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関節リウマチ

2016年7月31日 日曜日

特集●全身疾患と眼:これがホットなトピックス!あたらしい眼科33(7):933〜940,2016関節リウマチRheumatoidArthritis中尾久美子*I関節リウマチの概要関節リウマチ(rheumatoidarthritis:RA)は関節炎を主徴とする慢性炎症性疾患であり,肺など多臓器にも病変が波及しうる全身性疾患である.日本におけるRA患者数はおよそ70万人で有病率は0.6〜1.0%,男女比は1:3〜5,好発年齢は40〜60歳1)である.免疫機能亢進を基盤とする慢性炎症性自己免疫疾患であるが,明確な病因は不明である.遺伝的要因と環境的要因が発症に関与していると考えられている.典型的には手の指や足の指などの小さい関節に左右対称性に関節炎が生じ,関節痛や関節腫脹を訴える.膝などの大きな関節が侵されることも少なくない.朝のこわばりも特徴的である.関節炎が遷延すると関節破壊と軟骨破壊が生じ,最終的には関節変形に至る.関節症状以外にも,血管炎に由来する多彩な症状がでることもある.既存のRAに血管炎をはじめとする関節外症状を認め,難治性もしくは重篤な臨床病態を伴う場合,悪性関節リウマチと定義される.II関節リウマチの診断1.診断基準これまで診断に用いられていた1987年改訂の米国リウマチ学会(AmericanCollegeofRheumatology:ACR)のRA分類基準は特異性が高いが,骨破壊が出現する以前の早期RAの診断は困難で,感度は50%以下であった.そこで早期RAを的確に診断し,可能な限りRAにおける骨破壊を抑制することを目的として2010年にACRおよび欧州リウマチ学会(EuropeanLeagueAgainstRheumatism:EULAR)が合同で新しい分類基準を発表した(表1)2).この基準では,少なくとも1つ以上の関節で腫れを伴う炎症(滑膜炎)がみられ,その原因としてRA以外の病気が認められない場合に,①症状がある関節の数,②リウマトイド因子または抗シトルリン化ペプチド抗体,③CRPまたは赤沈,④症状が続いている期間の4項目についてのそれぞれの点数を合計し,6点以上であればRAと診断する.ただし,RA以外の病気でも合計6点以上になることがあるため,点数をつける前に除外診断を確実に行うことが重要である.2.血清学的検査a.リウマトイド因子(rheumatoidfactor:RF)RFはIgGのFc部分に対するIgMクラスの自己抗体である.RA患者の70~80%で陽性となり,RAの診断上重要な検査所見である.しかし,RA以外の膠原病,慢性肝疾患,慢性感染症などの疾患でも陽性となるため,診断的特異性は低い.健常人にも数%の陽性者があり,高齢者ほど陽性率は上昇する.また,RAの発症早期にはRF陽性率は50%にすぎず,RFの早期診断的意義は低い.RF陽性RAは,陰性RAに比べて関節炎がより高度で,関節破壊の進行が早いことが報告されており,RFはRAの長期的経過や予後を判断するうえで有用である.b.抗シトルリン化ペプチド(cycliccitrullinatedpeptide:CCP)抗体RAに特異的に検出される自己抗体である.RFと比較すると感度は同等かやや高く(60~80%),特異度は非常に高い(95%).RAの発症初期から検出される.RA発症前から検出されることも報告されている.抗CCP抗体はRAの関節破壊進行と相関するという報告が多く,RFとともに関節破壊進行の危険因子と考えられている.3.画像診断関節超音波検査,磁気共鳴画像(MRI)検査は早期診断および臨床経過の評価のうえで有用である.とくに造影MRIは滑膜炎・腱滑膜炎の検出感度に優れ,骨髄浮腫の所見と併せてRAの早期診断に有用である.関節超音波法は,ベッドサイドで簡単に関節の評価が可能で,炎症を起こしている滑膜の血流をドップラ法で評価することにより,関節滑膜の質的な評価ができる.III関節リウマチの治療治療の中心となるのは薬物療法で,関節の機能を維持するためのリハビリテーション療法や,機能を回復させるための手術療法を,症状や病期の進行度にあわせて行う.薬物療法には非ステロイド系抗炎症薬,抗リウマチ薬,生物学的製剤,ステロイドがあり,この4種類の薬剤をどの時点でどのように投与するかについて,日本リウマチ学会は「関節リウマチ診療ガイドライン2014」で治療アルゴリズム(図1)を示している3).抗リウマチ薬のメトトレキサート(MTX)はアンカードラッグであり,患者がRAと診断された場合,MTXが禁忌でなければまずMTXを使うことが推奨されている.1.関節リウマチ診療ガイドライン2014日本リウマチ学会がGRADE(GradingofRecommendationsAssessment,DevelopmentandEvaluation)法を用いて作成し,2014年10月に発刊したガイドラインである3).本ガイドラインでは,治療目標を“臨床症状の改善のみならず,関節破壊の抑制を介して長期予後の改善,とくに身体機能障害の防止と生命予後の改善をめざす”としている.経済的な側面も含め総合的に患者とリウマチ専門医の協働的意思決定に基づく治療選択を行い,関節炎をできるだけ速やかに鎮静化させて寛解に導入し,寛解を長期間維持すること,合併病態を適切に管理すること,適切な外科的処置も検討すること,最新の医療情報の習得につとめることなどが治療方針として列挙されている.2.活動性の評価治療効果を判定するため,RAの疾患活動性を評価する方法としてDAS28(DiseaseActivityScore28),SDAI(simplifieddiseaseactivityindex),CDAI(ClinicalDiseaseActivityIndex)などが利用されている.それぞれ,四肢28関節の圧痛関節数,腫脹関節数,赤沈値やCRP,患者や医師の全般改善度(10cmスケールでの評価)により計算され,高活動性,中等度活動性,低活動性,寛解の4つに分類評価される.IV関節リウマチの眼病変RAの眼病変は27~39%の患者にみられ4,5),ドライアイ,角膜潰瘍,上強膜炎,強膜炎などが主な眼病変である.両眼性が多い.眼病変は罹病期間の長いRAや重症のRAに併発することが多く,重症になりやすい.また,抗CCP抗体と眼病変に有意な関連があることも報告されている5).頻度は少ないが,強膜炎や角膜潰瘍は難治で重大な視機能障害をきたす場合もあるので,リウマチ専門医と連携して治療する必要がある.白内障手術などの眼科手術を契機に強膜炎や角膜潰瘍が発症・再燃することがあるため,手術前後には免疫抑制治療を強化し,慎重な経過観察が必要である.1.ドライアイもっとも頻度の高いRAの眼病変で,RA患者の15~70%に起こる4~7).疑いまで含めると92%にドライアイがみられたという報告もある8).涙液減少による角結膜上皮障害により,眼精疲労,羞明,異物感,眼球乾燥,充血,眼痛など多彩な症状を訴える.これらの自覚症状に加え,Schirmer試験や涙液層破壊時間(tearfilmbreakuptime:BUT)検査により涙液の異常がみられ,フルオレセイン染色やローズベンガル染色で角結膜上皮障害が確認されれば,ドライアイの診断確定となる.涙液分泌能の異常だけでなく,唾液腺または涙腺の病理検査,唾液分泌能の検査,自己抗体の検査のうち1項目以上で異常がみられ,続発性Sjögren症候群と診断される症例も10~24%ある8,9).治療:涙液を補給するため人工涙液やヒアルロン酸ナトリウム点眼液,ジクアホソルナトリウム点眼液,レバミピド点眼液を点眼する.また,重度例では抗炎症作用や炎症細胞の浸潤抑制を目的としたステロイド点眼も効果がある.点眼薬による効果が不十分な場合には涙点プラグを挿入や外科的涙点閉鎖を行う.2.角膜病変角膜病変として硬化性角膜炎,周辺部角膜潰瘍,傍中心部角膜潰瘍があり,RAの1~3%にみられる4~6).免疫複合体の角膜輪部や結膜への沈着によるIII型アレルギー反応により,組織破壊をきたすと考えられている.a.硬化性角膜炎強膜炎に引き続き,血管侵入を伴って角膜浸潤が角膜周辺部から中央部に向かって進行する炎症性角膜疾患である.強膜炎に隣接して角膜実質混濁・腫脹,角膜浸潤がみられ,浸潤は角膜輪部と平行に弧状を呈する.症状が進行し角膜浸潤が高度になった場合,角膜実質が融解し菲薄化に至ることもある10).治療:ステロイドの点眼および内服で治療する.進行の早い症例では免疫抑制薬の点眼,内服も考慮する.b.角膜潰瘍・周辺部角膜潰瘍:Mooren潰瘍に類似する.潰瘍は角膜輪部に沿って円弧状に,また角膜中央に向かって進展し,潰瘍の先端に角膜浸潤を認める.通常両眼性で,強膜炎,ドライアイを伴うことが多い.しばしば再発して角膜穿孔に至る(図2a~c).・傍中心部角膜潰瘍:角膜中央付近に潰瘍を生ずることがある.初期は自覚症状に乏しく疼痛も少ない.RAの重症例に多く,血管侵入や炎症所見がないにもかかわらず急速に角膜が菲薄化して穿孔に至る(図2d).治療:治療はステロイド点眼が主体であり,二次感染予防のため抗菌点眼薬を併用する.ドライアイを伴っていることが多いので,人工涙液点眼,涙点プラグの挿入も必要に応じて行う.重症例では免疫抑制薬や生物学的製剤(抗TNF-a抗体など)の全身投与が必要になることがある.また,抗原および浸潤細胞の除去を目的として,潰瘍に隣接する結膜を切除する治療法も有効である.角膜穿孔をきたした場合は,保存的治療として治療用ソフトコンタクトレンズの装用や眼圧下降薬の投与を行い,穿孔創が大きく保存的治療でも前房が保たれない場合は外科的治療として結膜被覆,羊膜被覆,層状角膜移植,全層角膜移植などを行う.3.上強膜炎・強膜炎上強膜炎はRAの0.2~3.7%に,強膜炎はRA患者の0.2~6.3%にみられる4~7,11).約半数が両眼性である11).角膜病変と同様,III型アレルギー反応が病態の基本で,免疫複合体が強膜血管に沈着し,補体系活性化により炎症細胞浸潤が誘導され,強膜血管炎が発生すると考えられている.a.上強膜炎結膜血管と浅在性上強膜毛細血管の充血がみられる状態で,強膜浮腫はなく,自覚症状としては軽度の異物感を訴える程度で強い眼痛はない.びまん性と可動性の結節性小隆起を伴う結節性とがある.治療:ステロイド点眼で治療する.b.強膜炎結膜や浅在性上強膜血管叢とともに深在性上強膜毛細血管叢が充血して強膜浮腫を生じ,強膜はサーモンピンクから紫がかった色調を呈する.通常,激しい眼痛を訴え,睡眠や食欲が妨げられることもある.角膜病変や軽度の虹彩炎を伴うことがあり,羞明や流涙を生じることもある.炎症の部位により前部強膜炎と後部強膜炎に分類され,前部強膜炎は炎症の形状により,びまん性,結節性,壊死性に分けられる.・びまん性強膜炎:強膜血管がびまん性に拡張して,やや暗赤色の強い充血を呈する(図3a).・結節性強膜炎:可動性のない,硬い結節がみられる強膜炎で,結節は輪部付近の強膜にみられることが多い(図3b).びまん性や結節性の前部ぶどう膜炎では,再燃を繰り返すとその部位の強膜が菲薄化して眼球内のぶどう膜炎が透見されるようになり,強膜が青黒くなることがあるが,強膜穿孔はほとんど起こさない.・壊死性強膜炎:壊死性強膜炎は,炎症を伴う壊死性強膜炎と伴わない強膜軟化症に分類される.炎症を伴う壊死性強膜炎では充血と疼痛を訴え,充血部位に囲まれた黄白色の強膜および結膜の虚血部位が認められる(図3c).強膜軟化症は充血や疼痛などの症状がないにもかかわらず,突然強膜に壊死病巣がみられるもので,初期には充血の少ない虚血性の黄白色結節形成がみられる.いずれも虚血部は強膜が菲薄化し,進行するとぶどう膜が黒く透見され,強膜穿孔を起こしやすい(図3d).治療が困難で視力予後不良となる場合が多い.・後部強膜炎:前部強膜炎を伴う場合が多い.眼の奥の痛みや眼球運動痛があり,超音波検査やCT,MRIで眼球後壁の肥厚や球後組織の浮腫がみられる.超音波検査ではTenon囊の浮腫を示すecho-lucentareaが視神経周囲でみられるとTサインとよばれる.強膜の炎症の波及により滲出性網膜剝離,乳頭腫脹,脈絡膜皺襞,網膜血管炎を合併することがあり,それらによる視力低下をきたすことがある(図4).治療:びまん性や結節性前部強膜炎ではまずステロイド点眼治療を行う.ステロイド点眼に反応しない場合は,トリアムシノロンアセトニドの結膜下注射を追加する.炎症部位に接して少量(0.05~0.1ml)結膜下注射し,効果不十分なら注射を追加する.眼圧上昇に注意する.ステロイド局所治療が効果不十分の場合,シクロスポリン点眼の併用も考慮する.局所治療に反応しない場合や,壊死性強膜炎や後部強膜炎ではステロイド全身投与を行う.通常,プレドニゾロン内服を0.5~1.0mg/kg/日から開始し,重症例ではステロイドパルス療法を行う.ステロイド減量で再発する場合やステロイド内服しても効果が不十分な場合は免疫抑制薬(シクロスポリンやメトトレキサート)の併用が必要となる.難治性強膜炎に対して抗TNF-a抗体や抗CD20抗体などの生物学的製剤の有効性が報告されており,免疫抑制薬治療に抵抗する難治症例では適応を検討する必要がある.薬物治療が奏効せずに強膜軟化が進行あるいは強膜穿孔した場合は,健常部も含めた軟化病巣切除と保存強膜や保存角膜による被覆術を行う.4.眼底病変眼底病変は稀であるが,網膜血管炎が0.5~4.4%にみられ,血管炎によると考えられる網膜綿花状白斑,網膜動脈閉塞症,網膜静脈閉塞症,虚血性視神経症などが報告されている7,12~16).また,検眼鏡的に所見がなくても,フルオレセイン蛍光眼底造影検査をすると18%に網膜血管炎がみられる17).RA患者の網膜静脈径は拡大しており,網膜血管径が拡大している症例では心疾患を合併する率が高いという報告や,RA患者の脈絡膜は健常人に比べて厚く,脈絡膜厚はRFと相関しているという報告があり,網膜静脈径や脈絡膜厚が全身的な血管炎の指標になる可能性が示唆されている18~20).5.抗TNFa抗体と眼病変抗TNFa抗体はRAの治療に用いられる薬剤であり,また強膜炎やぶどう膜炎の治療にも有用であることが報告されているが,抗TNFa抗体の一つであるエタネルセプトにより強膜炎やぶどう膜炎,眼筋炎を発症することが報告されている21,22).エタネルセプトで治療中のRAに強膜炎がみられた場合はエタネルセプトの副作用の可能性を考えて他の抗TNFa抗体に変更することを検討する必要がある.文献1)YamanakaH,SugiyamaN,InoueEetal:EstimatesoftheprevalenceofandcurrenttreatmentpracticesforrheumatoidarthritisinJapanusingreimbursementdatafromhealthinsurancesocietiesandtheIORRAcohort(I).ModRheumatol24:33-40,20142)AletahaD,NeogiT,SilmanAJetal:2010rheumatoidarthritisclassificationcriteria:anAmericanCollegeofRheumatology/EuropeanLeagueAgainstRheumatismcollaborativeinitiative.AnnRheumDis69:1580-1588,20103)日本リウマチ学会:関節リウマチ診療ガイドライン2014.メディカルレビュー社,東京,20144)ZlatanovićG,VeselinovićD,CekićSetal:Ocularmanifestationofrheumatoidarthritis-differentformsandfrequency.BosnJBasicMedSci10:323-327,20105)VigneshAP,SrinivasanR:Ocularmanifestationsofrheumatoidarthritisandtheircorrelationwithanti-cycliccitrullinatedpeptideantibodies.ClinOphthalmol9:393-397,20156)ArtifoniM,RothschildPR,BrézinAetal:Ocularinflammatorydiseasesassociatedwithrheumatoidarthritis.NatRevRheumatol10:108-116,20147)MatsuoT,KonoR,MatsuoNetal:Incidenceofocularcomplicationsinrheumatoidarthritisandtherelationofkeratoconjunctivitissiccawithitssystemicactivity.ScandJRheumatol26:113-116,19978)FujitaM,IgarashiT,KuraiTetal:Correlationbetweendryeyeandrheumatoidarthritisactivity.AmJOphthalmol140:808-813,20059)AnteroDC,ParraAG,MiyazakiFHetal:SecondarySjögren’ssyndromeanddiseaseactivityofrheumatoidarthriti.RevAssocMedBras57:319-322,201110)松本雄介:硬化性角膜炎.前眼部アトラス(大鹿哲郎編)眼科プラクティス18,p254,光文堂,200711)AkpekEK,ThorneJE,QaziFAetal:Evaluationofpatientswithscleritisforsystemicdisease.Ophtahlmology111:501-506,200412)MatsuoT,KoyamaT,MorimotoNetal:Retinalvasculitisasacomplicationofrheumatoidarthritis.Ophthalmologica201:196-200,199013)MartinMF,ScottDG,GilbertCetal:Retinalvasculitisinrheumatoidarthritis.BrMedJ(ClinResEd)282:1745-1746,198114)MatsuoT:Multipleocclusiveretinalarteritisinbotheyesofapatientwithrheumatoidarthritis.JpnJOphthalmol45:662-664,200115)PericS,CerovskiB,PericP:Anteriorischaemicopticneuropathyinpatientwithrheumatoidarthritis–casereport.CollAntropol25Suppl:67-70,200116)CromptonJL,IyerP,BeggMW:Vasculitisandischaemicopticneuropathyassociatedwithrheumatoidarthritis.AustJOphthalmol8:219-239,198017)GiordanoN,D’EttoreM,BiasiGetal:Retinalvasculitisinrheumatoidarthritis:anangiographicstudy.ClinExpRheumatol8:121-125,199018)VanDoornumS,StricklandG,KawasakiRetal:Retinalvascularcaliberisalteredinpatientswithrheumatoidarthritis:abiomarkerofdiseaseactivityandcardiovascularrisk?Rheumatology50:939-943,201119)MoiJH,HodgsonLA,WicksIPetal:Suppressionofinflammatorydiseaseactivityinrheumatoidarthritisisassociatedwithimprovementsinretinalmicrovascularhealth.Rheumatology(Oxford)55:248-251,201620)TetikogluM,TemizturkF,SagdikHMetal:Evaluationofthechoroid,fovea,andretinalnervefiberlayerinpatientswithrheumatoidarthritis.OculImmunolInflamm30:1-5,201521)TabanM,DuppsWJ,MandellBatal:Etanercept(enbrel)-associatedinflammatoryeyedisease:casereportandreviewoftheliterature.OculImmunolInflamm14:145-50,200622)Gaujoux-VialaC,GiampietroC,GaujouxTetal:Scleritis:aparadoxicaleffectofetanercept?Etanercept-associatedinflammatoryeyedisease.JRheumatol39:233-239,2012表12010ACR⊘EULAR関節リウマチ分類基準以下の2項目を満たす患者を対象とする1)少なくとも1カ所の活動性臨床的滑膜炎(関節腫脹)を有する2)上記の関節腫脹をよりよく説明できるRA以外の疾患が存在しないRA分類基準(A~Dのカテゴリーの合計点が10点中6点以上の場合にRA確実例と分類する)スコアA腫脹関節数1個の中~大関節02~10個の中~大関節11~3個の小関節24~10個の小関節311関節以上(少なくとも1個の小関節を含む)5B血清学的所見(リウマトイド因子または抗CCP抗体)RF,抗CCP抗体いずれも陰性0RF,抗CCP抗体いずれか低値陽性(≦基準値の3倍)2RF,抗CCP抗体いずれか高値陽性(>基準値の3倍)3C急性期反応(CRPまたはESR)CRPもESRも正常0CRP,ESRいずれかの上昇1D臨床症状の持続期間6週間未満06週間以上1ACR/EULAR:米国リウマチ学会/ヨーロッパリウマチ学会(文献2より改変引用)PhaseⅠPhaseⅡPhaseⅢ関節リウマチと診断短期間のみ少量のステロイドを追加してよいPhaseⅡへ進む治療目標を6カ月以内に達成継続±NoNoYesPhaseⅠが効果不十分または副作用で継続できず生物学的製剤を追加投与TNF阻害薬トシリズマブアバタセプト次の従来型抗リウマチ薬を選択する(1剤または複数)(ステロイドの併用可能)治療目標を6カ月以内に達成PhaseⅢへ進む継続予後不良因子ありRF/抗CCP抗体陽性高疾患活動性早期の関節破壊予後不良因子がないPhaseIIが効果不十分または副作用で継続できず生物学的製剤を変更する1st→2nd→3rd…治療目標を6カ月以内に達成治療目標を6カ月以内に達成トファシチニブ(±抗リウマチ薬)継続生物学的製剤+従来型抗リウマチ薬YesNoYesNo他の生物学的製剤+従来型抗リウマチ薬±YesYesNoMTXが禁忌ではないMTXが禁忌MTXを開始する効果不十分の場合は従来型抗リウマチ薬を併用する従来型抗リウマチ薬を開始する効果不十分の場合は他の従来型抗リウマチ薬を併用する他の生物学的製剤+従来型抗リウマチ薬図1関節リウマチ診療ガイドライン2014治療アルゴリズム(文献3より改変引用)図2関節リウマチの角膜潰瘍a:周辺部角膜潰瘍.b:強膜炎を伴う周辺部角膜潰瘍.充血が強い部分に接して角膜潰瘍と角膜浸潤がみられる.c:周辺部角膜潰瘍の穿孔.虹彩が嵌頓している.d:傍中心部角膜潰瘍.穿孔して虹彩が嵌頓している.図3関節リウマチの前部強膜炎a:びまん性前部強膜炎.b:結節性前部強膜炎.可動性のない隆起病変がみられる.c:壊死性強膜炎.10時方向輪部強膜に白色の虚血部がみられ,広い範囲に周辺部角膜潰瘍を伴っている.d:壊死性強膜炎後に強膜が菲薄化し,ぶどう膜が透けてみえる.図4関節リウマチの後部強膜炎a:前部強膜炎を伴っており,充血が球後へ続いている.b:上方に脈絡膜皺襞と滲出性網膜剝離がみられる.c:超音波検査で眼球後壁の肥厚がみられ,球後組織の浮腫がecho-lucentareaとして観察される.*KumikoNakao:鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系〔別刷請求先〕中尾久美子:〒890-8544鹿児島市桜ヶ丘8-35-1鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系0910-1810/16/¥100/頁/JCOPY(7)933934あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016(8)(9)あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016935936あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016(10)(11)あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016937938あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016(12)(13)あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016939940あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016(14)

