特集●屈折と調節アップデート―眼科診療におけるMissingData―あたらしい眼科31(5):679.686,2014特集●屈折と調節アップデート―眼科診療におけるMissingData―あたらしい眼科31(5):679.686,20143Dディスプレイと調節AccommodationtoStereo3DDisplays柴田隆史*はじめに近年,3D映画や立体視ゲームが次々と登場し,立体映像(3D映像)が身近な映像メディアになってきた.そして,多くの人が3D映像による効果や影響,新体験などに関心をもつようになった.特に,3Dテレビや3Dモバイル(携帯ゲーム機やスマートフォン)の登場は,情報通信技術を日常的に活用する現代の社会生活に大きな影響を与えうるものと考えられる.これまでは,映画館や博覧会へ行くなどといった特定の状況あるいは選択的な状況においてのみ3D映像を見る機会があったのに対し,現在では,日常的に3D映像を利用するようになってきたことは大きな変化だといえる.また,3D携帯ゲーム機や3Dアニメーション映画などにより,成人だけでなく子どもも3D映像を見る機会が増えているのが近年の特徴である.本稿では,最近の3D映像について概説した後に,3Dディスプレイによる両眼立体視の特徴や,それにより生じる視覚疲労について述べる.そして最後に,快適な3D映像観察という観点から,3Dディスプレイ利用のこれからの方向性について述べてみたい.I3D映像の動向3D映像を表示する3Dディスプレイにはいくつかの方式が提案されているが,制作と呈示が比較的容易であり立体効果も大きいことから,両眼視差を利用して奥行きを表現する2眼式立体表示が広く用いられている.3D映画のように専用の3Dメガネをかけて観察するものなどがそれに該当する.また,個人や少人数向けの3D映像観察では,3Dメガネを必要としない裸眼3Dディスプレイがあり,複数の視差画像を表示するものもあるが,広く普及している裸眼3Dディスプレイは基本的に2眼式表示のものが多い.2005年頃から3D映画を上映できる映画館が世界的に増え,日本では2010年が3D元年ともいわれた.その背景には,高品質な3D映像を上映できる技術が実用化されたことと,米国ハリウッドを中心としたコンテンツ供給があげられる.つまり,ここ最近の3D映像の普及は,ハードウェアとソフトウェアの両側面からのアプローチのうえに成り立っている.3D映画を制作する環境や視聴する環境が整い,コンテンツが増えてきていることは,わかりやすい変化であるといえるが,最近の3D映像の特筆すべき特徴は,映像品質が良くなってきたことである.具体的には,映画監督やステレオグラファーによる創意工夫により,3D映画における表現技法が向上してきている.つまり,どのように3D表現を使えば3D映像の良さを活かせるのか,面白くなるのかなどといったことが検討されるようになってきた.一昔前の3D映画は,スクリーンからの飛び出しばかりを強調して観客を驚かせるものが多かったのに対し,近年では映画「アバター」に代表されるように,飛び出しと奥行きを効果的に活用した映画が作られるようになっていることを踏まえるとわかりやすいか*TakashiShibata:東京福祉大学教育学部〔別刷請求先〕柴田隆史:〒372-0831伊勢崎市山王町2020-1東京福祉大学教育学部0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(53)679画像呈示面輻湊距離輻湊距離調節距離再生される立体像調節距離図13D映像観察時の輻湊と調節左:同側性視差,右:交差性視差.もしれない.さらに,近年における映像品質の向上には,3D映像の観察により生じる視覚疲労を軽減させる配慮がなされていることも一翼を担っている.II3D映像観察時の輻湊と調節3Dディスプレイでは,左右眼に対応した注視点の呈示画面上でのずれ幅により,理論的に再生される奥行き方向の位置が決定される.図1左は,同側性視差により画像呈示面よりも奥に立体像が沈んで見える様子,図1右は,交差性視差により画像呈示面よりも手前に立体像が飛び出して見える様子を示している.通常,観察者から画像呈示面までの距離は変わらないため,立体像の位置が変わることで輻湊が変化しても,調節は画像呈示面位置の近傍に固定され,輻湊による距離情報との間に不整合が発生する.これが,3D映像観察時の輻湊と調節の不整合である.