———————————————————————-Page1(131)9970910-1810/09/\100/頁/JCOPYあたらしい眼科26(7):9971001,2009c〔別刷請求先〕山下力:〒701-0193倉敷市松島288川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科Reprintrequests:TsutomuYamashita,DepartmentofSensoryScience,FacultyofHealthScienceandTechnology,KawasakiUniversityofMedicalWelfare,288Matsushima,Kurashiki-city,Okayama701-0193,JAPANスペクトラルドメインOCTによる網膜神経線維層厚と黄斑部網膜内層厚の視野障害との相関山下力*1,2)家木良彰*2後藤克聡*2桐生純一*2可児一孝*1田淵昭雄*1*1川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科*2川崎医科大学眼科学教室MacularInnerRetinalLayerThicknessasMeasuredbySpectral-DomainOpticalCoherenceTomographyandRetinalNerveFiberLayerThickness,andCorrelationofVisualFieldLossTsutomuYamashita1,2),YoshiakiIeki2),KatsutoshiGotou2),JunichiKiryu2),KazutakaKani1)andAkioTabuchi1)1)DepartmentofSensoryScience,FacultyofHealthScienceandTechnology,KawasakiUniversityofMedicalWelfare,2)DepartmentofOphthalmology,KawasakiMedicalSchool目的:緑内障眼に対しスペクトラルドメインOCT(光干渉断層計)のRTVue-100を用い視神経乳頭周囲の網膜神経線維層厚(RNFLT)と黄斑部網膜内層厚(ganglioncellcomplexthickness:GCCT)を測定し,視野障害との相関を検討した.対象および方法:対象は,原発開放隅角緑内障28例53眼,正常眼圧緑内障31例54眼である.方法は,RTVue-100を用いRNFLTとGCCTを測定した.Humphrey視野計(中心30-2プログラム)におけるmeandevia-tion(MD)値およびglaucomahemieldtestでのzone別閾値(中心部閾値)との相関関係を検討した.結果:RNFLTおよびGCCTはどちらも同程度にMD値と有意な相関関係を認めた.MD値による病期分類では,RNFLTとGCCTともに初期と中期の間には有意差を認めたが,中期と末期の間には有意差は認めなかった.RNFLTとGCCTともに初期群ではMD値と有意な相関を認めたが,中期群と末期群では相関しなかった.中心部閾値に限れば,GCCTのほうが2分割RNFLTよりもよく相関していたが,RNFLTを8分割すると上耳側と下耳側で強い相関を示し,GCCTと同程度であった.GCCTは耳側RNFLTと強く相関していた.結論:RTVue-100によるRNFLTとGCCTはともに緑内障性視野障害を初期から反映していた.さらに細かく分割して分析すれば,GCCTはRNFLTよりも局所的視野変化を捉えられる可能性を秘めていると考えられた.WeusedtheRTVue-100tomeasuremacularinnerretinallayerthickness(ganglioncellcomplexthickness:GCCT)andretinalnerveberlayerthickness(RNFLT)inglaucomatouseyesandstudiedthecorrelationwithvisualeldloss.Theseriescomprised28patients(53eyes)withprimaryopen-angleglaucomaand31patients(54eyes)withnormal-tensionglaucoma.Westudiedmeandeviation(MD)withtheHumphreyeldanalyzer(central30-2program)andthecorrelationwiththreshold(centerthreshold)accordingtothezoneintheglaucomahemieldtest.InacknowledgementofMDandRNFLTandthesignicantcorrelationthatGCCTwasequal.RNFLTandGCCTdecreasedsignicantlyincomparisonwithearlystageinclassiedbyMDvalueasforthemediumandadvancedstages.AnearlystageshowedMDvalueandasignicantcorrelationtogether,butRNFLTandGCCTdidnotrelatetoinmediumandadvancedstages.Onlyforcenterthreshold,andGCCTdivisionintotworelatedtobetterthanRNFLT,butweshowedthecorrelationthatwasstronginthesuperiorandinferiortemporalperipapillarysectorswhenwegroundRNFLTdivisionintoeightandweresimilartoGCCT.GCCTstronglyrelatedtotemporalsectorsRNFLT.RNFLTbyRTVue-100andGCCTbothreectedglaucomatousvisualeldlossfromtheearlystages.Ifwedivideditmorenelyandanalyzedit,itwasthoughtthatGCCThidlikeli-hoodarrestedaeldchangemorelocalthanRNFLT.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(7):9971001,2009〕Keywords:黄斑部網膜内層厚,網膜神経線維層厚,RTVue-100,緑内障性視野障害.macularinnerretinallayerthickness,retinalnerveberlayerthickness,RTVue-100,glaucomatousvisualeldloss.———————————————————————-Page2998あたらしい眼科Vol.26,No.7,2009(132)はじめに緑内障ガイドライン(第2版)では,緑内障性視神経乳頭・網膜神経線維層変化判定ガイドラインも追加され,緑内障の診断には視野異常と一致した網膜神経線維層の菲薄化や視神経乳頭陥凹の拡大などの構造的異常を検出することが非常に重要であるとされている.近年,網膜神経細胞レベルでの障害を量的,客観的に測定するために光干渉断層計(opti-calcoherencetomography:OCT)による網膜神経線維層厚(retinalnerveberlayerthickness:RNFLT)の測定が緑内障診断の補助として活用されている14).しかし,これらの報告はタイムドメインOCTにて行われたものであり,その後開発されたスペクトラルドメインOCTでは,より高速かつ高分解能となり,網膜層構造を明瞭に抽出できるようになっている.今回,スペクトラルドメインOCTであるRTVue-100(Optovue,Fremont,CA)を用いることによって,緑内障眼に対して視神経乳頭周囲のRNFLTだけではなく,神経節細胞に関連した層を含む内境界膜から内網状層外縁の黄斑部網膜内層厚(神経節細胞複合体,ganglioncellcomplexthickness:GCCT,図1)を測定した.このGCCTを測定することが,どれだけの意義をもつのか,同機で測定したRNFLTも含めて,視野障害との相関関係を検討したので報告する.I対象および方法対象は,原発開放隅角緑内障28例53眼,正常眼圧緑内障31例54眼で平均年齢64.3±12.1(3081)歳,屈折度数は1.4±2.6(6+4)Dである.矯正視力0.8以上で屈折異常は±6D以内とし,他の視神経疾患・網膜疾患を有しないもの,内眼手術の既往のないものとした.方法は,視神経乳頭解析ソフトRNFL3.45を使用し,視神経乳頭中心から直径3.45mmの部位の網膜を0.16秒で4回連続サークルスキャンし平均化されたRNFLTを測定した.RNFLTの解析は平均,2分割,6分割,12分割の平均が算出される.本研究においては,平均(全象限),2分割(上側,下側),8分割(耳側上部:0°45°,上耳側:45°90°,上鼻側:90°135°,鼻側上部:135°180°,鼻側下部:180°225°,下鼻側:225°290°,下耳側:290°335°,耳側下部:335°380°)の平均を検討項目とした.RTVue-100の黄斑部解析ソフトMM7を使用し,黄斑部7×7mmの範囲で長さ7mmのラインスキャンを水平方向に1本,垂直方向に0.5mm間隔で15本スキャンしGCCTを測定した.GCCTの解析は平均(全象限),2分割(上側,下側)の平均を算出した.RTVue-100施行前後3カ月以内にHumphrey自動視野計(Humphreyeldanalyzer:以下HFA,HumphreyInstruments,SanLeandro,CA,USA)中心30-2,SITAstandardを行った症例を対象としている.HFAにおけるglobalindexおよびglaucomahemieldtestでのzone別閾値(中心部閾値)とRNFLTおよびGCCTとの相関関係を検討した.Globalindexは,MD(meandeviation)値を用いた.HFAは,固視不良,疑陽性,疑陰性のすべてが20%未満の再現性良好な結果のみを採用した.