HLA-B27関連ぶどう膜炎と脊椎関節炎

2016年7月31日 日曜日

特集●全身疾患と眼:これがホットなトピックス!あたらしい眼科33(7):929〜932,2016HLA-B27関連ぶどう膜炎と脊椎関節炎HLA-B27-associatedUveitisandSpondyloarthritis酒井勉*IHLA遺伝子群多様性と疾患との関連Humanleukocyteantigen(HLA)はT細胞受容体に対して抗原ペプチドを提示する分子であり,免疫疾患をはじめとして,多数の疾患の感受性に関連する.HLAB27は,急性前部ぶどう膜炎,強直性脊椎炎,反応性関節炎(Reiter症候群)との強い関連で知られている.1.HLA-B27関連ぶどう膜炎a.HLA-B27関連ぶどう膜炎とはHLA-B27関連ぶどう膜炎は一般的に急性の前眼部炎症が主体であるため,HLA-B27関連急性前部ぶどう膜炎(acuteanterioruveitis:AAU)と称される.全身疾患が関連する場合とそうでない場合があり,おもな全身疾患として強直性脊椎炎,反応性関節炎(Reiter症候群),潰瘍性大腸炎,乾癬がある.b.疫学・頻度発症率は,人種により異なる.欧米では前部ぶどう膜炎の18~32%が,アジアでは6~13%がHLA-B27関連AAUであると報告されている1).日本人ではHLAB27陽性者は少なく,中国・韓国人と比較してHLAB27関連AAUの発症率は低いと考えられている.c.男女比・発症年齢男性に多く,女性の1.5~2.5倍みられる.発症年齢は20~40歳に多い.d.症状HLA-B27関連AAUの臨床的特徴として,急性発症,片眼性,非肉芽腫性,フィブリン析出,前房蓄膿,高頻度の再発があげられる.全身疾患と関連することも多く,最初の徴候が眼症状の可能性もあり,内科医へのコンサルトも含め,慎重な経過観察を要する.眼合併症としてよくみられるのは,虹彩後癒着,高眼圧,後囊下白内障,続発緑内障であり,慢性前部ぶどう膜炎へ移行する場合もある.後眼部にびまん性硝子体炎や囊胞様黄斑浮腫(図1)がみられることがあり,重篤な視力障害をきたす場合もある1).e.診断・検査血液検査で,CRPや血沈の上昇がみられることが多い.リウマトイド因子や抗核抗体は陰性である.HLAB27の有無をみるためHLA遺伝子型の検査を行うが,保険収載はされていない.f.治療HLA-B27関連AAUの治療は,ステロイド薬と散瞳薬点眼の併用治療が中心である.難治性の場合や後眼部病変を併発した場合には,トリアムシノロンアセトニドの後部Tenon囊下注射(図2)やステロイド薬の全身投与が有効である.一方,欧米では,TNF(tumornecrosisfactor)阻害薬であるインフリキシマブ(レミケード®)やアダリムマブ(ヒュミラ®)が使用され.本疾患に対する治療効果が高いことが示されている1,2).とくに全身疾患と関連する場合には,眼外症状にも著効することから,メリットが大きいと考えられる.g.予後虹彩後癒着,炎症の再燃,慢性前部ぶどう膜炎への移行,ステロイド薬温存,ステロイド薬局所注射歴,男性は視力低下の危険因子である1,2).しかし,一般的には視力予後がよい.2.強直性脊椎炎a.強直性脊椎炎とは強直性脊椎炎(ankylosingspondylitis)は,脊椎や仙腸関節,股関節や肩の関節などに炎症を起こす脊椎関節炎の代表的な疾患である.病因は明らかではないが,HLA-B27との関連性が指摘されている.b.疫学・頻度発症率は,人種により異なることが知られている.一般的に白人では0.5%,日本人ではその10分の1以下であると考えられている3).HLA-B27との関連性が指摘されているが,日本人ではHLA-B27陽性者は少なく,強直性脊椎炎も欧米に比べてまれである.一方で,中国人・韓国人には日本人と比較してHLA-B27陽性者が多く,発症率も高いことが知られている.c.男女比・発症年齢海外では90%以上の症例でHLA-B27が陽性であることが知られている.発症年齢は10~35歳に多く,45歳以上で発症することは比較的まれである.男性に多いが,女性にもみられる.d.症状本疾患では,腰痛や臀部の痛みが主症状であることが多いが,痛みは急でなく徐々に進行する.適度な運動をすると痛みが楽になり,動かさないでいると悪くなるのが特徴で,夜間や朝方に強い痛みが起こる.また,症状に波があるのも特徴で,激痛が数日続きその後は痛みがほとんどなくなることもある.また,腱が骨につく付着部に炎症が起こることがある.脊椎や関節以外では,急性前部ぶどう膜炎(図3)が約3分の1にみられる.全身的には,初期には体重減少,疲労感,発熱などがみられる.e.診断・検査強直性脊椎炎は改訂ニューヨーク診断基準を用いて診断する(表1).血液検査で,CRPや血沈の上昇がみられることが多い.リウマトイド因子や抗核抗体は陰性である.HLA-B27の有無をみるためHLA遺伝子型の検査を行うが,保険収載はされていない.画像検査として,脊椎や仙腸関節のX線の検査を行う.f.治療強直性脊椎炎の治療は,従来,薬物療法と運動・理学療法が中心であった.薬物療法は,痛みに対しては非ステロイド性抗炎症薬が,局所の炎症に対してはステロイド薬の局所注射薬が用いられる.一方,わが国では,2010年にTNF阻害薬であるインフリキシマブ(レミケード®)とアダリムマブ(ヒュミラ®)が強直性脊椎炎に対して保険適用となった.本疾患に対する治療効果は高く,ほとんどの症例で痛みの改善効果が認められた.筆者らの施設でも,TNF阻害療法施行ガイドライン(2010年10月改訂版,表2)4)に則り,急性前部ぶどう膜炎を併発した強直性脊椎炎に対してインフリキシマブを使用した経験があるが,強直性脊椎炎の痛みとぶどう膜炎に著効し,QOLの著しい向上を得ることができた.薬剤の副作用として,感染症には十分留意しなければいけないが,内科医との緊密な連携かつ定期的なモニタリングを継続することで,長期的に疾患活動性のコントロールが可能となると考えられている.g.予後数年以上かけて徐々に脊椎の強直が起こり,背骨の動きが制限される.3.反応性関節炎(Reiter症候群)a.反応性関節炎とは関節以外の部位の細菌感染症後に起こる関節炎.以前はReiter症候群とよばれていた.発症に関与する細菌として,クラミジア菌,サルモネラ菌,赤痢菌,エルシニア菌,カンピロバクターなどが知られている.b.疫学・頻度欧米白人での発症頻度は,人口10万人当たり年間4~6人と推定されている.しかし,わが国のHLA-B27陽性者は1%以下で,欧米白人の7~14%に比べてはるかに低いので,反応性関節炎の頻度も欧米と比べてはるかに少ないと考えられている.c.男女比・発症年齢発症年齢は20歳前後に圧倒的に多いが,小児から80歳まであらゆる年齢層に発症する.性差は5~6:1で圧倒的に男性に多い.d.症状脊椎関節炎,無菌性尿道炎,結膜炎の三主徴を特徴とする.・脊椎関節炎:関節炎は細菌感染後,2~4週後に発症する.関節炎は膝・足関節などの下肢の関節に多く認められ,単関節あるいは少関節炎にしか起こらない.仙腸関節炎では腰部から臀部にかけて軽度の痛みがみられる.腱付着部炎は足底腱膜起始部,アキレス腱付着部に好発し,強い痛みを伴う.・非淋菌性尿道炎:排尿時痛と粘性膿性分泌物を伴う.・結膜炎:結膜の発赤と充血がみられる.e.診断・検査確立した診断基準はなく,細菌感染2~4週後に発症する一過性の脊椎関節炎でHLA-B27陽性率が高いことから診断する.特異的な検査所見はなく,血清リウマトイド因子,抗核抗体は陰性である.HLA-B27は60~80%で陽性になる.活動性を反映して炎症反応(赤沈,CRP)は亢進する.f.治療多くが自然に軽快するが,通常は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を用いる.ただし症状が遷延化する例には,サラゾスルファピリジンやメトトレキサートなどの抗リウマチ薬を用いることがある.上記の治療で改善しない場合はTNF阻害薬が有効である.g.予後一過性で自然に治癒ずるが,約20%の症例では遷延化・慢性化する脊椎関節炎に移行することが報告されている3).文献1)ChangJH,McCluskeyPJ,WakefieldD:AcuteanterioruveitisandHLA-B27.SurveyofOphthalmology50:364-388,20052)LohAR,AcharyaNR:IncidenceratesandriskfactorsforocularcomplicationsandvisionlossinHLA-B27-associateduveitis.AmJOphthalmol150:534-542.e2,2013)BraunJ,SieperJ:Ankylosingspondylitis.Lancet369:1379-1390,2004)日本リウマチ学会ホームページ図1HLA-B27関連急性前部ぶどう膜炎に併発した黄斑浮腫光干渉断層計で囊胞様黄斑浮腫と漿液性網膜剝離がみられた.図2トリアムシノロンアセトニドTenon囊下注射前後の光干渉断層計所見トリアムシノロンアセトニドTenon囊下注射後,囊胞様黄斑浮腫と漿液性網膜剝離の消退がみられた.図3強直性脊椎炎に合併した急性前部ぶどう膜炎表1改訂ニューヨーク診断基準I.臨床症状1.腰背部の疼痛,こわばり(3カ月以上持続),運動により改善し,安静により軽快しない2.腰椎の可動域制限(前後屈および側屈)3.胸郭の拡張制限II.仙腸関節のX線所見両側2度以上,または片側3度以上の仙腸関節炎所見0度正常1度疑い(骨縁の不鮮明化)2度軽度(小さな限局性の骨びらん,硬化,関節裂隙は正常)3度明かな変化(骨びらん・硬化の進展と関節裂隙の拡大,狭小化または部分的な強直)4度関節裂隙全体の強直III.診断基準1.確実例臨床症状のうちの1項目以上+X線所見2.疑い例a)臨床症状3項目b)臨床症状なし+X線所見表2TNF阻害療法対象患者改訂ニューヨーク診断基準によって強直性脊椎炎の確実例と診断され,NSAID通常量を3カ月以上継続して使用してもコントロール不良の強直性脊椎炎患者.コントロール不良の目安として,以下を満たす者.・BASDAI(BathAnkylosingSpondylitisDiseaseActivityIndex)スコア2)が4以上忍容性に問題があり,NSAIDsが使用できない場合も使用を考慮する.さらに日和見感染症の危険性が低い患者として以下の3項目も満たすことが望ましい.・末梢血白血球数4,000/mm3以上・末梢血リンパ球数1,000/mm3以上・血中b-D-グルカン陰性*BASDAI(BathAnkylosingSpondylitisDiseaseActivityIndex)スコア以下のA)~F)についてVAS(10cmスケール)により評価し,以下の計算式で算出した値(0~10)とする.BASDAI=0.2(A+B+C+D+0.5(E+F))A)疲労感の程度B)頚部や背部~腰部または臀部の疼痛の程度C)上記B以外の関節の疼痛・腫脹の程度D)触れたり押したりしたときに感じる疼痛の程度E)朝のこわばりの程度F)朝のこわばりの継続時間(0~120分)(TNF阻害療法施行ガイドラインより)*TsutomuSakai:東京慈恵会医科大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕酒井勉:〒105-8461東京都港区西新橋3-25-8東京慈恵会医科大学医学部眼科学講座0910-1810/16/¥100/頁/JCOPY(3)929930あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016(4)(5)あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016931932あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016(6)

序説:全身疾患と眼:これがホットなトピックス!

2016年7月31日 日曜日

●序説あたらしい眼科33(7):927〜928,2016全身疾患と眼:これがホットなトピックス!SystemicDiseaseandtheEye:HotTopics大黒伸行*岡田アナベルあやめ**もし先生方のお手元に「眼科研修医ガイドライン(平成27年度版)」がありましたらご覧いただきたいのですが,そこには数多くの全身疾患が記載されております.また,表1に示しますように,眼炎症疾患だけでも多くの全身疾患がその原因となっております.加えて,平成29年度から施行されます新専門医制度では,眼科医も全身管理の講習受講が必須となっており,眼科医も全身疾患に関する知識が求められる時代となってまいりました.一方,眼科学発展の歴史を振り返りますと,医療機器の進歩,手術装置・手技の発展,診断学の進歩(これには基礎医学の発展による病態認識の深まりが重要な役割を果たしております),病態の解明とそれに基づく新しい薬物治療の開発,これらの要素が組み合わさり進歩してきたことがわかります.しかし,その時代時代でスポットライトが照らす要素が異なっていることも事実です.少し前まで眼科学の進歩の中心は手術装置・手技の発達でしたが,近年では,新しい薬物治療や画像診断機器の進歩が中心となってきております.分子標的診断や画像診断の進歩と同時に,新しい生物製剤が次々と開発され,炎症性疾患や黄斑疾患に対する診療が近年急速に発展・変化しております.同時に,これら生物製剤を使いこなすには感染症に関する知識も必要です.このように,とくに眼炎症性疾患や網膜疾患を日常診療している医師は,常に最新情報を取り込む必要があります.そこで,これら最近の変化のなかでもとくに注目すべきホットなトピックスを,本特集でご紹介したいと思います.本特集でとりあげる疾患は,リウマチ関連疾患,結核や梅毒というような過去の疾患と思われていた感染症および最近また増加傾向にあるといわれているAIDS,IgG4関連疾患や癌関連疾患のような最近その病態が明らかとなってきた疾患,薬物による眼毒性の最新知見です.どれもややマイナーな疾患であると思われがちですが,それでも上手にマネージしないと,患者にとっては重大な視機能低下あるいはQOL低下が生じる可能性があります.この領域を専門とする先生方に各疾患の概念,最新の内科的な診断および治療を紹介していただき,次に眼における病態や治療について概説していただきます.炎症性眼疾患を専門としない眼科医の先生方にとっても,免疫疾患や感染症における内科的な知識をアップデートする良い機会だと思いますので,ぜひご一読ください.文献1)OhguroN,SonodaK-H,TakeuchiMetal:The2009prospectivemulti-centerepidemiologicsurveyofuveitisinJapan.JpnJOphthalmol56:432-435,2012表12009年日本眼炎症学会疫学調査結果1)サルコイドーシス407例(10.7%)原田病267例(7.0%)急性前部ぶどう膜炎250例(6.6%)強膜炎235例(6.2%)ヘルペス性虹彩炎159例(4.2%)Behçet病149例(3.9%)細菌性眼内炎95例(2.5%)仮面症候群95例(2.5%)Posner-Schlossman症候群69例(1.8%)網膜血管炎61例(1.6%)糖尿病虹彩炎54例(1.4%)結核性ぶどう膜炎54例(1.4%)急性網膜壊死53例(1.4%)トキソプラズマ症48例(1.3%)一過性多発性白点症候群40例(1.1%)真菌性眼内炎39例(1.0%)サイトメガロウイルス網膜炎37例(1.0%)ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)-I関連ぶどう膜炎29例(0.7%)炎症性腸疾患に関連したぶどう膜炎28例(0.7%)多発性後部網膜色素上皮症28例(0.7%)他の全身疾患に合併したぶどう膜炎27例(0.7%)周辺部ぶどう膜炎26例(0.7%)多発性脈絡膜炎23例(0.7%)Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎21例(0.7%)その他223例(7.0%)分類不能1,191例(38.9%)計3,060例(100%)(文献1より一部改変)*NobuyukiOhguro:JCHO大阪病院眼科**AnnabelleAyameOkada:杏林大学医学部眼科学教室0910-1810/16/¥100/頁/JCOPY(1)927928あたらしい眼科Vol.33,No.7,2016(2)

