特集●視野検査の最前線あたらしい眼科31(7):937.946,2014特集●視野検査の最前線あたらしい眼科31(7):937.946,2014視野計の仕組みと基本的な使い方2.オクトパス視野計HowtoUsePerimetry(BasicOperation):OctopusPerimetry高田園子*はじめにオクトパス視野計は,自動視野計として世界で初めて開発され,1976年のオクトパス201以後,多数のモデルが発売されハードウェアの改良と視野解析ソフトウェアがバージョンアップされてきた.現行機種は,半球ドームを有し90°全視野投影型のオクトパス900と中心30°内を測定するコンパクトな直接投影システムの300シリーズがある.前者は,1台で静的視野測定と周辺視野に至る半自動動的視野測定が可能であり,後者は約180°回転する可動光学ユニットの採用にて,検査室のスペースによって検者・被検者の位置設定が可能であり,また直接投影システムのため専用の暗室が不要であるという特徴がある.いずれも,より早期の緑内障性視野変化をとらえるとされているBlueonYellow視野およびフリッカー視野1)も測定することができる.さらに,最新の視野解析ソフトであるEyeSuiteTMPerimetryにて,過去のどのオクトパス視野計のデータも解析可能であり,各種眼科疾患の診断・経過観察および視野進行が把握しやすくなっている.また,Humphrey視野での検査結果データをインポートし解析することができ,幅広い対応を可能にしている.本稿では,オクトパス視野計の仕組みと基本的な使い方を概説する.Iオクトパス視野計の仕組み1.測定条件の違い(表1)自動視野計は,測定機器により測定条件と設定条件に違いがあることを認識しておく必要がある.背景輝度,視標サイズ,視標呈示時間,最高視標輝度などの条件が異なると,感度のdB値の生データを直接比較することはできない.また,同じ視野計を用いても,プログラムやストラテジーが異なれば同様に直接比較はできない.2.測定プログラムの選択(表2)測定プログラムには,スクリーニング測定用と閾値測定用が用意され,測定範囲により中心視野(30°内),周辺視野,全視野に分けられる.汎用されるプログラムは,Octopus視野では,閾値測定プログラムの32,G1・G2,M1・M2が使用される(図1).測定プログラムは,疾患の特徴的な視野変化に合わせた配置点のプログラムを選択すればよい.32は,6°間隔の格子状に配置されており,いずれの疾患にも対応できる.G1・G2はおもに緑内障に用いると有用である.測定点配置は網膜神経線維層の走行や網膜神経節細胞の分布を考慮し,中心および鼻側部位に多く配置されている.測定点の数は32より少ないため測定時間も短縮される.M1・M2は中心10°内をより密に配置され,黄斑疾患や,緑内障の固視点近傍に障害がある場合に有用である.Octopus視野では,各測定プログラムの測定点は*SonokoTakada:近畿大学医学部附属病院眼科,小島眼科医院分院〔別刷請求先〕高田園子:〒589-8511大阪狭山市大野東377-2近畿大学医学附属病院眼科0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(11)937表1機器の測定条件Octopus900Octopus300測定条件背景輝度最高視標輝度視標サイズ視標呈示時間4asb(1.27cd/m2)31.4asb(10cd/m2)4,000asbGoldmannI.V100,200,500ms31.4asb(10cd/m2)5,000asbGoldmannIII,V100,200ms測定戦略Normalstrategy(4-2-1dBblacketing)DynamicstrategyTOPNoramalstrategy(4-2-1dBblacketing)DynamicstrategyTOP固視監視法ビデオカメラ法自動瞳孔追尾CCD赤外線カメラ自動瞳孔追尾視野進行判定EyeSuiteTMPerimetryMDslope,LVslopeポーラートレンドクラスタートレンドMDslope,LVslopeポーラートレンドクラスタートレンド表2測定プログラム測定プログラム(Octopus900・300)Strategy名称測定範囲検査点適応疾患閾値スクリーニング900300*NS*DSTOP*2-LT*1-LT*LVS320-30°76緑内障,一般○○○++G1・G20-30°/30-60°59/14一般○○○○++M1・M20-4°/4-9.5°9.5-26°/26-56°45/3638/14黄斑疾患○○○○++LVC0-30°77Lowvision(中心)○+CTET0-80°100Estermantest○+NS:normalstrategy,DS:dynamicstrategy,2-LT:2-leveltest,1-LT:1-leveltest,LVS:lowvisionstrategy32M1・M2G1・G230°30°74点30°30°59点81点30°30°図1測定点配置938あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(12)phase1stage1stage2stage3stage4phase2stage5stage6stage7stage8図2phaseとstagestageで分割される(図2).