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最大開瞼時間(MBI)および最大開瞼時間と涙液破壊時間の差(MBD)はドライアイ患者の複合的な角結膜知覚を鋭敏に反映する指標である

2015年9月30日 水曜日

《原著》あたらしい眼科32(9):1345.1348,2015c最大開瞼時間(MBI)および最大開瞼時間と涙液破壊時間の差(MBD)はドライアイ患者の複合的な角結膜知覚を鋭敏に反映する指標である鳥山直樹村戸ドール遠藤安希子冨田大輔葛西梢平山裕美子山口剛史島﨑聖花佐竹良之島﨑潤東京歯科大学市川総合病院眼科MaximalBlinkInterval(MBI)andMaximumBlinkInterval-BreakupDifference(MBD)asIntegralIndicatorsofCornealSensitivityinDryEyePatientsNaokiToriyama,DogruMurat,AkikoEndo,DaisukeTomida,KozueKasai,YumikoHirayama,TakeshiYamaguchi,SeikaDen-Shimazaki,YoshiyukiSatakeandJunShimazakiDepartmentofOphthalmology,TokyoDentalCollegeIchikawaHospital目的:最大開瞼時間(maximumblinkinterval:MBI)はドライアイ診療における有用な指標である.筆者らはMBIを利用し,乾燥環境が涙液機能に与える影響とその評価法としての有用性を検討した.対象および方法:ドライアイ疑い例13名26眼(男性:4名,女性:9名;平均年齢:34.5歳)および正常人8名16眼(男性:4名,女性:4名;平均年齢:36歳)を対象に送風機を用い風に10分間曝露させた.曝露前後でMBI,瞬目回数測定,涙液層破壊時間(BUT),角膜知覚を施行した.また,MBIとBUTの差(MBD)との関連についても検討した.結果:風負荷後では正常人においてMBIの有意な差を認めなかったがドライアイ群ではMBI値が有意に低下した(p<0.01).MBDにおいて正常人に有意な変化がなかったが(p=0.19)ドライアイ群では有意差を認めた(p<0.0002).結論:MBIおよびMBDはドライアイ診療のパラメータとして乾燥環境が眼表面および涙液機能に及ぼす影響の評価に有用であると考えられた.Toevaluatetheinfluenceofadryenvironmentontearfunctions,weemployedthe“maximumblinkinterval”(MBI)andassessedtheusefulnessofMBIasadry-eyeexaminationmethod.Inthisstudy,weexposed26eyesof13probabledryeyepatientsand16eyesof8normal,healthycontrolsubjectswithoutdryeyestowind.Ineachsubject,MBI,blinkfrequency,andtear-filmbreakuptime(BUT)wasexaminedandCochet-Bonnetcornealesthesiometrywasperformed.WealsoexaminedtheMBI-BUTdifference(MBD)ineachsubject.Ourfindingsshowedthatwithexposuretowind,theMBIdidnotchangeinthenormalcontrolsubjectsbutsignificantlydecreasedinthedry-eyepatients(p<0.01).MBDsignificantlydecreasedinthedry-eyepatients(p<0.0002),yetnosignificantchangeswereobservedinthenormalcontrolsubjects(p=0.19).ThefindingsofthisstudyshowthatMBIandMBDcanbeusefulexaminationparametersfortheevaluationoftheeffectsofexposuretoadryenvironmentontearfunctionsandtheocularsurface.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(9):1345.1348,2015〕Keywords:最大開瞼時間,乾燥環境,涙液.maximumblinkinterval,dryenvironment,tears.はじめにとも指摘されているが,臨床応用可能な検査法はなかった.ドライアイでは自覚症状と他覚症状が相関しない症例がし筆者らは最大開瞼時間(maximumblinkinterval:MBI)ばしばみられる.この相違には角結膜知覚が関連しているこおよびMBIと涙液層破壊時間(breakuptime:BUT)の差〔別刷請求先〕鳥山直樹:〒272-8513千葉県市川市菅野5-11-13東京歯科大学市川総合病院眼科Reprintrequests:NaokiToriyama,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TokyoDentalCollegeIchikawaGeneralHospital,5-11-13Sugano,Ichikawa,Chiba272-8513,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(117)1345 (MBI-BUTdifference:MBD)が角結膜知覚と関連すると推測し,ドライアイ診療において簡便に施行可能な指標として有用であると考えている.MBIは1997年に中森らによって初めて提唱された1).MBIに関しては今回が初めての論文報告となる.これまで人工的に乾燥環境を負荷するcontrolledadversechamberenvironment(CACE)を用いた研究が知られている.湿度や温度,送風などの乾燥環境負荷により,自覚症状や涙液蒸発量,BUT,染色スコアなどの涙液機能に関するパラメータを悪化させ,その変化の程度で薬剤やコンタクトレンズのドライアイに対する作用を調べるといったものである2.4).今回,筆者らは,同一湿度,温度下の環境で,送風負荷を一定時間行うことで乾燥負荷を与え,ドライアイと正常人の比較を行うこととした.比較を行ううえでのパラメータとして,MBIおよびMBDを利用し,送風負荷による乾燥環境が涙液機能に与える影響とその評価法としての有用性を検討した.I対象および方法対象は日本ドライアイ研究会診断基準にてドライアイ疑い例と診断された13名26眼(男性:4名,女性:9名)で,平均年齢は34.5歳であった.また,全身疾患,眼疾患,眼科手術歴,点眼使用とマイボーム腺機能不全を有しない正常人8名16眼(男性:4名,女性:4名)をコントロール群とした.正常人の平均年齢は36歳であった.下記の①から⑧の順でMBIを含む眼科学的な検査を行った.また,同一環境下で一定の風速による風負荷を試行した直後に①から⑧の検査を再度行った後,Schirmer試験を最後に行った.検査はドライアイワークショップの指針2)に従い,侵襲性の低いものから順に行った.①VisualAnalogScaleによる各症状の評価乾燥感,眼精疲労,異物感に関して,100点満点のVisualAnalogScaleで評価した.0点を症状がもっとも軽いとして,もっとも耐えがたい状態を100点とした.②瞬目回数1分間の瞬目回数を調べた.測定は被験者に瞬目を意識させずに行い,3回計測し平均値を求めた.③涙液蒸発量TEROSRを用いて,涙液蒸発量を測定した5).装置を被験者の顔に密着させ3回測定し,平均値を求めた.④最大開瞼時間(MBI)無理をしない程度にできるだけ開瞼させ,眼不快感が出現したときに閉瞼してもらい,開瞼の持続時間を測定した.測定は同一環境下で行い,温度は27℃,湿度は42%であった.開瞼の際は5m先の視標を見てもらった.測定は送風前後1346あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015で1回ずつ測定を行った.⑤涙液貯留量検査ストリップメニスコメトリーを用いて,涙液の貯留量を測定した.ストリップメニスコメトリーはメニスカスの定量に有用である6).⑥涙液層破壊時間の検査(BUT)1μlの1%フルオレセインナトリウム染色液を球結膜6時方向より滴下し,まばたきをさせた.その直後,開瞼から涙が破壊しはじめる時間を測定した.細隙灯顕微鏡を用いて,涙液層が破綻するまでの時間を3回測定し,その平均値を求めた.5秒以下をドライアイ陽性所見とした7).⑦フルオレセイン生体染色BUT測定1分後に角膜上皮におけるフルオレセイン染色の程度を評価した.9点満点で評価し,3点以上をドライアイ陽性所見とした8).⑧角膜知覚検査Cochet-Bonnet知覚計を用いて,角膜知覚を評価した.以上,①.⑧の順に検査を試行し,下記の条件で送風負荷を行った.送風負荷5m先の指標を固視したうえで送風負荷を行った.送風曝露時間は10分とし,風速は7m/secとした.温度は27℃,湿度は42%であった.送風負荷後すぐに再度①.⑦の順に検査を再度試行した後,Schirmer試験I法を行った.各検査項目の統計解析はWilcoxonの符号付順位和検定を行った.有意水準は両側1%とした.II結果異物感自覚症状スコアは,送風前後において,ドライアイ疑い群は有意に増加している(p<0.01)が,正常人においては有意差がみられなかった.涙液蒸発量は,ドライアイ疑い群において有意な増加がみられた(p<0.01).涙液貯留量は,ドライアイ疑い群,正常人ともに有意差がなかった(p>0.01).平均BUT値はドライアイ群では有意に短縮したが(p<0.0003),正常人では有意差がなかった(p=0.06).フルオレセイン染色スコアの比較においては,ドライアイ疑い群も正常群も有意差がなかった(p>0.01).正常人においてMBIの有意な差を認めなかったが,ドライアイ群ではMBI値が有意に低下した(p<0.01).MBDにおいて正常人に有意な変化がなかったが(p=0.19),ドライアイ群では有意差を認めた(p<0.0002).瞬目回数は正常人ならびにドライアイ例では有意に増加した(p<0.01).角膜知覚はドライアイ群では有意に低下したが(p<0.002),正常人では変化を認めなかった(p>0.05).以上の結果を表1に示し,有意差についての結果のまとめを表2に示す.(118) 表1送風負荷前後でのドライアイ群および正常人における各パラメータ変化ドライアイ群ドライアイ群送風前後での有意差正常人正常人送風前後での有意差異物感スコア(%)13.8±6.31.2±3.529.6±11.3p<0.0116.2±27.2p>0.01閉瞼回数(回/分)22.4±8.339.1±16.4p<0.0128±1236.8±15.7p<0.01涙液蒸発量3.8±3.66.1±4.0(10.7g/cm2/秒)10.1±6.2p<0.017.4±4.0p>0.01MOT(秒)27.5±3.07.6±4.0p<0.0124.6±15.314±10.6p>0.01涙液貯留量(mm)1.4±1.21.5±1.1p>0.012.6±1.93.2±2.5p>0.01BUT(秒)4.7±1.83.5±1.1p<0.00037.6±2.06.1±1.8p=0.06フルオレセイン0.19±0.560.06±0.25スコア(点)0.3±0.6p>0.010.12±0.34p>0.01角膜知覚(mm)58.6±2.255.3±3.7p<0.00259.3±1.759.2±1.7p>0.05MBD(秒)27±153.9±4.1p<0.000217±167.9±9.2p=0.19III考按今回の研究において,送風負荷前後において正常人で有意に変化したのは瞬目回数のみであったが,ドライアイ群では,瞬目回数,異物感スコア,涙液蒸発量が増加し,角膜知覚,BUT,MBI,MBDが有意に減少していた.送風負荷後に瞬目回数が増えたのは,乾燥環境に対する代償作用であり3),眼表面の刺激を増すことにより瞬目回数が増加した1)と考えられた.ドライアイ群では,瞬目回数の他にMBI,MBDを含む7個のパラメータの変化を認め,正常人よりも乾燥環境の影響を受けやすいことが示唆された.ドライアイ群において,乾燥負荷により角膜知覚が低下したにもかかわらず,異物感スコアは増加している.これは,異物感スコアが,Cochet-Bonnet知覚計によって測定される角膜の痛覚だけでなく,温度感覚や浸透圧変化などによって生じる複合的な角結膜知覚を反映するためと思われる.また,正常人よりも知覚過敏状態にあると思われるドライアイ群では,乾燥環境を負荷することで,正常人より多くの反射性分泌が生じ,涙液の分泌量が増えたものと考えられる.涙液の分泌量は増えたが,涙液蒸発量も亢進したため,涙液貯留量にはさほど変化を及ぼさなかった.また,今回の実験では送風による乾燥負荷の時間が短時間であったこと,そして,今回の実験でのドライアイ群にはもともと角膜上皮障害の少ないタイプが多かったため,送風前後においてフルオレ(119)表2送風負荷前後でのドライアイ群および正常人における各パラメータ変化と有意差瞬目回数異物感スコア涙液蒸発量涙液貯留染色スコア角膜知覚BUTMBIMBDドライアイ群正常人↑↑↑→↑→→→→→↓→↓→↓→↓→送風前後で↑:有意差を認めて増加→:有意差なし↓:有意差を認めて低下セイン染色スコアに有意差が生じなかったと考えられる.より長時間の負荷を与えた場合,送風前後において,すべてのパラメータに変化が生じた可能性もあると思われた.MBIおよびMBDは,フルオレセイン染色や涙液貯留量の変化としてとらえることのできない程度の乾燥負荷を反映して変化すると推測される.乾燥環境負荷など眼表面の刺激が増えることにより,瞬目回数が増え,逆にMBIは減少すると中森らはすでに指摘している1)が,今回の実験ではドライアイ群ではそのとおりになったものの正常人ではMBIの有意な変化がなかった.まあたらしい眼科Vol.32,No.9,20151347 た,ドライアイ群の乾燥負荷前後の変化量については,瞬目回数の変化よりも,MBIとMBD,とくにMBDの変化量が著しかった.このことは,おそらくドライアイ群の痛覚を除く複合的な角結膜知覚が正常人よりも過敏であることがMBIそしてとくにMBDにおいて,鋭敏に反映されたものと思われる.ドライアイ群において乾燥負荷前後で変化量がもっとも多いパラメータはMBDであり,その次にMBIであった.このことはMBIおよびとくにMBDが自覚症状と他覚症状が相関しないドライアイ症例において,両者をつなぐ有用な検査法であることを示唆している.今回の臨床研究により,最大開瞼時間(MBI)および最大開瞼時間と涙液破壊時間の差(MBD)はドライアイ患者の複合的な角結膜知覚を鋭敏に反映する指標であると考えられた.文献1)NakamoriK,OdawaraM,NakajimaTetal:Blinkingiscontrolledprimarilybyocularsurfaceconditions.AmJOphthalmol124:24-30,19972)ReportoftheClinicalTrialsSubcommitteeoftheInternationalDryEyeWorkShop:Designandconductofclinicaltrials.OculSurf5:153-162,20073)KojimaT,MatsumotoY,IbrahimOMetal:Effectofcontrolledadversechamberenvironmentexposureontearfunctionsinsiliconhydrogelandhydrogelsoftcontactlenswearers.InvestOphthalmolVisSci52:8811-8817,20114)OuslerGW3rd,AndersonRT,OsbornKEetal:TheeffectofsenofilconAcontactlensescomparedtohabitualcontactlensesonoculardiscomfortduringexposuretoacontrolledadverseenvironment.CurrMedResOpin24:335-341,20085)EndoK,SuzukiN,HoshiMetal:Theevaluationofepoxyresincoatedquartzcrystalhumiditysensorandthemeasurementofwaterevaporationfromhumansurfaces.JSurfFinishSocJpn52:708-712,20016)DogruM,IshidaK,MatsumotoYetal:Stripmeniscometry:anewandsimplemethodoftearmeniscusevaluation.InvestOphthalmolVisSci47:1895-1901,20067)KaidoM,IshidaR,DogruMetal:Efficacyofpunctumplugtreatmentinshortbreak-uptimedryeye.OptomVisSci85:758-763,20088)GotoE,EndoK,SuzukiAetal:Tearevaporationdynamicsinnormalsubjectsandsubjectswithobstructivemeibomianglanddysfunction.InvestOphthalmolVisSci44:533-539,2003***1348あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015(120)