3D Visual Function Trainer-ORTe を用いた上斜筋麻痺患者の9方向眼位検査

2016年6月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科33(6):915.919,2016c3DVisualFunctionTrainer-ORTeを用いた上斜筋麻痺患者の9方向眼位検査保科美希*1石川均*2後関利明*1半田知也*2佐藤司*1清水公也*1*1北里大学病院眼科*2北里大学医療衛生学部視覚機能療法学Nine-directionDeviationExaminationofSuperiorObliqueParalysisUsingthe3DVisualFunctionTrainer-ORTeMikiHoshina1),HitoshiIshikawa2),ToshiakiGoseki1),TomoyaHanda2),TsukasaSato1)andKimiyaShimizu1)1)DepartmentofOphthalmology,SchoolofMedicine,KitasatoUniversity,2)OrthopticsandVisualScience,DepartmentofRehabilitation,SchoolofAlliedHealthSciencesKitasatoUniversity目的:上斜筋麻痺患者における9方向眼位測定において,3DVisualFunctionTrainer-ORTeと大型弱視鏡の眼位測定値と測定時間を比較検討した.対象および方法:対象は上斜筋麻痺と診断された8例(男性7例,女性1例,平均年齢43.8±28.6歳)である.9方向眼位測定(中心より15°)は3DVisualFunctionTrainer-ORTe(ORTe:ジャパンフォーカス社),大型弱視鏡(ClementClarke社)を用い,測定値と測定時間を比較検討した.ORTeの9方向眼位検査距離は25cm,大型弱視鏡は光学的遠見である.結果:水平偏位量は,ORTeは大型弱視鏡と比較し外方偏位となり(p<0.01),回旋偏位量は各方向によってばらつくものの大きく測定される傾向にあったが,垂直偏位量に有意差は認められなかった.上斜筋麻痺患者の9方向眼位測定時間はORTeでは平均5.2分,大型弱視鏡では17.5分であり,有意にORTeのほうが短時間であった(p<0.01).結論:ORTeは検査距離の違いによる特徴を考慮すれば,簡便かつ迅速に測定でき,臨床における上斜筋麻痺患者の検査,診断に有用な機器である.Purpose:Comparisonbetweennine-directiondeviationandmeasurementtimeobtainedusinga3DVisualFunctionTrainer-ORTe(ORTe)andamajoramblyoscopeinpatientswithsuperiorobliqueparalysis.Subjectsandmethods:Thisstudywasconductedin8patientswithsuperiorobliqueparalysis.Nine-directiondeviationvalues(15degreesfromcenter)andmeasurementtimeweredeterminedusingbothdevices.Results:Inhorizontaldeviation,exodeviationwiththeORTewasgreaterthanwiththemajoramblyoscope(p<0.01).MeanvaluesofexcycloductionwerealsogreaterwiththeORTethanwiththemajoramblyoscope,inmostdirections.However,verticaldeviationdidnotdiffersignificantlybetweenthetwo.Measurementtime(minutes)withtheORTe/amblyoscopewas5.2/17.5,respectively.Conclusion:TheORTehassomedisadvantagesintermsofmeasurementvalues,butenablesquickandeasyexaminations.TheORTecanthereforebedeemedpotentiallyusefulinclinicalapplication.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(6):915.919,2016〕Keywords:3DVisualFunctionTrainer-ORTe,上斜筋麻痺,9方向眼位,回旋偏位,大型弱視鏡.3DVisualFunctionTrainer-ORTe,superiorobliqueparalysis,nine-direction,cyclodeviation,majoramblyoscope.はじめに上斜筋麻痺は上下斜視の原因としてもっとも多い疾患であり,おもに麻痺眼の内下転制限,外方回旋偏位を生じる1).臨床的診断として,Parksのthree-steptestやBielschowsky頭部傾斜試験,眼位写真,Hesschart,大型弱視鏡,doubleMaddoxrodtest,眼底写真が診断の助けとなる2).外方回旋偏位は通常の交代プリズム遮閉試験のみでは検出されにくく,Hesschartでも下転制限のように検出されやすいため,上斜筋麻痺の診断は困難である場合が多い3).そのため大型弱視鏡の併用が有用とされている.〔別刷請求先〕保科美希:〒252-0375神奈川県相模原市南区北里1-15-1北里大学病院眼科Reprintrequests:MikiHoshina,DepartmentofOphthalmology,SchoolofMedicine,KitasatoUniversity,1-15-1,Kitasato,Minamiku,Sagamihara,Kanagawa252-0375,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(155)915 大型弱視鏡は回旋偏位やわずかな上下偏位の定量が可能であり,異なった検者でも安定した結果が得られやすい.一方で,測定可能年齢には限界があり,測定には熟練を要する4).また,9方向眼位測定は検者が鏡筒を各方向に動かし測定,結果の記録を行うため,長時間の検査となり,患者への負担は無視できない.近年,複数の視機能検査・訓練を1台で行える3DVisualFunctionTrainer-ORTe(ORTe:ジャパンフォーカス社)が開発された.なかでも9方向眼位測定プロクラム(3DVFTHESS)は明室での測定が可能で,簡単なマウス操作により表1対象症例症例年齢麻痺眼A.P.C.T.正面眼位(Δ)*N:近見F:遠見150左眼N:8X’8LH’F:6LH(T)25左眼N:4E’5LH(T)’F:5LH(T)359左眼N:5LHT’F:2E5LHT420左眼N:4X’2LH’F:4X4LH(T)578右眼N:18XT’6RHT’F:6XT4RHT644左眼N:14XT’18LHT’F:25LHT714右眼N:18XT’18RHT’F:8X20RHT869左眼N:6X’10LHT’F:10LHT*X:外斜位,XT:外斜視,E:内斜位,H:上斜位,HT:上斜視.()は間欠性を示す.ab短時間で測定でき,検者の主観が入らず熟練度に左右されない利点を有する5).ORTeは検査結果の自動解析・保存が可能で臨床的な有用性が高いが,大型弱視鏡など従来機器と測定条件が異なるため,互換性など検証が必要である.今回,筆者らは3DVisualFunctionTrainer-ORTeと大型弱視鏡を用いて上斜筋麻痺患者における9方向眼位の測定値と測定時間を比較検討したので報告する.I対象および方法対象は北里大学病院を受診し上斜筋麻痺と診断された8例であり,年齢,性別,麻痺眼の詳細は表1に示す.全例,矯正視力(1.0)以上で軽度白内障以外の器質的疾患のないものとした.9方向眼位(中心より15°)をORTe,大型弱視鏡で測定し,測定値と測定時間を比較検討した.ORTeは専用フルハイビジョン3Dモニタおよび円偏光眼鏡により両眼分離され,明室下の簡単なマウス操作で9方向眼位測定の測定を行う(図1).固視点は第一眼位のみ検者が呈示し,被検者が固視眼視標(丸の中心)と検査眼視標(矢印の頂点)が重なったところで,マウスをクリックすることで水平,垂直偏位量が測定される.その後マウスホイールを動かし,矢印の線と格子状の線が平行となったところでもう一度クリックすることで回旋偏位量が測定される.自動的に結果が記録され,測定結果の印刷,保存が可能である.図13DVisualFunctionTrainer-ORTe(ORTe:ジャパンフォーカス社)a:ORTeの外観.偏光眼鏡を装用し,すべてマウス操作で測定を行う.b:測定結果.水平,垂直偏位が線で結ばれ,回旋偏位が棒の傾きで示され,下段には測定値が表示される.図は症例No.2の結果を示す.916あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016(156) 大型弱視鏡は,被検者が鏡筒を動かし,固視眼視標(枠)と検査眼視標(十字)を一致させる.その後垂直,回旋偏位量を定量するため検者がノブを動かす.測定結果は検者が用紙に記録し,その後電子カルテに入力する.2機種間の測定条件の違いについては表2に示した.検討項目は各眼,各方向測定における平均測定値(水平,垂直,回旋)と測定時間,結果記載完了時間をORTeと大型弱視鏡間で比較検討した.なお測定時間は検査開始から検査終了までの時間,記載完了時間は,検査開始から検査結果の記載が完了するまでの時間とした.統計解析にはWilcoxonの順位和検定を用い,有意水準は危険率5%未満とした.105II結果上斜筋麻痺患者の9方向眼位検査測定におけるORTeと表2ORTeと大型弱視鏡の比較ORTe大型弱視鏡操作検査距離矯正方法検査視標両眼分離被検者25cm近見矯正矢印と丸円偏光眼鏡検者光学的遠見完全屈折矯正十字と丸鏡筒ORTe麻痺眼■大型弱視鏡麻痺眼■ORTe健眼■大型弱視鏡健眼図2平均測定値:水平偏位量─ORTeと大型弱視鏡の比較全方向ORTeのほうが有意に外方偏位となった(*p<0.05,Wilcoxonsigned-ranktest)結果は平均±標準偏差で表示.下方(マイナス)は外方偏位,上方(プラス)は内方偏位を示す.外上転上転内上転外転正面内転外下転下転内下転偏位量(°)0-5-10-15ORTe麻痺眼■大型弱視鏡麻痺眼12■ORTe健眼■大型弱視鏡健眼10偏位量(°)86420外上転上転内上転外転正面内転外下転下転内下転図3平均測定値:垂直偏位量麻痺眼,健眼ともに全方向において有意な差は認められなかった(p>0.05,Wilcoxonsigned-ranktest).(157)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016917 ORTe麻痺眼■大型弱視鏡麻痺眼■ORTe健眼■大型弱視鏡健眼********12*108642偏位量(°)0外上転上転内上転外転正面内転外下転下転内下転図4平均測定値:回旋偏位量ORTeのほうが有意に外方回旋となる方向もあった(*p<0.05,Wilcoxonsigned-ranktest)が,一定の規則は認められなかった.結果は平均±標準偏差で表示.ORTe■大型弱視鏡051015202530時間(min)**則は認められなかった.ORTe,大型弱視鏡それぞれ,測定時間は平均5.2分,17.5分,結果記載完了時間は平均6.8分,21.4分であり,どちらも有意にORTeのほうが短時間であった(p<0.01)(図5).III考按本検討において,水平偏位量は全方向で,麻痺眼,健眼ともにORTeのほうが有意に外方偏位となった.これらの結5.2±2.517.4±3.06.7±2.521.5±2.5測定時間記載完了時間図5平均測定時間測定時間,参照時間はORTeのほうが有意に短時間であった(*p<0.05,Wilcoxonsigned-ranktest).結果は平均±標準偏差で表示.大型弱視鏡の水平・垂直・回旋偏位の平均測定値を図2~4に示す.水平偏位量についてORTeは大型弱視鏡と比較し9方向すべてにおいて有意に外方偏位を示し(p<0.01),健眼固視(測定眼:麻痺眼)では全方向平均で9.2°大型弱視鏡より外方偏位の値となった.一方,垂直偏位量はORTeと大型弱視鏡の測定結果に有意な差は認められなかった.麻痺眼固視(測定眼:健眼)においても同様の結果を示した.回旋偏位量はORTeのほうが全体的に大きな値となった.健眼固視(測定眼:麻痺眼)では上転,外転,正面,外下転,下転,内下転で有意差を認め(p<0.05),麻痺眼固視(測定眼:非麻痺眼)では内上転,外転,正面方向で有意差を認めた(p<0.05).しかし,9方向でバラつきがあり,一定の規918あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016果はORTeとLeesscreen(HESS)を比較すると外斜位の被検者はORTeではより外斜傾向が強く出る6)との報告と一致した.同様に交代プリズム遮閉試験において遠見と近見の測定結果を比較すると,近見検査のほうが,融像性輻湊,調節性輻湊が加わり外方偏位となる7)との報告もあり,本検討も距離の違いにより外方偏位に測定された可能性が示唆された.垂直偏位量に関して遠藤らは,ORTeとLeesscreen(HESS)を比較し,有意差はみられなかった6)と報告しており,本検討でも同様の結果となった.一方で回旋偏位量についての報告は少ない.本検討ではORTeは大型弱視鏡と比較しバラつきはあるものの回旋偏位量が大きく測定される傾向であった.この原因として,一つは,測定方法の違いが考えられた.大型弱視鏡は検者が回旋ノブを操作し,定量するのに対し,ORTeは被検者がマウスホイールを操作し,測定値が記録される.全被検者に同様の操作説明は行っているが,被検者のマウスホイールの動かし方の違いが結果に影響した可能性が考えられた.また,一般(158) 的に上斜筋,下斜筋は外転位になるとそれぞれ内方,外方回旋作用が強くなることが知られている8).しかし,今回は上斜筋麻痺患者を対象としているため,外転位での内方回旋作用が働かず相対的に外方回旋作用が強くなる.今回,ORTeの水平偏位測定結果は全方向外方偏位であったため,外方回旋が誘発されORTeの回旋偏位量が増加した可能性が考えられた.しかし本検討は,症例数が少ないため,個々の測定結果のばらつきが解析に影響している可能性や,先天,後天上斜筋麻痺を含んでいるため,前者と後者で融像域による測定結果への影響についての検討が今後の課題である.測定,記載完了時間に関しては,ORTeは測定と同時に検査を記録し,印刷が可能であるため,結果の入力の必要がない.一方,大型弱視鏡は各方向での測定結果を検査員が記録用紙に記載し,その後電子カルテに入力を行うため,さらに時間に差が生まれたものと考えられる.結論として,ORTeは検査距離の違いによる特徴を考慮すれば,簡便かつ迅速に測定でき,臨床における上斜筋麻痺患者の検査・診断に有用な機器である.文献1)丸尾敏夫,久保田伸枝,深井小久子:視能学.p349,355,文光堂,20052)佐伯美和,佐藤美穂:上斜筋麻痺.OCULISTA25:75-83,20153)松本富美子:視能訓練士としての神経眼科における役割.神眼30:158-164,20134)丹治弘子:大型弱視鏡.日視会誌28:73-79,20005)半田知也:日本発の次世代両眼視機能検査・訓練装置─3DVisualFunctionTrainer-ORTe-─.眼臨紀8:332-337,20156)後関利明,半田知也,遠藤高生ほか:3Dビジュアルファンクショントレイナー.神眼31:364-369,20147)河口充,松岡久美子,池田結佳ほか:健常者の眼位.眼臨紀3:185-192,20108)RobinsonDA:Aquantitativeanalysisofextraocularmusclecooperationandsquint.InvestOphthalmol14:801-825,1975***(159)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016919

細胞性急性リンパ性白血病治療中に発症したPosterior Reversible Encephalopathy Syndrome の1例

2016年6月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科33(6):909.914,2016c細胞性急性リンパ性白血病治療中に発症したPosteriorReversibleEncephalopathySyndromeの1例鈴木貴英武居敦英宮川由起子上林功樹取出藍岩竹彰横山利幸順天堂大学医学部附属練馬病院眼科ACaseofPosteriorReversibleEncephalopathySyndromewithT-CellAcuteLymphoblasticLeukemiaTakahideSuzuki,AtsuhideTakesue,YukikoMiyagawa,KokiKanbayashi,AiToride,AkiraIwatakeandToshiyukiYokoyamaDepartmentofOpthalmology,JuntendoUniversityNerimaHospital目的:T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)治療中に発症した可逆性後頭葉白質脳症(PRES)症例の報告.症例:T-ALL治療中の34歳,男性が朝からの急激な視力障害で受診した.視力は右眼矯正1.0,左眼矯正0.7,対光反射と中心フリッカー値の低下を認めたが,前眼部,中間透光体,眼底は異常なかった.頭部MRIではFLAIR(fluidattenuatedinversionrecovery)画像およびADC(apparentdiffusioncoefficient)MAPで両側前頭葉および両側後頭葉に高信号域を認め,血管原性浮腫が疑われた.また,当日朝から160/90mmHgの血圧上昇を認めていた.経過からPRESと診断し,当時の使用薬剤を中止し,降圧薬を内服投与したところ,加療から9日目に両眼矯正視力1.2と視力障害が改善され,1カ月後の頭部MRIでは高信号域の消失が認められた.結論:化学療法中の視力障害では,視力低下をきたす基礎疾患があっても,PRESを念頭に置いて検査・加療を行う必要がある.Purpose:Toreportacaseofposteriorreversibleencephalopathysyndrome(PRES)withT-cellacutelymphoblasticleukemia(T-ALL).Case:A-34-year-oldmalereferredtouscomplainingofsuddenvisualloss.Hiscorrectedvisualacuitywas1.0righteyeand0.7left.Lightreflexandcentralflickerfusionflequencywerediminished.Therewerenoocularabnormalfindings.Magneticresonanceimaging(MRI)ofthebrainshowedhyperintensityinthebioccipitalandbifrontalregions.MRIshowedhigh-intensityregioninapparentdiffusioncoefficient(ADC)MAPandfluidattenuatedinversionrecovery(FLAIR)images,suggestingvasogenicoedema.Bloodpressurewas160/90mmHgatthattime.ThosefindingsledtothediagnosisofPRES.Afterstoppingchemotherapyandtreatinghypertension,visualacuityimprovedwithin9days;hyperintensitiesonMRIimprovedin1month.Conclusion:WeshouldassumePRESforvisuallossduringchemotherapyevenifthepatienthasabasicdiseasecausingvisualloss.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(6):909.914,2016〕Keywords:可逆性後頭葉白質脳症,T細胞性急性リンパ性白血病,メトトレキセート,高血圧,化学療法.posteriorreversibleencephalopathysyndrome,T-cellacutelymphoblasticleukemia,methotrexate,hypertension,chemotherapy.はじめに可逆性後頭葉白質脳症(posteriorreversibleencephalopathysyndrome:PRES)は,頭痛を伴う症候群の一つで,RPLS(reversibleposteriorleukoencephalopathysyndrome)と同義で用いられることもある.1996年にHincheyらが,高血圧性脳症や子癇,免疫抑制剤の使用を原因として可逆性の臨床所見を呈した15症例をもとにして提唱した疾患概念である1).おもには急激な血圧上昇に続く血管透過性亢進や血管内皮細胞障害に起因する血管原性浮腫を呈すると考えられている.症状は頭痛,意識障害,痙攣,麻痺,視〔別刷請求先〕鈴木貴英:〒177-8521東京都練馬区高野台3-1-10順天堂大学医学部附属練馬病院眼科Reprintrequests:TakahideSuzuki,M.D.,DepartmentofOpthalmology,JuntendoUniversityNerimaHospital,3-1-10Takanodai,Nerima-ku,Tokyo177-8521,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(149)909 力・視野障害などが知られている.好発部位は頭頂後頭葉を中心に,前頭葉,側頭葉,視床,小脳,脳幹,基底核で,MRI検査で高信号域として描出される.一般的には可逆性の脳症であるが,非可逆性変化へと至る場合もあり,Grelatらは腰椎穿刺後に右片麻痺,意識障害,皮質盲,痙攣症状を呈するPRESを発症し,右片麻痺が後遺症として残存したPRESの症例を報告している2).また,皮質盲など視機能異常の原因となるため,眼科領域でも重要な疾患である.PRESには高血圧性以外にも,各種免疫疾患性,薬剤性などが知られており,これらの場合,血圧管理,痙攣管理,原因薬剤の中止などが治療となる.適切な治療により数日のうちに症状が軽快するとの報告3,4)が多い.今回,T細胞性急性リンパ性白血病(T-cellacutelymphoblasticleukemia:T-ALL)に対する化学療法中にPRESを発症したと考えられる1例を経験したので報告する.I症例患者:34歳,男性.主訴:視力障害.現病歴:2013年6月に頸部リンパ節腫脹から悪性リンパ腫を疑われ,8月に咽頭部腫瘤の生検にて,T-ALLと診断された.髄液細胞診では陰性であったものの,腰椎造影MRI所見ではL5/S1レベルに神経根に沿った多発する濃染が認められT-ALLの坐骨神経根浸潤が疑われた.9月より寛解導入療法を開始し,12月10日より地固め療法3クール目としビンクリスチン(2mg/日),アドリアマイシン(49mg/日)およびメトトレキサートの大量静注(90mg/日)とメトトレキサートの髄注(15mg/日)で加療されていた(表表1治療経過中の化学療法9月10月11月12月寛解導入地固め①地固め②地固め③VCR○○○DNR○CPA○HDAra-C○VP-16○DEX○○HDMTX○ITMTX○○○○ADR○VCR:vincristine,DNR:daunorubicin,CPA:cyclophosphamide,HDAra-C:highdosecytarabine,VP-16:etoposide,DEX:dexamethasone,HDMTX:highdosemethotrexate,ADR:adriamycin,ITMTX:intrathecalmethotrexate.PRES発症時には,12月10日より地固め療法3クール目としてvincristine,adriamycin,methotrexateの3剤が投与されていた.1).同年12月25日朝から両眼の急激な視力低下を自覚したため,同日当院当科初診となった.既往歴:特記なし.初診時所見:12月25日初診時の視力は右眼(1.0×sph.4.75D(cyl-0.50DAx175°),左眼(0.7×sph.3.75D(cyl-1.25DAx180°).眼位,眼球運動,眼圧は正常.頭痛および眼痛なし.前眼部から眼底にかけても異常所見を認めなかった.対光反射は正常からやや減弱していた.中心フリッカー値は右眼21-27Hz,左眼23-31Hzと両眼とも軽度低下が認められた.同日の頭部MRIではT1造影画像(図1)で両側後頭葉中心に小さな結節性増強効果を認め,fluidattenuatedinversionrecovery(FLAIR)画像(図2)では両側前頭葉,両側後頭葉に高信号域を認めた.Apparentdiffusioncoefficient(ADC)MAP画像においても高信号域を認めたため,血管原性浮腫であると考えられた.また,同日朝は160/90mmHgと血圧の上昇を認めていた.経過:初診時の頭部MRI検査結果および髄液検査結果から,ウイルス性脳炎,ALLの両眼視神経への浸潤,脳梗塞,炎症性/脱髄性疾患は否定的であると考えられた.ALLの髄膜播種の可能性は否定できないものの,抗癌剤などによる薬剤性PRESが原因である可能性がもっとも高いと判断し,地固め療法3クール目を中止とした.同日よりデキサメタゾン内服(20mg/日),グリセオール静注(400mg/日)およびアムロジピン内服(5mg/日)による加療を開始した.診療時間外の診察依頼で視能訓練士が不在であったため,Goldmann動的視野検査および蛍光眼底造影検査は翌日の施行とした.翌26日再診時は,眼底所見(図3)および光干渉断層計,蛍光眼底造影検査では異常所見は認めなかった(図4,5)が,両眼視力は指数弁(矯正不能)に,中心フリッカー値は右眼7-15Hz,左眼15-25Hzに低下しており,Goldmann動的視野検査は測定できなかった(図6).28日の頭部MRI検査結果では,FLAIR画像(図7)およびADCMAP(図8)で両側後頭葉,両側前頭葉の高信号域の拡大を認め,ALLの両眼視神経への浸潤は認められなかった.翌年1月6日,再診時視力は右眼(1.2×sph.4.75D(cyl.0.50DAx175°),左眼(1.2×sph.3.75D(cyl.1.25DAx180°)へ,中心フリッカー値は右眼35Hz,左眼33Hzへと改善を認めた.1月29日の頭部MRI検査結果では,T1造影において両側後頭葉の結節性増強効果の消失,およびFLAIR画像において両側前頭葉,両側後頭葉の高信号域の消失が認められた.以後,1年間以上,正常視機能を維持している.910あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016(150) 図112月25日T1造影MRI画像図212月25日FLAIR画像頭部MRIではT1造影画像で両側後頭葉中心に小さFLAIR画像では両側前頭葉,両側後頭葉に高信号域な結節性増強効果を認めた.を認めた.図312月26日眼底写真視力,中心フリッカー値の著明な低下を認め,GPは測定不能であったが,眼底,OCT,FAGでは異常所見は認めなかった.図412月26日OCT所見(151)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016911 図512月26日FAG所見図612月26日Goldmann動的視野検査所見図712月28日FLAIR画像図812月28日ADCmap画像頭部FLAIR画像において両側後頭葉,両側前頭葉の頭部ADCmap画像において両側後頭葉,両側前頭高信号域の拡大を認めた.葉の高信号域の拡大を認めた.912あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016(152) II考按今回の症例では,初診時の両眼視力低下の原因として,PRESのほかにも脳梗塞,ALLの両眼視神経への浸潤,ウイルス性脳炎,その他炎症性/脱髄性疾患,ALLの髄膜播種などが鑑別疾患にあげられたが,初診時の頭部MRI検査結果より,両側後頭葉白質の血管原性浮腫,すなわちPRESであると考えられた.MRIで画像診断する際,脳梗塞との鑑別が重要となる.両者ともT1造影画像およびFLAIR画像で高信号となる.一方でADCMAPにおいては,血管原性浮腫を呈するPRESは高信号となるが,細胞毒性浮腫である脳梗塞は低信号を呈する.本症例においては,MRI初診時のT1造影画像,FLAIR画像,ADCMAP画像にてPRESの好発部位である両側の前頭葉および後頭葉に高信号域を呈していたことから,脳梗塞は否定的と考えられた.また,両側の視神経所見は正常であり,ALLの両眼視神経への浸潤も否定的であった.髄液検査においては,検査数値に有意な異常値はなく,HSV,VZV,HHVも陰性であり,細胞診でも腫瘍細胞は検出されなかったため,ウイルス性脳炎および炎症性/脱髄性疾患は否定的と考えられた.経過中使用していた化学療法は表1のとおりであり,PRESの原因薬剤としては,12月10日より地固め療法3クール目として投与されていたビンクリスチン,アドリアマイシン,メトトレキサートの3剤いずれの可能性も考えられた.ただし,今回のPRES発症以前には,メトトレキサート大量投与48時間後の血中濃度が3.0×10.6mol/lと,投与48時間後の血中危険濃度とされる1.0×10.6mol/lを超える濃度で検出されているため,今回のPRESがメトトレキサートの大量投与に起因したものだと推測するには蓋然性がある.メトトレキサートの主たる副作用は,薬剤添付文書によると,ショック,アナフィラキシー,骨髄抑制,肝・腎不全などがあげられるが,頻度不明ながら,白質脳症含む脳症との記載もある.個別の症例に関しては,B細胞リンパ腫の患者に対しメトトレキサートの髄膜内注射後に発症したPRESの報告5)や,同じくB細胞リンパ腫に対しメトトレキサート大量静脈注射後に発症したPRESの報告6)があるが,本症例においても,メトトレキサートの髄注と大量静注の併用が行われていた.本症例では両眼視力低下発症時に投与していた3剤の迅速な中止と対症療法により軽快が得られているが,3剤同時の投与中止のため,原因薬剤の断定には至らなかった.一方で,本症例においては,過去に腰椎MRI画像よりALLの髄膜播種が疑われており,今回の視力低下出現においても髄膜播種が原因の一つとして考えられたため,PRESによる視力低下と髄膜播種による視力低下の鑑別も必要であ(153)った.しかし,両眼視力低下の発症が急性であったことは,過去の報告2)と一致し,PRESによる視力低下を疑う一助となった.また,過去の報告7)では,PRESの好発部位は前頭葉(78.9%)および後頭葉(98.7%)であり,今回の症例の初診時MRI所見において両側前頭葉かつ両側後頭葉の高信号域が認められたこと,そして原因薬剤の中止と対症療法で症状の軽快が得られたことは,PRESによる両眼視力低下を示唆する.PRESの病態ついてはいまだ議論されており,血圧が脳血流の自動調節能の閾値を超えて上昇するときにBBB(bloodbrainbarrier)が破綻し血管原性浮腫を生じるとするbreakthrough説の他にも,脳血管攣縮に伴う脳虚血により神経症候が出現するとするvasospasm説がある.両説はこれまで対立的に論じられてきたが,現在は両説が混在した病態,すなわち,内因性・外因性の要因がBBBを傷害し,さらに脳血管攣縮による虚血がそれに拍車をかけるという病態が指摘されている3).本症例においては,初診時の朝に160/90mmHgと血圧の上昇を認めていた.過去の報告8)では,PRES発症時の血圧について,120症例のうち86%にあたる97症例で,軽度高血圧とされる140/90mmHg以上の急性の血圧上昇を認めていたとされており,本症例においても血圧上昇が病態に関与していた可能性は否定できない.本症例での初診時の血圧上昇については薬剤起因性の可能性もあるが,両眼視力低下が発症した当時,ALL病状の進行による全身の疼痛の自覚もあったため,疼痛に伴う血圧上昇の可能性もある.今回のPRESにおいて,高血圧の治療と原因薬剤の使用中止で軽快に至った点から,PRESの原因としては,一過性の高血圧と,抗癌剤の使用の両方が考えられた.化学療法中の視力障害ではPRESを念頭において診断治療する必要があると考えられる.文献1)HincheyJ,ChavesC,AppignaniBetal:Areversibleposteriorleukoencephalopathysyndrome.NEnglJMed334:494-500,19962)GrelatM,DebauxJB,SautreauxJL:Posteriorreversibleenchepalopathysyndromeafterdepletivelumbarpuncture.JMedCaseReports8:261,20143)HobsonEV,CravenI,BlankSC:Posteriorreversibleencephalopathysyndrome:atrulytreatableneurologicillness.PeriDialInt32:590-594,20124)ItoY,KawaiM,YasudaT:Don’tforgetreversibleposteriorleukoencephalopathysundorome(RPLS)/posteriorreversibleencephalopathysyndrome(PRES).JJpnSocIntensiveCareMed15:480-484,20085)GulerT,CakmakOY,ToprakSKetal:Intrathecalmethotrexate-inducedposteriorreversibleencephalopathysynあたらしい眼科Vol.33,No.6,2016913 drome(PRES).TurkJHematol31:109-110,2014sibleencephalopathysyndrome:incidenceofatypical6)PapayannidisC,VolpatoF,IacobucciIetal:Posteriorregionsofinvolvementandimagingfindings.AmJRoentreversibleencephalopathysyndromeinaB-cellacutegenol189:904-912,2007lymphoblasticleukemiayoungadultpatienttreatedwith8)FugateJE,ClaassenDO,CloftHJetal:Posteriorreversapediatric-likechemotherapeuticschedule.HematolRepibleencephalopathysyndrome:associatedclinicaland6:5565,2014radiologicalfindings.MayoClinProc85:427-432,20107)McKinneyAM,ShortJ,TruwitCLetal:Posteriorrever***914あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016(154)