臨床上重要とされる部位の順番にstage1.4まで存在し,それらをphase1として,すべての測定点の1回目の閾値検査が終了する.さらに測定精度を上げるため2回目の閾値検査はstage5.8まで測定しphase2が終了する.プログラムによっては,さらに周辺視野をphase3,4で測定可能である.stageの分割で被検者の状態にあわせ途中で終えることができ,後日その続きを行うことも可能である.3.測定strategyの選択a.Normalstrategy(図3)Octopusで初めて採用された閾値測定の基本であるblacketing(4-2-1dB)法を用いている.4dBステップで輝度を変化させ,被検者の応答が変化すれば逆方向に2dBステップで輝度を変化させ,再び応答に変化があったところで終了し,最後に応答があった値から1dB戻った値を採用している.b.Dynamicstrategy(図3)Blacketing法を採用しているが,測定時間の短縮を目的に,感度が低いところは知覚確率曲線の傾きがなだらかになることに着目し,正常付近では細かく,障害部位では大きくステップ幅を変化(2dBから最高10dB)させ測定している2).精度は保ちつつ,normalstrategyの約1/2の時間で測定できる.c.TOPstrategy(TendencyOrientedPerimetry)(図4)TOPは,各測定点をわずか1回のみの視標呈示で閾(13)値の傾向を推定しようとする従来とはまったく異なったstrategyである3).空間的に隣接する測定点の閾値は類似することに着目し,測定点の閾値決定に複数の隣接点の測定結果を反映させている.各測定点をstage1.4の格子状に分割し,stage1の点では正常値の1/2の輝度で視標を呈示し,応答により正常値の4/16の推定偏位量にて隣接点を含め補間させ上下する.その後,同様にstage順に正常値の3/16,2/16,1/16の偏位量と補間を繰り返し閾値を推定していく.測定時間は2.3分である.測定原理上,暗点は浅くなだらかになり,応答間違いが結果に影響を与える.Strategyの選択は,一般的には測定精度と測定時間を考慮したDynamicが勧められる.長時間の集中や姿勢の保持が困難な高齢者や小児,静的視野検査の苦手な方には測定時間の短いTOPがよい.しかし,わずかな変化をとらえ診断,経過観察をするためには,可能な限り測定精度の高いstrategyを選択し評価するべきである.II静的視野測定の基本的な使い方1.単一視野(Sven.in.One)の読み方(図5)単一視野解析の印刷形式は情報が豊富なseven-inoneがよい.症例1(図5)を例に解説する.①患者データ:生年月日の入力間違いがないか確認②検査情報の確認a.信頼性(キャッチトライアル)・偽陽性(視標が呈示されず音だけに応答)0/7(+):あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014939NormalstrategyDynamicstrategy40dB30dB20dB10dB0dB2dB4dB1dB2dB2dB4dB1dB2dB10dB5dB応答あり応答なし結果応答あり結果応答なし正常値の1/2から開始++正常値の4/16正常値の3/16+正常値の2/16正常値の1/1640dB30dB20dB10dB0dB100%}偽陰性障害部位正常付近50%}偽陽性暗い閾値明るい幅が広い幅が狭い視標輝度0%《視覚確率曲線》図3閾値測定ストラテジー(Normal,Dynamic)TOPstrategy測定点を4stageに分割推定偏位量Stage1:正常値の4/16Stage2:正常値の3/16Stage3:正常値の2/16Stage4:正常値の1/16図4閾値測定ストラテジー(TOP)940あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(14)①患者データ③⑤⑦②症例1:63歳,女性.右眼正常眼圧緑内障.COグレイスケール(濃淡表示)比較(年齢別正常値との差)確率(沈下の統計学的な有意性)diffuseな成分を補正diffuseな成分を補正-1.4dB視野指標補正確率ディフェクトカーブバリュー(実測値)補正比較全体沈下型局所沈下型視覚化検査情報信頼性:偽陽性、偽陰性プログラム、ストラテジー年齢別正常値からの逸脱度を⑥偽陽性型を局所沈下9段階に分けて濃淡表示⑧図5単一視野のSeven.in.One印刷7回のうち音につられず0回(0%).境界値は33%.・偽陰性(検査中に一度応答のあった部位に,より高輝度の視標を呈示しても応答がない)1/7(.):7回呈示中1回応答(14%).境界値は33%.・固視は,自動瞳孔追尾機能とビデオカメラで監視するため,固視不良の検査データはない.b.プログラムGプログラム,ダイナミックストラテジーを選択.