0910-1810/11/\100/頁/JCOPYだけ多くの患者を同定し,適切に治療することが目的になる.そのため,診断基準を多少緩くする,すなわち,検出感度(sensitivity)を高くする必要がある.無論,特異度,検出感度とも高いほうが望ましいが,これは一つの診断基準ではなかなか得られない.さまざまな診断基準が存在し,あるいはこれから発表されるが,どのような目的で作成されたかをよく理解したうえで基準を利用する必要がある.II国際的な診断基準実際のところ,国際学会や国際グループなどにより広く認められた診断基準はそれほど多くない.Behcet病1),小児特発性関節炎(juvenileidiopathicarthritis,以前はjuvenilerheumatoidarthritisとよばれていた)2)あるいは強直性脊髄炎(ankylosingspondylitis)3)において,全身症状・所見には基準が存在するものの,眼科症状・所見については具体的な基準がない.眼内炎症疾患領域では,急性網膜壊死(acuteretinalnecrosis)4),進行性網膜外層壊死(progressiveouterretinalnecrosis)5),原田病(Vogt-Koyanagi-Haradadisease)6),間質性腎炎ぶどう膜炎症候群(tubulointerstitialnephritisanduveitissyndrome)7),散弾脈絡網膜症(birdshotchorioretinopathy)8),サルコイドーシス9)においては国際基準が存在する.原田病の基準では,疾患検出率,偽陽性率および偽陰性率についての検討(validation)がなされている10).また,サルコイドーシスの診断基準についてはじめに疾患に関する基礎研究の成果により,わが国におけるぶどう膜炎の治療はこの10年間において著しく進歩した.特に目立つのは,生物学的療法の使用により従来難治であったBehcet病の予後が改善できるようになったことであろう.また無作為臨床試験(randomizedclinicaltrial:RCT)がグローバルに運行される動きが顕著になり,結果的にわが国での新薬認可プロセスが促進され,新しい治療薬が現場に登場するスピードもいくらか速くなった.これらの傾向は,学者,政府機関の薬剤担当者など関係するセクター間での素早く正確なコミュニケーションが欠かせなくなったことを意味する.その観点から,まず疾患の診断基準を世界的に統一する必要性が高まっている.本稿では,ぶどう膜炎分野における国際的な診断基準作成の動きについて述べたい.I診断基準の目的についてまず初めに,「診断基準」という用語自体にも注意が必要である.何のために診断基準を利用するのかということが重要になる.たとえば,新薬開発の臨床試験に利用する場合は,できるだけ「真」の疾患群を研究したいわけであるから,注目の疾患をもたない患者(誤診されている患者)のエントリーを少なくするために診断基準を厳しくする必要がある.すなわち,診断基準の特異度(specificity)を高めたいということになる.一方,研修医の教育,あるいは臨床現場で利用する場合は,できる(3)459*AnnabelleAyameOkada:杏林大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕岡田アナベルあやめ:〒181-8611三鷹市新川6-20-2杏林大学医学部眼科学教室特集●ぶどう膜炎診療の新たな動向あたらしい眼科28(4):459.461,2011命名法:診断基準の国際化InternationalizationofDiagnosticCriteria岡田アナベルあやめ*460あたらしい眼科Vol.28,No.4,2011(4)中のシステムである.米国の医療制度や世界保健機関(WHO)の疫学調査などで採用されたInternationalStatisticalClassificationofDiseasesandRelatedHealthProblems(WHOによる最新版はICD-10),産業分野の標準を国際レベルで定義するInternationalOrganizationforStandardization(ISO)など,すでに存在する用語システムとの統合も指向されている.将来的に広くSNOMEDが採用されるようになると,診療録から得られるデータが標準化され,世界のどの医療機関や医療関係者でも共通の理解が可能になると期待される.さらには医療データを読み込んだコンピュータが,人工知能(artificialintelligence:AI)を用いて意思決定プロセス(decisionmakingprocess)に活用する可能性も生まれる.近代の医学,医療は,進歩のスピードが速く,加えて患者情報は急激な増加傾向を示しており,それがミスの原因にもつながる.最善,最適な治療を行うためには,AIのようなテクノロジーの助けが有益といえる.SNOMEDは英語をはじめとして,スペイン語とドイツ語のバージョンも開発されており,言語ごとに用語の統一を図っている.ぶどう膜炎分野では,早い時期からSNOMEDの開発に参加すべきとの共通認識がもたれていた.その背景の一つには,眼科医が利用するPubMed(医学文献検索サービス)などで,そもそも検索可能な眼科用語がきわめて限定的であり,にもかかわらず適切と言えない用語が数多く含まれるという事情もあった.SUNWorkingGroupはぶどう膜炎領域で用語,診断などの基準における国際的コンセンサスをまとめつつあり,SNOMEDに対して,その成果の採用を求めるとしている.おわりに本稿では,ぶどう膜炎領域における国際的な診断基準づくりの動向について紹介した.診断基準の目的によって,基準が広くも,また狭くもなることを理解する必要がある.すなわち,作成の背景を考慮したうえで診断基準を利用するべきということである.ぶどう膜炎疾患の国際診断基準はすでに多数存在している.今後はSUNWorkingGroupからSNOMEDでの使用を目的とした新たな診断基準の発表が期待される.は,国際的なvalidationstudyが進行中である.しかし,これら以外に診断基準の評価(正確性)が研究されているものはない.IIISUNWorkingGroupの診断基準他にも紹介されているが,StandardizationofUveitisNomenclature(SUN)WorkingGroupという国際組織がある11).