緑内障様視野変化を生じた高血圧性網膜症の1例

2016年6月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科33(6):903.908,2016c緑内障様視野変化を生じた高血圧性網膜症の1例砂田貴子森脇光康三宅絵奈大阪市立十三市民病院眼科ACaseofHypertensiveRetinopathywithGlaucoma-LikeVisualFieldDefectTakakoSunada,MitsuyasuMoriwakiandEnaMiyakeDepartmentofOphthalmology,OsakaCityJusoHospital緑内障様視野変化を生じる疾患はさまざま報告されており,眼底に特徴的な変化がみられない場合には診断に苦慮することがある.今回,緑内障様視野変化を生じた高血圧性網膜症の1例を経験したので報告する.症例は49歳,女性.主訴は右眼視力低下.高血圧で入院中に眼科紹介受診.初診時の右眼視力は(0.6).眼底は細動脈の狭細化を認め,白斑・網膜出血を多数認めた.フルオレセイン蛍光造影眼底検査では範囲の狭い無血管領域を認め,後期では視神経乳頭・乳頭周囲から漏出による過蛍光を認めた.右眼視神経乳頭の耳下側に蒼白化を認め,光干渉断層計で網膜内層の菲薄化を認めたため,視野検査を施行したところ緑内障様視野変化がみられた.今回の症例では,蛍光眼底造影検査から虚血性視神経症に類似した病態が生じ,緑内障様視野変化を惹起したものと考えた.眼底所見の消失した高血圧性網膜症でも緑内障様視野変化がみられるため,診断には注意が必要と考えた.Variousretinaldiseasesandopticnervediseasesarereportedascausingglaucoma-likevisualfielddefect.Wereportacaseofhypertensiveretinopathywithglaucoma-likevisualfielddefect.A49-year-oldfemale,whohadprogressivelossofvisioninherrighteye,consultedusduringherhypertensiontreatment.Thebest-correctedvisualacuityinherrighteyewas0.6.Narrowingofarterioles,withretinalexudatesandretinalhemorrhages,wasobservedinbotheyes.Fluoresceinangiographyshowedanonperfusionareainbotheyesandleakageoffluorescencefromtheopticdiscintherighteyeinthelate-stageoftheangiogram.Therightopticdischadbecomepaler,withthinningoftheretinainnerlayerinopticalcoherencetomography,atthelowerhalfareaintherighteye.Examinationrevealedaglaucoma-likevisualfielddefectintherighteye.Inthiscase,fluorescenceangiogramfindingsrevealedaconditionsimilartoanteriorischemicopticneuropathyintherighteye;thiswasthecauseoftheglaucoma-likevisualfielddefect.Cautionisrequiredinviewofthefactthathypertensiveretinopathycanbecomeacauseofglaucoma-likevisualfielddefect.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(6):903.908,2016〕Keywords:緑内障様視野変化,高血圧性網膜症,Humphrey視野計,虚血性視神経症.glaucoma-likevisualfielddefect,hypertensiveretinopathy,Humphreyvisualfieldanalyzer,ischemicopticneuropathy.はじめに緑内障様視野変化を生じる網膜疾患・視神経疾患はさまざま報告されている1).網膜虚血性疾患では,病初期には眼底に網膜出血や軟性白斑,網膜浮腫などの特徴的な変化がみられるため,診断に苦慮することは少ない.しかし,病初期を過ぎた網膜虚血性疾患では,特徴的な変化が消失していたりなどして診断に困難をきたしたり,視神経疾患では緑内障類似の乳頭変化がみられることがあり,診断に苦慮することもある.今回,筆者らは高血圧性網膜症の経過中に視野検査を施行したところ,緑内障様変化を認めた1例を経験したので報告する.I症例患者:49歳,女性.初診:2013年11月15日.主訴:右眼視力低下.既往歴:特記すべきことなし.現病歴:2013年10月中旬からの嘔吐と食欲低下の精査目〔別刷請求先〕砂田貴子:〒532-0034大阪市淀川区野中北2-12-27大阪市立十三市民病院眼科Reprintrequests:TakakoSunada,DepartmentofOphthalmology,OsakaCityJusoHospital,2-12-27Nonakakita,Yodogawa-ku,Osaka532-0034,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(143)903 的にて,11月5日に近医より当院消化器内科に紹介された.11月7日,上部消化管内視鏡検査施行前の血圧が230/149mmHgと高値であり,検査後も血圧が降下せず当日入院となった.入院時の頭部コンピュータ断層像(computedtomography:CT)で高血圧性脳症を認め内科に転科となった.その後,入院前からの右眼視力低下を主訴に11月15日に当科に紹介となった.初診時所見:視力は右眼0.05(矯正0.6),左眼0.05(矯正1.0).眼圧は右眼14mmHg,左眼14mmHg.中心フリッカ値は右眼20Hz,左眼30Hz.前眼部・中間透光体に異常を認めなかった.眼底には両眼とも細動脈の狭細化を認めた.また,軟性白斑,網膜出血,ならびに硬性白斑を多数認めた.フルオレセイン蛍光眼底造影(fluoresceinangiography:FA)の早期像では,両眼とも軟性白斑に一致した低蛍光を認め,右眼黄斑部上方血管アーケード内に範囲の狭い無血管領域を,左眼黄斑部上方血管アーケード内に広めの無血管領域を認めた.後期像では,右眼視神経乳頭の耳側ならびに左眼視神経乳頭の鼻側や視神経乳頭周囲の無血管領域に接する血管からの蛍光色素漏出による過蛍光を認めた.また,網膜静脈の壁染色も認めた(図1).光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)では,右眼の黄斑部に,また左眼の黄斑部から下方にかけて漿液性網膜.離を認めた.また左眼では上方無血管領域に一致する上方網膜の内層の菲薄化を認めた(図2).経過:入院後から降圧薬の持続点滴を開始し,血圧が安定したところで内服薬に移行となった.その後,血圧は安定し2013年11月27日に退院となった.2014年1月14日の眼科再診時には,両眼底の白斑・網膜出血は減少していたが,右眼の視力は初診時とほぼ変化はみられなかった.3月25日には両眼底の白斑・出血はほぼ消失しており,右眼の矯正視力は1.2と改善した.2014年8月6日の眼底検査では硬性白斑がわずかに残存するのみとなっており,右眼の視神経乳頭の耳下側に蒼白化がみられたが視神経乳頭陥凹は認めなかった.FAの早期像では色素沈着に伴う斑状の低蛍光を認めたが,無血管領域は変わりなかった.後期像では明らかな蛍光漏出は認めなかった(図3).黄斑部のOCTでは両眼ともに漿液性網膜.離は消失していたが,右眼の下方と左眼の上方の網膜内層の菲薄化を認めたが,外層に関しては変化を認めなかった(図4).また,視神経乳頭周囲のOCTでは右眼の耳側全体と左眼の視神経乳頭耳側上下の神経線維束の菲薄化がみられた(図5).そのため感度低下がないか視野検査を施行した.その結果,右眼のHumphrey視野計では上方の広範な感度低下ならびに下鼻側の感度低下を,Goldmann視野計(Goldmannperimeter:GP)では固視点上下に深い暗点を認めた.左眼のHumphrey視野計では固視点下方に感度低下,GPで比較暗点を認めた(図6).その後は定期的904あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016に視野検査,視力検査を行い経過観察をしているが,視力低下や視野障害の進行はみられなかった.II考按視野障害で緑内障と鑑別が必要な疾患としては,網脈絡膜循環障害(網膜静脈分枝閉塞症,糖尿病など)2)や網膜変性疾患(加齢黄斑変性,強度近視など),神経眼科疾患(虚血性視神経症,視神経炎,視交叉病変など)3,4)などがあげられている.従来より緑内障性の視野障害は進行性であるが,網脈絡膜疾患や視神経疾患の視野障害は急性期を過ぎれば進行しない場合が多い.また,網脈絡膜循環障害では急性期には眼底検査で所見が得られ,循環障害が生じた部位に対応した視野障害がみられる.しかし,視神経乳頭の循環障害では,前部虚血性視神経症のように水平性の視野障害や緑内障に類似した視野障害が認められ,緑内障との鑑別が重要となる.網脈絡膜循環障害の一つである高血圧性網膜症では,網膜動脈の攣縮による出血や虚血のため当該部位に視野変化が生じる.また,脈絡膜循環障害によっても視野欠損はみられ,脈絡膜動脈の攣縮,虚血が生じた部位には網膜外層の障害に伴う視野障害を生じる.今回の症例では,右眼のOCTで下方の網膜外層に構造上の変化はみられず,同部位の脈絡膜の障害による視野障害は否定的であると考えられる.また,発症初期に撮影したFA上,右眼黄斑部上方の狭い無血管領域ならびに左眼黄斑部上方の広い無血管領域が各々右眼下方の感度低下ならびに左眼下方の感度低下に該当する可能性がある.しかし,右眼上方の広範な感度低下に一致した無血管領域は認めなかった.しかし初診時のFAで,早期の右眼視神経乳頭の耳下側に低蛍光がみられ,右眼視神経乳頭耳側からの色素漏出を後期に認めた.このFA上の所見から,今回の症例においては病初期に虚血性視神経症に類似した病態が生じていたものと考えられた.また,経過とともに右眼視神経乳頭下耳側に蒼白化がみられたものの乳頭陥凹がみられなかったことも,右眼視神経乳頭に前部虚血性視神経症に類似した病態が生じていたためと考えられた.以上の病初期のFAより,今回の右眼の緑内障様の視野変化は,網膜循環障害ならびに脈絡膜・網膜中心動脈・軟膜動脈から循環を受けている視神経の循環障害により生じたものと考えた.以前は,非動脈炎性の虚血性視神経症ではGPで下方の水平半盲を呈することが多いとされていた5).しかし,その後のHumphrey視野計による検討では上もしくは下のどちらか一方に限局した半視野欠損はまれで,上下の弓状神経線維束欠損がもっとも多かったと報告されている6).今回の症例の右眼の視野障害も右眼の上下の神経線維束欠損に伴う障害および右眼の黄斑上方の無血管領域の影響が混在している可能性が考えられた.また,Humphrey視野計とOCTを比較(144) 図1初診時の眼底写真上段:初診時眼底写真.細動脈の狭細化,軟性白斑,網膜出血,ならびに硬性白斑を多数認めた.中段:FA早期像.軟性白斑に一致した低蛍光と無血管領域を認めた.下段:FA後期像.視神経乳頭・視神経乳頭周囲や無血管領域に接する血管からの漏出による過蛍光と網膜静脈の壁染色を認めた.図2初診時OCT右眼の黄斑部と左眼の黄斑部から下方にかけて漿液性網膜.離を認めた.また,左眼の上方網膜の内層の菲薄化を認めた.(145)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016905 図32014年8月6日再診時の眼底写真上段:再診時眼底写真.硬性白斑がわずかに残存するのみとなっており,右眼の視神経乳頭の耳下側に蒼白化がみられたが,視神経乳頭陥凹は認めなかった.中段:FA早期像.色素沈着に伴う斑状の低蛍光を認めたが,無血管領域ははっきりとは造影されなかった.下段:FA後期像.明らかな蛍光漏出は認めなかった.図42014年7月8日再診時OCT両眼ともに漿液性網膜.離は消失していたが,右眼の下方と左眼の上方の網膜内層の菲薄化を認めたが,網膜外層に関しては変化を認めなかった.906あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016(146) 図52014年8月6日再診時OCTの乳頭周囲網膜神経線維層厚右眼の耳側全体と左眼の視神経乳頭耳側上下線維層厚の菲薄化がみられた.した報告では非動脈性虚血性視神経症では視野検査上欠損の認められない乳頭の区域ですでにOCT上神経線維束欠損が生じており,Humphrey視野計で捉えうる以上に障害が広がっていることが示唆されている7).筆者らの症例でも右眼はOCT上耳側全体の神経線維束の菲薄化を認めており,視野障害で捉えうるよりも広範囲の神経線維が障害されていた.これらのことより,今回の症例では右眼の視神経乳頭の循環障害が視野障害の主たる原因である可能性が考えられた.この症例おいては経過中の視野障害の進行はみられず,OCT上も神経線維層の菲薄化の変化は認めていない.しかし,病初期の眼底所見やFA所見がなければ,今回の症例の視野変化を緑内障性ではないと理解するまでには難渋した可能性も考えられた.眼底所見の消失した高血圧性網膜症でも,虚血性視神経症に類似した緑内障様視野変化がみられる可能性があるため,診断には注意が必要と考えた.(147)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016907 図6視野検査上段:Humphrey30-2視野.右眼では上方の広範な感度低下ならびに下鼻側の感度低下を認め,左眼では固視点下方に感度低下を認めた.下段:GP.右眼では固視点上下に深い暗点を認め,左眼では比較暗点を認めた.文献1)目加田篤:視野障害で緑内障と鑑別が必要な疾患.あたらしい眼科25(増刊号):96-99,20082)KohJW,ParkKH,KimMSetal:Localizedretinalnervefiberlayerdefectsassociatedwithcottonwoolspots.JpnJOphthalmol54:296-299,20103)田口朗:後天性視神経疾患と緑内障.あたらしい眼科30:1525-1531,20134)BeckRW,TrobeJD,OpticNeuritisStudyGroup:WhatwehavelearnedfromtheOpticNeuritisTreatmentTrial.Ophthalmology102:1504-1508,19955)宮崎茂雄:虚血性視神経症の臨床.日本医事新報4279:66-70,20066)FeldonSE:ComputerizedexpertsystemforevaluationofautomatedvisualfieldsfromtheIschemicOpticNeuropathyDecompressionTrial:methods,baselinefields,andsix-monthlongitudinalfollow-up.TransAmOphthalmolSoc102:269-303,20047)Deleon-OrtegaJ,CarrollKE,ArthurSNetal:Correlationsbetweenretinalnervefiberlayerandvisualfieldineyeswithnonarteriticanteriorischemicopticneuropathy.AmJOphthalmol143:288-294,2007***908あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016(148)

