《原著》あたらしい眼科31(7):1037.1042,2014c細菌性結膜炎の眼脂培養による2008年から2011年の抗菌薬の感受性率の変化加茂純子*1荘子万可*1村松志保*2赤澤博美*2阿部水穂*2山本ひろ子*2*1甲府共立病院眼科*2甲府共立病院細菌検査室ChangeinConjunctivitisBacteriaSusceptibilitiestoAntibioticsbetween2008and2011JunkoKamo1),MarkSoshi1),ShihoMuramatsu2),HirokoAkazawa2),MizuhoAbe2)andHirokoYamamoto2)1)DepartmentofOphthalmology,KofuKyoritsuHospital,2)MicrobiologylaboratoryofKofuKyoritsuHospital目的:2008年から4年間の結膜炎の眼脂培養から検出された菌と感受性変化を知る.対象および方法:2008年5月から2012年3月までに甲府共立病院,巨摩共立病院,甲府共立診療所に結膜炎で訪れた患者755人(男382,女385)から採取された延べ1,793の菌株で,平均年齢は63±34歳(0.102歳)であった.眼脂をトランススワブRで採取した.検体を院内細菌検査室で18時間培養し,同定,薬剤感受性検査を行った.感受性を調べた薬剤はテトラサイクリン(TC),ジベカシン(DKB),セフメノキシム(CMX),バンコマイシン(VCM),クロラムフェニコール(CP),オフロキサシン(OFLX),レボフロキサシン(LVFX),トスフロキサシン(TFLX),ガチフロキサシン(GFLX),モキシフロキサシン(MFLX)である.結果:上位5菌種はcoagulase-negativeStaphylococcus(CNS)27%,Corynebacterium27%,Staphylococcusaureus(S.aureus)7%,嫌気性グラム陰性球菌7%,methicillin-resistantStaphylococcusaureus(MRSA)5%であった.2008年度と2011年度を比較すると上位10種の菌種に対して感受性率の落ちた薬剤はCNSに対するCMXが98%から87%,第4世代のキノロンの90%が60%,Psuedomonasaeruginosa(P.aeruginosa)に対してCMXは例数は少ないものの,62.5%が0%,TFLXが100から20%,Streptococcuspneumoniae(S.pneumoniae)に対するTFLXが100から57.1%になった.MRSAに対してVCMは100%,CPは90%以上の感受性を保った.CMXはCNSとP.aeruginosaの感受性率は減ったものの,80%以上の感受性率を持つ菌種が8種あり,CPも同様高い感受性をもつ.逆にTCはCNS,methicillin-sensitiveStaphylococcusaureus(MSSA),MRSAに対して感受性率が増した.結論:2008年と2011年の間では,検出される菌に対する感受性は他のキノロンよりはよいが,第4世代キノロンで減少した.CMXはP.aeruginosa,MRSA以外の結膜炎の第一選択としてよい.P.aeruginosaに対してはDKB,LVFXの選択がよい.使われていないTCの感受性が増した.Purpose:Throughthisprospectivestudy,approvedbytheethicalcommitteeofKofuKyoritsuHospital,tolearnthechangesinincidenceandsusceptibilityofbacteriatakenandculturedfromconjunctivitisdischargeduring4years,startingApril2008.Subjectsandmethod:Subjectswere755individuals(male382,female385;agerange:0.102yrs;avg.age63±34yrs)whoconsultedKofuKyoritsuHospitalandrelatedclinicswhilesufferingfromconjunctivitis,andfromwhomsampledischargewasobtainedwithTransswabR.Aftersampleculturinginourbacteriallaboratoryfor18hours,bacteriawereidentifiedandtheirsusceptibilitiesstudied.Weused10discs:tetracycline(TC),dibekacin(DKB),cefmenoxime(CMX),vancomycin(VCM),chloramphenicol(CP),ofloxacin(OFLX),levofloxacin(LVFX),tosufloxacin(TFLX),gatifloxacin(GFLX)andmoxifloxacin(MFLX).Results:Commonlyidentifiedbacteriawerecoagulase-negativeStaphylococcus(CNS)27%,Corynebacterium27%,S.aureus7%,aerophobicgram-negativecocci7%,methicillin-resistantStaphylococcusaureus(MRSA)5%andsoon.Whenwecomparedsusceptibilitybetween2008and2011,theantibioticswhosesusceptibilityhaddecreasedsignificantlywere:CMXagainstCNSdecreasedfrom98%to87%,4thgenerationfluoroquinoloneagainstCNSfrom90%to60%,CMXagainstP.aeruginosafrom62.5%to0%,TFLX;from100to20%,andTFLXagainstS.pneumoniaefrom100to57.1%.AgainstMRSA,VCMkept100%andCPkepthigherthan90%susceptibility.AlthoughCMXlostsusceptibilitytoCNSandP.aeruginosa,itstillhadmorethan80%susceptibilitytothetop10bacteria.CP〔別刷請求先〕加茂純子:〒400-0034甲府市宝1-9-1甲府共立病院眼科Reprintrequests:JunkoKamo,DepartmentofOphthalmology,KofuKyoritsuHospital,1-9-1Takara,Kofu400-0034,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(111)1037alsohasgoodsusceptibility.Incontrast,TCincreasedsusceptibilitytoCNS,MSSAandMRSA.Conclusion:Between2008and2011,thefourthgenerationfluoroquinolonelostsusceptibility,althoughitwasbetterthantheotherquinolones.CMXcanbethefirstchoiceforconjunctivitis,exceptwhencausedbyP.aeruginosaorMRSA.ForP.aeruginosa,DKBorLVFXcanbeselected.TC,whichisunavailableinJapan,increasedsusceptibility.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(7):1037.1042,2014〕Keywords:結膜炎,抗菌薬,感受性率.conjunctivitis,antibiotics,susceptibility.はじめに当院の細菌検査室では10種の薬剤の感受性を調べることができる.2005年3月にはテトラサイクリン(TC)眼軟膏が販売中止となり,ガチフロキサシン(GFLX)など第4世代の抗菌薬が市場に出始めた.そこで2005年から2006年の当院の結膜炎などから検出された菌への薬剤の感受性を10種の抗菌薬〔エリスロマイシン(EM),TC,ジベカシン(DKB),セフメノキシム(CMX),スルベニシリン(SBPC),バンコマイシン(VCM),クロラムフェニコール(CP),レボフロキサシン(LVFX),トスフロキサシン(TFLX)(GFLX)〕についてまとめた結果,結膜炎の治療の第一選択(,)としてCMXおよびGFLXがよいと示唆された1).2006年にはやはり第4世代のフルオロキノロン系薬剤(以下,キノロン)であるモキシフロキサシン(MFLX)が登場し,コリマイC(TC)眼軟膏が姿を消し,TCの入った軟膏が市場で入手不能となった.そこでGFLXとの比較のためにMFLXを加えて,2008年に当院における感受性率について年代別にまとめ,統計的に比較検討したが2),やはり,CMX,GFLXを第一選択にするのがよいと考えられた.日本眼感染症学会による眼科感染症起炎菌・薬剤感受性他施設調査(第2報)3)によれば,CMXが最も高度感受性があり,ついでキノロンであることを述べている.MFLXなどの第4世代のキノロンは2種類の細菌のDNA合成酵素を阻害するので,菌の耐性化はしにくいといわれている.これらは結膜に高濃度かつ長い時間停滞し,濃度依存性の殺菌作用を有することから,よいpharmacokinetic/pharmacodynamicsを示す4).