特集●学童の近視進行予防アップデートあたらしい眼科33(10):1435?1441,2016コンタクトレンズによる近視進行予防PreventionofMyopiaProgressionbyContactLenses平岡孝浩*はじめに学童の近視進行予防のストラテジーは,遺伝的アプローチ,薬物的アプローチ,そして光学的アプローチに大別できる.光学的な手法のメリットとして,他の手法よりも安全性が高く(副作用が少なく)比較的容易に導入できることがあげられる.なかでももっとも簡便かつ低年齢から開始できるのは眼鏡装用であるが,これまでの研究結果によれば累進多焦点レンズ(progressiveadditionlens:PAL)など特殊デザインの眼鏡を用いても大きな近視抑制効果が得られていないが現状である.そこで注目されているのがコンタクトレンズ(contactlens:CL)による近視進行抑制である.近年の報告によればオルソケラトロジー(orthokeratology:ortho-k)と多焦点ソフトコンタクトレンズ(multifocalsoftcontactlens:multifocalSCL)の近視進行抑制効果は眼鏡よりも有望であり,大きな可能性を秘めているといっても過言ではない.本稿ではこの2つの手法を中心としてCLによる近視進行予防について概説する.Iコンタクトレンズによる近視進行抑制の試みこれまで半世紀以上にわたり多くの研究者がCLの近視進行抑制効果を検討してきた.さまざまなレンズ素材やデザインが試されているが,まずハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)関しては,近視進行抑制効果を肯定するものと否定するものが混在する.ここで注意すべきは,過去の多くの研究ではスタディデザインの問題が指摘されており,すなわち①適切な対照群が設定されていない,②眼軸長の測定が行われていない,③対象者の脱落率が高い,④16歳以上の症例がエントリーされている,⑤患者の割り付けがランダム化されていない,⑥調節麻痺下での屈折評価がなされていないなどの理由で,報告された結果をそのまま受け入れることがむずかしく,エビデンスレベルとしては低いといわざるを得なかった.SCLに関しては近視進行抑制効果を支持する研究報告はほとんどみられず,むしろ近視進行を促進するという報告もある.また,HCL同様,スタディデザインの問題が指摘されていた.そこでWallineらはSCL,HCLともに上記の問題点を解決すべく大規模なrandomizedclinicaltrial(RCT)を行った1,2).まずSCLに関しては,?1~?6Dの近視を有する8~11歳の学童をリクルートし,SCL群247例と対照眼鏡群237例に無作為に割り付け,3年間の前向き研究を行っている.その結果,SCL群と眼鏡群には有意な屈折変化の差はみられず,眼軸長や角膜曲率にも有意差がみられなかったと報告した1).一方,HCLに関しては,近視度数が?0.75~?4Dである8~11歳の学童をリクルートし,HCL群59例と対照群のSCL群57例に無作為に割り付けて3年間の前向き研究を行っている.その結果,HCL群の近視進行(?1.56±0.95D)はSCL群(?2.19±0.89D)よりも有意に小さかったが,眼軸長変化には両群の差が認められなかった.また,角膜曲率変化に有意差が認められたことから,HCLによる角膜フラット化の影響が最終的な近視進行の差に影響した可能性が高いことを示唆した.つまりHCLに真の近視進行抑制効果は存在せず,HCLを近視進行抑制のツールとして積極的に用いることに警鐘を鳴らした2).以上から,単焦点デザインのSCLやHCLを通常処方(パラレル処方)した場合は近視進行を抑制できない,もしくはきわめて小さい抑制効果しか期待できないという結論に至っている.IIオルソケラトロジーによる近視進行抑制HCLを角膜カーブよりもフラットに処方すると角膜形状変化がもたらされ,その結果として近視が軽減することは1960年代から確認されており,これを意図的に行う手法がortho-kとよばれるようになった(前述したHCLの既報の中には近視進行抑制効果が認められたものが存在するが,意図的・計画的ではなかったにしろortho-k効果により近視進行抑制効果が発現されたと推察される).しかし,当初の手法では単焦点レンズを単純にフラットに処方するだけであったため,達成される近視矯正効果は弱く予測性にも欠けていた.その後,より効果を高めるためのデザイン改良が進み,1980年代に入るとリバースジオメトリーデザインが考案され飛躍的に精度が向上した.さらに高酸素透過性のレンズ素材の開発や角膜トポグラフィーの登場とともにortho-kの手法も洗練され,1990年代後半にはortho-kが本格的に普及するようになった.そして未成年者や学童にも処方されるようになり,本治療を継続していると近視が進みにくくなることが広く経験されるようになった.そして,2004年に初めて学術報告がなされ,片眼のみortho-kを行っていた11歳男児の2年間の眼軸長伸長が僚眼の半分以下(治療眼0.13mmvs僚眼0.34mm)に抑えられていたことが紹介された3).