今回の症例の視野検査結果は,MD値6.7±6.0(27.011.1)dB,PSD(patternstandarddeviation)値7.3±4.9(1.4913.94)dBを採用した.統計学的検討は,Mann-WhitneyのU検定,Spearman順位相関係数を用い危険率5%未満を統計学的に有意とした.II結果1.RNFLTとGCCTのMD値との相関107眼における平均RNFLTとMD値との相関関係はr=0.578,p=0.0001であり,平均GCCTとMD値はr=0.598,p=0.0001であった(図2).2.MD値の病期分類による平均RNFLTと平均GCCT平均RNFLTと平均GCCTを,MD値をもとに初期群59眼(MD>6dB),中期群25眼(6dB≧MD≧12dB),末期群23眼(12dB>MD)に分類した.平均RNFLTは,初期群では88.1±9.7μm,中期群では79.8±9.1μm,末期群では78.3±11.4μmであった.平均GCCTは,初期群では85.8±9.6μm,中期群では79.0±7.5μm,末期群では図1OCT像網膜神経節細胞に関連する網膜神経線維層,神経節細胞層,内網状層の3層の厚みを計測する.30-20-100406080100120140-30-20-100406080100120140平均GCCT(?m)平均RNFLT(?m)MD(dB)r=0.598p=0.0001r=0.578p=0.0001図2RNFLTおよびGCCTとMDとの相関関係左図は平均RNFLTとMDとの相関関係,右図は平均GCCTとMDとの相関関係を示す(107眼).前者の相関関係はy=0.2846×30.789(r=0.578,p=0.0001),後者はy=0.3516×35.347(r=0.598,p=0.0001)でほぼ同等であった.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.7,2009999(133)74.8±10.6μmとなった.RNFLTとGCCTともに,初期群と中期群の間で有意に減少し(p<0.01,Mann-WhitneyU-test),中期群と末期群には差は認めなかった(図3).3.MD値の病期分類による各群のMD値との相関初期群59眼における平均RNFLTとMD値との相関関係はr=0.492,p=0.0001であり,平均GCCTとMD値はr=0.397,p=0.0014であった.中期群25眼における平均RNFLTとMD値との相関関係はr=0.105,p=0.624であり,平均GCCTとMD値はr=0.169,p=0.430であった.末期群23眼における平均RNFLTとMD値との相関関係はr=0.090,p=0.691であり,平均GCCTとMD値はr=0.275,p=0.227であった(図4).4.RNFLTとGCCTのzone別閾値(中心部閾値)との相関中心部閾値の下半分(zone6+7)と上側RNFLTおよび上側GCCTとの相関関係,上半分(zone1+2)と下側RNFLTおよび下側GCCTとの相関関係を図5に示す.RNFLTの上下2分割では上側RNFLTでr=0.411,p=0.0002,下側RNFLTでr=0.608,p=0.0001であった.RNFLTを8分割して検討した場合は上耳側(r=0.597,p=0.0027)と下耳70.075.080.085.090.0初期中期末期初期中期末期88.179.878.385.879.074.8GCCT(平均)RNFLT(平均)Thickness(?m)視野*****図3MD値の病期分類によるRNFLT,GCCTの比較横軸はMD値による視野の病期,縦軸は各病期における平均RNFLTおよび平均GCCTを示す.初期と比較し,中期と末期に有意な減少を認めた(*:p<0.01,**:p<0.001).20-2-4-6-820-2-4-6-860-4-6-8-10-12-14-4-6-8-10-12-14-10-12-14-16-18-20-22-24-10-12-14-16-18-20-22-24MD(dB)初期中期末期405060708090100平均RNFLT(?m)607080901001101205060708090100110405060708090100平均GCCT(?m)7080901001101205060708090100110r=0.492p=0.0001r=-0.105p=0.624r=0.090p=0.691r=0.397p=0.0014r=-0.169p=0.430r=0.275p=0.227図4MD値の病期分類による各群のMDとの相関関係左側の図は各群における平均RNFLTとMDとの相関関係,右側の図は各群における平均GCCTとMDとの相関関係を示す(初期群59眼,中期群25眼,末期群23眼).初期群において平均RNFLT,平均GCCTともMDと有意な相関を認めた.下側RNFLT4分割GCCT下方(zone1+2)との相関上側RNFLT4分割上半分RNFLT平均r=0.411(p=0.0002)(zone6+7)との相関GCCT上方耳側鼻側下半分RNFLT平均r=0.608(p=0.0001)?????????????????????????????????????