Rubinstein-Taybi 症候群に伴う発達緑内障に線維柱帯切開術が奏効した1例

2016年6月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科33(6):899.902,2016cRubinstein-Taybi症候群に伴う発達緑内障に線維柱帯切開術が奏効した1例山田哉子*1小嶌祥太*2中島正之*3植木麻理*2杉山哲也*2柴田真帆*2小林崇俊*2荻原享*4池田恒彦*2*1八尾徳洲会総合病院眼科*2大阪医科大学眼科学教室*3中島眼科クリニック4)大阪医科大学小児科学教室ACaseofDevelopmentalGlaucomawithRubinstein-TaybiSyndromeSuccessfullyTreatedbyTrabeculotomyKanakoYamada1),ShotaKojima2),MasayukiNakajima3),MariUeki2),TetsuyaSugiyama2),MahoShibata2),TakatoshiKobayashi2),RyoHagihara4)andTsunehikoIkeda2)1)DepartmentofOphthalmology,YaoTokushukaiGeneralHospital,2)DepartmentofOphthalmology,OsakaMedicalCollege,3)NakajimaEyeClinic,4)DepartmentofPediatrics,OsakaMedicalCollege目的:Rubinstein-Taybi症候群(Rubinstein-Taybisyndrome:RTS)に発達緑内障を合併し,線維柱帯切開術が奏効した1例を経験したので報告する.症例:生後1カ月,男児.在胎37週,2,200gで出生.全身的に多毛で幅広い母指を呈し小児科にてRTSと診断,眼合併症の検索のため眼科紹介となる.初診時,角膜横径は両眼11.5mm,両眼に角膜浮腫,左眼に角膜部分混濁を認めた.眼圧は右眼21.31mmHg,左眼34.41mmHg,視神経乳頭の陥凹乳頭比は右眼0.5,左眼0.7であった.RTSに伴う発達緑内障と診断し,生後40日目に両眼の線維柱帯切開術を施行した.眼圧は術後7日目には右眼8mmHg,左眼13mmHgとなった.術後約6年2カ月を経過し,現在も眼圧コントロール良好である.結論:特徴的な身体所見からRTSが疑われる児は,発達緑内障および前眼部形成異常の合併を疑って眼科的検査を行うことが重要だと考えられた.Purpose:ToreportacaseofdevelopmentalglaucomawithRubinstein-Taybisyndrome(RTS)thatwassuccessfullytreatedbytrabeculotomy.Case:A1-month-oldmalewaspresentedatourdepartmentforinvestigationofRTS-relatedeyeabnormalities.Hehadgeneralhypertrichosis,broadthumbs,andwasdiagnosedwithRTSinthepediatricsdepartment.Atfirstvisit,bothcorneaswereedematousandfocalopacitywasseeninthelefteye.Thehorizontaldiameterofeachcorneawas11.5mm.Intraocularpressure(IOP)was21-31mmHgOD/34-41mmHgOS;cup-to-discratiooftheopticdiscwas0.5OD/0.7OS.WediagnoseddevelopmentalglaucomawithRTSandperformedtrabeculotomyonbotheyesat40dayspost-delivery.Undergeneralanesthesia,IOPwas24mmHgOD/22mmHgOS,yetitgraduallydecreasedto8mmHgOD/13mmHgOSat7dayspostoperatively,remainingcontrolledfor6yearsand2monthsthereafter.Conclusion:ItisimportanttoinvestigateRTS-suspectedinfantsforassociateddevelopmentalglaucomaanddysgenesisoftheanteriorocularsegment.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(6):899.902,2016〕Keywords:Rubinstein-Taybi症候群,発達緑内障,線維柱帯切開術,前眼部形成異常.Rubinstein-Taybisyndrome,developmentalglaucoma,trabeculotomy,dysgenesisofanteriorocularsegment.はじめに角解離,長い睫毛,後方へ回旋した耳介,つきでた鼻翼や下Rubinstein-Taybi症候群(Rubinstein-Taybisyndrome:唇),精神運動発達遅滞を3徴とする先天異常症候群で,わRTS)は1963年にRubinsteinとTaybiが報告1)した,幅広が国では発症率が12万5千出生に1例とまれな疾患であい母指と第一趾,特徴的顔貌(小頭,瞼裂の下方傾斜,内眼る2).責任遺伝子は16番染色体のCBP(CREB-bindingpro〔別刷請求先〕山田哉子:〒581-0011大阪府八尾市若草町1番17号八尾徳洲会総合病院眼科Reprintrequests:KanakoYamada,DepartmentofOphthalmology,YaoTokushukaiGeneralHospital,1-17Wakakusacho,Yao-shi,Osaka581-0011,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(139)899 tein)遺伝子と判明しているが3),検出率は高くなく臨床的診断が重視され,とくに幅広い母指はほぼ全例にみられる2,4,5).眼科的に鼻涙管閉塞,外斜視,発達緑内障,先天性白内障,網脈絡膜コロボーマといった種々の合併症が報告されている6).今回発達緑内障を合併し線維柱帯切開術を施行した1症例を経験したので報告する.I症例患者:生後1カ月,男児.主訴:眼科的スクリーニングの依頼.既往歴:中腸軸捻転症,動脈管開存症.家族歴:母親は36歳,父親は36歳の第2子.第1子は正常出生.血族結婚ではなく,特記すべきことはなし.現病歴:在胎37週3日,骨盤位のため帝王切開にて平成21年8月19日に2,200gで出生.生後7日目に中腸軸捻転症のため開腹整復術を施行した.全身的に体毛が多く,幅広い母指を有し,小児科でRubinstein-Taybi症候群と臨床的に診断された.染色体は検査の結果,正常であった.眼合併症の検索のため9月15日眼科紹介となった.初診時所見:外見は逆蒙古様顔貌,内眼角解離,弓状の眉を有し,全身的に多毛であった(図1).手足の母指は幅広くばち状であった(図2).角膜は右眼:縦径11mm×横径11mm,左眼:縦径10.5mm×横径11mm,両眼浮腫状で左眼に部分混濁を認めた(図3).啼泣のため眼圧測定値は変動を認め,右眼21.31mmHg,左眼34.41mmHg(覚醒下,トノペン)であった.前房は清明で深く,虹彩および水晶体に明らかな異常は認めなかった.眼底検査では,視神経乳頭の陥凹対乳頭比(C/D比)は右眼0.5,左眼0.7と左眼が優位に陥凹が拡大していた(図4)が,その他の異常は認めなかった.超音波生体顕微鏡では虹彩は平坦化しており,強膜岬より後方で隅角に付着していると考えられた.経過:術前は非鎮静下の測定であり眼圧測定値の変動が大きかったが,いずれの測定でも高眼圧で推移した(表1).9月29日(生後40日目)の全身麻酔下での術前眼圧は右眼24mmHg,左眼22mmHg(Perkins圧平眼圧計)であった.高眼圧,角膜径の拡大および視神経乳頭所見から発達緑内障と診断,両眼の線維柱帯切開術を同日施行した.線維柱帯切開術は一重強膜弁で12時方向から切開を行った.Schlemm管は後方への偏位を認めず,解剖学的にほぼ正常位置に同定され(図5),13mmのトラベクロトーム挿入の際に軽度抵抗を認めた.線維柱帯切開時に前房出血を認めたが軽度であった.術翌日は左眼優位に前房出血を認め,眼圧は右眼20mmHg,左眼25mmHgであったが,術後2日目には前房出血は消失しており,眼圧も徐々に下降した(表2).術後7日目には右眼8mmHg,左眼13mmHgとなり,以後眼圧はコ900あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016ントロールは良好であった.手術11カ月後には両眼とも角膜浮腫は消失し,左眼の角膜部分混濁も軽減しており,眼圧は右眼9mmHg,左眼10mmHg,C/D比は右眼0.5,左眼0.5と左眼で陥凹が縮小していた(図4).術後4年2カ月で眼圧は右眼14mmHg,左眼16mmHgで,角膜は右眼:縦径12mm×横径12mm,左眼:縦径12mm×横径11.5mmであった.平成27年11月(6歳3カ月)現在で眼圧は右眼8mmHg,左眼13mmHgで,左眼の角膜部分混濁は軽度であるが残存している.発達指数(developmentalquotient:DQ)は35以下で重度知的障害があるが,TellerAcuityCardsTM(9.6cy/cm,検査距離:55cm)による指差しで視力検査を行い,VD=(0.33×sph+2.5D(cyl.0.75DAx180°),VS=0.33(矯正不能)であった.右眼遠視性乱視のため眼鏡を装用しており,軽度の間欠性外斜視を認めている.涙道通水検査を施行したが,両眼とも異常なく,鼻涙管閉塞は合併していない.II考按今回,筆者らはRTSに発達緑内障を合併した1症例を経験した.RTSに発達緑内障を合併する割合は2.4%程度と報告6)があるが,過去の症例報告7.12)では,本例のように生後1年以内の早発型発達緑内障の報告が多い.流涙,角膜混濁,角膜径の左右差に気づき発達緑内障が発見された症例5,7.9)では線維柱帯切開術,隅角切開術,緑内障点眼で加療されている.隅角の形成異常が軽度とされる遅発型発達緑内障も報告されている13).一方で,前眼部形成異常が強く前部ぶどう腫による眼球突出が進行し,生後半年以内に眼球摘出に至った症例の報告もあり11,12),RTSに合併する隅角および前眼部形成異常の重症度には幅があると考えられる.RTSに伴う緑内障は緑内障診療ガイドライン14)では他の先天異常を伴う発達緑内障に分類され,胎生期の神経堤細胞遊走不全にもとづく隅角形成異常が原因と考えられている15,16).神経堤細胞は胎生5.7週に前眼部の角膜内皮,実質,虹彩実質,隅角線維柱帯へと遊走し分化するため,神経堤細胞の遊走不全の場合,角膜,虹彩,隅角の異常を複数認める可能性がある15.17).神経堤細胞の遊走不全に起因する発達緑内障は他にPeters奇形,強膜化角膜,無虹彩症,Axenfeld-Rieger症候群があげられる.過去の報告でもRTSの眼合併症としてPerters奇形,強膜化角膜,前部ぶどう腫を認めた症例が複数報告されており10,11),RTSの症例の診察では緑内障だけでなく,これらの前眼部形成異常の合併を念頭に考える必要がある.一般に前眼部形成異常が強い発達緑内障は隅角の異常も強く出現し,線維柱帯切開術の有効性は低くなると報告されて(140) 図1顔貌と背部所見顔貌:逆蒙古様顔貌,内眼角解離,弓状の眉が特徴的であった.背部:全身的に多毛であった.図3前眼部所見両眼とも角膜は浮腫状で,左眼に部分混濁が認められた(.).図5術中所見一重強膜弁,Schlemm管(.)は解剖学的に正常位置に存在してた.いる17).今回の症例では左眼の下方に角膜部分混濁を認めており,眼圧の下降とともに軽快傾向であったが,現在も残存しており,軽度の前眼部形成異常を伴った可能性がある.なお,発生学的にSchlemm管は中胚葉由来で前眼部と発生が図2手足手足の母指は幅広くばち状であった(矢印).C/D比:0.5C/D比:0.7C/D比:0.5C/D比:0.5図4視神経乳頭上段:術前.左眼優位に視神経乳頭陥凹が拡大していた.下段:術後.左眼視神経乳頭陥凹は縮小傾向だった.表1術前眼圧測定日9/179/189/29(手術日)右眼(mmHg)21.3128.4424左眼(mmHg)34.4121.2522測定方法覚醒トノペン覚醒トノペン全身麻酔下Perkins異なるため,隅角,前眼部に形成異常がある症例でもSchlemm管の低形成はまれで線維柱帯切開術の際にSchlemm管の同定は比較的容易との報告が散見され16,17),今回の症例でもSchlemm管の同定に苦慮することはなかった.本症例で線維柱帯切開術が有効であった理由として,早期に眼圧上昇が発見され,角膜混濁や角膜径拡大が進行しないうちに手術を施行できたこと,および本症例では前眼部の形成異常が軽度であったことが考えられる.RTSに合併した発達緑内障に線維柱帯切開術が有効であ(141)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016901 表2術後眼圧測定日術後1日術後2日術後3日術後1週間術後1カ月術後3カ月術後11カ月術後4年2カ月術後6年2カ月右眼(mmHg)20176810109148左眼(mmHg)252216131412101613測定方法鎮静Perkins左眼優位に前房出血鎮静Perkins両眼の前房出血消失鎮静Perkins鎮静Perkins鎮静Perkins鎮静Perkins鎮静Perkins鎮静Perkins鎮静Perkins鎮静時は体重に応じて,トリクロホスホナトリウムシロップ,抱水クロラール座薬,ミダゾラムを適宜使用した.術前,術後とも眼圧下降薬は使用していない.った1症例について報告した.RTSに合併する発達緑内障の早期発見のために,特徴的な身体所見からRTSが疑われる児は生後より発達緑内障および前眼部形成異常の合併を疑って眼科的検査を行うことが重要だと考えられた.文献:1)RubinsteinJH,TaybiH:Broadthumbsandtoesandfacialabnormalities.Apossiblementalretardationsyndrome.AmJDisChild105:588-608,19632)黒澤健司:Rubinstein-Taybi症候群.小児科診療72:82,20093)PetrijF,GilesRH,DauwerseHGetal:Rubinstein-TaybisyndromecausedbymutationsinthetranscriptionalcoactivatorCBP.Nature376:348-351,19954)塚原正人,辻野久美子:Rubinstein-Taybi症候群.小児内科35:230-231,20035)神原諒子,山田貴之,足立徹ほか:発達緑内障と鼻涙管閉塞を伴ったRubinstein-Taybi症候群の2例.眼科手術26:299-302,20136)GenderenMM,KindsGF,RiemslagCCetal:OcularfeaturesinRubinstein-Taybisyndrome:investigationof24patientsandreviewoftheliterature.BrJOphthalmol84:1177-1184,20007)林みゑ子,北沢克明:先天緑内障を伴ったRubinsteinTaybi症候群の1例.臨眼37:843-846,19838)山口慶子,原敏:先天性緑内障を合併したRubinsteinTaybi症候群.臨眼45:678-679,19919)佐野秀一,箕田健生,小島孚允:先天緑内障を合併したRubinstein-Taybi症候群の1例.臨眼46:694-695,199210)森田由香,岡本史樹,高松俊行ほか:1眼にコロボーマ,他眼にanteriorcleavagesyndromeを伴うRubinstein-Taybi症候群の1例.眼臨94:946-950,200011)松島千景,後藤浩,毛塚潤ほか:SclerocorneaとPeters奇形を合併したRubinstein-Taybi症候群の1例.あたらしい眼科18:105-108,200112)北澤憲孝,川目裕,若林真澄ほか:眼球摘出に至ったRubinstein-Taybi症候群に伴う眼球形成不全.眼臨紀3:378-380,201013)立花敦子,高島弘至,吉岡郁恵ほか:Rubinstein-Taybi症候群に発達緑内障遅発型を合併した1例.眼科53:117121,201114)日本緑内障学会:緑内障診療ガイドライン第3版.日眼会誌116:3-46,201215)尾関年則,佐野雅洋,森宏明ほか:神経堤細胞遊走不全と前眼部形成異常.臨眼45:1419-1423,199116)稲谷大:発達緑内障の病態と神経堤細胞の分化遊走.FrontiersinGlaucoma8:184-186,200717)野崎実穂,水野晋一,尾関年則ほか:前眼部形成異常を合併した先天緑内障に対する線維柱帯切開術.臨眼54:331334,2000***902あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016(142)

Wavefront-guided Laser In Situ Keratomileusis による回折型多焦点眼内レンズ挿入眼における屈折誤差矯正:術前波面収差解析装置の比較

2016年6月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科33(6):895.897,2016cWavefront-guidedLaserInSituKeratomileusisによる回折型多焦点眼内レンズ挿入眼における屈折誤差矯正:術前波面収差解析装置の比較中村邦彦*1,2大木伸一*2田中みちる*2弓山里穂*2ビッセン宮島弘子*2南慶一郎*2*1たなし中村眼科クリニック*2東京歯科大学水道橋病院眼科Wavefront-guidedLaserInSituKeratomileusisRefractionCorrectionfollowingImplantationofDiffractiveMultifocalIntraocularLenses:ComparisonofWaveformAberrometerExaminationsKunihikoNakamura1,2),ShinichiOki2),MichiruTanaka2),RihoYumiyama2),HirokoBissen-Miyajima2)andKeiichiroMinami2)1)TanashiNakamuraEyeClinic,2)DepartmentofOphthalmology,TokyoDentalCollegeSuidobashiHospital回折型多焦点眼内レンズ挿入眼のwavefront-guidedlaserinsitukeratomiluesis(WFG-LASIK)による屈折誤差矯正において,波面収差解析装置による違いを検討した.波面収差解析装置iDesignとWaveScan(AbbotMedicalOptics)を用いて術前検査を行った.WFG-LASIK可能率,術中に虹彩紋理認証(IR)ができた率(IR率)を調べた.術後の自覚屈折,視力,コントラスト感度に差がないか比較した.対象は,iDesign検査症例は24例32眼,WaveScan検査症例は25例32眼であった.IR下でWFG-LASIK可能率は,iDesign検査症例(62.5%)がWaveScan検査症例(15.6%)より有意に高かった(p=0.0001).術後の自覚屈折,視力,コントラスト感度には差はなかった.新しい波面収差解析装置を用いたWFG-LASIKは乱視矯正には有効であると考えられた.Inwavefront-guidedlaserinsitukeratomileusis(WFG-LASIK)refractioncorrectionsfollowingimplantationofdiffractivemultifocalintraocularlenses,twowavefrontaberrometers,iDesignandWaveScan(AbbotMedicalOptics)werecompared.RatesatwhichWFG-LASIKwasselectedinpreoperativeexaminationsandirisregistration(IR)wasactivatedduringablationswerecalculated.Manifestrefractions,visualacuitiesbeforeandafterWFG-LASIK,andpostoperativecontrastsensitivitywerecompared.InusesofiDesign,WFG-LASIKwithIRcouldbeconductedin62.5%ofeyes,asignificantlyhighernumberthanwithWaveScan(15.6%,p=0.0001).Therewasnosignificantdifferenceinmanifestrefractions,visualacuitiesorcontrastsensitivity.WFG-LASIKwithuseofthenewwavefrontaberrometerwaseffectiveforrefractivecorrections.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(6):895.897,2016〕Keywords:回折型多焦点眼内レンズ,屈折補正,wavefront-guidedLASIK,波面解析装置.diffractivemultifocalintraocularlens,refractioncorrection,wavefront-guidedlaserinsitukeratomiluesis,wavefrontaberrometer.はじめに可能となり,多くの臨床成績が報告されている1,2).良好な回折型多焦点眼内レンズ(intraocularlens:IOL)を挿入遠近裸眼視力を得るためには,術後の屈折誤差を最小にするすることにより,術後に良好な遠方および近方の裸眼視力がことが求められる.IOL度数による屈折誤差や残留角膜乱視得られ,患者の術後QOL(qualityoflife)が改善することががある場合には,laserinsitukeratomiluesis(LASIK)によ〔別刷請求先〕中村邦彦:〒101-0061東京都千代田区三崎町2-9-18東京歯科大学水道橋病院眼科Reprintrequests:KunihikoNakamura,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TokyoDentalCollegeSuidobashiHospital,2-9-18Misaki-cho,Chiyoda-ku,Tokyo101-0061,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(135)895 る屈折誤差矯正が行われることが多い.とくに,LASIKによる視機能の低下を最小限にするために,波面収差解析結果を用いたwavefront-guided(WFG)LASIKが選択される.WFG-LASIKの優位性は広く知られており,回折型多焦点IOL挿入後の屈折誤差矯正にも使用されている3).また,このWFG-LASIKでは眼球回旋の影響を抑制するため,虹彩紋理を使ったaxisregistration法であるirisregistration(IR)が用いられる4).IRの効果は,術前に行う波面収差解析機器の性能に依存し,虹彩紋理の認識率が重要となる.VISXレーザーシステム(AbbotMedicalOptics:AMO)では,波面収差解析装置WaveScan(AMO)を用いて波面収差測定していたが,近年,測定精度が向上した波面収差解析装置iDesign(AMO)が開発された.波面収差の高精度化に加えて,虹彩紋理の認識率の増加も期待される.しかし,国内外で両機器の比較を行った報告はほとんどない.本研究では,回折型多焦点IOL挿入眼に対してWFGLASIKによる屈折誤差矯正を行った症例の診療記録から,2種類の波面収差解析装置の虹彩紋理認識率,術後の視力と屈折値を比較検討した.I対象および方法回析型多焦点IOL挿入後に,2012年以降に東京歯科大学水道橋病院にてWFG-LASIKを用いて屈折誤差矯正を行った.2012年1月.2013年7月には,波面収差解析装置WaveScanを用いて術前検査を行い,2013年8月.2014年6月には波面収差解析装置iDesignを用いた.対象を使用した波面収差解析装置により2群に分けた.波面収差解析装置iDesignとWaveScanは,ともにHartman-Shack式の波面収差装置であり,その解析点数はそれぞれ1,275点,240点と,iDesignのほうが,高精度の収差測定が可能となった.さらに,虹彩紋理と角膜輪部の認証性能も向上された.LASIK術前に,2つの波面解析装置で検査を行い,両解析機器において,WFG-LASIKが可能となった割合(WFG可能率)を検討した.表1WFG-LASIK術前後の自覚屈折と視力iDesign群WaveScan群(n=24)(n=16)術前:.0.29±0.82術前:0.06±1.31自覚等価球面度数(D)術後:.0.23±0.31術後:.0.24±0.36術前:.1.07±0.64術前:.0.97±0.78自覚円柱度数(D)術後:.0.36±0.34術後:.0.30±0.34平均遠方視力術前:0.56/1.22術前:0.48/1.17(裸眼/矯正)術後:0.97/1.19術後:0.95/1.16平均近方視力術前:0.46/0.68術前:0.49/0.72(裸眼/遠方矯正下)術後:0.78/0.71術後:0.62/0.70896あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016LASIK手術は,フェムト秒レーザーIntraLaseRFSレーザー(AMO)にてフラップを作製した.WFG-LASIK可能眼に対しては,IRを試みた後に,エキシマレーザーSTARS4IR(AMO)を用いて正視狙いでレーザー照射を行った.WFG-LASIKが可能でなかった眼に対しては,conventionalLASIK(C-LASIK)照射を行った.WFG-LASIK可能眼に対して,IRが使用可能であったか割合(IR可能率)を調べた.WFG-LASIK可能眼に対して,術後1カ月における検査結果を調査した.検討事項は,自覚屈折(透過球面度数と円柱度数),遠方視力(裸眼,矯正),近方視力(裸眼,遠方矯正下),コントラスト感度とした.コントラスト感度は,CSV-1000(VectorVision)を用いて輝度85cd/m2下で測定した.術前後の比較にはWicoxon符号順位和検定,両群の比較には,Mann-WhitneyU検定を用いた.p<0.05を有意差ありとした.結果は,平均±標準偏差で表示した.II結果対象症例は49例64眼で,WaveScanを用いた症例は25例32眼(平均年齢:64.7±7.3年,以下,WaveScan群),iDesignを用いた症例は24例32眼(平均年齢:65.1±12.5年,iDesign群)であった.挿入IOLの内訳は,アポダイズド回折型多焦点IOLReSTORR(Alcon)が34眼,TecnicMultifocalR(AMO)が26眼,それ以外が4眼であった.WFG可能率は,iDesign群は75.0%,WaveScan群は50.0%だった.WFG-LASIK照射時にIRができたIR可能率は,それぞれ,83.8%,31.3%と,iDesign群が有意に高かった(p=.0012,Fisher直接確率).この結果から,各群の全症例に対して,IR下でWFG-LASIK可能であった割合を求めると,iDesign群は62.5%に対してWaveScan群は15.6%と,iDesign群が有意に高かった(p=.0001).WFG-LASIK可能であった症例(iDesign群24眼,WaveScan群16眼)における,術前後の自覚屈折と視力の結果を表1に示す.自覚等価球面度数と自覚円柱度数において,両群で術前後の有意に変化がみられた(p<.03,<0.001)が,術後において群間差はなかった.視力においては,遠方,近方とも両群で裸眼視力は術後に有意に改善した(p<.001,<.003)が,術後において群間差はなかった.術後のコントラスト感度を図1に示す.測定可能症例数は,iDesign群は11眼,WaveScan群は15眼であった.全空間周波数において,群間に差はなかった.III考按回折型多焦点IOL挿入後のLASIKによる屈折誤差補正の効果を,2種類の波面収差測定装置で比較した.iDesign群(136) は,IR下でのWFG-LASIK照射がより高い割合で実施できた.しかし,自覚屈折,裸眼視力,コントラスト感度において,波面収差測定装置による差異はみられなかった.LASIKによる屈折誤差補正は,回折型多焦点IOLでは有効であったことは,Jendritzaらも報告している3).Muftuogluらは,アポダイズ回折型多焦点IOLの屈折誤差補正において,conventionalLASIKとWFG-LASIKによる術後視力の差がないと報告している5).一方,多焦点IOL挿入眼において,IRとWFG-LASIKを使用することで術後収差に有意な改善はみられないが,大きな劣化はないことが報告されている3).本検討でも,WFG-LASIKによる屈折誤差が有効であると示唆された.iDesign群では,IR有のWFG-LASIKが62.5%の症例で可能であった.屈折誤差のうち球面度数成分はLASIKにより比較的安定して矯正できるが,円柱度数成分では度数に加えて軸ずれが問題となる.仰位への姿勢変化による眼回旋(平均4.4±2.8°程度)により生じた軸ずれにより,1°の軸ずれに対して約3%,乱視矯正効果が低下する6).IRにより眼回旋の影響を最小限にすることが可能であるが4),本検討では,WaveScan群は84.4%でIRが行われていなかったにもかかわらず,自覚円柱度数に差はなかった.これは,矯正度数が,比較的低かったためと考えられた.混合乱視症例の検討では,IR機能有無効果は,高次収差,術後視機能に影響することが検証されている7).多焦点IOLへの適用となる角膜乱視度数は,トーリック多焦点IOLの開発に伴って拡大しつつある.高度な角膜乱視を有するためにトーリック多焦点IOLを挿入した場合,IRなどのaxisregistration法を用いたLASIK乱視矯正を選択することが必須になると予想される.より度数の高い円柱度数を矯正する場合は,IR機能が重要となるため,IR可能率が高いiDesignの使用が望ましいと考える.【文献】1)AgrestaB,KnorzMC,KohnenTetal:Distanceandnearvisualacuityimprovementafterimplantationofmultifocalintraocularlensesincataractpatientswithpresby2.01.51.00.50.0空間周波数図1iDesign群とWaveScan群のコントラスト感度全周波数において有意な群間差はなかった.opia:asystematicreview.JRefractSurg28:426-435,20122)deVriesNE,NuijtsRM:Multifocalintraocularlensesincataractsurgery:literaturereviewofbenefitsandsideeffects.JCataractRefractSurg39:268-278,20133)JendritzaBB,KnorzMC,MortonS:Wavefront-guidedexcimerlaservisioncorrectionaftermultifocalIOLimplantation.JRefractSurg24:274-279,20084)MoshirfarM,ChenMC,EspandarLetal:EffectofirisregistrationonoutcomesofLASIKformyopiawiththeVISXCustomVueplatform.JRefractSurg25:493-502,20095)MuftuogluO,PrasherP,ChuCetal:Laserinsitukeratomileusisforresidualrefractiveerrorsafterapodizeddiffractivemultifocalintraocularlensimplantation.JCataractRefractSurg35:1063-1071,20096)SuzukiA,MaedaN,WatanabeHetal:Usingareferencepointandvideokeratographyforintraoperativeidentificationofastigmatismaxis.JCataractRefractSurg23:1491-1495,19977)KhalifaM,El-KatebM,ShaheenMS:Irisregistrationinwavefront-guidedLASIKtocorrectmixedastigmatism.JCataractRefractSurg35:433-437,2009対数コントラスト感度iDesignWaveScan3cpd6cpd12cpd18cpd***(137)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016897