もしそれぞれの位置に輻湊と調節を働かせないと,像がぼやけたり二重に見えたりすることになる.3D映像の観察時はその不整合を解決するように視覚系を働かせようとし,その結果として視覚疲労が生じると考えられる.自然視の状態では,輻湊と調節の距離情報は基本的に一致しているため,自然な3D映像表現を実現するためには,輻湊と調節の距離情報を一致させることが望ましいといえるが,3Dディスプレイの技術的理由により,現状ではそれをハードウェアで解決するのは困難であり,立体像の再生位置に留意することでソフトウェア,つまりコンテンツの表現方法による解決を図っている.そのため,3Dコンテンツの表現や映像品質を考えるうえで,視覚特性を考慮することが重要になってくる.III快適視域に関する基準輻湊と調節の不整合の程度を小さくすることで,3D映像における視覚疲労を軽減させることを期待できるが,それは,奥行き幅を縮小して2D映像に近づけることにつながり,実空間に像を再生して奥行きを表現できるという3D映像の利点を損なうことにもなる.そこで,3D映像を安全で快適に見るためにはどのくらいの範囲に立体像が再生されるようにすれば良いのか,という議論がなされている.たとえば,国内の業界団体である3Dコンソーシアムは,3DC安全ガイドラインにおいて視差角1°以内が快適な範囲としている1).ここでの視差角とは,画像呈示面に対する輻湊角と立体像に対する輻湊角の差分を表している.たとえば視距離が50cmであった場合,視差角1°の立体像は画面から手前に約6cm,奥に約8cmの位置に再生されることになる.また,3D映像の制作現場では,視覚疲労を軽減させるために左右像のずれを画面幅に対して2%以下に抑えるといったような経験則が用いられることもある.680あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014(54)自然視では基本的に輻湊と調節が同じ対象に働くが,実際には両眼単一視かつ明視することが可能な範囲(zoneofclearsinglebinocularvision:ZCSBV)があり,輻湊と調節が完全に一致していなくても視対象を明瞭に見ることができる.ZCSBVは,調節の各段階における相対輻湊(実性相対輻湊)および相対開散(虚性相対輻湊)を測り,相対輻湊近点および相対開散近点(相対輻湊遠点)を結ぶことで図示される2,3).図2左は典型的なZCSBVの例であり,縦軸は調節距離を,横軸は輻湊距離をそれぞれジオプトリー単位(diopter,以下Dと略記)で表している.ジオプトリーは眼から注視点までの距離(メートル)の逆数で表され,輻湊距離に対してはメートル角と同じ値をとる.ZCSBVのグラフはDondersにより示されたが,Percivalはそのグラフを用いて,「快適視域は無限遠から3D(33.3cm)の範囲内において,全相対輻湊量を三等分したうちの中心部分である」と定義し,その範囲内にDonders線が含まれる場合に快適な両眼単一明視が維持できると提唱した2).そして,その基準が満たされない場合には,プリズム処方か球面調整により眼鏡処方すべきであるとした.SheardもPercivalと同じような結論に至ったが,「快適視域は斜位(用語解説参照)値を基準としてそこから相対輻湊近点と相対輻湊遠点(相対開散近点)のそれぞれの三分の一までの範囲である」とした.つまり,斜位線がZCSBVを二等分する場合にPercivalとSheardの快適視域は同じものとなる.図2右に,典型的な斜位値を用いて,PercivalとSheardの快適視域が異なる場合を示した.PercivalとSheardの基準は,輻湊と調節の関係性に注目したものであるため,輻湊と調節の不整合により生じる3Dディスプレイの視覚疲労を考えるうえで有用であるかもしれない.しかし,眼鏡処方と3Dディスプレイでの観察には重要な違いもある.一つは,眼鏡処方では輻湊と調節の不整合の程度は常に一定であるが,3Dディスプレイでの立体視では,コンテンツの内容によりさまざまに変化することである.そのため,眼鏡処方のほうが,3Dディスプレイの観察よりも容易に輻湊と調節の不整合に慣れるかもしれない.また,眼鏡処方では起きている時間の大半が光学補正された状態にあるが,3Dディスプレイでの立体視では明らかにそれよりも短い時間であることも大きな違いである.IV3Dディスプレイの視距離と視覚疲労の関係性3D映画や3Dテレビ,3Dモバイルが増えたことは,多くの人がさまざまな視環境で3D映像を見るようになったことを意味している.