———————————————————————-Page10910-1810/10/\100/頁/JCOPYした.今回は,非進行性円錐角膜に対して後房型phakicIOL挿入術を施行し,良好な初期臨床成績が得られたので紹介する.I手術適応眼鏡矯正視力が良好な軽度・中等度の円錐角膜までが適応であり,高度の円錐角膜症例は対象から除外すべきである.また,若年者の円錐角膜では進行する症例も多く,病状が安定していることを確認する必要がある.よって,若年例や直近で診断された症例も除外すべきであろう.筆者らの施設では,①眼鏡・コンタクトレンズが装用困難,②眼鏡矯正視力が良好,③角膜中央部が透明,④年齢が30歳以上,⑤角膜トポグラフィや自覚屈折が最低6カ月以上安定している,⑥前房深度2.8mmはじめに円錐角膜やペルーシド角膜変性症といった角膜菲薄化疾患では,ハードコンタクトレンズ(HCL)による矯正が第一選択となるが,角膜形状が不規則であったり,アレルギー性結膜炎の合併によって,HCLが装用困難となる症例が確実に存在する.実際に,屈折矯正手術希望者の6.49.6%が円錐角膜であったという報告1,2)もあり,円錐角膜患者においてもqualityofvision(QOV)を向上させるうえで良好な裸眼視力を獲得することは重要な課題の一つと考えられる.これまでlaserinsitukeratomileusis(LASIK),photorefractivekeratectomy(PRK)に代表される角膜屈折矯正手術は禁忌であるために,外科的な治療は困難とされていた.後房型有水晶体眼内レンズ(phakicintraocularlens:phakicIOL)(図1)は高い安全性・有効性だけでなく,術後視機能の優位性が注目されている3).個体差の大きい角膜創傷治癒反応を受けにくいため,安定性や予測精度もきわめて良好である4,5).さらに,高価なレーザー装置も一切不要であり,白内障手術に習熟した術者であれば手術手技も比較的容易である.瞳孔面における矯正は理論上最も優れた方法であり,IOLテクノロジーの進化に伴って中等度近視にまで適応が拡大している.現在ではtoricphakicIOLが入手可能であり,優れた乱視矯正効果や有効性が報告されている6,7).以前筆者らは,円錐角膜8)やペルーシド角膜変性症9)に対する屈折矯正方法としてtoricphakicIOLが有用であった症例をそれぞれ報告(43)459autakaaia眼22885551151眼特集●円錐角膜あたらしい眼科27(4):459464,2010有水晶体眼内レンズ(PhakicIOL)による屈折矯正PhakicIntraocularLensImplantationfortheCorrectionofRefractiveErrorinKeratoconus神谷和孝*図1後房型有水晶体眼内レンズ(VisianICLTM,STAARSurgical社)———————————————————————-Page2460あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(44)to-white)をもとにSTAARSurgical社計算ソフトウェアにより決定した(図2).術前にレーザー虹彩切開術を施行し,耳側3.0mm角膜切開からインジェクターを用いてICLを眼内に挿入し,その後支持部を毛様溝に固定した(図3,4).ToricICLでは術前座位で水平マーキングを行い,必要に応じてレンズを回転させた.術後1週,1,3,6カ月の時点で,裸眼視力,矯正視力,安全性,有効性,予測精度,安定性,角膜内皮細胞密度,合併症について検討した.1.安全性術後1週,1,3,6カ月の時点で,裸眼視力(loga-rithmoftheminimalangleofresolution:logMAR)はそれぞれ0.17±0.03,0.18±0.00,0.18±0.00,0.18±0.00であり,術前平均矯正小数視力1.31から術後6カ月では1.50へと改善した.また,術後3カ月における安全係数(術後矯正視力/術前矯正視力)は1.15以上の症例を有水晶体眼内レンズの手術適応としている(表1).II対象および方法先述したようにHCL装用困難かつ非進行性の円錐角膜に対して後房型phakicIOLであるVisianImplant-ableCollamerLens(VisianICLTM,STAARSurgical社)挿入術を施行した症例5例10眼を対象とした.