0910-1810/10/\100/頁/JCOPYレベルが低いとされてはいるものの専門家の意見も耳を傾けるに値するようになる.日常診療でよく遭遇する緑内障診療に関する148の質問を10人の緑内障専門家に対して行い,意見が一致した項目が報告されている4,5).米国ではアメリカ眼科学会(AAO)が会員向けに種々の疾患の推奨診療方法(PreferredPracticePattern:PPP)を提示して,診療手順の標準化を目指している.このPPPの特徴は,推奨される検査法や治療法を提唱するだけではなく,望ましい診察間隔や必要な検査と頻度に至るまで提言していることである6).これらの報告も参考にしながら筆者らの開放隅角緑内障に対する治療戦略および戦術について述べたい.緑内障患者に対する生活指導も緑内障の治療戦略の一環として関連する文献を参考にしながら解説する.I目標眼圧の設定さて,緑内障性の視神経障害とそれに相当する視野障害があり,隅角も広くて癒着などなく続発緑内障も否定でき,さらに眼圧も22mmHgを超えるならば開放隅角緑内障と診断される.開放隅角緑内障と診断されたら,つぎは治療を開始する前に目標眼圧を設定するように勧められている.目標眼圧値の設定方法としては,わが国ではGoldmann視野測定の結果をベースにした岩田の報告がある7).緑内障病期に応じて目標眼圧を決定する方法で眼圧の絶対値を相手に治療するために実際の診療の場でははじめに緑内障は全世界で900万人以上の人が罹患し,世界では白内障についで失明原因の第2位の地位を占める疾患と推定されている1).緑内障の発症率は年齢とともに増加し,高齢化社会を迎えた日本でも失明原因の上位疾患にあげられ,緑内障治療を有効に行うことが求められている2).緑内障診療の要諦は緑内障を早期に発見し,ついで緑内障の病型を正しく診断することにある.そして病型ごとに定められた治療方法をとればよい.開放隅角緑内障と診断された場合,わが国においては疾患の進行期と患者のもつ危険因子に基づいて目標眼圧を設定して点眼治療を開始する.診断や治療はエビデンスに基づいて行われるべきと現在では考えられている.数多くの論文があるが,エビデンスレベルはランダム化された多施設の共同研究がレベル1と最も高く評価され,専門家の意見が最も低いレベル5と評価される3).ところがすべての事柄に必ずしもしっかりとしたデータや裏づけがあるわけではない.近年,臨床研究に対する倫理的な要求度が高まり,プロスペクティブな研究はもちろん,たとえレトロスペクティブな研究でも施設の委員会の承認を得る必要がでてきた.当然,被験者の権利は守られ,研究計画書の審査の過程で研究方法はより良い方向へ改善される.しかし,これらの手順を踏むには多くの時間と人手が要求される.さらに臨床研究が追いつかないくらいに新たな薬剤や診断機器もどんどん発表される.このような状況では(25)1037*YoshiakiKiuchi:広島大学大学院医歯薬学総合研究科視覚病態学(眼科学)〔別刷請求先〕木内良明:〒734-8551広島市南区霞1-2-3広島大学大学院医歯薬学総合研究科視覚病態学(眼科学)特集●原発開放隅角緑内障(広義)―私の管理法あたらしい眼科27(8):1037.1043,2010原発開放隅角緑内障(狭義)の治療戦略:私の場合AManagementStrategyforPrimaryOpen-AngleGlaucoma木内良明*1038あたらしい眼科Vol.27,No.8,2010(26)眼圧下降を目標眼圧とする人は多くない.もちろん目標眼圧は絶対的なものではない.状況に応じて変更すべきである.目標眼圧に到達しても視神経障害が進行すればさらに眼圧を下げるべきであるし,眼圧が目標眼圧まで下がらなくても,視神経が守られるならばそのままでも良い.治療前の眼圧から30%下げる,あるいは特定の数字を目指しても点眼1剤で目標眼圧を達成することは容易ではない.多くの場合,眼圧下降が少し足りないと感じながらも,そのまま経過観察することがほとんどであろう.無理矢理,目標眼圧まで眼圧を下げる必要はない.経過観察中に緑内障性の視神経障害が進行すれば点眼の変更,追加が行われ,あるところで外科的な治療に踏み切ることになる.その頃になると最初に設定された目標眼圧の数字はさほど意味がなくなっている.目標眼圧を設定する意義は大昔のように21mmHg以下の眼圧ならば良しとする概念を変えたことにある(図1).視神経所見と視野所見が悪化したときはさらなる眼圧下降を目指して治療を強化する.たとえ眼圧が10mmHgあるいは12mmHgのように低いときでも,さらなる眼圧下降を目指すべきであると考える意見が米国でも多い.このようなときに角膜の厚さが参考になる9).