1.5%レボフロキサシン点眼液と0.3%ガチフロキサシン点眼液の白内障手術当日点眼における結膜囊減菌化試験

2015年9月30日 水曜日

《原著》あたらしい眼科32(9):1339.1343,2015c1.5%レボフロキサシン点眼液と0.3%ガチフロキサシン点眼液の白内障手術当日点眼における結膜.減菌化試験藤紀彦*1,3近藤寛之*1田原昭彦*1坂本雅子*2*1産業医科大学眼科学教室*2(財)阪大微生物病研究会*3小波瀬病院ConjunctivalSacSterilizationwith1.5%Levofloxacinor0.3%GatifloxacinOphthalmicSolutionsontheDayofCataractSurgeryNorihikoTou1,3),HiroyukiKondo1),AkihikoTawara1)andMasakoSakamoto2)1)DepartmentofOphthalmology,UniversityofOccupationalandEnvironmentalHealth,Japan,2)MicrobialDiseasesofOsakaUniversity,3)ObaseHospitalTheResearchFoundationfor目的:1.5%レボフロキサシン(LVFX)点眼液と0.3%ガチフロキサシン(GFLX)点眼液の白内障手術当日点眼の減菌効果について検討した.対象および方法:2012年5月.11月に白内障手術を実施した患者85例122眼を対象とした.投与方法は,1.5%LVFX点眼液または0.3%GFLX点眼液を術当日手術2時間前より20分ごと3回,以後30分ごとに点眼した.点眼前,術直前に結膜.を擦過し,細菌の培養,同定および薬剤感受性検査を行った.結果:点眼前の菌検査で直接培養が陽性であった37例47眼に対する術前減菌化率は1.5%LVFX群で53.6%(15/28眼),0.3%GFLX群で52.6%(10/19眼)であった.結論:手術2時間前からの点眼による1.5%LVFX点眼液と0.3%GFLX点眼液の減菌効果に差はなかった.減菌化率が低いことから,術前の点眼期間は考慮する必要がある.Purpose:Toexaminethesterilizationefficaciesof1.5%levofloxacin(LVFX)and0.3%gatifloxacin(GFLX)ophthalmicsolutionsinstilledonthedayofcataractsurgery.Methods:Eighty-fivepatients(122eyes)undergoingcataractsurgerywereexamined.Onthedayofsurgery,1.5%LVFXor0.3%GFLXwasadministeredbyeyedropsat2-hoursbeforesurgery(threeinstillationsat20-minuteintervals,andthenonceevery30minutes).Theconjunctivalsacwasscrapedbeforethepreoperativeadministrationandimmediatelybeforesurgery.Theisolatedmicrobialstrainswerethenidentifiedandassessedforantibacterialsusceptibility.Results:Theperioperativesterilizationratesdidnotdifferbetween1.5%LVFX(53.6%;15/28eyes)and0.3%GFLX(52.6%;10/19eyes).Conclusions:Thesterilizationefficaciesofthe1.5%LVFXand0.3%GFLXsolutionsweresimilarwhentheywereadministeredby2-hoursbeforesurgery.Sincethesterilizationefficacieswerelow,theoptimaltimetoadministerthedropsbeforesurgeryneedstobefurtherexamined.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(9):1339.1343,2015〕Keywords:レボフロキサシン点眼液,ガチフロキサシン点眼液,白内障手術,術前減菌化,眼内炎.levofloxacinophthalmicsolution,gatifloxacinophthalmicsolution,cataractsurgery,perioperativesterilization,endophthalmitis.はじめに白内障手術に伴う感染性眼内炎は,その頻度や原因,そして発症予防についてさまざまな検討がなされてきた.抗菌点眼薬による術前の結膜.内の減菌化は,眼内炎を予防する手段の一つとして広く行われている.レボフロキサシン(LVFX)は,内服,注射などさまざまな剤型があり,キノロン系抗菌薬のなかでもっとも汎用されている薬剤である.点眼薬では0.5%LVFX点眼液(製品名:クラビットR点眼液0.5%,参天製薬,以下0.5%LVFX)がその有効性と安全性から汎用されてきたが,その反面,細菌に対するLVFXの感受性低下の報告も少なくない1.3).筆者らも以前,全科の入院患者および外来患者から採取した眼脂より培養同定した細菌に対するLVFXの感受性を検討したところ,グラム陽性菌に対する耐性率が約70%であったことを報告してい〔別刷請求先〕藤紀彦:〒807-8555北九州市八幡西区医生ケ丘1-1産業医科大学眼科学教室Reprintrequests:NorihikoTou,DepartmentofOphthalmology,UniversityofOccupationalandEnvironmentalHealth,Japan,1-1Iseigaoka,Kitakyusyu807-8555,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(111)1339 る4).2011年に,1.5%LVFX点眼液(製品名:クラビットR点眼液1.5%,参天製薬,以下1.5%LVFX)が発売された.0.5%LVFXより前房への移行性が高く,眼内炎予防が期待される薬剤であるが,周術期の減菌化に対する報告5,6)は少ない.また,0.5%LVFXの3週間点眼投与により耐性菌への菌交代が示唆された報告7)や,抗菌薬の耐性化は総投与量に比例するとの報告8)もあることから,投与期間の短縮など,より適正な使用方法の検討が求められている.産業医科大学病院では,白内障手術時に0.3%ガチフロキサシン(GFLX)点眼液(製品名:ガチフロR点眼液0.3%,千寿製薬,以下0.3%GFLX)を使用し,手術当日および術後4週間の点眼を行っている.0.3%GFLXは,眼内炎の主要起炎菌に対する十分な抗菌力を有するとともに,MIC上昇を軽減する9,10)などの特徴があり,さらにこれまでの使用経験によりその有効性と安全性が十分に確認できている.そこで今回,筆者らは,0.3%GFLXを対照薬とし1.5%LVFXの手術当日点眼における白内障手術患者の結膜.内検出菌の減菌化率について検討した.I対象および方法本研究は事前に産業医科大学倫理委員会の承認を取得し,患者からの文書による同意を得たうえで実施した.1.対象2012年5月.11月に白内障手術を予定し産業医科大学病院に来院した20歳以上の男女を対象とした.同意取得時に次の事項のいずれかに該当する患者は対象から除外した.(1)観察期間中に抗菌薬の投与(全身投与および点眼を含む頭部への局所投与)が避けられない者(手術当日のみフルオロキノロン以外の全身薬は併用可).(2)観察期間中に抗炎症薬の投与(手術当日まで点眼を含む頭部への局所投与,手術当日以降全身投与)が避けられない者.(3)本試験期間中にコンタクトレンズ装用を希望する者.(4)フルオロキノロン系抗菌薬に対し,アレルギーあるいは重大な副作用の既往のある者.(5)重篤な基礎疾患,合併症を有するなどの理由で研究者らが本試験への参加に支障があると判断した者.2.使用薬剤および投与方法抗菌薬は,1.5%LVFXまたは0.3%GFLXを用い,手術当日の手術2時間前より20分ごと3回,以後30分ごとに継続点眼した.なお,術後は手術翌日から1日3回4週間点眼した.3.菌検査抗菌薬点眼開始前(以下,点眼前),手術当日の術直前(以下,術前)に細菌検査を実施した.細菌検査に用いる検体は,1340あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015滅菌綿棒で結膜.を擦過することにより採取し,輸送用培地(ANAポート)に入れ凍結保存した後,(財)阪大微生物病研究会に送付した.直接培養は,5%羊血液加コロンビア寒天培地またはチョコレート寒天培地にて36.5℃,好気下で24.48時間,または5%羊血液加コロンビア寒天培地にて36.5℃,嫌気下で1.5日間で分離培養した.直接培養で細菌の増殖が認められなかった場合,臨床用TGC培地にて36.5℃で1.2週間増菌培養を行った.細菌の発育を認めた検体は直接培養および増菌培養ともに細菌同定検査を行った.同定された細菌について,眼科用薬剤感受性プレートSG17(栄研化学,東京)にて最小発育阻止濃度(MIC)(μg/ml)測定を行った.4.評価方法1.5%LVFX群および0.3%GFLX群における手術当日の点眼開始前に対する減菌化率を算出し,薬剤間の減菌化の比較を行った.減菌化率は,菌陰性眼数/点眼開始前菌陽性眼数×100(%)とし,直接培養における減菌化率を算出した.結果の解析は,c2検定で行い,有意水準は両側5%とした.また,直接培養および増菌培養を含めた減菌化率も同様に算出した.MICが測定可能であった主要な菌については,MIC90を算出した.薬剤感受性の判定はCLSI(ClinicalandLaboratoryStandardsInstitute)基準に準拠し,MIC値に応じて,「S」を感性,「I」を中間,「R」を耐性と区別し,耐性の割合について評価した.なお,Corynebacteriumspp.は設定がないため,ブドウ球菌属の値を代用した.II結果1.症例の内訳(表1)本研究には85例122眼(1.5%LVFX:42例58眼,0.3%GFLX:43例64眼)が登録された.ここから,点眼前または術前の菌検査が未実施の5眼(1.5%LVFX:5眼),増菌培養を含めて点眼前の菌検査が陰性であった24眼(1.5%LVFX:7眼,0.3%GFLX:17眼)を除く,66例93眼(1.5%LVFX:33例46眼,0.3%GFLX:33例47眼)が直接培養および増菌培養の評価対象となった.このうち,直接培養のみの評価対象は37例47眼(1.5%LVFX:22例28眼,0.3%GFLX:15例19眼)であった.2.菌検査結果点眼前の菌検査で直接培養のみで陽性であった37例47眼からは73株(1.5%LVFX:49株,0.3%GFLX:24株)が検出され,その割合はCorynebacteriumspp.が42.5%(31/73株),Propionibacteriumacnesが21.9%(16/73株),Staphylococcusepidermidisが13.7%(10/73株)の順でグラム陽性菌が多くを占めた.また,直接培養および増菌培養が陽性であった66例93眼より158株(1.5%LVFX群:85株,0.3%GFLX群:73(112) 株)が検出された(図1).このなかで多く検出された菌は,Propionibacteriumacnesでその割合は37.3%(59/158株)であった.次いで,Corynebacteriumspp.が21.5%(34/158株),Staphylococcusepidermidisが17.1%(27/158株)であった.表1症例の内訳1.5%0.3%LVFX群GFLX群合計症例数22例28眼15例19眼37例47眼平均年齢73.0±9.872.1±15.972.7±12.5直接培養(歳)男性13例17眼6例8眼19例女性9例11眼9例11眼18例症例数33例46眼33例47眼66例93眼直接培養平均年齢72.4±9.772.2±12.272.3±11.0+(歳)増菌培養男性18例27眼15例22眼33例女性15例19眼18例25眼33例0.6%3.2%0.6%2.5%37.3%7.0%17.1%2.5%0.6%3.2%2.5%1.3%21.5%StaphylococcusaureusMRSAStaphylococcusepidermidisCNS(S.epidermidisを除く)StreptococcuspneumoniaeStreptococcusspp.EnterococcusfaecalisEnterococcusspp.Corynebacteriumspp.Propionibacteriumacnesその他グラム陽性菌Morganellamorganiiその他グラム陰性菌3.手術前減菌化率点眼前菌陽性眼を対象とした直接培養による手術前減菌化率は,1.5%LVFX群で53.6%(15/28眼),0.3%GFLX群で52.6%(10/19眼)であり,両群間に統計学的に有意な差は認められなかった(c2検定,p=0.9495).また,直接培養および増菌培養による手術前減菌化率は,1.5%LVFX群で30.4%(14/46眼),0.3%GFLX群で17.0%(8/47眼)であり,両群間において統計学的に有意な差は認められなかった(c2検定,p=0.1280)(表2).菌別の手術前減菌化率は,直接培養で検出されたすべての菌において1.5%LVFX群69.4%(34/49株),0.3%GFLX75.0%(18/24株),直接培養および増菌培養では1.5%LVFX群60.0%(51/85株),0.3%GFLX群57.5%(42/73株)であった.直接培養および増菌培養における検出菌ごとの手術前減菌化率は,表3に示した.表2術前減菌化率(結膜.内由来菌)直接培養直接培養+増菌培養LVFX群GFLX群LVFX群GFLX群点眼前菌陽性眼28194647菌陽性眼1393239菌消失眼1510148術前減菌化率(%)53.652.630.417図1点眼開始前検出菌158株(直接培養+増菌培養)表3検出菌別手術前減菌化率(直接培養および増菌培養)1.5%LVFX群0.3%GFLX群減菌化例/採用例減菌化率(%)減菌化例/採用例減菌化率(%)Staphylococcusaureus1/2.3/3.MRSA2/2.2/2.Staphylococcusepidermidis10/1662.54/1136.4CNS(S.epidermidisを除く)1/2.2/2.Streptococcuspneumoniae1/1…Streptococcusspp.2/3.2/2.Enterococcusfaecalis1/2.0/2.Enterococcusspp…2/2.Corynebacteriumspp.10/18508/1650Propionibacteriumacnes16/325013/2748.1その他グラム陽性菌6/61005/5100Morganellamorganii1/1…その他グラム陰性菌..1/1.合計51/856042/7357.5症例数が5例未満の場合,菌別減菌化率の算出は行わなかった.(113)あたらしい眼科Vol.32,No.9,20151341 4.点眼前後の薬剤感受性点眼前に直接培養または増菌培養により検出され,かつMICが測定できたおもな検出菌の各薬剤におけるMIC90は次のとおりであった.Corynebacteriumspp.34株のMIC90はLVFXが128μg/ml(0.25.>128μg/ml),GFLXが32μg/ml(0.25.128μg/ml),Staphylococcusepidermidis27株のMIC90は,LVFXが64μg/ml(0.25.>128μg/ml),GFLXが16μg/ml(0.25.64μg/ml),Propionibacteriumacnes15株のMIC90はLVFXが1μg/ml(0.25.16μg/ml),GFLXが0.5μg/ml(0.25.0.5μg/ml)であった.また,CLSI基準によるおもな検出菌の耐性率は,LVFX,GFLXでそれぞれ,Corynebacteriumspp.で73.5%(25/34株),64.7%(22/34株),Staphylococcusepidermidisで59.3%(16/27株),55.6%(15/27株),Propionibacteriumacnesで6.7%(1/15株),0.0%(0/15株)であった.III考察内眼手術前患者の結膜.内常在菌に対するLVFX耐性状況を検討した櫻井らの報告1)では,StaphylococcusepidermidisのLVFX耐性率は24.8%であり,キノロン耐性株も少なからず検出されている.また,0.5%LVFXの3週間点眼投与においてStaphylococcusepidermidisの薬剤感受性とキノロン耐性決定領域遺伝子変異との関係を検討したMiyanagaらの報告7)では,methicillin-resistantStaphylococcusepidermidisの割合は点眼前33%で,点眼3週間後には73%と上昇している.このとき,同様の条件で投与した0.3%GFLXでは点眼前43%,点眼3週間後40%と差はなかった.一方,結膜.から分離されたmethicillin-resistantcoagulase-negativestaphylococciのキノロン耐性について検討した星らの報告2)では,GFLXやモキシフロキサシンなどの第4世代のキノロンには感受性であってもオフロキサシンやLVFXに耐性を示す株が43.4%とキノロン間でも差があることが示唆されている.今回,点眼前に検出されたStaphylococcusepidermidisに対するLVFXおよびGFLXの耐性率をCLSI基準に準拠し算出したところ,59.3%,55.6%と高く,Staphylococcusepidermidisのキノロンに対する耐性化が示唆された.LVFXだけでなくGFLXの耐性率が高くなっている理由としては,フルオロキノロン間での交叉耐性が認められるとの羽藤らの報告11)より,LVFXの耐性率の増加とともにGFLXの耐性率も増加している可能性が考えられた.一方,点眼前のStaphylococcusepidermidisに対するMICは,LVFXでは0.25.>128μg/mlと広範囲に分布し,術前においても128μg/ml未満の株が検出され,高濃度製剤であっても1回の点眼では,高度耐性株を減菌できないことが示唆された.GFLXでは0.25.64μg/mlと広範囲に分布1342あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015していたが,点眼前も術前もMICが128μg/ml以上を示すような高度耐性株は認められなかった.このように耐性率は同程度であっても,MICでは差が認められた.0.5%LVFXと0.3%GFLXを比較した矢口らの報告12)では,手術前1週間,1日4回点眼による減菌化率は,0.5%LVFX群で70.0%,0.3%GFLX群で74.3%であった.また,望月ら13)は,白内障および緑内障周術期の術前減菌化率を検討し,術前3日前から1日4回点眼したときの術前減菌化は0.5%LVFX群が93.3%,0.3%GFLX群が95.8%であったと報告している.今回の1.5%LVFXと0.3%GFLXの減菌化率は,それぞれ53.6%と52.6%であった.これは,施設,投与方法および培養条件などに違いがあるとはいえ,既報の結果と比べても低い値だと考えられる.志熊ら14)は,点眼日数による減菌化率を検討し,0.5%LVFX点眼を1日5回点眼したときの手術前1日点眼群での減菌化率は88.2%,手術前3日点眼群では95.8%であり,有意差は認められていないものの3日点眼のほうが高い傾向にあったと報告している.また,日本眼感染症学会が術前点眼を検討した報告15)でも,1日前投与より3日前点眼の減菌効果が高く,より眼内炎の予防に適していると結論づけられている.また,1.5%LVFX点眼の減菌化を検討した南ら5)およびSuzukiら6)の報告では,手術3日前から1日3回投与で検討を行っており,減菌化率はそれぞれ93%,86.7%であった.これらの報告からすると,今回の術前減菌化率の低さは術前の点眼期間に依存する結果と考えられ,高濃度製剤である1.5%LVFX点眼液であっても術前の点眼期間を考慮する必要があると考えられた.今回の検討から,1.5%LVFXと0.3%GFLXの減菌化率は差がなかった.また,過去の報告と比較して術前の減菌化率が低いことより術前の点眼期間を考慮する必要があることが示唆された.今後,使用方法については,さらなる検討が必要であると考えられた.文献1)櫻井美晴,林康司,尾羽澤実ほか:内眼手術術前患者の結膜.細菌叢のレボフロキサシン耐性率.あたらしい眼科22:97-100,20052)星最智:正常結膜.から分離されたメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌におけるフルオロキノロン耐性の多様性.あたらしい眼科27:512-517,20103)小前恵子,山上聡,亀井裕子ほか:内眼手術前患者の結膜.内常在菌と薬剤耐性.眼臨紀4:1137-1140,20114)藤紀彦,山下美恵,田原昭彦:眼脂培養からの同定菌のフルオロキノロンに対する耐性の比較検討.臨眼60:703706,20065)南雅之,長谷川裕基,藤澤邦見:レボフロキサシン点眼1.5%の周術期無菌化療法.臨眼67:1381-1384,2013(114) 6)SuzukiT,TanakaH,ToriyamaKetal:Prospectiveclinicalevaluationof1.5%levofloxacinophthalmicsolutioninophthalmicperioperativedisinfection.JOculPharmacolTher29:887-892,20137)MiyanagaM,NejimaR,MiyaiTetal:Changeindrugsusceptibilityandthequinolone-resistancedeterminingregionofStaphylococcusepidermidisafteradministrationoffluoroquinolones.JCataractRefractSurg52:151-161,20088)NeuhauserMM,WeinsteinRA,RydmanRetal:Antibioticresistanceamonggram-negativebacilliinUSintensivecareunits:implicationsforfluoroquinoloneuse.JAMA289:885-888,20039)TakeiM,FukudaH,KishiiRetal:Targetpreferenceof15quinolonesagainstStaphylococcusaureus,basedonantibacterialactivitiesandtargetinhibition.AntimicrobAgentsChemother45:3544-3547,201110)FukudaH,KishiiR,TakeiMetal:Contributionsofthe8-methoxygroupofgatifloxacintoresistanceselectivity,targetpreference,andantibacterialactivityagainstStreptococcuspneumoniae.AntimicrobAgentsChemother45:1649-1653,200111)羽藤晋,南川洋子,山田昌和:結膜.から分離されたブドウ球菌に対する二変量ノンペラメトリック密度を用いた薬剤感受性分布解析.あたらしい眼科24:663-667,200712)矢口智恵美,佐々木香る,子島良平ほか:ガチフロキサシンおよびレボフロキサシンの点眼による白内障周術期の減菌効果.あたらしい眼科23:499-503,200613)望月英毅,高松倫也,木内良明:ガチフロキサシンとレボフロキサシン点眼による白内障および緑内障周術期の減菌効果.臨眼64:231-237,201014)志熊徹也,松本哲哉:白内障術前患者の結膜.内常在菌と培養方法の検討.眼臨101:254-258,200715)InoueY,UsuiM,OhashiYetal:Preoperativedisinfectionoftheconjunctivalsacwithantibioticsandiodinecompounds:aprospectiverandomizedmulticenterstudy.JpnJOphthalmol52:151-161,2008***(115)あたらしい眼科Vol.32,No.9,20151343

