———————————————————————- Page 1(95)ツꀀ 13930910-1810/09/\100/頁/JCOPYツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ あたらしい眼科 26(10):1393 1399,2009c〔別刷請求先〕井上幸次:〒683-8504 米子市西町 36-1鳥取大学医学部視覚病態学教室Reprint requests:Yoshitsugu Inoue, M.D., Division of Ophthalmology and Visual Science, Faculty of Medicine, Tottori University, 36-1 Nishimachi, Yonago-shi 683-8504, JAPANIn Vitro 薬剤感受性検査によるトスフロキサシン単剤投与 有効性の検証佐伯有祐*1宮 大*1井上幸次*1藤原弘光*2谷本綾子*2岡崎俊朗*2*1 鳥取大学医学部視覚病態学教室*2 鳥取大学医学部附属病院検査部Veriication by In Vitro Antibacterial Activity of Efectiveness of Tosuloxacin AloneYusuke Saeki1), Dai Miyazaki1), Yoshitsugu Inoue1), Hiromitsu Fujiwara2), Ayako Tanimoto2) and Toshiro Okazaki2)1)Division of Ophthalmology and Visual Science, Faculty of Medicine, Tottori University, 2)Division of Clinical Laboratory, Clinical Facilities, Tottori University Hospital細菌性角膜炎などの重症外眼部感染症に対する点眼治療としてニューキノロン系点眼と cefmenoxim(CMX)点眼の併用療法が広く行われているが,最近はよりグラム陽性球菌に対する効果が増強された新しいニューキノロン系点眼が使用できるようになり,単剤投与による治療も可能ではないかと思われる.そこで今回,その点を inツꀀ vitro の薬剤感受性検査で検証した.鳥取大学医学部附属病院にて分離された細菌 72 株を用いて,levo oxacin(LVFX),tosu- oxacin(TFLX),gati oxacin(GFLX),moxi oxacin(MFLX),および CMX の MIC(最小発育阻止濃度)を測定したところ,全株に対する MIC80(μg/ml)は LVFX>16,TFLXツꀀ 4,GFLXツꀀ 8,MFLX>16,CMX>16 であった.また5 株の主要菌(Staphylococcusツꀀ aureus,Staphylococcusツꀀ epidermidis,Streptococcusツꀀ pneumoniae,Pseudomonasツꀀ aerugi-nosa,Haemophilusツꀀ in uenzae)を用いて TFLX 単剤の場合と LVFX と CMX を混合した場合(LVFX+CMX)のpostantibioticツꀀ e ect(PAE)および postantibioticツꀀ bactericidalツꀀ e ect(PABE)を測定したところ S.ツꀀ epidermidis,P. aeruginosa,H.ツꀀ in uenzae に対して TFLX は LVFX+CMX よりも PAE が延長していた.また PABE の測定では,5つの主要菌すべてに対して TFLX は LVFX+CMX と同等あるいはそれ以上の殺菌率を示した.PAE,PABE の結果から,TFLX 点眼が従来の LVFX と CMX の点眼併用に比肩する治療となりうる可能性が示された.Variousツꀀ antibioticツꀀ eyedropsツꀀ haveツꀀ beenツꀀ usedツꀀ forツꀀ treatingツꀀ bacterialツꀀ ocularツꀀ infection.