眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人17.LidWiperEpitheliopathyのエッセンス白石敦愛媛大学大学院医学系研究科器官・形態領域眼科学Lidwiperepitheliopathy(LWE)は,瞬目による眼瞼結膜と眼表面の間での摩擦によって引き起こされる眼瞼結膜縁の上皮障害であり,近年注目されつつある摩擦関連眼表面疾患の代表例である.●はじめに2002年にKorbらは,ドライアイ症状を高率に伴う上眼瞼結膜縁の上皮障害をlid-wiperepitheliopathy(LWE)とよぶことを提唱した1).彼らは,瞼板下溝から粘膜皮膚移行部にかけての領域に解剖学的な名称がなかったこと,この部が眼表面を掃く(wipe)ような動きをすることから,この部位をlid-wiperと命名した1).その後,下眼瞼結膜縁にも同様の上皮障害が認められることが報告され,現在では,LWEは上下の眼瞼結膜縁の上皮障害として認識されている2,3).●LWEの病態・特徴瞬目運動による眼瞼縁結膜と眼表面の間の摩擦の上昇がLWEの病因と考えられており,摩擦で眼瞼縁結膜表層の上皮の脱落と変性が起こると考えられている3)(図1).コンタクトレンズ(CL)装用者での発症率は高く,50%以上とする報告があり,CL装用により,眼表面の摩擦が強くなることが誘因として考えられている3,4).LWEは下眼瞼のほうが発症率は高く,高齢者より若年者に多く認められ,とくに若年者では無症状であることも多い2,3)(図2).●LWEの症状現在のところLWEに特徴的な症状はわかっていないが,ドライアイ症状を呈する患者にLWEが多く認められるとの報告が多い.しかしながら,LWEはドライアイによる所見の一つと思われがちであるが,涙液検査では異常所見は認められないことが多い(図3).したがって,ドライアイ症状があるにもかかわらず,涙液検査で異常を認めない症例では,眼瞼結膜を観察することがLWEを見逃さないポイントである.●LWEの観察通常の細隙灯顕微鏡検査では観察がむずかしいため,LWEを念頭において生体染色を行うことが重要である.通常のフルオレセイン染色やローズベンガル染色でも検出は可能であるが,図4に示すようにリサミングリーン染色とブルーフリーフィルターを用いたフルオレセイン染色がLWEの検出には有効である.●LWEの治療摩擦上昇の原因を探ったうえで,摩擦軽減の対策・治療方法を選択することが重要である.CL装用者:CLが摩擦増加の原因であるため,CL中止が原則である.人工涙液の点眼では,一時的に症状が軽快することもあるが,ほとんど無効である.近年登場したムチン産生を促進するドライアイ点眼薬は多少の効果がある可能性はあるが,大きな期待はできない.CL非装用者:ドライアイのない若年者に認められ,一般に治療抵抗性であることが多い.眼軟膏や近年発売されたムチン産生を促進するドライアイ点眼薬は,摩擦軽減効果が期待されるため,LWEに有効となることもある.高齢者:一般に,高齢者では眼瞼圧が低下し,摩擦も軽減しているはずである.高齢者にLWEを認めたときには,眼瞼形状・瞬目・ドライアイ・マイボーム腺機能不全など,さまざまな角度から摩擦上昇の原因を探索する必要がある.意外な原因として,洗眼行為がある.水道水による洗眼はムチンを含めた涙液を洗い流してしまうため,眼表面の摩擦上昇の原因となる.洗眼の中止のみで,症状もLWEも改善することがある.文献1)KorbDR,GreinerJV,HermanJPetal:Lid-wiperepitheliopathyanddry-eyesymptomsincontactlenswearers.ClaoJ28:211-216,20022)ShiraishiA,YamaguchiM,OhashiY:Prevalenceofupper-andlower-lid-wiperepitheliopathyincontactlenswearersandnon-wearers.EyeContactLens40:220-224,20143)白石敦,山西茂喜,山本康明ほか:ドライアイ症状患者におけるlid-wiperepitheliopathyの発現頻度.日眼会誌113:596-600,20094)KorbDR,HermanJP,GreinerJVetal:Lidwiperepitheliopathyanddryeyesymptoms.EyeContactLens31:2-8,2005図1インプレッションサイトロジーa:正常眼瞼結膜.多数のPAS陽性ゴブレット細胞が観察される.b:LWE.ゴブレット細胞は認められず,核・細胞質比が小さく,一部に扁平上皮化生した細胞(▲)が認められる.(83)あたらしい眼科Vol.33,No.8,201611650910-1810/16/\100/頁/JCOPY図2LWEの発現頻度図3LWEとドライアイ検査図4各生体染色によるLWEの観察(84)