斜位や相対輻湊などは調節の刺激量により異なるため,3D映画のような長い視距離と3Dモバイルのような短い視距離とでは,調節と輻湊の不整合による視覚疲労の程度に差が出てくることが予想される.ここでは,3Dディスプレイの視距離と視覚疲労の関係性を検討した2つの実験を紹介する4).Donders線012341234輻湊距離(D)調節距離(D)0ZoneofclearsinglebinocularvisionPercivalの快適視域Sheardの快適視域相対開散相対輻湊012341234輻湊距離(D)調節距離(D)0斜位図2両眼単一視かつ明視できる範囲とPercivalとSheardの快適視域(55)あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014681た.被験者は正常な立体視機能を有する24例(19.33歳)であった.図4に全被験者の自覚症状の平均値を示した.縦軸は症状の程度を表し,数値が高いほどその程度が大きいことを表している.エラーバーは標準偏差を示す.症状項目「眼の疲れ」に注目してみると,いずれの視距離においても,輻湊と調節の手がかりが一致していない状態(3Dディスプレイでの観察)のほうが,一致している状態(自然視)よりも疲労の程度が大きいことがわかる.特に,視距離が長くなるほどその差が大きくなる(遠距離条件:Wilcoxonsigned-ranktest,p<0.025,onetailed).また,3Dディスプレイと自然視のいずれの観察条件においても,視距離が短くなるほど疲労の程度が大きくなる傾向にあった.2.視距離と立体像の再生位置の違いが3Dディスプレイの視覚疲労に与える影響(実験2)つぎに,輻湊と調節の不整合による視覚疲労が,視距離と立体像の再生位置(画像呈示面よりも手前あるいは奥)によってどのように異なるのかを検討した.図5に実験条件を示した.視距離は実験1と同様の3種類であり,それぞれの視距離に対して輻湊が変化する方向を変えることで,同側性視差(条件①,③,⑤)と交差性視差(条件②,④,⑥)を呈示した.つまり,条件①,③,近距離条件(40cm)中間距離条件(77cm)遠距離条件(10m)3.74調節距離(D):輻湊と調節の手がかりは一致:輻湊と調節の手がかりは不一致①③②⑤⑥④1.視距離の違いが3Dディスプレイの視覚疲労に与える影響(実験1)輻湊と調節の不整合による視覚疲労が,視距離の違いによってどのように異なるのかを検討した.視距離は,3D映画鑑賞のような長い距離(0.1D,または10m),VDT作業やテレビ視聴のような中間距離(1.3D,または77cm),モバイル利用のような短い距離(2.5D,または40cm)の3種類を設定した(図3).そして,それぞれの視距離に対して,輻湊と調節の手がかりが一致している状態(自然視)と一致していない状態(3Dディスプレイでの観察)を,実験用に開発されたディスプレイ5)を用いて再現した.当該ディスプレイは,複屈折(用語解説参照)を利用したレンズにより調節刺激量を高速に変化させることができる.輻湊あるいは調節の変化量は,遠距離条件では0.1.1.3D,中間距離条件では1.3.2.5D,そして短距離条件では2.5.3.7Dであり,被験者は各視覚状態を交互に注視した.実験条件を表した図3において,条件①,③,⑤は3Dディスプレイでの観察条件であり,条件②,④,⑥は自然視での観察条件であった.各条件における観察時間は20分間であり,被験者はそれぞれの観察後に疲労に関するアンケートに回答した.アンケートの質問項目は,眼の疲れ,眼のぼやけ,首と背中の疲れ,眼の痛み,頭痛の5項目であり5件法(用語解説参照)を用い43.732.521.310.10.11.32.50123輻湊距離(D)682あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014(56)図3輻湊と調節の刺激量(3Dディスプレイの観察と自然視の比較)症状54321眼の疲れ眼のぼやけ首と背中の疲れ眼の痛み頭痛図43Dディスプレイの観察と自然視とを比較した結果条件①(遠距離&輻湊調節不一致)条件②(遠距離&輻湊調節一致)条件③(中間距離&輻湊調節不一致)条件④(中間距離&輻湊調節一致)条件⑤(近距離&輻湊調節不一致)条件⑥(近距離&輻湊調節一致)123①③②⑤⑥④:輻湊と調節の手がかりは一致:輻湊と調節の手がかりは不一致432.52調節距離(D)近距離条件(40cm)中間距離条件(77cm)1.310.1遠距離条件(10m)-0.700.11.32.53.34輻湊距離(D)図5輻湊と調節の刺激量(同側性視差と交差性視差の比較)⑤は立体像が画像呈示面よりも奥に見える状態を,条件②,④,⑥は手前に飛び出して見える状態を再現している.