ツꀀ Theツꀀ combinationツꀀ ofツꀀ uoroquinoloneツꀀ andツꀀ cefmenoxim(CMX)ophthalmicツꀀ solutionsツꀀ inツꀀ particularツꀀ hasツꀀ beenツꀀ widelyツꀀ usedツꀀ againstツꀀ severe infectious diseases such as bacterial keratitis. Novelツꀀ uoroquinolone ophthalmic solutions with improved antibacteri-alツꀀ activityツꀀ againstツꀀ gram-positiveツꀀ cocciツꀀ haveツꀀ recentlyツꀀ becomeツꀀ available,ツꀀ soツꀀ itツꀀ hasツꀀ beenツꀀ thoughtツꀀ thatツꀀ useツꀀ ofツꀀ aツꀀ uoroquinoloneツꀀ ophthalmicツꀀ solutionツꀀ aloneツꀀ isツꀀ su cientツꀀ forツꀀ treatingツꀀ bacterialツꀀ keratitis.ツꀀ Inツꀀ theツꀀ presentツꀀ studyツꀀ we veri ed this point on the basis of in vitro antibacterial activity. First, we determined the minimum inhibitory con-centration(MIC)ofツꀀ levo oxacin(LVFX),ツꀀ tosu oxacin(TFLX),ツꀀ gati oxacin(GFLX),ツꀀ moxi oxacin(MFLX),ツꀀ and CMXツꀀ againstツꀀ 72ツꀀ clinicalツꀀ isolatesツꀀ collectedツꀀ fromツꀀ patientsツꀀ withツꀀ eyeツꀀ infectionツꀀ atツꀀ Tottoriツꀀ Universityツꀀ Hospital.ツꀀ Itツꀀ was found that the MIC80(μg/ml)against all 72 isolates was 16 or more with LVFX, 4 with TFLX, 8 with GFLX, 16 or more with MFLX and 16 or more in CMX. We then examined in vitro the postantibiotic e ect(PAE)and the post-antibioticツꀀ bactericidalツꀀ e ect(PABE)ofツꀀ TFLXツꀀ aloneツꀀ andツꀀ theツꀀ combinationツꀀ ofツꀀ LVFXツꀀ withツꀀ CMX(LVFX+CMX)againstツꀀ Staphylococcusツꀀ aureus,ツꀀ Staphylococcusツꀀ epidermidis,ツꀀ Streptococcusツꀀ pneumoniae,ツꀀ Pseudomonasツꀀ aeruginosa,ツꀀ and Haemophilusツꀀ in uenzae.ツꀀ Theツꀀ PAEツꀀ ofツꀀ TFLXツꀀ againstツꀀ S.ツꀀ epidermidis,ツꀀ P.ツꀀ aeruginosa,ツꀀ andツꀀ H.ツꀀ in uenzaeツꀀ wasツꀀ longer thanツꀀ thatツꀀ ofツꀀ LVFX+CMX.ツꀀ Theツꀀ PABEツꀀ ofツꀀ TFLXツꀀ againstツꀀ theツꀀ 5ツꀀ isolatesツꀀ wasツꀀ equalツꀀ orツꀀ superiorツꀀ toツꀀ thoseツꀀ ofツꀀ LVFX+CMX.ツꀀ Ourツꀀ resultsツꀀ indicateツꀀ thatツꀀ treatmentツꀀ ofツꀀ bacterialツꀀ keratitisツꀀ withツꀀ TFLXツꀀ isツꀀ possiblyツꀀ compatibleツꀀ withツꀀ thatツꀀ by LVFX+CMX.〔Atarashii Ganka(Journal of the Eye)26(10):1393 1399, 2009〕Key words:トスフロキサシン(TFLX),最小発育阻止濃度(MIC),postantibioticツꀀ e ect(PAE),postantibiotic bactericidalツꀀ e ect(PABE).tosu oxacin(TFLX),ツꀀ minimumツꀀ inhibitoryツꀀ concentration(MIC),ツꀀ postantibioticツꀀ e ect(PAE), postantibiotic bactericidal e ect(PABE).