眼圧測定値が10mmHg台前半であっても角膜が薄いときは実際の眼圧値よりも低く表示されていると想像できるので思い切って眼圧を下げるステップに進みやすい.十分眼圧が下がっているのだから視野障害が進行してもこれ以上仕方がないと医師側が判断することが問題点として浮かび上がってくる.十分下がったとする眼圧レベルが15mmHg前後である場合があるからである.目標眼圧の概念が緑内障診療に与えた良い影響はもう一つある.治療前のベースラインデータをしっかりと取る必要性を認識させてくれたことである.治療前の眼圧から20.30%の眼圧下降を目指すためにベースライン眼圧を十分に把握する必要がある.日々変動,日内変動など眼圧は常に変動する.そのために無治療での眼圧測定が最低3回必要である.無治療で10回眼圧を測定した平均値と,1回測定との差,2回測定の平均値との差,3回測定の平均値との差,4回測定の平均値との差,というように測定回数を順次増やして10回測定の平均値使いやすい.視野障害がほとんどない時期には19mmHg,視野障害が出はじめる初期(孤立暗点,弓状暗点,鼻側階段のみ)では16mmHg,視野欠損が1/4以上ある時期では14mmHg以下に眼圧を保つと長期にわたって視野障害の進行が抑えられると報告した.視神経障害の程度に応じて進行期ごとに目標眼圧を設定すべきというものである.欧米には多数の開放隅角緑内障や高眼圧症患者を対象として眼圧下降が視野障害進行に及ぼす影響について調べた報告がいくつかある.そのなかの一つにAdvancedGlaucomaInterventionStudy(AGIS)があるが,これは緑内障手術のメリットとデメリットを科学的に証明するための研究である8).緑内障手術を行い長期間経過観察した症例のうち緑内障性視野障害が悪化しなかった例ではその間の平均眼圧が12.3mmHg以下であると述べられている.その他にベースライン眼圧から20.30%低い眼圧を目標眼圧とする方法もある4).米国では眼圧の30%下降を目指すとする意見が多く,ベースラインから20%の543210-1-2-306121824303642485460667278849096経過観察期間(月):A群:B群:C群:D群視野障害スコアの平均変化図1経過観察期間中の視野障害進行率経過観察期間中の平均眼圧はA群12.3mmHg,B群14.7mmHg,C群16.9mmHg,D群20.2mmHgであった.(文献8より改変)(27)あたらしい眼科Vol.27,No.8,20101039反対とコンセンサスが得られている.やはり単剤で治療を行い,つぎのステップで合剤の使用を考えるべきであろう.薬物に対する反応性には個人差がある.ベースラインから10%の眼圧下降が得られないときはノンレスポンダーとみなして治療方法を変えるべきである.できることなら片眼トライアルを行ってから両眼の治療を進めるが,そのためには患者とのコミュニケーションが大切である.神経質な患者は無治療期間が長引くことに抵抗を強く覚えるからである.たとえ視野障害が確認できなくても視神経に緑内障性の変化があると確信できるときは治療を開始する.眼圧下降作用以外にも循環改善作用,視神経保護作用など副次的な効果を併せ持つと宣伝される点眼薬があるが,臨床の現場では副次的な効果はあまり期待しない.2.Switching目標眼圧に到達しない場合には治療不十分とみなす.最初の点眼薬で2回以上続けて10%以上の眼圧下降が得られないときは新たな点眼を追加するよりも点眼の変更が望ましい.眼圧レベルに関係なく視機能障害が進行するときに追加あるいはswitchingを行う.同じクラスのなかでswitchingするほうが他のクラスの点眼薬を追加するより良いのか,あるいは他のクラスの点眼薬にswitchingするほうが良いのか一致した意見は今のところない.3.追加治療房水産生抑制を作用機序とする点眼薬を組み合わせても房水排出促進を作用機序とする点眼薬を組み合わせても十分な眼圧下降が得られることが多い.必ずしも異なった作用機序同士の緑内障点眼薬を組み合わせる必要はない.プロスタグランジンやb受容体遮断薬には炭酸脱水酵素阻害薬を追加すると良い.最初から合剤で治療を行うことは反対する意見が多数を占めているが,合剤はコンプライアンスを向上させるという点では意見が一致する.点眼薬の数,1日の点眼回数を減らすことはコンプライアンスを向上させるからである追加治療は点眼薬の数だけ副作用を増やすが,眼圧下降効果は単剤で期待されるほど増えない.追加治療におとの差を求めたときに,3回以上測定したときの平均値は10回測定の平均値と大きな差がないという学会報告があった.眼圧だけでなく視野の検査もベースラインデータを得るために複数回行う必要がある.