屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─監修=木下茂●連載172大橋裕一坪田一男172.オルソケラトロジー福本光樹南青山アイクリニック・南城眼科現在,わが国では4社のオルソケラトロジーレンズが認可され,うち3社から販売されている.近年オルソケラトロジーレンズの近視進行抑制効果が注目され,症例数の増加・低年齢化が認められている.実際に処方するうえでは,3種類のレンズの特徴や装用開始後の経過もよく理解しておくことが大切である.●はじめにオルソケラトロジーレンズは後面が多段階カーブになっていて,装用することにより角膜中心部を扁平化させ,近視性乱視を矯正するハードコンタクトレンズである.現在,4社のオルソケラトロジーレンズが厚生労働省より認可され,3社のレンズが製造販売されている.裸眼で日中生活できる,また装用を中止すると角膜は基本的には元の形状に戻るという利点だけでなく,国内外より近視進行抑制効果が認められる1,2)という発表がされるようになったこともあり,症例数の増加ならびに低年齢化が進んでいる.●オルソケラトロジーレンズの形状診療の際にはオルソケラトロジーレンズの基本的な形状を理解しておくことが必要である.図1のように角膜後面は多段階カーブになっている.43Dの角膜を3D変化させようとするとベースカーブは理論上40Dとなる.しかし,レンズをはずした後の戻りを加味して,com図1オルソケラトロジーレンズの形状後面は中央よりベースカーブ,リバースカーブ,アライメントカーブ,ペリフェラルカーブと多段階カーブとなっている.pressionfactorという補正(3社とも+0.75D)がされており,実際のベースカーブは39.25Dとなっている.●形状の比較3社のレンズを切断し,断面を比較してみると,それぞれのレンズの特徴がわかる(図2).Dk/L値は,メーカーが公表しているDk値を,本比較検証で行ったレンズ中心厚(実測値)で割った値である.1.aオルソ.K(アルファコーポレーション社製)Dk/L値:47×10.9(cm/sec)・(mlO2/ml×mmHg)ペリフェラルカーブの幅が最も短く,アライメントカーブが最も広いが,後面光学部(BCOZ)は最も狭い.ペリフェラルカーブからベースカーブの内面中心部までの深さが最も深い.全体的に突出のある角膜に適していると考察できる.a厚い広い薄い深い低い長い狭い短いb厚い深い高い短い長いc薄い低い浅い広い長い図2形状の比較a:aオルソ-K,b:マイエメラルド,c:ブレスオーコレクト.(89)あたらしい眼科Vol.31,No.9,201413370910-1810/14/\100/頁/JCOPY(D)0.500.00-0.50-1.00-1.50-2.00-2.50-3.00-3.50-4.00-2.64-1.19-0.40-0.28-0.26-0.14(n=86)*****装用前1日1週2週4週*p<0.01(装用前との比較:pairedt-test)12週図3屈折度数変化角膜上皮細胞層の変化に伴い屈折度数も変化するため,装用開始後数日は見えづらさを自覚することが多い.2.マイエメラルド(テクノピア社製)Dk/L値:43×10.9(cm/sec)・(mlO2/ml×mmHg)エッジリフトは高く広く,アライメントカーブの幅が3社中最も狭い.アライメントカーブとリバースカーブのジャンクション部から内面中心部までの深さが最も深い.角膜中心部が突出した角膜に適したレンズと考察できる.3.ブレスオーコレクト(ユニバーサルビュー社製)Dk/L値:78×10.9(cm/sec)・(mlO2/ml×mmHg)後面光学部は最も広い,レンズの深さが最も浅い.全体的な厚みが最も薄く設計されている.角膜中央部の突出の少ない角膜に適したレンズと考察できる.●屈折度数変化自験例86眼の装用開始後の屈折度数変化を図3に示す.LASIKなどの屈折矯正手術などと比べて,目標屈折に達するまでに時間がかかることを理解しておくことが大切である.装用開始後も,それまで使用していたコンタクトレンズ,眼鏡を使用しているという症例も経験している.●近視抑制効果近視進行の原因となる眼軸長の伸展には,網膜ぼけ理論(incrementalretinaldefocustheory)が関与していると考えられている.網膜ぼけ理論には,近方視時における網膜後方へのデフォーカス(調節ラグ)と周辺網膜の後方へのデフォーカス(図4a,b)があるが,オルソケラトロジーレンズは後者を軽減する作用があると考えられている.また,後者がより近視の進行に影響があると1338あたらしい眼科Vol.31,No.9,2014ab図4周辺網膜の後方へのデフォーカスa:眼鏡で矯正した場合は,周辺網膜において後方へのデフォーカスが認められる.b:オルソケラトロジーレンズの場合は,角膜中央が扁平化し,周辺は扁平化することはなくむしろ急峻化するため,周辺網膜において後方へデフォーカスしない.動物実験において実証されている3).アトロピン点眼など薬物による近視進行抑制効果について報告されているが4,5),散瞳による羞明感や調節麻痺による近見障害などの副作用があり,実用的でない.オルソケラトロジーレンズによる眼軸長伸展抑制効果は,低年齢であるほど効果が大きいと考えられている.今後もガイドラインで適用とされていない20歳未満の希望者が増加する可能性も否定できないが,長期的な安全性が確認されておらず,より慎重な対応が必要と考えている.その一方,将来的に病的近視などへのリスクが高まる眼軸長伸展を抑制できる光学療法として,その可能性や今後の研究のためにも正しく熟知したうえで処方していくことが大切である.文献1)KakitaT,HiraokaT,OshikaT:Influenceofovernightorthokeratologyonaxiallengthelongationinchildhoodmyopia.IOVS52:2170-2174,20112)Santodomingo-RubidoJ,Villa-CollarC,GilmartinBetal:MyopiacontrolwithorthokeratologycontactlensesinSpain:refractiveandbiometricchanges.InvestOphthalmolVisSci53:5060-5065,20123)SmithEL3rd,KeeCS,RamamirthamRetal:Peripheralvisioncaninfluenceeyegrowthandrefractivedevelopmentininfantmonkey.InvestOphthaomolVisSci46:3965-3972,20054)ChiaA,ChuaWH,CheungYBetal:Atropineforthetreatmentofchildhoodmyopia:safetyandefficacyof0.5%,0.1%,and0.01%doses(AtropinefortheTreatmentofMyopia2).Ophthalmology119:347-354,20125)ChuaWH,BalakrishnanV,ChanYHetal:Atropineforthetreatmentofchildhoodmyopia.Ophthalmology113:2285-2291,2006(90)