———————————————————————- Page 21394あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(96)はじめに現在,多くの抗菌点眼薬が外眼部感染症治療に対し使用されているが,ニューキノロン系抗菌点眼薬がそのなかで中核的な役割を担っている.ニューキノロン系抗菌点眼薬は強い抗菌力をもち,抗菌スペクトルも広く妥当な選択であると考えられる.一方,外眼部感染症の起炎菌としては,グラム陰性菌よりも,黄色ブドウ球菌,肺炎球菌などのグラム陽性菌のほうが多い1,2)が,従来のニューキノロン系抗菌点眼薬はセフェム系抗菌点眼薬に比べて,グラム陽性菌に対する抗菌力が劣ることが報告されている3).そのため,細菌性角膜炎などの比較的重症の外眼部感染症には,ニューキノロン系抗菌点眼薬とセフェム系抗菌点眼薬を併用する処方が従来から広く使用されていた1).近年, tosu oxacin(TFLX), moxi oxacin(MFLX), gati- oxacin(GFLX)などの新しいタイプのニューキノロン系点眼薬が開発され臨床的に使用されているが,それらのなかでも TFLX はグラム陰性菌,嫌気性菌に対する抗菌力を保持したまま,グラム陽性菌に対する抗菌力が増強されており4),セフェム系抗菌点眼薬の併用を行わなくても単独で使用できる可能性を有している.そのことが立証されれば TFLX 単独点眼が角膜炎などの重症外眼部感染症に対する新たな治療法となり,点眼本数の減少によるコンプライアンスの向上ならびに医療費の削減が期待できる.しかし,実際の臨床例で点眼薬の優劣を検証することはかなり困難であり,倫理的な問題を伴う.そこで今回筆者らは,inツꀀ vitro の手法を用い,眼感染症患者由来の臨床分離株を用いて最小発育阻止濃度(MIC)を測定することにより,TFLX の抗菌力を他のニューキノロン系抗菌点眼薬 GFLX,MFLX,levo oxacin(LVFX),およびセフェム系抗菌点眼薬 cefmenoxim(CMX)の抗菌力と比較し,さらに TFLX 単独での抗菌力と,従来から汎用されている LVFX と CMX の併用した場合の抗菌力を臨床現場における点眼使用により近い指標である postantibiotic e ect(PAE)ならびに postantibiotic bactericidal e ect(PABE)を測定することにより比較し,検討したので報告する.I対象および方法1. 菌株の収集と保存菌株は2006年6月1日から2007年5月31日までの間に鳥取大学医学部附属病院(以下,当院)眼科を受診した前眼部・外眼部感染症患者の結膜 ・角膜・涙 など感染局所より分離された 72 菌株を対象とした.菌の分離,同定,保存は当院検査部で行い 80℃にて保存した.2. 薬剤感受性測定当院検査部にて保存されていた上記 72 菌株にて,ニューキ ノ ロ ン 系 抗 菌 薬(TFLX,LVFX,GFLX,MFLX)とCMX に対する MIC を測定した.TFLX は 富 山 化 学 工 業 株 式 会 社 に て,LVFX,GFLX,MFLX,CMX は神戸天然物化学株式会社にて合成されたものを使用した.薬剤感受性測定は CLSI M11-A6,CLSI M7-A7 およびCLSI M100-S17 に準じた微量液体希釈法で実施した.3. PAE測定1.で使用した臨床分離菌のうち Staphylococcusツꀀ aureus,Staphylococcusツꀀ epidermidis,Streptococcusツꀀ pneumoniae,Pseudomonasツꀀ aeruginosa,Haemophilusツꀀ in uenzae 各 1 菌株について TFLX 単独と LVFX+CMX 併用の PAE を測定した.測定方法は,羊血液寒天培地 M58(栄研化学)またはチョコレート寒天培地(BBL)にて S.ツꀀ aureus,S.ツꀀ epidermidis,S. pneumoniae,P. aeruginosa,H. in uenzae 各菌株を培養後,滅菌生理食塩液を用いて懸濁し,McFarlandツꀀ 0.5(約108 CFU/ml)に調製して被検菌液とした.TFLX,LVFX+CMX を 5,ツꀀ 8,ツꀀ 200×MIC 濃度となるよう滅菌生理食塩液にて調製した後,被検菌液を混和し,5MIC は 60 分,8 MICは 30 分および 200 MIC は 2 分間静置した.