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シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの連続装用が前眼部環境に及ぼす影響と安全性の検討

2008年12月31日 水曜日

———————————————————————-Page1(93)17010910-1810/08/\100/頁/JCLSあたらしい眼科25(12):17011707,2008c〔別刷請求先〕白石敦:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学医学部感覚機能医学講座視機能外科学分野Reprintrequests:AtsushiShiraishi,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,EhimeUniversity,454Shitsukawa,Toon,Ehime791-0295,JAPANシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの連続装用が前眼部環境に及ぼす影響と安全性の検討白石敦原祐子山口昌彦大橋裕一愛媛大学大学院感覚機能医学講座視機能外科学分野EvaluationofOcularSurfaceInuenceandSafetyinExtendedWearofNewlyApprovedSiliconeHydrogelContactLensAtsushiShiraishi,YukoHara,MasahikoYamaguchiandYuichiOhashiDepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,EhimeUniversity1週間連続装用のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(SHCL)がわが国で認可・発売されたが,連続装用については,まだ安全性を懸念する声も多い.そこで,SHCL連続装用の安全性を検証する目的で,1日使い捨てソフトコンタクトレンズ(SCL),頻回交換型SCL,1カ月交換の終日装用SHCLとの間で多角的な比較評価試験を行った.結果として,実用視力,前眼部所見ならびに涙液安定性に関する1週間連続装用SHCLの評価は,終日装用された他の従来型素材レンズ群と同等であった.一方,角膜厚に関しては,1カ月交換の終日装用SHCLと同様,変化は認められず,従来型素材レンズの終日装用で有意の増加がみられたのとは対照的であった.使用後のレンズの一部からコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)が検出されたが,細菌量はいずれも臨床的に問題のないレベルであり,細菌の検出率(陽性率)は1カ月交換の終日装用SHCLと比較して有意に低かった.他方,付着脂質量は従来素材のSCLよりも有意に多く,逆に,付着蛋白質量は,1日使い捨てSCLよりも有意に少なく,1カ月交換の終日装用SHCLよりも多かった.今回の検討から,新しい1週間連続装用のSHCLの安全性,有用性は,従来素材のSCLあるいは終日装用SHCLと遜色ないものと考えられる.Aone-weekextended-wearsiliconehydrogelcontactlens(1wSHCL)hasbeenmarketedinJapan,thoughnegativeopinionsremainregardingthesafetyofextendedwear.Thisstudywasdesignedtoexaminetheclinicalsafetyandutilityofthe1wSHCLincomparisonwiththreedailywearcontrols:adailydisposablesoftcontactlens(ddSCL),a2-weekreplacementsoftcontactlens(2wSCL)oramonthlysiliconehydrogelcontactlens(mSHCL).Nosignicantdierenceswereobservedbetween1wSHCLandthecontrolgroupsintermsofvision,slitlampndingsandtearstabilityanalysis.SignicantcornealswellingswereobservedinthetwohydrogelCLgroups,butnotinthetwoSHCLgroups.SomecoagulasenegativeStaphylococci(CNS)speciesweredetectedinbacteriologicalexaminationofwornlenses,thoughallwerefarbelowbacterialinfectionlevel.Thebacterialpositiveratiointhe1wSHCLgroupwassignicantlylowerthanthatinthemSHCLgroups.Asforlensdeposits,bothSHCLsabsorbedsignicantlymorelipidsthandidtheddSCLgroup.The1wSHCLabsorbedsignicantlylessproteinthandidtheddSCL,butsignicantlymorethanthemSHCL.Theseresultsindicatethatextendedwearofthis1wSHCLisassafeandusefulasexistingdailywearSHCLsorSCLs.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(12):17011707,2008〕Keywords:シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ,連続装用,角膜肥厚,涙液安定性,細菌,脂質,蛋白質.siliconehydrogelcontactlens,extendedwear,cornealswelling,tearstability,bacteria,lipids,proteins.———————————————————————-Page21702あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008(94)はじめに連続装用コンタクトレンズ(CL)は,CLユーザーにとって利便性が高いため,潜在的なニーズはかなりあるが,終日装用レンズに比較して,合併症,特に細菌性角膜炎の発生頻度が高いとの報告が多数みられる点で,眼科医は処方に消極的な傾向がある1,2).近年,高い酸素透過性と光学特性を有し,蛋白質の付着しにくいシリコーンハイドロゲル(siliconehydrogel:SH)CLが登場した.これを受けて欧米では,1カ月連続装用SHCLの安全性が臨床的に検証され35),生活様式の面からオーバーナイト装用を必要とするユーザーを中心に定着しつつある.一方,連続装用期間は欧米より短いものの,1週間連続装用のSHCLがわが国においても承認・発売された.そこで,この新しいSHCLの1週間連続装用による安全性を,従来素材の終日装用ソフトCL(SCL),および終日装用SHCLを対照に,種々の角度から比較検討した.I対象および方法1.対象2007年1月より10月まで愛媛大学病院眼科にて募集したSCL既装用の成人ボランティア60名を対象に以下に述べる比較試験を行った.しかし,表1に示すように被験レンズの1週間の連続装用の適性予備試験においては8名(14.7%)が不適ないし本人理由により試験に不参加となり,1名が検査期間中に麦粒腫を発症,1名が検査不備のため本試験を中止した(表1).結果,検査を完了した計50例100眼(男性30例,女性20例,平均年齢23.2±SD1.8)について統計学的に検討を行った.2.コンタクトレンズ被験レンズとして1週間連続装用SHCL(BalalconA,含水率36%,以下PV),対照レンズとして1日使い捨てSCL(EtalconA,含水率58%,以下OA),2週間終日装用SCL(HEMA,含水率39%,以下MP)および1カ月終日装用SHCL(LotoralconA,含水率24%,以下OX)を用いた.3.方法試験は臨床検査と非臨床検査とに分けて行った.臨床検査では,レンズの使用期間の違いに基づいて試験Aと試験B表1応募者・参加者と中止理由人数理由応募者60予備試験不適8SPK1,本人理由7本試験参加者52本試験中止2麦粒腫1,角膜の古疵1終了者50SPK:点状表層角膜症.表2臨床試験デザイン症例数試料臨床検査名称素材FDAGroup製造元使用方法試験期間(日)使用日数(1枚当り)使用枚数(サイクル)装用時間(1日当り)ケアシステム試験A30PV(ピュアビジョンR)SH3B&L連続装用57571─MP(メダリストプラスR)ハイドロゲル1B&L終日装用57571>6hエーオーセプトOA(ワンデーアキュビューR)ハイドロゲル4J&J終日装用57157>6h─試験B20PV(ピュアビジョンR)SH3B&L連続装用2028574─OX(O2オプティクス)SH1Ciba終日装用263126311>6hエーオーセプト試験APV,OA,MPを3種交使用(不同)PVMPOA試験BPV,OXを交使用(不同)PVPVPVPVOX1W1W1W1W1Month最終週のレンズ回収レンズ回収:72時間以上注)1Week1W1Wレンズ回収レンズ回収最終日のレンズを回収レンズ止レンズ止レンズ止レンズ止図1試験概要のシェーマ———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081703(95)の2群に分け,それぞれクロスオーバー法で実施した.試験Aでは,被験レンズ(PV),および対照レンズとして従来素材のSCLの2週間終日装用レンズ(MP)と1日使い捨て(OA)レンズを,それぞれの用法に準じ,1週間ずつ使用した.また,試験Bでは,被験レンズとSHCL終日装用(OX)の対照レンズとをそれぞれの用法に準じ,1カ月ずつ使用した(表2).終日装用は1日6時間以上の装用とし,ケアシステム(MPとOXのみ)には過酸化水素消毒を使用した.予備試験と本試験の間,および本試験での被験レンズと対照レンズの間には,72時間以上の裸眼でのwash-out期間を設けた(図1).非臨床検査では,検査日に装用していたレンズを回収し,右眼のレンズを細菌検査に,左眼のレンズを蛋白質/脂質定量検査に供用した.ただし,蛋白質および脂質の付着は装用中の蓄積によると考えられるため,本来の使用期間より短いMPに関しては蛋白質/脂質定量検査から除外した.4.評価基準a.臨床検査①細隙灯顕微鏡検査:試験レンズ装用前,および試験最終日にレンズを外した直後の前眼部所見を観察した.角膜上皮障害に対してはフルオレセイン染色を用いて拡大率12倍にて観察し,上,下,左,右,中央の5象限の染色スコアを03点(角膜全体では015点)で評価した.②実用視力検査:装用開始直後と試験最終日に試験レンズ装用下での実用視力測定を行った.実用視力測定は,海道らの方法に則り1分間の平均視力を遠方視力(FVA),対数視力(logMAR)として評価し,測定開始時の視力に対する実用視力の比を視力維持率(VMR)として評価した6).③角膜厚検査:連続装用では酸素供給不足から起こる角膜浮腫の発生が懸念される.そこで,装用開始前および試験最終日にレンズを外した直後の角膜中心厚をPentacam(Oculus社)で測定した.④涙液検査:装用開始直後と試験最終日にTearStabilityAnalysisSystem(TSAS,Tomey社)を用いてBreak-UpIndex(BUI)を測定し,レンズ上の涙液の安定性を評価した.裸眼でのBUIは初回検査日に測定した.b.非臨床検査(回収レンズの検査)①微生物検査:試験終了時にレンズ(右眼)を回収し,(財)阪大微生物病研究会(吹田市)にて,細菌の同定・定量を行った.検査法をフローチャートに示す(図2).②蛋白質定量:試験終了時にレンズ(左眼)を回収し,(株)東レリサーチセンター生物科学第2研究室(鎌倉市)にて,付着蛋白質ないし脂質の分析・定量を行った.ただし,全数ではなく,構成比を考慮してレンズごとに1017検体数を抜粋して実施した.蛋白質の測定は検体レンズを加水分解し,ニンヒドリン比色法によるアミノ酸分析法にて行った.具体的には,検体に6mol/lの塩酸400μlを添加し,真空封圧下110℃で22時間加水分解した.ついで,6mol/l塩酸を別の試験管に移し,減圧乾固した後,水100μlに溶解,フィルター濾過後,アミノ酸分析計(日立L-8500形)で測定した.こうして得られたアミノ酸総量を検体レンズ1枚当たりの蛋白質量とし検体(右眼レンズケースレンズ液)菌ビーズり試験管に移すボルテックス1min菌生理塩水で希×10-1,10-2原液の残り全量発育菌の同定35℃,24~48時間培養菌増殖時には5%ヒツジ血液加TrypticaseSoyAgarに再分離35℃,1~7日間培養臨床用チオグリコレート培地原液および各希釈検体50??5%ヒツジ血液加TrypticaseSoyAgar35℃,24~48時間培養集落数をカウントし,サンプル中の菌数(CFU/m?)に換算発育菌を同定★直接分離培養,増菌培養ともに菌発育を認めない場合は“陰性”★?????????,CNS,?????????????,????????spp.を指定菌として同定指定菌以外は詳細な同定は行わない直接分離培養増菌培養図2微生物検査方法(提供:阪大微生物病研究会坂本雅子氏)———————————————————————-Page41704あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008(96)た.③脂質定量:検体レンズから溶媒抽出された脂質をメチルエステルに変換するガスクロマトグラフィー(GC)定量分析にて測定した.具体的には,検体にクロロホルム/メタノール(1/1)2mlを添加して振盪し,溶媒抽出操作を行った.溶媒を除去した抽出脂質試料をメタノリシスするため,ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)1mg/mlメタノール溶液を200μl,および5%塩酸・メタノール溶液1mlを加え,70℃で3時間加熱反応させて,試料中の脂肪酸および脂肪酸エステルを脂肪酸メチルエステルに変換した.ついで,ヘキサン1mlを加えてヘキサン層を回収し,ペンタデカン酸メチル0.01%クロロホルム溶液0.2mlを加えて再溶解したものをガスクロマトグラフHP5890型(HewlettPackard社)にてGC分析した.こうして得られた脂肪酸総量を検体レンズ1枚当たりの脂質量とした.II結果1.臨床検査a.前眼部所見試験Aにおいては,角膜上皮障害の発現眼数はOA20眼,MP22眼,PV23眼であり,角膜上皮障害発症眼における平均スコアでもOA1.30点,MP1.27点,PV1.52点と有意差は認めなかった.試験Bにおいては角膜上皮障害の発現眼数がPV22眼,OX8眼とOXにおいて角膜上皮障害発症眼が有意に少なかったが,角膜上皮障害発症眼における平均スコアはPV1.14点,OX1.13点と障害の程度に差は認めなかった.スコア3点以上の上皮障害を認めた症例はなく,1象限でスコア2点を認めた症例は試験AではMP1眼,試験BではPV2眼であった(表3).試験期間中に問題となる角結膜上皮障害,感染症などの前眼部所見は認めなかった.b.実用視力試験A,Bを通じて,レンズ装用下での遠方視力(FVA),対数視力(logMAR),および視力維持率(VMR)ともに,装用開始時と試験最終日との間で,いずれのレンズにおいても有意差はなかった(表4).c.角膜厚試験Aにおいて,従来素材のSCL(MP,OA)で有意な角膜厚の増加を認めた(MP:p<0.05,OA:p<0.01)が,表3角膜上皮障害SPK発現症例数(眼数)発現症例の平均Grade数(/眼)Grade2症例(眼数)試験AOA1W201.300MP1W221.271PV1W231.520試験BPV4W221.142OX1M81.130SPK:点状表層角膜症.