.CanJOphthalmol20:93-97,19856)LawSK,BuiD,CaprioliJ:Serialaxiallengthmeasurementsincongenitalglaucoma.AmJOphthalmol132:926-928,20017)MeirellesSH,MathiasCR,BloiseRRetal:Evaluationofthefactorsassociatedwiththereversalofthedisccuppingaftersurgicaltreatmentofchildhoodglaucoma.JGlaucoma17:470-473,20088)PensieroS,DaPozzoS,PerissuttiPetal:Normalintraocularpressureinchildren.JPediatrOphthalmolStrabismus29:79-84,1992副作用があり,新生児・乳幼児の使用には注意を要する.第一選択薬としては,炭酸脱水酵素阻害薬,あるいはプロスタグランジン関連薬が使用しやすい.乳幼児以下ではプロスタグランジン関連薬の効果が不十分なことがある.具体的に目標眼圧を設定することは困難である.乳幼児緑内障の治療目標は大人と異なり単なる眼圧下降ではなく,視機能の成長を妨げないような眼圧下降が必要である.眼圧が15mmHg以下にコントロールされていても視力がほとんど成長しない患児もいれば,眼圧がときに20?25mmHgになっても視機能の成長が正常児と変わらない患児もいる.薬物治療の開始後は,眼圧の評価だけでなく,視機能の評価と角膜厚,角膜径,眼軸長,視神経乳頭などの形態的評価を行い,注意深く観察していく必要がある.術後眼圧が良好にコントロールされたとしても自発的な視機能の成長が必ずしも見込めるわけではない.眼圧が下降しても角膜混濁や視神経障害が残存すれば,不正乱視や視性刺激遮断性弱視の原因となり,高眼圧により眼軸が延長すれば,特に片眼性では不同視弱視の原因となる.小児期は視機能の発達に重要な時期であり,手術後は緑内障治療だけではなく,視機能の発達を含めた弱