特集●眼とブルーライト,体内時計あたらしい眼科31(2):205.212,2014特集●眼とブルーライト,体内時計あたらしい眼科31(2):205.212,2014ブルーライト-体内時計-睡眠障害の関連EffectsofBlueLightonBiologicalRhythmsandSleepDisorder北村真吾*三島和夫*はじめに24時間より短い24時間より長いヒトを始めとしたほとんどすべての生物は,地球の自35転によって生み出される24時間周期の明暗サイクルに30対して適応し,約24時間周期で駆動する体内時計を有25する.睡眠覚醒サイクルは体内時計の中枢である視床下20部の視交叉上核からの調節を受けており,質のよい睡眠人数を得るためには体内時計の維持が不可欠である.近代以15降の人工照明の発達はわれわれの生活に利便性をもたらし,24時間を高効率に利用する社会の実現に寄与したが,自然環境であればわずかな光のみ存在するはずの夜間でも容易に高照度光を浴びる機会が蔓延し,体内時計はその本来あるべき状態を維持することが困難になっている.本稿では,ブルーライトを中心とした全波長光と体内時計・睡眠障害との関連について述べる.I光による体内時計の同調ヒトの概日リズムは外界の明暗環境が存在しなくても自律的な振動を維持するが,正確に24時間周期を示すことは稀であり,多くは24時間と異なる周期を示す.ヒトの場合はやや長く,平均では24.18時間(24時間11分)とされ1),1時間超の個人差を示す2)(図1).この周期のわずかなズレは,外界の周期の変動に対する調整用のマージンと考えられているが,24時間とわずかに異なるため,日々,時計の針を合わせるように,体内時計のリセット(同調)が必要となる.体内時計を同調させる要因を外部同調因子とよぶが,105023.523.723.924.124.324.524.7深部体温の概日リズム周期(h)図1ヒトの概日リズム周期の分布157名の成人(20.79歳)の概日リズム周期は1時間ほどの個人差がみられるが,多くは24時間よりも長い周期を示す.(文献2を改変)ヒトにおいて最も強い同調因子は光である.ただし,初期の研究では光が作用するのは実生活ではめったにないほどに強く長い曝露時間を伴うときだけであり,室内光程度の人工光は相対的に弱い同調因子であると考えられ,Weverは「ヒトにおける最も関連の強い同調因子は社会的または行動的な同調因子である」と結論づけた3).しかしながら,1980年にLewyらは2,500lxの光がメラトニン抑制作用をもつことを報告し,ヒトにおいてもやはり光は主要な同調因子であることが示された4).さ*ShingoKitamuraandKazuoMishima:国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部〔別刷請求先〕三島和夫:〒187-8553東京都小平市小川東町4-1-1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(45)20580-4光曝露光曝露2,500lx2,500lx1,500lx0lx500lx500lx60-3メラトニン位相変化(h)メラトニン(pg/ml)-240-120011:002:003:004:005:001:002:003:004:005:00時刻(h)1101001,00010,000照度(lx)図2照度による体内時計への影響初期の研究ではある程度の強さの光(2,500lx程度)が体内時計に影響すると考えられたが,その後,100lx程度の室内光レベルの照度でも体内時計に影響することが明らかにされた.らにその後の用量依存性の研究により,室内光(100lx程度)でも位相同調効果を持つことが明らかにされた5,6)(図2).光の曝露はヒトが24時間周期の生活を維持していくのに必要不可欠な時間的手がかりであるが,そもそも光がないと体内時計と睡眠はどうなるのだろうか.この状況は光感受性をもたない視覚障害者が当てはまる.光感受性を持たない視覚障害者では概日リズム睡眠障害の自由継続型(FRT)とよばれる疾患が多く認められる7.9).この疾患は毎日1時間程度睡眠のタイミングが遅れていき,周期的な不眠と日中の眠気を経験する難治性の疾患である10)(図3).1,073名の視覚障害者を対象とした大規模研究では,全盲の18%,弱視の13%がFRTと推定された11).また,313名の視覚障害者を対象としたニュージーランドの調査では,光感受性が減退している156名のうち26%に睡眠パターンのドリフトがみられたと報告している12).光感受性機能の残存する度合いに応じて,この罹患率は変化する7)(表1).