静置後,10 μlを採取し,測定培地 10 ml に接種し混和した後,12,000×gで 10 分間遠心分離し菌体を沈殿させ,上清を除去して測定培地 10 ml を添加し再懸濁した.測定培地は薬剤感受性測定時と同様,S.ツꀀ aureus,S.ツꀀ epidermidis および P.ツꀀ aeruginosaは Muellerツꀀ Hintonツꀀ broth,S.ツꀀ pneumoniae は 5%ウマ溶血液添加 Muellerツꀀ Hintonツꀀ broth,H.ツꀀ in uenzae は HTM ブロスを用いた.再懸濁後ただちに 50 μl を採取し,滅菌生理食塩液を用いて 10 倍希釈系列を作製し(n=2,同一の再懸濁液より希釈),50 μl ずつ羊血液寒天培地 M58 またはチョコレート寒天培地に塗抹した.再懸濁液は引き続き 35℃で静置培養し,1 時間ごとに 12 時間後まで上記同様に行った.対象として薬剤不含有の滅菌生理食塩液を用いて同様に操作を行った.35℃,16 24 時間ツꀀ 好気培養後,発育したコロニー数を計測し,2 枚の平板に発育したコロニー数を平均して1 ml 当たりの生菌数(CFU/ml)を求めた.PAE は薬物処理後の菌が 1 log10増殖するのに要した時間から,薬物無処理対照の菌が 1 log10増殖するのに要した時間を差し引いた値とした.4. PABE測定3.で使用した S. aureus,S. epidermidis,S. pneumoniae,P.ツꀀ aeruginosa,H.ツꀀ in uenzae 各 1 菌株に対する TFLX 単独と LVFX+CMX 併用,オゼックスR点眼液(0.3%),クラビットR点眼液(0.5%),ベストロンR点眼液(0.5%),クラビットR点眼液(0.5%)+ベストロンR点眼液(0.5%)併用の PABE を測定した.測定方法は,羊血液寒天培地 M58 ま———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091395(97)たはチョコレート寒天培地にて 18 時間培養後,滅菌生理食塩液にて McFarland 0.5(約 108 CFU/ml)に調製し接種菌液とした.調 製 後 の 菌 液 を 滅 菌 小 試 験 管 に 10 μl 分 注 し,TFLX,LVFX+CMX を各 200×MIC,100×MIC,10×MIC に調製したもの,あるいは各種点眼液を原液のまま 50 μl 加え軽く攪拌した.4 分間室温にて静置後,滅菌生理食塩液を 10 ml 加え(約 200 倍希釈)よく攪拌した.さらに,滅菌生理食塩液を用いて 10 倍希釈系列を作製し(n=2,同一の被験液より希釈),50μl ずつ寒天平板培地に塗抹した.塗布後培地は,35℃で 24 時間好気培養後,発育したコロニーを計測し求めた 2 枚の平板の平均コロニー数より 1 ml 当たりの生菌数(CFU/ml)を求めた.対象(薬剤無添加)と比較し殺菌率(実測値%)を求め PABE(%)とした.II結果当院で前眼部・外眼部感染症患者より分離された 72 株の菌種を図 1 に示した.ブドウ球菌が半数を占めており,なかでも MRSA が 17 株と最も多かった.またその他の細菌のなかでは Corynebacterium 属がやはり 17 株と最も多く検出された.当院で分離された 72 株に対する MIC 分布を図 2 に示した.MIC80(μg/ml)でみると LVFX>16,TFLXツꀀ 4,GFLX 8,MFLX>16,CMX>16 との結果であった.S. aureus,S. epidermidis,S. pneumoniae,P. aerugino-sa,H.ツꀀ in uenzae 各 1 菌株に対する TFLX 単独と LVFX+CMX 併用の PAE の値を図 3 に示した.S.ツꀀ aureus に対しては 5 MIC 60 分曝露,8 MIC 30 分曝露では TFLX の PAE のほうが短いが,200 MIC,2 分間曝露の PAE は,TFLX が1.82 時間,LVFX+CMX は 1.76 時間と TFLX がやや良好であった(図 3A).S.ツꀀ epidermidis に対しては 5 MICツꀀ 60 分曝露では TFLX のほうがやや短い PAE を示したが,8 MIC 30 分曝露,200 MICツꀀ 2 分曝露では,TFLX が 2 倍またはそれ以上の PAE を示した(図 3B).S.