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My boom 43.

2015年8月31日 月曜日

監修=大橋裕一連載.MyboomMyboom第43回「高橋秀徳」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)連載.MyboomMyboom第43回「高橋秀徳」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)自己紹介髙橋秀徳(たかはし・ひでのり)自治医科大学眼科2001年に東京大学医学部を卒業し眼科に入局しました.玉置泰裕先生・柳靖雄先生の黄斑外来で1年目からマウス眼底にレーザーをひたすら打っていました.中学校・高校時代は生物部で動物実験が好きでのめり込みましたが,研究は考えていませんでした.大学院も黄斑外来で,9年目からJCHO東京新宿メディカルセンターに移りました.藤野雄次郎先生のご指導で手術を自由にさせていただき,それまで親の希望で工学部志望を変えたことを後悔していたのが眼科を天職と感じていることに気づき,石の上にも三年というが自分は15年だったなと思ったものです.その後,川島秀俊先生の自治医科大学で講師を務めております.臨床のMyboom自治医大に異動して驚いたのは,硝子体内注射を入院して手術室で行うことが義務づけられており,週4件しかできず2カ月待ちだったことです.前職では診療当日注射が当たり前で,それで良好な予後が得られていましたから,栃木県の加齢黄斑変性患者があまりにも可哀そうで,1年かけて外来注射を導入しました.交渉に交渉を重ね泣かされたときもありましたが,徐々に枠を広げ,現在では病院の事情で当日注射を断ることはなくなっています.(95)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY研究のMyboom外来注射導入で問題になったのは外来業務が増えてしまうことです.増やすからには根拠が必要です.私個人の意見ではエビデンスレベル6で根拠になりません.厳密には前向き研究が必要ですが,治療途中で待たせるとどうなるかの先行研究がなかったため,後ろ向きで構わないので自分達で研究する必要がありました.カルテ調べを進めるうちに教授や病院長の後押しで外来注射自体は導入されました.しかし,自治医大の医療圏は人口たかだか100万人です.世界には70億の人口があり,自分の施設だけ頑張っても何の意味もありません.カルテ調べの結果をまとめ,注射を待たせると視力予後が悪化することを英語で発表しました(Retina.2015Feb24).プライベートのMyboomそこで再び問題になっているのが業務の増加です.多忙になると判断を誤ることは,心理学上の多数の研究で,もはや常識となっています.専門外の眼科学者としては自分の感覚,精神論で勝手に否定するわけにはいきません.多忙をどうするか,ここでプライベートのMyboomが生きました.元々私は中古品を売るとき箱がなくて買い叩かれるのが嫌で,すべての箱を保管していました.引越でトラックに入りきらず引越業者に迷惑をかけたとき,我に返って家賃と家の体積と箱の体積から保管コストを計算したところ,買い叩かれるより多くの保管コストがかかっていることがわかりました.捨ててより小さい家に引っ越したほうが安上がりなのです.全部捨てました.その他すべての物一つひとつに取っておく理由とコストを問い,多くを捨てています.後にそれは断捨離とよばれるあたらしい眼科Vol.32,No.8,20151161 写真自治医大黄斑外来の仲間とようになりました.あるとき白内障手術でハンドピースを準備していたところ藤野先生に叱られました.消毒が入替のボトルネックなんだから先に消毒しろと.目から鱗でした.執刀時間がいくら短くても入替時間が長ければ仕事量(手術件数)が制限されるのです.時間もコストベネフィットで見ると自分の日々の時間のほとんどが無駄と分かりました.以来,物とともに時間の断捨離もMyboomですが,かのピーター・ドラッカー(1909.2005年)もこういっています.「私の観察によれば,成果をあげる者は仕事からスタートしない.時間からスタートする.計画からもスタートしない.何に時間がとられているかを明らかにすることからスタートする.次に,時間を管理すべく自らの時間を奪おうとする非生産的な要素を退ける」たとえば白内障の手術は年数百件になり,定型的です.右の手術と決まったら病名や点眼も当然右なのに,いちいち右と入力させ直すシステムがまだ多いでしょう.その都度貴重な時間と限りある人間の認知・決断資源が奪われ,入力ミスの温床にもなります.同期で電子カルテ自動化のエキスパートの峰村健司先生に教えていただきながらシステムを作りました.結果,片眼白内障手術紹介患者に対し,初診日117クリックで入院中のパスも完成して帰宅させられるようになりました.それまでは手術紹介があるたびに外来が30分程度ストップし,その間患者を横に座らせたまま入力ミスしないように画面ばかり見ていたのが,10分程度で終わるようになったのです.患者の待ち時間も減りますし,我々も外来を早く切り上げて手術や研究に打1162あたらしい眼科Vol.32,No.8,2015ち込むことができます.この改善方法はフレデリック・テイラー(1856.1915年)の「科学的管理法」そのものであり,21世紀の今となっては常識となっているようです.ところが私が非常勤になって電子カルテ管理をやめたら,少しずつ無駄なクリックやスクロールが増えていきました.作成する書類数は同じなのに数秒,1分と余計に時間がかかるようになりました.年500件として500分あったら何ができるでしょう?指摘するとそういえば何か最近面倒だと思っていた,と返事はあるものの一向に改善されません.組織として合理精神がないからだと気づきました.継続がなければカイゼンも意味がありません.そこで,トップが何度代替わりしても成果を上げ続けている組織がどのようにしているか調べました.世界でもっとも安全な自動車をもっとも安く作って年間2兆円の利益を上げているトヨタ自動車が,今一番のお手本だと思います.トヨタ生産方式には在庫を最小にするカンバンなど色々ありますが,形だけ導入しても効果が出ません.何のために在庫を最小にするのかがわかっていないとダメなのです.電子カルテでいえば,クリック一つ減らしたために,たとえば事務員に余計な作業を発生させて全体の流れが却って滞ってはいけないのです.研究や手術といったその施設にとっての本質的な仕事を明らかにして,それを阻害する非生産的な要素を絶え間なく徹底的に排除する文化が必要.私自身電子カルテ操作を若手に頼むことが増えて現状に疎くなったので,本質が何か,マネジメントとは何かだけを語り,具体的なカイゼン活動は若手に任せることにしました.この原稿を書いた日も医局会で若手からカイゼン提案があり,彼らが本質的な仕事を続けた先に何があるか,将来が楽しみです.次のプレゼンターは宮崎の子島良平先生(宮田眼科病院)です.以前は毎年宮田眼科病院に研修を兼ねて1週間お邪魔しており,子島先生には診療でも研究でもプライベートでも毎回お世話になりました.よろしくお願いします.注)「Myboom」は和製英語であり,正しくは「Myobsession」と表現します.ただ,国内で広く使われているため,本誌ではこの言葉を採用しています.(96)

硝子体手術のワンポイントアドバイス 147.眼内レンズ毛様溝逢着術後の眼内炎(中級編)