必要な視野検査のプログラムは一つではないし,眼底解析装置による眼底所見のベースラインを形成する必要もある.緑内障治療を開始する前のベースラインの把握には時間がかかる.無治療で患者をフォローする間に,疾患の説明,予想される予後など患者とコミュニケーションをとるチャンスも増える.もっとも眼圧がその患者の残された視神経にとって危険なほど高くなっているときは,ベースラインの状態を十分把握するなどと悠長なことをしている暇はない.速やかに治療を開始する.一度下がった眼圧が徐々に上昇して,かつて視神経にダメージを生じたときの眼圧を上回ったときは視神経障害の進行を確認しなくても,再び眼圧を下げるべく治療を強化する.II薬物治療1.第一選択薬先進国では開放隅角緑内障に対してはまず点眼治療を行うべきとコンセンサスが得られている.薬剤選択にあたって,眼圧下降力,眼局所や全身的な副作用,点眼回数,患者の年齢と好みを考慮すべきである.性別と社会に対するコストはまず考慮に入れない.プロスタグランジン関連薬の眼圧下降作用が最も強く,他のクラスの眼圧下降薬の眼圧を下げる力はプロスタグランジン関連薬より劣ることは意見が一致するところである.プロスタグランジン関連薬は全身的に最も安全である.以上のことから開放隅角緑内障には強い眼圧下降作用をもち全身副作用の少ないプロスタグランジン関連薬を第一選択薬として使うべきである.わが国の緑内障診療のガイドラインでは治療の第一選択としてプロスタグランジン関連薬とb受容体遮断薬が推奨されている.米国の専門家のパネルではb受容体遮断薬や炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)はfirstlineとして使う薬とは考えられていない.合剤がわが国でも発売されるようになった.しかし,いかなる組み合わせでも合剤を最初の薬として使うのは1040あたらしい眼科Vol.27,No.8,2010(28)トマイシンCほど低い眼圧を得ることができないことはわかっており,インプラント手術を最初の手術とすることに関してコンセンサスは得られない.非穿孔トラベクレクトミーはトラベクレクトミーより合併症が少ないが眼圧下降作用も少ない.強い眼圧下降を必要とする患者には非穿孔トラベクレクトミーは勧められないが,中等度の眼圧下降でよい患者には適しているかもしれない.VI診断・検査視神経乳頭を撮影した眼底写真が緑内障の診断に一番有用である.緑内障の診断や管理には高価なステレオ眼底写真やイメージング装置が必要であるという意見は多くない.視神経乳頭と視野の評価は最低1年に1回は行うべきと米国の医師は推奨する.視野検査の結果はよく変動するので,少ない回数の視野検査で障害の進行を判定できない.であるので1年に1回の測定では視野障害の進行を捕まえるのに時間がかかりすぎると筆者は感じる.障害の進行を早期に捕まえるには少なくとも年に2回の測定が必要である.特にベースライン情報を得るとき,視機能障害の進行を強く疑うときは年に3回から4回行ってもよい.HumphreyのSITA(SwedishInteractiveThresholdAlgorithm)プログラムは緑内障診断のgoldenstandardではない.BlueonYellowとFrequencyDoublingPerimetry(FDT)は標準的な視野検査よりも緑内障性視野障害を早期に捕まえることができる.ある程度進行した緑内障では中心10°と中心30°あるいは24°を測定する二つのプログラムで経過を追いかけたほうが良い.比較的周辺部の視野に変化がなくても視力に大切な中央部の視野障害が進行する患者がいるからで,患者に合わせて種々のプログラムを選ぶことが大切である.隅角検査も随時行う必要がある.特に眼圧が急に上昇したときは隅角をみる.開放隅角緑内障と思っていた患者の眼圧上昇時に隅角結節や虹彩前癒着を発見することもまれではない.当初は開放隅角緑内障と診断されていても水晶体に加齢性変化が加わって閉塞隅角緑内障に移行する場合もある.勤務医の場合は人事異動があり,前任者の患者を引き継いで診療に当たることが多い.このいても片眼トライアルを行うべきである.そして目標眼圧を達成しても短期間で薬剤を減らさない.1年単位で治療方法の変更を考える.IIIレーザートラベクロプラスティ開放隅角緑内障治療の第一選択にはならない.第二あるいは第三の治療法であるとコンセンサスが得られている.アルゴンレーザー(ALT)で行っても選択的YAGレーザー(SLT)で行ってもレーザートラベクロプラスティの眼圧下降効果および早期の合併症は同じである.くり返しレーザー治療を行っても眼圧下降効果を増強すると考える専門家はいない.