硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載197197黄斑疾患の発症における肥満細胞の関与(研究編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに特発性網膜前膜(epiretinalmembrane:ERM)や特発性黄斑円孔(macularhole:MH)はおもに中高年者に発症し,変視症,視力低下をきたす.これらC2疾患の成因としては,後部硝子体皮質前ポケット後壁の牽引1)が考えられているが,生化学的な研究はほとんど行われていない.筆者らは過去にCMHやCERMでは硝子体内のキマーゼやトリプターゼなどのセリンプロテアーゼの活性が上昇していることを報告した2,3).さらに,これらのセリンプロテアーゼの産生源としてCbursapremacularisの可能性を検討し報告した4).C●Bursapremacularisと肥満細胞Bursapremacularisは,Worstらが提唱した黄斑前に存在する袋状の形態を有する硝子体の一部である5)が,その生理的な役割については十分に解明されていない.筆者らは硝子体手術時に硝子体腔中央部の硝子体ゲルおよびCbursapremacularisを別々に採取し,ヘマトキシリン染色,トルイジンブルー染色,および抗キマーゼ抗体,抗トリプターゼ抗体を用いた免疫染色を行った.その結果,bursapremacularisに多数の細胞を認め,トルイジンブルー染色では肥満細胞に特徴的とされるメタクロマジーが認められた(図1).また,キマーゼ,トリプターゼいずれの抗体に対しても,bursapremacularisは中央部の硝子体ゲルよりも強く染色された(図2)4).C●黄斑疾患と肥満細胞キマーゼやトリプターゼなどのセリンプロテアーゼの産生細胞は肥満細胞であり,近年,肥満細胞が組織の線維化,アポトーシス,リモデリングに関与することが報告されている.肥満細胞は眼球では脈絡膜,毛様体,結膜,強膜などに存在するが,今回硝子体内でもその存在が確認されたことは興味深い.キマーゼはアポトーシス作用が,トリプターゼは線維化をきたす作用が優位とされているが,MHではキマーゼ活性が,ERMではトリ(73)C0910-1810/19/\100/頁/JCOPYab図1トルイジンブルー染色中央部の硝子体(Ca)では染色がみられなかったが,bursapremacularis(Cb)では肥満細胞に特徴的なメタクロマジーが認められた().(文献C4より引用)CCase1Case2Case3図2抗キマーゼ抗体を用いた免疫染色中央部の硝子体(Ca)に比べてCbursapremacularis(Cb)では強い染色性を認めた.また,bursapremacularis部位はC2例で膜状構造を呈しており,その中にキマーゼ陽性の核が多数認められた.(文献C4より引用)プターゼ活性が優位であったことより,MHでは結合組織型肥満細胞が,ERMでは粘膜型肥満細胞が発症に深く関与しているのかもしれない.MHとCERMは一種の肥満細胞病ではないかと考えられる.文献1)KishiS,ShimizuK:Posteriorprecorticalvitreouspocket.ArchOphthalmolC108:979-982,C19902)MaruichiM,OkuH,TakaiSetal:Measurementofactivi-tiesCinCtwoCdi.erentCangiotensinCIICgeneratingCsystems,Cchymaseandangiotensin-convertingenzyme,inthevitre-ousC.uidCofCvitreoretinaldiseases:aCpossibleCinvolvementCofCchymaseCinCtheCpathogenesisCofCmacularCholeCpatients.CCurrEyeResC29:321-325,C20043)IkedaT,NakamuraK,OkuHetal:Theroleoftryptaseandanti-typeIIcollagenantibodiesinthepathogenesisofidiopathicCepiretinalCmembranes.CClinCOphthalmolC9:C1181-1186,C20154)SatoCT,CMorishitaCS,CHorieCTCetal:InvolvementCofCpremacularmastcellsinthepathogenesisofmaculardis-eases.PLOSONEC14:e0211438,C20195)WorstJG:Cisternalsystemsofthefullydevelopedvitre-ousCbodyCinCtheCyoungCadult.CTransCOphthalmolCSocCUKC97:550-554,C1977あたらしい眼科Vol.36,No.10,2019C1295