2015年8月31日 月曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載147147眼内レンズ毛様溝縫着術後の眼内炎(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●眼内レンズ毛様溝縫着術後眼内炎の臨床的特徴通常の白内障術後細菌性眼内炎は術後早期に発症することが多いのに対して,眼内レンズ毛様溝縫着術後の眼内炎は術後晩期(数カ月~数年)に発症する例が多い.ただし,いったん発症すると急激に進行し,高度の前房内炎症,フィブリン析出,前房蓄膿,硝子体混濁をきたす.診断のポイントは強膜縫合糸が露出してその周囲に高度の充血や微小膿瘍を伴っている点である.眼痛も通常の白内障術後眼内炎より強いことが多い.過去の報告では強膜弁を作製せずに強膜に直接縫合したため,プロリン糸が結膜から露出して感染をきたした例が圧倒的に多い.●症例自験例を1例提示する.67歳,男性.7年前に左眼の白内障手術を施行され,その際にZinn小帯断裂を生じ,眼内レンズ縫着となった.2週間前から急激な視力低下と眼痛が出現し当科を受診.鼻側の強膜縫合糸が結膜から露出しており,周囲に著明な充血と微小膿瘍を認めた(図1).前房内フィブリン析出,硝子体混濁を認め,著明な眼痛と眼圧上昇を伴っていたため硝子体手術を施行した.鼻側は三角形の強膜弁が作製してあったが,やや小さめでその間から縫合糸が露出し,周囲の強膜は軽度の融解壊死を生じていた(図2).この部位で縫合糸を切断して,上方の強角膜層から眼内レンズを摘出した.眼内レンズループの縫合糸周囲にはフィブリン膜と膿瘍形成を認めた(図3).その後,混濁した硝子体を周辺部まで切除した.眼底には網膜出血と網膜血管の白鞘化を認めた(図4).術後,炎症は軽減したが,眼圧上昇が続いている.●眼内レンズ毛様溝縫着術時の注意点本合併症を回避するためには,眼内レンズ毛様溝縫着図1術前の左眼細隙灯顕微鏡所見鼻側に結膜から露出したプロリン糸を認める.図2術中所見(1)鼻側は強膜弁が作製してあったが,小さめで創間から縫合糸が露出していた.図3術中所見(2)眼内レンズループの縫合糸周囲にはフィブリン膜と膿瘍形成を認めた.図4術中所見(3)眼底には硝子体混濁に加えて網膜出血と網膜血管の白鞘化を認めた.術時に必ず強膜弁を作製し,縫合糸を結膜に露出させないことがなにより重要である.また,上記の自験例のように強膜半層弁を作製していても,それが小さいために,強膜創の間から縫合糸が露出することもあるので,強膜弁は十分な大きさが必要である.筆者は三角形ではなく,緑内障濾過手術のように四角形の強膜弁を作製し,縫合糸を確実に弁下に埋没するようにしている.最近は縫合糸を用いない強膜内固定が普及してきているが,創が緩開しないように留意する必要がある.●硝子体手術時の眼内レンズ摘出の是非過去には眼内レンズを温存できたとする報告もあるが,自験例でもわかるように眼内の縫合糸周囲には膿瘍を形成していることも多く,また縫合糸を抜去しないと眼痛を軽減させることはむずかしいので,眼内レンズは思い切って摘出したほうが無難である.(93)あたらしい眼科Vol.32,No.8,201511590910-1810/15/\100/頁/JCOPY

眼科医のための先端医療 176.萎縮型加齢黄斑変性の発症メカニズムと治療の可能性

2015年8月31日 月曜日

監修=坂本泰二◆シリーズ第176回◆眼科医のための先端医療山下英俊萎縮型加齢黄斑変性の発症メカニズムと治療の可能性平野佳男(名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学)はじめに萎縮型加齢黄斑変性では,黄斑部の網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)細胞が徐々に萎縮して不可逆的に変化し,視力低下をきたします.筆者らのグループは,萎縮型加齢黄斑変性患者の網膜色素上皮細胞で,DICER1という酵素の発現低下と,それに伴うAluRNAの過剰蓄積がRPE細胞の細胞死を引き起こしている可能性について報告しました1).今回は,そのメカニズムの解明とそこから考えられる治療法の可能性について紹介します.AluRNAはTLRsやRNAsensorで認識されない生体防御においてもっとも重要なのは病原体などの異物を排除する免疫で,自然免疫と獲得免疫がありますが,まずは自然免疫が働きます.自然免疫は病原体に特有の成分をパターン認識受容体(patternrecognitionreceptors:PRR)で感知し,炎症性サイトカインを産生し,その排除を行います2).筆者らはRPE細胞内で過剰に蓄積したAluRNAがこのPRRで感知されるのではないかと考えました.PRRはその存在様式によって大きく2種類に分けられます.ひとつは細胞外の病原体を認識するTLRs(Toll-likereceptors)で,もうひとつは細胞質で働くRLHs(rRIG-I-likehelicase)ファミリーやNLR(NOD-likereceptors)ファミリーです3).筆者らはAluRNAという一本鎖と二重鎖をもつRNAを認識する見張り役を見つけるために,TLRsやRLHsを含めたさまざまなRNAsensorを調べましたが,関与は否定的でした4).AluRNAがNLRP3インフラマソームを活性化するインフラマソームは細胞質内の病原微生物や尿酸などの結晶を認識して活性化する蛋白質の複合体で,炎症性サイトカインを活性型へ誘導することで炎症応答を惹起します5).代表的なものに,NLRP3(NLRfamily,pyrindomaincontainingprotein3),PYCARD(PYDandCARDdomaincontaining),Caspase-1よりなるNLRP3インフラマソームがありますが,筆者らはAluRNAがこのNLRP3インフラマソームを活性化することをマウスやヒトRPE細胞による実験で発見しました4).NLRP3インフラマソームは通常,マクロファージや樹状細胞などの免疫担当細胞でおもに機能すると考えられていますが,Cre-loxPシステムを用いた筆者らの実験では,RPE細胞でも機能していることが確認できました4).また,最近の研究で,NLRP3インフラマソームの活性化にはミトコンドリアが重要な役割を果たしていることが報告6)されていますが,筆者らの実験系でもAluRNAの蓄積がミトコンドリアを傷害し,ミトコンドリア由来のROS(ReactiveOxygenSpecies)がNLRP3インフラマソームの活性化を誘導することを見いだしました4).AluRNAによる細胞死はMyD88とIL.18を介するインフラマソームは活性化されると,IL-1bやIL-18が成熟型となり,細胞外に分泌され,炎症反応や好中球の遊走を誘導します.また,これらIL-1ファミリーを認識する受容体はMyD88(myeloiddifferentiationprimaryresponse88)という細胞質内にあるアダプター因子と会合し,NF-kBに至るシグナル伝達経路を活性化し7),炎症の促進やアポトーシスに関与します.この経路において,MyD88とIL-18がAluRNAによる細胞死に関与していることが判明しました4).これは萎縮型加齢黄斑変性を有するヒトRPE細胞でも同様の結果でした.また,RPE細胞特異的にMyD88をノックアウトしたコンディショナルノックアウトマウスの実験でも同様の結果が得られ4),これらがRPE細胞内で起こっていることが証明されました.これらの結果より,AluRNAがRPE細胞の細胞死を引き起こすメカニズムとして図1に示すようなものが考えられました.(89)あたらしい眼科Vol.32,No.8,201511550910-1810/15/\100/頁/JCOPY 図1萎縮型加齢黄斑変性の発症メカニズム(文献4より改変)IL-18receptorMyD88InflammasomecomplexformationIRAK4IRAK1MatureIL-18RPEdegenerationGeographicatrophyAluRNADICER1PYCARDNLRP3Pro-Casp-1Pro-IL-18IL-18receptorMyD88InflammasomecomplexformationIRAK4IRAK1MatureIL-18RPEdegenerationGeographicatrophyAluRNADICER1PYCARDNLRP3Pro-Casp-1Pro-IL-18萎縮型加齢黄斑変性に対する治療への応用これらの結果は,萎縮型加齢黄斑変性の発症メカニズムの解明のみならず,新たな分子標的治療薬の開発につながる可能性を秘めています.文献1)KanekoH,DridiS,TaralloVetal:DICER1deficitinducesAluRNAtoxicityinage-relatedmaculardegeneration.Nature471:325-330,20112)TakeuchiO,AkiraS:Patternrecognitionreceptorsandinflammation.Cell140:805-820,20103)AkiraS,UematsuS,TakeuchiO:Pathogenrecognitionandinnateimmunity.Cell124:783-801,20064)TaralloV,HiranoY,GelfandBDetal:DICER1lossandAluRNAinduceage-relatedmaculardegenerationviatheNLRP3inflammasomeandMyD88.Cell149:847859,20125)AksentijevichI,KastnerDL:Geneticsofmonogenicautoinflammatorydiseases:pastsuccesses,futurechallenges.NatRevRheumatol7:469-478,20116)SubramanianN,NatarajanK,ClatworthyMRetal:TheadaptorMAVSpromotesNLRP3mitochondriallocalizationandinflammasomeactivation.Cell153:348-361,20137)MuzioM,NiJ,FengPetal:IRAK(Pelle)familymemberIRAK-2andMyD88asproximalmediatorsofIL-1signaling.Science278:1612-1615,1997■「萎縮型加齢黄斑変性の発症メカニズムと治療の可能性」を読んで■加齢黄斑変性は,滲出型と萎縮型に大きく分けられ縮型加齢黄斑変性は,滲出型に比べあまり研究が進んます.滲出型加齢黄斑変性の治療成績は,抗血管内皮でいませんでしたが,滲出型の治療に一定の目途が立増殖因子(VEGF)薬の登場により,大幅に向上しまった現在,多くの研究者がこの分野に参入して,しのした.さらなる新薬も開発されつつあり,研究が一定ぎを削っています.そのなかで,今回取り上げられての成果を上げている分野であるといえます.一方,萎いるAmbati博士のグループは,きわめて重要な結果1156あたらしい眼科Vol.32,No.8,2015(90) を報告し続けています.萎縮型加齢黄斑変性は加齢に加齢黄斑変性眼でも証明した点です.脳や他臓器にともなって徐々に進行することから,細胞恒常性維持も,同じメカニズムによって引き起こされる加齢性・機構のなんらかの破綻が原因であろうことは推測され慢性疾患は存在するでしょう.しかし,病変部位を細ていました.しかし,加齢性変化はほとんど無数に存胞レベルで特定することがむずかしく,ヒトの疾患で在するので,まさに雲をつかむような状態だったとい証明することはきわめて困難だと推測されます.それえます.今回,平野先生が本文で述べられている,に比べて,眼球においては,病変部位や細胞を同定すDICER1の活性低下によってAluRNAが蓄積して網ることはきわめて容易です.このことが,細胞レベル膜色素上皮に障害を及ぼすというメカニズムは,萎縮の発見をヒトの疾患に結びつけることに成功した大き型加齢黄斑変性の病態を合理的に説明することができな要因だといえます.世界中の多くの研究者が「眼のるものです.それだけでなく,これは眼科のみならず研究」に注目しているのは,このような理由もあるの全身臓器の老化研究においても,まったく新しい発見ではないでしょうか.でした.とくに素晴らしいのは,これをヒトの萎縮型鹿児島大学医学部眼科坂本泰二☆☆☆(91)あたらしい眼科Vol.32,No.8,20151157

