斜視と弱視のABC監修/佐藤美保3.弱視治療の進め方鈴木寛子浜松医科大学医学部眼科学講座視力および両眼視の発達には臨界期があるため,弱視は適切な時期に,適切に治療される必要がある.弱視は原因により屈折異常弱視,不同視弱視,斜視弱視,視覚刺激遮断弱視に分類される.弱視のおもな治療は屈折矯正と健眼遮閉,ペナリゼーションである.弱視の分類に基づき,治療法を以下に解説する.はじめに弱視とは,「視覚の発達期に視性刺激遮断あるいは異常な両眼相互作用によってもたらされる片眼あるいは両眼の視力低下で,眼の検査で器質的病変は見つからず,適切な症例は予防,治療が可能なもの」(植村,1993)とされる.視覚の感受性期間とは,粟屋によると,生後1カ月までの感受性は低く,次第に高くなって1歳6カ月頃がもっとも高く,その後徐々に減衰して8歳までは残存すると説明されている.弱視は視覚感受性のある時期に発見,治療されなければ,生涯視力不良となる.片眼弱視の者は,高齢になって両眼の視力障害におちいる率が正常者の約2倍高いことが疫学研究で示されている2).以上より,弱視は小児期に発見,治療されることが重要となる.弱視の分類弱視は原因により①屈折異常弱視,②不同視弱視,③斜視弱視,④視覚刺激遮断弱視に分類される.①の屈折異常弱視は両眼同程度の屈折異常が原因で起こる.遠視は+2D以上,近視は?3D以下,乱視は2D以上で起こりやすいといわれている.経線弱視も含まれる.②の不同視弱視は屈折に左右差があると発症し,不同視が2D以上あると発症しやすいと考えられている.③の斜視弱視は斜視のために片眼の視力が障害された状態で,交代固視できない場合や交代固視可能であっても左右差がある場合にみられる.④の視覚刺激遮断弱視は,視覚感受性期間内に中心窩における視性刺激遮断が原因で生じる片眼性または両眼性弱視である.片眼性の視覚刺激遮断弱視はとくに予後が不良である.弱視と診断するために必要な検査弱視が疑われる患者が来院した際,視力検査,眼位検査,眼球運動を調べ,細隙灯顕微鏡で対光反射,前眼部・中間透光体の観察を行ったのち,必ず塩酸シクロペントラートまたは硫酸アトロピンを用いた調節麻痺下屈折検査を行う.これらの点眼には瞳孔散大効果もあるため,同時に眼底検査も行い,屈折検査とともに器質的疾患がないかを確認する.内斜視のある未就学児では,硫酸アトロピンによる調節麻痺下屈折検査を行う.硫酸アトロピンは2~3週間効果が持続する.就学児では学業に支障を生じないよう,塩酸シクロペントラートによる調節麻痺下屈折検査を行うことが多い.塩酸シクロペントラートの効果は1~2日で消失するためである.本誌前項に「弱視と間違われやすい眼疾患」について記載されているので,参照いただきたい.弱視の治療弱視治療の基本は屈折矯正と,健眼遮閉,ペナリゼーション法である.眼鏡処方を考える屈折異常は,年齢や斜視の有無,不同視差の程度によって異なる(表1)1).視力検査ができないような低年齢児や発達遅滞児では,基準に該当する場合は積極的に眼鏡装用させる.弱視の分類ごとに治療法を述べる.①屈折異常弱視調節麻痺下屈折検査に基づき屈折矯正を行う.5歳未満では+3.00D以上の遠視眼に対して低矯正すると,調節性内斜視が発生する危険性があるため,調節麻痺下屈折検査で得られた屈折値で完全矯正し,眼鏡処方する.5歳以上であれば視力検査でもっとも見やすい度数で処方する.PediatricEyeDiseaseInvestigatorGroup(PEDIG)は,両眼性の屈折異常弱視について,+4D以上の遠視の3~10歳までの小児に対する治療効果は,大部分の10歳以下の症例で1年以内に視力が0.8以上に改善し,弱視のなかでは予後は比較的良好であると報告している.②不同視弱視調節麻痺下屈折検査を行い,基本的には得られた値で眼鏡処方し,眼鏡を常用するようにする.PEDIGは視力20/40~20/100である3~7歳の未治療の不同視弱視において,77%は屈折矯正のみで2line以上視力改善し,27%は屈折矯正のみで完治したと報告している.