手術時年齢31.3±1.4歳(平均±標準偏差,3051歳),男性2眼・女性8眼,術前等価球面度数8.56±2.55D,乱視度数1.68±1.11D,眼圧12.8±1.0mmHgであった.使用したレンズは,toricICLが8眼,sphericalICLが2眼であった.レンズパワーおよびサイズは自覚屈折値,ケラトメータ値,前房深度,角膜横径(white-表1円錐角膜に対する後房型有水晶体眼内レンズの適応①眼鏡・コンタクトレンズが装用困難②眼鏡矯正視力が良好③角膜中央部が透明④年齢が30歳以上⑤角膜トポグラフィや自覚屈折が最低6カ月以上安定している⑥前房深度2.8mm以上軽度・中等度までの円錐角膜が適応であり,若年例や直近に診断された症例は除外すべきである.図2STAARSurgical社toricICL計算ソフトウェア図3毛様溝に固定されたICLのシェーマ図4ICL挿入眼の前眼部写真———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010461(45)0.19Dであり,術後1週から術後6カ月にかけての屈折度数変化は0.06±0.25Dであった(図7).b.乱視度数術後1週,1,3,6カ月の時点で,乱視度数はそれぞれ0.03±0.08,0.08±0.17,0.08±0.17,0.20±0.28Dであり,術後1週から6カ月にかけての乱視度数変化は,0.18±0.31Dであった.5.眼圧術後1週,1,3,6カ月の時点で,眼圧はそれぞれ10.6±1.6,11.5±1.6,11.0±1.4,12.5±2.0mmHgであり(図8),瞳孔ブロックや続発緑内障は認めなかった.±0.13であった.矯正視力不変の症例が4眼(40%),1段階向上の症例が6眼(60%)であった(図5).2.有効性術後1週,1,3,6カ月の時点で,矯正視力(logMAR)はそれぞれ0.16±0.04,0.14±0.06,0.16±0.04,0.16±0.04であり,術前平均裸眼小数視力0.04から術後6カ月では1.43へと大幅に改善した.術後3カ月における有効係数(術後裸眼視力/術前矯正視力)は1.11±0.19であった.3.予測精度a.等価球面度数術後6カ月における目標矯正度数と達成矯正度数の関係を図6に示す.経過観察中全期間,全例において達成矯正度数が目標矯正度数に対して±0.5D以内に入った.b.乱視度数術後1週,1,3,6カ月の時点で,達成矯正度数が目標矯正度数に対して±0.5D以内に入った症例は,それぞれ100%,100%,100%,90%,±1.0D以内に入った症例はすべて100%であった.4.安定性a.等価球面度数術後1週,1,3,6カ月の時点で,等価球面度数はそれぞれ0.04±0.30,0.06±0.26,0.01±0.19,0.03±40矯正視力の変化眼数-1-20108642006+10+2図5術前・術後6カ月における矯正視力の変化矯正視力不変の症例が4眼(40%),1段階向上が6眼(60%)であった.05目標矯正度数(D)達成矯正度数(D)1015105015±0.5D100%図6術後6カ月における目標矯正屈折度数と達成矯正度数経過観察中全例において達成矯正度数が目標矯正度数に対して±0.5D以内に入った.術前0-5-10-151週1カ月術後期間自覚等価球面度数(D)3カ月6カ月-8.560.04-0.060.01-0.03図7自覚等価球面度数の経時変化———————————————————————-Page4462あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(46)mm2であった.両眼角膜トポグラフィを図9に示す.インフォームド・コンセントを得た後,右眼toricICL(9.5,+3.5Ax120°),左眼toricICL(12.0,+4.5Ax180°)挿入術を施行した.術後6カ月の時点における視力VD=1.2(1.5×0.25D(cyl0.50DAx170°),VS=1.5(n.c.)となり良好な裸眼視力が得られた.角膜内皮細胞密度は右眼3,039cells/mm2,左眼3,048cells/mm2であった.本症例は病的角膜であり,角膜屈折矯正手術は禁忌である.また,元来近視眼であり前房深度が3.0mm以上と深いため,安全に手術が施行可能である.さらに眼鏡矯正と比較して瞳孔面上の矯正であり,網膜像倍率変化が少ないために矯正視力も向上したと考えられる10).もし病気が進行しても軸の補正やレンズ摘出・交換が前房型phakicIOLよりも対処しやすい.IV新たなトラブルレスキューとしての可能性円錐角膜やペルーシド角膜変性症では,角膜生体力学特性が低下しており11),LASIKはもちろんPRKといった角膜屈折矯正手術は施行できない.