新しい治療と検査シリーズ 227.フェムトセカンドレーザーを用いた白内障手術

2015年8月31日 月曜日

新しい治療と検査シリーズ227.フェムトセカンドレーザーを用いた白内障手術プレゼンテーション:永原國宏聖母眼科コメント:井上賢治井上眼科病院.バックグラウンドフェムトセカンドレーザー(以下,FSL)白内障手術器械にはLASIKのフラップを作製するFSL器械を発展させて作られたものと,開発当初から白内障手術を目標に開発されたものと2種類がある.前者にはLenSX,Victus,LDVZ8があり,後者にはCatalysとLensARがある.このうちLensARはまだ国内には存在しない.筆者は2012年,Catalysを販売されると同時に導入し,白内障手術,とくにプレミアム眼内レンズ(以下,IOL)を挿入するときに使用している..新しい手術方法前.切開,水晶体核の分割,ソフトニング,自己閉鎖角膜切開,サイドポート,そしてLRI作製までは,FSL白内障手術器械が施行してくれる.それ以後の手技はどの器械も術者が手術しなければならない.FSL白内障手術を安全に確実に行うためには,眼球と器械の確実なドッキングと水晶体の正確な前眼部の詳細なイメージングが大切である..ドッキングCatalysのドッキングはliquidopticsinterface(LOI)を用いて行う.LOIは円錐形をした吸引リングとレンズからなり,その間に液体(BSSPlusR)を入れドッキングを行う.LOIの利点はドッキングによる眼圧の上昇がわずかであること,角膜を圧迫し歪みを起こすことがないので,FSLにより確実に前.切開,水晶体核のソフトニングを行うことができることにある..イメージングCatalysにはspectraldomeinOCTが搭載されており,ドッキング完了後20秒前後で鮮明な前眼部OCT画像,(87)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY図1OCT終了後,右の赤い部分がセーフティーマージン左はFSL照射パターンを表示した画面.そして同時にレーザー処理計画とセーフティーマージンが表示される(図1)..セーフティーマージン前.切開はFSLを円筒形に照射して完成させる.円筒のもっとも高い位置は,必ず角膜内皮面からは500μm離れるように設定されている.変更できるのは円筒の高さで,前.の位置を中心として200~1,000μmの間で変えることができる.水晶体の分割,ソフトニング時の水平方向のセーフティーマージンは虹彩縁から500μm離れたところに設定されており,それ以上のレーザー照射はできない.垂直方向は前.側200~1,000μm,後.側500~1,000μmの間でセーフティーマージンを変更できる.あまり前.近くまでレーザーを照射してしまうと前.切開に影響を及ぼし,後.にあまり近すぎると後.破損の原因になる可能性もある..分割およびソフトニングパターンCatalysには3つの分割パターンと4つのソフトニンあたらしい眼科Vol.32,No.8,20151153 LensSegmentation:Quadrants(2intersectinglines)LensSegmentation:Sextants(3intersectinglines)LensSegmentation:Octants(4intersectinglines).「フェムトセカンドレーザーを用いた白内障手術」へのコメント.私はLenSXを用いてFSL白内障手術を行ってい成績がとくに優れているわけではない.手術時間も従る.FSL白内障手術の利点は,意図した前.切開が来の白内障手術と比べて長くなる.さらに機器は高額できること,水晶体摘出術での超音波発振時間を短縮でメンテナンス費用もかかる.また,保険診療ではなできることである.つまり術後のIOL固定を確実にく自費診療となり,患者の負担も大きい.患者の負担し,それによりIOLの機能を最大限に発揮できるこが大きいがゆえに,術者の手術時の緊張感は増大すと,超音波による角膜内皮への損傷を軽減し,安全性る.これらを考え合わせると,FSL白内障手術は現を向上させることである.その結果,手術に対する術時点では全症例が適応ではなく,白内障手術のバリ者の負担は軽減する.しかし,従来の白内障手術も十エーションのひとつとしての位置づけである.分に完成された術式であり,FSL白内障手術の術後☆☆☆LensSoftening:QuadrantsLensSoftening:SextantsLensSoftening:OctantsQuadrants:Complete図2右下(赤丸)が筆者が使用しているソフトニングパターングパターンがある(図2).自分の核の処理方法に合ったパターンを選べばよいが,FSLのスポットの直径(10μm)から適切なスポット間隔を選択することにより,超音波エネルギー使用を少なくすることができるようになる.筆者は現在すべてquadrantcomplete(300μm)を使用している..手術方法円錐形の吸引リングで眼球を吸引,BSSPlusRをリングの中に入れ,ベッドを移動させレンズの下に吸引リングを持ってきた後はベッドにロックをかける.眼球に吸引したリングの位置をベッドに付いたジョイスティックを操作し,眼球に吸引したリングを上に移動させドッキングを完了させる.ドッキングが完了すると自動的にOCTによるイメージングが始まる.イメージングが終了するとあらかじめ設定しておいたFSL照射パターンが表示され,フットスイッチを踏めばFSL照射により前.切開,核のソフトニングが始まっていく.筆者は自己閉鎖創,サイドポート作製はメスで行っている.FSL照射の終了後は手術顕微鏡の下に移動し,メスで切開創を作製し,前.摘出する.FSLを照射すると必ずガスが発生する.水晶体の下に発生したガスがあまり多いと,手術操作もやりにくくなるし,吸引してしまうとサージの原因となるため,水晶体吸引を始める前にガスを吸引除去しておいたほうが安全である..本方法の利点現時点でFSL白内障手術の最大の利点は再現性のある前.切開ができることで,Tinn小帯にほとんど負荷をかけることなく白内障の吸引ができる.これらは術後のIOL偏位がほとんどなく,多焦点レンズを挿入する場合には有効であること,また調節型IOLを使用する場合には必須になってくると思われる.1154あたらしい眼科Vol.32,No.8,2015(88)