眼鏡装用開始後4カ月間は眼鏡装用のみで治療し,視力の向上が停滞した場合に健眼遮閉を開始することが勧められているが,重症な弱視や年齢の高い小児では早くから健眼遮閉を開始することもある.遮閉法にはさまざまあるが,現在は健眼にパッチを貼付し,弱視眼を積極的に使わせる健眼遮閉が一般的である.中等度(視力0.2~0.6程度)の弱視では,健眼遮閉は1日2時間から開始し,6~12週間隔で視力検査および遮閉が指示通りできているかの確認を行い,遮閉時間を増減する.遮閉による副作用として健眼弱視や斜視の発症があるため,同時に確認していく.視力が上昇し,遮閉を中止する場合,急に中止すると弱視が再発する可能性があるため,漸減しながら中止する.皮膚が弱くパッチを直接皮膚に貼ることができない児やパッチを貼ることを嫌がる児には,眼鏡にかぶせるタイプの布パッチ(図1)や,バンガーターフィルム(眼鏡レンズに貼付する半透明のオクルーダー),健眼のアトロピン点眼によるペナリゼーションを行うこともある.アトロピンペナリゼーションを行う場合は,週に2回,アトロピンを健眼に点眼する.健眼が近視の場合や屈折異常の左右差が大きすぎると効果が少ないといわれている.問題点として健眼の弱視化,羞明がある.アトロピン点眼中は視力検査をしっかり行い,弱視眼の視力の観察とともに健眼の弱視化を防ぐことが重要である.遮閉治療で重要なことは,いかにコンプライアンスを上げるかということである.コンプライアンスをあげる工夫としては,パッチにかわいい絵を描く,絵のついたかわいいパッチを買う(図2),パッチをしている間はゲームができることにする,どれだけ健眼遮閉ができたかを日記につけモチベーションをあげる,などを当院では行っている.③斜視弱視斜視弱視の中にも不同視や屈折異常を伴うものもあるので,外斜視であればサイプレジン,内斜視であればアトロピンを用いた調節麻痺下屈折検査を行う.屈折異常があれば眼鏡を処方する.眼鏡を装用しても斜視が不変または残存する場合は健眼遮閉を行い,中心固視の獲得と視力発達をめざす.先天内斜視では早期手術が勧められているが,それ以外の斜視では,斜視治療に先立って弱視治療を行うのが原則である.④視覚刺激遮断弱視原因には先天白内障,角膜混濁,角膜輪部皮様?腫,眼瞼苺状血管腫,眼瞼下垂などがある.軽度な場合は屈折矯正と健眼遮閉で視力が改善する場合があるが,まずは原因を除去し,その後,屈折矯正・健眼遮閉を行う.ただし,白内障や角膜混濁の軽度なものでは,原疾患を手術治療するか否かの判断のために,屈折矯正と健眼遮閉を行うことがある.眼瞼下垂では顎上げをして両眼視をしていれば,視覚刺激遮断弱視よりも屈折異常弱視あるいは不同視弱視の危険が高い.4つの弱視のなかでは,治療抵抗性で一番予後不良であり,とくに片眼性はもっとも予後が悪い.治療開始が臨界期を過ぎている場合視覚感受性の臨界期は8歳頃といわれているが,臨界期以降または成人であっても視力が向上する可能性はあるため,9歳以降の未治療の弱視に対しても治療をあきらめず,屈折矯正および健眼遮閉を試みるべきである.文献1)AmericanAcademyofOphthalmologyPediatricOphthalmologyandPreferredPracticePattern:Amblyopia.AmericanAcademyofOphthalmology,SanFrancisco,2012(71)あたらしい眼科Vol.33,No.11,201616090910-1810/16/\100/頁/JCOPY表1乳幼児の屈折矯正のガイドライン(AmericanAcademyofOphthalmology,2012)屈折異常0~1歳1~2歳2~3歳両眼性近視≧?5.00≧?4.00≧?3.00遠視(斜視のない)≧+6.00≧+5.00≧+4.50遠視(斜視のある)≧+3.00≧+2.00≧+1.50乱視≧3.00≧2.50≧2.00不同視近視≧?2.50≧?2.50≧?2.00遠視≧+2.50≧+2.00≧+1.50乱視≧2.50≧2.00≧2.00(文献1より引用)図1布製の遮閉具による健眼遮閉図2柄つき遮閉具1610あたらしい眼科Vol.33,No.11,2016(72)