表4実用視力PV(n=100)OA(n=60)MP(n=60)OX(n=40)装用開始時装用期間後装用開始時装用期間後装用開始時装用期間後装用開始時装用期間後実用視力(FVA)0.94750.97771.08301.09080.92810.96720.99901.0377p値0.240.800.160.37実用視力(LOG)0.04040.03160.01920.04020.03530.02750.02730.0025p値0.500.100.710.19視力維持率(VMR)0.92940.94820.96870.96230.94380.94830.95280.9483p値0.140.150.480.53500550600650552.38角膜厚(μm)554.25556.18567.67装用前装直後570.57559.90OAMPPV**p<0.01*p<0.05NS図3角膜厚検査(1週間,n=60眼)角膜厚(μm)装用前装直後NSNS500550600650557.43552.18567.48565.80PVOX図4角膜厚検査(4週間,n=40眼)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081705(97)SHCLでは有意な増加は認められなかった(PV:p=0.48).試験Bにおいて,SHCLの1週間連続装用(PV1週間×4サイクル)と終日装用(OX)との間に有意差はなかった(図3,4).d.TSAS(BUI)装用直後(ベースライン)および試験最終日のBUI値は,いずれのレンズにおいてもSCL装用前の裸眼値よりも有意に低下していた(p<0.001).レンズごとにベースラインと試験最終日とのBUI値の比較では,PVで1週間後(試験A)に有意に低下していたが,4週間後(試験B)ではベースラインとの間に差はなかった(図5,6).2.非臨床検査a.微生物検査黄色ブドウ球菌,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS),緑膿菌,セラチアについて同定・定量を行い,これら以外の菌は指定外菌とした.A,B両試験の全レンズ検体からはCNSが3種類(Staphylococcusepidermidis,Staphylococcuschromogenes,Staphylococcuswarneri)5例同定された.指定外菌が8例検出された.指定外菌も含めた検出頻度(陽性率)はレンズ間に有意な差が認められた(p<0.05).ただし,いずれも100CFU/ml以下であり,一般的にCNSで起炎性をもつとされる105CFU/mlのレベルの菌量7)を大きく下回るものであった(表5).b.蛋白質定量レンズ検体1枚当りの平均蛋白質量を18種類のアミノ酸表5検体レンズから分離培養された微生物試料名検体数Staphylococcus指定外菌(SA,PA,SM,CNS以外)Totalepidemidischromogeneswarnerl陽性検体数陽性率OA30陽性検体数微生物量1<20CFU/ml1100CFU/ml4<20CFU/ml620.0%MP30陽性検体数微生物量1>20CFU/ml13.3%PV50陽性検体数微生物量1<20CFU/ml1<20CFU/ml24.0%OX20陽性検体数微生物量4<20CFU/ml420.0%統計/平均13031181310.0%c20.05=7.815,p=0.0288<0.05.BUI(%)装用開始時装用期間後***p<0.001*p<0.0510002040608073.9053.0553.4456.8851.8350.4350.47裸眼OAMPPV図5BUI検査(1週間,n=60眼)***p<0.001***p<0.001***p<0.001050100150200250300050100150200250300OAPVOX平均蛋白質量(μg/枚)OAPVOX平均脂質量(μg/枚)NS図7レンズ付着蛋白質量・脂質量()用用眼図6BUI検査(4週間,n=40眼)———————————————————————-Page61706あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008(98)の総量として計測したところ,OAが260.31μg(n=12,SD=129.06),PVが31.11μg(n=17,SD=14.61),OXが3.36μg(n=10,SD=2.07)となり,OAが他のレンズに比べ有意に高かった(各p<0.001).PVはOAよりも有意に低く,OXよりも有意に高かった(各p<0.001).c.脂質定量レンズ検体1枚当りの平均脂質量を6種類の脂肪酸の総量として計測したところ,OAが3.06μg(n=10,SD=1.33),PVが11.48μg(n=13,SD=1.93),OXが10.25μg(n=10,SD=1.80)となった.連続装用のPVと終日装用のOXとの間に差はなかったが,両SHCLともOAと比較して有意に多かった(p<0.001)(図7).III考察CLの装用に伴って,角膜は種々の非生理学的な環境に晒されるが,このなかで,最も大きな課題は酸素供給の低下である.これを解決するために種々の素材の開発が行われてきたが,現在の処方の主流である従来素材のSCLの場合には閉瞼時の酸素供給量を超える程度のレベルであり,オーバーナイト装用では低酸素状態により角膜浮腫をきたすとの報告もみられる8,9).また,低酸素環境下では角膜上皮に細菌が付着しやすくなるという事実も報告されており10),これを裏付けるように,従来素材のSCLの連続装用では,終日装用に比較して感染性角膜炎の発生頻度が高いとされている1,2).このように,一般にCLの連続装用は感染発症の危険因子と考えられている10,11)が,近年登場したSHCLがその画期的な酸素透過性により12,13),この課題を克服できるか否かは興味あるところである.本試験においては,レンズの酸素透過性を最も鋭敏に反映する指標として角膜厚を取り上げ,CL装用前後の変動を比較した.その結果,従来素材のSCLの終日装用とは異なり,連続装用されたPVにおいては検査期間中(4週間)有意な角膜厚の増加は認められなかった.終日装用のOXにおいても同様の結果であり,SHCLの優れた酸素透過性が改めて実証される結果となった.これらの成績は海外における報告14)ともよく一致しており,SHCLでは,終日装用のみならず連続装用においても,角膜厚の増加をきたさないレベルで酸素供給が維持されているものと考えられ,酸素不足による角膜上皮障害の発生も少ないものと推測される.連続装用でつぎに問題となるのがレンズの汚染である.実際,従来素材のSCLに比較してSHCLには細菌が付着しやすいとの報告も少なからずあるため1517),連続装用に伴う細菌付着の実態を明らかにしておくことは重要である.結論から言えば,汚染率は回収レンズ50枚のわずか2枚(4%)と当初の予想をはるかに下回るものであった.検出されたのはいずれもCNSであり,常在細菌叢由来と想定されるが,細菌量はいずれも100CFU/ml以下であり,一般的にCNSの起炎閾値とされる105CFU/mlのレベル7)には達しておらず,臨床的には問題とならない細菌量であった.一方で,菌の検出された頻度(陽性率)をみると,連続装用されたPV,終日装用MPとともに低く,1日使い捨てのOAと1カ月定期交換SHCLのOXにおいて比較的高かった.1日使い捨てのOAでは付着蛋白質量が多いことから,レンズに付着した蛋白質の量が細菌の接着に影響した可能性が考えられ15,16),OXは1カ月の終日装用であったため,使用期間の長さも関連している可能性もあり,追加研究での検討が必要であろう.細隙灯顕微鏡による所見では,いずれのレンズにおいても,試験期間を通して問題となるような眼表面の障害は観察されず,安全性に問題はないと推測される.しかし,試験Bにおいて上皮障害の程度はOXとPV間で有意差はなく軽度の角膜上皮障害ではあったが,終日装用のOXに比較してPVで角膜上皮障害発症眼数が多く認められたことは,連続装用CLではより注意深い経過観察が必要であることを示唆する結果であろう.装用レンズ上の涙液安定性は良好な視機能の維持において重要な因子であるが,本研究でも明らかなように,レンズ装用により低下することは避けられない現象である.涙液安定性をBUIにて評価したところ,装用4週間装用試験(試験B)においてPVはOXと同等の結果を示した.確かに,PVの場合,1週間装用試験(試験A)の装用後に有意な低下がみられ,同時に,PVの連続装用開始の最初の1週間に乾燥感が強いとの意見も少なからずある.実際,今回行った被験者に対するアンケート調査結果でも,PVに関する満足度(1:「低い」,7:「高い」の7段階評価)は,1週間後よりも4週間後のほうが良好で(meanscore:1週間後4.8/4週間後5.7),4週間後の満足度は終日装用で最も高い1日使い捨てOAと同等(5.8:1週間後)であった.すなわち,PVの連続装用の場合,装用後徐々にレンズに慣れて涙液の安定性が改善し,快適に使用できるようになるものと推察される.ただし,BUI値が40%未満の57眼(21.9%)については,その40.4%が乾燥感を訴えており,BUI値40%以上の203眼の26.6%に比較して頻度が高い.よって,ドライアイ症例に対しては,慎重に処方を行う必要があると思われる.結論として,PVの1週間連続装用は,終日装用レンズと同等の安全性と有用性を有すると考えられる.従来素材のSCLによる連続装用でみられるような角膜厚の増加はなく,レンズ自体への細菌付着量,陽性率はともに低いレベルであり,海外における成績16)とよく一致していた.職業的な背景などからCL装用者のニーズは多岐にわたるため,連続装用を希望する患者は少なくない.1週間連続装用SHCLの登場により,CL処方の選択肢は広がったといえるが,その一———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081707方で,患者のコンプライアンスも含めた長期的な安全性に関してはさらなる検証が必要であろう.PVの連続装用のメリットを最大限に生かすために,適切な患者選択と,コンプライアンス遵守に向けた地道な患者指導が不可欠である.文献1)ChengKH,LeungSL,HoekmanHWetal:Incidenceofcontact-lens-associatedmicrobialkeratitisanditsrelatedmorbidity.Lancet354:773-778,19992)日本眼科医会医療対策部:「日本コンタクトレンズ協議会コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査」について.日本の眼科74:497-507,20033)BrennanNA,ColesML,ComstockTLetal:A1-yearprospectiveclinicaltrialofbalalconA(PureVision)sili-cone-hydrogelcontactlensesusedona30-daycontinu-ouswearschedule.Ophthalmology109:1172-1177,20024)LievensCW,ConnorCG,MurphyH:Comparinggobletcelldensitiesinpatientswearingdisposablehydrogelcon-tactlensesversussiliconehydrogelcontactlensesinanextended-wearmodality.EyeContactLens29:241-244,20035)DonshikP,LongB,DillehaySMetal:Inammatoryandmechanicalcomplicationsassociatedwith3yearsofupto30nightsofcontinuouswearoflotralconAsiliconehydrogellenses.EyeContactLens33:191-195,20076)海道美奈子:新しい視力計:実用視力の原理と測定方法.あたらしい眼科24:401-408,20077)宮永嘉隆:細菌─総論(Q&A).あたらしい眼科17(臨増):3-4,20008)HoldenBA,MertzGW:Criticaloxygenlevelstoavoidcornealedemafordailyandextendedwearcontactlenses.InvestOphthalmolVisSci25:1161-1167,19849)SolomonOD:Cornealstresstestforextendedwear.CLAOJ22:75-78,199610)ImayasuM,PetrollWM,JesterJVetal:TherelationbetweencontactlensoxygentransmissibilityandbindingofPseudomonasaeruginosatothecorneaafterovernightwear.Ophthalmology101:371-388,199411)SolomonOD,LoH,PerlaBetal:Testinghypothesesforriskfactorsforcontactlens-associatedinfectiouskera-titisinananimalmodel.CLAOJ20:109-113,199412)RenDH,PetrollWM,JesterJVetal:TherelationshipbetweencontactlensoxygenpermeabilityandbindingofPseudomonasaeruginosatohumancornealepithelialcellsafterovernightandextendedwear.CLAOJ25:80-100,199913)CavanaghHD,LadageP,YamamotoKetal:Eectsofdailyandovernightwearofhyper-oxygentransmissiblerigidandsiliconehydrogellensesonbacterialbindingtothecornealepithelium:13-monthclinicaltrials.EyeCon-tactLens29(1Suppl):S14-16,200314)EdmundsFR,ComstockTL,ReindelWT:CumulativeclinicalresultsandprojectedincidentratesofmicrobialkeratitiswithPureVisionTMsiliconehydrogellenses.IntContactLensClin27:182-187,200015)KodjikianL,Casoli-BergeronE,MaletFetal:Bacterialadhesiontoconventionalhydrogelandnewsilicone-hydrogelcontactlensmaterials.GraefesArchClinExpOphthalmol246:267-273,200816)SantosL,RodriguesD,LiraMetal:Theinuenceofsurfacetreatmentonhydrophobicity,proteinadsorptionandmicrobialcolonisationofsiliconehydrogelcontactlenses.ContLensAnteriorEye30:183-188,200717)BorazjaniRN,LevyB,AhearnDG:RelativeprimaryadhesionofPseudomonasaeruginosa,SerratiamarcescensandStaphylococcusaureustoHEMA-typecontactlensesandanextendedwearsiliconehydrogelcontactlensofhighoxygenpermeability.ContLensAnteriorEye27:3-8,2004(99)***