シンポジウムⅡ:機能と構造の評価,その最前線 スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)の黄斑部解析と視野

2015年9月30日 水曜日

13365109,22,No.30910-1810/15/\100/頁/JCOPY《第3回日本視野学会シンポジウム》あたらしい眼科32(9):1336.1338,2015cはじめに緑内障は視神経乳頭の篩状板において網膜神経線維層(nervefiberlayer:NFL)が障害され,その細胞体である神経節細胞層(ganglioncelllayer:GCL)が減少することにより視野障害が生じる疾患である.診断には視神経乳頭所見と視野検査が必須であるが,視神経乳頭の形態は,近視眼にみられるような傾斜乳頭をはじめとして個人差が大きく,主観的な乳頭所見のみでは診断が困難な症例が存在する.一方で,視野検査は自覚的検査で検査時間が長いため,日常診療においてすぐに検査を行うことがむずかしいことがある.そのため,視野検査を行う前のスクリーニングとして,他覚的な評価が可能で診断力の高い検査方法が期待されていた.撮影時間が短く再現性の高い検査であるspectraldomainOCT(SD-OCT)の登場により,黄斑部網膜の各層を描出し,自動で各層厚を測定することができるようになった.現在,緑内障の診断や経過観察に広く用いられている.ISD-OCTを用いた黄斑部解析緑内障に対するSD-OCTの解析方法として,おもに乳頭周囲神経線維層(circumpapillaryretinalnervefiberlayer:cpRNFL)解析,黄斑部解析の2つがある.CpRNFL解析は視神経乳頭周囲の神経線維層厚の評価を行う.視神経乳頭周囲はすべての網膜神経線維が集まる領域であり,緑内障に対する診断に有用であることが報告されている.一方,黄斑部解析は,解析領域が黄斑部に限定されるがGCLを解析することができるため緑内障の病態に即した評価が可能であり,cpRNFLと比較して乳頭周囲の大血管や乳頭周囲萎縮の影響を受けにくく,信頼性の高い結果が得られやすい.現在のSD-OCTは,NFL,GCLを評価する自動解析ソフトが内蔵されており,厚みをカラーコード表示する解析法や,正常眼データベースと比較し確率的に菲薄化した領域を表示する解析法などが,各機種により搭載されている.3D-OCT(トプコン社)を用いた黄斑部解析結果の例を図1に示す.以下,SD-OCTの黄斑部解析を用いた,緑内障の検出力と,固視点近傍暗点の検出力について,また,緑内障の進行評価につ1336(108)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY〔別刷請求先〕木村友剛:〒606-8507京都市左京区聖護院川原町54京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座眼科学Reprintrequests:YugoKimura,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmologyandVisualSciences,KyotoUniversityGraduateSchoolofMedicine,54Shogoin-Kawaramachi,Sakyo-ku,Kyoto-shi,Kyoto606-8507,JAPANシンポジウムII:機能と構造の評価,その最前線スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)の黄斑部解析と視野木村友剛京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座眼科学MacularAnalysiswithSD-OCTandVisualFieldDefectinGlaucomaYugoKimuraDepartmentofOphthalmologyandVisualSciences,KyotoUniversityGraduateSchoolofMedicine図1緑内障眼におけるSD-OCTの黄斑部解析A:カラー眼底写真.B:Humphrey24-2視野.C~E:厚みマップ.F~H:確率マップ.上方の視野障害を認め,厚みマップと確率マップのいずれの解析層においても視野障害と対応する黄斑部下方の菲薄化を認めた.0910-1810/15/\100/頁/JCOPY《第3回日本視野学会シンポジウム》あたらしい眼科32(9):1336.1338,2015cはじめに緑内障は視神経乳頭の篩状板において網膜神経線維層(nervefiberlayer:NFL)が障害され,その細胞体である神経節細胞層(ganglioncelllayer:GCL)が減少することにより視野障害が生じる疾患である.診断には視神経乳頭所見と視野検査が必須であるが,視神経乳頭の形態は,近視眼にみられるような傾斜乳頭をはじめとして個人差が大きく,主観的な乳頭所見のみでは診断が困難な症例が存在する.一方で,視野検査は自覚的検査で検査時間が長いため,日常診療においてすぐに検査を行うことがむずかしいことがある.そのため,視野検査を行う前のスクリーニングとして,他覚的な評価が可能で診断力の高い検査方法が期待されていた.撮影時間が短く再現性の高い検査であるspectraldomainOCT(SD-OCT)の登場により,黄斑部網膜の各層を描出し,自動で各層厚を測定することができるようになった.現在,緑内障の診断や経過観察に広く用いられている.ISD-OCTを用いた黄斑部解析緑内障に対するSD-OCTの解析方法として,おもに乳頭周囲神経線維層(circumpapillaryretinalnervefiberlayer:cpRNFL)解析,黄斑部解析の2つがある.CpRNFL解析は視神経乳頭周囲の神経線維層厚の評価を行う.視神経乳頭周囲はすべての網膜神経線維が集まる領域であり,緑内障に対する診断に有用であることが報告されている.一方,黄斑部解析は,解析領域が黄斑部に限定されるがGCLを解析することができるため緑内障の病態に即した評価が可能であり,cpRNFLと比較して乳頭周囲の大血管や乳頭周囲萎縮の影響を受けにくく,信頼性の高い結果が得られやすい.現在のSD-OCTは,NFL,GCLを評価する自動解析ソフトが内蔵されており,厚みをカラーコード表示する解析法や,正常眼データベースと比較し確率的に菲薄化した領域を表示する解析法などが,各機種により搭載されている.3D-OCT(トプコン社)を用いた黄斑部解析結果の例を図1に示す.以下,SD-OCTの黄斑部解析を用いた,緑内障の検出力と,固視点近傍暗点の検出力について,また,緑内障の進行評価につ1336(108)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY〔別刷請求先〕木村友剛:〒606-8507京都市左京区聖護院川原町54京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座眼科学Reprintrequests:YugoKimura,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmologyandVisualSciences,KyotoUniversityGraduateSchoolofMedicine,54Shogoin-Kawaramachi,Sakyo-ku,Kyoto-shi,Kyoto606-8507,JAPANシンポジウムII:機能と構造の評価,その最前線スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)の黄斑部解析と視野木村友剛京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座眼科学MacularAnalysiswithSD-OCTandVisualFieldDefectinGlaucomaYugoKimuraDepartmentofOphthalmologyandVisualSciences,KyotoUniversityGraduateSchoolofMedicine図1緑内障眼におけるSD-OCTの黄斑部解析A:カラー眼底写真.B:Humphrey24-2視野.C~E:厚みマップ.F~H:確率マップ.上方の視野障害を認め,厚みマップと確率マップのいずれの解析層においても視野障害と対応する黄斑部下方の菲薄化を認めた. いて概説する.1.緑内障の検出力緑内障の検出力について,当科緑内障外来にて検討を行った.SD-OCTの黄斑部解析のパラメータとして,神経線維層+神経節細胞層+内網状層(NFL+GCL+IPL)とGCL+IPL,また比較対象としてcpRNFLを用いた.緑内障の検出力の指標として,ROC曲線を用いた受信者作動曲線下面積(AROC)を用いて検討した.AROCは0.5から1までの値をとり,1に近づくにつれて感度特異度に優れることを表す.まず緑内障50眼と正常35眼との比較において,NFL+GCL+IPL容積とcpRNFLを用いて緑内障の検出力を検討した.AROCはNFL+GCL+IPL容積が0.922,cpRNFLが0.971となり,同等の良好な検出力をもっていることが示された1).さらに緑内障性視野障害を認めない極早期(preperimetric)緑内障に対する検出力について評価を行った.黄斑部パラメータとしてNFL+GCL+IPL厚を用いた.Preperimetric緑内障30眼と正常35眼において,cpRNFLは有意差を認めなかった(p=0.12)が,preperimeric緑内障のNFL+GCL+IPL厚は正常眼と比較し有意に菲薄化しており(p=0.001),AROCは0.74とfairな検出力を示した.したがって,preperimetric緑内障ではcpRNFLよりも黄斑部解析のほうが有用な診断法であるといえる2).また,緑内障で障害される網膜神経線維の一部は黄斑部から離れた弓状神経線維として存在するため,黄斑部解析では評価できない神経線維が存在する.検出力を向上させるため解析範囲を拡大した解析法を用いて検討を行った.初期緑内障とpreperimetiric緑内障を合わせた47眼と正常46眼に対して,6mm四方(normal)と8mm四方(wide)の2つのNFL+GCL+IPL厚解析を行った.wideNFL+GCL+IPLのAROCは0.92,normalNFL+GCL+IPLは0.876,cpRNFLは0.881であり,wideNFL+GCL+IPLは有意にnormalNFL+GCL+IPLより良好な検出力をもち,またwideNFL+GCL+IPLとcpRNFLは同程度であった.黄斑部の解析範囲を広げると検出力が向上することが示唆された3).また,画像解析方法の向上によりGCL+IPL層厚の評価が可能となった.POAG58眼と正常48眼との比較において,GCL+IPLのAROCは0.929,cpRNFLは0.919と同程度の診断力をもっていた4).以上の検討をまとめると,黄斑部解析は緑内障における神経線維障害を必ずしもすべて捉えていないため検出力の限界が見込まれるにもかかわらず,cpRNFLと同等の高い検出力をもつといえる(表1).2.固視点近傍暗点の検出力緑内障診療において,固視点近傍暗点は患者の視覚の質に対する影響が大きいため,留意すべきである.緑内障は一般的に周辺部視野から障害されるため,固視点近傍暗点はおもに進行した症例に認めるが,初期から生じる症例も存在し視機能へ及ぼすリスクが高いといえる.しかし,緑内障に一般的に用いられるHumphrey24-2視野は測定点の間隔が広く早期の固視点近傍暗点だと異常を検出できないこともあるため,その検出にはHumphrey10-2視野を積極的に用いたほうがよい(図2).初期緑内障78眼において,OCTの黄斑部解析を使った独自のパラメータにおけるHumphrey10-2視野の暗点の検出力を検討した.黄斑部解析のパラメータとして,NFL+GCL+IPL,GCL+IPL,NFLの3つの確率マップを用いて中心窩から異常領域までの最短距離を計測し,比較としてcpRNFLを用いた.中心10°以内暗点の検出力は,NFL+GCL+IPLが0.680,GCL+IPLが0.738,NFLが0.589,cpRNFLが0.678であり,いずれの黄斑部パラメータもcpRNFLと同等の検出力であった.一方,中心5°以内暗点の検出力は,NFL+GCL+IPLが0.84,GCL+IPLが0.87,NFLが0.76,cpRNFLが0.67であり,NFL+GCL+IPLとGCL+IPLはcpRNFLよりも有意に良好な検出力をもっていた(図3).とくに,固視点により近く視機能に影響を及ぼすリスクの高い5°以内の暗点について,黄斑部解析の有用性が示された5).3.黄斑部解析を用いた緑内障進行検出緑内障の進行の評価には,Humphrey視野検査のMD(meandeviation)スロープが広く用いられている.しかし,表1黄斑部解析とcpRNFLの緑内障検出力の比較黄斑部解析cpRNFL病期解析層AROCAROCp値すべて8)NFL+GCL+IPL0.9220.9710.11極早期2)NFL+GCL+IPL0.74NANA早期+極早期8)wideNFL+GCL+IPL0.920.8810.373早期4)GCL+IPL0.9290.9190.861AROC:受信者作動曲線下面積,cpRNFL:乳頭周囲網膜神経線維層,NFL:神経線維層,GCL:神経節細胞層,IPL:内網状層.(109)あたらしい眼科Vol.32,No.9,20151337 AB1.01.00.80.80.60.60.4NFLcpRNFL0.2GCL+IPL0.20.0NFL+GCL+IPL0.00.00.20.40.60.81.00.00.20.40.60.81.01-特異1-特異CD1.01.00.80.80.60.6感度感度感度0.4図2極早期緑内障における固視点近傍暗点と黄斑部解析A:カラー眼底写真.B:Humphrey24-2視野.C:Humphrey感度0.40.4NFL10-2視野.D~F:確率マップ.下方の視神経乳頭陥凹拡大とcpRNFL0.2GCL+IPL0.2NFL+GCL+IPL網膜神経線維欠損を認めるが,24-2視野には固視点近傍暗点は認められない.一方,10-2視野においては固視点につながるような上方の固視点近傍暗点を認めた.さらに黄斑部解析においては下方黄斑部の菲薄化が認められ,視野障害の位置と対応していた.視野検査は自覚的検査であるため,信頼性のある結果を得るために複数回の検査が必要な場合もあり,MDスロープを求めるためにはさらに数年の経過が必要であると考えられている.そのため,OCTパラメータにおける進行と視野進行を比較した研究が行われている.NaらはPOAG141眼を対象として,Humphrey視野と眼底所見における緑内障進行とOCTの黄斑部パラメータの進行との比較を行った6).OCTパラメータとして全網膜厚,GCL+IPL厚,cpRNFLを用いた.平均2.2年の経過観察を行い,38眼が視野と眼底所見で進行と判定されたが,緑内障進行を検出可能な感度は全網膜厚14%,GCL+IPL厚8%,cpRNFL5%であった.したがって,短期間の経過観察においてOCTは視野障害の進行を必ずしも捉えきれないことを示唆している.まとめOCTの黄斑部解析による緑内障の検出力はcpRNFLと同等であり,初期緑内障の固視点近傍暗点の検出力はcpRNFLよりも良好であった.緑内障の進行検出において,黄斑部パラメータの進行は必ずしも視野障害の進行を代用できるとはいえないが,緑内障の病態評価のための有用な他覚的な指標であるといえる.文献1)MoriS,HangaiM,SakamotoAetal:Spectral-domainopticalcoherencetomographymeasurementofmacularvolumefordiagnosingglaucoma.JGlaucoma19:5280.00.00.00.20.40.60.81.01-特異1-特異0.00.20.40.60.81.0図3黄斑部解析の確率マップを用いたHumphrey10-2視野における視野障害のROC曲線A:黄斑部解析パラメータを用いた中心10°以内暗点のROC曲線.B:cpRNFLを用いた中心10°以内暗点のROC曲線.C:黄斑部解析パラメータを用いた中心5°以内暗点のROC曲線.D:cpRNFLを用いた中心5°以内暗点のROC曲線.中心10°以内のAROCは,3つの黄斑部解析パラメータとcpRNFLは有意な差を認めなかった.一方,中心5°以内のAROCは,GCL+IPLとNFL+GCL+IPLがcpRNFLと比較して有意に検出力が高かった.534,20102)KoteraY,HangaiM,HiroseFetal:Three-dimensionalimagingofmacularinnerstructuresinglaucomabyusingspectral-domainopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci52:1412-1421,20113)MorookaS,HangaiM,NukadaMetal:Wide3-dimensionalmacularganglioncellcompleximagingwithspec-tral-domainopticalcoherencetomographyinglaucoma.InvestOphthalmolVisSci53:4805-4812,20124)TakayamaK,HangaiM,DurbinMetal:Anovelmethodtodetectlocalganglioncelllossinearlyglaucomausingspectral-domainopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci53:6904-6913,20125)KimuraY,HangaiM,MatsumotoAetal:Macularstructureparametersasanautomatedindicatorofparacentralscotomainearlyglaucoma.AmJOphthalmol156:907917,20136)NaJH,SungKR,BaekSetal:Detectionofglaucomaprogressionbyassessmentofsegmentedmacularthicknessdataobtainedusingspectraldomainopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci53:38173826,2012(110)