ツꀀ pneumoniae に対してはいずれの条件においても TFLX のほうが LVFX+CMXよりも短い PAE を示した(図 3C).P.ツꀀ aeruginosa に対しては TFLX がいずれの条件でも LVFX+CMX よりも著明に良好な PAE を示した(図 3D).H. in uenzae については5MIC,8MIC の LVFX+CMX の PAE が負の値を示しており,CMX,LVFX,TFLX+CMX の PAE 測定も追加して行 っ た.CMX の H.ツꀀ in uenzae に 対 す る PAE は 5 MIC, 8 MIC,ツꀀ 200 MIC すべての濃度で負の値を示しており,200 MIC において TFLX の PAE が 0.24 時間なのに対し TFLX+CMX が 0.08 時間と PAE が短縮していた.なお,LVFXと併用した場合においても LVFX の PAE が 0.69 時間なのに対し LVFX+CMX が 0.60 時間と PAE が短縮していた(図 3E).S. aureus,S. epidermidis,S. pneumoniae,P. aerugino-sa,H.ツꀀ in uenzae 各 1 菌株に対する TFLX 単独と LVFX+CMX 併用の PABE の値を図 4 に示した.S.ツꀀ aureus に対する PABE は設定した 3 つの条件すべてにおいて TFLX がLVFX+CMX よりも良好な発育阻止率を示した(図 4A).S. epidermidis に対しては PABE は TFLX,LVFX+CMX ともに不良であった.S.ツꀀ pneumoniae に対しては 10 MIC,100 MIC では両者とも不良であったが,200 MIC では TFLX が37.5%,LVFX+CMX は 16.7%と TFLX が 2 倍以上良好なPABE を呈した(図 4C).P.ツꀀ aeruginosa に対しては条件にMSSA16.7%(12株)MRSA23.6%(17株)MSSE 5.6%(4株)MRSE 2.8%(2株)Streptococcus spp.(S. pneumoniaeを除く)18.1%(13株)S. pneumoniae1.4%(1株)Corynebacterium spp.23.6%(17株)H. in uenzae 1.4%(1株)Staphylococcus haemolyticus 1.4%(1株)P. aeruginosa 1.4%(1株)Stenotrophomonas maltophilia 1.4%(1株) acillus cereus 2.8%(2株)図 1分離菌(72 株)の菌種と菌株数ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 菌薬ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ >16CMX>16図 2分離菌(72 株)の薬剤感受性分布———————————————————————- Page 41396あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(98)よ っ て ば ら つ く も の の 200 MIC で は TFLX が 65.0%,LVFX+CMX は 66.7%でありほぼ同等であった(図 4D).H.ツꀀ in uenzae に対しては 10 MIC,100 MIC では TFLX のほうが良好であり,200 MIC では TFLX が 28.6%,LVFX+CMX も 28.6%と同等の値であった(図 4E).S. aureus,S. epidermidis,S. pneumoniae,P. aerugino-sa,H. in uenzae 各 1 菌株に対するオゼックスR点眼液,クラビットR点眼液,ベストロンR点眼液,ツꀀ クラビットR点眼液+ベストロンR点眼液併用の PABE を図 5 に示した.S. aureus に対する PABE はオゼックスR点眼液が 45.0%,クラビットR点眼液+ベストロンR点眼液併用が 26.7%であり(図 5A),S.