図5RNFLT,GCCTと中心部閾値との相関関係HFAのzone分類による中心部閾値と対応するRNFLT,GCCTとの相関関係を示す.図のHFA,RNFLT,GCCTは右眼を示している.RNFLTは上耳側・下耳側で相関性が強くなり,GCCTは上下とも強い相関性を示した.———————————————————————-Page41000あたらしい眼科Vol.26,No.7,2009(134)側(r=0.624,p=0.0001)にそれぞれ強い相関を認めた.GCCTは上下ともよく相関し,上側GCCTではr=0.533,p=0.0001で,下側GCCTではr=0.690,p=0.0001であった.5.GCCTとRNFLTの相関107眼における平均GCCTと平均RNFLTとの相関関係は,r=0.707,p=0.0001であった.水平線で上下に分けGCCTと8分割のRNFLTの相関関係を検討した(図6).上側GCCTと強い相関を認めたのは,耳側上部と上耳側であった.下側GCCTと高い相関を認めたのは,下耳側と耳側下部であった.III考按緑内障では視神経乳頭変化や網膜神経線維層の障害が視野異常に先行するとされる5).組織学的検討によると,自動視野検査では5dBの感度低下出現するまでに,網膜神経節細胞が20%減少しているとされている6).緑内障診断に視野測定は重要であるが,緑内障性の不可逆的視野変化が生じる頃には,すでに視神経細胞レベルでかなりの不可逆的な障害を受けているといえる.緑内障を早期に検出し評価する方法は,まだ確立されていないが,Tanら7)は,緑内障診断において重要なパラメータは黄斑部網膜内層厚であると報告した.この網膜内層は,視神経線維層,視神経節細胞層,内網状層からなる神経節細胞複合体で,それぞれ神経節細胞の軸索,細胞体,樹状突起として構成されている.筆者らは,スペクトラルドメインOCTであるRTVue-100がGCCTを自動計測できることに着目し,緑内障眼のGCCTを測定し,RNFLTとともに視野障害との相関を検討した.タイムドメインOCTによって測定された平均RNFLTは,視野の悪化に伴って有意な変化をすることや,MD値と有意に相関することはすでに報告されている14).筆者らがスペクトラルドメインOCTにより測定した平均RNFLTもMD値とよく相関していた.筆者らの測定した平均GCCTもMD値とよく相関していたが,RNFLTを大きく上回るものではなくほぼ同等であった.MD値により初期,中期,末期に分けて,3つの群を群間比較したところ,初期と中期の間でGCCTとRNFLTは有意に減少し,中期と末期の間には有意差を認めなかった.このことから,視野変化に比べて,初期と中期の間では黄斑部網膜内層厚と視神経乳頭の変化は比較的大きく,中期と末期の間では比較的少ないと考えられた.つまり,視野進行よりも視神経細胞レベルの障害が先行するという従来の報告に矛盾しないものであった.さらに,初期,中期,末期それぞれでRNFLTおよびGCCTとの相関関係をみたところ,RNFLTおよびGCCTともに初期ではよく相関していたが,中期と末期ではまったく相関していなかった.タイムドメインOCTによるRNFLTの既報では,初期よりも末期のほうがよく相関している結果であったが,スペクトラルドメインOCTでは異なる結果が出た.この理由として,一概に測定機器の違いだけでなく,視野障害のパターンには症例におけるばらつきがあり,単純にMD値だけでは把握しきれていないことが大きいのではないかと考えている.ただし,今回の筆者らの結果では,中期,末期よりも初期のほうで相関関係が強く出ているため,スペクトラルドメインOCTのほうがより初期段階での視神経レベルの変化をよく捉えていると考えられた.GCCTについても,RNFLTと同様に初期での相関関係を認め,ほぼ同様の結果であった.このことからRNFLTおよびGCCTは中期以降の緑内障の進行判定よりも,初期緑内障での進行判定に有用であると考えられた.さらにいえば,視野異常のほとんどないごく初期緑内障の検出に有用である可能性があるように思われた.MD値との相関では,GCCTは病期別に分けてもRNFLTとほぼ同様であった.GCCTは中心部閾値のみにしか対応しておらず,RNFLTは視神経乳頭全周を測定しているため,MD値の相関に関してはRNFLTのほうが優れているのかもしれない.そこで,GCCTはHumphrey自動視野計では上A-上側RNFLT①~④r=0.638(p=0.0001)A-上側GCCTB-下側RNFLT⑤~⑧r=0.740(p=0.0001)B-下側GCCT耳側鼻側r=0.757(p=0.0001)A-①r=0.629(p=0.0001)A-②r=0.283(p=0.009)A-③r=0.292(p=0.0082)A-④r=0.631(p=0.0001)B-⑧r=0.771(p=0.0001)B-⑦r=0.478(p=0.0001)B-⑥r=0.244(p=0.0274)B-⑤①⑧⑦⑥⑤④③②図6RNFLTとGCCTとの相関関係図は右眼におけるGCCTおよびRNFLTのセクター分類を示している.上側GCCT(A)と上側4象限RNFLT(①④)の相関関係,下側GCCTと下側4象限のRNFLT(⑤⑧)の相関関係を示す.GCCTと耳側RNFLT4象限で強い相関性を認めた.