シンポジウムⅠ:視機能の評価,その最前線 両眼の働きと両眼視野の評価

2015年9月30日 水曜日

《第3回日本視野学会シンポジウム》あたらしい眼科32(9):1333.1335,2015cシンポジウムI:視機能の評価,その最前線両眼の働きと両眼視野の評価若山曉美近畿大学医学部眼科学教室BinocularFunctionandAssessmentofBinocularVisualFieldAkemiWakayamaDepartmentofOphthalmology,KinkiUniversityFacultyofMedicineはじめに日常臨床において視野検査は,緑内障や視神経疾患などの診断や経過の評価に必須の検査である.検査は片眼を遮閉した状態で実施される.近年,診断や治療に加え,車の運転を含めた日常生活に視野障害がどのような影響を及ぼしているのかなど,患者のQOL(qualityoflife)の評価が重要視されるようになり,両眼視野を評価する必要性が高まってきた.視野異常を有する患者の両眼視野を評価するためには,正常人が両眼視野内でどのように視覚情報を処理しているのかを理解したうえで,視野障害が片眼性か両眼性か,また障害の程度や部位によって両眼視野への影響が異なるのかについて検討する必要がある.本稿では両眼視野の評価,両眼加重とその影響因子,視野異常を伴う症例の両眼視野,さらに両眼視野計の開発について述べる.I両眼視野の評価2000年にNelson-Quiggら1)は,両眼視野の評価としてbestlocation法の有用性を報告した.Bestlocation法は,各眼の感度結果から両眼の感度を予測する両眼予測モデルを採用している.その評価はmeansensitivityやmeandeviationといった視野全体を代表値として行っている.臨床で使用されている視野計は,おもに単眼を遮閉した状態で測定する単眼視野計として設計されており,両眼視野の測定においては両眼視下での固視監視などが問題となる.そこで筆者らは1999年から自動視野計Octopus201,101,900の3種類の視野計を用いて,両眼刺激装置や両眼固視監視カメラを組み込むなどの開発を行ってきた.また,両眼加重の評価は,両眼からの視覚情報を収斂したことによる働きであるかを検討するために,確率加重を超えた両眼の働き,つまりneuralsummationを評価した.その結果,実測した両眼の感度は,両眼の予測モデルよりも高いことがわかった.さらに両眼の感度は刺激条件によって,また刺激される網膜領域によって異なることが明らかとなった.両眼視野は単眼の感度からの予測モデルよりも実測することで詳細な検討が可能となる.II両眼加重とその影響因子両眼加重とは単眼よりも両眼での機能が高くなる働きである.1943年にPirenne2)よって報告されて以来,正常成人を対象に両眼加重に影響する因子について研究が行われてきた.両眼加重は低いコントラスト3,4)やボケの状態で高く5),高年齢で低くなること6)が報告されている.これまでの筆者らの研究では,小さい視標サイズや網膜周辺部7)で,また検出課題よりも認知課題8)で両眼加重が高くなることを明らかにした.さらにこれまでおもに提示する視標の影響について検討したが,日常生活ではさまざまな背景のなかで物体を抽出しており,背景の影響についても検討した.その結果,両眼加重は複雑な背景下では周辺部では無地な背景下よりも両眼加重が高く,背景によって両眼の働きが異なることが判明した9)(図1).また,感度のみではなく反応時間においても周辺部では両眼加重が高くなることを報告した10)(図2).これらの研究成果は,ヒトは単眼での知覚が困難な状況になると,両眼加重を働かせることによってより有効に視覚情報を処理し両眼での知覚を促進していることを明らかにした(表1).III視野異常を伴う症例の両眼視野視野異常を伴う症例の両眼視野については,自動視野計Octopus101に両眼固視監視装置を設置して両眼の感度を測〔別刷請求先〕若山曉美:〒589-8511大阪狭山市大野東377-2近畿大学医学部眼科学教室Reprintrequests:AkemiWakayama,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KinkiUniversityFacultyofMedicine,377-2Ohno-Higashi,Osakasayama,Osaka589-8511,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(105)1333 1.025040****NoiseNoise-free視標サイズ0.108°視標サイズ0.216°**0°5°15°25°反応時間の差(ms)(単眼─両眼)両眼加重比1.011.0030201000°3°6°9°12°15°18°偏心度偏心度(**p<0.01;twofactorfactorialANOVAandBonferroni/Dunntest)(*p<0.05;RepeatedmeasureANOVAandBonferroni/Dunntest)図1背景による両眼加重の違い図2視標サイズによる両眼と単眼の反応時間の差(文献10より改変)(文献9より改変)表1影響因子に対する両眼加重の違い影響因子高い.両眼加重.低い視標サイズ小さい大きい課題の違い知覚検出反応時間視標(小)周辺部視標(大)中心部網膜偏心周辺部中心部背景複雑単純(無地)CCDcameraholeプリズムは取り外しができ基底方向を自由に変更両眼視下での固視状態をモニタリングプリズム光路を変更自動視野計Octopus900眼位はドーム内に設置した赤外線カメラで監視図3両眼視下での固視監視システム定した.両眼の働きについては,Nelson-Quiggら1)が用いたbestlocationによる予測値と,実際に測定した実測値を比較検討した10).その結果,meansensitivityは予測値よりも実測値で低かった.各測定点における予測値と実測値の差は両眼ともに感度が低下している領域では,単眼視下よりも両眼視下で感度が高く,両眼加重を認めた.片眼のみの感度が低下している領域や両眼ともに正常な領域では両眼加重は認めず,正常成人とは異なる結果となった.視野異常を伴う症例では両眼ともに感度が低下し,知覚困難な領域では視覚情報を処理するために両眼加重の働きが起こったのではないかと考える.IV両眼視野計の開発これまでの研究から両眼の感度は,実測値と予測モデルを用いた予測値では異なり,両眼視野は実測値を用いた評価が重要であることを明らかにした.しかしながら臨床で両眼視野を実測するにはさまざまな問題がある.その一つが固視監視の問題である.両眼視野の測定では視野計ドームの中心に1334あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015(106) 被検者の鼻根部を合わせるため,固視モニターには鼻根部のみが投影されておりCCDカメラによる両眼視下での固視状態やHeiji-Krakau法による固視監視システムの使用ができない.このため信頼性の高い両眼視野の測定には,両眼視下での固視監視システムの稼働が必須となる.そこで筆者らは自動視野計Octopus900を用い,CCDカメラの部分に取り外しができるプリズムを挿入することで光路を変更し,固視モニターに測定眼を映し出すことで両眼視下で固視監視システムの稼働を可能にした(図3).さらに視線追跡装置を用いて視標を検出するときの視線を計測し,さらに精度の高い感度測定を目指し開発を進めている.おわりにこれまでの研究で,さまざまな状況で連続的に入力される視覚情報を有効に処理するために,知覚が困難な条件であるほど,単眼での働きを補うように両眼加重が起こることが明らかとなった.また,視野異常を伴う症例においても,両眼ともに感度が低下している領域においては両眼が有効的に働いている.両眼の働きを詳細に検討することは,ヒトが2つの眼を有する意義を知ることに繋がる.今後は,開発した装置を用いて視標検出時の視線の動きと感度の関係や実測値を基にした両眼感度のシミュレーションの確立,日常視機能の評価の実現を進めていきたい.文献1)Nelson-QuiggJM,CelloK,JohnsonCA:Predictingbinocularvisualfieldsensitivityfrommonocularvisualfieldresults.InvestOphthalmolVisSci41:2212-2221,20002)PirenneMH:Binocularanduniocularthresholdofvision.Nature152:698-699,19433)GrigsbySS,TsouBH:Gratingandflickersensitivityinthenearandfarperiphery:nasa-temporalasymmetriesandbinocularsummation.VisionRes34:2841-2848,19944)WoodJM,CollinsMJ,CarkeetA:Aregionalvariationsinbinocularsummationacrossthevisualfield.OphthalmicPhysiolOpt12:46-51,19925)SotirisP,DionysiaP,TrisevgeniGetal:Binocularsummationimprovesperformancetodefocus-inducedblur.InvestOphthalmolVisSci52:2784-2789,20116)PardhanS:Acomparisonofbinocularsummationintheperipheralvisualfieldinyoungandolderpatients.CurrEyeRes16:252-255,19977)WakayamaA,MatsumotoC,OhmureKetal:Propertiesofreceptivefieldonbinocularfusionstimulationinthecentralvisualfield.GraefesClinExpOphthalmol240:743-747,20028)WakayamaA,MatsumotoC,ShimomuraY:Binocularsummationofdetectionandresolutionthresholdsinthecentralvisualfieldusingparallel-linetargets.InvestOphthalmolVisSci46:2810-2815,20059)WakayamaA,MatsumotoC,OhmureKetal:Influenceoftargetsizeandeccentricityonbinocularsummationofreactiontimeinkineticperimetry.VisionRes51:174178,201110)WakayamaA,MatsumotoC,OhmureKetal:Influenceofbackgroundcomplexityonvisualsensitivityandbinocularsummationusingpatternswithandwithoutnoise.InvestOphthalmolVisSci53:387-393,201211)若山曉美:両眼加重の働きと影響因子─なぜヒトは2つの眼があるのか─.日本視能訓練士協会誌40:7-18,2011***(107)あたらしい眼科Vol.32,No.9,20151335

シンポジウムⅠ:視機能の評価,その最前線 有効視野の研究動向─交通事故と運転パフォーマンスとの関連─

2015年9月30日 水曜日

《第3回日本視野学会シンポジウム》あたらしい眼科32(9):1329.1332,2015cシンポジウムI:視機能の評価,その最前線有効視野の研究動向─交通事故と運転パフォーマンスとの関連─岡村和子科学警察研究所交通科学部交通科学第二研究室ResearchontheUsefulFieldofViewinRelationtoMotorVehicleAccidentsandDrivingPerformanceKazukoOkamuraNationalResearchInstituteofPoliceScience,DepartmentofTrafficScienceSecondTrafficScienceSectionはじめに自動車の運転では,ウィンドスクリーンとミラーを通して,時々刻々変化する視覚情報を素早く認知し,状況に応じた判断と操作をすることが要求される.視機能のなかでも,視野の働きが重要であることは自明である.マルチタスクであり,ときに複雑な情報処理が要求される自動車の運転では,視覚受容器の視野感度に加えて,大脳の情報処理の働きも重要となる.運転中は,自身が高速で移動しているため,静止時や歩行中と比べると,情報処理により正確さと速さが求められる.他の車両や歩行者が交錯する交差点など,取得すべき情報量が多い場面では,情報処理の負荷はさらに増えるが,このことが危険予知の遅れ,さらには交通事故の発生と関係する1).本稿では,知覚器で受容された視覚情報が,大脳で情報処理される過程に注目した有効視野とよばれる機能と,自動車運転の関係についての研究動向を紹介する.有効視野を測る方法はいくつも提案されているが,本稿ではおもに,有効視野の測定機器として世界中でもっとも多く使われているUFOVR(UsefulFieldofViewTest)を中心に紹介する.I有効視野の概念とUFOVR有効視野とは,頭や眼球を動かさずに,注視点の周りで瞬時に情報を取得できる視野範囲のことをさす.有効視野は,視覚情報の受容器そのものの感度だけでなく,特別に注意を払わなければならない状況や場面における高次の情報処理,視覚的注意(visualattention)と密接に関係する.視覚的注意の観点からは,各注視点を深く見ようとすると,有効視野が狭くなることがわかっている1).有効視野は,認知機能やさまざまな神経心理学的指標と相関があり,運転時のエラーや交通事故リスクを予測するのに有用とされている.有効視野は高齢になると低下する.高齢運転者が関与する交通事故が増加していることも相まって,1990年代以降,有効視野と自動車運転に関する研究は増えている.有効視野の測定機器として世界でもっともよく知られているUFOVRは,アラバマ大学の研究チームが開発して,VisualAwareness社が販売している.UFOVRは,眼科的な視機能検査と比べて,自動車運転を含む日常的な生活機能をよく予測できる2.4).過去と将来の交通事故リスク予測因子として優れている5,6)ことに加えて,訓練によりUFOVRの成績は向上することから,交通事故リスクが高いと考えられる人の事故リスクを低減させることが可能であるとされる7,8).UFOVRは,現在までに数種類が開発されている.現在販売されているものは,3種の下位検査から構成される(表1および図1).17インチモニターを使い,被験者の眼はモニターから46.61cm離して実施する.視覚刺激の呈示時間は,16.67.500msの範囲であり,被験者が75%の正答率で反応できた呈示時間が成績として記録される.表1に示した標準データは,65.94歳の高齢者2,759人のデータに基づく9).被験者の処理速度に応じて,3つの下位検査ごとに4.5段階で成績が示される.