国立病院機構東京医療センターにおける最近1年間の角膜移植成績および術式別短期視力評価

2016年6月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科33(6):889.893,2016c国立病院機構東京医療センターにおける最近1年間の角膜移植成績および術式別短期視力評価秦未稀*1,2福井正樹*1,2,3水野嘉信*1大野健治*1,4野田徹*1*1国立病院機構東京医療センター眼科*2慶應義塾大学医学部眼科学教室*3南青山アイクリニック*4東京慈恵会医科大学附属病院眼科SurgicalResultsofKeratoplastyatTokyoMedicalCenteroverOne-YearPeriodMikiHata1,2),MasakiFukui1,2,3),YoshinobuMizuno1),KenjiOhno1,4)andToruNoda1)1)DepartmentofOphthalmology,NationalHospitalOrganization,TokyoMedicalCenter,2)UniversitySchoolofMedicine,3)MinamiaoyamaEyeClinic,4)DepartmentofOphthalmology,KeioDepartmentofOphthalmology,JikeiUniversitySchoolofMedicine目的:国立病院機構東京医療センター(NTMC)での過去1年間の角膜移植術の成績を検討した.方法:2014年1月1日.12月31日の間にNTMCで行った角膜移植術47例51眼の原因,術式,合併症,術後6カ月までの視力を後方視的に検討した.結果:原因は水疱性角膜症19眼(37%),再移植14眼(23%),角膜穿孔6眼(12%),その他(40%)であった.術式は全層移植術18眼(35%),内皮移植術18眼(35%),深層層状移植術10眼(24%),層状移植術15眼(10%)であった.合併症は術後二重前房7眼(14%),術中水晶体・眼内レンズ脱臼4眼(8%),術後高眼圧4眼(8%),その他9眼(18%)であった.矯正視力(logMAR換算)は術前平均で1.60±0.85,術後最高視力平均で0.69±0.66,術前より0.2以上改善したのが45眼(88%)であった.術式別視力上昇率では術後2週目に全層移植術が深層層状移植術より有意な視力上昇を認めた.結論:角膜移植術の術式が多様化したことで既報の合併症,術後視力から変化があったと考えられる.Wereporttheresultsofastudyof51eyesthatunderwentkeratoplastyattheDepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalCenter,in2014.Theresultswerestudiedretrospectivelyforalleyesthathadundergonepenetratingkeratoplasty(PKP),deeplamellarkeratoplasty(DALK),endothelialkeratoplasty(EK)orlamellarkeratoplasty(LKP).Theindicationswerebullouskeratopathy(19eyes),replantation(14eyes),cornealtrauma(6eyes),andother(12eyes).EKwasperformedon18eyes,PKPon18eyes,DALKon10eyesandLKPon5eyes;88%oftheeyesshowedpostoperativevisualacuityimprovementofmorethantwostepsonavision-testingchart.Wealsoevaluatedthevisualacuityimprovementrate,whichrevealedthatPKPimprovedsignificantlyearlierthanDALK.Themostcommoncomplicationwasdoublechamber(14%).Wesuggestthatvisualacuityimprovementpost-surgeryandthedecreaseinseverecomplicationsareduetochangesinoperativeprocedures.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(6):889.893,2016〕Keywords:角膜パーツ移植,視力上昇率,原因疾患,合併症.componentsurgeryofthecornea,improvementrateofvisualacuity,primarydisease,complication.はじめに角膜移植術は1905年E.Zirmが全層角膜移植を成功させた1)ことに始まり,全層角膜移植術(penetratingkeratoplasty:PKP),表層角膜移植術(lamellarkeratoplasty:LKP)の2種類に加え,20世紀末から,角膜移植の革命ともいわれるパーツ移植の概念・技術が進歩した.病変部のみを治療の標的として行うパーツ移植に,実質を標的とする深層角膜移植(deeplamellarkeratoplasty:DALK),内皮を標的とする内皮移植(endotherialkeratoplasty:EK)などが登場し,角膜移植術式の選択肢が広がったと考えられる2).〔別刷請求先〕秦未稀:〒152-8902東京都目黒区東が丘2-5-1国立病院機構東京医療センター眼科Reprintrequests:MikiHata,M.D.,NationalInstituteofSensoryOrgans,NationalTokyoMedicalCenter,2-5-1Higashigaoka,Meguro-ku,Tokyo152-8902,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(129)889 また,術中の眼球解放状態(opensky)に伴う水晶体脱臼や駆逐性出血,拒絶反応,屈折異常などの合併症が低減できると考えられる.術式の多様化および普及に伴い,これまで多数の施設で角膜移植の成績が検討されている3.7).今回,筆者らは,2014年1年間に国立病院機構東京医療センター(NationalHospitalOrganizationTokyoMedicalCenter:NTMC)で行った角膜移植術の内容を検討し,これらと2007年および2010年のNTMCで行った角膜移植術症例および既報3.7)を比較した.また,2014年の症例に関して,手術成績や短期の術式別の視力改善の早さを含めた考察を加え報告する.I対象および方法対象は2014年1月1日.12月31日の1年間に,NTMCで角膜移植眼を行った47例51眼(男性24症例25眼,女性23症例26眼),平均年齢は66.3±18.9歳(17.93歳)であった.対象症例について,原因疾患,術式〔PKP,EK(Descemetstrippingautomatedendotherialkeratoplasty(DSAEK)またはnon-Descemetstrippingautomatedendotherialkeratoplasty(nDSAEK),DALK,LKP〕,視力変化,合併症を後方視的に検討した.視力変化率はlogMAR換算視力(0.1未満の視力はlogMAR換算視力3.0とした)で術前から.0.2以下の変化を改善,+0.2以上の変化を悪化とし,.0.2より大きく0.2より小さい変化を不変と定義した.また,術後1週間ごとの視力を評価するために視力上昇率を(術後logMAR換算視力-術前logMAR換算視力)÷(術後6カ月間でのlogMAR換算最高視力-術前logMAR換算視力)×100とし,PKP,DALK,EKの術式ごとに4週間の期間で検討した.また,術式間に有意差があるかをMann-WhitneyU検定を行い,有意水準5%で判定を行った.合併症は術中および術後6カ月以内に起きたものを検討した.Primarygraftfailureは角膜移植後一度も透明化しなかったものと定義した.なお,原因疾患,術式,合併症については2007年および2010年にNTMCで行った角膜移植および既報3.7)を比較した.II結果1.原因疾患原因疾患は水疱性角膜症19眼(37%),再移植14眼(23%),角膜穿孔6眼(12%),角膜変性症4眼(10%),角膜混濁4眼(10%),円錐角膜3眼(6%),角膜拡張症1眼(2%)であった.再移植の内訳は,PKP,EK後の移植片機能不全がそれぞれ8眼,2眼,角膜穿孔2眼,角膜混濁1眼,残り1眼はDALK後二重前房が消退せずPKPを行った症例であった(図1a).890あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016過去の移植例,既報3.7)との比較では,水疱性角膜症と角膜変性の割合が経時的に増えており,角膜混濁の割合が減っているように感じられた(図1b).2.術式角膜移植術を行った全51眼の術式の内訳は,PKP:18眼(35%)〔うち2眼が水晶体.外摘出術(ECCE)+眼内レンズ(IOL)挿入術併用〕,EK:18眼(35%),DALK:10眼(24%),LKP:5眼(10%)であった.EKは水疱性角膜症18眼に行い,PKP18眼は水疱性角膜症12眼(うち9眼が再移植,2眼がECCE+IOL併用),円錐角膜2眼,角膜混濁2眼(うち1眼が再移植),角膜変性症1眼,角膜穿孔1眼(再移植)であった.円錐角膜2眼は術中Descemet膜穿孔しPKPに術式変更した症例であった.DALK10眼は角膜変性症4眼,角膜混濁3眼,円錐角膜2眼,角膜拡張症1眼,LKP5眼はすべて角膜穿孔に行った(図1c).過去の移植例,既報3.7)との比較ではEKとDALKの割合が経時的に増えており,PKPの割合が減っているように感じられた(図1d).3.視力変化角膜移植全体のlogMAR換算視力は術前平均1.60±0.85,術後6カ月以内の最高視力平均0.69±0.66であった.術式ごとでは術前平均/術後6カ月以内の最高視力平均でPKP2.04±0.89/0.86±0.70,EK1.29±0.47/0.39±0.32,DALK1.16±0.88/0.76±0.57,LKP1.81±1.04/1.17±1.60であった(表1).視力変化率(%)は改善/不変/悪化の順に角膜移植全体で88.2/11.1/2.0,PKPで88.9/3.9/0,EK100/0/0,DALK70/20/10,LKP80/20/0であった(表1).術式別の視力上昇率(%)は1週,2週,3週,4週の順にPKP.8.5±147.85,67.9±29.0,51.4±60.2,60.9±29.0,EK12.0±75.3,34.9±53.5,45.1±34.5,64.7±42.5,DALK.30.1±85.9,11.4±52.9,14.1±58.2,70.2±55.0であった.2週目でPKPがDALKに比べて有意に上昇率が高く(p=0.040),PKPがEKに比べ上昇率が高い傾向にあった(p=0.053)が,その他は術式間で有意な差を認めなかった(図2).4.合併症術中合併症は水晶体・IOL眼脱臼4眼(PKP4眼),Descemet膜穿孔(PKPへ術式変更)2眼,(DALK2眼),術後合併症は二重前房がもっとも多く7眼(DALK6眼,EK1眼),ステロイド起因性緑内障4眼(PKP2眼,DALK2眼),graft離開3眼(PKP1眼,LKP2眼),primarygraftfailure2眼(EK2眼),細菌性角膜炎1眼(PKP1眼),ヘルペス角膜炎再発1眼(PKP1眼)であった(表2).なお,当院での角膜移植では重篤な合併症の代表である駆逐性出血,感染(130) 表1国立病院機構東京医療センター(NTMC)1年間の角膜移植術前および術後最高logMAR換算視力の成績平均術後最高視力術前logMAR換算視力術後最高logMAR換算視力上昇不変悪化全症例49眼1.60±0.850.69±0.6643眼(88.2%)5眼(11.1%)1眼(2.0%)PKP18眼2.04±0.890.86±0.7016眼(88.9%)2眼(11.1%)0眼(0.0%)EK18眼1.29±0.470.39±0.3218眼(100.0%)0眼(0.0%)0眼(0.0%)DALK10眼1.16±0.880.76±0.577眼(70.0%)2眼(20.0%)1眼(10.0%)LKP3眼1.81±1.041.17±1.602眼(66.7%)1眼(33.3%)0眼(0.0%)PKP:全層角膜移植術,EK:角膜内皮移植術,DALK:深層層状角膜移植術,LKP:層状角膜移植術視力はlogMAR換算視力(0.1未満の視力はlogMAR換算視力3.0と定義).視力変化率を示す,術後最高視力の「上昇」・「不変」・「悪化」はlogMAR換算視力で術前から.0.2以下の変化を「改善」,+0.2以上の変化を「悪化」とし,.0.2より大きく0.2より小さい変化を「不変」と定義した.(131)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016891原因疾患の内訳角膜拡張性1眼水疱性角膜症30眼(再移植11眼)角膜混濁5眼(再移植1眼)角膜穿孔円錐角膜6眼(再移植2眼)角膜変性症5眼4眼ac図1角膜移植術の原因疾患および術式の内訳:国立病院機構東京医療センター(NTMC)および既報の比較PKP:全層角膜移植術,EK:角膜内皮移植術,DALK:深層層状角膜移植術,LKP:層状角膜移植術,ALTK:表層角膜移植.a:国立病院機構東京医療センター(NTMC)の2014年1年間の角膜移植術の原因疾患の内訳.b:角膜移植術の原因疾患の内訳;2014年・2007年・2010年のNTMCおよび既報の比較.c:NTMCの2014年1年間の角膜移植術式の内訳.d:角膜移植術式の内訳;2014年・2007年・2010年のNTMCおよび既報の比較.なお,b.およびd.の既報は文献3.7)より作成PKP18眼(うち2眼がECCE+IOL併用)EK18眼DALK10眼LKP5眼■PKP■EK■DALKLKP■ALTKNTMC2014.1~2014.12NTMC2010.1~2010.12NTMC2007.1~2007.12富山大学2004.2~2010.5東京医科歯科大学2000.6~2002.10秋田大学1993.1~2002.1今泉西病院1982~2002旭川医科大学1997~2001角膜移植術式の内訳35.3%35.3%19.6%9.8%20.7%10.3%6.9%13.8%48.3%63.6%9.1%15.2%6.1%6.1%7.5%12.5%80.0%100.0%88.0%6.0%6.0%10.7%3.3%86.0%91.7%2.8%5.6%100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%NTMC2014.1~2014.12NTMC2010.1~2010.12NTMC2007.1~2007.12富山大学2004.2~2010.5東京医科歯科大学2000.6~2002.10秋田大学1993.1~2002.1今泉西病院1982~2002旭川医科大学1997~2001bd58.8%19.6%11.8%9.8%10.3%10.3%17.2%27.6%34.5%27.3%24.2%3.0%39.4%6.1%10.0%30.0%20.0%15.0%25.0%44.8%13.8%10.3%31.0%60.0%10.0%6.0%24.0%35.8%12.0%11.7%40.5%52.8%14.8%5.6%26.9%100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%水疱性角膜症■角膜変性■角膜穿孔■角膜混濁■その他 性眼内炎はなく,半年間での術後経過観察期間ではあるが拒絶反応も認めなかった.III考按パーツ移植の開発・普及に伴い,角膜移植はこの20年間,術式,合併症,視力予後と大きく変化したと考えられる.当院の過去の症例および既報3.7)では全術式中でPKPがもっ250200150100視力上昇率(%)術後週数(週)500-50Mann-Whitney-U※p=0.040※※p=0.053※※※全層角膜移植内皮移植深層層状角膜移植01234図2術後4週間の術式別視力上昇率視力上昇率(%)=(術後logMAR換算視力.術前logMAR換算視力)(術後6カ月間での最高logMAR換算視力.術前logMAR換(÷)算視力)×100術後1,3,4週では各術式間に有意な差はないが,術後2週で全層角膜移植が深層層状角膜移植より有意に上昇率が高く,内皮移植より上昇率が高い傾向にあった.とも多かったが,2014年1年間の術式を対象とした本検討では,PKP,EKが同数であり,層状移植(DALK+LKP)もそれに匹敵する症例数となっている.EK,DALKでは対象とする疾患が異なるため,今後両者の占める割合の変化は原因疾患の変化によると考えられるが,過去にPKPを行っていた疾患でパーツ移植が適応になる疾患はパーツ移植に移行していくと考えられ,PKPの割合が今後も減るのではないかと考えられる.しかし,NTMCでの全層移植は再移植が多いのが特徴であり,これはNTMCの角膜移植術が2003年から行われており,10年以上の歴史があることによると思われる.PKPの再移植はPKPで行うことが多いことから,近い将来にPKPの需要がなくなることはないと考える.NTMCにおける角膜移植術の原因疾患は水疱性角膜症が多く,NTMCの過去症例および既報と異なる点である.これは水疱性角膜症の増加,他の疾患の減少があり得るが,増加の要因としては角膜内皮移植術,とくにDSAEK,nDSAEKが普及してその成績や術式が安定してくると,これまで角膜内皮数が少なかったり,内皮機能が悪いと考えられたりした症例にも,白内障をはじめとする内眼手術を積極的に行うことができるようになるからと考えられる.また,日本人の寿命が延びれば延びるほど水疱性角膜症の症例数は理論的に増えると考えられる.一方,他疾患の減少の要因であるが,遺伝性疾患や円錐角膜などの変性疾患の割合は変わらないと考えられるが,梅毒性角膜実質炎後や結核性角膜実質炎後などの感染性角膜実質炎後の角膜混濁は,感染の制御が進んでい表2角膜移植術の合併症の内訳:国立病院機構東京医療センター(NTMC)および既報の比較術中合併症駆逐性出血水晶体・IOL脱臼硝子体脱出虹彩損傷NTMC(2014)51眼4NTMC(2010)29眼1NTMC(2007)33眼2東京医科歯科大学29眼秋田大学50眼旭川医科大学108眼411術後合併症眼内炎Primarygraftfailure拒絶反応Graft離開PKP二重前房高眼圧感染症他術式変更NTMC(2014)232742NTMC(2010)131NTMC(2007)1342東京医科歯科大学1314秋田大学139旭川医科大学1142PKP:全層角膜移植術.上:角膜移植術中の合併症の内訳;国立病院機構東京医療センター2014年・2010年・2007年および既報の比較.下:角膜移植術後の合併症の内訳;国立病院機構東京医療センター2014年・2010年・2007年および既報の比較.なお,既報は文献3,5,6)より作成.892あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016(132) ることから減少している可能性がある.これらの理由あるいは両者の理由から,水疱性角膜症の増加が反映されているかもしれない.さて,今回筆者らは短期の術後視力推移を,視力上昇率を求めることで評価した.通常は術後の視力を最終視力や術前からの視力の上昇で評価することが多いが,もともと術後視力が1.0以上を期待できなかったり,術式で最終の期待視力が異なったり,併存疾患があっても評価ができる方法として視力上昇率を用いた.これにより,各手術での術後の視力の立ち上がりの早さを比べることができると考えられる.本研究では直近の手術を検討したため術後の経過観察期間が短いこと,施設によってはルーチンに角膜移植後6カ月以降で縫合糸抜糸を行うところがあることから,6カ月以内での術前視力,術後最高視力を用いて視力上昇率を求めた.その結果,術後4週間での術式別視力上昇率は,1,3,4週目では有意差がないものの,2週目でPKPがDALKより有意に上昇が早く,PKPがEKより上昇が早い傾向がみられた.これはPKP,EK,DALKの順に視力上昇が得られることが示唆され,層間接着の要素が必要なEK,層間接着と縫合といったEKとPKPの両方の特徴を兼ねるDALKがさらに上昇が遅延することを示唆していると推測される.合併症については当院では観察期間が6カ月と短期間であるため,拒絶反応の発症率は0%であったが,これは角膜パーツ移植の増加に伴い拒絶反応の発症率を抑制した可能性も期待したい.術後眼内炎や駆逐性出血が起きていないのも同様の理由である.一方,パーツ移植が増えたことで術後二重前房,DALK術中のDescemet膜穿孔といった術中の手技にかかわる合併症が多い結果となっている.今回,筆者らは1年間の組み入れ期間,半年間の観察期間という短期の検討を行ったが,過去の報告と比べること,また,視力上昇率という新たな指標を用いることでパーツ移植という角膜移植の新時代の現況を評価できたと考える.これをさらに継続して検討していくことで,より正確な状況や継時的な変化も評価できると考える.角膜移植は手術手技が多様化したことにより,今後ますます手術の特徴を考慮し,個々の患者背景に合わせて術式を選択していく必要があると考える.文献1)ZirmEK:EineerfolgreichetotaleKeratoplastik(Asuccessfultotalkeratoplasty).1906.RefractCornealSurg5:258-261,19892)福井正樹,榛村重人:角膜パーツ移植.眼科54:639-647,20123)村松治,五十嵐羊羽,花田一臣ほか:旭川医科大学眼科における過去5年間の角膜移植術の成績.あたらしい眼科21:1229-1232,20044)星兵仁,川島千鶴子,百瀬皓:今泉西病院における角膜移植手術20年の成績.眼紀56:264-269,20055)早川宏一,昆野清輝,徐カイイほか:秋田大学眼科における角膜移植成績.眼紀55:475-478,20046)山田由希子,佐々木秀次,佐々木環ほか:東京医科歯科大学眼科における角膜移植術後成績.あたらしい眼科20:1699-1702,20037)矢合隆昭,柳沢秀一郎,柚木達也ほか:最近6年間の角膜移植手術成績.臨紀4:609,2011***(133)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016893

細菌性外眼部感染症分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査(2005,2007,2009 および2014年のまとめ)