ただし,体温がフリーランしているにもかかわらず,睡眠覚醒サイクルは外界の24時間に同調できているケースも存在する9,13).このことは睡眠覚醒サイクルが生物時計の中枢206あたらしい眼科Vol.31,No.2,2014(文献4,6を改変)である視床下部の視交叉上核(SCN)以外の調節を受けており可塑性が高いためと考えられているが,ここでは詳述しない.睡眠覚醒サイクルとその他の概日リズム機能との間で周期のズレが生じることを内的脱同調とよぶ.内的脱同調はいわゆる時差ボケ状態であり,時差旅行や交代勤務で多く認められ,熟眠感の喪失,日中の眠気,全身倦怠感,食欲不振,気分変調,精神運動機能の低下が主症状である.このように,光が存在しない環境ではヒトの生体リズムや睡眠の規則性は著しく乱され,健康な生活を維持することが困難となる.ヒトにとって光は重要であるが,当然ながら単に浴びればよいというものではない.前項で光が体内時計を同調すると説明したが,正確にいえば体内時計の時刻(位相)を巻き戻したり(位相前進),逆に進めたり(位相後退)することで,総体的に時刻が合うように調節が図られる.光の同調作用によって体内時計の位相が前進するか後退するかは体内時計の位相に依存する.体内時計位相の主要な指標として用いられる深部体温でいえば,最も体温が低下する底点(通常は明け方)を境にして,直前までが前進,直後から後退と位相変化の方向が変わる.つまり朝に光を浴びると位相は前進し朝型生活に近(46)時刻(2日分)時刻(2日分)012241224012241224健常な睡眠パターンFRT患者の睡眠パターン図3概日リズム睡眠障害の自由継続型(FRT)の睡眠パターン縦軸は6カ月の期間,横軸は2日分の時刻を表す.黒く塗られている部分が睡眠をとっている時間帯である.健常なパターンでは深夜から朝にかけての睡眠が維持されているが,FRT患者では毎日遅れ,1日のあらゆる時間帯に睡眠がみられる.(北村ら,未発表データ)表1光知覚と概日リズム同調異常の頻度視覚障害の程度通常の同調部分的な同調フリーラン型その他光知覚のある群≧3/60以上の視力(7)5729014(LP)指の本数を数えられる(5)802000手の動きがわかる(4)100000光の知覚がある(3)673300LP全体(19)712105光知覚のない群眼球の残存数が2(12)3342178(NPL)眼球の残存数が1(7)290710眼球の残存数が0(11)90910NPL全体(30)2317573づき,夜に光を浴びると位相は後退し夜型生活に近づく.前進と後退のもう一方の境は,おおむね午後2時頃にみられる.位相反応の強さは位相変化が逆転する境で最も大きい.さらに,同じ強さと時間の光を浴びた場合,位相前進作用よりも位相後退作用で変化幅が大きい.これらの反応をまとめたものを位相反応曲線とよぶ14)(図(47)(文献7を改変)4).位相反応は光の波長,強度,曝露時間にも影響を受ける.ヒトの場合,概日リズム周期が平均して24時間より長く,位相前進よりも位相後退のほうが変化の幅が大きい.夜間に光を浴びることが困難であった自然環境下で位相後退が必要となった際に光を浴びづらい夜間にも位相後退が可能なように獲得された機能であったと考あたらしい眼科Vol.31,No.2,2014207夜昼昼210-1-2-3-4前進後退夜昼昼210-1-2-3-4前進後退毛様体神経節視交叉上核室傍核外側膝状核膝状体間小葉視蓋前域オリーブ核Edinger-Westphal核松果体上頸神経節中間外側核図5ipRGCsからの非視覚系光情報ネットワーク実線部分はipRGCsからの求心性投射.一点鎖線は視交叉上核からのメラトニン産生経路.破線は瞳孔夜121518210369121518210おおよその時刻図4光による位相反応曲線縦軸は翌日の概日リズム位相の変化(h)を表す.夜の光は概日リズム位相を後退させ,体内時計を夜型方向へ変化させる.(文献14を改変)えられるが,人工照明による夜間の光曝露が普遍的にみられる現代社会では,ヒトは常に夜型化のリスクを抱えている.光同調において主要な役割を果たすのが内因性光感受性神経節細胞(ipRGCs)である.ipRGCsは比較的最近発見された第三の光受容器で,光を感知するメラノプシンを有する他,通常のRGCsと同様に双極性細胞を通じて杆体や錐体からの情報を受取る.ipRGCsには体内時計中枢であるSCNやオリーブ核,外側膝状核などの部位への直接的な投射が存在する15)(図5).杆体や錐体に比べるとipRGCsはわずかな量しか発現しておらず,ヒトの場合,RGCsのうちのわずか1割程度(約200個)調節経路.