筆者らの施設でもレーザー前の眼圧レベルから20%以上眼圧を下げる確率は術後半年の時期で調査してもALTとSLT間で差がなかった.IV緑内障手術緑内障点眼治療が不可能なとき,あるいは点眼治療の効果が不十分なときに手術の適応となる.手術を決断するには必ずしも最大耐用薬剤数を満たしていなくてもよい.視野障害が強いとき,中心視野が飛びそうなときなど,より低い眼圧が必要なときは緑内障手術を決断する.開放隅角緑内障に対してはトラベクレクトミーが初回手術として有効であり,そのときは核酸代謝阻害薬を必ず併用する.残念ながらトラベクロトミーは開放隅角緑内障に対して効果が乏しいように思える.V白内障同時手術点眼でうまく緑内障をコントロールできているときは,白内障手術を透明角膜切開で単独手術として行うべきである.緑内障と白内障の同時手術は行わない.眼圧のコントロールが不十分と思われるときは白内障と緑内障の同時手術を行うが,同時手術は単独手術よりも眼圧コントロール成績が良くないと感じている人が多い.同時手術は白内障手術と緑内障手術を同じ術野で行っても(onesite)別々の場所で行っても(twosite)眼圧下降作用に差がない.今後,わが国でもインプラント手術が始まると思われるが,インプラント手術ではトラベクレクトミー+マイ(29)あたらしい眼科Vol.27,No.8,201010415%を説明できるにすぎないので過度に気にしないほうがよい10).開放隅角緑内障では末期になればなるほど治療にお金がかかるため早期に発見し,手遅れにならないように適切な治療を行うべきである11~13).VIII生活指導眼圧を下げることで緑内障の進行を抑えることができるなら,眼圧を下げるライフスタイルを取り入れることで緑内障発症のリスクを軽減するだけでなく治療にも貢献できる.もちろん医療経済にも良い影響を与える.緑内障患者や家族からも日常生活に関する質問をよく受ける.1.有酸素運動と眼圧Walking,runningなどの筋肉の収縮と弛緩を伴うダイナミックな有酸素運動は眼圧を下げる.眼圧下降は運動強度に比例する(図2)14).運動に伴う血圧と眼圧の変化は同時に起こるが,両者の間には関係がない.有酸素運動で眼圧は下がるけど,その眼圧下降メカニズムはわかっていない.3カ月間の有酸素運動で緑内障患者のベースライン眼圧は下がるが,運動をやめると3週間ほどで元の眼圧レベルに戻る.緑内障患者に運動の可否を尋ねられたときは運動を勧めたほうが良いと考えられている.ようなときも前任者の隅角所見を鵜呑みにするのではなく,自分で再確認する作業を行いたい.開放隅角緑内障はベースライン眼圧を元に相対的な眼圧の変動をみながら治療する.角膜厚を測定していちいち真の値に換算する必要はないし,そのようなことは不可能である.VIIその他,一般的な事項眼科外来での血圧測定,眼圧日内変動の測定および患者に生活の不自由度を尋ねることが緑内障の診療として本当に必要かどうかわからない.これは米国専門家の意見である.ある程度眼圧が下がっているはずなのに視神経障害が進行するときに眼圧日内変動の測定が推奨されることがある.そのようなときには夜間の眼圧が上昇していることが多いからである.夜間眼圧が上昇していればさらに眼圧を下げる方向に治療が進む.しかし,たとえ夜間の眼圧がさほど上昇していなくても,視神経障害の進行を抑制したいのならばやはり眼圧を下げるしかない.であれば,苦労して眼圧日内変動を測定する必要があるのだろうか.緑内障患者は徐々に進行する疾患の性格上,よほど進行しない限り,患者は生活に不自由を感じないことが多い.外来での質問に対して,たとえ真の答えが得られたとしても,眼科医が解決できる問題は限られている.緑内障の発症には遺伝的要素が強いと思われるが,現在まで明らかにされた緑内障関連遺伝子は緑内障全体の10-1-2-3-4-5-6Time(min)-200204060Running**Recovery*70%HR(n=7)10-1-2-3-4-5-6Time(min)-200204060RunningRecovery******55%HR(n=8)10-1-2-3-4-5-6Time(min)-200204060RunningRecovery*40%HR(n=9)図2運動強度と眼圧下降度運動強度が強いほど眼圧はよく下がる.*p<0.05,**p<0.01.(文献14より)1042あたらしい眼科Vol.27,No.8,2010(30)隅角緑内障の発症率に関係はなかった.Omega-6と比べてomega-3摂取の比率が高いほど緑内障になりやすいという報告19)がある一方で逆の結果を示す報告もある.