はたしてこの4年間で変化がなかったのかどうかを知るのが本研究の目的である.I対象および方法前向きに結膜炎における起炎菌につき下記10種類の薬剤ディスクでの感受性を調べた.今回,2011年の結膜炎患者からの検出菌に対し,感受性試験を実施したので,2008年の結果と比較検討した.2006年度の検討からEMは耐性が多かったために排除し,その代りにMFLXを入れた以下の10種を検討した.すなわち,TC,DKB,CMX,VCM,CP,オフロキサシン(OFLX),LVFX,TFLX,GFLX,MFLXである.なお,本試験は甲府共立病院倫理委員会から承認を受けて実施した.対象は2008年5月から2012年3月までの期間に甲府共立病院,巨摩共立病院と甲府共診療所に結膜炎で訪れた患者755人(男382,女385人)から採取された延べ1,793の菌株で,患者の平均年齢は63±34歳(0.102歳)であった.このうち,2008年〔186人(男75,女111人),平均年齢56.5±40歳(0.100歳)〕,2011年〔209人(男107,女102人),平均年齢61.9±37歳(0.101歳)〕で背景の平均年齢には有意差はなかった(p=0.39).結膜炎患者の眼脂を輸送用培地つき綿棒(トランススワ表1感受性を調べた薬剤の一般名,おもな商品名,ジェネリック商品名略語一般名おもな商品名ジェネリック商品名TCテトラサイクリンテラマイシン(発売中止)なしCMXセフメノキシム塩酸塩ベストロン点眼用0.3%なしDKBジベカシン硫酸塩パニマイシン点眼液0.3%なしCPクロラムフェニコールクロラムフェニコール・コリスチンクロラムフェニコール点眼液0.5%コリマイC点(発売中止)なしコリナコール点眼液VCMバンコマイシン塩酸塩バンコマイシン眼軟膏1%なしOFLXオフロキサシンタリビッド点眼液0.3%・眼軟膏0.3%オフロキシン点眼液0.3%・眼軟膏0.3%LVFXレボフロキサシン水和物クラビット点眼液0.5%,1.5%レボフロキサシン点眼液0.5%多数TFLXトスフロキサシントシル酸塩オゼックス・トスフロ点眼液0.3%なしGFLXガチフロキサシン水和物ガチフロ点眼液0.3%なしMFLXモキシフロキサシン塩酸塩ベガモックス点眼液0.5%なし1038あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(112)ブR)で症状の強い結膜から擦過採取した.その検体を甲府共立病院細菌検査室で18時間培養し,その後同定および薬剤感受性検査を行った.感受性を調べた薬剤はTC,DKB,CMX,VCM,CP,OFLX,LVFX,TFLX,GFLX,MFLXの10種類である.それぞれの薬品の一般名,先発商品名およびジェネリック商品名を表1にまとめた.2008年と2011年の各菌株に関して,各種抗菌薬の感受性を比較し,標本比率の差の検定を行った.p=0.05未満を有意差ありとした.II結果図1は2008年と2011年の菌株の内訳を比較したものである.両年度とも1位Corynebacterium,2位のcoagulasenegativeStaphylococcus(CNS)の2菌株で50%以上を占め,3位a-hemStreptococcus,4位S.aureus,またはmethicillin-sensitiveStaphylococcusaureus(MSSA)そして5位methicillin-resistantStaphylococcusaureus(MRSA)が続く.6位.12位は変動があるが,標本数が少なく,大きな変化は少ないと考えられる.表2は2008年度での1位から10位の菌の抗菌薬への感受性率を,2011年と比較したものである.1位のCorynebacteriumは各世代キノロン系薬剤に対する感受性が低いが,4年間では有意差をもった感受性の低下は認められなかった.その他の抗菌薬に関しても有意差はなかった.2位のCNSに関しては,キノロン系薬剤以外のほうが感受性がよく,有意な感受性の変化が現れたのは,TCで上昇,CMXと第4世代キノロンに対して感受性の低下がみられた.しかし,第4世代はその他の世代のキノロン系薬剤に対して優位な感受性を保っていた.3位のMSSAに関しては,各抗菌薬への感受性は良好で,キノロン系薬剤への感受性も良好であった.4位のMRSAに対してのVCM,CPの抗菌力は4年間で保たれたが,キノロン系薬剤への感受性はほとんどなく,当初感受性があるといわれた第4世代キノロン系薬剤に対しても,有意差はなかったが低下傾向を示した.5位のa-hemStreptococcusはCMX,VCM,CPおよび,第4世代のキノロン系薬剤に感受性があるが,MFLXは2011に有意に感受性率が低下した.6位の嫌気性グラム陽性球菌はと考えられ,CMX,VCM,CPに感受性があった.7位の小児によくみられるHaemophilusinfluenzaeと8位のMoraxellacatarrhalisはVCMを除くすべての薬剤に感受性がある.9位のPseudomonasaeruginosa(P.aeruginosa)に関しては,CMXとTFLXへの感受性が有意に低下していた.