ついで2年間のパイロットスタディが香港と米国で施行され,Choら4)の報告では眼鏡群と比較して46%の眼軸長伸長抑制が達成されており,またWallineら5)の研究ではSCL群と比較して56%も抑制されていることが判明した.しかし,これらのスタディは適切な対照群が設定されておらず,他の報告からの引用データ(historicaldata)を用いて比較しているため,エビデンスレベルは低いといわざるを得なかった.その後,日本やスペインで単焦点眼鏡装用を対照とした非ランダム化比較試験が施行され,Kakitaら6)の報告では日本人において2年間で36%,またSantodomingo-Rubido7)らの白人を対象とした研究では2年間で32%の有意な眼軸長伸長抑制効果が認められた.さらに香港ではChoら8)のグループによりROMIOスタディという初めてのRCTが行われ,ortho-k群は単焦点眼鏡群と比較して2年間で43%の眼軸長伸長抑制が達成されており,より若い年齢(7~8歳)で治療を開始したほうが抑制効果が強く得られることも示唆された.最近ではpartialreductionortho-kといって,強度近視眼に対してortho-kを用いて4Dだけ部分的に近視矯正を行い,残存した近視度数に対して眼鏡を装用させるという研究が行われ,きわめて強い眼軸長伸長抑制効果(63%)が確認されている9).また,TO-SEEstudyと命名された研究では,乱視を有する近視眼を対象としてトーリックortho-kレンズによる2年間の治療効果が検討され,やはり強い眼軸長伸長抑制効果(52%)が報告された10).このように近視進行抑制を目的としたortho-kの適応範囲が近年拡大していることも興味深い.もちろん成長期の眼軸長伸長を完全に抑制することはできないが,これらの既報に基づけば2年間で3~6割程度の抑制効果が期待できるといえる(図1).また,遺伝要因,環境要因が完全に一致している一卵性双生児を対象に行われたTwin研究において,orthokを行った双子Aでは眼鏡使用の双子Bに比べて6カ月後の眼軸長の伸長が大きく抑制され,2年後も維持されていたと報告されている11).さらに2015年には4本のメタ解析(meta-analysis)論文が報告され,いずれも眼軸長の伸長を有意に抑制し,重篤な合併症なく安全性を許容できると結論づけられており,ortho-kの近視進行抑制効果に関するエビデンスは最高レベルまで到達した12~15).これまでの臨床研究はいずれも2年間の報告であったが,5年間へと観察期間を延長した前向き研究も行われており,治療期間が長くなるにつれ抑制効果は減弱する傾向があるが,5年間の長期にわたっても約3割の眼軸長伸長抑制が達成されていることが示された16).III近視進行抑制メカニズム光学的な近視進行抑制メカニズムとして近年広く支持されているのは軸外収差理論である.この理論はSmithらの研究結果に基づいており17),軸外(off-axis)つまり周辺網膜における遠視性デフォーカス(網膜よりも後方で焦点を結ぶために生じる焦点ボケ)が眼軸長延長のトリガーとなる.通常,眼鏡やCLによる矯正では周辺部遠視性デフォーカスが生じるため近視の進行を抑制できない.しかし,ortho-kレンズ装用後は周辺部の角膜形状が急峻化するため,遠視性デフォーカスが改善され,近視の進行が抑制されると考えられている(図2).最近では,コマ収差を代表とする非対称な高次収差成分が眼軸長伸長と相関するとの報告がなされており18),高次収差と近視進行の関連が一つのトピックスとなっている.高次収差は偽調節量の増加や焦点深度の拡大に寄与し,結果として調節負荷を軽減するため眼軸長の伸長が抑制される可能性が示唆されている.近視進行抑制メカニズムの新しい仮説ではあるが,この証明にはさらなる検討が必要である.いずれにせよ,近視の発生や進行のメカニズムはきわめて複雑で単一のメカニズムでは説明できない可能性が高い.多要因が複雑に絡み合っているうえに個々の眼球においてもバリエーションが多いことが,その解明を困難にしていると考えられる.IV多焦点SCLによる近視進行抑制近年,さまざまなタイプの多焦点SCLにおいて近視進行抑制効果が確認されるようになってきた19~22).Sankaridurgら20)は,レンズ光学部の中心3mm領域が通常の遠方矯正度数で,周辺に行くにつれ徐々に加入度数が増し,最周辺部へ向かい+2.00Dまで加入されている多焦点SCLを使用して,中国において7~14歳の近視学童を対象とした12カ月のトライアルを行っている.つまり軸外収差理論に基づき,網膜周辺部における遠視性デフォーカスを改善することにより近視進行抑制を達成しようとする試みである.その結果,単焦点眼鏡の対照群よりも近視進行が34%抑制され,眼軸長伸長も33%抑制されたと報告した.光学的なデザインがまったく異なるSCLにおいても類似もしくはそれ以上の近視進行抑制効果が報告されている.AnsticeとPhillips21)は図3aに示すように中心から周辺に向かって,遠→近→遠→近→遠と交互に2つの度数が配置された2重焦点(bifocal)SCLを用いて,10カ月ごとのクロスオーバー試験を行っている.