眼瞼・結膜:結膜弛緩症の症状と所見

2015年8月31日 月曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人7.結膜弛緩症の症状と所見田聖花東京歯科大学市川総合病院眼科結膜弛緩症は中高年の眼不快感の原因となりやすく,頻度の高い症状は,異物感,間欠性流涙,繰り返す球結膜下出血である.一方で,涙液動態を障害する原因ともなり,BUT短縮型ドライアイや角膜上皮障害を引き起こすこともある.点眼治療が奏効しない場合は,外科的切除を考慮する.●はじめに結膜弛緩症は,球結膜の弛緩により下眼瞼に沿って余剰結膜が皺になってたまるという現象を生じる(図1).加齢によるものが大半である.なぜ球結膜が弛緩するのかは明らかになっていないが,Tenon.が上強膜からはずれるためではないかと考えられている.結膜弛緩症はしばしば中高年の眼不快感の原因となる.頻度の高い症状は,違和感あるいは異物感,間欠性流涙,繰り返す結膜下出血である.●異物感異物感は,瞬目のたびにアコーディオンのように弛緩結膜が動くために生じる.結膜弛緩が角膜に乗り上がるくらい丈の高い症例で起こりやすい.瞬目や眼球運動に伴う摩擦によって球結膜上皮障害が生じることもあり,フルオレセインやリサミングリーンで染色するとより明らかとなる(図2).涙液減少型ドライアイ合併例では,こういった上皮障害がより強くなる.●涙液動態の障害結膜弛緩症は下眼瞼の涙液メニスカスを占拠するため,涙腺から分泌された涙が涙点へ流れていく動きや,瞬目による涙液の眼表面への広がりなど,涙液動態に悪影響を及ぼす.本来,下方の涙液メニスカスは角膜の輪部に近いところに存在するが,結膜弛緩症の程度が強いと,より角膜中央に近いところにメニスカスが形成される.涙液メニスカスのすぐ上は涙液層が薄くなる物理特性があるため,結膜弛緩症ではこの涙液層菲薄化部分が角膜のより中央に存在することになり,涙液層の破綻が生じやすく,涙液層破壊時間(tearfilmbreakuptime:BUT)の短縮をきたすことが多い.涙液減少型ドライアイ合併例では,この部分が角膜上皮障害の好発部位となる(図3).加齢によって涙液分泌量は減るため,中高年では涙液減少型ドライアイを合併した結膜弛緩症が多い.難治性の角結膜上皮障害では,病態の形成に結膜弛緩症の関与も疑う必要がある.図1典型的な結膜弛緩症図2下方球結膜がリサミングリーンで染色されている(85)あたらしい眼科Vol.32,No.8,201511510910-1810/15/\100/頁/JCOPY 図3結膜弛緩症のすぐ上で涙液層の破綻が生じ,角膜上皮障害がみられる図5図4に対し,弛緩結膜の外科的切除を行った●間欠性流涙弛緩結膜が耳側・鼻側の両サイドに多い例や,鼻側にとくに多く涙点を塞いでいるような例では,間欠性流涙を訴える.図4では,両サイドの弛緩結膜に阻まれるように中央の涙液メニスカスが高くなっていることがわかる.この症例では弛緩結膜の外科的切除を行って,症状は改善した(図5).間欠性流涙を訴える症例にたいして手術を検討する場合は,術前に通水テストを行って,鼻涙管狭窄や鼻涙管閉塞がないことを鑑別しておく必要がある.鼻涙管の疎通障害も合併していれば,結膜弛緩症図4耳側と鼻側に丈の高い結膜弛緩症の1例図6弛緩結膜の皺に沿った球結膜下出血の手術だけでは症状が寛解しないことをよく説明し,鼻涙管の治療も勧める.●球結膜下出血もう一つの代表的な症状は,繰り返す球結膜下出血である.弛緩結膜の可動性が大きいために生じる現象で,下方の弛緩結膜の皺に沿って出血の広がりがみられることもある(図6).外科的治療によって改善することができる.☆☆☆1152あたらしい眼科Vol.32,No.8,2015(86)