刺激の呈示条件以外は実験1と同様の方法であり,被験者は正常な立体視機能を有する14例(20.34歳)であった.図6に全被験者の自覚症状の平均値を示した.視距離が長い条件では,同側性視差による輻湊と調節の不整合のほうが,交差性視差よりも疲労の程度が大きかった.具体的には,眼の疲れと眼の痛みにそれぞれ有意差がみられた(Wilcoxonsigned-ranktest,p<0.05,twotailed).一方で,視距離が短い条件では,交差性視差のほうが同側性視差よりも疲労を生じやすいことが明らかになった.特に,眼の痛みに有意差があった(p<0.01).また,中間距離では,頭痛において交差性視差による観察のほうが疲労の程度が有意に大きかった(p<0.05).3.3Dディスプレイにおける視覚疲労の実験結果と快適視域上記の2つの実験結果に基づき,3Dディスプレイでの観察における快適視域を推定する式を求め,グラフに(57)あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014683症状眼の疲れ眼のぼやけ首と背中の疲れ眼の痛み頭痛条件①(遠距離&同側性視差)条件②(遠距離&交差性視差)条件③(中間距離&同側性視差)条件④(中間距離&交差性視差)条件⑤(近距離&同側性視差)条件⑥(近距離&交差性視差)53124図63Dディスプレイにおける同側性視差と交差性視差を比較した結果530モバイルfarnearVDT映画テレビ映画nearテレビfarVDTモバイル104調節距離(D)調節距離(m)32310.310.100123450.10.3131030輻湊距離(D)輻湊距離(m)図7実験結果に基づき推定された快適視域(ジオプトリー単位)表した(図7).推定式に関する詳細は,文献4)を参照されたい.farと書かれた線は画面よりも奥,つまり同側性視差の快適視域の境界線であり,nearと書かれた線は手前,つまり交差性視差の境界を表している.また,3D映像を見る状況を想定して,モバイルやVDT作業,テレビ,映画の典型的な視距離を示した.なお,縦軸と横軸ともに,単位はジオプトリー(D)である.実験結果に基づき推定された快適視域には,以下のような特徴がある.(1)快適視域は短い視距離ほど広くなる.ただし,ジオプトリー単位で考えた場合である.684あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014図8実験結果に基づき推定された快適視域(メートル単位)(2)交差性視差(画面より手前)は,長い視距離で快適な範囲が広くなる.(3)同側性視差(画面より奥)は,短い視距離で快適な範囲が広くなる.オプトメトリーや眼科ではジオプトリーやプリズムジオプトリーによる表記が一般的であるが,これらの単位は3D映像のクリエータあるいは一般の人にはあまり馴染みがない.そこで,3Dディスプレイにおける快適視域をわかりやすく示すことを目的に,メートル単位で表記したグラフを図8に示す.空間的な実際の距離で考えると,映画のように視距離が長い状況においては快適視(58)輻湊距離(D)調節距離(D)-101234567801234Percivalの快適視域Sheardの快適視域斜位相対開散相対輻湊推定された3Dディスプレイの快適視域図9実験結果に基づき推定された快適視域とPercivalとSheardの快適視域の比較域が大きくなることや,モバイルのような近距離においては,同側性視差(画面よりも奥)のほうが快適な範囲が広いことなどが明確にわかる.また,例えばVDT作業の視距離(50cm)の場合,観察者からの距離が38cm(2.6D)から71cm(1.4D)までの範囲に立体像があれば,視覚疲労の程度はあまり大きくないことを示している.その範囲は,上述の3DC(3Dコンソーシアム)安全ガイドラインの基準値を超えるものであるが,3D映像を見る実際の状況では,輻湊と調節の不整合以外にも,数多くの視覚疲労を生じさせる要因があり,実用上はそうしたさまざまな要因を複合的に考慮する必要があるためであると考えられる.