このレンズを装用すると結像面が網膜とその前方の2カ所に形成される.筆者らは図3bのように遠方視時だけでなく図3cのような近方視時にも網膜面より前方のフォーカスが常に形成されていることが重要であり,これが近視進行抑制の観点から有利であると説明している.この理論は広く受け入れられているとは言いがたいが,近方視時の調節反応を減少させたり,調節ラグによる網膜後方への焦点ボケを軽減する効果も期待できるため,PALで支持されてきた調節ラグ理論に類似していると考えられる.いずれにせよ,Ansticeらは周辺部網膜の関与は重要視しておらず,網膜中心部(on-axis)のフォーカスを網膜面とその前方に形成することで眼球の過伸展および軸性近視の進行を抑制しようとした.その結果,最初の10カ月において,2重焦点SCLを装用した群は,単焦点SCLを装用した対照群よりも近視進行が37%抑制され,眼軸長の伸びは49%も抑制されたことを報告した.本研究では対象者の年齢が11~14歳と比較的高いにもかかわらず,10カ月の短期間でortho-kに匹敵する強い効果が得られており,非常に興味深い.また,軸外収差理論に基づかないメカニズムにより近視進行抑制効果が発現されていることも注目に値する.また,Fujikadoら22)は,低加入度の多焦点SCLを用いて10~16歳の日本人学童34例において近視進行抑制効果を検討している.本研究で使用されたレンズデザインは図4に示すように中心3.25mm領域は遠方矯正度数であり,その周囲を取り囲むように同心円状に累進屈折域が配置され,光学部は全体で直径8mmとなる.しかし,最周辺部でも+0.50Dの加入に留まっており,前述のSCL(+2.00Dの加入)と比較するとかなり小さい加入度の設計となっている.さらに光学部の中心をレンズ中心から鼻側に0.5mmシフトしたデザインであり,瞳孔の鼻側偏位に対応している.そして単焦点SCLを対照とした12カ月のクロスオーバー試験において,低加入度多焦点SCL群では47%の眼軸長伸長抑制効果が認められた.このように明らかに小さい加入度でも同様の近視進行抑制効果が得られていることは大変興味深い.また,本レンズにおいては相対的周辺部屈折(中心と周辺の屈折差)が計測されており,その結果,裸眼状態または単焦点SCLと比較して周辺部の屈折に有意差はみられないとしていることから(図5),軸外収差理論によらない近視進行抑制効果が発現されたと考えられる.筆者らはその機序は不明としているが,低加入度のプラスレンズ効果による近方視時の調節軽減の関与も示唆している.上記に示した多焦点SCLに関する研究報告を解釈するうえで重要なポイントが一つあるが,それは治療継続期間や観察期間が短いことである.Ortho-kの研究では2年間の評価が標準であるのに対して,多焦点SCLの装用継続期間はほとんどが1年以下であることに注意したい.近視進行抑制法の効果は初年度がもっとも大きいことはよく知られており,1年目の結果だけをみると過大評価となってしまう可能性がある.今後,多焦点SCLの研究においては2年以上の装用継続を行ったうえで近視進行抑制効果が判断されるべきであり,そのうえで他の治療法との比較を行う必要がある.V利点と欠点多焦点SCLのメリットは角膜形状変化をもたらさないことと就寝時装用を要しないことがあげられ,通常のSCLとハンドリングやケア方法は変わらないため一般的に受け入れられやすい.しかし,デメリットして,小学生の低学年には処方がむずかしいことがあげられる.なぜなら終日装用のCLは自分で装脱着できる人に処方するのが原則であり,装用中にトラブルが生じても最低限の対処(脱着など)は患者自身に求められるからである.一方,ortho-kは日中装用しないので,装着も脱着も親が家庭で管理できることが強みで,比較的低年齢から開始できるという利点がある.小学校の低学年ではortho-kによる近視進行抑制を行い,高学年になったら多焦点SCLに変更するという使い方も1つのオプションとなるかもしれない.おわりに上述したようにortho-kも多焦点SCLも非常に有望な結果が報告されており,今後の研究の発展が期待される.しかし,それらの近視進行抑制メカニズムは依然として明らかにされておらず,急務の課題であるといえる.より効果的なデザインや手法の開発,そして光学的な近視進行抑制法がさらに普及するためにも真のメカニズムの解明が待たれる.また,最大限の効果を得るための治療開始年齢や継続期間が不明であり,中止後の近視進行抑制効果の戻り(リバウンド)に関してもほとんどわかっていない.さらに他の治療法へ切り替えた場合の効果維持やアトロピン点眼など薬物療法との併用効果も不明である.まだまだ課題は多いのは事実であるが,近い将来に学童近視の予防法が確立され,将来的な強度近視や病的近視が激減することを切に願っている.