抗VEGF治療:網膜静脈分枝閉塞に対する抗VEGF治療-認可薬による治療戦略-

2015年8月31日 月曜日

●連載抗VEGF治療セミナー監修=安川力髙橋寛二19.網膜静脈分枝閉塞に対する抗VEGF治療近藤峰生三重大学大学院医学研究科臨床医学系講座眼科学―認可薬による治療戦略―網膜静脈分枝閉塞に対する抗VEGF治療は,2005年のベバシズマブの適用外使用で始まった.速効性があり視力改善度も高いため,患者にとってもっとも満足度の高い抗VEGF治療である.2013年には承認薬としてラニビズマブが登場し,より早期の症例や軽症の症例にも積極的に使用されるようになっている.本治療の問題点も含めて概説する.抗VEGF剤の未認可時代が長かったBRVO網膜静脈閉塞(retinalveinocclusion:RVO)の黄斑浮腫に対して抗VEGF(vascularendothelialgrowthfactor)薬の硝子体内注射が有効であることは,2005年頃から知られていた1).BRVO(branchretinalarteryocclusion)の黄斑浮腫に対するベバシズマブの使用によってわかったことは,①速効性がある治療法である,②1回の注射のみで再発のない症例は20~30%程度である,③繰り返し再発する患者では長期にわたって注射が必要になる,④注射による副作用の可能性は非常に低い,などであった.適用外使用であったために当時は慎重に投与しており,BRVOの発症から3カ月程度待っても改善しない黄斑浮腫のみに限られることが多かった.筆者らは,BRVOの黄斑浮腫に対するベバシズマブ注射治療の視力成績を以前に報告した2)(図1).投与方法はまず1回注射し,再発症例に対しては再投与する,いわゆる1+PRNである.1年後の視力改善度はlogMARで0.27(文字数換算で13.5文字),1年間の投与治療前治療後図1BRVOの黄斑浮腫に対するラニビズマブの効果症例は55歳,男性.右眼BRVO(左)に対してラニビズマブを2回連続投与したところ,浮腫の改善が得られ,視力も0.1から1.2に改善した(右).ただし,この2カ月後に浮腫は再発している.(83)あたらしい眼科Vol.32,No.8,201511490910-1810/15/\100/頁/JCOPY シャム/半年後から0.5mgラニビズマブ0.3mgラニビズマブ0.5mgラニビズマブ20毎月6回投与6カ月以降は必要に応じてラニビズマブ+18.3**16数)+16.4**12度(文字+12.18視力改善40024681012(月)図2BRVOの黄斑浮腫に対する大規模臨床試験(BRAVO)の結果毎月6回連続投与することにより,6カ月後には15文字以上の視力改善が得られている.(文献3を改変し引用)回数は平均2.0回であった.1回の投与のみで浮腫が軽る議論がさらに活発になることが予想される.快して再発しなかった症例は28%であった.今後解決されるべき問題点は?BRVOに対する認可薬の登場でなにが変わったか?今後解決されるべきおもな問題は以下の3点と考えられる.1)初回投与回数や維持投与法の理想的なレジメ2013年の8月にRVO(BRVOと網膜中心静脈閉塞症ンはどのようなものか?2)浮腫の再発を繰り返す患者の両方)の黄斑浮腫に対して,ラニビズマブ(ルセンに,どの時点でどのような治療法を併用するとよいのティスR)が認可となった.認可薬が登場したことでもか?3)周辺部の無灌流領域に対するレーザーおよび黄っともも大きく変わったことは,投与開始が早くなった斑レーザーを加えるとしたら,どのタイミングでどのよこと,そして軽症例でも投与しやすくなったことであうな症例に行うべきか.る.未解決の問題はまだ多くあり,今後もこの分野のさらBRVOの黄斑浮腫に対するラニビズマブの効果につなる発展に期待したい.いてはベバシズマブとほぼ同等という報告が多い.大規模臨床試験3)では,初期は1~2回の投与で浮腫が劇的文献に改善した(図2)が,最終投与から2~3カ月で多くの1)RosenfeldPJ,FungAE,PuliafitoCA:Opticalcoherencetomographyfindingsafteranintravitrealinjectionofbev症例が再発した.この大規模臨床試験では最初の6カ月acizumab(avastin)formacularedemafromcentralretinalは連続投与を行い,その後は必要に応じて追加というプveinocclusion.OphthalmicSurgLasersImaging36:336ロトコールで投与されている3)が,実際の臨床の場では339,2005ここまで多くの注射が行われることは稀である.とくに2)KondoM,KondoN,ItoYetal:Intravitrealinjectionofbevacizumabformacularedemasecondarytobranchretiわが国ではまず初回1回注射を行い,その後は必要に応nalveinocclusion:resultsafter12monthsandmultipleじて投与(いわゆる1+PRN)が圧倒的に多いのが現状regressionanalysis.Retina29:1242-1248,20093)BrownDM,CampochiaroPA,BhisitkulRBetal:Susである.1回にかかる注射の料金も高額であるので,今tainedbenefitsfromranibizumabformacularedemafol後もこの傾向は続くと考えられる.lowingbranchretinalveinocclusion:12-monthoutcomes2015年の前半には,2つめの承認薬であるアフリベofaphaseIIIstudy.Ophthalmology118:1594-1602,ルセプト(アイリーアR)もBRVOに対して認可となっ2011た.ラニビズマブとアフリベルセプトの効果の差に関す1150あたらしい眼科Vol.32,No.8,2015(84)最初の6カ月は注射なし6カ月以降は必要に応じて0.5mgラニビズマブ+18.3*+16.6*+7.3