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.7,20091001(135)方zone1+2,下方zone6+7に対応しているので,その部分に限って,RNFLTとGCCTを再検討してみた.RNFLTで2分割の場合は下側の平均はよく相関していたが,上側はあまり相関していなかった.8分割して検討したところ,中心部閾値と強い相関が得られたのは上耳側と下耳側のみであった.耳上側,耳下側には中心部に対応する神経線維が多いと思われたが強い相関関係は認めなかった.耳上側,耳下側RNFLTに対応する視野異常は30-2プログラムよりも10-2プログラムで詳細に測定しないと検出できない可能性が考えられた.一方,GCCTは対応する中心部閾値と上下ともよく相関しており,特に下側GCCTと上方のzone1+2に強い相関性を認めた.RNFLTでは上半視野と乳頭下方の相関性が強くなるということが報告されており8),筆者らの測定したGCCTでもRNFLTと同様の結果が得られた.中心部閾値との相関において,GCCTは2分割された平均RNFLTよりもよく相関していたが,8分割された上耳側,下耳側RNFLTとは同程度であった.早期緑内障の視野変化は固視点近傍の暗点であり,全体を反映したMD値よりも,視野をセクターごとに分割して調べることは有用であったと思われた.最後にRNFLTを8分割してGCCTとの関係について調査したところ,GCCTはRNFLTのなかで耳側4象限(上耳側,下耳側,耳上側,耳下側)に強い相関関係を認めた.視野との関係ではRNFLTでの鼻側値は,全体のMD値には関与しているとは考えられるが,緑内障初期のBjerrum領域や傍中心の暗点には関与していないと考えられる.耳側のRNFLTはその点をよく反映しているため,平均RNFLTを用いて評価するよりも,耳側RNFLTが有用ではないかと考えている.なお,GCCTも現在の内蔵プログラムでは上下2分割でしか測定できないため,今後はより細かく分割するか,視神経線維束に沿った形で分析するかなどの工夫が必要であろう.今回スペクトラルドメインOCTでRNFLTとGCCTを測定したところ,RNFLTとGCCTは初期の段階から緑内障性視野障害とよく相関しており,早期の異常検出においては視野検査よりも有効である可能性があると思われる.緑内障眼において重要な意味をもつ中心部閾値とGCCTはよく相関しており,黄斑部網膜内層の網膜神経節細胞の減少を間接的に捉えられたことは有意義であった.しかし,これまでのRNFLTよりも有用で,それを凌駕するほどの意義については疑問が残る.その理由として,今回のRTVue-100によるGCCTは自動解析では上下分割のみの計測であり,局所的な網膜の凸凹は平均化されて無視されているためと考えられた.今後,内蔵されている自動測定プログラムの改善を待つか,手動で細かく解析していけば,より詳細な層厚の変化(局所的凹み)を捉えることができると思われる.そうなればpreperimetricな緑内障ごく初期の網膜構造的変化をより早く検出でき,その後の緑内障進行の程度をより詳細に把握することができる可能性がある.今後の検討課題としたい.文献1)尾﨏雅博,立花和也,後藤比奈子ほか:光干渉断層計による網膜神経線維層厚と緑内障性視野障害の関係.臨眼53:1132-1138,19992)朝岡亮,尾﨏雅博,高田真智子ほか:緑内障における網膜神経線維層厚と静的視野の関係.臨眼54:769-774,20003)早水扶公子,山崎芳夫,中神尚子ほか:緑内障眼における網膜神経線維層厚測定値と緑内障性視神経障害との相関.あたらしい眼科23:791-795,20064)大友孝昭,布施昇男,清宮基彦ほか:緑内障眼における網膜神経線維層厚測定値と視野障害との相関.臨眼62:723-726,20085)SommerA,KatzJ,QuigleyHAetal:Clinicallydetect-ablenerveberatrophyprecedestheonsetofglaucoma-touseldloss.ArchOphthalmol109:77-83,19916)QuigleyHA,DunkelbergerGR,GreenWR:Retinalgan-glioncellatrophycorrelatedwithautomatedperimetryinhumaneyeswithglaucoma.AmJOphthalmol107:453-464,19897)TanO,LiG,LuATetal,AdvancedImagingforGlauco-maStudyGroup:Mappingofmacularsubstructureswithopticalcoherencetomographyforglaucomadiagnosis.Ophthalmology115:949-956,20088)MarraaM,MansoldoC,MorbioRetal:DoesnerveberlayerthicknesscorrelatewithvisualelddefectsinglaucomaAstudywiththenerveberanalyzer.Oph-thalmologica211:338-340,1997***