であるが,光同調において大きな寄与をもつ.ipRGCsは460.480nm付近のブルーライトに最も感受性が高い16)(図6).逆に長波長ではほとんど反応がみられない.そのため,光による体内時計,睡眠への影響は,曝露される光にどの程度ブルーライトが含有しているのかが大きな決定要因となる.II光による体内時計,睡眠への影響繰り返し述べているように,健康的な生体リズムと睡(文献15を改変)眠習慣の維持には適切な光曝露が不可欠であるが,逆にいえば不適切な光曝露は生体リズムと睡眠習慣を乱す.われわれの体内時計を24時間に同調させ,規則的な夜間睡眠を維持するためには,日中の光曝露と夜間の光.奪というバランスが重要である.歴史的にヒトは日の出と日の入りに従ったリズム性を獲得してきたが,人工照明の発達により,この100年程度で光環境が大幅に変わり,日没後の夜間にも長時間の光曝露を受けることになった.208あたらしい眼科Vol.31,No.2,2014(48)人工照明に囲まれた環境がわれわれの睡眠やリズムにどのような影響を与えているのであろうか.コロラド大学のWrightらは,14時間40分の昼と9時間20分の夜からなるキャンプ生活を実験的に設定した17).キャンプ生活中は,自然光とキャンプファイヤーの光のみが利用可能であった.その結果,人工照明と人工建築物が日中の太陽光への曝露を減らし,夜の光曝露を増やし,リズム位相を後退させること,自然環境での生活では,リズムは自然な明暗サイクルに同調し,生物学的夜は日暮れごろに始まり,日の出直後の起床直前に終わること,さらに夜型の個人は,自然の明暗サイクルのもので,より大きな位相前進を示し,朝型の個人と同等の位相を示すことを示した.この結果を考慮すると,ヒトの体内時計の特性と考えられてきたことは,多くの部分で人工照明環境における自然環境とは異なった条件下で評価されてきた可能性があり,そもそも獲得されてきた機能特性はやはり自然環境に合致したまま保存されているようである.とはいえ,現在広く共有されている社会的スケジュールから離脱することは困難であり,仕事や家庭の都合から夜間の光曝露は容易には避けがたい.夜間の照明を白熱灯に変更することは有用であるが,エネルギー面から国内生産が中止されつつある.見た目は変わらない白熱灯型LEDは,スペクトル的にはブルーライトを含んでいるので同等の作用は期待しづらい.別の対策としては,日中と夜間の光をバランスよく浴びる方法が挙げられる.Zeitzerら18)は,日中の光曝露履歴が夜間の高照度光による位相後退効果を減弱することを示した.IIIブルーライトによる体内時計,睡眠への影響これまで述べてきた光による体内時計,睡眠への影響は,おもに自然光や蛍光灯の白色光を用いて行われた実験の知見であり,ブルーライトの作用についてもおおむね同様と考えてよい.しかし,前述のとおり,ブルーライトはipRGCsにとって最も感度の高い波長帯域の光であるため,同じ物理量が曝露された場合,睡眠やリズムに対して,その他の波長光よりも大きな影響を及ぼす.蛍光灯や近年急速に普及してきたLEDライトではブルーライトを多く含むため,概日リズムやメラトニン分(49)相対量子感度1.000.750.500.250.00lmax=464nmr2=0.91400450500550600650波長(nm)図6ipRGCsのアクションスペクトラム(文献16を改変)泌,睡眠維持に有害となりやすい19).これまでの研究で,就床前の時間帯に電子機器を使用することが入眠困難や睡眠の質の低下につながる可能性が指摘されている.Higuchiらは,就寝前に120cd/m2のCRTディスプレイを用いてコンピュータゲームを行うことが,覚醒度の上昇や寝つくまでの時間の延長に関連することを実験的に示した20).LEDバックライトをもつ液晶ディスプレイはさらに高輝度であることが多く,またブルーライトを多く含むため,より影響が大きいと考えられる.2008年に約10万人の中高生を対象とした全国調査では,毎日消灯後に携帯電話を通話やメッセージ送信に使用する割合が,全体でそれぞれ8.3%,17.6%と少なからず存在しており,この携帯電話使用が広汎な睡眠問題(短時間睡眠,主観的睡眠の質の低下,日中の過度な眠気,不眠症状)に関係することが示された21).これらの結果は,電磁波への曝露や刺激的な内容による影響も排除できないが,ブルーライトによる影響が含まれていると考えることは妥当であろう.実際に,夜間のブルーライト曝露が,時計遺伝子発現や睡眠状態の変化(寝つくまでの時間の延長,深い睡眠の減少)をきたすことが実験的に明らかにされている22.24).