緑内障:落屑症候群/落屑緑内障に関連する新規遺伝子

2015年8月31日 月曜日

●落屑緑内障とLOXL1北欧のグループによる落屑症候群のゲノムワイド関連解析(genome-wideassociationstudy:GWAS)を端緒に,LOXL1から2つのアミノ酸置換を伴うゲノム配列の違い(バリアント)が同定され,2007年にサイエンス誌に報告された1).LOXL1はコラーゲン線維を支えるエラスチン(弾性線維)の重合酵素であることから,落屑緑内障の発症機序への関与が示唆されている2).すなわち,バリアントによりLOXL1の機能変化が生じた場合,線維状の異常な凝集体が沈着し,落屑物質として蓄積する.眼組織においては,前房内で産生される落屑物質が線維柱帯の目詰まりを引き起こし眼圧が上昇する結果,落屑緑内障の発症に至るという仮説である.落屑症候群に関連するバリアントがLOXL1からしか同定されなかったこともあり,落屑緑内障の基礎研究はLOXL1を中心に行われてきたものの,落屑症候群から緑内障を発症する分子機構は未解明である.●LOXL1領域における人種差その後,LOXL1の2つのバリアントと落屑症候群/落屑緑内障との関連性の追試がつぎつぎに行われ,日本人も含めて3)あらゆる人種において再現性が認められた.しかし,そのうちの1つのバリアント(rs1048661)のリスクアレルが,アミノ酸置換を伴うにもかかわらず,日本人ではT,白人ではGと逆転していることが判明した(図1).この事実は,LOXL1が疾患の原因遺伝子ではないことを端的に示しているため,筆者らは日本人検体を用いたGWASを改めて実施した4).その結果,強い相関を示すシグナルがLOXL1領域からのみ検出されたが,有意なバリアントはLOXL1近傍のPMLやTBC1D21からも検出された(図2).PMLは●連載182緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也2007年に北欧のグループから落屑症候群に関連する遺伝子としてLOXL1が報告されて以来,落屑緑内障の病因・病態はLOXL1を中心に解析されてきた.最近,新たに実施されたゲノムワイド関連解析によって落屑症候群/落屑緑内障に関連する新規遺伝子が同定され,発症機序の解明に向けた新展開がもたらされている.182.落屑症候群.落屑緑内障に関連する新規遺伝子中野正和*1池田陽子*2*1京都府立医科大学大学院医学研究科ゲノム医科学*2同視覚機能再生外科学アイスランド[1]スウェーデン[1]日本[3]日本[4]GTrs1048661ケースコントロールGT人種[文献]0.1730.1660.9950.9700.8270.8340.0050.0300.6510.6820.4740.3730.3490.3180.5260.627rs3825942●連載182緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也2007年に北欧のグループから落屑症候群に関連する遺伝子としてLOXL1が報告されて以来,落屑緑内障の病因・病態はLOXL1を中心に解析されてきた.最近,新たに実施されたゲノムワイド関連解析によって落屑症候群/落屑緑内障に関連する新規遺伝子が同定され,発症機序の解明に向けた新展開がもたらされている.182.落屑症候群.落屑緑内障に関連する新規遺伝子中野正和*1池田陽子*2*1京都府立医科大学大学院医学研究科ゲノム医科学*2同視覚機能再生外科学アイスランド[1]スウェーデン[1]日本[3]日本[4]GTrs1048661ケースコントロールGT人種[文献]0.1730.1660.9950.9700.8270.8340.0050.0300.6510.6820.4740.3730.3490.3180.5260.627rs3825942ケースコントロール人種[文献]GAGA0.0130.987アイスランド[1]0.8470.1530.0050.995スウェーデン[1]0.8790.1210.0050.995日本[3]0.8500.1500.0080.992日本[4]0.8250.175図1アミノ酸置換を伴うLOXL1の2つのバリアントのアレル頻度rs1048661(上段)のリスクアレルが日本人ではT,白人ではGと逆転している.(81)あたらしい眼科Vol.32,No.8,201511470910-1810/15/\100/頁/JCOPY 71.871.97272.172.2302520151050100806040200r20.80.60.40.2←C15orf59TBC1D21→LOXL1→←STOML1PML→←GOLGA6APositiononchr15(Mb)-log10PRecombinationrate(cM/Mb)71.871.97272.172.2302520151050100806040200r20.80.60.40.2←C15orf59TBC1D21→LOXL1→←STOML1PML→←GOLGA6APositiononchr15(Mb)-log10PRecombinationrate(cM/Mb)図2日本人検体を用いたGWASボンフェローニ補正(破線)を越す有意なバリアントが,LOXL1だけでなくPMLやTBC1D21からも検出された.表1日本人検体を用いた代表的な3つのバリアントのハプロタイプ解析*ハプロタイプ**アレル*アレル頻度p値ケースコントロールH1GGA0.00390.12941.62×10.8H2GTA0.00430.04070.0055H3AGG0.01760.08350.0005H4GGG0.01250.15177.55×10.9H5ATG0.03190.06750.0471H6GTG0.92970.52721.33×10.27*TBC1D21のアミノ酸置換を伴うバリアント(rs16958445,アレルの1文字目)とLOXL1の2つのバリアント(rs1048661とrs3825942,2文字目および3文字目)によるハプロタイプ解析.**日本人の落屑症候群/落屑緑内障患者ではH6が主要なハプロタイプであった.一方,TBC1D21のバリアントは白人ではそもそもバリアントではない4)ため,これらのハプロタイプは日本人に特有である.核小体を構成する分子で,核内において種々の標的遺伝子の転写を制御している.一方,TBC1D21の機能は不明であるため,これらの分子と疾患との関連性については今後の検討が待たれる.また,人種間の臨床症状に共通点が多い疾患であるにもかかわらず,本領域のバリアントの分布は日本人と白人とで異なる(表1)ため,遺伝学的に興味深い課題が残されている.●LOXL1領域外からの新規遺伝子の同定最近,シンガポールのグループが主導した落屑症候群1148あたらしい眼科Vol.32,No.8,2015の大規模GWASにより,LOXL1とは異なる染色体に存在する遺伝子(CACNA1A)から初めてバリアントが同定された5).CACNA1AはP/Q型電位依存性カルシウムチャネルのa1Aサブユニットであることから,バリアントの有無による微小環境におけるカルシウム濃度の変化が,落屑物質の沈着や蓄積へ影響している可能性が考えられる.今後,落屑症候群/落屑緑内障に関連するバリアントを同定し尽くすことにより,疾患の発症機序が解明され,有効な治療法や予防法が開発されることが期待される.文献1)ThorleifssonG,MagnussonKP,SulemPetal:CommonsequencevariantsintheLOXL1geneconfersusceptibilitytoexfoliationglaucoma.Science317:1397-1400,20072)Schlotzer-SchrehardtU,NaumannGO:Ocularandsystemicpseudoexfoliationsyndrome.AmJOphthalmol141:921-937,20063)MoriK,ImaiK,MatsudaAetal:LOXL1geneticpolymorphismsareassociatedwithexfoliationglaucomaintheJapanesepopulation.MolVis14:1037-1040,20084)NakanoM,IkedaY,TokudaYetal:NovelcommonvariantsandsusceptiblehaplotypeforexfoliationglaucomaspecifictoAsianpopulation.SciRep4:5340,20145)AungT,OzakiM,MizoguchiTetal:AcommonvariantmappingtoCACNA1Aisassociatedwithsusceptibilitytoexfoliationsyndrome.NatGenet47:387-392,2015(82)