ツꀀ epidermidis に対してはオゼックスR点眼液が4.03.63.22.82.42.01.61.20.80.40.0PAE(hr)4.03.63.22.82.42.01.61.20.80.40.0PAE(hr)TFLX1.471.631.822.651.731.760.911.021.761.130.530.740.160.290.990.600.581.140.170.110.24-0.02-0.63-0.01-0.06-0.77-0.77-0.73-0.180.080.060.690.600.441.011.03-0.030.400.39:5MIC 60分間: 8MIC 30分間:200MIC2分間:5MIC 60分間: 8MIC 30分間:200MIC2分間〔MIC(?g/m?):TFLX 0.12,LVFX 0.25,CMX 1〕〔MIC(?g/m?):TFLX 0.06,LVFX 0.25,CMX 0.25〕LVFX+CMXA. ????????B. ?????????????TFLXLVFX+CMX2.01.81.61.41.21.00.80.60.40.20.0PAE(hr)2.01.81.61.41.21.00.80.60.40.20.0-0.2PAE(hr)TFLX:5MIC 60分間: 8MIC 30分間:200MIC2分間:5MIC 60分間: 8MIC 30分間:200MIC2分間:5MIC 60分間: 8MIC 30分間:200MIC2分間〔MIC(?g/m?):TFLX 0.12,LVFX 1,CMX 1〕〔MIC(?g/m?):TFLX 0.25,LVFX 0.5,CMX 16〕LVFX+CMX1.00.80.60.40.20.0-0.2-0.4-0.6-0.8-1.0PAE(hr)TFLXLVFXCMXLVFX+CMXLVFX+CMXC. ????????????〔MIC(?g/m?):TFLX 0.008,LVFX 0.008,CMX 0.015〕E. ???????????D. ????????????TFLXLVFX+CMX図 3各臨床分離株に対するPAE———————————————————————- Page 5あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091397(99)16.0%,クラビットR点眼液+ベストロンR点眼液併用が 2.0%(図 5B)とどちらもオゼックスR点眼液が良好な PABEを示した.S.ツꀀ pneumoniae に対する PABE はオゼックスR点眼液が 60.3%,クラビットR点眼液+ベストロンR点眼液併用が 64.3%であり(図 5C),P. aeruginosa に対してはオゼックスR点眼液が 97.1%,クラビットR点眼液+ベストロンR点眼液併用が 91.2%(図 5D),H.ツꀀ in uenzae に対してはオゼックスR点眼液が 99.5%,クラビットR点眼液+ベストロンR点眼液併用が 100%(図 5E)とそれぞれほぼ同等の値を示した.III考按ニューキノロン系抗菌点眼薬は優れた抗菌力ならびに広い抗菌スペクトルを有し,眼感染症治療の中核を担っていることは言うまでもないが,現在国内で使用されているニューキノロン系抗菌点眼薬は多種にわたり,それぞれの抗菌力を比較検討することは非常に有用であると考えられる.そこでまず,眼科由来の臨床分離株に対する各ニューキノロン系抗菌点眼薬 MIC を測定したところ TFLX は薬剤感受性分布において MFLX,GFLX 同様 LVFX に比較して良好な分布を示し た. ニ ュ ー キ ノ ロ ン 系 抗 菌 薬 は Staphylococcus 属,Streptococcus 属などのグラム陽性菌に対し効果が不十分という報告3,5)があるが,TFLX は構造式の一部をジフルオロフェニル基に変更することによりグラム陽性球菌に対する抗菌力を強めた薬剤であり,このことによりグラム陰性桿菌のみならずグラム陽性球菌に対しても強力な抗菌力を有してお1009080706050403020100.0PABE(%)TFLX14.022.041.47.516.730.60.00.04.00.08.08.00.00.037.50.00.016.714.314.328.60.00.028.638.345.065.016.758.366.7:ツꀀ 10MIC 4分間:100MIC 4分間:200MIC 2分間1009080706050403020100.0PABE(%)1009080706050403020100.0PABE(%)1009080706050403020100.0PABE(%)1009080706050403020100.0PABE(%):ツꀀ 