より直接的に画面による影響をみた研究では,ブルーライトを多く含んだLEDバックライトディスプレイに夜間に5時間曝露されると,非LEDバックライトディスプレイと比較して,メラトニンの分泌抑制,眠気の低下,緩徐眼球運動・あたらしい眼科Vol.31,No.2,2014209主観的眠気(KSS)安静状態安静状態暗順応非LEDLED映像鑑賞中(21:45~22:15)の眠気*654654KSS主観的眠気(KSS)安静状態安静状態暗順応非LEDLED映像鑑賞中(21:45~22:15)の眠気*654654KSS10暗順応LED非LED****887メラトニン(pg/ml)642018:1519:1520:1521:1522:1523:1500:1518:1519:1520:1521:1522:1523:1500:15時刻(h)時刻(h)図7LEDディスプレイによるメラトニン分泌抑制と眠気の低下EEG低周波成分の減少がみられ,種々の認知機能成績(持続的注意,ワーキングメモリー,宣言的記憶)が向上したという報告がある25)(図7).このとき,明るさの主観的感覚は非LEDバックライトディスプレイのほうが眩しいと感じたという.夜間のLEDによるブルーライト曝露が体内時計や睡眠を攪乱することの証左である.逆に,ブルーライトを効果的に使用することは,体内時計の異常によるリズム障害や気分障害の治療を効果的に進めることも可能となる.たとえば,これまでリズム障害に対する光治療は全波長の白色光で多く行われてきたが,ブルーライトの曝露であれば短時間曝露による患者負担の軽減,省エネ効果,これまで奏効しなかったケースへの応用が期待できる.6.5時間の480nmのブルーライト曝露による位相反応曲線(PRC)は26),全波長白色蛍光灯(10,000lx)曝露での既存のPRC(図4)と同様のプロファイルを示し,より効率的な位相反応への影響が示唆されるが,実験条件が異なるため正確な評価は今後の課題である.しかし,こうした位相反応の高効率性はその他の研究でもみられている27,28).また別の研究では,469nmのブルーライトLEDは全波長白色(4,000K)蛍光灯に比べてメラトニン分泌抑制効率が高いことが示されている29).さらにブルーライト曝露は体210あたらしい眼科Vol.31,No.2,2014(文献25を改変)内時計以外の部分でもメリットが期待できる.40名を対象に4時間の夜間運転時にブルーライト(468nm,20lx)を連続曝露した場合,コーヒー1杯分(カフェイン400mg)の覚醒度上昇効果と同等であったと示された30).昼過ぎの眠気が高まる時間帯の48分間のブルーライト(40lx)曝露は,脳波上の覚醒水準を亢進させる効果がある31).一方,睡眠時間帯が遅れている集団に対して,睡眠スケジュール改善指導とともに,体内時計の位相前進が期待できる朝に1時間のブルーライト(.225lx)曝露を行った研究では,低照度(<1lx)との間に効果の差がみられなかったという結果32)であったが,これは睡眠スケジュール改善によって全般的な日中に多く夜間に少ない光曝露量の変化によってマスクされた可能性が指摘されている.IVブルーカット眼内レンズと体内時計,睡眠白内障は高齢者の4人に1人が罹患する一般的な疾患であり,水晶体の白色化(黄色化)によって,光特に短波長領域の光曝露が十分でなく,日中にメラトニンが抑制されず眠気を感じたり,夜間の睡眠の質の低下や,睡眠障害を経験しやすい.白内障手術では水晶体の眼内レンズ(IOL)との交換が行われる.当初,IOLは全波長の光を透過させるものが使用されていたが,Ham33)に(50)よって全波長透過型のIOLによる問題が最初に報告され,紫外線(UV)による網膜障害の可能性が指摘された.さらに赤視症,網膜光傷害,.胞様黄斑浮腫がこうしたIOL患者で発生した.そのため,1980年代からはUVカットレンズが使用されるようになった.また,UVのみならず,可視光の短波長への曝露が加齢黄斑変性症や網膜障害のリスクを高めることが疫学研究や動物実験で明らかになった.そのため近年,IOLは,網膜障害を予防する目的で,一般に紫外線と500lx以下の短波長光を遮断するものが多い.しかし,サングラスなどと違い,全時間帯でブルーライトの遮断を行うIOLではリズム同調に必要な時間帯の光入力をも遮断してしまうため,体内時計,睡眠に関連するさまざまな問題が生じる可能性が指摘された.この懸念はしかし,ブルーカットIOLによる体内時計や睡眠に対する有害作用はみられないことが,56の査読付き論文を対象としたレビューにまとめられている34).また,最近の40名の白内障患者(水晶体核硬度N3以上)を対象としてブルーカットIOLの手術前後の睡眠を調べた研究では,術後に睡眠の質の改善がみられ,特に主観的睡眠感,睡眠時間,日中の機能障害の向上がみられた35).