特集●視野検査の最前線あたらしい眼科31(7):953~961,2014特集●視野検査の最前線あたらしい眼科31(7):953~961,2014視野計の仕組みと基本的な使い方4.眼底視野計HowtoUsePerimetry(BasicOperation):FundusPerimetry廣岡一行*はじめに緑内障の診断や進行評価においてはHumphrey静的視野計(HFA)が広く用いられている.しかし,HFAは実際の測定部位の同定は不可能であり,また固視不良などにより検査精度の信頼性が低い場合もありうる.これに対して,眼底視野計は眼底直視下で網膜感度が測定でき,眼底写真と微小視野計測の結果を重ね合わせて表示できるため,網膜病変部位や網膜神経線維層の菲薄部に対応した網膜感度がひと目でわかるようになっている.1979年に走査レーザー検眼鏡(SLO,Rodenstock社)に搭載された微小視野計が発売されたが,マニュアルによる測定点の入力,再現性の問題,操作に熟練を要する,トラッキング機能がない,などの欠点があった.その後,2002年にMicroPerimeter1(MP-1)が,さらに2009年にはMacularIntegrityAssessment(MAIA)が発売され,これらの機器は日常臨床で十分に活用可能となっている.本稿では2つの眼底視野計について解説する.IMicroPerimeter1(MP.1)MicroPerimeter1(MP-1,ニデック社)は,視野測定機能および眼底撮影機能を組み合わせた機器である.検査中に目の動きを自動的に追尾することができるトラッキング機能を備えている.トラッキング機能は,最初に眼底写真を撮影し眼底画像を取り込み,参照エリア(視神経乳頭から出ている大きな血管の分岐点や血管の交叉部などを含んでいるような,細部がはっきりしている部位が参照エリアに最適である)を選定し,参照エリアをもとに検査中の固視ずれを検出し,視標呈示の際に標示位置を補正する機能である.このトラッキング機能により検査の信頼性が確保される.また,視野検査の経過観察のためにフォローアップ検査の機能があり,前回撮影した赤外眼底写真と今回撮影した赤外眼底写真の重ね合わせを行うことによってフォローアップ検査が可能となった.MP-1には大きく別けて5種類のテストパターンがあり,Automaticパターン,Manualパターン(図1),Peri-papillaryパターン(図2)などがある.Automaticパターンは刺激プログラムがHFA10-2に相当するもので,Manualパターンでは眼底上の任意の点を刺激することが可能である.視標輝度は相対輝度で0~20dBとなっており,HFAに比べて刺激幅が狭く,0dBが必ずしも絶対暗点を意味していないので注意が必要である.また,固視標は十字線,円,4対の十字線などから選択でき,大きさや色の変更が可能である(図3).赤外眼底写真を元にした網膜視感度測定結果とカラー眼底写真を重ね合わせることによってカラー眼底写真上に網膜感度を表示することが可能となっている(図4).IIMacularIntegrityAssessment(MAIA)MacularIntegrityAssessment(MAIA,トプコン社)*KazuyukiHirooka:香川大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕廣岡一行:〒761-0793香川県木田郡三木町池戸1750-1香川大学医学部眼科学教室0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(27)953②③④⑤②③④⑤①⑥図1MP.1(Manualパターン)検査結果表示①検査時間.②□:視標が見えず応答スイッチが押されなかった,あるいは見えたが待機時間終了後に応答スイッチを押したため装置が見えていないと判断したとき.■:被験者が視標が見えたことを示し,表示色が閾値を表す.③固視標の種類と大きさ.④視野検査中,定期的に0dBでGoldmannIIIの視標を視神経乳頭に投影.(2/6)6回投影が行われ2回応答スイッチを押している.⑤閾値ストラテジーには4-2-1,4-2,Fast,Raw,Manualの5種類がある.⑥安定度判定.75%以上の固視点が直径2°の円の中にある場合は安定と判定される.954あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(28)図2MP.1(Peri.papillaryパターン)検査結果表示固視標は十字線が使われており,94%の固視点が直径2°の円の中にあり,固視は良好である.とMP-1との相違点として,赤外眼底カメラでなく中ムでのトラッキングが可能である.