屈折矯正手術:iDesignで測定した高次収差とコントラスト感度

2015年8月31日 月曜日

屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─監修=木下茂●連載183大橋裕一坪田一男183.iDesignで測定した高次収差と脇舛耕一*1稗田牧*2*1バプテスト眼科クリニックコントラスト感度*2京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学波面センサーiDesignは,WaveScanの後継機として開発され,Hartmann-Shackイメージの測定ポイントがWaveScanの約5倍となるなど,測定性能の向上が図られている.iDesignで測定したLASIK術後の高次収差とコントラスト感度との相関を認め,iDesignがより正確に高次収差を把握できる可能性があり,今後の有用性について期待される.●はじめに屈折異常は大きく分けて,球面,円柱成分とよばれる眼鏡による矯正が可能な低次収差と,眼鏡では矯正できない不正乱視成分である高次収差がある.高次収差は角膜や水晶体の不整性に起因し,角膜や水晶体の非対称性による像のぼけ(コマ収差)や,中心部と周辺部での屈折力の違いから,それぞれを通過する光の結像位置がずれることで生じるぼけ像(球面収差)などがある.この高次収差をどれだけ正確に測定できるかが,より精密な視機能の把握や,レーザー屈折矯正手術時における術後視機能の改善にとって重要なファクターとなる.●波面センサーiDesignの性能高次収差を測定する機器が波面収差解析装置(波面センサー)であるが,開発技術の進歩とともに,より測定精度の高い機器が登場してきた.波面センサーiDesign(Abbott社)は,従来販売されていたWaveScanの後継機である(図1).HartmannShackイメージの各間隔が50μmであり,同イメージのデータポイントが7mm径で1,257カ所と,WaveScan(240カ所)の5倍の性能を有している.それ以外にも測定可能範囲が球面.16D~+12D(WaveScan.12D~+9D),円柱±8.0D(WaveScan±6.0D)であり,高次収差のFourier解析がZernike16次相当(WaveScan6次相当)データ取得範囲が8.50mm(WaveScan7.0mm)とさまざま(,)な点で性能の向上が認められる.また,固視標も蜘蛛の巣様のビデオターゲットを採用し調節が入りにくいような工夫がなされており,瞳孔径の測定もWaveScanでは照明がなく暗所のみであったが,iDesignでは照明がつき明暗所ともに測定可能となった.(79)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY図1iDesignの外観●wfLASIK後眼における測定精度の検討このようにiDesignはより高機能となったことで測定精度の向上が期待されるが,実際の測定結果(図2)と視機能との関連を調べるため,wave-frontguidedLaser-assistedinSituKeratomileusis(wfLASIK)後眼における高次収差とコントラスト感度(明所自然瞳孔下および散瞳負荷条件下)について,このiDesignを用いて測定した結果と,同じ波面収差解析装置であるトプコン社製KR-1Wとで比較検討を行った.KR-1Wは,Hartmann-Shackイメージの各間隔220μm,データポイントが8mm径で1,070カ所,Zernike解析で最大データ取得範囲は8.0mmである.対象は2011年10月~2013年5月にwfLASIKを施行し術後6カ月以上経過観察が可能であった28例28眼(男性6例,女性22あたらしい眼科Vol.32,No.8,20151145 図2iDesign測定結果右下のグラフが各高次収差結果である.例),年齢34±9(20~50)歳,矯正量.5.40±2.17(.1.63~-10.0)Dであり,コントラスト眼度はCSV-1000を用いて自然瞳孔下,散瞳負荷下それぞれの条件下で測定した.その結果,iDesignで測定した全高次収差と明所下自然瞳孔,散瞳負荷条件下いずれのコントラスト感度とも相関を認めた(図3).一方でKR-1Wで測定した全高次収差は,明所下自然瞳孔条件で測定したコントラスト感度とは相関を認めたが,散瞳負荷条件下コントラスト感度とはいずれの周波数でも相関を認めなかった.●おわりにwfLASIK眼では従来のconventionalLASIKに比べ術後高次収差の増大が抑制され,より高い視機能の獲得が期待されるようになった1~3)が,一方で,術後高次収差と視機能との相関を検出することがむずかしくなってきている.そのなかで,iDesign,KR-1Wいずれの機種でも,測定した高次収差と明所自然瞳孔条件下でのコントラスト感度との相関を認めたことは,各機種の測定精度が高いことがうかがえる.さらに,散瞳負荷条件下で測定したコントラスト感度について,KR-1Wで測定した高次収差とは相関を認めず,iDesignで測定した高次収差とのみ相関を認めたことから,実際の測定精度についてもiDesignのほうがより正確に高次収差をとらえ18cycles/degree対数コントラスト感度1.81.61.41.210.8y=-2.2723x+1.5456R2=0.24520.60.40.2000.10.20.30.4RMS;自然4mm(μm)図3iDesignで測定した全高次収差とコントラスト感度の相関自然瞳孔で測定した全高次収差と対数コントラスト感度との相関を認めた(このグラフは18cycles/degreeの対数コントラスト感度を表示).ている可能性が示唆された.各患者の視機能評価や,より良好なwfLASIKの術後成績を得るためにも,高次収差の測定精度の向上は重要である.iDesignは現時点でもっとも高い測定機能を有した機種であり,実際の測定結果についても正確性が高いと考えられ,今後の有用性を期待できるものと考えられる.文献1)QiuP,WangZ,YangBetal:Theanalysisofsubjectiveevaluationandcontrastsensitivityfunctionafterwavefront-guidedlaserinsitukeratomileusisandtraditionallaserinsitukeratomileusis.ZhonghuaYankeZazhi43:329-335,20072)WuJ,WangZ,YuKetal:Combinedwavefront-guidedlaserinsitukeratomileusisandasphericablationprofilewithirisregistrationtocorrectmyopia.JCataractRefractSurg39:1059-1065,20133)ZhangJ,ZhouYH,LiRetal:VisualperformanceafterconventionalLASIKandwavefront-guidedLASIKwithiris-registration:resultsat1year.IntJOphthalmol6:498-504,2013☆☆☆1146あたらしい眼科Vol.32,No.8,2015(80)

眼内レンズ:後極白内障における新しい核分割法(Pre-Surround Division Technique)

2015年8月31日 月曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋345.後極白内障における新しい核分割法鴨居功樹東京医科歯科大学(Pre-SurroundDivisionTechnique)後極白内障は,後.中央に位置する硬い円盤状の混濁が特徴で,後.は脆弱かつ欠損を認める場合もあり,手術時に合併症が起きやすい.核分割が必要な場合はさらに難易度が高く,これまでに報告があった核分割法はいずれも熟練を要した.今回,後極白内障において,安全かつ容易に核分割する方法を考案したので報告する.●はじめに後極白内障は,後.中央に位置する白くて硬い円形の混濁が特徴で(図1),胎生期から徐々に進行し,30~50年後に自覚症状が出現する.視力低下が顕著になった場合,水晶体摘出と眼内レンズ挿入が必要であるが,後.は脆弱な場合が多く,また約20%に後.欠損が認められるため難易度の高い手術となる1).手術は①anteriorapproach,②posteriorapproach,③intracapsularcataractextractionに分けられる2).①anteriorapproachはもっとも侵襲が少ないが,分割が必要な核硬化がみられる場合,難易度が非常に高くなる.この際の核分割法について,いくつか報告があるものの3,4),いずれも熟練した技術が必要である.今回考案したanteriorapproachにおける核分割法pre-surrounddivisiontechnique5~7)は比較的容易に,また後極混濁を避けた分割を確実に得られるため,安全で有効な方法であると考えられる.●手術手順手順として,核分割までは後極白内障における標準的な方法を用いる.つまり創口作製,前.切開を施行したあとに,hydrodissectionをせずにhydrodelineationを確実に行う(図2).場合によってはinside-outdelineationtechnique8)(中央に溝を作製してからhydrodelineationを行う方法)を用いてgoldenringを確実に作製し,核と後極混濁の分離を確認する.続いて粘弾性物質を適量注入して,前房を保持する.最初の分割として,後極混濁を避け,かつ後極混濁上に亀裂が生じない場所にprechopperの刃先を適切な深さまで刺入する.刃先をよく観察し,後極混濁側(中央側)になるべく力が働かないよう調整しながら,ゆっくりとprechopperを開(77)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY図1後極白内障後極に白い円形の混濁がみられる.き分割をする(図3).続けて,同じ要領で後極混濁を挟んで対側にprechopperを刺入・分割することで(図4),3つの核片に分ける(pre-surrounddivision).3つに分割された核片の処理は,フックを用いて水晶体.が大きく変動しないように核をコントロールしながら,まずは中央の核片から行う.側方の核片を最初に吸引すると,水晶体.の安定性が低下してしまう.核吸引後は通常の手順どおり,後極混濁・エピヌクレアスと後.の間に粘弾性物質をゆっくり注入して分離させる.後.から離れた後極混濁・エピヌクレアスを慎重にI/Aで吸引し,眼内レンズを挿入する.●考察後極白内障における核分割に関してdivideandconquer,phacochopなど標準的な手技を用いた場合,hydrodelineationが不十分だと,分割の際に後極混濁の直上に亀裂が入る可能性があり,後.破損の危険性が高い.また,とくに初心者にとっては,超音波を発振しなあたらしい眼科Vol.32,No.8,20151143 図2図3図4Hydrodissectionは避け,hydrodelineationPrechopperを後極混濁の左方に刺入・分同様にprechopperを後極混濁の右方に刺を確実に行いgoldenringを確認する.割する.図5上方からのシェーマ後極混濁を避ける形で3分割する.後極混濁のある中央に力がかからないよう,なるべく側方に力を加える.青:hydrodelineationで生じるgoldenring.がら後.への不必要な圧をかけずに核分割することはむずかしい.一方,pre-surrounddivisiontechniqueは超音波乳化吸引の前に,後極混濁を確実に避けながら複数に核分割することができ(図5),hydrodelineationが不完全であっても,分割に伴う後.破損の可能性は低い(図6).さらに分割後の核は比較的容易に処理できるので,ローテーションの必要もなく,安全性が高い手技と考えられる.文献1)OsherRH,YuBC,KochDD:Posteriorpolarcataracts:a入・分割する.図6側方からのシェーマHydrodelineationが十分でなくても,分割によって後極混濁に亀裂は入らない.predispositiontointraoperativeposteriorcapsularrupture.JCataractRefractSurg16:157-162,19902)VasavadaAR,RajSM,VasavadaVetal:Surgicalapproachestoposteriorpolarcataract:areview.Eye26:761-770,20123)VasavadaA,SinghR:Phacoemulsificationineyeswithposteriorpolarcataract.JCataractRefractSurg25:238245,19994)CheeS-P:Managementofthehardposteriorpolarcataract.JCataractRefractSurg33:1509-1514,20075)KamoiK,MochizukiM:Pre-surrounddivisiontechnique.JCataractRefractSurg40:1764-1767,20146)KamoiK:Pre-SurroundDivision.CataractandRefractiveSurgeryTodayEurope,6:28-30,20157)KamoiK:Pre-surrounddivisiontechniquedevisedforposteriorpolarcataractsurgery.OcularSurgeryNewsU.S.Edition:Feb.25,20158)VasavadaAR,RajSM:Inside-outdelineation.JCataractRefractSurg30:1167-1169,2004