眼科専門医志向者“初心”表明

2008年12月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.12,200816950910-1810/08/\100/頁/JCLS幼少の頃より,私は緻密な作業が大好きでした.折り紙で,角と角を丁寧に合わせ,一つの物を作ってゆく作業,プラモデルの小さな部品を何個もはめこんでゆき,作品を完成させる作業には何時間も飽きずに集中していた記憶があります.また,部屋の片隅にはいつもレゴブロックのお城が飾ってありました.そんな私は,学生実習で眼科のマイクロサージェリーを何例か見学させてもらううちに,その繊細な作業と,顕微鏡の奥で展開されていた(その時私が目にしたのはモニター画面ですが)眼球の中のとても広大な世界に,次第に魅かれるようになりました.手術だけではありません,種々の機器を使いこなす眼科独自の診療スタイルや,画像・映像による所見の占めるウェートが高いことも,私にとっては非常に魅力的なものとして映りました.さて,その後研修医となってから,初志貫徹というべきか,眼科学を専攻することに決めた私ですが,これだけは今後特に気を配りたいということが一つあります.それは「大局的見地に立って考える」ということです.確かに,眼科学は「眼」という臓器を対象とする学問ですが,患者さんは内科的疾患を背景にもっていることが往々にしてあります.また,ある病院で日常的に行われている診療行為が,他の病院ではスタンダードではない場合もあるでしょう.日本では認可されていない薬品が,海外では使用されていることもあるかと思います.患者さんにとって最良の医療を提供するためには,常日頃からできるだけ広い視野をもち,国内外の見聞を広め,大局的に物事を考えることが大切だと思います.まだ眼科医としての一歩を踏み出したばかりですが,いろいろな場面・フィールドで活躍できるよう,頑張っていく所存です.◎今回は京都府立医科大学出身の山脇先生にご登場いただきました.種々の機器を使いこなし画像や映像による所見を駆使する眼科独自の診療スタイルは,眼科の大いなる魅力だと思います.また,今までも何人もの先生が学生実習の際のマイクロサージェリーで眼科に魅力を見いだしています.マイクロサージェリーと触れ合う機会を多くすれば,もっと眼科の魅力に気づく人が増えていくのではないでしょうか.(加藤)本シリーズ「“初心”表明」では,連載に登場してくださる眼科に熱い想いをもった研修医~若手(スーパーローテート世代)の先生を募集します!宛先は≪あたらしい眼科≫「“初心”表明」として,下記のメールアドレスまで.全国の先生に自分をアピールしちゃってください!E-mail:hashi@medical-aoi.co.jp(87)眼科専医志者“初心”表明●シリーズ⑫緻密かつダイナミックな世界!山脇敬博(TakahiroYamawaki)京都府立医科大学附属病院1982年兵庫県神戸市生まれ.京都府立医科大学医学部卒業後,現在は同附属病院で初期研修中です.趣味はスキー,旅行など(外国では北欧,国内では東北地方が特に気に入っています).(山脇)編集責任加藤浩晃・木下茂本シリーズでは研修医~若手(スーパーローテート世代)の先生に『なぜ眼科を選んだか,将来どういう眼科医になりたいか』ということを「“初心”表明」していただきます.ベテランの先生方には「自分も昔そうだったな~」と昔を思い出してくださってもよし,「まだまだ甘ちゃんだな~」とボヤいてくださってもよし.同世代の先生達には,おもしろいやつ・ライバルの発見に使ってくださってもよし.連載1周年記念の第12回目はこの先生に登場していただきます!▲一緒にローテートしている同期と

