硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載157157硝子体手術直後の中心暗点(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに硝子体手術後に発症する視野障害には,空気灌流による耳側視野欠損,緑内障素因を有する眼の傍中心暗点などがあるが,中心暗点のみをきたす症例はまれである.筆者は以前に硝子体手術直後に中心暗点のみをきたした2眼を経験し,報告したことがある1).●症例提示症例1:65歳,女性.他院で右眼の裂孔原性網膜.離に対して硝子体切除,眼内光凝固,ガスタンポナーデを施行された.術前,黄斑部には.離は進行しておらず,矯正視力は1.0であった.術直後からガスを通して中心暗点を自覚していたが,ガス消失後も暗点は残存し,矯正視力は(0.07)に低下した.術後,網膜は完全に復位し(図1a),OCT,蛍光眼底検査(FA)でも明らかな異常を認めなかったが,Goldmann動的視野検査(GP)で中心5°の範囲のみ楕円形の暗点を示していた(図1b).循環改善薬の内服で経過をみたが,視機能は改善しなかった.症例2:45歳,男性.左眼の裂孔原性網膜.離に対して他院で硝子体手術を施行され,初回手術時にシリコーンオイルタンポナ.デを施行された.その後,シリコ.ンオイル抜去術を受けたが,その直後より中心暗点を自覚した.右眼矯正視力は術前1.0あったが,術直後から(0.07)に低下した.右網膜は完全に復位しており,視神経および黄斑部に異常は認めなかった(図2a).GPでは中心5°の範囲のみ暗点を示しており,周辺部イソプターの欠損は術後の瘢痕部位と一致していた(図2b).循環改善薬の内服で経過をみたが,視機能は改善しなかった.●硝子体手術直後に生じる中心暗点その後も同様の症例を2例紹介されたことがある.いずれも他院での手術例のため詳細は不明だが,4例の共通点として以下のような点があげられる.①裂孔原性網膜.離眼で,術前は黄斑部に.離は進行しab図1症例1の術後眼底写真(a)とGoldmann動的視野検査所見(b)眼底には目立った異常を認めないが,検査で中心5°の暗点を認める.矯正視力は0.07.ab図2症例2の術後眼底写真(a)とGoldmann動的視野検査所見(b)豹紋状眼底を呈しているが目立った異常を認めない.視野検査で中心5°の暗点を認める.矯正視力は0.07.ておらず視力は良好であった.②術直後から中心暗点を自覚し,その後も暗点の状態は不変で視力は改善しなかった.③暗点は中心5°程度と狭いが,著明な視力低下をきたし,いずれも0.1以下となった.このような硝子体手術直後に生じる中心暗点の報告は,過去に散見される.とくにシリコーンオイル注入眼で抜去後に突然中心暗点を呈したとする報告が多い2,3).中心暗点の発生機序として,後部硝子体.離作製時の視神経乳頭への侵襲,ガスによる視神経乳頭や網膜の循環障害,球後麻酔による視神経への侵襲などが考えられる.しかし,術後の眼底所見,OCT,FAなどでは目立った異常はなく,解釈がむずかしい.現時点では,術中に何らかの原因で一時的に黄斑部に限局した網脈絡膜循環障害が起こったと考えるのが妥当と思われる.予防策については残念ながら現時点ではわからない.文献1)北垣尚邦,佐藤孝樹,福本雅格ほか:硝子体手術直後に中心暗点をきたした2例.眼臨紀1:982-986,20082)NewsomRS,JohnstonR,SullivanPMetal:Suddenvisuallossafterremovalofsiliconeoil.Retina24:871-877,20043)CazabonS,GroenewaldC,PearceIAetal:Visuallossfollowingremovalofintraocularsiliconeoil.BrJOphthalmol89:799-802,2005(73)あたらしい眼科Vol.33,No.6,20168330910-1810/16/\100/頁/JCOPY