また,MP-1では視間透光体の混濁の影響の受けにくいSLOを用いたモニ標輝度範囲が0~20dBと狭かったが,MAIAでは0~ター画面の採用や視標輝度範囲が幅広くなったこと,な36dBの幅広い視標呈示となり,より深い暗点の検出やどが挙げられる(表1).MAIAは眼底像をリアルタイ初期変化の検出が可能となった.このように後発機種でムで観察しながら,眼底の常に同じ部位に刺激視標を投あるMAIAでは,MP-1における問題点の多くに解決影し網膜感度を測定することができるため,リアルタイが試みられている.(29)あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014955AB図3MP.1の固視標A:十字線,B:円,C:4対の十字線.中心を細かく測定したい場合に円の固視標を用い,中心に視野欠損のある疾患では中心に固視標のない4対の十字線の固視標が適している.(C:ニデック社提供)表1MP.1とMAIAMP-1MAIA眼底画像共焦点ライン走査画角36°×36°解像度1,024×1,024視標サイズGoldmannIII最少瞳孔径2.5mm正常データあり視標呈示白色LED視標最大輝度400asb視標最少輝度4asb刺激幅20dB近赤外眼底カメラ45°円形1,280×1,024GoldmannI~IV4mmあり液晶ディスプレイ1,000asb0.25asb36dB図4カラー眼底写真と網膜視感度測定結果の貼り合わせ網膜神経線維層の菲薄化(矢印内)した部に一致して,網膜感度の低下を認める.956あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(30)①①②④③⑤⑦⑥図5MAIA検査結果表示①検査時間および信頼性の視標.信頼性視標は被験者が見えなかった視神経乳頭上に投影されたコントロールポイントの割合を示す.②視標拡大画像.③カラー感度マップ.④患者の年齢に対応して調整されたノーマティブデータと比較して,計算された平均値が「NORMAL」「SUSPECT」「ABNORMAL」のいずれに当たるかを表示.⑤正常眼と比較した被験者の閾値分布,⑥固視プロット図.⑦全固視(,)点が内部固視点(,)のある位置から直径2°の円内に75%以上あれば「STABLE」,直径2°の円内に固視点が75%未満であても,直径4°の円内には固視点の75%以上が入っていれば,「RELATIVELYUNSTABLE」と判断される.(31)あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014957AB図6フォローアップ検査の結果A:表示されている画像は最初の検査のもので,数値は1回目と2回目の検査の閾値の違いを表す.緑は閾値の増加(改善)を表し,白は閾内の変化が0dBであることを表し,赤は閾値が3dB以上減少(悪化)したことを表す.また,この図にはないが,橙色は閾値が2dB減少したことを表す.B:横軸は時間を,縦軸は視標の値を表しており,「NORMAL」「SUSPECT」「ABNORMAL」の範囲はそれぞれ緑,黄色,赤で色分けされている.視標呈示は5種類のパターンがあり,HFA10-2に相当するもの(図5)やManualなどがある.当然ではあるが,任意に刺激点を作製した場合には,正常データとの比較はできなくなる.閾値ストラテジーはEXPERTEXAM(4-2ストラテジー)とFASTEXAMの2種類あるが,フォローアップ検査はEXPERTEXAMのみ可能となっている(図6).III眼底視野計の使い方眼底視野計には,HFAなどのような進行解析プログラムがなく,少なくとも現時点では緑内障の経過をみていくには不十分といわざるをえない.しかし,眼底視野計のメリットは網膜病変部位や網膜神経線維層の菲薄部に対応した網膜感度がひと目でわかることである(図7).またHFAでは,黄斑疾患などの限局性病変との対比は容易でなく,とくに固視不良例では信頼性や再現性に乏しく,黄斑疾患への応用には問題が少なくない.これに対して眼底視野計では,眼底直視下で網膜感度が測定でき,またトラッキング機能で固視不良の症例でも眼底上の正確なポイントを刺激することができ,検査の再現性が向上することなどから,眼底視野計に関する報告は黄斑疾患で多くみられる.前回と同じ部位を測定するフォローアップ機能を用いて,糖尿病黄斑浮腫,加齢黄斑変性や特発性黄斑円孔などの疾患に対する治療の前後での黄斑部視機能の比較が報告されている1~3).緑内障に関しては,眼底直視下に網膜感度を測定できるという958あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(32)図7共焦点ライン走査眼底画像およびカラー感度マップとカラー眼底写真網膜神経層の菲薄部位(→)に一致した網膜感度の低下(カラー感度マップの黒色部分)を認める.