私が思うこと14.医師として,女性として

2008年12月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081691私が思うことシリーズ⑭(83)医師になってから長い年月が経過しました.振り返ってみると夢中で過ごしてきてしまったようで,まだまだ眼科診療についても基礎研究についてもわからないことばかりです.これまで,女性であることに加えて,子育てと医師としての仕事の両立についての悩みはいつもつきまとっていました.この間には何度かやめてしまおうと重症な悩みを抱えたこともありました.しかし,その度に素晴らしい先輩,後輩,仲間に,そして家族に支えられて立ち直ってきました.大切な仲間現在,母校の大学では非常勤で臨床と基礎の研究に携わっています.今までに周囲の先生,co-medicalの方々からうけた恩恵は計り知れないものがあります.最近は科や学部の垣根を越えて,融合させるべき研究が増加しています.臨床や基礎研究は,世代を越え,学問分野の垣根を越えてdiscussionし一緒に研究を進めることができるので,この仕事に携われて本当に良かったと思います.また,生命現象を自分の手元で確認できるのは大変興味深く幸せなことです.眼科研究室では,坪田一男教授のご指導のもと,榛村重人先生の研究グループの恵まれた環境の中,楽しく若くて,しかもprofessionalな研究仲間と基礎研究を一緒にさせていただいております(図1).ムラト・ドール先生,川北哲也先生とはドライアイの研究を,石田晋先生,根岸一乃先生とも一部の仕事をご一緒させていただき,大変嬉しく楽しく研究させていただいております.特に,鴨居瑞加先生,内野美樹先生,立松由佳子先生とはドライアイ外来で造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(graftversushostdisease:GVHD)や眼類天疱瘡などの重症ドライアイの患者さんの診察に携わっています(図2).これから少しでも長くこの素晴らしい仲間と熱いdiscussionができるように勉強を続けていきたいと思います.子育てと仕事子供が小さかった頃は,仕事と子育てでその日一日をどうやって乗り越えるか戦場のような毎日でした.しかし,同時にそれが活力になって仕事が継続できたと思います.仕事の苦境は家庭に帰ってからの家事,育児で明るい気持ちへと切り替わり,一方で,家庭でのストレスは仕事に向かうと忘れ去り気分転換となりました.いつしかその繰り返しのリズムができその時期を懸命に乗り越えることができました.周囲の同僚がどんどん業績を伸ばしていくなか,学会活動もせず,論文も書かず焦る0910-1810/08/\100/頁/JCLS小川葉子(YokoOgawa)慶應義塾大学医学部眼科学教室現在慶應義塾大学医学部眼科にて火曜日午後ドライアイ外来を担当,併せて同眼科角膜細胞生物学研究室および同大学先端医科学研究所細胞情報部門で基礎研究にも従事している.造血幹細胞移植後の眼科前眼部領域疾患の眼科専門医として,特に慢性移植片対宿主病(GVHD)後のドライアイ症例の診察を担当している.現在,眼類天疱瘡,スティーブンス・ジョンソン症候群症例を含む重症ドライアイ症例については勉強中.重症ドライアイ,免疫,病的線維化,GVHD,骨髄幹細胞をキーワードに基礎研究をしている.趣味はピアノとテニス.最近運動不足でもっと積極的に動かねばと思っている.(小川)医師として,女性として図12008年ARVOConventionCenterにて(筆者oralpre-sentationのあと)坪田一男教授(前列左),筆者(前列左より2人め),榛村重人准教授(前列中央),大切な仲間の皆様と,私の子供達(前列右2名)で撮影.嬉しいひとときでした.———————————————————————-Page21692あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008気持ちもまったくなかったわけではありませんでしたが,子育ては今しかできないけど,研究は将来できるかもしれないという先輩の一言に励まされていました.坪田教授の慶應ドライアイ外来をその立ち上げからお手伝いさせていただいて以来,この特殊外来を18年続けさせていただいております.非常勤でしたが一回一回の診療について,特殊な患者さんについて反省とメモを継続し,データを蓄積しました.他の先生方の何倍もゆっくりとしたペースで進めたことと思いますが,7年継続して現在の専門のGVHD患者さんの臨床像を把握できるようになり,臨床研究の造血幹細胞移植症例のprospectivestudyをまとめました.子供達が小さいときでしたが,データを少しずつ積み重ねてできた研究でした.このときに蓄積した臨床データは後にGVHDの基礎研究の土台となりました.基礎研究への復帰長男が中学校2年生になったとき,基礎研究に復帰しようと決心しました.ドライアイ外来で自己免疫疾患やGVHDのドライアイの病態を基礎的観点から説明できるようになりたいと思いました.学生時代から不勉強のままの私は,患者さんに病態について納得いくように説明したいという思いと,活力をいただく若い先生方に病態をきちんと説明したいという思いがありました.とはいっても最初は研究室に足を一歩踏み入れるのも恐ろしいくらいでした.出張病院に長くいた私が,母校のドライアイ外来に出る最初の日は非常に怖かったのを覚えていますが,それ以上に研究室への第一歩は恐ろしかったです.どうしてよいかわからず数カ月をじっと耐えました.そうしてしばらくすると外来での疑問を研究で解明していく楽しさを実感するようになりました.学位論文の研究では病理学的手法により新生血管の解析をしていましたので,そのときに習った考え方や手法がGVHDの基礎研究に役立ちました.その間に子供達も成長し,研究会への出席をやめようとすると,「お母さん勉学の気持ちをすてたらいけないよ」と出席を勧めてくれた長男.子供達を残して初めて海外発表に行った時は,後ろ髪がひかれ,涙がでてしまいましたが,帰国したら子供達は家でのびのびファミコンやり放題!ピーターパンの子供たちだけの自由な世界という状況だったようなのです.今年のARVOでは,2人とも成長して,今まで時々自分たちを残して行ったARVOってどんなところなのか興味があったらしく,2人とも一緒に付いて来てくれてとても嬉しかったです(図1).研究進捗報告では眼科の研究室ではありませんが基礎研究に入ったとき,研究meetingが厳しくて,自分の研究進捗報告のときは本当に大変でした.まるで雑巾を絞るようにぎゅうっと絞られ骨身に応えました.報告のあと23日はもうやめてしまいたいと落ち込みましたが,私の場合幸か不幸か4日目頃になると,皆に質問攻めにあい罵倒されたことをすっかり忘れてしまうのです.歳を重ねるうちにどんどん何と言われてもまったく気にならなくなってしまうのが恐ろしいところです.もう何を言われても何ともありません.一瞬にして立ち直るようになりました.研究においては,研究成果について建設的な批判を浴びて議論することが論文を完成するために大事な過程と考え,真摯に受け止めていきたいと思います.論文について世の中に研究成果を送り出すときの責任は大きいものがあります.研究の最終段階では,遠回りしてもわからない部分を明確にして何度も吟味をしたのち論文にすることが必要と考えます.論文が世に出る前に複数の多方面からの人々の眼が通って改訂を加えていくことが大切な過程と考えます.論文投稿後,査読される側にとってreviewerから指摘されたことを直していくのも宝物のような大切な過程です.それは論文の内容と質の向上と(84)図2火曜日午後ドライアイ外来のメンバー筆者前列中央,鴨居瑞加先生,内野美樹先生,立松由佳子先生とともに協力し合って頑張っています.松本幸裕先生,ムラト・ドール准教授,小川旬子先生とも共同研究をしてお世話になっています.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081693(85)この分野の発展を真剣に考えてくださる研究仲間やreviewerとの交流ができる大切なひとときであると思います.スランプ脱出には誰にでも,スランプはありますね.私にも重いスランプが訪れたことが何度かあります.そのとき私は,私なりの乗り切り方を編み出しています.それは,以前に読んだことのある本から覚えた言葉「全力で今を勝ち取ること」です.過去はほんの一瞬前でも二度と戻ってきません.実際に行動できるのは今,この時点だけと気づいたとき今向き合っていることに全力投球し,それを積み重ねていくことで鬱的な気分にならず乗り越えられる秘訣と気づきました.取りあえず今やっていることに無心に熱中し,区切りをつけて次のことに向かいます.まず一日一日を生き抜くことに集中し,あまり先のことは考えずに無心に懸命に今に集中します.気分を塞ぐことが訪れたなら,生命にかかわる重大なことでなければですが,いやなことは『さよーならー』と一瞬で忘れ去ります.一瞬前のことは二度と戻ってこないのですから.とにかく忘れることは得意な私です.女性としての診療スタイル患者さんへの対応については,女性の特性を生かした診療スタイルがあるのではと,先輩の佐賀歌子先生,小澤博子先生や同級生の富田香先生をお手本にしてきました.診療では優しい心配りや,気遣い,心理を読み取る力,また常に忍耐が必要となります.眼科の患者さんは心理的,精神的背景をかかえている場合が多いことはよく知られています.心理的背景には,多くの割合で複雑な悩みや,疲労などがあります.そこをよく読み取れるようになりたいと思います.特にドライアイの患者さんは不定愁訴が多くいくつかの症状を併せ持っているとされますが,患者さんの訴えの一つひとつはどんな些細な訴えでもそれに対応する病巣と原因があると思われますので丁寧に対応していきたいと思います.おわりにこのように,人生をゆっくりと進めてきてしまいましたが,いつの日か臨床や基礎研究での発見を,患者さんのために還元できればと夢見ています.日常の忙しさにまぎれ芸術的な観点が欠落してしまった私ですが,今後はそれらの欠点を補充しつつ女性としての特性を生かし患者さんとの心の交流ができればと思っております.小川葉子(おがわ・ようこ)1980年慶應義塾大学医学部卒業,眼科学教室入局1982年東京都済生会中央病院眼科1993年2003年小川眼科クリニック院長1998年現在慶應義塾大学医学部先端医科学研究所細胞情報部門研究員1998年現在慶應義塾大学医学部眼科非常勤講師☆☆☆