2016年6月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科33(6):875.887,2016c細菌性外眼部感染症分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査(2005,2007,2009および2014年のまとめ)末信敏秀*1松崎薫*2小山英明*2岸直子*2松本哲*2秦野寛*3*1千寿製薬株式会社研究開発本部育薬研究推進部*2株式会社LSIメディエンス*3ルミネはたの眼科InvestigationofBacterialIsolatesRecoveredfromOcularInfections,RegardingSusceptibilityToshihideSuenobu1),KaoruMatsuzaki2),HideakiKoyama2),NaokoKishi2),SatoruMatsumoto2)andHiroshiHatano3)1)MedicalScienceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)LSIMedienceCorporation,3)LumineHatanoEyeClinic細菌性外眼部感染症由来の各種臨床分離株のgatifloxacin(GFLX)および他の点眼用抗菌薬に対する感受性動向を検討するため,2005年,2007年,2009年および2014年の各1年間に,全国の一次医療機関の細菌性外眼部感染症患者より分離された2,498菌株を対象に,GFLXおよびその他の点眼用抗菌薬に対する感受性を測定した.グラム陽性菌では,計4回の調査を通じてGFLXに対する感受性の低下は認められず,moxifloxacin(MFLX)およびtosufloxacin(TFLX)に対する感受性とほぼ同等であった.また,2014年分離株のうちStreptococcusspp.およびEnterococcusspp.はlevofloxacin(LVFX)よりも,Corynebacteriumspp.はMFLXおよびLVFXよりも,GFLXに高い感受性を示した.一方,グラム陰性菌においても,GFLXに対する感受性の低下は認められず,LVFXおよびTFLXに対する感受性とほぼ同等であった.また,2014年分離株のうちPseudomonasaeruginosaはMFLXよりもGFLXに高い感受性を示した.以上,2004年の発売から10ヵ年にわたって,外眼部感染症分離菌のGFLXに対する感受性に経年的な耐性化傾向は認められなかったことから,GFLXは細菌性外眼部感染症に対して有用な抗菌薬であると考えられた.Isolatesrecoveredfromocularinfectiouspatientsbetween2005and2014wereassessedinvitroregardingtheirsusceptibilitiestogatifloxacin(GFLX)andotherophthalmicantimicrobialagents.TheinvitroactivityofGFLXagainsttheisolateswascomparedtothatoflevofloxacin(LVFX),tosufloxacin(TFLX),moxifloxacin(MFLX)andcefmenoxime(CMX).TheactivitiesofGFLXagainstgram-positiveand-negativebacteriascarcelychangedduringtheinvestigationperiod.TheactivityofGFLXagainstgram-positiveisolatewasalmostequaltothoseofMFLXandTFLX.Againstgram-negativeisolates,GFLXantibacterialactivitywasalmostequaltothoseofLVFXandTFLX.SinceGFLXdidnotexhibitdiminishedactivityduringtheperiodofthisinvestigation,theagentisconcludedtobepotentlyactiveagainstbacterialisolatesfromocularinfectiouspatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(6):875.887,2016〕Keywords:ガチフロキサシン,感受性,サーベイランス,フルオロキノロン,眼感染症.gatifloxacin,susceptibility,surveillance,fluoroquinolones,ocularinfection.はじめにGatifloxacin(GFLX)点眼薬が2004年に上市されてから10年が経過するなか,筆者らは2005年,2007年および2009年の計3回,外眼部感染症分離菌のGFLXに対する感受性を検討し,経年的な耐性化傾向を認めなかったことを報告した1).現時点においても,GFLXをはじめとするフルオロキノロン系点眼薬は,細菌性外眼部感染症に対する第一選択薬の座を譲っていない.言い換えれば,フルオロキノロン系薬に代わる新しい作用機序をもつ有用な抗菌薬が,世に登場していないともいえる.フルオロキノロン系薬は,細菌のDNA合成に関与するDNAgyraseおよびtopoisomeraseIVという酵素を阻害することで抗菌活性を示し,GFLXでは,〔別刷請求先〕末信敏秀:〒541-0046大阪市中央区平野町2-5-8千寿製薬株式会社研究開発本部育薬研究推進部Reprintrequests:ToshihideSuenobu,MedicalScienceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2-5-8Hiranomachi,Chuo-ku,Osaka541-0046,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(115)875 表1試験菌株各回の収集株数試験菌目標収第1回第2回第3回第4回集株数(2005年)(2007年)(2009年)(2014年)StaphylococcusStaphylococcusaureus(Methicillin-susceptibleS.aureus:MSSA,100100100100100Methicillin-resistantS.aureus:MRSA)CoagulasenegativeStaphylococcus(CNS)100100100100100StreptococcusStreptococcuspneumoniae5050505050Streptococcusspecies(S.pneumoniae以外)2525252525Enterococcusspecies2525252525Corynebacteriumspecies2525252525Moraxella(Branhamella)catarrhalis2525252525EnterobacteriaceaeCitrobacterspecies1010101010Klebsiellaspecies1010101010Serratiaspecies2525252525Morganellamorganii1010101010NonglucosefermentativegramnegativerodPseudomonasaeruginosa5050505050Pseudomonasspecies(P.aeruginosa以外)2525252525Sphingomonaspaucimobilis2576187Stenotrophomonasmaltophilia1010101010Acinetobacterspecies2525252525Haemophilusinfluenzae5050505050嫌気性菌Propionibacteriumacnes5050505050計640622621633622キノロン環8位のメトキシ基が両酵素の阻害活性を高め,変異株の出現頻度低減に寄与することで,耐性菌が生じにくいことが示唆されている2).一方,抗菌薬にとって,その使用量に伴う耐性化は一般的に不可避である.したがって,継続的に新規作用機序を有する抗菌薬の創薬が必要である一方,既存薬の適正使用を推進し耐性化を最小限に止めることが重要である.すなわち,医療現場における適正使用の根拠となる「推定起因菌の感受性動向」の情報に基づいて,適切な抗菌薬が選択される必要がある.そこで筆者らは,継続して眼科臨床分離株の感受性を監視し,感受性動向の情報を医療現場と共有することが重要であると考え,前回報告の2009年から5ヵ年が経過した2014年に分離された細菌性外眼部感染症由来の各種臨床分離株のGFLXおよび他の点眼用抗菌薬に対する感受性を検討することを目的として,4回目の調査を実施したので報告する.なお,本調査は感受性動向を把握することを主たる目的とすることから,過去の成績1)とあわせて報告する.876あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016I材料および方法1.試験薬剤今回の試験では,継続的な感受性動向の調査対象薬剤としてgatifloxacin(GFLX),levofloxacin(LVFX),tosufloxacin(TFLX),moxifloxacin(MFLX)およびcefmenoxime(CMX)に加え,erythromycin(EM)およびtobramycin(TOB)の7薬剤を用いた.なお,Staphylococcusspp.にはoxacillin(MPIPC),StreptococcuspneumoniaeにはpenicillinG(PCG),Haemophilusinfluenzaeにはampicillin(ABPC)を追加した.2.試験菌株表1に示した菌種について,各回(1年間)における目標収集株数を設定し,全国の一次医療機関の細菌性外眼部感染症患者より検体採取,分離,同定された順に,目標株数に達するまでの収集菌株(総数2,498株)を試験菌株とした.試験菌株は分離後,最小発育阻止濃度(MIC)測定時まで保存液(スキムミルク)中にて.70℃以下で保存した.なお,これらの試験菌株は,「疫学研究に関する倫理指針」(平成14(116) 年文部科学省・厚生労働省告示第2号)を遵守して使用した.3.薬剤感受性測定試験菌株の薬剤感受性測定は,ClinicalandLaboratoryStandardsInstitute(CLSI)に準じた微量液体希釈法にて実施した.微量液体希釈法による測定にはフローズンプレート(栄研化学)を使用した.測定培地は,S.pneumoniae,Streptococcusspp.およびCorynebacteriumspp.については,2%ウマ溶血液添加cation-adjustedMuellerHintonbroth(CAMHB)を用い,H.influenzaeにはHTMbroth(hematin15μg/mL,b-NAD15μg/mLおよびyeastextract0.5%添加CAMHB)を用い,その他の好気性菌にはCAMHBを用いた.嫌気性菌については,5%馬溶血液添加brucellabroth(hemin5μg/mLおよびvitaminK11μg/mLも添加)を用いた.好気性菌は約5×104.1×105CFU/well,嫌気性菌は約1.2×105CFU/wellとなるように各wellに菌を接種後,好気性菌は35℃,20.24時間,好気培養,嫌気性菌は35℃,46.48時間,嫌気培養を行った.判定は,対照に用いた薬剤不含有培地における菌の発育を確認した後,菌の発育が認められない最小薬剤濃度をMICとした.4.耐性基準各菌種の耐性の定義はCLSIの基準に従い,以下のとおりとした.S.aureusは,MPIPCのMIC値が2μg/mL以下のものをsusceptible(MSSA),4μg/mL以上のものをresistant(MRSA)とした.coagulasenegativeStaphylococcus(CNS)は,MPIPCのMIC値が0.25μg/mL以下のものをsusceptible(MSCNS),0.5μg/mL以上のものをresistant(MRCNS)とした.S.pneumoniaeはPCGのMIC値が0.06μg/mL以下のものをsusceptible(PSSP),0.12.1μg/mLのものをintermediate(PISP),2μg/mL以上のものをresistant(PRSP)とした.5.GFLXと対象薬剤のMIC値の相関過去3回の調査結果から,GFLXのMICrangeが比較的幅広いことが予測される菌種について,GFLXと対象薬剤のMIC値との相関について検討した.すなわち,第4回調査の分離株のうち,S.aureusおよびCNS(各100株)に対するMPIPC,CMX,EMおよびTOBのMIC値との相関をSpearman順位相関係数を用いて検討した(JMP10forWindows,SASInstituteInc,Cary,NorthCarolina,USA).同様に,Corynebacteriumspp.(25株)およびPseudomonasaeruginosa(50株)についてはCMX,EMおよびTOBのMIC値との相関について検討した.また,MIC値相関の検討では,羽藤らの報告3)を参考に,(117)分位点密度を等高線パターンとして描出(同JMP10)し,視覚的な評価を試みた.II結果1.グラム陽性菌2005年(第1回),2007年(第2回),2009年(第3回)および2014年(第4回)の各年に外眼部感染症患者から分離された菌株に対する各種抗菌薬のMICの成績を表2に示した.その結果,4回の調査においてS.aureus100株に占めるMRSAの割合は20%程度で,GFLXのMIC90は32.128μg/mLであり大きな変動は認められず,MFLXのMIC90は32.64μg/mL,LVFXおよびTFLXのMIC90は,それぞれ>128および>16μg/mLであった.また,MSSAに対するGFLXのMIC90は0.12.0.25μg/mLであり,他のフルオロキノロン系薬と同様に大きな変動は認められなかった.CNSに占めるMRCNSの割合は40%程度であり,GFLXのMIC90は2μg/mLで,過去3回の調査成績と変化はなかった.また,MSCNSについては,GFLXのMIC90は0.12.2μg/mLであり,第4回調査でもっとも高かったが,他のフルオロキノロン系薬についても同様の傾向を示した.PSSPおよびPISPに対するGFLXのMIC90は4回の調査を通じて0.25.0.5μg/mLであり,MFLXおよびTFLXと同等であった.また,PRSPの収集株数は,すべての調査において10株未満と少なかったが,GFLXのMICはPSSPおよびPISPに対するMICとほぼ同等であった.Streptococcusspp.に対するGFLXのMIC90は4回の調査を通じて0.5μg/mLであり,変動は認められなかった.また,他のフルオロキノロン系薬においてもMIC90の著明な変動は認められなかったが,第4回調査におけるGFLXのMIC90(0.5μg/mL)はLVFX(2μg/mL)より低かった.Enterococcusspp.に対するGFLXのMIC90は0.5.1μg/mLであり,上昇は認められなかった.他のフルオロキノロン系薬においてもMIC90の変動は認められなかったが,第4回調査におけるGFLXのMIC90は0.5μg/mLであり,LVFXの2μg/mLより低かった.一方,CMXのEnterococcusspp.に対するMIC90は4回の調査すべてにおいて>128μg/mLであった.Corynebacteriumspp.に対するGFLXのMIC90は8.16μg/mLであり,第4回調査のGFLXのMIC90(8μg/mL)は,LVFXおよびMFLXの64μg/mLおよび32μg/mLより低かった.ただし,CMXのMIC90は0.25.1μg/mL,TOBでは2μg/mLであり,フルオロキノロン系薬よりも低値を示した.計4回の調査におけるP.acnesに対するGFLXのMIC90は0.25.0.5μg/mLであり,MFLXと同等で他のフルオロキノロン系薬よりも低値であった.また,CMXのMIC90は0.25.0.5μg/mLでありあたらしい眼科Vol.33,No.6,2016877 表2外眼部感染症由来分離株に対するgatifloxacinおよび他の対象薬のMIC推移MIC:μg/mL菌名(株数)Drug第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90グラム陽性菌MSSAGFLX≦0.06-4≦0.060.12≦0.06-20.120.12≦0.06-40.120.25≦0.06-320.120.25第1回(81株)LVFX0.12-80.250.250.12-40.250.250.12-80.250.50.12->1280.250.5第2回(78株)TFLX≦0.06-8≦0.06≦0.06≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-4≦0.060.12≦0.06->16≦0.060.25第3回(76株)MFLX≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.06≦0.06≦0.06-2≦0.060.12≦0.06-16≦0.060.12第4回(81株)CMX1-4221-2121-2220.5-422EM0.25->1280.5>128TOB0.25-640.516MRSAGFLX0.12->1284128≦0.06-642320.12->12881280.12-64464第1回(19株)LVFX0.25->1288>1280.25->1288>1280.25->12832>1280.25->12816>128第2回(22株)TFLX≦0.06->164>16≦0.06->164>16≦0.06->16>16>16≦0.06->16>16>16第3回(24株)MFLX≦0.06-128264≦0.06-32232≦0.06-128864≦0.06-64864第4回(19株)CMX8->128>128>1284->12864>1288->128>128>1284->12816>128EM0.5->128>128>128TOB0.5->1281>128MSCNSGFLX≦0.06-2≦0.060.12≦0.06-20.121≦0.06-20.120.12≦0.06-20.122第1回(60株)LVFX0.12-80.120.250.12-80.2520.12-40.250.250.12-80.254第2回(52株)TFLX≦0.06-16≦0.06≦0.06≦0.06->16≦0.062≦0.06-4≦0.06≦0.06≦0.06-8≦0.064第3回(60株)MFLX≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-4≦0.060.5≦0.06-1≦0.060.12≦0.06-2≦0.061第4回(60株)CMX0.25-20.510.25-10.510.25-10.510.25-10.51EM0.12->1280.25128TOB≦0.06->1280.2516MRCNSGFLX≦0.06-212≦0.06-222≦0.06-6412≦0.06-3212第1回(40株)LVFX0.12-16240.12-16480.12->128480.12->12844第2回(48株)TFLX≦0.06-1624≦0.06->1648≦0.06->1628≦0.06->1644第3回(40株)MFLX≦0.06-40.51≦0.06-412≦0.06-3212≦0.06-3211第4回(40株)CMX2-16480.5-164161-8481-16416EM0.25->12864>128TOB0.12->128864PSSPGFLX0.12-0.50.250.250.12-0.50.250.250.12-0.50.250.250.12-0.50.250.25第1回(38株)LVFX0.25-10.510.25-1110.5-1110.5-111第2回(32株)TFLX≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.12第3回(29株)MFLX≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.25第4回(30株)CMX≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.50.120.25≦0.06-0.50.250.25EM≦0.06->1284>128TOB8-321632菌名(株数)Drug第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90グラム陽性菌MSSAGFLX≦0.06-4≦0.060.12≦0.06-20.120.12≦0.06-40.120.25≦0.06-320.120.25第1回(81株)LVFX0.12-80.250.250.12-40.250.250.12-80.250.50.12->1280.250.5第2回(78株)TFLX≦0.06-8≦0.06≦0.06≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-4≦0.060.12≦0.06->16≦0.060.25第3回(76株)MFLX≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.06≦0.06≦0.06-2≦0.060.12≦0.06-16≦0.060.12第4回(81株)CMX1-4221-2121-2220.5-422EM0.25->1280.5>128TOB0.25-640.516MRSAGFLX0.12->1284128≦0.06-642320.12->12881280.12-64464第1回(19株)LVFX0.25->1288>1280.25->1288>1280.25->12832>1280.25->12816>128第2回(22株)TFLX≦0.06->164>16≦0.06->164>16≦0.06->16>16>16≦0.06->16>16>16第3回(24株)MFLX≦0.06-128264≦0.06-32232≦0.06-128864≦0.06-64864第4回(19株)CMX8->128>128>1284->12864>1288->128>128>1284->12816>128EM0.5->128>128>128TOB0.5->1281>128MSCNSGFLX≦0.06-2≦0.060.12≦0.06-20.121≦0.06-20.120.12≦0.06-20.122第1回(60株)LVFX0.12-80.120.250.12-80.2520.12-40.250.250.12-80.254第2回(52株)TFLX≦0.06-16≦0.06≦0.06≦0.06->16≦0.062≦0.06-4≦0.06≦0.06≦0.06-8≦0.064第3回(60株)MFLX≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-4≦0.060.5≦0.06-1≦0.060.12≦0.06-2≦0.061第4回(60株)CMX0.25-20.510.25-10.510.25-10.510.25-10.51EM0.12->1280.25128TOB≦0.06->1280.2516MRCNSGFLX≦0.06-212≦0.06-222≦0.06-6412≦0.06-3212第1回(40株)LVFX0.12-16240.12-16480.12->128480.12->12844第2回(48株)TFLX≦0.06-1624≦0.06->1648≦0.06->1628≦0.06->1644第3回(40株)MFLX≦0.06-40.51≦0.06-412≦0.06-3212≦0.06-3211第4回(40株)CMX2-16480.5-164161-8481-16416EM0.25->12864>128TOB0.12->128864PSSPGFLX0.12-0.50.250.250.12-0.50.250.250.12-0.50.250.250.12-0.50.250.25第1回(38株)LVFX0.25-10.510.25-1110.5-1110.5-111第2回(32株)TFLX≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.12第3回(29株)MFLX≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.25第4回(30株)CMX≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.50.120.25≦0.06-0.50.250.25EM≦0.06->1284>128TOB8-321632(118) (119)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016879第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)菌名(株数)DrugMICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90PISPGFLX0.12-0.250.250.250.12-0.250.250.250.12-0.250.250.250.12-0.50.250.5第1回(10株)LVFX第2回(14株)TFLX第3回(15株)MFLX第4回(13株)CMXEMTOBPRSPGFLX第1回(2株)LVFX第2回(4株)TFLX第3回(6株)MFLX第4回(7株)CMXEMTOBStreptococcusspp.GFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOBEnterococcusspp.GFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOBCorynebacteriumspp.GFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOB0.5≦0.06≦0.060.250.2510.120.120.5≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.060.510.250.258≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.120.1210.510.250.2521211>1281612816320.50.50.120.120.5─────0.250.50.120.12≦0.060.510.250.251288324160.120.50.120.121─────0.510.250.250.25120.50.5>12816648320.50.5≦0.06≦0.060.120.2510.120.120.5≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.060.2510.250.251≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.120.1210.520.50.540.520.50.54120.50.5>128>128>128>166410.50.120.120.25─────0.250.50.120.12≦0.060.510.50.5640.250.50.50.250.2510.120.120.5─────0.510.250.25≦0.06120.50.5>128166416320.250.5≦0.06≦0.06≦0.060.2510.120.120.50.120.25≦0.06≦0.06≦0.060.2510.250.258≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.250.12140.520.250.252120.50.5>12832>128>16640.50.50.120.120.5─────0.2510.120.12≦0.060.510.50.51280.250.50.250.120.2510.120.121─────0.510.250.250.25120.50.5>12816128>16320.50.-15≦0.06-0.25≦0.06-0.25-0.50.121->1288-320.250.-150.120.120.-251->12816-32-0.50.120.-225≦0.06-0.5≦0.06-0.25≦0.06-2≦0.06->1282-320.-251–0.50.25-0.50.258->128->1280.258->128≦0.06-16≦0.06-128≦0.06->16≦0.06-32≦0.06-2≦0.06->128≦0.06-810.120.120.25216───────0.510.250.25≦0.06≦0.06160.510.250.25128>12816832160.120.12≦0.0610.250.250.5>12832───────0.520.250.250.254320.520.50.5>128>128>128864832182 第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)菌名(株数)DrugMICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90P.acnesGFLX0.250.250.250.25-0.50.250.50.25-0.50.250.50.25-0.50.250.5第1回(50株)LVFX第2回(50株)TFLX第3回(50株)MFLX第4回(50株)CMXEMTOB-0.50.250.5-10.12-0.25≦0.06-0.50.510.25≦0.060.510.250.50.-150.12-20.25-0.5≦0.06-0.50.510.250.12110.50.250.-150.5-10.25-0.5≦0.06-0.50.510.250.12110.50.50.-150.510.-1511-0.50.250.250.5≦0.06-0.50.120.50.120.120.1216-646464グラム陰性菌M.(B.)catarrhalisGFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOBCitrobacterspp.GFLX第1回(10株)LVFX第2回(10株)TFLX第3回(10株)MFLX第4回(10株)CMXEMTOBKlebsiellaspp.GFLX第1回(10株)LVFX第2回(10株)TFLX第3回(10株)MFLX第4回(10株)CMXEMTOBSerratiaspp.GFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOB≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.250.250.250.50.120.120.120.120.511120.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.060.120.12≦0.06≦0.06≦0.060.120.250.50.250.250.50.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.50.250.25110.250.50.5110.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.060.250.120.120.250.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.50.50.250.2510.25≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.060.50.250.2510.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.50.120.250.120.1211122≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.120.120.120.250.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.06≦0.060.120.120.50.250.250.51≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-10.50.