図7共焦点ライン走査眼底画像およびカラー感度マップとカラー眼底写真網膜神経層の菲薄部位(→)に一致した網膜感度の低下(カラー感度マップの黒色部分)を認める.有用性を生かして,網膜の機能と構造に関する報告がされている4~6).眼底視野計は視機能を二次元的に評価できるため感度の分布が把握しやすく,緑内障による視野欠損が固視点にどの程度近づいているかを知るのにも便利であり,患者に説明する際にも,非常にわかりやすいと好評である.また,MAIAにはロービジョントレーニングソフトウエアが備わっている(図8).これは,黄斑に疾患があるために固視が不安定であったり偏ったりしている患者が,網膜上に機能性の高い新たな固視点を定めることができるようにするプログラムであり,より高い網膜感度が得られている領域で見る訓練が行われる.おわりに眼底視野計は眼底像に重ね合わせた網膜感度の表示が可能な視野計であり,視機能や治療効果の評価に有用な検査機器である.現在市販されている機器は測定点配置,操作がむずかしい,再現性の問題などが克服されており,黄斑疾患を中心に視機能の評価に用いられている.視機能を面として評価できるため,黄斑疾患のみならず緑内障を含む他の疾患にも幅広く利用され,眼底視野計の長所を最大限活用することが望まれる.■用語解説■絶対暗点:暗点のうち,視野計の最高輝度の光刺激を与えて知覚されないものを絶対暗点という.これに対して,ある程度を超えた輝度を知覚しうる暗点を比較暗点という.閾値ストラテジー:視標投影された眼底の各ポイントでの感度の閾値を探索する様式のことである.たとえば,4-2ストラテジーでは最初に4dBステップ間隔で測定をはじめ,被験者の応答がノーからイエス,あるいはイエスからノーに変化したならば,つぎは逆方向に2dBステップ間隔で同様に測定する.(33)あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014959図8ロービジョントレーニングの結果網膜画像上に点在する緑の点が,検査中に患者が到達した固視位置を示す.FIXATIONSUCCESSRATEのP1とP2の指数が増加すると,固視がより安定していることを示す.960あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(34)文献1)NakamuraY,MitamuraY,OgataKetal:Functionandmorphologicalchangesofmaculaaftersubthresholdmicropulsediodelaserphotocoagulationfordiabeticmacularoedema.Eye24:784-788,20102)OzdemirH,KaracorluM,SenturkFetal:Microperimetricchangesafterintravitrealbevacizumabinjectionforexudativeage-relatedmaculardegeneration.ActaOphthalmol90:71-75,20123)OokaE,MitamuraY,BabaTetal:Fovealmicrostructureonspectral-domainopticalcoherencetomographicimagesandvisualfunctionaftermacularholesurgery.AmJOphthalmol152:283-290,20114)SatoS,HirookaK,BabaTetal:Correlationbetweenretinalnervefiberlayerthicknessandretinalsensitivity.ActaOphthalmol86:609-613,20085)SatoS,HirookaK,BabaTetal:Correlationbetweentheganglioncell-innerplexiformlayerthicknessmeasuredwithcirrusHD-OCTandmacularvisualfieldsensitivitymeasuredwithmicroperimetry.InvestOphthalmolVisSci54:3046-3051,20136)KawaguchiC,NakataniY,OhkuboSetal:Structuralandfunctionalassessmentbyhemisphericasymmetrytestingofthemacularregioninpreperimetricglaucoma.JpnJOphthalmol58:197-204,2014(35)あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014961