硝子体手術のワンポイントアドバイス67.脈絡膜剥離による一時的バックル効果(中級編)

2008年12月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.12,200816890910-1810/08/\100/頁/JCLS強度近視眼の網膜離はしばしば脈絡膜離を合併する.網膜離の原因裂孔が周辺部に存在する症例では,脈絡膜離があたかもバックル効果を呈し網膜裂孔を閉鎖して一時的に網膜離が軽減あるいは消失することがある(図1).その後,さらに脈絡膜離の消退とともに再び網膜離が再発する,いわゆるシーソー現象を認めることもまれにある.その機序としては以下のような仮説が考えられる.まず,網膜離による低眼圧が引き金となり(図2a),強度近視眼や無水晶体眼などの脈絡膜離発症の危険因子を有する症例ではしばしば脈絡膜離が発生する(図2b).脈絡膜離が増強すると一時的バックル効果により周辺部の裂孔が閉鎖され網膜離が改善する(図2c).網膜離の改善とともに眼圧が回復し,それにつれて脈絡膜離が減少する.バックル効果が失われ裂孔が再開して再び網膜離が増悪する(図2d).原因不明の脈絡膜離は網膜離の可能性を考える網膜離と診断され紹介されてきても,初診時に脈絡膜離のみで網膜離をほとんど認めない症例に遭遇することがある.あるいは脈絡膜離に伴う虹彩炎により,ぶどう膜炎の診断を受けている場合もある.原因不(81)明の脈絡膜離では,本病態を念頭に置いておく必要がある.絡膜離を伴う網膜離にする術術前に脈絡膜離を伴う裂孔原性網膜離は,高度の硝子体の液化変性や前眼部の炎症を伴うことも多く,しばしば虹彩後癒着をきたし眼底の視認性が不良である.また,脈絡膜離の存在は裂孔検出をより困難にする.手術方法に関して以前は脈絡膜離の消退を待ったうえで強膜バックリング手術を行うとする意見もあったが,現在では硝子体変性が進行しない前に早期に硝子体手術による網膜復位術を施行するのが一般的である.文献1)坂下健一,池田恒彦,檀上真次ほか:脈絡膜離による一時的バックル効果.眼臨88:693-697,1994硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載67脈絡膜離による一時的バックル効果(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1脈絡膜離による一時的バックル効果眼底には全周にわたる胞状の脈絡膜離を認め,周辺部の裂孔は閉鎖され,網膜離は消失している.(文献1より).RD(+)→IOP(↓)b.IOP(↓)→CD(+)c.CD(↑)→RD(↓)IOP(↑)d.IOP(↑)→CD(↓)→RD(↑)図2脈絡膜離と網膜離の増減(シーソー現象)の機序(文献1より改変)

眼科医のための先端医療96.老化色素(リポフスチン)と加齢黄斑変性

2008年12月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.12,200816850910-1810/08/\100/頁/JCLSリポフスチンとはリポフスチンとは加齢ととに(に色素)のにする色素ののとをしす老化のと老化色素とすリポフスチンは光線にり光をするり光では色素の光としてすのにりにのリポフスチンはの光をしフを用てをすると光としてでりの分を体でるとです加齢にの容にるりす加齢で色素変性のですリポフスチンの成はの作用の作用と色素のとりすは色素のイにりて分すイでの分のをるとはにし化を受リポフスチンを成しすリポフスチンのは光線にりの性化ではンでのてるではしすのとして用るンのでるをん体分です成成分は()ですにて()とのリポフスチンの成分でるとしはンのでるとににするので成す加齢黄斑変性とリポフスチンでは加齢黄斑変性()とはと図()をしすのは()ではにお性の変化をにしするとしす光線()に用にはのおるとてす図は色素の性のをとし加齢ととににしすはしんとにわでははをすの光のにり光のに色素傷害するとわてし光の分はリポフスチンのとすのでのはリポフスチンにり傷害るとをしすのでは光とりのリスとリポフスチンにはるとするすしリポフスチンとのはとするりのるですリポフスチン成分A2Eの作用(図1)はレチノイン酸受容体のリガンドとして作用する実験的には最もよく研究されているのはリポフスチンの構成成分のなかでもA2Eです.これまでに,A2Eはdetergent作用,cytochromeoxygenase抑制作用,DNA傷害作用などにより細胞傷害作用を有すると示されてきました1).しかしながら,これらの作用を抑制するのは臨床的には困難でした.そこで,筆者らは臨床的に介入可能な新たな標的因子をさらに明らかにするためにA2Eの細胞内シグナルに及ぼす影響を検討しました.その結果,A2EがビタミンAの受容体であるレチノイン酸受容体のリガンドとして作用し,VEGFの発現を恒常的に上昇させることが明らかとなりました2).この結果はレチノイン酸受容体がAMDの治療において新たな標的となりうることを(77)◆シリーズ第96回◆眼科医のための先端医療=坂本泰二山下英俊柳靖雄(東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚運動機能医学講座眼科学)老化色素(リポフスチン)と加齢黄斑変性———————————————————————-Page21686あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008示すものです.2.A2Eは青色光線傷害を媒介する光線曝露とAMDの進行の関連はいまだに議論がありますが,実験的にはヒト眼より抽出されたリポフスチンを細胞内に取り込ませた光線を照射すると細胞傷害が生じます.A2Eは青色光を吸収して酸化修飾を受けて活性化し,細胞傷害をきたすと同時にVEGFの発現を上昇させることがわかっています.この結果から,青色光による網膜毒性は少なくとも一部はリポフスチン,さらにその構成成分のA2Eを介したものとされています.青色光による光傷害の予防のために開発された着色眼内レンズが最近急激に普及しています.実験的には従来の紫外線フィルタの眼内レンズと比較して青色光を遮断する着色眼内レンズを透過した光線は,リポフスチンを介した細胞傷害作用やVEGFの発現上昇作用が低いことがわかりました3).この結果は,着色眼内レンズが滲出型AMDの進行抑制効果を有する可能性を裏付けるものです.臨床上,AMDの発症予防効果を示すためには大規模なRCT(randomizedcontrolledtrial;無作為比較試験)が必要となりますが,実験の結果からは着色眼内レンズは紫外線フィルタの眼内レンズと比較してAMDの進行抑制効果が高いと思われます.おわりにまだ研究段階ですが,A2Eの蓄積を抑制するような薬剤の有効性も検討されています.まずは,対象疾患はAMDよりA2Eの著明な沈着を認めるStargardt病になるでしょうが,Stargardt病で安全性と有効性が確認されれば,A2Eの沈着の抑制によるAMDの予防的治療を行う時代がくるかもしれません.文献1)SparrowJR,BoultonM:RPElipofuscinanditsroleinretinalpathobiology.ExpEyeRes80:595-606,20052)IriyamaA,FujikiR,InoueYetal:A2E,apigmentofthelipofuscinofretinalpigmentepithelialcells,isanendoge-nousligandforretinoicacidreceptor.JBiolChem283:11947-11953,20083)YanagiY,InoueY,IriyamaA:Eectsofyellowintraocu-larlensesonlight-inducedupregulationofvascularendothelialgrowthfactor.JCataractRefractSurg32:1540-1544,2006(78)RAR標的遺伝子活性化恒常性維持機構の破綻VEGF↑VEGF↑レチノイン酸受容体1.レチノイン酸受容体リガンド2.青色光線傷害を媒介レチノイン酸受容体を活性化しVEGFの発現↑青色光照射で細胞生存率↓照射時間(hrs)細胞生存率1.11.00.90.80.70.60.50.40.30.20.10.001020304050照射時間(hrs)細胞生存率1.11.00.90.80.70.60.50.40.30.20.10.001020304050上段は通常どおり培養した細胞色素細胞,下段はA2Eを取り込ませた網膜色素上皮細胞を示す.図1リポフスチン成分A2Eの作用***———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081687(79)老化色素(リポフスチン)と加齢黄斑変性を読んで加齢黄斑変性はののののをるです本にして光線のてすのを用て加齢黄斑変性しではおりのをりすのはですりのをするとのですのの()としては加齢酸化リンのてす光のにてはてんのとしてはに光のをにでとりすのとして光傷害と加齢黄斑変性の分てとりす柳靖雄容は光傷害と加齢黄斑変性のの分をしのですは光と加齢黄斑変性にてのてす光リポフスチンの成分傷害性をに色素の光傷害をすると本文のはにしでるのですのをするにており光傷害と加齢黄斑変性のりにてるとわす本文では加齢黄斑変性をするのレンのにでてすのにににはてるのですしての加齢黄斑変性にしをのとす坂本泰二☆☆☆

