連載Myboom監修=大橋裕一第58回「久保田敏昭」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.自己紹介久保田敏昭(くぼた・としあき)大分大学医学部眼科学講座私は,九州大学眼科に昭和57年に入局し,大学院修了後2年ほどして,フンボルト奨学金を得てドイツのErlangen-Nurnberg大学眼科に留学してナウマン教授に師事しました.留学から帰国後,九大眼科,国立長崎医療センター(大村市),産業医科大学眼科と異動して,2009年に大分大学医学部眼科学講座に赴任しました.医局を変わって新しい職場に赴任するということまず,眼底のスケッチの方法が大分大学では倒像で描きます.九州大学ではさかさまにしてスケッチし,直像で眼底を考えますので,年齢のせいもあるでしょうが,なかなか慣れませでした.そして県内に大学病院が一つしかないこと.これは福岡県にいるときはよくわからなかったです.県内に競争相手がいないわけですので,利点も,よくない点もあります.大分県で眼科がある病院は,ほぼすべて大分大学眼科から医師を派遣しています.そのため大分県での病々連携,病診連携はうまく回っています.反面,紹介患者の返事が遅れてお叱りを受けることもあります.安住してしまう危険性があります.言葉も当然違います.大分弁の代表は「よだきい」でしょうか.「よだきい」=「かったるい,めんどうくさい」.「しんけん」=「とても」.「しんけん頑張る」はすごく頑張る感じが出ています.「~と」は使いません.私は博多弁でしゃべっているようで(自分では標準語のつもり),なまっているといわれます.大分大学医学部附属病院の病院再整備と教室の臨床・研究大分県の最大の基幹病院であり,唯一の教育機関として,大分県医療の中心であるのが大学の立ち位置です.そして大分大学医学部附属病院では現在再整備が進行中です.PETセンター,高度救命救急センター,ドクターヘリの整備後,新病棟が1棟建設されました.これらはすでに稼働しています.現在は旧病棟の改装と新外来の拡張,改装が行われています.平成27年12月に眼科は新しく改装された東病棟に移転しました.そして平成28年7月に新しい眼科外来に移転しました.この移転に伴い,病棟の眼科診察室はほぼ2.5倍の面積になりました.新しい外来は個室診察室になり,眼科外来の面積も旧外来のほぼ1.5倍になりました.この再整備に伴い,眼科の医療機器に対して昨年度は1億5千万円超の予算がつきました.私が赴任した平成21年度から平成24年度までは毎年数千万円の予算がつき,医療機器の整備を行っていました.しかし,最近2年間は病院再整備のために各診療科の予算は不十分だったのですが,昨年度は十分な医療機器整備ができました.ちゃんと病院収入にも貢献しています.平成21年度から順調に右肩上がりで眼科の収入は増加しています.医局員は多くはないですが,研究ができる十分な設備を整えています.現在進行している面白い研究をいくつか紹介します.一つは感染性ぶどう膜炎の包括的PCR診断の先進医療を日本で3番目に始めました.現在一度に多くの病原体を検出できる包括的PCRstrip検査キットの多施設共同研究を中心となって行っています.二つ目は眼科では新しい分野である時計遺伝子を眼科学研究に応用すべく研究を行っています.三つめは緑内障のGWASスタデイに参加しています.この共同研究で緑内障の原因遺伝子について多くの新たな知見がみつかり,NatureGeneticsに2報,HumanMolecularGeneticsに結果が昨年掲載され,さらに面白い結果が出ています.大分の地域の紹介大分駅周辺は再開発が行われました.2013年7月には駅の南口(今は上野の森口といいます)にホルトホールがオープンしました.大分駅は2012年3月に高架化とコンコース内がきれいになり,「豊後にわさき市場」という商業施設が完成しています.ホルトホールは駅からすぐのところにあり,1,200名収容の大ホール(大ホールはコンサート会場として使用できます),200名収容の小ホール,300名入る大会議室,そして20~72名入る会議室が多数あり,中規模学会の開催ができる施設です.コンサートホールと会議室だけではなく図書館,スポーツジムなども入っています.2015年春には新しい大分駅ビル(JR大分シテイ)が開業しました.駅ビルは地下1階,地上22階建てで,8~18階はJR九州ホテルブラッサム大分が開業し,19~21階には温泉施設ができています(CITYSPAてんくう).商業エリアにはアミュプラザが入っています.4階にはレストラン街,シネマコンプレックス(複合型映画館)もあります.ミニ博多駅という作りです.残念ながら博多駅にはかないませんが,それでも週末には多くの人で賑わっています.熊本・大分地震のこと平成28年4月14日から発生した熊本・大分地震では,大分市でも最も大きいもので震度6弱の地震がありました.16日の午前1時過ぎにあった地震が最も揺れを感じ,家の中の被害はありませんでしたが,さすがにしばらく眠れませんでした.今回の被害は地震による土砂災害,建物・家屋の倒壊が主でありました.ライフライン,道路も被害を受けましたが,徐々に復旧し,その復旧の速さは日本ならではと感じました.土砂崩れで通行止めだった大分高速道もゴールデンウイーク明けには通行可能になりました.眼科診療に関しては,診療ができなくなった病院・医院は多くはなかったようで,おおがかりな診療支援は必要ないと判断されました.大分大学からも阿蘇地域に診療支援を行いましたが,被災者の方のエコノミークラス症候群の予防が主な仕事だったようです.熊本はもちろん湯布院,別府などの大分県の観光も打撃を受けています.ぜひ観光客が戻って,早く元の姿に戻ってほしいと思っています.最後に大分大学医学部の周囲は自然が多く,山々がすぐ近くにあります.温泉は湯布院,別府が有名です.眼科医局の忘年会は湯布院温泉か別府温泉に1泊して1年の疲れをとります.近隣にも車で少し行けば,入浴して,休憩できる温泉があります.大学病院は市の中心部から少し離れていて,勉強するには良い環境です.大学で車を止めるとウグイスの鳴き声が聞こえます.魚がおいしく,ふぐ,関サバ,関アジは有名です.豊後牛もあり,食は抜群です.大分で温泉・食・自然を楽しみながら働くのも良いと心から思っています.次の執筆者は熊本市の稲田晃一朗先生です.稲田先生がErlangen-Nurnberg大学での留学が終わられて帰国する前にお会いし,いろいろお話をしていただきました.その時以来のお付き合いです.平成28年4月14日から発生した熊本・大分地震では被害が少なからずあったとお聞きしましたが,次のご執筆を快くお引き受けいただきました.注)「Myboom」は和製英語であり,正しくは「Myobsession」と表現します.ただ,国内で広く使われているため,本誌ではこの言葉を採用しています.(81)0910-1810/16/\100/頁/JCOPYあたらしい眼科Vol.33,No.11,20161619写真1新外来での医局員集合写真(82)1620あたらしい眼科Vol.33,No.11,2016