総合成績は,被験者の情報処理リスクが「非常に低い」から「高い」までの5段階で示される.II有効視野と交通事故Ballら(1993)5)は,それ以前の先行研究で,視機能と交〔別刷請求先〕岡村和子:〒277-0882千葉県柏市柏の葉6丁目3番地1科学警察研究所交通科学部交通科学第二研究室Reprintrequests:KazukoOkamura,Ph.D.,NationalResearchInstituteofPoliceScience,DepartmentofTrafficScienceSecondTrafficScienceSection,6-3-1,Kashiwanoha,Kashiwa,Chiba277-0882,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(101)1329 表1UFOVRの構成と判定下位検査内容具体的なタスク高齢者の標準データ平均値(標準偏差)(ms)最小値と最大値(ms)Subtest12種類の視覚刺激の弁別2種類の視覚刺激の弁別(3cm四方の正方形内の乗用車とトラックから,直前に呈示されたいずれかを選ぶ)30.66(40.51)16.500Subtest2分割注意中心部に呈示されたのと同一の視覚刺激(乗用車)が,偏心12.5cmの周辺部(放射状に分かれた8カ所)のいずれか)に呈示されるので,その位置を選ぶ.131.59(123.05)16.500Subtest3選択注意Subtest2と同じ課題であるが,周辺部がノイズとして47個の三角形で埋め尽くされている.319.67(133.83)43.500TotalSubtest1から3に基づく合成得点なし481.93(247.53)86.1,500注:値(ms)が小さいほど,処理速度が速いことを示す.Subtest1乗用車をタッチSubtest2周辺部に見えた乗用車の周辺部に見えた位置をタッチSubtest3乗用車の位置をタッチ図1UFOVRで呈示される刺激の例通事故との間に弱い相関しかみられなかった理由を,3つあげている.①交通事故はまれな現象であり,交通事故経験者を多く含むサンプルを分析しないと,交通事故と視機能の関連を統計的に見出しにくい.②視機能が低下している人は,運転調整(運転頻度や走行距離を減らす,走行速度を落とす,夜間や悪天候時の運転を避けるなどの自主的なリスク回避行動)を行っているため,交通事故率が高くならない.③視機能データに加えて,高次の情報処理を説明変数に加えていなかった.①と③の課題を克服すべく,Ballらは,米国アラバマ州の運転者データファイルに含まれた55歳以上の運転者12万人のデータから,年齢層別に交通事故歴のある人を意図的に多く割り付けたサンプル(55.90歳の運転者294人)を抽出し,過去5年間の交通事故率,健康状態,視野検査を含む視機能検査データ,UFOVRなど認知機能の関係を分析した.Ballらが設定したUFOVRのカットオフ値により,過去の交通事故の有無をよく説明することができたと報告している.中高年以上の年齢層の運転者を対象に,UFOVR,視機能,認知機能などを説明変数として,将来の交通事故発生をプロスペクティブに調べた研究でも,UFOVRは,交通事故の有無を予測する有力な変数であることが示されている6).被験者の走行距離で調整した場合,UFOVRの成績が悪い人が将来,交通事故を起こすオッズ比あるいはハザード比は2.2程度と報告されている4,7,10).被験者の年齢や性別,身体機能や認知機能も含めて多変量解析すると,UFOVRが将来の交通事故発生リスクに及ぼす相対的な影響度は少し下がる可能性もある.55.96歳の1,910人(運転免許の更新を終え,視力と視野に異常がみられなかった人)に,さまざまな身体機能と認知機能検査を行った研究7)では,UFOVRSubtest2の成績の,4,5年後の有責交通事故発生に対する調整済みオッ1330あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015(102) ズ比は1.31〔95%CI(95%confidenceinterval)=1.08.1.59〕であり,同時に実施した他の2,3の認知機能や視覚的注意の検査指標と同程度の影響力であった.III有効視野と運転パフォーマンス有効視野の広さは,注視点と周辺部に出現した事象の認知・検出効率,および注視点の移動効率と関係する.そして,若年者と高齢者を比べた場合,加齢の影響は,注視点でのパフォーマンスには大きく現れないが,視野の周辺部でのパフォーマンスに顕著に現れる1).前述のとおり,有効視野に問題がある人は,さまざまなレベルで運転調整をすることがあるため,有効視野の低下がただちに危険な運転行動に結びつくというわけではない.このことは,視野障害が運転行動に及ぼす影響にもいえる.軽度の緑内障であれば,視野障害がない人と運転行動に顕著な差はみられないが,視野周辺部に障害物があった場合,危険事象の発見が遅れた場合には不安全な運転行動が出やすい,あるいは危険予知そのものに問題がある可能性が示されている11,12).有効視野と運転行動の関係を分析した研究からは,両眼視野に障害がある人のUFOVRの成績およびコントラスト感度と,運転パフォーマンスの総合成績に有意な相関がみられた11),高齢者のUFOVRsubtest2の成績と運転エラーの数に有意な相関がみられた,視野の周辺部に注意を向けねばならない場合にエラーが増えたことが示されている13).UFOVR以外の有効視野の測度を使用した研究でも,注意の選択や切り替えが得意でない人は,他の車両や歩行者とのかかわり(右左折時,進路を譲る際など)において不都合が生じることがあった15),有効視野が狭い人には赤信号無視が多く観察された15)などと報告されている.通常の加齢に伴う視覚的注意の低下は,注意の狭窄(周辺部に気づかない)のためというよりは,注意の切り替え(ある対象から他の対象に注意を移す)が苦手になることによるのではないかとの指摘もある12,16).必要なときに注意の対象を素早く切り替えることを,運転訓練の内容に盛り込むことが有用とされる理由でもある.有効視野が狭い運転者が速度を落として走行するのは,周辺部の情報処理をするための適応的な行動と解釈できるが,有効視野と運転行動の関係を調べた研究の方法論上の課題は,眼科的な視機能検データを取得せず,有効視野とその他の認知機能のみを分析している研究が多い点にあるといえる(例外は文献15).IV教育・訓練による有効視野改善の可能性加齢により有効視野が狭くなっている,あるいは視野障害がある場合でも,そのことを本人が認識して,弱点や障害を補うことが可能なのであれば,運転を継続できたほうが好ましい.とくに,高齢者が運転をやめてしまうと,買い物や通(103)院など日常生活に支障が出るだけでなく,他者との社会的接触が減るため,心身の健康に好ましくない影響が出ることがわかっている13).視野障害がある人を含め,運転時に何らかの不安や不都合を抱える人による運転調整についてはすでに述べたが,視野障害がある人,あるいは有効視野が狭い人が,自分の障害や弱点を必ずしも自覚しているわけではないし,障害や弱点に応じた適切な運転調整をしているとも限らない17).したがって,運転時に現れやすい自分の弱点を認識して,運転パフォーマンスの自己評価と客観的評価のギャップを縮めるような教育・訓練を提供することが重要と考える.認知機能や有効視野を改善させることを目的とした訓練(ゲーム様のものを含む)を高齢者に実施したところ,UFOVRの成績が向上したとの実験結果はいくつも報告されている7,18).教育・訓練による運転パフォーマンスの変化を調べた研究に目を向けると,UFOVRの成績を高齢運転者本人にフィードバックすることにより,UFOVRの成績が低かった人が,夜間や悪天候時の運転回避頻度を増やした8),運転シミュレータを使って,歩行者や自動二輪車をより早く発見できるようにするための訓練を高齢運転者に施したところ,視野周辺部の歩行者などを早く発見できるようになった19)などの報告がある.高齢運転者の訓練プログラムでは,路上での運転指導により自分の運転方法についてフィードバックを受けたほうが,教室内の講義のみを行うよりも効果がある20,21).高齢運転者を対象とした安全講習などの機会を利用して視機能と有効視野を検査し,結果を個別にフィードバックするとともに,運転パフォーマンスと関連づけてアドバイスをすることによって,より確実な安全運転上の効果が期待できると考える.おわりに本稿は,運転パフォーマンスに顕著な影響を与える有効視野について,交通事故防止の観点から概説した.有効視野は中年までは加齢に伴う変化があまりみられず,高齢層で著しく変化することから,中高年以上の年齢層の運転者を被験者とした関連研究が大半を占める.この年齢層では,視野障害を伴う眼疾患の有病率も高くなることから,視機能検査と有効視野のデータを両方分析することにより,自動車運転を含めた日常生活への影響をより正確に推測することが可能になると考える.現在までに,「安全な」運転者と「不安全な」運転者を,十分な精度をもって判別できる単一の検査,あるいは検査バッテリーは存在しない.UFOVRは,交通事故リスクの予測力が高く,有力な測度であるが,UFOVRの結果のみを根拠に,運転免許の更新の可否を決定するのは困難と考えられる.誌面の関係で紹介できなかったが,UFOVR以外にも,あたらしい眼科Vol.32,No.9,20151331 交通事故や運転パフォーマンスに対する説明力が高い測度はいくつか特定されている4,6,7).しかし,いずれの測度も,それらの結果をもって運転免許の効力を停止するということはむずかしいと考える.本稿では,視覚的注意に関することとして,加齢とともに強まる注意の固定傾向を訓練により改善できる可能性16),動き(motion)の知覚力を高めることが危険予知能力を高め,結果的に有効視野を広めることにつながる可能性についても触れた.高齢運転者を対象に実施されている各種講習などにおいて,運転者の視機能と有効視野を個別に診断し,それぞれの弱点に応じた訓練を行うことができれば,より高い講習効果が得られると考える.文献1)三浦利章:運転時の視覚的注意と安全性.映像情報メディア学会誌61:1689-1692,20072)ClayOJ,WadleyVG,EdwardsJDetal:Cumulativemeta-analysisoftherelationshipbetweenUsefulFieldofViewanddrivingperformanceinolderadults:Currentandfutureimplications.OptomVisSci82:724-731,20053)BentleySA,LeBlancRP,NicolelaMTetal:Validity,reliability,andrepeatabilityoftheusefulfieldofviewtestinpersonswithnormalvisionandpatientswithglaucoma.InvestOphthalmolVisSci53:6763-6769,20124)RubinGS,NgESW,Bandeen-RocheKetal:Aprospective,population-basedstudyoftheroleofvisualimpairmentinmotorvehiclecrashesamongolderdrivers:TheSEEstudy.InvestOphthalmolVisSci48:1483-1491,20075)BallK,OwsleyC,SloaneMEetal:Visualattentionproblemsasapredictorofvehiclecrashesinolderdrivers.InvestOphthalmolVisSci34:3110-3123,19936)OwsleyO,BallK,McGwinGetal:Visualprocessingimpairmentandriskofmotorvehiclecrashamongolderadults.JAMA279:1083-1088,19987)BallK,EdwardsJD,RossLA:Theimpactofspeedofprocessingtrainingoncognitiveandeverydayfunctions.JGerontolBPsycholSciSocSci62B:19-31,20078)AckermanML,EdwardsJD,RossLAetal:Examinationofcognitiveandinstrumentalfunctionalperformanceasindicatorsfordrivingcessationriskacross3years.Gerontologist48:802-810,20089)EdwardsJD,RossLA,WadleyVGetal:Theusefulfieldofviewtest:Normativedataforolderadults.ArchClinNeuropsychol21:275-286,200610)BallK,RoenkerDL,WadleyVGetal:Canhigh-riskolderdriversbeidentifiedthroughperformance-basedmeasuresinadepartmentofmotorvehiclesetting?JAmGeriatrSoc54:77-84,200611)BowersA,PeliE,ElginJetal:On-roaddivingwithmoderatevisualfieldloss.OptomVisSci82:657-667,200512)HaymesSA,LeBlancRP,NicolelaMTetal:Glaucomaandon-roaddrivingperformance.InvestOphthalmolVisSci,49:3035-3041,200813)AnsteyKJ,WoodJ:Chronologicalageandage-relatedcognitivedeficitsareassociatedwithanincreaseinmultipletypesofdrivingerrorsinlatelife.Neuropsychology25:613-621,201114)RichardsonED,MarottoliRA:Visualattentionanddrivingbehaviorsamongcommunity-livingolderpersons.JGerontolABiolSciMedSci58:832-836,200315)WestSK,HahnDV,BaldwinKCetal:Olderdriversandfailuretostopatredlights.JGerontolABioSciMedSci65:179-183,201016)CosmanJD,LeesMN,LeeJDetal:Impairedattentionaldisengagementinolderadultswithusefulfieldofview.JGerontolBPsycholSciSocSci67:405-412,201117)WoodJM,LacherezPF,AnsteyKJ:Notallolderadultshaveinsightintotheirdrivingabilities:evidencefromanon-roadassessmentandimplicationsforpolicy.JGerontolABiolSciMedSci68:559-566,201318)EdwardsJD,ValdesEG,PerontoCetal:TheeffectsofInSightcognitivetrainingtoimproveusefulfieldofviewperformance:Abriefreport.JGerontolBPsycholSciSocSci,doi:10.1093/geronb/gbt113,201319)RogeJ,NdiayeD,VienneF:Usefulvisualfieldtraining:Awaytoimproveelderlycardrivers’abilitytodetectvulnerableroadusers.TranspResPartF26:246-257,201420)PorterMM:Olderdrivertrainingusingvideoandglobalpositioningsystemtechnology-arandomizedcontrolledtrial.JGerontolABiolSciMedSci68:574-580,201221)MarottoliRA,VanNessPH,AraujoKLBetal:Arandomizedtrialofaneducationprogramtoenhanceolderdriverperformance.JGerontolABiolSciMedSci62:1113-1119,2007.***1332あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015(104)