サプリメントサイエンス:糖吸収抑制ファイバー

2008年12月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.12,200816810910-1810/08/\100/頁/JCLSコンタクトレンズによる乳頭性結膜炎(CLPC)の臨床所見コンタクトレンズ(CL)により惹起されるアレルギー性結膜炎は,以前はGPC(giantpapillaryconjunctivi-tis)と称されていたが,最近はCLPC(contactlens-inducedpapillaryconjunctivitis)と称されることが多くなりつつある.これは,一つにはGPCという名称により巨大乳頭が必須であるという印象を除くため,もう一つには縫合糸などによるものを除外しCLによるものだけを対象にするためであろうと考えている.実際の所見としては直径0.3mm以上の乳頭があればCLPCとしてよく,春季カタルのような巨大乳頭が必須なわけではない.CLPCでは,上眼瞼に乳頭増殖と結膜充血があり,軽症から重症な症状として,CL脱後の粘稠な眼脂,CLの曇り,CL脱後やCL装用中の痒み,さらには瞬目によるCLの異常な上方移動などの自覚症状を伴う.CL装用歴と症状で予想は容易であるが,必ず両眼の上眼瞼反転を行う必要がある.それは,左右差が大きいことがあるからである(図1).高酸素透過性の新素材シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(SHCL)の登場以降,片眼性の頻度が増えている可能性があるといわれているが,臨床上まだ実感は得られていない.CLPCは臨床所見により二つに分けられる.一つは全般型(general)ともよぶべきもので,乳頭増殖が上眼瞼(73)眼感染アレルギーセミナー─感染症と生体防御─●連載⑫監修=木下茂大橋裕一12.コンタクトレンズによる乳頭性結膜炎岩崎直樹イワサキ眼科医院コンタクトレンズ(CL)による乳頭性結膜炎(CLPC)は,CL装用者に起こる上眼瞼の乳頭増殖と眼脂,CLの曇り,痒みなどを伴う疾患である.片眼であることも多いので,必ず両眼をみる必要がある.原因としてはCLに付いた蛋白質に対するアレルギーと,CLによる機械的刺激の両者が関与しているが,詳細な機構はまだ不明な点が多い.図1両眼に差があるCLPC(上:右眼,下:左眼)右眼よりも左眼のほうが,明らかに乳頭増殖が強い.図2全般型(generaltype)上眼瞼全般に乳頭増殖がみられる.———————————————————————-Page21682あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008全体に分布しているもの(図2),もう一つは局所型(local)とよぶべきもので,大きい乳頭増殖は上眼瞼の一部に限局しているものである(図3).全般型と局所型は従来素材のソフトコンタクトレンズ(SCL)ではほぼ同数であるとされるが,ハードコンタクトレンズ(HCL)やSHCLの場合は,より局所型が多い印象がある.CLPCの病因CLPCには生体のアレルギー反応とCLによる機械的刺激の両方の要因が考えられている.スギ花粉症などのアレルギー要因をもつ患者にCLPCが後発することもよく知られており,CLPCの患者では無症状の対象に比べ,結膜上皮内の肥満細胞や抗酸球,抗塩基球が増加している.CLの洗浄や蛋白除去を行うことで,CLPCが軽快することもよく知られている.また,HCLや,比較的硬いSHCLで局所型が多く,それも機械的刺激が最大と考えられる上眼瞼中央に好発することは,機械的刺激の関与が強く疑われる.アレルギー反応に関するサルでの実験では,CLPCを発症した患者から採取したSCLと,CPLCを発症していない患者からのSCL,そして新品SCLをサルに装用させると,涙液中の免疫グロブリンE(IgE)のレベルがCLPC患者からのSCLを装用した群のみで上昇した.その他にもCLPCでは局所のインターロイキン-6(IL-6)や抗酸球の遊走因子であるeotaxinが上昇しており,eotaxinのレベルとCLPCの重症度に相関がある(74)ことも知られている.さらにCLPC患者の涙液中にロイコトリエンC4(LTC4)が早期から上昇しているなど,CLPCの重症度とLTC4の量が相関することを考えると,アレルギー反応であることは間違いないと思われる.しかし,CLPCの抗原がレンズ材質自体にあるのか,それともそこに付着した蛋白質であるかはまだはっきりと結論が出ていない.また,メカニズムに関しても不明の点が多い.レンズ材質自体が抗原ではないと一般に考えられているが,CL素材自体がハプテンとして働いている可能性は否定できない.一般に高含水のSCLは付着物が多く,またイオン性のあるSCLは蛋白質,特に涙液中のリゾチームが付着しやすいはずであり,米国食品・医薬品局(FDA)分類group1(低含水,非イオン性レンズ)やgroup2(高含水,非イオン性レンズ)とgroup4ではgroup4レンズのほうがCLPCを発症しやすいはずであるが,頻度に差はないもののgroup2レンズのほうが重症であったという報告と差はなかったという報告がある.これはgroup4のほうが軟らかいことが関与している可能性や,含水率やイオン性以外にも,SCLの表面コーティングやレンズデザインなど多様な要因が関与している可能性があると思われる.機械的刺激に関しては,HCLと従来素材のSCLではHCLのほうが局所型の発生が多い.また,従来型SCLでのCLPCがまず瞼板の奥から発生して瞼縁に進行してゆくのに対し,HCLでは瞼縁から始まって徐々に瞼板中央に進展していくことも,直径の差を考えると機械的刺激が関与している証拠と考えられている.また,結膜組織が傷害された場合に増加する好中球遊走因子(NCF)は,無症状のCL装用者ではコントロールの4倍のレベルであるが.CLPCでは15倍に達する.これも機械的刺激が関与していることを示唆していると考えられている.文献1)ScotoniskyCC,NaduvilathTJ,SweeneyDFetal:Twopresentationsofcontactlens-inducedpapillaryconjuncti-vitis(CLPC)inhydrogellenswear:localandgeneral.OptomVisSci83:E27-E36,20062)EhlersWH,DonshikPC:Giantpapillaryconjunctivitis.CurrOpinAllergyClinImmunol8:445-449,2008図3局所型(localtype)中央により大きい乳頭が集簇する.☆☆☆

眼感染アレルギー:コンタクトレンズによる乳頭性結膜炎

2008年12月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.12,200816810910-1810/08/\100/頁/JCLSコンタクトレンズによる乳頭性結膜炎(CLPC)の臨床所見コンタクトレンズ(CL)により惹起されるアレルギー性結膜炎は,以前はGPC(giantpapillaryconjunctivi-tis)と称されていたが,最近はCLPC(contactlens-inducedpapillaryconjunctivitis)と称されることが多くなりつつある.これは,一つにはGPCという名称により巨大乳頭が必須であるという印象を除くため,もう一つには縫合糸などによるものを除外しCLによるものだけを対象にするためであろうと考えている.実際の所見としては直径0.3mm以上の乳頭があればCLPCとしてよく,春季カタルのような巨大乳頭が必須なわけではない.CLPCでは,上眼瞼に乳頭増殖と結膜充血があり,軽症から重症な症状として,CL脱後の粘稠な眼脂,CLの曇り,CL脱後やCL装用中の痒み,さらには瞬目によるCLの異常な上方移動などの自覚症状を伴う.CL装用歴と症状で予想は容易であるが,必ず両眼の上眼瞼反転を行う必要がある.それは,左右差が大きいことがあるからである(図1).高酸素透過性の新素材シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(SHCL)の登場以降,片眼性の頻度が増えている可能性があるといわれているが,臨床上まだ実感は得られていない.CLPCは臨床所見により二つに分けられる.一つは全般型(general)ともよぶべきもので,乳頭増殖が上眼瞼(73)眼感染アレルギーセミナー─感染症と生体防御─●連載⑫監修=木下茂大橋裕一12.コンタクトレンズによる乳頭性結膜炎岩崎直樹イワサキ眼科医院コンタクトレンズ(CL)による乳頭性結膜炎(CLPC)は,CL装用者に起こる上眼瞼の乳頭増殖と眼脂,CLの曇り,痒みなどを伴う疾患である.片眼であることも多いので,必ず両眼をみる必要がある.原因としてはCLに付いた蛋白質に対するアレルギーと,CLによる機械的刺激の両者が関与しているが,詳細な機構はまだ不明な点が多い.図1両眼に差があるCLPC(上:右眼,下:左眼)右眼よりも左眼のほうが,明らかに乳頭増殖が強い.図2全般型(generaltype)上眼瞼全般に乳頭増殖がみられる.———————————————————————-Page21682あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008全体に分布しているもの(図2),もう一つは局所型(local)とよぶべきもので,大きい乳頭増殖は上眼瞼の一部に限局しているものである(図3).全般型と局所型は従来素材のソフトコンタクトレンズ(SCL)ではほぼ同数であるとされるが,ハードコンタクトレンズ(HCL)やSHCLの場合は,より局所型が多い印象がある.CLPCの病因CLPCには生体のアレルギー反応とCLによる機械的刺激の両方の要因が考えられている.スギ花粉症などのアレルギー要因をもつ患者にCLPCが後発することもよく知られており,CLPCの患者では無症状の対象に比べ,結膜上皮内の肥満細胞や抗酸球,抗塩基球が増加している.CLの洗浄や蛋白除去を行うことで,CLPCが軽快することもよく知られている.また,HCLや,比較的硬いSHCLで局所型が多く,それも機械的刺激が最大と考えられる上眼瞼中央に好発することは,機械的刺激の関与が強く疑われる.アレルギー反応に関するサルでの実験では,CLPCを発症した患者から採取したSCLと,CPLCを発症していない患者からのSCL,そして新品SCLをサルに装用させると,涙液中の免疫グロブリンE(IgE)のレベルがCLPC患者からのSCLを装用した群のみで上昇した.その他にもCLPCでは局所のインターロイキン-6(IL-6)や抗酸球の遊走因子であるeotaxinが上昇しており,eotaxinのレベルとCLPCの重症度に相関がある(74)ことも知られている.さらにCLPC患者の涙液中にロイコトリエンC4(LTC4)が早期から上昇しているなど,CLPCの重症度とLTC4の量が相関することを考えると,アレルギー反応であることは間違いないと思われる.しかし,CLPCの抗原がレンズ材質自体にあるのか,それともそこに付着した蛋白質であるかはまだはっきりと結論が出ていない.また,メカニズムに関しても不明の点が多い.レンズ材質自体が抗原ではないと一般に考えられているが,CL素材自体がハプテンとして働いている可能性は否定できない.一般に高含水のSCLは付着物が多く,またイオン性のあるSCLは蛋白質,特に涙液中のリゾチームが付着しやすいはずであり,米国食品・医薬品局(FDA)分類group1(低含水,非イオン性レンズ)やgroup2(高含水,非イオン性レンズ)とgroup4ではgroup4レンズのほうがCLPCを発症しやすいはずであるが,頻度に差はないもののgroup2レンズのほうが重症であったという報告と差はなかったという報告がある.これはgroup4のほうが軟らかいことが関与している可能性や,含水率やイオン性以外にも,SCLの表面コーティングやレンズデザインなど多様な要因が関与している可能性があると思われる.機械的刺激に関しては,HCLと従来素材のSCLではHCLのほうが局所型の発生が多い.また,従来型SCLでのCLPCがまず瞼板の奥から発生して瞼縁に進行してゆくのに対し,HCLでは瞼縁から始まって徐々に瞼板中央に進展していくことも,直径の差を考えると機械的刺激が関与している証拠と考えられている.また,結膜組織が傷害された場合に増加する好中球遊走因子(NCF)は,無症状のCL装用者ではコントロールの4倍のレベルであるが.CLPCでは15倍に達する.これも機械的刺激が関与していることを示唆していると考えられている.文献1)ScotoniskyCC,NaduvilathTJ,SweeneyDFetal:Twopresentationsofcontactlens-inducedpapillaryconjuncti-vitis(CLPC)inhydrogellenswear:localandgeneral.OptomVisSci83:E27-E36,20062)EhlersWH,DonshikPC:Giantpapillaryconjunctivitis.CurrOpinAllergyClinImmunol8:445-449,2008図3局所型(localtype)中央により大きい乳頭が集簇する.☆☆☆