③Greyscale(CO)(COグレイスケール)(15)④⑨⑩従来のグレイスケールは,実測値のdB値に基づいた濃淡表示をしていたがCOグレイスケールは,年齢別正常値からの沈下量(%)を9段階に分けて濃淡表示している.局所変化が素早く直感的にイメージできる利点がある.症例は,ビエルム.鼻側にかけての感度低下を認めることがすぐにわかる.④Values(バリュー)実測値の確認は必須であり,どの場所にどの程度感度あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014941が低下しているかを認識する.症例は,ビエルム領域と鼻側の一部では0dB(■)になる深い感度低下部位を認める.中心5°内の感度は良好である.⑤Comparison(比較)年齢別正常値との差(比較)を表示している.差が4dB以内のものは「+」で表示されている.正常からの沈下量を把握しやすい.眼底写真aPolar解析b⑥Correctedcomparisons(補正比較)Comparisonの各測定点の値から,白内障などでびまん性に低下した成分を補正している.Defectcurveのグラフの下方に表示されているDiffusedefect値(全測定点の感度の高いほうより第12.16番目での正常値からの差の平均)を差し引いた値が表示されている.⑦Probabilities(確率)各測定点の値が,統計学的に有意に正常から逸脱しているかを確率表示している.p<0.5は,この部位で同じ偏差になる割合が健常者の0.5%未満であることを意味する.⑧Correctedprobabilities(補正確率)びまん性に低下した成分を補正している.Correctedcomparisonsを確率表示している.⑨Defectcurve(ディフェクトカーブ)Octopus視野にのみ採用されており,Bebiecurveともいう4).年齢別正常値からの差による沈下量(comparisonsの値)を低い数値から高い数値を順番に並べプロットした曲線で,局所的な沈下,diffuseな沈下,混合した沈下,偽陽性応答の多い異常高感度が視覚化され明瞭に把握できる.Cluster解析c図6症例1(図5と同一症例)眼底写真(a)の視神経乳頭6.7時部位にrimの菲薄化と下方のNFLDが認められ,その部位に一致したPolar解析(b)での突出したグラフを認める.Cluster解析(c)では,ビエルム.鼻側にかけてのクラスタの沈下量が最も大きいことがわかる.942あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(16)MDslope:0.4dB/Y(p<0.5%)Trend解析有意性シンボル:悪化を認めるMDslope:0.4dB/Y(p<0.5%)Trend解析有意性シンボル:悪化を認める図7グローバルトレンド解析症例2:62歳,女性.原発開放隅角緑内障.時系列で信頼性の数値とともにGreyscale(CO)が並ぶ.Trend解析のMDslopeは,0.4dB/Yearの軽度な進行を認める(有意性シンボル:悪化は下向き赤三角▼,改善は上向き緑三角▲).全体的沈下の偏差はDiffusedefect(DDc)としてグラフの下方に表示されている.症例は,ビエルム.鼻側にかけての局所の感度低下が主体であり,「局所沈下型」を示している.⑩視野指標MS:平均感度MD:年齢別正常値との差による平均欠損sLV:LossVariance(局所的沈下)の平方根CsLV:sLVからSFの影響を除いた値SF:短期変動ただし,症例1はphase1で終了しているため,SFおよびCsLVが計算されていない.2.EyeSuiteTMPerimetryの有用性と読み方機能(視野)障害と構造(眼底)障害はお互い対応し,障害部位の整合性がとれているかを評価することは非常に重要である.EyeSuiteTMPerimetryでは,眼底所見と対比しやすい視野の評価として,Polar解析とCluster解析(図6)がある.また,測定されたすべての視野を用い,直線回帰にてある一定期間の視野進行傾向を評価するTrend解析(図7)をした,Polartrend解析およびClustertrend解析がある(図8).a.Polar解析各測定点の沈下量を網膜神経線維に沿ってモデルの視神経乳頭に投射させて上下反転し(眼底所見との対応のため),線の長さで沈下量を表現している.(17)あたらしい眼科Vol.31,No.7,20149432002年2010年abGreyscale(CO)CorrectedcomparisonsGreyscale(CO)CorrectedcomparisonsPolartrend解析Correctedclustertrend解析cd赤線:悪化緑線:改善線の長さは変化量(dB)有意性5%/1%の悪化5%/1%の改善5%/1%の変動▼▲◇図8症例2の左眼の眼底写真2002年で1.2時にrimの菲薄化,5時にrimnotchとNFLD,6時に乳頭出血を認める(a).2010年には,6時の乳頭出血があった部位にrimの菲薄化が広がる(b).Polartrend解析(c)では5.6時方向に赤いbarの突出部位が大きく,眼底写真の変化と一致している.Correctedclustertrend解析(d)では,上半視野のクラスタにおいて2.1dB/Yearと早い進行が認められる.