My boom 44.

2015年9月30日 水曜日

監修=大橋裕一連載.MyboomMyboom第44回「子島良平」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)連載.MyboomMyboom第44回「子島良平」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)自己紹介子島良平(ねじま・りょうへい)宮田眼科病院所属,眼科14年目私は2001年に宮崎医科大学(現宮崎大学医学部)を卒業し,そのまま現在の勤務先である宮田眼科病院に入局しました.宮崎医科大学に入学する前に,学習院大学の文学部史学科を卒業しています.文系だった私が医師を志した契機は,宮田眼科病院の前理事長である宮田典男先生とのご縁でした.私の両親と親交のあった典男先生ご夫妻が東京にいらっしゃったときに,「良平君,医師をめざしてごらんよ.大変だけどやりがいのある仕事だよ」と誘っていただいたことを,今でも昨日のことのように思い出します.入局してからは宮田和典院長に指導を受けた影響もあり,自然と角膜疾患を専門とするようになりました.その後,感染症にも興味をもち,現在はおもに角膜,感染症を専門に診察を行っています.臨床・研究のMyboom臨床でのMyboomは感染症です.宮田眼科病院は野戦病院のようなところで,来院される方は,軽症から重症の患者さんまでさまざまです.なかでも感染性角膜炎の症例は年間およそ100~150例程にもなります(もちろん軽症の方を含めてですが).感染性角膜炎の症例では,的確な診断と治療が重要です.問診と臨床所見から起因菌を類推し,検鏡で確認する,そして薬剤を選択し治癒までたどりつく.このプロセスは,推理本にあるような名探偵や刑事が事件を解決する手法に似ているので(89)0910-1810/15/\100/頁/JCOPYは,と感じています.治療が奏効して,患者さんが安心した表情になることが,私にとってのMyboomです.研究でのMyboomは,コリネバクテリウムについてです.当院ではさまざまな臨床研究を行っていますが,そのデータのなかで,小児と成人とではコリネバクテリウムのキノロン製剤に対する薬剤感受性が大きく違うことが気になりました.これまでに周術期の抗菌薬の使用が,表皮ブドウ球菌の薬剤感受性および遺伝子変異に影響を与えるという研究を行ってきたのですが,これと似たようなことがコリネバクテリウムでも起こっているのではないかと想像しています.今後,コリネバクテリウムの年齢層別の耐性化の研究を通して,薬剤感受性のメカニズムについてなんらかの新しい発見ができるのではないかと期待しています.手術のMyboom手術でのMyboomは,「開眼」です.開眼の意味を辞書で引くと「物事の道理や真理がはっきり判るようになること,また物事のこつを掴むこと」とあります.もちろん開眼とはそういう意味です.しかし私が一番しっくりくる意味は,以前読んだ本に書かれていた「開眼とは感覚の発見である」との言葉です.どのような手術においてもある一定のlearningcurveが存在しますが,あるとき突然,手術技術が上達する時期があります.その瞬間が「感覚を発見した=開眼」したときではないかと考えています.現在,後輩の先生たちに白内障手術を指導しています.そのなかの一人の先生が,核の2分割がなかなかうまくできず苦労していました.手の位置や核を掘る深さ,分割の際の手の動きなど細かく指導しても改善しない日が続きます.ところがある日,これは本当に突然でしたが,その先生がすんなりと核の2分割ができるようあたらしい眼科Vol.32,No.9,20151317 写真1手術室で,筑波大学から派遣で来ている林寺先生と「開眼」後の上達ぶりは,正直いって目を見張るものがあります.になりました.そして次の症例でも,その次の症例でも同様にスムーズに行えていました.手術が終わってから「ビデオを観て研究したの?」とその先生に尋ねたところ,「ビデオは毎日観ています.ただ今日は今までわからなかった感覚を掴めた気がしました」と嬉しそうに答えました.私自身,まだまだ「開眼」しなければならないのですが,後輩の「開眼」する瞬間に立ち会えることは,本当に嬉しいものでしたし,これは指導する側にとって励みになります.プライベートのMyboomプライベートでのMyboomは,旅行と食べ歩きです.長時間の飛行機が嫌いなため,行く先は国内やアジアを専らとしています.食べ歩きはフレンチやイタリアンといった高級店ではなく,お好み焼きやラーメン,カレーなどのいわゆるB級グルメが好みです.最近の大当たりは,北陸旅行で食べたカレーでした.2015年の春に(話題の北陸新幹線が開通する直前でした)富山市と金沢市を訪れました.そこで,食べログランキング上位の鮨屋を何軒か訪れましたが,もっともおいしいと感じたのは金沢市の「ターバンカレー」でした.あのルーの濃厚さ,からっと揚げたカツの歯ごたえ1318あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015写真2タイ,アユタヤでの屋台街で少し派手目の上着は宮田典男先生のお古をいただいたものです.川から吹く涼しい風に誘われ,かなり飲み過ぎたのもいい思い出です.は初体験であり,それ以降の食事をすべてカレーでもいいと感じたほどでした(もちろん妻に却下されましたが).また,忘れられないのが,2014年夏に訪れたタイのアユタヤでの食事です.チャオプラヤー川の側にある屋台街を,タイ在住の友人家族と訪れました.屋台街とあって,料金はすこぶる安いのですが,食事はおいしく,とても満足しました.川沿いに吹く涼しい風のせいか,ビールを飲み過ぎ,へべれけになった思い出があります.まだまだ行きたい地域や国はたくさんあるのですが,なかなか時間がとれないのが目下の悩みです.次のプレゼンターは近畿大学医学部堺病院の江口洋先生です.江口先生とのご縁は,愛媛大学の鈴木先生が立ち上げた眼感染症の若手(?)の会であるOMICという会合でお会いしたのがきっかけでした.江口先生は,真菌性角膜炎に対する抗真菌薬の角膜実質内注射を国内で初めて発表されています.また,私の研究のMyboomであるコリネバクテリウムのキノロン耐性についても優れた論文を記されています(私のコリネバクテリウムに対する興味は,実は江口先生の論文が契機となっています).見た目はワイルド,中身はgentlemanの江口先生,よろしくお願いします.注)「Myboom」は和製英語であり,正しくは「Myobsession」と表現します.ただ,国内で広く使われているため,本誌ではこの言葉を採用しています.(90)