緑内障:正常眼圧緑内障とグルタミン酸輸送体

2008年12月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.12,200816790910-1810/08/\100/頁/JCLSグルタミン酸は中枢神経系の約80%の神経細胞で利用される興奮性神経伝達物質であり,網膜における主要な視覚伝達物質でもある.このグルタミン酸の濃度を調節する唯一の機構がグルタミン酸輸送体である.グルタミン酸輸送体はシナプス間隙のグルタミン酸を迅速に除去し,濃度を適切に保つことで,正常な視覚伝達を可能にしている1).網膜には4種類のグルタミン酸輸送体が存在するが,特に重要なのがMuller細胞に発現するGLASTである(表1).Muller細胞にはグルタミン合成酵素が存在することから,GLASTによって取り込まれたグルタミン酸はグルタミンに変換され,細胞内グルタミン酸濃度は低く保たれる.このMuller細胞のグルタミン酸代謝機構が,GLASTによる強力なグルタミン酸取り込み能力を支えていると考えられる.ルタミン酸輸送体欠損マウス緑内障の原因の一つとして,以前からグルタミン酸毒性の関与が指摘されている2).そこで筆者らが作製したGLASTの欠損マウスにおいて,網膜・視神経の詳細な検討を行ったところ,網膜神経節細胞数の減少に加えて,視神経乳頭の陥凹と視神経線維の減少が認められた(図1).視機能を評価する目的で多局所網膜電位の二次核成分を測定したところ,網膜神経節細胞の減少にほぼ一致した電位の減弱が認められた.同様の変化は網膜神経節細胞に発現するグルタミン酸輸送体であるEAAC1の欠損マウスでも観察された.いずれのマウスも開放隅角であり,かつ眼圧は正常範囲内であったことから,これらは正常眼圧緑内障(NTG)様症状を示す疾患モデルと考えられた3).ルタミン酸輸送体と酸化ストレスGLAST欠損マウスでは硝子体中のグルタミン酸濃度に有意な上昇は認められなかった.しかし,グルタミン(71)●連載102緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄102.正常眼圧緑内障とグルタミン酸輸送体原田知加子原田高幸東京都神経科学総合研究所分子神経生物学正常眼圧緑内障(NTG)の原因には諸説あるが,確定には至っていない.またすでに存在する高眼圧モデル動物を利用できないことから,基礎研究の進展も十分とは言いがたい.筆者らはグルタミン酸輸送体の欠損マウスがNTGモデルとして利用可能なことを見いだしており,今後の治療研究に有用と思われる.表1網膜に発現するグルタミン酸輸送体GLASTGLT-1EAAC1EAAT4EAAT5神経節細胞層○内顆粒層,グリア細胞神経細胞○○○○視細胞層○○網膜色素上皮層図1GLAST欠損マウスで観察されたNTG様症状生後8カ月齢のGLAST欠損マウスでは網膜神経節細胞の減少(上段),視神経乳頭陥凹(中段),視神経萎縮(下段)が確認された.(文献3より改変)GLAST欠損マウス正常マウス———————————————————————-Page21680あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008酸受容体阻害薬であるmemantineの連続投与により一部の網膜神経節細胞が保護されたことから,やはりグルタミン酸毒性の関与が考えられた.一方,GLAST欠損マウスのMuller細胞ではグルタミン酸取り込み量の低下に伴い,グルタミン酸・システイン・グリシンから合成される網膜の主要な抗酸化成分であるグルタチオンの産生が減少していた.さらに酸化ストレスの指標とされる脂質ヒドロペルオキシドの網膜内濃度が有意に上昇していた.以上の結果からGLAST欠損マウスにおけるNTG様症状の発症には,グルタミン酸毒性と酸化ストレスが複合的に関与する可能性が示唆された(図2).緑内障患者では網膜におけるグルタミン酸輸送体の発現量低下2)や血中グルタチオン濃度の減少がすでに報告されている4)が,GLAST欠損マウスはこうした病態を再現しているとも考えられる.今後は緑内障患者におけ(72)るGLASTおよびEAAC1の遺伝子変異検索とともに,両者の欠損マウスを用いた細胞保護療法に取り組む予定である.文献1)HaradaT,HaradaC,WatanabeMetal:FunctionsofthetwoglutamatetransportersGLASTandGLT-1intheretina.ProcNatlAcadSciUSA95:4663-4666,19982)NaskarR,VorwerkCK,DreyerEB:Concurrentdown-regulationofaglutamatetransporterandreceptoringlaucoma.InvestOphthalmolVisSci41:1940-1944,20003)HaradaT,HaradaC,NakamuraKetal:Thepotentialroleofglutamatetransportersinthepathogenesisofnor-maltensionglaucoma.JClinInvest117:1763-1770,20074)GherghelD,GrithsHR,HiltonEJetal:Systemicreduc-tioninglutathionelevelsoccursinpatientswithprimaryopen-angleglaucoma.InvestOphthalmolVisSci46:877-883,2005:視覚報の伝達:グルタミン酸:GLAST網膜神経節細胞正常マウスGLAST欠損マウス双極細胞M?ller細胞グルタチオン合成視細胞☆☆☆図2GLAST欠損マウスにおいて予想されるNTG発症メカニズムGLASTはMuller細胞内に多くのグルタミン酸を取り込むことで,シナプス間隙のグルタミン酸濃度を調節し,適切な視覚伝達を可能にする.一方,GLAST欠損マウスでは細胞外グルタミン酸濃度の慢性的な上昇によって,網膜神経節細胞死と視神経変性が起きると予想される.さらにMuller細胞によるグルタミン酸取り込み量の減少は,グルタチオンの産生減少(酸化ストレスの増大)にもつながる可能性がある.