動物実験ではomega-3の摂取を少なくするとより眼圧が下がっている20).Omega-3は脳梗塞や心疾患に伴う突然死を予防するのでいたずらに摂取量を減らすこともできない.脂肪酸に関しては緑内障患者にどういったことを勧めて良いのか結論は出ない.6.抗酸化剤酸化ストレスは線維柱帯のDNAに作用して房水流出抵抗を増加させ,眼圧を上昇させる21).酸化作用は神経節細胞死にも関与する22).抗酸化作用をもつ食物の摂取量と緑内障の発症を調べた研究がある23).多数の症例を対象に検討したその報告によると,カロチノイド,ビタミンE,Cと緑内障の発症には何の関係も見出すことはできていない.7.日常での生活指導患者の日常生活に関する質問には,食べる物には関係ない,できるだけ運動してやせてくださいと指導している.文献1)GoldbergI:Howcommonisglaucomaworldwide?Glaucomainthe21stCentury(edbyWeinrebRN),p1-8,Mosby,Landau,Germany,20002)IwaseA,SuzukiY,AraieMetal:Theprevalenceofprimaryopen-angleglaucomainJapanese.TheTajimiStudy.Ophthalmology111:1641-1648,20043)三宅謙作:わかりやすい臨床講座エビデンスに基づく医療(EBM-診療ガイドライン)最近の動きと問題点(解説).日本の眼科74:1347-1351,20034)WilsonMR,LeePP,WeinrebRNetal:Apanelassessmentofglaucomamanagement:modificationofexistingRAND-likemethodologyforconsensusinophthalmology.PartI:Methodologyanddesign.AmJOphthalmol145:570-574,20085)SinghK,LeeBL,WilsonMR:Apanelassessmentofglaucomamanagement:modificationofexistingRANDlikemethodologyforconsensusinophthalmology.PartII:Resultsandinterpretation.AmJOphthalmol145:575-581,20086)アメリカ眼科学会ホームページ(http://wwwaao.org/)2.等長運動と眼圧ダンベルやバーベルを用いた等長運動は筋肉の長さを変えずに筋肉に負荷を加える運動のことである.等長運動の直後も眼圧が下がるが,やはり眼圧下降機序はわかっていない.通常の運動強度では眼圧が下がるが,最大努力で行う等長運動では眼圧が上昇する.息を止めて重量挙げをすると逆に眼圧が上がるのがその例である.適度な強度の等長運動ならば禁止する必要はない.3.運動と眼底血流眼圧を十分下げても緑内障性視神経障害の進行を止めることができないことがある.循環因子が考慮される所以である.眼血流と緑内障性の視神経障害に関して数多くの研究がなされているが,唯一コンセンサスが得られているのは眼灌流圧の減少が緑内障性の視神経障害を促進するということである.通常の運動後には血圧は上昇し,先に述べたように眼圧は下がる.したがって眼灌流圧は運動で増える.オートレギュレーションが作用して眼血流は変化しにくいが,運動で脈絡膜の血流は増える.脈絡膜血管のオートレギュレーションは喫煙で壊れる.しかし,喫煙と緑内障の発症に有意な相関を示すことができた報告はない.4.BodyMassIndexBodyMassIndex(BMI)は身長を体重で割った数字である.栄養の摂取と消費のバランスを示す.BMIの増加は2型糖尿病,高血圧,冠動脈障害,脳梗塞,痛風の危険因子である.肥満が加齢性の白内障や黄斑変性の危険因子として考えられることもあるが,この件に関してはまだ検討の余地がある15).BMIが増加すると眼圧が高くなるという報告が複数ある16~18).しかし,体重や身長と緑内障発症の関係を示した報告はない.5.脂肪の摂取プロスタグランジンF2aの誘導体が眼圧を下げることはよく知られている.リノレン酸のomega-6,omega-3はプロスタグランジンの前駆物質である.脂肪酸の摂取で内因性のプロスタグランジンが増減して,眼圧に影響を及ぼす可能性が考えられたが,脂肪酸の摂取量と開放あたらしい眼科Vol.27,No.8,201010437)岩田和雄,難波克彦,阿部春樹ほか:低眼圧緑内障および原発開放隅角緑内障の病態と視神経障害機構.