キノロン系薬剤への感受性は低下傾向にあった.明らかに低下がないのはDKB1種類のみであった.10位のStreptococcuspneumoniae(S.pneumoniae)は,TFLXに対する(113)2008年検出菌(n=387):1.Corynebacterium5%■:その他10%24%■:発育なし■:12.K.oxytoca4%■:13.G群b型Streptococcus■:8.M.catarrhalis3%■:9.P.aeruginosa3%■:10.S.pneumoniae3%■:11.B群b型Streptococcus1%2%■:5.a.hemStreptococcus2%9%■:6.嫌気性グラム陽性菌3%29%■:7.Haemophilusinfluenzae■:2.CNS1%■■:3.MSSA1%:4.MRSA2011年検出菌(n=517):1.Corynebacterium3%■:その他6%27%■:同定せず■:11.S.pneumoniae7%■:12.P.aeruginosa3%■:9.Moraxellaspp.4%■:10.Neisseriaspp.■:8.M.catarrhalis2%■:5.a-hemStreptococcus2%28%■:6.嫌気性グラム陽性球菌3%■:7.Haemophilusinfluenzae■:2.CNS1%■■:3.MSSA1%11%2%:4.MRSA図12008年(上)と2011年(下)の検出菌株頻度順の内訳両年度とも1位Corynebacterium,2位のcoagulase-negativeStaphylococcus(CNS)の2菌株で50%以上を占め,3位a-hemstreptococcus,4位S.aureus,またはmethicillin-sensitiveStaphylococcusaureus(MSSA)そして5位methicillinresistantStaphylococcusaureus(MRSA)が続く.2008年の上位10菌種は2011年の上位12菌種に入る.感受性が有意に低下していたが,第4世代のキノロンに対する感受性は良好に保たれていた.CMX,VCMが最も有効であった.III考察筆者らの施設の4年前の結果と比較し,結膜炎患者から分離培養される菌株の構成に変化はなかった.以前からキノロン系薬剤の抗菌力の低下5,6)が指摘されているが,CNSを除き,今回の検定では明らかに有意差が証明されたものはごくわずかであった.CorynebacteriumはDNA合成酵素としてDNAジャイレースはもっているが,トポイソメラーゼIVはもっていないために耐性化しやすいことがわかっており,実際にキノロン系薬剤に対して高度に耐性化されていたが,2008年と2011年では有意な変化はなかった.2位のCNS,すなわち表皮ブドウ球菌は,第3世代以前のキノロン系薬剤はすでに感受性が低下していたが,第4世代のGFLX,MFLXが2008年時点で90%台であったものが,あたらしい眼科Vol.31,No.7,201410391040あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(114)(114)表22008年度と2011年度の上位細菌の各抗菌剤に対する感受性率薬剤年度1.Corynebacteriumspp.2.CNS3.MSSA4.MRSA5.a-Hem-Streptococcus6.嫌気性グラム陽性球菌7.Haemophilusinfluenzae8.M.catarrhalis9.P.aeraginosa10.S.pneumoniaeTC20082011958382256910010010001396*91**100*614991100100029DKB200820118480794556501001001001379769144293610010010029CMX20082011979897101001001001006310096**87100118391100100**0100VCM20082011981001001001001000001001009910010091100000100CP20082011588997909410010010006358901009489100100100071OFLX20082011334885108842100100881002851911166451001006071LVFX200820113655851094501001001001003152911171551001008071TFLX20082011234982107558100100100100154988116045100100**20*57GFLX20082011419288351005810010010010037**64911180551001006086MFLX2008201139918835100581001005010038**649111**77551001002086標本数2008200920102011108923420161291088105100352627715444126124302337622126614114033183511151757標本比率の差の検定を行い,p<0.05となった箇所には*,p<0.01となった箇所には**を付けた.80%以上の感受性率を示した箇所は網掛けした.