世界のぶどう膜炎専門家を代表する約50名の研究グループであり,ぶどう膜炎におけるさまざまな交流(学術論文や臨床試験による情報交換)を国際的に標準化することを主な目的としている.日本からも3名が参加しているが,2004年に行われた第1回国際ワークショップの成果に基づき,2005年に臨床データを報告するための所見グレーディングや経過を記述する用語の定義を発表した12).現在SUNWorkingGroupが力を入れているのは,ぶどう膜炎において新たな診断基準を作成するプロジェクトである.原田病やBehcet病のようにすでに国際診断基準が存在しているものも含めて,約25の感染性あるいは非感染性のぶどう膜炎疾患を定義する予定である.すでに国際診断基準が存在している疾患も対象になっていることに疑問を呈する向きもあろう.理由は,SUNによる診断基準には,最近開発中のSNOMED-CTという医療情報システムに採用されるという特別な目標があるためである.IVSNOMED.CTについて電子カルテが普及し,1人の患者の臨床データを複数施設の医師,薬剤師,あるいは看護師が利用できるような情報システムも開発されつつある.保険適用や保険請求もこの「電子カルテ」システムに基づくべく検討が進んでいる国もある.このようなデジタル化された情報を正しく管理するために,2002年にSystemizedNomenclatureofMedicine-ClinicalTerms(SNOMED-CT,あるいは短くSNOMEDということが多い)という国際システムが設立された13).SNOMEDは,疾患や所見,処置,あるいは微生物,薬剤など,医学において利用されるすべての記述語を定義し,コンピュータが処理可能にすることを目的に開発(5)あたらしい眼科Vol.28,No.4,2011461mol131:647-652,20017)MandevilleJTH,LevinsonRD,HollandGN:Thetubulointerstitialnephritisanduveitissyndrome.SurvOphthalmol46:195-208,20018)LevinsonRD,BrezinA,RothovaAetal:Researchcriteriaforthediagnosisofbirdshotchorioretinopathy:resultsofaninternationalconference.AmJOphthalmol141:185-187,20069)HerbortCP,RaoNA,MochizukiM,membersoftheScientificCommitteeoftheFirstInternationalWorkshoponOcularSarcoidosis(IWOS):Internationalcriteriaforthediagnosisofocularsarcoidosis:resultsofthefirstinternationalworkshoponocularsarcoidosis(IWOS).OculImmunolInflamm17:160-169,200910)RaoNA,GuptaA,DustinLetal:FrequencyofdistinguishingclinicalfeaturesinVogt-Koyanagi-Haradadisease.Ophthalmology117:591-599,201011)岡田アナベルあやめ(編集):眼科プラクティス16,眼内炎症診療のこれから.文光堂,200712)TheStandardizationofUveitisNomenclature(SUN)WorkingGroup:Standardizationofuveitisnomenclatureforreportingclinicaldata.Resultsofthefirstinternationalworkshop.AmJOphthalmol140:509-516,200513)InternationalHealthTerminologyStandardsDevelopmentOrganization:AboutSNOMEDCT.http://www.ihtsdo.org/snomed-ct/.accessedonMarch1,2011文献1)InternationalStudyGroupforBehcet’sDisease:CriteriafordiagnosisofBehcet’sdisease.Lancet335:1078-1080,19902)PettyRE,SouthwoodTR,MannersPetal:InternationalLeagueofAssociationsforRheumatologyclassificationofjuvenileidiopathicarthritis:secondrevision,Edmonton,2001.JRheumatol31:390-392,20043)GoieTheHS,StevenMM,vanderLindenSMetal:Evaluationofdiagnosticcriteriaforankylosingspondylitis:acomparisonoftheRome,NewYorkandmodifiedNewYorkcriteriainpatientswithapositiveclinicalhistoryscreeningtestfoankylosingspondylitis.BrJRheumatol24:242-249,19854)HollandGN,theExecutiveCommitteeoftheAmericanUveitisSociety:Standarddiagnosticcriteriafortheacuteretinalnecrosissyndrome.AmJOphthalmol117:663-666,19945)EngstromREJr,HollandGN,MargolisTPetal:Theprogressiveouterretinalnecrosissyndrome.AvariantofnecrotizingherpeticretinopathyinpatientswithAIDS.Ophthalmology101:1488-1502,19946)ReadRW,HollandGN,RaoNAetal:ReviseddiagnosticcriteriaforVogt-Koyanagi-Haradadisease:reportofaninternationalcommitteeonnomenclature.AmJOphthal