文献1)WallineJJ,JonesLA,SinnottLetal;ACHIEVEStudyGroup:Arandomizedtrialoftheeffectofsoftcontactlensesonmyopiaprogressioninchildren.InvestOphthalmolVisSci49:4702-4706,20082)WallineJJ,JonesLA,MuttiDOetal:Arandomizedtrialoftheeffectsofrigidcontactlensesonmyopiaprogression.ArchOphthalmol12:1760-1766,20043)CheungSW,ChoP,FanD:Asymmetricalincreaseinaxiallengthinthetwoeyesofamonocularorthokeratologypatient.OptomVisSci81:653-656,20044)ChoP,CheungSW,EdwardsM:Thelongitudinalorthokeratologyresearchinchildren(LORIC)inHongKong:apilotstudyonrefractivechangesandmyopiccontrol.CurrEyeRes30:71-80,20055)WallineJJ,JonesLA,SinnottLT:Cornealreshapingandmyopiaprogression.BrJOphthalmol93:1181-1185,20096)KakitaT,HiraokaT,OshikaT:Influenceofovernightorthokeratologyonaxiallengthelongationinchildhoodmyopia.InvestOphthalmolVisSci52:2170-2174,20117)Santodomingo-RubidoJ,Villa-CollarC,GilmartinBetal:MyopiacontrolwithorthokeratologycontactlensesinSpain:refractiveandbiometricchanges.InvestOphthalmolVisSci53:5060-5065,20128)ChoP,CheungSW:Retardationofmyopiainorthokeratology(ROMIO)study:a2-yearrandomizedclinicaltrial.InvestOphthalmolVisSci53:7077-7085,20129)CharmJ,ChoP:Highmyopia-partialreductionorthok:a2-yearrandomizedstudy.OptomVisSci90:530-539,201310)ChenC,CheungSW,ChoP:Myopiacontrolusingtoricorthokeratology(TO-SEEstudy).InvestOphthalmolVisSci54:6510-6517,201311)ChanKY,CheungSW,ChoP:Orthokeratologyforslowingmyopicprogressioninapairofidenticaltwins.ContLensAnteriorEye37:116-119,201412)LiSM,KangMT,WuSSetal:Efficacy,safetyandacceptabilityoforthokeratologyonslowingaxialelongationinmyopicchildrenbymeta-analysis.CurrEyeRes41:600-608,201613)SunY,XuF,ZhangTetal:Orthokeratologytocontrolmyopiaprogression:ameta-analysis.PLoSOne10:e0124535,201514)SiJK,TangK,BiHSetal:Orthokeratologyformyopiacontrol:ameta-analysis.OptomVisSci92:252-257,201515)WenD,HuangJ,ChenHetal:Efficacyandacceptabilityoforthokeratologyforslowingmyopicprogressioninchildren:ASystematicReviewandMeta-Analysis.JOphthalmol2015;2015:360806.Epub2015Jun1116)HiraokaT,KakitaT,OkamotoFetal:Long-termeffectofovernightorthokeratologyonaxiallengthelongationinchildhoodmyopia:a5-yearfollow-upstudy.InvestOphthalmolVisSci53:3913-3919,201217)SmithEL3rd,KeeCS,RamamirthamRetal:Peripheralvisioncaninfluenceeyegrowthandrefractivedevelopmentininfantmonkeys.InvestOphthalmolVisSci46:3965-3972,200518)HiraokaT,KakitaT,OkamotoFetal:Influenceofocularwavefrontaberrationsonaxiallengthelongationinmyopicchildrentreatedwithovernightorthokeratology.Ophthalmology122:93-100,201519)AllerTA,WildsoetC:Bifocalsoftcontactlensesasapossiblemyopiacontroltreatment:acasereportinvolvingidenticaltwins.ClinExpOptom91:394-399,200820)SankaridurgP,HoldenB,SmithE3rdetal:Decreaseinrateofmyopiaprogressionwithacontactlensdesignedtoreducerelativeperipheralhyperopia:one-yearresults.InvestOphthalmolVisSci52:9362-9367,201121)AnsticeNS,PhillipsJR:Effectofdual-focussoftcontactlenswearonaxialmyopiaprogressioninchildren.Ophthalmology118:1152-1161,201122)FujikadoT,NinomiyaS,KobayashiTetal:Effectoflowadditionsoftcontactlenseswithdecenteredopticaldesignonmyopiaprogressioninchildren:apilotstudy.ClinOphthalmol8:1947-1956,2014*TakahiroHiraoka:筑波大学医学医療系眼科〔別刷請求先〕平岡孝浩:〒305-8575茨城県つくば市天王台1-1-1筑波大学医学医療系眼科0910-1810/16/\100/頁/JCOPY1436あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(50)図1オルソケラトロジー近視進行抑制効果に関する既報の比較列挙したものはすべて2年間の臨床研究であり,対照群(単焦点眼鏡もしくはSCL)との眼軸長変化を比較しているが,いずれの研究においてもオルソケラトロジー群は対照群よりも有意に眼軸長伸長が抑制されており,その抑制効果は32~63%と報告されている.(51)あたらしい眼科Vol.33,No.10,20161437図2眼鏡とオルソケラトロジーの周辺部結像位置の違いa:眼鏡で近視矯正すると,周辺部に遠視性デフォーカス(焦点ぼけ)を生じ,これが眼軸を伸長(近視を進行)させるトリガーとなると考えられている.b:オルソケラトロジー後は角膜中央がフラット化し近視が軽減するが,周辺部角膜は肥厚,スティープ化するため周辺での屈折力が増し,その結果,周辺網膜像での遠視性デフォーカスが改善する.それゆえ眼軸長伸長が抑制され近視が進行しにくくなると考えられている.1438あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(52)図32重焦点SCLのデザインと焦点位置AnsticeとPhillipsは中心から周辺に向かって,遠→近→遠→近→遠と交互に2つの度数が配置された2重焦点(bifocal)SCLを用いて(a),10カ月ごとのクロスオーバー試験を行った.遠方視時(b)だけでなく,近方視時(c)にも網膜面より前方のフォーカスが常に形成されており,これが近視進行抑制の観点から有利であると説明している.(文献21より引用)図4低加入度多焦点SCLのデザインFujikadoらが用いた低加入度多焦点SCLのデザインを示す.中心3.25mm領域は遠方矯正度数で,その周囲を取り囲むように同心円状に累進屈折域が配置され,最周辺部でも+0.50Dの加入度数に留まっている.さらに光学部の中心をレンズ中心から鼻側に0.5mmシフトしたデザインであり,瞳孔の鼻側偏位に対応している.このように明らかに小さい加入度でも近視進行抑制効果が得られていることは大変興味深い.(文献22より引用)(53)あたらしい眼科Vol.33,No.10,20161439図5裸眼,単焦点SCLおよび低加入度多焦点SCL装用時の相対的周辺部屈折の比較縦軸は相対的周辺部屈折(中央と周辺部の屈折差)を示す.横軸は視軸からの角度を示し,中心(0°)から右に行くほど鼻側周辺部となり,左に行くほど耳側周辺部となる.(▲)は裸眼での屈折分布を示し,鼻側,耳側ともに周辺に行くほど相対的周辺部屈折が正方向(遠視方向)に大きくなっている.つまり周辺部は中央に比べて相対的に遠視状態となっていることがわかる.(■)は単焦点SCLを装用した状態である.また(◇)は低加入度多焦点SCLを装用した際の屈折分布である.いすれの装用下でも周辺部は遠視となっており,3群間に有意差はみられなかったと報告されている.(文献22より引用)1440あたらしい眼科Vol.33,No.10,2016(54)(55)あたらしい眼科Vol.33,No.10,20161441