屈折矯正手術:屈折矯正手術における実用視力の活用

2008年12月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.12,200816750910-1810/08/\100/頁/JCLS従来の視力検査では,いわば視力の最大値が計測される.これに対して実用視力は日常生活のなかで用いている視力といえる1).日常生活においては作業に集中して瞬きの回数が減少することがあり,涙液層が不安定となって誘発された眼表面の不正のために視力が低下することが知られており,特にドライアイ患者では実用視力が大きく低下することがあると報告されている24).屈折矯正手術と実用視力に関する研究として,田中ら4)はドライアイ患者のLASIK(laserinsitukera-tomileusis)手術前後の実用視力について涙液層破壊時間(tear-lmbreakuptime:BUT)短縮型ドライアイ(probabledryeye:PDE)と涙液分泌減少とBUT短縮とを合併しているドライアイ(denitedryeye:DDE)とに分けて比較したところ,術後1日と1週間後においてPDE群の実用視力が術前と同じレベルであったのに対して,DDE群では術後1日で有意に低下するが1週間後では術前レベルに回復することを報告している.また,戸田らはソフトコンタクトレンズ装用時とLASIK手術後1カ月の実用視力を検討し,ソフトコンタクトレンズ装用時のほうがsurfaceregularityindex(SRI),surfaceasymmetryindex(SAI)とも大きくなり実用視力が有意に低下していたことから,LASIK術後のほう(67)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載103監修=木下茂大橋裕一坪田一男103.屈折矯正手術における実用視力の活用坂谷慶子戸田郁子南青山アイクリニック東京実用視力は,白内障手術後や屈折矯正手術後の視機能の評価をより多彩かつ詳細に行うことができると期待されている.屈折矯正手術後の患者において,「遠方の見え方」の満足度と実用視力には関連があり,実用視力は再手術の適応決定に有用であることが示唆された.図1実用視力計NIDEKFVA100これまでの実用視力は10秒間開瞼を保った状態で計測されていたが,筆者らは日常の見え方をより反映するため瞬目を自由に可能とし,検査距離5m,視標コントラスト100%,検査時間60秒,視標切り替わり時間2秒,2回連続正答で高い視力値を提示,という設定で行った.図2実用視力測定結果視力の推移は赤いラインで示される.瞬目は自由にでき,検者が瞬目を観察してタイミングと回数が記録される.グレーの部分の面積とブラックの部分の面積が等しくなるところが実用視力となる.———————————————————————-Page21676あたらしい眼科Vol.25,No.12,2008が日常の見え方が良いと報告している.実用視力計(FVA-100,NIDEK社)はハードディスク,モニター,ジョイスティックからなる(図1).モニターのLandolt環に対して,被検者がジョイスティックで応答する.まず,通常の視力検査で測定された視力のLandolt環がモニターに現れ,応答の正誤によってつぎに表示されるLandolt環の大きさが決定される.誤答や制限時間内に答えられなかった場合には自動的に一段階大きいLandolt環がつぎに示される.この機器を用い,一定時間連続して検査した視力の平均値が実用視力となる(図2).LASIK手術後には90%以上の患者が1.0以上の良好な裸眼視力を獲得するが,裸眼視力が1.0以上であっても「遠くが見にくい」という理由で再手術を希望する患者が存在する.さまざまなデータを検討したところ,「遠くが見にくい」患者の裸眼視力は平均1.11,実用視力は0.71で,通常の視力に比べて実用視力が大きく低下している傾向があった.一方,同じような裸眼視力・(68)表1再手術群と満足群との比較再手術群満足群p値年齢(歳)36.130.80.079裸眼視力1.111.170.072実用視力0.710.950.043自覚屈折(SE)0.300.280.714BUT4.03.10.160SRI0.1320.2640.084SAI0.3720.5810.122HOA0.6430.6830.625満足度2.3300.019BUT:tear-lmbreakuptime,SRI:surfaceregularityindex,SAI:surfaceasymmetryindex,HOA:higherorderaberration.満足度は「とても満足」を0,「不満」を4としたスケールを用いた.再手術後裸眼VD1.5再手術前裸眼VD1.0再手術前矯正VD(1.5S1.0D)図3再手術前後の実用視力の変化表2再手術前と再手術後3カ月との比較再手術前再手術後3カ月p値裸眼視力1.111.540.0007実用視力0.711.180.001自覚屈折(SE)0.30+0.170.302BUT4.03.70.529SRI0.1320.1640.433SAI0.3720.3860.802HOA0.6430.6090.925満足度2.330.330.001———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.12,20081677(69)屈折度数でも遠くの見え方に満足が得られている患者の裸眼視力は1.18,実用視力は0.95であり,LASIK術後の満足度と実用視力には関連性があることが示唆された.なお,ドライアイやSRI/SAI/HOAについての有意差は認められなかった(表1).このように裸眼視力1.0以上にもかかわらず「遠くが見にくい」ために再手術を希望した患者5例9眼に対してエンハンスメントを施行した.軽度の屈折異常がさらに改善することにより裸眼視力が平均1.11から1.54に向上し,実用視力も0.71から1.18に向上し,すべての患者から「とても満足」あるいは「満足」の評価が得られた(表2).代表例の再手術前後の実用視力の変化を図3に示す.裸眼視力が1.0以上であれば屈折異常はごく軽度であることから,再手術の対象にはなりにくいと考えられていたが,実用視力を測定することで日常生活における見え方が数値として表せるようになり,通常の視力検査では良好な裸眼視力が得られていても「遠くが見にくい」と感じている患者で実用視力が低下している場合には,再手術によってより良い見え方が期待できる可能性がある.実用視力にはドライアイのほか,調節,収差,検査慣れなどの要因が複雑に関係していると考えられ,今後も引き続き検討が必要であるが,実用視力は通常の視力検査で良好な視力が得られている患者に対する再手術の適応を決定する際に有用であると考える.文献1)ムラト・ドール,外園千恵:実用視力計.あたらしい眼科20:1541-1542,20032)GotoE,YagiY,MatsumotoYetal:Impairedfunctionalvisualacuityofdryeyepatients.AmJOphthalmol133:181-186,20023)TanakaM,TakanoY,DogruMetal:Eectofpreopera-tivetearfunctiononearlyfunctionalvisualacuityafterlaserinsitukeratomileusis.JCataractRefractSurg30:2311-2315,20044)KaidoM,DogruM,YamadaMetal:FunctionalvisualacuityinStevens-Johnsonsyndrome.AmJOphthalmol142:917-922,2006☆☆☆

眼内レンズ:白内障手術後の前嚢収縮と視機能の関係

2008年12月31日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.12,200816730910-1810/08/\100/頁/JCLS現在の白内障手術においては,continuouscurvilin-earcapsulorhexis(CCC)による前切開が広く行われている.術後早期から前切開縁に沿って線維性の混濁が強くなり,術後約3カ月の間に眼内レンズ(IOL)の光学軸部方向へ収縮(前収縮)する.これは,一つは中が空になったが機械的に収縮することと,内に残存した水晶体上皮細胞が線維芽細胞様に偽化生して線維性の収縮を起こすことによる.その程度はIOL側の因子としては,光学部の素材に影響を受け,たとえばシリコーンはアクリル,ポリメチルメタクリレート(PMMA)のレンズより前収縮が有意に強い1).また網膜色素変性症,落屑症候群,糖尿病などの疾患眼では前収縮が強い傾向にある.前収縮に対してNd:YAG(以下,YAG)レーザーを用いて収縮した前縁を放射状に切開すると,切開窓は開大して,より広い有効光学部面積を得ることができる.今回,前収縮が視機能に及ぼす影響を明らかにす(65)るために,YAGレーザー前後の前切開窓面積と視力,コントラスト感度などの関係を調べ検討した.疎水性アクリルレンズを用いた白内障術後,前収縮を起こしてYAGレーザーによる前切開を予定した32眼,32例を対象とした.瞳孔領に前の一部が認められることを前切開施行の基準とし,後混濁を伴う例は除外した.前切開は切開縁からレンズ光学部端まで4本あるいは6本の放射状の切開を入れた(図1).検査方法として,前収縮の程度はNIDEK社のScheimpug画像解析システムを用いて前切開窓面積を測定した.視機能に関しては,矯正視力とコントラスト感度(視角0.7°,1.0°,1.6°,2.5°,4.0°,6.3°)をContrastglaretester(CGT-1000;TakagiSeiko社)を用いて測定した.これらの検査をYAG前切開直前と切開約2週間後に行った.YAGレーザー切開前の平均切開窓面積は8.2mm2であったが,切開後は18.0mm2と有意に拡大していた(p瀧本峰洋林眼科病院眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎268.白内障手術後の前収縮と視機能の関係白内障手術後に起こる前収縮は,瞳孔領にかかる程度になると視力低下をきたさないまでも,前切開窓面積に比例してコントラスト感度を低下させる.Nd:YAGレーザーを用いて前縁に4~6本の減張切開を入れると,前切開窓は開大して,有意にコントラスト感度は改善する.図1前収縮左:切開前.線維化した前は,一部が瞳孔領にかかるほど収縮している.患者は視力低下をきたしていなかったが霧視を訴えたため前切開を行った.右:切開後.Nd:YAGレーザーによりレンズ光学部端まで6本の放射状切開を入れると,前切開窓は広がって,有効光学部面積の拡大により霧視は消失した.———————————————————————-Page2<0.0001).YAGレーザー前切開前後の視力は0.88から0.93とごく軽度改善していたが,有意差はなかった.またYAGレーザー前・後の切開窓面積と視力との間,さらに切開窓面積の拡大と視力改善度の間にも有意な相関はなく,これらの結果は,切開窓の大きさが視力とはあまり関連しないことを示している.一方,各視角におけるYAGレーザー切開前後のコントラスト感度の変化を比較すると,前切開後には,0.7°以外のすべての視角においてコントラスト感度が有意に改善していた(p≦0.0399)(図2).YAGレーザー切開前の前切開窓面積とコントラスト感度のプロット図(視角4.0°)では前切開窓面積が拡大するほどコントラスト閾値が改善する傾向にあり,切開窓面積はコントラスト感度と強く関連していることが明らかになった.さらに,0.7°以外のすべての視覚において前切開窓面積の増加とコントラスト感度の改善の間にも有意な相関が認められた(r≧0.455)(図3は視覚6.3°).しかし,前切開窓が瞳孔領以上になると,コントラスト感度に影響しない.今回の検討で極端な前収縮例を除くと前収縮により視力は大きく低下することはなかったが,コントラスト感度を有意に低下させた.これに対しYAGレーザーによる放射状前切開を行うことでコントラスト感度などの視機能の改善が得られた.YAGレーザーによる前切開は低侵襲,短時間で行えるため非常に有用である.文献1)HayashiK,HayashiH,NakaoFetal:Reductionintheareaoftheanteriorcapsuleopeningafterpolymethyl-methacrylate,silicone,andsoftacrylicintraocularlensimplantation.AmJOphthalmol123:441-447,1997p=0.0039*p=0.0043*p=0.0286*p=0.0399*p=0.0333*p=0.9411†0.010.0140.020.030.040.060.080.110.160.230.320.45コントラスト感度6.34.02.5視角(?)1.61.00.7:前?切開前:前?切開後0.090.080.070.060.050.040.030.020.010-0.01Log閾値改善度-2.502.557.51012.51517.520前?切開窓面積の拡大(mm2)22.5図2Nd:YAGレーザー前切開前後のコントラスト感度の変化*:有意差あり,†:有意差なし.(瀧本峰洋:IOL&RS21:602-603,2007より許可を得て転載)図3前切開による面積拡大とコントラスト閾値改善の相関のプロット図(視角6.3°)相関係数r=0.640,p<0.0001.