-1120.25-0.250.120.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.06-0.12≦0.0664->1281280.-1250.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.0664>1281280.50.250.5≦0.06-0.50.12≦0.06-0.250.12≦0.06-0.250.12≦0.06-0.50.25≦0.06-0.50.1264->1281280.-4252≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.50.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.061280.5≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06>1280.50.250.120.120.50.25>1284(120) 菌名(株数)Drug第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90M.morganiiGFLX≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-1≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.12第1回(10株)LVFX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06第2回(10株)TFLX≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-2≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.12第3回(10株)MFLX≦0.06-0.250.120.25≦0.06-40.120.5≦0.06-0.120.120.12≦0.06-0.250.120.25第4回(10株)CMX≦0.06-1≦0.06≦0.06≦0.06-0.25≦0.060.25≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06EM128>128>128>128TOB0.250.50.50.5P.aeruginosaGFLX0.25-320.520.25-80.510.25-40.510.25-40.50.5第1回(50株)LVFX0.25-640.510.25-80.510.25-40.510.25-40.50.5第2回(50株)TFLX0.12->160.250.50.12-40.250.50.12-20.250.50.12-20.250.25第3回(50株)MFLX0.5-128140.5-16120.5-8120.5-812第4回(50株)CMX16->128163216-12832648->12816648->1283232EM64->128>128>128TOB0.25-20.51Pseudomonasspp.GFLX≦0.06-0.50.120.5≦0.06-40.510.12-10.51≦0.06-10.120.5第1回(25株)LVFX≦0.06-0.50.120.25≦0.06-40.50.50.12-10.51≦0.06-10.120.5第2回(25株)TFLX≦0.06-0.25≦0.060.25≦0.06-10.250.5≦0.06-0.50.250.5≦0.06-0.50.120.25第3回(25株)MFLX≦0.06-10.251≦0.06-8120.25-2120.12-20.251第4回(25株)CMX0.12-12816640.5->1283212816-128326416-643264EM8->12832>128TOB≦0.06-0.5≦0.060.5S.paucimobilisGFLX≦0.06-0.5──≦0.06-1──≦0.06-10.121≦0.06-0.5──第1回(7株)LVFX0.12-1──≦0.06-2──0.12-20.2520.12-1──第2回(6株)TFLX≦0.06-0.5──≦0.06-1──≦0.06-2≦0.061≦0.06-0.5──第3回(18株)MFLX≦0.06-0.5──≦0.06-2──≦0.06-2≦0.061≦0.06-0.25──第4回(7株)CMX2-32──1->128──2->128326416-64──EM2-4──TOB0.12-1──S.maltophiliaGFLX0.25-40.51≦0.06-320.540.25-2110.25-111第1回(10株)LVFX0.5-40.520.12-32140.5-2120.5-212第2回(10株)TFLX0.12-20.51≦0.06->160.520.12-10.50.50.12-0.50.50.5第3回(10株)MFLX0.12-20.251≦0.06-320.520.12-10.50.50.25-0.50.50.5第4回(10株)CMX2->128128>12832->128128>1284->128128>12832->128128>128EM128->128128>128TOB8->128128>128菌名(株数)Drug第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90M.morganiiGFLX≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-1≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.12第1回(10株)LVFX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06第2回(10株)TFLX≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-2≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.12第3回(10株)MFLX≦0.06-0.250.120.25≦0.06-40.120.5≦0.06-0.120.120.12≦0.06-0.250.120.25第4回(10株)CMX≦0.06-1≦0.06≦0.06≦0.06-0.25≦0.060.25≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06EM128>128>128>128TOB0.250.50.50.5P.aeruginosaGFLX0.25-320.520.25-80.510.25-40.510.25-40.50.5第1回(50株)LVFX0.25-640.510.25-80.510.25-40.510.25-40.50.5第2回(50株)TFLX0.12->160.250.50.12-40.250.50.12-20.250.50.12-20.250.25第3回(50株)MFLX0.5-128140.5-16120.5-8120.5-812第4回(50株)CMX16->128163216-12832648->12816648->1283232EM64->128>128>128TOB0.25-20.51Pseudomonasspp.GFLX≦0.06-0.50.120.5≦0.06-40.510.12-10.51≦0.06-10.120.5第1回(25株)LVFX≦0.06-0.50.120.25≦0.06-40.50.50.12-10.51≦0.06-10.120.5第2回(25株)TFLX≦0.06-0.25≦0.060.25≦0.06-10.250.5≦0.06-0.50.250.5≦0.06-0.50.120.25第3回(25株)MFLX≦0.06-10.251≦0.06-8120.25-2120.12-20.251第4回(25株)CMX0.12-12816640.5->1283212816-128326416-643264EM8->12832>128TOB≦0.06-0.5≦0.060.5S.paucimobilisGFLX≦0.06-0.5──≦0.06-1──≦0.06-10.121≦0.06-0.5──第1回(7株)LVFX0.12-1──≦0.06-2──0.12-20.2520.12-1──第2回(6株)TFLX≦0.06-0.5──≦0.06-1──≦0.06-2≦0.061≦0.06-0.5──第3回(18株)MFLX≦0.06-0.5──≦0.06-2──≦0.06-2≦0.061≦0.06-0.25──第4回(7株)CMX2-32──1->128──2->128326416-64──EM2-4──TOB0.12-1──S.maltophiliaGFLX0.25-40.51≦0.06-320.540.25-2110.25-111第1回(10株)LVFX0.5-40.520.12-32140.5-2120.5-212第2回(10株)TFLX0.12-20.51≦0.06->160.520.12-10.50.50.12-0.50.50.5第3回(10株)MFLX0.12-20.251≦0.06-320.520.12-10.50.50.25-0.50.50.5第4回(10株)CMX2->128128>12832->128128>1284->128128>12832->128128>128EM128->128128>128TOB8->128128>128(121)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016881 菌名(株数)Drug第1回(2005年)MICrangeMIC50MIC90第2回(2007年)MICrangeMIC50MIC90第3回(2009年)MICrangeMIC50MIC90第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90Acinetobacterspp.GFLX≦0.06-16≦0.060.25第1回(25株)LVFX≦0.06-160.120.5第2回(25株)TFLX≦0.06->16≦0.060.12第3回(25株)MFLX≦0.06-16≦0.060.25第4回(25株)CMX4-1281632EMTOBH.influenzaeGFLX≦0.06≦0.06≦0.06第1回(50株)LVFX≦0.06≦0.06≦0.06第2回(50株)TFLX≦0.06≦0.06≦0.06第3回(50株)MFLX≦0.06≦0.06≦0.06第4回(50株)CMX≦0.06-0.5≦0.060.5EMTOBABPC0.12->1280.54≦0.06-0.5≦0.060.12≦0.06-0.50.120.25≦0.06-0.25≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.060.121-641664≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06-0.50.250.50.12-160.54≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.124-641632≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06-0.50.120.50.12-6414≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06-0.250.120.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.064-3216324-6416160.25-20.51≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.50.250.52-16880.25-4220.12->128132収集株数が10株未満であった場合は,MIC50およびMIC90を算定せず.フルオロキノロン系薬と同程度であったが,EMのMIC値は全株で0.12μg/mLであり,フルオロキノロン系薬よりも低値を示した.2.グラム陰性菌計4回の調査のM.(B.)catarrhalisに対するGFLXのMIC90は0.06μg/mL以下であり,LVFX,TFLXおよびMFLXと同等であった.Citrobacterspp.に対するGFLXのMIC90は,第2回調査で0.5μg/mLと高値であった以外は0.06μg/mL以下であり,上昇を認めなかった.Klebsiellaspp.に対するGFLXのMIC90は,計4回の調査を通じて0.06μg/mL以下であり,LVFXおよびTFLXと同等であった.Serratiaspp.に対するGFLXのMIC90については,0.25.0.5μg/mLであり,上昇を認めなかった.M.morganiiに対するGFLXのMIC90は≦0.06.0.25μg/mLであり,第2回調査におけるMIC90がやや高かったが,他のフルオロキノロン系薬も同様の傾向であった.P.aeruginosaに対するGFLXのMIC90は0.5.2μg/mLで大きな変動はなく,他のフルオロキノロン系薬と同様の傾向であった.また,第4回調査におけるGFLXのMIC90は0.5μg/mLであり,MFLXの2μg/mLより低かった.Pseudomonasspp.に対するGFLXのMIC90についても0.5.1μg/mLであり,他のフルオロキノロン系薬のMIC90とほぼ同等であった.S.paucimobilisについては,第3回調査を除いて収集株数が少なくMIC90は算出していないが,MICrangeは≦0.06.1μg/mLであり,TFLXおよびMFLXと同等であった.S.maltophiliaに対するGFLXの計4回の調査におけるMIC90は1.4μg/mLであり,第2回調査で若干の上昇を認めたが,他のフルオロキノロン系薬と同様に経年的なMIC90の上昇は認められなかった.Acinetobacterspp.に対するGFLXの過去4回の調査におけるMIC90は≦0.06.0.25μg/mLであり,LVFX,TFLXおよびMFLXとほぼ同等であった.H.influenzaeに対するGFLXのMIC90は,計4回の調査を通じて0.06μg/mL以下であり,LVFXおよびTFLXと同等であった.一方,MFLXではMICが0.12μg/mLを示す菌株が認められた.3.GFLXと対象薬剤のMIC値の相関図1に示したとおり,S.aureusに対するGFLXのMIC値は,MPIPCおよびCMXと相関が認められた.MPIPCとの比較では,MSSAとMRSAで等高線パターンが異なり,MSSAではGFLXのMIC値として0.12μg/mL付近の分位点密度がもっとも高く,MRSAでは4μg/mL付近でもっとも高かった.その他の対象薬剤との比較では,GFLXあるいは対象薬剤のいずれかに低感受性である群,両方に低感受性である群の存在が認められた.一方,CNSでは,GFLXのMIC値はMPIPCおよびTOBと相関が認められた(図2).MSCNSおよびMRCNSでは,それぞれGFLXのMIC値と(122) 図1S.aureus(100株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90%して0.12および2μg/mL付近の分位点密度がもっとも高く,等高線パターンはX軸方向に大きく拡がっていた.その他の対象薬剤との比較においても,等高線パターンはX軸方向に拡大していた.図3,4に示したとおり,Corynebacteriumspp.(25株)およびP.aeruginosa(50株)では,GFLXと対象薬剤のMIC値に相関は認められなかった.Corynebacteriumspp.およびP.aeruginosaに対するGFLXのMIC値としては,それぞれ8および0.5μg/mL付近で分位点密度がもっとも高かった.また,Corynebacteriumspp.ではX軸あるいはY軸方向への等高線拡大が認められた一方で,P.aeruginosaでの等高線には拡大が認められなかった.III考按細菌感染症の治療の多くは,病巣の塗抹検鏡から起因菌を(123)予測し,経験的治療(empirictherapy)として抗菌薬の投与が開始される.ついで,培養による起因菌の同定ならびに薬剤感受性の検査結果に基づく抗菌薬の最適化が図られ,標的治療(definitivetherapy)へと移行する.このような治療方針は,外眼部における細菌感染症も例外ではなく,経験的治療としては,広域抗菌スペクトラムを有するフルオロキノロン系薬の点眼剤が汎用されている.1987年のOFLXの登場にはじまり,現在では,第4世代フルオロキノロン4.6)と称されるGFLXおよびMFLXが臨床使用されている.MRSAやMRCNSのGFLXおよびMFLXに対する耐性化は,LVFXおよびTFLXに対する耐性化とは異なり段階的7.9)で,GFLXまたはMFLX感性株のなかにはLVFX耐性株が存在する9).10ヵ年の調査では,GFLXおよびMFLXのMIC90がLVFXに比して若干低く,またGFLXおあたらしい眼科Vol.33,No.6,2016883 図2CoagulaseNegativeStaphylococcus(CNS)(100株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90%よびMFLXのMIC90の推移に明らかな上昇傾向は認められなかったが,MRSAに対する抗菌活性がMRCNSに比べ弱い傾向にあった.また,S.aureusに対するGFLXのMIC値はMPIPCおよびCMXと相関したことから,mecA(MPIPC,CMXなどへの耐性化に関与する遺伝子)獲得株では,同時にgrlA(topoisomeraseIVをコードする遺伝子)およびgyrA(DNAgyraseをコードする遺伝子)に変異を有する確率が高いことが示唆された.さらにEMおよびTOBではMIC90が高かったことから,MRSAが起因菌であると判明した際は,クロラムフェニコールなどの感受性を示す抗菌薬の選択を考慮すべきと考えられた.このほか,分位点密度等高線パターンの検討から,S.aureusは多様な薬剤感受性パターンを示し,第4回調査ではMSSAのなかにフルオロキノロン系薬全般のMIC値が高い株が存在したことから,引き続き注視する必要がある.CNSに対するフルオロキノロン系薬のMIC90は,過去3回の調査においては,いずれもMSCNSに比してMRCNSで高かったが,第4回調査におけるMSCNSおよびMRCNSに対するフルオロキノロン系薬のMIC90は同程度であった.したがって,MSCNSの薬剤感受性動向にも注視する必要があると考えられる.ただし,分位点密度等高線パターンから,GFLXはCMX,EMおよびTOBに比して優秀な抗菌活性を有しているといえる.一方,CNSに対するGFLXのMIC値は,S.aureusと同様にMPIPCおよびCMXと相関(CMXとは弱い相関)するとともに,TOBとも相関した.したがって,GFLX耐性(あるいは低感受性)のCNSでは,(124) あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016885(125)程度であった.グラム陰性菌に対するフルオロキノロン系薬のMIC値は,他の系統の薬剤に比べて低く,耐性化も認められず,優れた抗菌活性を示した.グラム陰性菌のうち,とくに角膜炎の起因菌として重要なP.aeruginosaについても耐性化傾向は認められなかった.また,P.aeruginosaに対して,第4回調査の対象薬剤としたTOBはGFLXと同程度のMIC90を示し,GFLXよりも高感受性の株も存在したことから,P.aeruginosaが起因菌として疑われる場合は,GFLXとTOBの組合せが有効であると考えられた.一方,P.aerugi-nosaの分位点密度等高線パターンは非常に特徴的であり,EMに対しては,全株が感受性を示さないという傾向が認められた.P.acnesは,フルオロキノロン系薬に高い感受性を示し,10ヵ年の調査を通じて感受性の低下傾向はみられなかった.一方,第4回調査のP.acnes全株がEMに対して高い感受性を示したことから,P.acnesが起因菌である場合はEMも有効な選択肢であると考えられた.aac(6’)-aph(2’’)(アミノグリコシドへの耐性化遺伝子)10)を有する確率が高いことが示唆された.S.pneumoniaeに対するフルオロキノロン系薬の抗菌活性はPSSP,PISPおよびPRSPに対して同等であり,PCGに対する耐性度には影響されなかった.また,S.pneumoniaeを含むレンサ球菌属に対してはb-ラクタム系およびマクロライド系が第一選択薬として推奨5)されているが,GFLXは同程度の抗菌活性を示した.Corynebacteriumspp.に対するフルオロキノロン系薬のMICrangeは比較的幅広く,抗菌活性は優秀とは言い難いが,フルオロキノロン系薬のなかではGFLXおよびTFLXのMIC90が低かった.一方,Corynebacteriumspp.に対してもっとも強い抗菌活性を示した薬剤はCMXであり,GFLXのMIC値とも相関しなかったことから,Corynebac-teriumspp.を起因菌とする場合はCMXが最適な選択肢であると考えられた.また,第4回調査の対象薬剤としたEMおよびTOBの抗菌活性については,CMXについでTOBが高く,EMでは低感受性株の存在を認めたがGFLXと同図3Corynebacteriumspp.(25株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90%あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016885(125)程度であった.グラム陰性菌に対するフルオロキノロン系薬のMIC値は,他の系統の薬剤に比べて低く,耐性化も認められず,優れた抗菌活性を示した.グラム陰性菌のうち,とくに角膜炎の起因菌として重要なP.aeruginosaについても耐性化傾向は認められなかった.また,P.aeruginosaに対して,第4回調査の対象薬剤としたTOBはGFLXと同程度のMIC90を示し,GFLXよりも高感受性の株も存在したことから,P.aeruginosaが起因菌として疑われる場合は,GFLXとTOBの組合せが有効であると考えられた.一方,P.aerugi-nosaの分位点密度等高線パターンは非常に特徴的であり,EMに対しては,全株が感受性を示さないという傾向が認められた.P.acnesは,フルオロキノロン系薬に高い感受性を示し,10ヵ年の調査を通じて感受性の低下傾向はみられなかった.一方,第4回調査のP.acnes全株がEMに対して高い感受性を示したことから,P.acnesが起因菌である場合はEMも有効な選択肢であると考えられた.aac(6’)-aph(2’’)(アミノグリコシドへの耐性化遺伝子)10)を有する確率が高いことが示唆された.S.pneumoniaeに対するフルオロキノロン系薬の抗菌活性はPSSP,PISPおよびPRSPに対して同等であり,PCGに対する耐性度には影響されなかった.また,S.pneumoniaeを含むレンサ球菌属に対してはb-ラクタム系およびマクロライド系が第一選択薬として推奨5)されているが,GFLXは同程度の抗菌活性を示した.Corynebacteriumspp.に対するフルオロキノロン系薬のMICrangeは比較的幅広く,抗菌活性は優秀とは言い難いが,フルオロキノロン系薬のなかではGFLXおよびTFLXのMIC90が低かった.一方,Corynebacteriumspp.に対してもっとも強い抗菌活性を示した薬剤はCMXであり,GFLXのMIC値とも相関しなかったことから,Corynebac-teriumspp.を起因菌とする場合はCMXが最適な選択肢であると考えられた.また,第4回調査の対象薬剤としたEMおよびTOBの抗菌活性については,CMXについでTOBが高く,EMでは低感受性株の存在を認めたがGFLXと同図3Corynebacteriumspp.(25株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90% 以上,2004年の発売から10ヵ年にわたって,外眼部感染症分離菌のGFLXに対する感受性について検討した結果,経年的な耐性化傾向は認められなかった.したがって,GFLX点眼薬は現時点においても,外眼部感染症に対して有用であると考えられ,今後も外眼部感染症に対する経験的治療(empirictherapy)の主軸として使用されることに問題はないと考えられる.また,第4回調査の分離菌のうちStreptococcusspp.,Enterococcusspp.,Corynebacteriumspp.およびP.aeruginosaは,他のフルオロキノロン系薬に比してGFLXに高い感受性を示した.このうち,Corynebacteriumspp.は重篤な角膜炎の起因菌11)として,P.aeruginosaはコンタクトレンズ装着に伴う角膜炎の起因菌12)として問題視されている.一方,Streptococcusspp.およびEnterococcusspp.は外眼部感染症の起因菌のみならず,濾過胞感染13)や術後眼内炎14)の起因菌としても重要であることから,GFLXは外眼部感染症に対する経験的治療のほか,周術期管理においても有用な選択肢であると考えられる.しかしながら,近年ではフルオロキノロン系薬耐性菌の出現と増加7,15,16)に加886あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016図4P.aeruginosa(50株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90%え,新しい抗菌薬開発のモチベーションが世界的に減衰17)しており,新規作用機序を有する抗菌薬の登場には時間を要すると考えられる.したがって,現存の抗菌薬に対する耐性菌の拡大を最小化することがきわめて重要であり,さらなる抗菌薬の適正使用の推進が必要と考えられる.適正使用は,適切な抗菌薬の選択に始まる.すなわち,推定起因菌の感受性に関する最新情報18),各抗菌薬の製剤としての特性も考慮し,経験的治療を開始することが非常に重要である.加えて,当該起因菌の薬剤感受性結果に基づく抗菌薬の最適化,投与期間の最短化への介入も重要である19).今回,筆者らは,眼科臨床由来の2005,2007,2009および2014年分離株の感受性について報告したが,引き続き,感受性動向を監視し,最新情報を医療現場と共有していく必要があると考える.文献1)末信敏秀,石黒美香,松崎薫ほか:細菌性外眼部感染症(126) 分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査.あたらしい眼科28:1321-1329,20112)FukudaH,KishiiR,TakeiMetal:Contributionofthe8-methoxygroupofgatifloxacintoresistanceselectivity,targetpreference,andantibacterialactivityagainstStreptococcuspneumoniae.AntimicrobAgentsChemother45:1649-1653,20013)羽藤晋,南川洋子,山田昌和:結膜.から分離されたブドウ球菌に対する二変量ノンパラメトリック密度を用いた薬剤感受性分布解析.あたらしい眼科24:663-667,20074)ChawlaB,AgarwalP,TandonRetal:Invitrosusceptibilityofbacterialkeratitisisolatestofourth-generationfluoroquinolones.EurJOphthalmol20:300-305,20105)井上幸次,大橋裕一,浅利誠志ほか:感染性角膜炎診療ガイドライン第2版作成委員会:感染性角膜炎診療ガイドライン第2版.日眼会誌117:467-509,20136)DuggiralaA,JosephJ,SharmaSetal:Activityofnewerfluoroquinolonesagainstgram-positiveandgram-negativebacteriaisolatedfromocularinfections:Aninvitrocomparison.IndianJOphthalmol55:15-19,20077)McDonaldM,BlondeauJM:Emergingantibioticresistanceinocularinfectionsandtheroleoffluoroquinolones.JCataractRefractSurg36:1588-1598,20108)NoguchiN,OkiharaT,NamikiYetal:Susceptibilityandresistancegenestofluoroquinolonesinmethicillin-resistantStaphylococcusaureusisolatedin2002.IntJAntimicrobAgents25:374-379,20059)星最智:正常結膜.から分離されたメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌におけるフルオロキノロン耐性の多様性.あたらしい眼科27:512-517,201010)MartineauF,PicardFJ,LansacNetal:CorrelationbetweentheresistancegenotypedeterminedbymultiplexPCRassaysandtheantibioticsusceptibilitypatternsofStaphylococcusaureusandStaphylococcusepidermidis.AntimicrobAgentsChemother44:231-238,200011)DasS,RaoAS,SahuSKetal:Corynebacteriumsppascausativeagentsofmicrobialkeratitis.BrJOphthalmol:bjophthalmol-2015-306749PublishedOnlineFirst:13November201512)KondaN,MotukupallySR,GargPetal:Microbialanalysesofcontactlens-associatedmicrobialkeratitis.OptomVisSci91:47-53,201413)YamamotoT,KuwayamaY,KanoKetal:Clinicalfeaturesofbleb-relatedinfection:a5-yearsurveyinJapan.ActaOphthalmol91:619-624,201314)鈴木崇,戸所大輔,小早川信一郎ほか:腸球菌による白内障術後眼内炎の臨床像の検討.日眼会誌118:22-27,201415)EguchiH,KuwaharaT,MiyamotoTetal:High-levelfluoroquinoloneresistanceinophthalmicclinicalisolatesbelongingtothespeciesCorynebacteriummacginley.JClinMicrobiol46:527-532,200816)HooperDC:Mechanismsoffluoroquinoloneresistance.DrugResistUpdat2:38-55,199917)InfectiousDiseasesSocietyofAmerica:The10x’20initiative:pursuingaglobalcommitmenttodevelop10newantibacterialdrugsby2020.ClinInfectDis50:10811083,201018)OliveiraAD,Hofling-LimaAL,BelfortRJretal:Fluoroquinolonesusceptibilitiestomethicillin-resistantandsusceptiblecoagulase-negativeStaphylococcusisolatedfromeyeinfection.ArqBrasOftalmol70:286-289,200719)厚生労働省医政局地域医療計画課:「薬剤耐性菌対策に関する提言」の送付について.事務連絡,平成27年4月1日***(127)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016887