硝子体手術のワンポイントアドバイス 148.網膜硝子体手術後の不可逆性散瞳(初級編)

2015年9月30日 水曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載148網膜硝子体手術後の不可逆性散瞳(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに内眼手術後の不可逆性散瞳としては,円錐角膜に対する全層角膜移植後に生じるものが多く,そのほかに層状角膜移植後,白内障手術後に生じるものも報告されているが,網膜硝子体手術後にも稀に生じることがある.筆者らは,以前に網膜硝子体手術後に不可逆性散瞳をきたした1例を経験し報告したことがある1).●症例症例は33歳,女性.左眼の上方.耳側中間周辺部に多発裂孔を認め,上耳側から黄斑部にかけて胞状の網膜.離をきたしていた(図1).術前散瞳前には瞳孔不同は認めなかった.33歳と若年であったため,水晶体を温存した硝子体手術(当時は20Gシステム)を施行した.眼内は肥厚した硝子体膜が網膜と面状に癒着していた.可能な限り周辺部に向かって人工的後部硝子体.離を作製したが,裂孔から周辺側の硝子体.離作製は困難であった.気圧伸展網膜復位術,眼内光凝固を施行した後,周辺部に経強膜冷凍凝固を追加した.ついで周辺部の残存硝子体の牽引を相殺する目的で,#240シリコーンバンドによる周辺部輪状締結術とガスタンポナーデを施行した.術後,網膜は復位したが,明所での瞳孔径が右眼3.0mmに対し,左眼は約5.5mmと散瞳状態を呈していた(図2).赤外線電子瞳孔計による対光反応解析では,左眼は右眼と比較し,光刺激による縮瞳量が非常に減弱していた(縮瞳量:右眼16.3mm2,左眼4.8mm2)(図3).●網膜硝子体手術後の不可逆性散瞳の原因網膜硝子体手術後に不可逆性散瞳をきたしたとする海外の報告をみると,多くが網膜.離例で,輪状締結術や広範囲のジアテルミー凝固が施行されていた.不可逆性散瞳の原因としては,球後麻酔,輪状締結術,眼内光凝固などがあげられているが,眼内光凝固により短後毛様(87)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY図1左眼の術前眼底写真左眼の上方.耳側中間周辺部に多発裂孔を認め,上耳側周辺部から黄斑部にかけて胞状の網膜.離を認めた.(文献1より引用)図2術後3カ月の前眼部写真明所での瞳孔径が右眼(a)3.0mmに対し,左眼(b)は約5.5mmと散瞳状態を呈していた.(文献1より引用)図3術後3カ月の赤外線電子瞳孔計による対光反応解析左眼(b)は右眼(a)と比較し,光刺激による反応量が非常に減弱していた.(文献1より引用)ab神経あるいは長後毛様神経を傷害したと推察しているものが多くみられる.自験例は多発裂孔であったため,眼内光凝固を通常の症例より多く施行した.また,若年であり水晶体を温存したため,眼内光凝固に加えて経強膜冷凍凝固を耳側周辺部を中心に広範囲に施行した.これらが原因となり短後毛様神経あるいは長後毛様神経を傷害し,不可逆性散瞳をきたした可能性が考えられる.網膜硝子体手術時には,過剰な眼内光凝固や経強膜冷凍凝固はできるだけ避けるべきと考えられる.文献1)佐藤陽平,奥英弘,家久耒啓吾ほか:網膜硝子体手術に不可逆性散瞳をきたした1例.眼科手術26:629-632,2013あたらしい眼科Vol.32,No.9,20151315

眼科医のための先端医療 177.加齢黄斑変性に伴う網膜下線維性瘢痕

2015年9月30日 水曜日

監修=坂本泰二◆シリーズ第177回◆眼科医のための先端医療山下英俊SRFの発症メカニズム加齢黄斑変性に伴う網膜下線維性瘢痕石川桂二郎(九州大学眼科)はじめに滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)に対しては,抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)療法により,多くの症例で視力の維持や改善が可能となりました.一方で,抗VEGF療法が不成功に終わる症例も多く,その原因のひとつが中心窩に及ぶ網膜下の線維性瘢痕形成であることが報告されました1).また,抗VEGF療法開始後2年間で,1,059眼中480眼(45.3%)で網膜下線維化(subretinalfibrosis:SRF)の出現を認めたというコホート研究の結果も報告されました2).SRFは,局所の視細胞,網膜色素上皮細胞(retinalpigmentepithelium:RPE)を傷害し,その部位が中心窩に及ぶと不可逆性の視力障害をもたらします.脈絡膜血管新生(choroidalneovascularization:CNV)の発症早期に抗VEGF療法を導入すると,SRFの出現頻度が抑えられるという報告はありますが,線維化の進行を抑制する治療法は,現在のところありません.本稿では,これまでにわかっているAMDに伴うSRFの発症メカニズムや疾患モデル,治療法開発の可能性について検討します.AMDに伴うSRFは,肺,肝臓,腎臓など他の臓器の線維化と類似したメカニズムを有していることが知られています.線維化とは,組織傷害後に起こる結合組織の異常増殖と定義されています.一般に,組織が傷害されると,創傷治癒反応により,上皮細胞からメディエーターが放出され,上皮細胞自身や炎症細胞が局所に集簇します.それらの細胞は,上皮間葉転換という過程を経て線維芽細胞へ変化し,増殖,遊走,接着,細胞外マトリクスを産生することで傷害部位を結合組織で被覆し,正常組織に置き換えることで,組織修復の手助けをすることが知られています.ところが,繰り返し起きる組織障害や,慢性炎症により,結合組織が残存すると線維性瘢痕を形成します.AMDに伴うSRFの構成成分は,コラーゲンtypeI,IVやフィブロネクチンなどの細胞外マトリクス成分と,RPEやマクロファージ,筋線維芽細胞などの細胞成分であることが,これまでの組織学的検討でわかっています3).また,SRF形成過程においては,サイトカインや成長因子などのさまざまな液性因子の関与が知られており,これらは細胞の上皮間葉転換,増殖,遊走,細胞外マトリクスの産生などの創傷治癒反応を誘導することが報告されています(表1)4).これまでの報告から予想される,CNVに続発するSRFの発症メカニズムをお示しします.CNVによる出血や血漿成分の漏出により慢性的に傷害されたRPEや,新生血管により誘導された浸潤マクロファージは,さまざまな液性因子を産生します.これらの細胞は液性因子による刺激を受け,創傷治癒反応を誘導しますが,この反応が慢性化し,繰り返さ表1網膜下線維化に関わる液性因子液性因子産生細胞役割TGF-bRPE,マクロファージ,線維芽細胞細胞接着,遊走,細胞外マトリクス産生PDGFRPE,マクロファージ,線維芽細胞細胞増殖,遊走,細胞外マトリクス産生FGFRPE,マクロファージ細胞増殖,遊走EGFマクロファージ細胞増殖,遊走TNF-aマクロファージ細胞接着,遊走CTGFRPE,線維芽細胞細胞遊走,細胞外マトリクス産生TGF-b:transforminggrowthfactor-b,PDGF:plateletderivedgrowthfactor,FGF:fibroblastgrowthfactor,EGF:epidermalgrowthfactor,TNF-a:tumornecrosisfactor-a,CTGF:connectivetissuegrowthfactor.(83)あたらしい眼科Vol.32,No.9,201513110910-1810/15/\100/頁/JCOPY aレーザー照射後れることで,網膜下にコラーゲンなどの結合組織が残存7日目35日目し,線維性瘢痕組織が形成されることになります.網膜下線維組織脈絡膜新生血管SRFの疾患モデルとしてのレーザー誘導性CNVマウスモデルAMDの治療法に変革をもたらした抗VEGF療法の臨床応用は,基礎研究により得られた知見の集大成であることは疑う余地がないと思います.このなかで重要な役割を果たしたのが,レーザー誘導性CNVマウスモデルです.マウスの眼底にレーザーを照射することによりCNVが誘導されるモデルで,簡便で再現性が高いため,CNV研究に広く用いられ,抗VEGF薬の薬効薬理作用についてなど多くの重要な知見をもたらしました.現状で治療法がないSRFに対する有効な治療法を開発するためには,まずSRFの動物モデルを確立することが重要であると考えられます.レーザー誘導性CNVマウスモデルでは,レーザー照射後7~14日目でCNVが最大となるため,この時点での検討がCNV研究において行われてきました.筆者らは,レーザー照射後21日目,35日目のCNV,SRFの変化を検討しました.CNVはレーザー照射後21日目には退縮が始まっており,35日目にはほぼ消失しました.一方で,SRFは,レーザー照射後21日目,35日目で増大することを観察しました(図1A)4).また,レーザー照射後35日目の網膜切片を用いた組織学的検bレーザー照射後35日目核染色網膜下線維組織ヒト網膜下線維組織のOCT像図1レーザー誘導性CNVマウスモデルにおける網膜下線維化a:レーザー照射後7日目と35日目のマウス脈絡膜フラッ討では,コラーゲンtypeⅠ陽性の線維組織を網膜下に認め,この所見は,AMD患者のSRFのOCT所見と類似していました(図1B,C)4).以上より,レーザー誘導性CNVマウスモデルにおいて,レーザー照射後21~35日の間は,CNVが退縮し,SRFの形成が増大するため,この時点での検討が,SRF形成の分子メカニズムの研究,および治療法開発に有用である可能性が示唆されました.SRFに対する治療の可能性AMDの新たな治療薬の候補として現在,米国で第Ⅲトマウント.緑の染色は脈絡膜新生血管,赤の染色は網膜下線維組織を表す.スケールバー:100μm.b:レーザー照射後35日目の組織切片.白点線で囲まれた赤の染色は網膜下線維組織を表す.細胞核は青く染色.スケールバー:50μm.c:網膜下線維を伴うAMD患者のOCT像.(文献3から許可を得て転載,改変)1312あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015相臨床試験を行っているフォビスタは,血小板由来因子(plateletderivedgrowthfactor:PDGF)を抑制する薬剤です.この抗PDGF製剤は,抗VEGF製剤と組み合わせることで,より強力な血管新生抑制効果が期待されています.また,PDGFは表1に示したとおり,SRFの形成にも重要な因子として知られているため,抗(84) PDGF製剤と抗VEGF製剤の併用により,CNVのみならずSRF形成に対する抑制効果も期待されています.SRF形成のメカニズムについては,未だに不明な点も多いため,有用な疾患モデルを用いた基礎研究の発展が重要です.筆者らは,遺伝子改変マウスを用いたレーザー誘導性CNVマウスモデルのSRF形成を検討することで,新たな分子標的の探索を行っています.今後の研究により網膜下線維性瘢痕の新規治療法が開発され,より多くのAMD患者の視機能の改善や維持が可能となることが切望されます.文献1)CohenSY,OubrahamH,UzzanJetal:Causesofunsuccessfulranibizumabtreatmentinexudativeage-relatedmaculardegenerationinclinicalsettings.Retina32:14801485,20122)DanielE,TothCA,GrunwaldJEetal:Riskofscarinthecomparisonofage-relatedmaculardegenerationtreatmentstrials.Ophthalmology121:656-666,20143)GrossniklausHE,HutchinsonAK,CaponeAetal:Clinicopathologicfeaturesofsurgicallyexcisedchoroidalneovascularmembranes.Ophthalmology101:1099-1111,19944)IshikawaK,KannanR,HintonDR:Molecularmechanismsofsubretinalfibrosisinage-relatedmaculardegeneration.ExpEyeRes,inpress,2015■「加齢黄斑変性に伴う網膜下線維性瘢痕」を読んで■今回は石川桂二郎先生(九州大学眼科)により,加いるとのことですので,結果が良好であれば,AMD齢黄斑変性(AMD)の長期的な視力予後を臨床的に深の網膜下線維性瘢痕形成にPDGFは主たる役割を果く考察し,その問題点をきちんと把握したうえで対策たしていることになります.このような臨床現場におを考えるという,臨床医学のもっとも大切で役立つ戦いて治療にまで発展する基礎および臨床研究は,体系略をお示しいただきました.すなわち,AMDに対す的に行う必要があります.国もその重要性をきちんとる抗VEGF療法が不成功に終わる症例の原因の一つ理解して,国立研究開発法人日本医療研究開発機構が,中心窩に及ぶ網膜下の線維性瘢痕形成とのことで(JapanAgencyforMedicalResearchandDevelopす.これを動物モデルで研究し,分子標的として血小ment:AMED)を創設しました.文科省,厚労省,板由来因子(plateletderivedgrowthfactor:PDGF)経産省に分かれていたバイオ,医療関係の予算を統合にたどりついて,治療法を確立したことがわかりやすして運用し,きちんと患者治療に役立つ治療法の確立く解説されています.ヒトの病態はきわめて複雑であに資する目的で創設されたのです.この機構の基本理り,AMDもVEGFのみで,あの臨床的に多様で複念は,国立がん研究センター理事長に就任された嘉山雑な病理像が完成するはずはありません.このような孝正先生が中心となったプロジェクトから生まれ,実複雑に絡みあった病態をほぐしていくためには,臨床際の国の機関として完成したと聞いています.的に詳細な観察をして,情報を蓄積すること,その情AMEDは日本版NIHともいわれますが,基礎医学研報に照らして動物モデルのどれが病態研究に適してい究のレベルで世界のトップグループに位置する日本るかを確認すること,そして,このモデル病態を利用が,創薬の実績では世界第3位に甘んじていることをして分子標的を割り出し,その治療法を確立するこ打開することを目的としたものです.日本の底力をもと,これを臨床応用してヒトの実際の病態に治療効果ってすれば,必ず目的を達成できると考えています.があるかどうかを確認することが重要です.最後の臨そのためには,石川先生のような優秀なphysician床的な効果と安全性が確認されて,初めて治療薬開発scientistを多く育成することが必要であると,今回のと病態解明のめどがつくことになります.総説を読みながら考えました.石川先生の総説では,PDGFをターゲットにした治山形大学眼科山下英俊療薬が開発され,米国で第III相臨床試験が行われて☆☆☆(85)あたらしい眼科Vol.32,No.9,20151313