この結果は,ブルーカットIOLが部分的にしかブルーライトを減衰させていないことが一つの可能性としてある.実際,この研究で用いられたIOL(SN60WF,AlconLaboratories,USA)の短波長領域の透過率は,53歳の水晶体に近い水準を示していた(図8).同様に,18.76歳から得られた29の水晶体と,3つのIOL(UVカット1,ブルーカット2)での波長別透過率を比較した研究36)では,ブルーカットIOLの効果は比較的小さく,22.2歳の水晶体以上にはならないことが示され,少なくとも現時点では生理学的範囲を超えたブルーライトの抑制とそれによる体内時計や睡眠に対する有害作用の危険性はないといえる.おわりに本稿では,ブルーライトを中心とした全波長光と体内時計・睡眠障害との関連について述べた.体内時計や睡眠覚醒サイクルの維持には日中の光曝露と夜間の光.奪が不可欠であるが,人工照明によって不夜城のごとく明(51)透過率(%)100806040200300350400450500550600650:ブルーカットIOL:ヒト(53歳)の水晶体:全波長透過型IOL波長(nm)図8眼内レンズ(IOL)の光透過率(文献35を改変)るく照らされた現代社会では,体内時計や睡眠が危機に晒されている.自然への回帰とはいかないまでも,明暗サイクルを伴った活動と休息のバランスを心がけたい.文献1)CzeislerCA,DuffyJF,ShanahanTLetal:Stability,precision,andnear-24-hourperiodofthehumancircadianpacemaker.Science284:2177-2181,19992)DuffyJF,CainSW,ChangAMetal:Sexdifferenceinthenear-24-hourintrinsicperiodofthehumancircadiantimingsystem.ProcNatlAcadSciUSA108:1560215608,20113)WeverRA:Lighteffectsonhumancircadianrhythms:areviewofrecentAndechsexperiments.JBiolRhythms(Summer)4:161-185,19894)LewyAJ,WehrTA,GoodwinFKetal:Lightsuppressesmelatoninsecretioninhumans.Science210:1267-1269,19805)BoivinDB,DuffyJF,KronauerREetal:Dose-responserelationshipsforresettingofhumancircadianclockbylight.Nature379:540-542,19966)ZeitzerJM,DijkDJ,KronauerRetal:Sensitivityofthehumancircadianpacemakertonocturnallight:melatoninphaseresettingandsuppression.JPhysiol526:695-702,20007)LockleySW,SkeneDJ,ArendtJetal:Relationshipbetweenmelatoninrhythmsandvisuallossintheblind.JClinEndocrinolMetab82:3763-3770,19978)LockleySW,SkeneDJ,ButlerLJetal:Sleepandactivityrhythmsarerelatedtocircadianphaseintheblind.Sleep22:616-623,19999)SackRL,LewyAJ,BloodMLetal:Circadianrhythmあたらしい眼科Vol.31,No.2,2014211abnormalitiesintotallyblindpeople:incidenceandclinicalsignificance.JClinEndocrinolMetab75:127-134,10)AAoSM(ed):ICSD-2.TheInternationalClassificationofSleepDisorders,2nded,Diagnosticandcodingmanual.AmericanAcademyofSleepMedicine,Westchester,Illinois,200511)LegerD,GuilleminaultC,Defran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