10MIC 4分間:100MIC 4分間:200MIC 2分間:ツꀀ 10MIC 4分間:100MIC 4分間:200MIC 2分間:ツꀀ 10MIC 4分間:100MIC 4分間:200MIC 2分間〔MIC(?g/m?):TFLX 0.12,LVFX 0.25,CMX 1〕〔MIC(?g/m?):TFLX 0.06,LVFX 0.25,CMX 0.25〕LVFX+CMXA. ????????B. ?????????????TFLXLVFX+CMXTFLX〔MIC(?g/m?):TFLX 0.12,LVFX 1,CMX 1〕〔MIC(?g/m?):TFLX 0.25,LVFX 0.5,CMX 16〕LVFX+CMXTFLXLVFX+CMXC. ????????????〔MIC(?g/m?):TFLX 0.008,LVFX 0.008,CMX 0.015〕E. ???????????D. ????????????TFLXLVFX+CMX:ツꀀ 10MIC 4分間:100MIC 4分間:200MIC 2分間図 4 各臨床分離株に対するTFLXならびにLVFX+CMXのPABE———————————————————————- Page 61398あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(100)り,今回の結果でも良好な値を示している.つぎに筆者らは,PAE を測定することによりそれぞれの抗菌薬を比較検討した.PAE は薬剤消失後の静菌作用持続時間の指標であり,点眼薬が高濃度で菌に作用し結膜 内において短時間で希釈されることを考えると,眼感染症領域における点眼薬の効果判定に有用であり,これまで多くの論文にて報告されてきた6,7)が,2 剤併用下での PAE を測定した報告は筆者らが検索した限りでは認められず,新しいニューキノロン系抗菌薬である TFLX 単剤とこれまで臨床で処方されてきた LVFX+CMX 併用の PAE を比較検討することは非常に意義があると考えられた.TFLX の PAE は LVFX+CMX と比較して S.ツꀀ aureus ではほぼ同等,S.ツꀀ epidermidis では延長していたが,S.ツꀀ pneu-moniae に対しては劣っていた.P.ツꀀ aeruginosa に対しては著明に長い PAE を示していた.これらの結果により TFLX はグラム陰性桿菌のみならず,グラム陽性球菌に対してもLVFX と CMX とを併用した場合と比較しても同等以上の薬剤消失後の静菌作用を有することが証明された.S. pneumo-niae についてはツꀀ CMX の良好な殺菌力を反映して LVFX+CMX の PAE が非常に良い結果を示していると考えられ,その意味で経験的に行われているレボフロキサシンとセフメノキシムの併用がこの菌に関しては決して誤っていないことを示していると思われる.CMX の H.ツꀀ in uenzae に対するPAE は驚くべきことに負の値を示しており,TFLX,LVFXと併用した場合においても PAE を短縮した.これまでにもCMX の P.ツꀀ aeruginosa,MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対する PAE が負の値を示す論文6,7)が認められ,その理由として CMX は細胞壁合成に干渉し細胞分裂を阻害することで静菌作用を有するため,菌との短時間接触では作用1009080706050403020100.01009080706050403020100.0PABE(%)1009080706050403020100.0PABE(%)45.020.031.326.7オゼックス クラビット ベストロン クラビット +ベストロン?PABE(%)A. ????????B. ?????????????C. ????????????E. ???????????D. ????????????16.014.016.02.060.361.957.964.399.5100.099.5100.097.192.226.591.2オゼックス?クラビット?ベストロン?クラビット?+ベストロン?1009080706050403020100.01009080706050403020100.0PABE(%)オゼックス?クラビット?ベストロン?クラビット?+ベストロン?PABE(%)オゼックス?クラビット?ベストロン?クラビット?