眼瞼・結膜:マイボーム線機能不全のマイボグラフィー

2015年9月30日 水曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人有田玲子8.マイボーム腺機能不全のマイボグラフィー伊藤医院,東京大学マイボーム腺は眼瞼に存在する皮脂腺で,涙液の油層を形成し,涙液の蒸発を防いでいる.上下眼瞼に約20~30本ずつある.非侵襲的マイボグラフィーを用いると,マイボーム腺機能不全においてさまざまな形態変化が観察される.患者の自覚症状,細隙灯顕微鏡による眼瞼縁所見と合わせて,マイボーム腺機能不全の診断に有用である.●マイボーム腺機能不全とはマイボーム腺は眼瞼に存在する皮脂腺で,涙液の油層を形成し,過剰な涙液の蒸発を防ぐ役割をしている.上下眼瞼に約20~30本ずつある1).2010年にMGDワーキンググループによって,マイボーム腺機能不全(meibomianglanddysfunction:MGD)は以下のように定義された.「さまざまな原因によってマイボーム腺の機能が瀰漫性に異常をきたした状態であり,慢性の眼不快感を伴う」2).●従来のマイボグラフィー従来のマイボグラフィーは,マイボーム腺を皮膚側から透過することにより,マイボーム腺構造を観察する方法である3).細隙灯顕微鏡では十分に観察できないマイボーム腺の形態変化を観察できる有用な検査である.しかし,皮膚側からの透過光を利用するため光源プローブが必須で,その光源プローブが患者眼瞼に直接当たり,疼痛や羞明,灼熱感などを引き起こし,侵襲的な検査だった.さらに,光源プローブの先端が細く,照射範囲が狭いため,上下すべてのマイボーム腺を観察することは困難だった.これらの理由から一般外来で普及することはなかった.●非侵襲的マイボグラフィー非侵襲的マイボグラフィーは,赤外光を利用してマイボーム腺脂の反射光を観察する方法である.眼瞼結膜側から赤外光を当てるため侵襲的な光源プローブが不必要で,非侵襲的に上下眼瞼のマイボーム腺を観察できることが最大の利点である.非侵襲的マイボグラフィーはさまざまocularsurface疾患のマイボーム腺形態の観察を明らかにし,国際的にも広く普及しはじめた検査方法で(81)ある.現在,日本では3種類の非侵襲的マイボグラフィーが購入可能であり,それぞれの特徴がある.細隙灯顕微鏡付属型マイボグラフィー4)(DC4,トプコン社,図1a)は,細隙灯顕微鏡に付属しているため,眼瞼縁所見,フルオレセイン染色後の角結膜上皮障害所見や涙液層破壊時間(tearfilmbreak-uptime:BUT)との関連を含めabcde図1非侵襲的マイボグラフィーa:細隙灯顕微鏡付属型.b:持ち運び式.c:ケラトグラフ付属型.d,e:正常眼のマイボグラフィーによるマイボーム腺.写真の白い部分がマイボーム腺.あたらしい眼科Vol.32,No.9,201513090910-1810/15/\100/頁/JCOPY aababcdcd図2閉塞性MGD(67歳,女性,左眼)眼不快感,眼異物感が強い.眼瞼縁の不整,血管拡張所見(a).BUT2秒,角結膜上皮障害なし(c).マイボーム腺の短縮,脱落,屈曲を認める(b,d).て診察が可能であり,倍率が変更できる.持ち運び可能なモバイルペン型マイボグラフィー5)(マイボペン,JFC社,図1b)は,顎台に顔を載せられない乳幼児のマイボーム腺観察や往診などに有用である6).ケラトグラフ付属型(Keratograph5M,Oculus社,中央産業貿易,図1c)マイボグラフィーは角膜形状や涙液メニスカスの測定も可能である.これら非侵襲的マイボグラフィーを用いれば,上下眼瞼すべてのマイボーム腺を1分以内に観察できる(図1d,e).●マイボーム腺機能不全のマイボーム腺閉塞性MGDでは,脱落,短縮,屈曲,拡張などさまざまなマイボーム腺の形態変化を観察できる(図2,3).有田らはROC曲線(receiveroperatingcharacteristiccurve)を用いて,自覚症状,眼瞼縁異常所見,BUT,角膜上皮障害,マイボーム腺脂,マイボグラフィー所見,Schirmer値の7項目中,MGDを診断するもっとも有用な3所見として,自覚症状,細隙灯顕微鏡による眼瞼縁所見,マイボグラフィーによるマイボーム腺脱落所見であることを示した7).また,これら3所見による閉塞性MGDの診断は感度,特異度ともに良好であった7).典型的な脂漏性MGDではマイボーム腺の形態には脱落や短縮などの変化がなく,拡張所見が多かった8).し図3閉塞性MGD(78歳,男性,左眼)眼違和感,粘着感,灼熱感が強い.マイボーム腺開口部のplugging,ridge(a).BUT5秒,角結膜上皮障害なし(c).上下とも高度にマイボーム腺が萎縮している(b,d).かし,マイボーム腺からの脂は過剰に分泌されているが,マイボグラフィーでマイボーム腺の形態を観察すると,閉塞性MGDのような脱落,短縮所見が観察される症例もあるため,分類には注意を要する.文献1)SnellRS,LempMA:Clinicalanatomyoftheeye.p84,BlackwellScientificPublications,Boston,19892)天野史郎,有田玲子,MGDワーキンググループ:マイボーム腺機能不全の定義と診断基準.あたらしい眼科27:627631,20103)TapieR:Etudebiomicroscopiquedemeibomius.AnnOculistique210:637-648,19774)AritaR,ItohK,InoueKetal:Noncontactinfraredmeibographytodocumentage-relatedchangesofthemeibomianglandsinanormalpopulation.Ophthalmology115:911-915,20085)AritaR,ItohK,MaedaSetal:Anewlydevelopednoninvasiveandmobilepen-shapedmeibographysystem.Cornea32:242-247,20136)ShirakawaR,AritaR,AmanoS:MeibomianglandmorphologyinJapaneseinfants,children,andadultsobservedusingamobilepen-shapedinfraredmeibographydevice.AmJOphthalmol155:1099-1103,20137)AritaR,ItohK,MaedaSetal:Proposeddiagnosticcriteriaforobstructivemeibomianglanddysfunction.Ophthalmology116:2058-2063,20098)AritaR,ItohK,MaedaSetal:Proposeddiagnosticcriteriaforseborrheicmeibomianglanddysfunction.Cornea29:980-984,20101310あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015(82)

抗VEGF治療:網膜中心静脈閉塞症に対する抗VEGF治療-認可薬による治療戦略

2015年9月30日 水曜日

●連載抗VEGF治療セミナー監修=安川力髙橋寛二20.網膜中心静脈閉塞症に対する抗VEGF治療古川真理子総合上飯田第一病院眼科─認可薬による治療戦略網膜中心静脈閉塞症(CRVO)に伴う黄斑浮腫に対する抗VEGF治療は,非虚血型の半数で視力改善や黄斑浮腫の改善が期待できる.一方,視力改善がなく浮腫再燃を繰り返す症例は,他の治療への検討も必要である.また,無灌流域が広範囲な虚血型では,抗VEGF治療にかかわらず,眼内新生血管予防目的の網膜光凝固が必要である.はじめに抗VEGF治療は,その有効性が臨床試験において証明され,現在では加齢黄斑変性,近視性脈絡膜新生血管の中心的治療となっている.網膜中心静脈閉塞症(centralretinalveinocclusion:CRVO)についても大規模臨床試験1~4)が行われ,ラニビズマブ,ついでアフリベルセプトが国内で順次承認されるや,治療の第一選択として使用されつつある.しかし,国内での使用経験はまだ日が浅く,投与開始時期や再投与のタイミングに迷うことがある.そこで今回は,CRVOにおける効果的な抗VEGF薬の使用方法を報告する.投与開始時期視力0.9以上であれば,自然寛解の可能性があるため経過観察とする.視力良好症例でも急激に視力低下を生じることがあり,この場合,黄斑浮腫の増悪が視力低下に先行する.視力良好例でも必ず光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)による黄斑の確認を行い,黄斑浮腫の増悪があれば,自然寛解の可能性は低くなるため治療を検討する.また,臨床試験では視力0.5以下の症例を対象としていたが,治療開始時の視力が最終視力に影響する3,4)ことから,最近では0.7以下であれば治療を開始することが多い.投与後経過ラニビズマブによる4年間の長期経過報告2)では,投与後6カ月以上で浮腫が再発しなかった群(浮腫消失群)とそうでなかった群(非消失群)に分けて,視力経過や投与回数などを観察している.浮腫消失群は1年目以降の投与回数は半年に1回未満,4年後には投与0となり,(79)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY視力(ETDRS文字数視力を小数視力に換算.以下,視力)は,治療前0.19が,4年後0.58に改善した.一方,非消失群は治療開始から4年経過しても半年に3回の投与が必要で,治療前視力0.2は4年後0.27までにしか改善しなかった.このことからCRVOに対する抗VEGF治療の反応は,治療効果が期待できる症例と治療効果が低い症例に分かれるといえる.臨床試験では治療開始から決められた期間は毎月投与abc図1抗VEGF治療が有効であったCRVO症例74歳,女性.投与後黄斑浮腫が再燃したが,再投与間隔は1.5カ月,2カ月,4カ月と徐々に延び,4回投与で浮腫は寛解した.再発時の網膜厚も軽減傾向であった.a:治療前のOCT.視力0.4.b:3回目投与前のOCT.視力0.8.c:最終投与後半年のOCT.視力0.8.あたらしい眼科Vol.32,No.9,20151307 abcabc図2抗VEGF治療が無効なCRVO症例78歳,女性.黄斑浮腫は投与後約2週間で消失するも,1~2カ月で浮腫の再燃が生じた.黄斑浮腫の寛解と再燃を繰り返し,2年半の間に16回もの投与を行ったが,浮腫は消失しなかった.a:治療前のOCT.視力0.3.b:投与後2週のOCT.視力0.3.c:最終投与後1.5カ月のOCT.視力0.3.する固定投与を行っているが,国内では固定投与を行うことは少なく,初回投与後は浮腫の状態をみながら再投与(prorenata:PRN,必要時投与)にて治療を継続することが多い.再投与するうちに浮腫再発までの期間が長くなる症例や,黄斑浮腫の再発があっても視力に改善がみられる症例は治療効果が期待できる(図1).一方で,投与しても1~2カ月以内に浮腫の再発を繰り返す症例や,何回投与を行っても視力が改善しない症例は,すでに視細胞が相応に障害されている可能性があり,投与回数が増える割に視機能は改善しない(図2).投与回数が増加すれば,眼内炎,網膜裂孔.離などの眼合併症リスクが高まるうえに,患者の経済的負担は大きくなる.患者から投与の継続希望がなければ,硝子体手術やステロイドのTenon.下投与など他の治療への変更を検討する.なお,抗VEGF治療を行っても浮腫に改善がみられない症例は,黄斑上膜や肥厚した後部硝子体膜が影響していることがあり,硝子体手術が効果的である.硝子体手術は治療後の改善は緩やかであるが5),1回の治療ですむため医療経済的に抗VEGF治療よりも負担が少ない.虚血型CRVOへの対応約8割のCRVOは非虚血型であるが,約3年で2~3割が虚血型に移行する6).抗VEGF治療を行っても,非虚血型から虚血型への移行は予防できない.また,虚血型に対する抗VEGF治療は,眼内新生血管の発症を遅らせるだけで,発症そのものは予防できない.抗VEGF薬を投与すれば黄斑浮腫が軽減するため,改善したようにみえるが,網膜周辺部の虚血領域が予想外に拡大していることがある.そのため,できるだけ蛍光造影検査を行い,虚血領域が広範囲に及んでいれば,眼内新生血管発症予防目的とした網膜光凝固治療が必要である.また,抗VEGF治療を中止した後に,新生血管が一気に生じる可能性があるので注意が必要である.文献1)CampochiaroPA,BrownDM,AwhCCetal:Sustainedbenefitsfromranibizumabformacularedemafollowingcentralretinalveinocclusion:Twelve-monthoutcomesofaphase3study.Ophthalmology118:2041-2049,20112)CampochiaroPA,SophieR,PearlmanJetal:Long-termoutcomesinpatientswithretinalveinocclusiontreatedwithranibizumab:theRETAINstudy.Ophthalmology121:209-219,20143)HeierJS,ClarkWL,BoyerDetal:Intravitrealafliberceptinjectionformacularedemaduetocentralretinalveinocclusion.Two-yearresultsfromtheCOPERNICUSstudy.Ophthalmology121:1414-1420,20144)OguraY,RoiderJ,KorobelnikJFetal:Intravitrealafliberceptformacularedemasecondarytocentralretinalveinocclusion:18-monthresultsofthephase3GALILEOstudy.AmJOphthalmol158:1032-1038,20145)FurukawaM,KumagaiK,OginoN:Long-termvisualoutcomesofvitrectomyforcystoidmacularedemaduetononischemiccentralveinocclusion.EuropeanJOphthalmol16:841-846,20066)CentralVeinOcclusionStudyGroup:Naturalhistoryandclinicalmanagementofcentralveinocclusion.ArchOphthalmol115:486-491,19971308あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015(80)