硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載132132若年者の特発性黄斑円孔に対する硝子体手術(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに特発性黄斑円孔の発症年齢は50.60歳が多く,屈折は正視眼が多い.筆者らは以前に強度近視の若年女性に発症した特発性黄斑円孔を経験した1).●症例30歳,女性.既往歴に特記すべきことはなく,眼外傷などの既往もなかった.視力はRV=0.03(0.4×sph.9.5D),LV=0.04(1.5×sph.9.0D(cyl.0.5DAx150°).右眼眼底には約1/4乳頭径大のfluidcuffを伴う黄斑円孔を認め,検眼鏡的には通常の中高年者にみられる特発性黄斑円孔とほぼ同様の所見を呈していた(図1).両眼とも強度近視眼であったが,後部ぶどう腫や目立った豹紋状眼底は認めなかった.硝子体手術はまずコアの硝子体を切除した後,後極から周辺に向かって人工的後部硝子体.離を作製したが,通常の症例より網膜硝子体癒着が強固であった.周辺部に網膜格子状変性巣は認めなかった.ついで,内境界膜.離,眼内液.空気同時置換術を行った.術後,黄斑円孔は閉鎖し矯正視力は(0.6)に改善した(図2).●症例の特徴特発性黄斑円孔の若年発症例について,熊谷らは480例526眼のうち,最年少例は22歳2),大庭らは102例107眼のうち最年少例は35歳3),Morganらは132例148眼のうち最年少例は31歳であったと報告している4).過去の報告では,いずれも若年発症の黄斑円孔例では近視が強い傾向がみられた.今回の症例も.9Dと強度近視眼であり,これらの報告と一致している.特発性黄斑円孔の発症機序としては,後部硝子体皮質前ポケットの後壁に存在する硝子体ゲルの網膜接線方向の収縮により,中心窩網膜に前後方向の牽引が作用することが指摘されている.後部硝子体皮質前ポケットは加図1初診時眼底写真(a)とOCT(b)右眼にfluidcuffを伴う特発性黄斑円孔を認める.所見としては通常の中高年の特発性黄斑円孔と同様であった.図2術7カ月後の眼底写真(a)とOCT(b)黄斑円孔は閉鎖し,矯正視力は0.6に改善した.abab齢の変化として中高年で形成されてくるが,高度近視眼では硝子体の液化が同年齢者よりも早期に生じる傾向があるので,これが若年発症黄斑円孔の主因と考えられる.硝子体手術時の注意点としては,網膜硝子体癒着がやや強固で,人工的後部硝子体.離作製がやや困難なことがあげられる.また,人工的後部硝子体.離作製時には,強度近視眼に頻度が高いとされる網膜格子状変性巣の有無に注意を払う必要がある.文献1)林田素子,南政宏,戸成匡宏ほか:30歳,女性に発症した特発性黄斑円孔.眼科手術21:382-384,20082)熊谷和之,荻野誠周,出水誠二ほか:特発性黄斑円孔の特徴.日眼会誌104:819-825,20003)大庭美智子,北岡隆,雨宮次生ほか:特発性黄斑円孔の臨床的特徴.臨眼58:1225-1229,20044)MorganCM,SchatzH:Idiopathicmacularholes.AmJOphthalmol99:437-444,1985(87)あたらしい眼科Vol.31,No.5,20147130910-1810/14/\100/頁/JCOPY