薬剤は非キノロン系を上に5種類(TC,DKB,CMX,VCM,CP),下にキノロン系5種類(OFLX,LVFX,TFLX,GFLX,MFLX).表の下部には2008年から2011年の標本数を示した.グラム陽性菌は太字(CNS:Coagulase-negativeStapylococcus,MSSA:methicillin-sensitiveStaphylococcusaureus,MRSA:methicillin-resistantStaphylococcusaureus,Staphylococcuspneumonia),その他はグラム陰性菌(Corynebacteriumspp.,Haemophilusinfluenzae,Moraxellacatarrhalis,Pseudomonasaeruginosa)2011年には64%と有意に低下していた.山田らの論文6)では2008年の時点で,感受性が低下している原因としてgyrA,gyrB,parC,そしてparEのQRDR(キノロン耐性決定領域)に変異がある株が出ていることが指摘されている.当院ではキノロン系薬剤の長期投与は控えているが,日本でのキノロン系薬剤の使用の増加に伴い,市中の菌の変異が考えられる.8位のMoraxellacatarrhalisもVCMを除くすべての薬剤に感受性がある.その他の全身領域の疾患で問題になることはほとんどなく,抗菌薬曝露が少ないことにより,耐性化がみられないと推測される.P.aeruginosaに対しては,キノロン系薬剤,現状最も効果が期待できるのはDKBである.第一選択として使われるCMXの効力が低下していることも明記すべきである.日本の市場から姿を消したTCに対する感受性は,いくつかの上位菌株で上昇した.このように使用されなくなった抗菌薬に対する感受性は,各菌株で回復していく可能性があると考えられる.逆にいまだ,米国ではクラミジアによる結膜炎などに使用しているTCの耐性化が報告されている7)表2をみると,起炎菌の推定できない結膜炎患者へのempiricな抗菌薬治療の際は,施設入所者,入院患者などP.aeruginosaの関与が推定される患者,MRSA保菌が証明されている患者を除けば,第一選択薬としてはCMX,次点にCPを使用するのが最も効果が期待できる.CPはMRSAに対する抗菌力を保持しており,可能な限り温存したいことを考えれば,第一選択としてはやはりCMXがよいと考えられた.MRSA保菌者の結膜炎に対しては,既報2,3)でも述べたが,今回もCPを第一選択とする.VCM眼軟膏はMRSAの検出をもって初めて使用することができ,薬剤が高価であるため,結果として耐性化が抑制されていると推測される.わが国における他の研究をみると,結膜炎に関しては,2004年からの5年間のCOI細菌性結膜炎検出菌スタディグループの研究では8),検出菌の1位がStaphylococcusepidermidis,2位がPropionibacteriumacnes,3位がStreptococcusspp.,そしてS.aureusと続くが,全菌種を合わせるとLVFX,CMXがよい感受性を示したと述べている.感染性角膜炎診療ガイドライン(第2版)9)によれば,角膜炎においてグラム陰性桿菌疑いではキノロン系+アミノグリコシド系,グラム陽性球菌疑いではキノロン系+セフェム系を推奨している.これはキノロン系薬剤のpostantibioticeffect(点眼後組織に長くとどまる現象)を期待しているからである.太根ら10)は高齢者の細菌性結膜炎における臨床分離菌と薬剤感受性を調べているが,筆者らの研究と同様MRSE,MRSAにはCP,VCMが有効で,キノロン系薬剤で初期治(115)療を受けていた症例では耐性化と混合感染がみられたことを指摘,さらにTCが有効と述べている.このように抗菌薬の選択については,どの研究も同様の選択をしている.一方,ヨーロッパでは結膜炎は一般的に1.2週間で自然治癒するので,抗菌薬を使わないこともあるが,病期を短縮する目的で使われる抗菌薬の第一選択はキノロン系薬剤ではなく,CPやフシジン酸(fusidicacid)である11).局所または全身にキノロン系薬剤が使われると,3カ月以内に耐性を示すS.aureusは29%だが,使っていないものは11%と有意な差がある12),とのヨーロッパの報告に対し,米国では,アジスロマイシンよりも第3,4世代のキノロン,GFLX,MFLXのほうが脈絡膜新生血管治療における細菌感染予防のための点眼において,S.aureusやCNSの耐性をつくりにくいことが報告されている13).