コンタクトレンズ:コンタクトレンズ装用による眼障害(その2)

2015年8月31日 月曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方はじめの一歩監修/下村嘉一15.コンタクトレンズ装用による糸井素純道玄坂糸井眼科医院眼障害(その2)●はじめにコンタクトレンズ(CL)装用による眼障害は,単に病状を診断し,それに対して投薬治療をするだけでは高率に再発する.どのようにして発症したのかを解明し,今後,どのようにすれば再発を予防できるのかを含めて指導しなければならない.そのためには,問診でできるだけ多くの情報を取得する.診察で簡単に細隙灯顕微鏡を用いて前眼部を観察するだけでは,正確な診断はできない.本セミナーでは,CL装用による眼障害を診察するうえで,最低限押えておいていただきたいポイントについて解説する.●問診問診により,多くの情報を収集することで,眼障害の発症機序の解明ができる.問診では眼障害の症状に関することや,眼疾患,全身疾患,アレルギー疾患の既往や合併だけではなく,レンズの種類,装用サイクル,製品名を把握し,眼障害を招いたCLは医師の処方を受けたか,いつ,どこで購入したか,定期検査を受けているか,1日平均何時間装用しているか,1週間のうち平均何日間装用しているか,他の種類のCLは使用していないかなどを確認する.さらに,レンズを毎日こすり洗いしているか,消毒しているか,装着直前にすすいでいるか,レンズケースを毎日洗浄しているか,乾燥させているか,定期交換しているかといった情報を聞き出す必要がある.また,市販の目薬や洗眼用品が眼障害悪化の原因になっていることがあるので注意を要する.質問項目が多くなるのでCL装用者用の問診票(図1)を準備しておくとよい.●視力検査前眼部に炎症所見を伴わないCL装用による眼障害では,角膜変形や角膜浮腫のために矯正視力が低下していることがある.また,他の眼障害の合併により,さらに視力が低下し,その後,回復しないケースもある.痛みを伴い,開瞼が困難な場合は仕方がないが,可能なかぎ(75)0910-1810/15/\100/頁/JCOPYり初診時に視力検査を実施するようにする.初診時に実施できなかった場合は,再診時に必ず実施する.●細隙灯顕微鏡検査もっとも基本となる検査である.角膜,結膜(眼瞼結膜,球結膜)のみならず,前房,虹彩,涙液,マイボーム腺の状態を確認する.最初はフルオレセインで染色せずに,低倍率で全体を確認し,その後,高倍率にして各部位にフォーカスを合わせて観察する.そして,フルオレセインで角膜,結膜を染色し,低倍率と高倍率で観察する.なお,眼瞼結膜には有力な情報が隠れていることが多いので,必ず眼瞼を反転して観察する.ソフトCLと眼瞼結膜の間で摩擦を生じると,眼瞼結膜側にlidwipersyndromeという結膜上皮障害を生じ,CL装用感を悪化させるともいわれている.●コンタクトレンズの検査CL自体の検査も重要である,レンズ度数,直径,ベースカーブ(ハードCLのみ)を測定し,汚れ,キズ,変形などを確認する.汚れ,キズは細隙灯顕微鏡だけではなく,さらに実体顕微鏡で観察するとよい.●コンタクトレンズのフィッティング検査初診時には眼障害の症状が強く,レンズのフィッティングが確認できない場合が少なくないが,眼障害治癒後,CL装用を開始する前には,眼障害のあったCLを実際に装用し,レンズのフィッティングを確認していただきたい.そうすることにより,眼障害の発症機序が明らかになることも少なくない.●角膜形状解析検査以前はプラチドリングを利用した角膜形状解析装置が主流であったが,最近では前眼部光干渉断層計やScheimpflug角膜形状解析装置が登場し,角膜前面の形状のみならず,角膜後面の形状と角膜厚を広い範囲で撮影,解析できるようになった.通常の細隙灯顕微鏡検査あたらしい眼科Vol.32,No.8,20151141 1142あたらしい眼科Vol.32,No.8,2015(00)では検出できないような早期の円錐角膜,CL装用による角膜変形や角膜不正乱視などを検出することができる.CL装用による眼障害は,程度の差はあるが,角膜変形や角膜不正乱視を伴っていることが多く,角膜形状解析装置で撮影し,必ず角膜の形状を確認していただきたい.●角膜内皮細胞検査通常,角膜内皮細胞は加齢変化により年0.3~0.7%の細胞脱落があるとされている1)が,CL装用により角膜内皮細胞の減少がより顕著となることがある.とくに長期に酸素透過性の低いCLを装用している人は要注意である.最近ではカラーCL装用者のなかに,比較的短期の装用にもかかわらず,角膜内皮細胞が減少している例が散見されるようになってきた.角膜内皮細胞の減少で自覚症状を伴うのは末期であり,検査を実施しなければ,角膜内皮細胞数の減少は把握できない.文献1)大原國俊,水流忠彦,伊野田繁:角膜内皮細胞形態のパラメーター.日眼9:1073-1078,1987ZS945図1コンタクトレンズ装用者用の問診票あたらしい眼科Vol.32,No.8,2015(00)では検出できないような早期の円錐角膜,CL装用による角膜変形や角膜不正乱視などを検出することができる.CL装用による眼障害は,程度の差はあるが,角膜変形や角膜不正乱視を伴っていることが多く,角膜形状解析装置で撮影し,必ず角膜の形状を確認していただきたい.●角膜内皮細胞検査通常,角膜内皮細胞は加齢変化により年0.3~0.7%の細胞脱落があるとされている1)が,CL装用により角膜内皮細胞の減少がより顕著となることがある.とくに長期に酸素透過性の低いCLを装用している人は要注意である.最近ではカラーCL装用者のなかに,比較的短期の装用にもかかわらず,角膜内皮細胞が減少している例が散見されるようになってきた.角膜内皮細胞の減少で自覚症状を伴うのは末期であり,検査を実施しなければ,角膜内皮細胞数の減少は把握できない.文献1)大原國俊,水流忠彦,伊野田繁:角膜内皮細胞形態のパラメーター.日眼9:1073-1078,1987ZS945図1コンタクトレンズ装用者用の問診票