+ベストロン?オゼックス?クラビット?ベストロン?クラビット?+ベストロン?図 5各臨床分離株に対する各点眼液のPABE———————————————————————- Page 7あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091399点に結合できず低い PAE 値を呈することが推測されている.しかし,負の値となることについては何か他の作用機序が働いている可能性があり,今後の検討,実験の蓄積を要すると考えられた.また,他剤との併用においても PAE を短縮したことから多剤併用投与が場合によっては感染治癒の弊害となる可能性を有すると推測された.たとえば H. in uenzaeがよく分離される小児の結膜炎に LVFX+CMX の併用を選択するようなことはしてはならないであろう.つぎに筆者らは,近年抗菌薬の新しい指標として考案された PABE を 測 定 す る こ と に よ り 比 較, 検 討 を 行 っ た.PABE は,薬剤の短時間の殺菌力と薬剤消失後の持続効果の両方を加味した指標として用いられており,点眼薬の臨床効果に最も近い手法として砂田らによって報告されたものである6).TFLX の PABE は LVFX+CMX と比較して,今回の 5種類の菌に対して濃度を問わずほぼ同等またはそれ以上の値であり,実際に市販されているオゼックスR点眼液においてもクラビットR点眼液+ベストロンR点眼液と比較して同様の結果が得られた.特に S.ツꀀ aureus,S.ツꀀ epidermidis についてはオゼックスR点眼液単独のほうが明らかに良好な発育阻止率を示した.また今回の結果より 200 MIC,100ツꀀ MIC,10 MIC の各種薬剤と比べ,実際に使用されている抗菌点眼薬のほうが明らかに良好な PABE 値を呈した.なお,CMXの H.ツꀀ in uenzae に対する PAE は負の値であったが,ベストロンR点眼液の H.ツꀀ in uenzae に対する PABE は 99.5%,クラビットR点眼液+ベストロンR点眼液も 100%と良好であり,抗菌力を考える際に,指標によってまったく異なる結果が得られることに注意する必要があると思われた.一方,Staphylococcus 属に対してはオゼックスR点眼液,クラビットR点眼液,ベストロンR点眼液いずれも PABE 値が比較的低い傾向が認められた.これは砂田らの報告の結果と一致しており6),これまで臨床的に処方されてきたクラビットR点眼液とベストロンR点眼液の併用においても良好な値は得られておらず,ブドウ球菌感染においてはアミノグリコシド系など別系統の点眼液の使用が見直されるべきかと思われた.今回の結果より in vitro において TFLX は, PAE, PABEのどちらの指標においても LVFX+CMX と比較し同等以上の値が認められ,TFLX 単剤点眼が従来の LVFX と CMXの点眼併用に比肩する治療となりうる可能性が示された.しかし,今回は種々の方法を試みたため各種 1 菌株での測定であり,株数を増やしてさらなる検討が必要であると考えられた.文献 1) 感染性角膜炎全国サーベイランス・スタディグループ:感染性角膜炎全国サーベイランス─分離菌・患者背景・治療の現況─.日眼会誌 110:961-972, 2006 2) 東堤稔:眼感染症起炎菌─最近の動向─.あたらしい眼科 17:181-190, 2000 3) 宮永嘉隆:5.眼科領域/局所療法.キノロン系薬剤の使い方(嶋田甚五郎ツꀀ 編著),p140-155,医薬ジャーナル社,1989 4) 神山朋子,杉浦陽子,久田晴美ほか:新規ニューキノロン系抗菌点眼薬トシル酸トスフロキサシン点眼液の薬効評価(1)─細菌学的評価─.あたらしい眼科 23(別巻):3-11, 2006 5) 内田幸夫:Lome oxacin(NY-198)点眼液の細菌性外眼部感染症に対する臨床効果の研究─多施設二重盲検法による臨床第三相試験─.眼紀 42:59-70, 1991 6) 砂田淳子,上田安希子,井上幸次ほか:感染性角膜炎全国サーベイランス分離菌における薬剤感受性と市販点眼薬のpostantibiotic e ect の比較.日眼会誌 110:973-983, 2006 7) 浅利誠志,豊川真弘,大橋裕一ほか:抗生物質点眼液の多剤耐性ブドウ球菌に対する postantibiotic e ect(PAE).眼科 33:1223-1229, 1991(101)***