日眼会誌96:1501-1531,19928)TheAdvancedGlaucomaInterventionStudy(AGIS):7.Therelationshipbetweencontrolofintraocularpressureandvisualfielddeterioration.TheAGISInvestigators.AmJOphthalmol130:429-440,20009)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第2版).日眼会誌110:792,200610)HewittAW,CraigJE,MackeyDA:Complexgeneticsofcomplextraits:thecaseofprimaryopen-angleglaucoma.ClinExperimentOphthalmol34:472-484,200611)TraversoCE,WaltJG,KellySPetal:Directcostsofglaucomaandseverityofthedisease:amultinationallongtermstudyofresourceutilizationinEurope.BrJOphthalmol89:1245-1249,200512)LeePP,WaltJG,DoyleJJetal:Amulticenter,retrospectivepilotstudyofresourceuseandcostsassociatedwithseverityofdiseaseinglaucoma.ArchOphthalmol124:12-19,200613)GieserDK,TracyWilliamsR,O’ConnellWetal:Costsandutilizationofend-stageglaucomapatientsreceivingvisualrehabilitationcare:aUSmultisiteretrospectivestudy.JGlaucoma15:419-425,200614)KiuchiY,MishimaHK,HotehamaYetal:ExerciseintensitydeterminesthemagnitudeofIOPdecreaseafterrunning.JpnJOphthalmol38:191-195,199415)CheungN,WongTY:Obesityandeyediseases.SurvOphthalmol52:180-195,200716)KleinBE,KleinR,LintonKL:IntraocularpressureinanAmericancommunity.TheBeaverDamEyeStudy.InvestOphthalmolVisSci33:2224-2228,199217)WuSY,LeskeMC:AssociationswithintraocularpressureintheBarbadosEyeStudy.ArchOphthalmol115:1572-1576,199718)MoriK,AndoF,NomuraHetal:RelationshipbetweenintraocularpressureandobesityinJapan.IntJEpidemiol29:661-666,200019)KangJH,PasqualeLR,WillettWCetal:Dietaryfatconsumptionandprimaryopen-angleglaucoma.AmJClinNutr79:755-764,200420)NguyenCT,BuiBV,SinclairAJetal:Dietaryomega3fattyacidsdecreaseintraocularpressurewithagebyincreasingaqueousoutflow.InvestOphthalmolVisSci48:756-762,200721)KumarDM,AgarwalN:Oxidativestressinglaucoma:aburdenofevidence.JGlaucoma16:334-343,200722)OkumichiH,MizukamiM,KiuchiYetal:GABAAreceptorsareassociatedwithretinalganglioncelldeathinducedbyoxidativestress.ExpEyeRes86:727-733,200823)KangJH,PasqualeLR,WillettWetal:Antioxidantintakeandprimaryopen-angleglaucoma:aprospectivestudy.AmJEpidemiol158:337-346,2003(31)