なお,快適視域を推定するための2つの実験は,厳密な実験統制により,輻湊と調節以外の要因を極力排除した状況で行われた.V3Dディスプレイによる視覚疲労とオプトメトリーの快適視域との関係性先述のとおり,3Dディスプレイの観察とPercivalやSheardの基準による眼鏡処方には違いがあるが,いずれも輻湊と調節の不整合に注目したものであることから,両者には何らかの関係性がみられる可能性がある.そこで,2つの実験に参加した者に対して斜位や相対輻湊を測定し,3Dディスプレイによる視覚疲労とPercivalやSheardの基準とを比較した(図9).なお,斜位などの測定はフォロプターを用いてオプトメトリーによる測定法に基づいて行われた.図9より,PercivalとSheardの快適視域は,3Dディスプレイを用いた実験から推定された快適視域よりも広いことがわかるが,それは推定式を求めるための快適さの基準を厳しくしたせいであることが考えられる.また,推定された快適視域は,Percivalの基準よりもSheardの基準に近いことが見て取れる.Percivalの快適視域は,Sheardや推定された3Dディスプレイの快適視域よりも近距離側へシフトしている.おわりに3Dディスプレイにおける輻湊と調節の不整合による視覚疲労は,視距離すなわち調節の刺激量の違いにより異なることが示された.特に,視距離が長い場合(調節の刺激量が小さい場合)には,同側性視差の観察で視覚疲労の程度が大きくなり,逆に視距離が短い場合(調節の刺激量が大きい場合)には,交差性視差の観察で視覚疲労の程度が大きくなることが示された.これらは,斜位や相対輻湊の傾向および快適視域に関する基準と適合するものであり,3Dディスプレイによる視覚疲労や快適性を考える際に,オプトメトリーの知見を活用できることを示唆している.ただし,実用場面における3Dディスプレイの観察では,輻湊と調節の不整合だけが視(59)あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014685覚疲労の程度を決定するわけではないことから,注視対象の視差変化や観察時間などさまざまな要因も含めて多角的に検討する必要があるだろう.さらに留意すべき点として,斜位や相対輻湊といった特性には個人差があり,人によってはガイドラインに沿った3D映像でも見にくさを感じる場合があるかもしれない.個人の両眼視機能を測定してその特性を知ることで,その人に合った3D映像の観察方法を助言することもできるであろう.3D映像による三次元表現は,エンターテイメントの■用語解説■斜位:融像が妨げられたときに起こる眼位のずれ.調節刺激量により異なる特性を示す.たとえば,視距離が短くなる,つまり調節刺激量が大きくなるにつれて,一般に外斜位の傾向を示すとされる.複屈折:方解石などの物質に入射した光が,その偏光の状態によって2つの方向に屈折する現象.本文における実験では,それを利用してレンズの屈折力を変化させている.5件法:質問項目に対し,5段階の評定尺度を用いてどの段階に当てはまるのかを回答させる方法.みならず医学や教育分野でも活用されていることからも,機能的価値が高い映像メディアであるといえる.今後,多くの人が日常的に3D映像を安全で快適に利用していくためには,オプトメトリストや眼科医,そして3D映像のメディア活用を専門とする者が,3D映像の利用環境と個人の視機能特性の両側面を考慮したユニバーサルデザインの視点を取り入れていくことが重要であると思われる.文献1)3Dコンソーシアム:3DC安全ガイドライン.2011http://www.3dc.gr.jp/jp/scmt_wg_rep/3dc_guideJ_20111031.pdf2)日本眼鏡学会眼鏡学ハンドブック編纂委員会:眼鏡学ハンドブック.眼鏡光学出版,20123)丸尾敏夫,粟屋忍:視能矯正学第2版,金原出版,19984)ShibataT,KimJ,HoffmanDMetal:Thezoneofcomfort:Predictingvisualdiscomfortwithstereodisplays.JVis11:1-29,20115)LoveGD,HoffmanDM,HandsPJetal:High-speedswitchablelensenablesthedevelopmentofavolumetricstereoscopicdisplay.OptExpress17:15716-15725,2009686あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014(60)