これまで十分な解決方法がなかったのが現状であり,このような角膜菲薄化症例のトラブルレスキューとしてphakicIOLは新たな選択肢の一つとなると考えられる.さらに,LASIK後のワーストシナリオとされるkeratectasiaとは異なり,手術自体に可逆性を有するという点にも注目したい.その一方,後房型phakicIOLの問題点として二次性白内障があげられる.視力低下が著明であれば,pha-kicIOL摘出および白内障手術を同時に行うが,安全6.合併症術前角膜内皮細胞密度が3,091±245cells/mm2であったのに対し,術後6カ月では3,015±215cells/mm2であった.平均内皮細胞減少率は3.8%であった.臨床上問題となる二次性白内障や軸ずれを生じた症例はなく,その他重篤な合併症を認めなかった.III症例提示実際の症例を供覧する.40歳,女性.近医にて円錐角膜を指摘されるもHCL装用困難であった.視力VD=0.08(1.2×4.25D(cyl2.25DAx30°),VS=0.07(1.2×5.00D(cyl3.00DAx90°),ケラトメータ値右眼K144.0K247.8Ax110°,左眼K146.0K250.0Ax80°,前房深度右眼3.01mm,左眼3.02mm,角膜内皮細胞密度は右眼3,060cells/mm2,左眼3,081cells/図9両眼角膜トポグラフィ下方角膜の急峻化を認める.術前1510501週1カ月術後期間眼圧(mmHg)3カ月6カ月12.810.611.511.012.5図8眼圧の経時変化———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010463(47)る詳細な検討が必要である.また,観察期間も短いため,術後長期成績についてのデータはなく,さらに注意深い経過観察も必要であろう.今後,円錐角膜におけるphakicIOLの応用が普及していく可能性を期待したい.文献1)Hori-KomaiY,TodaI,Asano-KatoNetal:Reasonsfornotperformingrefractivesurgery.JCataractRefractSurg28:795-797,20022)SharmaN,SinghviA,SinhaRetal:Reasonsfornotper-formingLASIKinrefractivesurgerycandidates.JRefractSurg21:496-498,20053)IgarashiA,KamiyaK,ShimizuKetal:Visualperfor-manceafterimplantablecollamerlensimplantationandwavefront-guidedlaserinsitukeratomileusisforhighmyopia.AmJOphthalmol148:164-170,20094)SandersDR,DoneyK,PocoM;ICLinTreatmentofMyopiaStudyGroup:UnitedStatesFoodandDrugAdministrationclinicaltrialoftheImplantableCollamerLens(ICL)formoderatetohighmyopia:three-yearfol-low-up.Ophthalmology111:1683-1692,20045)KamiyaK,ShimizuK,IgarashiAetal:Four-yearfollow-upofposteriorchamberphakicintraocularlensimplanta-tionformoderatetohighmyopia.ArchOphthalmol127:845-850,20096)SandersDR,SchneiderD,MartinRetal:ToricImplant-ableCollamerLensformoderatetohighmyopicastigma-tism.Ophthalmology114:54-61,20077)KamiyaK,ShimizuK,IgarashiAetal:Comparisonofcollamertoricimplantablecontactlensimplantationandwavefront-guidedlaserinsitukeratomileusisforhighmyopicastigmatism.JCataractRefractSurg34:1687-1693,20088)KamiyaK,ShimizuK,AndoWetal:Phakictoricimplantablecollamerlensimplantationforthecorrectionofhighmyopicastigmatismineyeswithkeratoconus.JRefractSurg24:840-842,20089)KamiyaK,ShimizuK,HikitaFetal:Posteriorchambertoricphakicintraocularlensimplantationforthecorrec-tionofhighmyopicastigmatismineyeswithpellucidmarginaldegeneration.JCataractRefractSurg36:164-166,201010)神谷和孝,清水公也,川守田拓志ほか:眼鏡,laserinsitukeratomileusis,有水晶体眼内レンズが空間周波数特性および網膜像倍率に及ぼす影響.日眼会誌112:519-524,200811)大本文子,神谷和孝,清水公也:OcularResponseAnalyz-erによる円錐角膜眼の角膜生体力学特性の測定.IOL&RS22:212-216,200812)KamiyaK,ShimizuK,IgarashiAetal:ClinicaloutcomesandpatientsatisfactionafterVisianImplantableCollamer性・有効性が高く,予測精度・安定性にも優れており,さらに患者満足度も良好であることが報告されている12).平均発症年齢が50歳前後であり,最も危惧される調節力の低下に関しては軽度であり,臨床上あまり大きな問題となりにくいのかもしれない13).PhakicIOLは術後合併症に対する管理が比較的容易であり,患者・医師ともに不幸な転帰を迎えにくいと考えられる.V他の方法との比較と問題点前房型phakicIOLとの比較では,後房型phakicIOLは手術手技自体が比較的容易であり,特に白内障手術に習熟した術者であれば学習曲線も短いと考えられる.また,近年円錐角膜やkeratectasiaに対して角膜内リング(ICRs)やcornealcross-linking(CCL)の有用性が報告されている.ICRsやCCLとの比較では,phakicIOLは近視・乱視矯正効果は高いが,角膜強度が改善するものではない.あくまでphakicIOLは球面度数・円柱度数のみを矯正するものであり,高次収差自体は改善しない.よって眼鏡矯正視力が良好な軽度・中等度までが適応であり,高度の円錐角膜症例は対象から除外すべきである.高度な症例のうち,角膜中央部の混濁が少なければ,前述したICRsやCCLをまず施行し角膜強度を増加させた後,安定化してから残余屈折異常に対してtoricphakicIOLでの矯正を,中央部の混濁が強ければ,必要に応じて角膜移植を考慮する必要がある.白内障を合併している症例であればtoricIOLが有用と考えられる.おわりに円錐角膜に対するphakicIOL挿入術の初期臨床成績は良好であった.本疾患は角膜屈折矯正手術の禁忌であり,新たな屈折矯正方法の選択肢の一つとなりうると考えられた.ただし,すべての円錐角膜症例に適応するのではなく,初期・中等度で不正乱視が少なく,屈折が安定した症例が適応であることを強調したい.円錐角膜では高度近視性乱視を認めることが多く,本術式は円錐角膜の屈折矯正方法として有用と考えられた.しかしながら,今回は少数例による予備的な検討であり,まれな合併症を検討するには症例数が不十分であり,多数例によ———————————————————————-Page6464あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(48)13)KamiyaK,ShimizuK,AizawaDetal:Timecourseofaccommodationafterimplantablecollamerlensimplanta-tion.AmJOphthalmol146:674-678,2008Lensremovalandphacoemulsicationwithintraocularlensimplantationineyeswithinducedcataract.Eye,2009Apr24.[Epubaheadofprint]