これらより,眼底の進行部位と視野の進行部位の対応とその程度がよくわかる.b.Cluster解析測定部位を網膜神経線維束に沿ってクラスタ化し,各クラスタでの平均沈下量を表示している.また,そこからDDcを引いた補正表示のcorrectedcluster解析がある.c.Polartrend解析各測定点の沈下量を直線回帰分析し,その結果をPolar解析して視神経乳頭に投射したものである.d.Clustertrend解析各クラスタでの平均沈下量を解析(回帰直線の傾き)したものである.また,沈下量からDDcを引いた平均を解析するcorrectedclustertrend解析がある.グローバルトレンド解析の画面(図7)では,下方にgreyscale(CO)が時系列で並び,進行のイメージが瞬時につかめる.信頼性の数値を考慮し,解析したい対象を選択することができ,治療の変更前後での比較も容易にできる.III半自動動的視野測定動的視野測定は,周辺視野を含めた視野全体の形状を評価するためには非常に重要な測定である.動的視野計の代表であるGoldmann視野計(GP)は,近年国内および海外では減少傾向にある.また,動的視野検査は検者の技量が大きく影響し,施設間での比較や検者間での違944あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(18)Octopus900OSGoldmann視野計OctopusGKP図9Octopus900GKPGoldmann視野計とかなり類似した視野変化を検出できている.いが生じ,定量評価ができないため経過観察において問題となる.これらの問題を解決するために現在,自動動的視野測定の開発が進んでいる.Octopus900の動的視野測定GKP(Goldmannkineticperimetry)は,GPとほぼ完全に互換しており,測定条件が同じであるため,GPに精通した検査員であればすぐ操作できる5)(図9).自動視野計であるため手動(GP)では得ることのできない利点がある.患者の反応時間を測定し補正できる機能を有し,またイソプタの内部面積が自動的に表示され定量的に評価し経過観察が可能である.さらに,「フォローアップ」ボタンにて,前回実施した検査が自動的に再現され,検査経験が浅い検者でも測定しやすくなっている.しかし,現在の自動動的視野測定は,半自動として,あくまでも測定経線の決定,測定戦略は検者が決定するため,手動と同様に検者の技量が大きく影響するのは否めない.将来的には完全自動動的視野測定の開発に大きく期待している.おわりに静的視野測定の大きな利点に,中心視野の視覚の感度分布を定量的に数値で評価することが可能であり,そのわずかな変化をとらえ診断,経過観察ができることにある.視野検査は自覚検査であるため常に変動を伴う.数(19)あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014945回の単一視野解析の比較にとどまらず,ときには時系列に並べ変動の確認,視野進行スピードの把握をする必要がある.また,日常生活での有効視野を把握するには,周辺残存視野の評価は非常に重要である.Goldmann視野計が減少する今日,静的視野測定と動的視野測定が1つで行える自動視野計は有用であり,中心は静的に詳細な感度を測定し,周辺は動的に広がりをとらえ,それぞれを融合して評価することが大切であると考える.文献1)MatsumotoC,TakadaS,OkuyamaSetal:AutomatedflickerperimetryinglaucomausingOctopus311:acomparativestudywiththeHumphreyMatrix.ActaOphthalmolScand84:210-215,20062)WeberJ,KlimaschkaT:Testtimeandefficiencyofthedynamicstrategyinglaucomaperimetry.GerJOphthalmol4:25-31,19953)GonzalezdelaRosaM,BronA,MoralesJetal:Topperimetry:Atheoreticalevaluation(Suppl).VisionRes36:88,19964)BebieH,FlammerJ,BebieT:Thecumulativedefectcurve:separationoflocalanddiffusecomponentsofvisualfielddamage.GraefesArchClinExpOphthalmol227:9-12,19895)橋本茂樹:進行した視野障害の評価.視野検査update.MBOCULISTA11:40-44,2014946あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(20)