しかし,19.60%のS.pneumoniae,85%のMRSAが耐性をもっている.第4世代,なかでもBesifloxacinは耐性が少ない14).以上のように,ヨーロッパではキノロンを第一選択とせず,米国ではむしろ第3,4世代と新しいキノロンを第一選択とするような論文が多い.今回の筆者らの研究で,耐性化しにくいといわれていた第4世代のキノロン系薬剤である,GFLX,MFLXの感受性の低下もあり,結膜炎に対する第一選択薬として多く使用されることが予想されるキノロン系抗菌薬の適正利用に留意する必要があると考えられた.本論文は第117回日本眼科学会(2013年4月東京)において発表した.文献1)加茂純子,喜瀬梢,鶴田真ほか:感受性からみた眼科領域の抗菌薬選択2006.臨眼61:331-336,20072)加茂純子,村松志保:感受性から見た眼科領域の抗菌薬選択2008.臨眼63:1635-1640,20093)秦野寛,井上幸次,大橋裕一ほか(眼感染症スタディグループ):前眼部・外眼部感染症起炎菌の薬剤感受性.日眼会誌11:814-824,20114)Benitez-Del-CastilloJ,VerbovenY,StromanDetal:Theroleoftopicalmoxifloxacin,anewantibacterialinEurope,inthetreatmentofbacterialconjunctivitis.ClinDrugInvestig31:543-557,20115)McDonaldM,BlondeauJM:Emergingantibioticresistanceinocularinfectionsandtheroleoffluoroquinolones.JCataractRefractSurg36:1588-1598,20106)YamadaM,YoshidaJ,HatouS:MutationsinthequinoloneresistancedeterminingregioninStaphylococcusepidermidisrecoveredfromconjunctivaandtheirassociationwithsusceptibilitytovariousfluoroquinolones.BrJOphthalmol92:848-851,2008あたらしい眼科Vol.31,No.7,201410417)AdebayoA,ParikhJG,McCormickSAetal:ShiftingtrendsininvitroantibioticsusceptibilitiesforcommonbacterialconjunctivalisolatesinthelastdecadeattheNewYorkEyeandEarInfirmary.GraefesArchClinExpOphthalmol249:111-119,20118)小早川信一郎,井上幸次,大橋裕一ほか:細菌性結膜炎における検出菌・薬剤感受性に関する5年間の動向調査(多施設共同研究).あたらしい眼科28:679-687,20119)日本眼感染症学会感染性角膜炎診療ガイドライン第2版作成委員会(井上幸次委員長):第3章感染性角膜炎の治療.日眼会誌117:491-496,201310)太根伸浩,北川清隆,勝本武志ほか:高齢者の細菌性結膜炎における臨床分離菌と薬剤感受性.臨眼67:991-996,201311)Bremond-GignacD,ChiambarettaF,MilazzoS:AEuropeanperspectiveontopicalophthalmicantibiotics:currentandevolvingoptions.OphthalmolEyeDis24:29-43,201112)FintelmannRE,HoskinsEN,LietmanTMetal:Topicalfluoroquinoloneuseasariskfactorforinvitrofluoroquinoloneresistanceinocularcultures.ArchOphthalmol129:399-402,201113)KimSJ,TomaHS:Ophthalmicantibioticsandantimicrobialresistancearandomized,controlledstudyofpatientsundergoingintravitrealinjections.Ophthalmology118:1358-1363,201114)McDonaldM,BlondeauJM:Emergingantibioticresistanceinocularinfectionsandtheroleoffluoroquinolones.JCataractRefractSurg36:1588-1598,2010***1042あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(116)