特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1681.1688,2013特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1681.1688,2013網膜血管腫状増殖の治療と管理TreatmentandManagementofRetinalAngiomatousProliferation白潟ゆかり*白神千恵子*はじめに網膜血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)は,滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)の一病型で,2001年Yannuzziらにより提唱された疾患概念1)である.RAPは,網膜血管由来の網膜内新生血管を起源とし,網膜下へ進展して脈絡膜新生血管と吻合する.RAPは日本人の滲出型AMDのうち,5%程度と少ないものの,他のAMDと比較して予後は不良で,レーザー凝固や光線力学的療法(PDT)に抵抗性を示す.抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法でも単独ではRAPの病変の完全閉塞は困難で,再発が多く,治療回数が多くなりがちである.またRAPでは,早期から網膜内病変が出現するため,初期から著しい視力低下をきたしやすく,より早期からの治療が望まれる.RAPは両眼発症も多く,フォローアップ中は僚眼の傍中心窩の毛細血管の拡張や網膜内出血,軟性ドルーゼンなどの初期病変にも注意する必要がある.このように,RAPの管理では,治療抵抗性で両眼発症が多いことが問題となる.RAPの管理の概要を,診断,治療,治療後のフォローアップという流れで説明する.I診断拡張した網膜血管と網膜内新生血管との吻合retinal-retinalanastomosis(RRA)やretinal-choroidalanastomosis(RCA)が最も重要なRAPの所見である.フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)やインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(IA)にてRAP病巣に血流を供給している所見があり,RRAが確認できればRAPと確定できる.IA造影晩期にはRAP病巣はhotspotとして認められる.StageIの症例はFAのみで診断できることもあるが,FAのみでは周囲の滲出性変化や出血による蛍光ブロックのために新生血管がわかりにくいことも多い.IAのほうが明瞭にRRAや網膜内新生血管(IRN)を検出できるので,可能であればIAも施行したほうが治療前に正確な評価ができる.RAPは垂直方向に進展するため,光干渉断層計(OCT)の所見も診断,ステージ分類に非常に有用となる.また,フォロー中においても,OCTではわずかな滲出性変化をとらえることができるため,早期診断や再発の早期発見につながる.1.ステージ分類Yannuzziのステージ分類に沿って各ステージにおける所見を解説する.StageI網膜内新生血管(intraretinalneovascularization:IRN):拡張蛇行した網膜微小血管がみられ,網膜内に網膜血管由来の微小な異常血管が生じる.ごく初期の病変をみつけることはむずかしいが,注意深く観察すると,拡張した網膜毛細血管や網膜内の小出*YukariShirakata&ChiekoShiragami:香川大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕白潟ゆかり:〒761-0793香川県木田郡三木町大字池戸1750-1香川大学医学部眼科学講座0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(33)1681血,IRNの赤いRAP病巣が検眼鏡で検出できることがある.IRNはOCTでは網膜内の中等度.高反射の病変として検出され,その周囲に.胞様黄斑浮腫(CME)を伴うと視力が低下する.造影検査では拡張した網膜血管,IRNを検出できる.IRNにつながるRRAが造影で確認できれば確定診断となる.傍中心窩毛細血管拡張症でも同様に傍中心窩に毛細血管の拡張や黄斑浮腫を認めるため,鑑別に苦慮することがあるが,色素上皮の異常所見やドルーゼンの沈着があればRAPの初期病変の可能性が高く,参考になる.StageII網膜下新生血管(subretinalneovascularization:SRN):IRNが網膜内から感覚網膜下まで進展し,網膜全層に新生血管が及ぶ.漿液性網膜.離(SRD)や漿液性網膜色素上皮.離(PED)を伴うこともある.新生血管の垂直方向への進展は,検眼鏡や造影所見,OCTで判定するが,OCTで見ると最もわかりやすい.新生血管が色素上皮と接すると漿液性PEDを生じることがある.StageIII脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV):SRNの色素上皮下への進展とともにCNVを伴い,吻合してRCAを形成する.OCTでPEDの内部にも中等度.高反射を認め,網膜色素上皮(RPE)の上下に新生血管が存在していることがわかる.IRNの進展方向(IRNの下)にRPEの断裂があり,断裂部分の上下に連続して新生血管を示す反射を検出できることもある.PEDの内部に新生血管を確認できればstageIIIということになるが,PEDを伴うstageIIの症例では,OCTや造影検査でもstageIIIと見分けがつかないことがある.RCAもstageIIIのRAPの重要な所見であるが,RCAの存在が造影所見で明瞭に確認できる症例は少ない.また,AMDの経過でdisciformscarとなったものには網膜血管とCNVの吻合がみられることもあるので注意が必要である.2.RAPの前駆病変軟性ドルーゼンの併発が多い.最近では,他のAMD1682あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013と比較し,reticularpseudodrusenを併発することが多いという報告があり2),両眼にドルーゼンが多発している所見は診断の参考所見となる.II治療RAPの治療の概要以前は,RRA切断術,PDT単独療法,トリアムシノロン硝子体内注射併用PDTが行われてきたが,再発が多く,いずれも長期的には高いエビデンスは得られなかった.VEGFを標的とする薬剤が使用可能となり,治療の中心となってからは,RAPの治療成績は大きく改善した.AMDの3病型のうち,RAPではVEGFの関与が特に大きいと考えられていること3),網膜内病変には硝子体内に注入した抗VEGF薬が到達しやすいことも有利な点である.現在日本でおもに使用されている抗VEGF抗体はpegaptanibsodium(MacugenR),ranibizumab(Lucen-tisR),aflibercept(EYLEAR)である.これらが使用可能となる前はbevacizumab(AvastinR)をオフラベルで使用していた.これまでの報告では,bevacizumab,ranibizumabが用いられているものが多く,両薬剤は分子量が異なるが,両方ともすべてのアイソフォームのVEGF-Aを阻害する薬剤であり,良好な治療成績が示されている.しかし,抗VEGF療法単独ではRRAが完全に閉塞しにくく,硝子体内注射の回数が多くなりがちということが問題となる.注射に伴う合併症のリスク増加を考慮することはもちろんであるが,RAPは高齢者に多く,治療回数の増加による患者負担も考慮しなければならない.Afliberceptは2012年11月に国内で使用可能となった最も新しい抗VEGF薬で,VEGF-Aのみでなく,VEGF-B,胎盤増殖因子(PlGF)も阻害する.この点において他の抗VEGF薬よりも有利な治療が可能かどうかはまだ不明だが,今後の治療成績の評価に期待したい.PDT-抗VEGF薬併用療法では,抗VEGF療法単独よりRRAの閉塞率が高く,治療回数が少なくてすむことが期待できる.Saitoらによる,日本人のRAPの症例に対するPDT-抗VEGF薬併用療法の2年成績の報(34)告では,日本人のRAPの症例13眼に対し,抗VEGF薬硝子体内注射後PDTを施行し,平均PDT回数2.8回,平均抗VEGF薬投与回数は3.4回と良好な成績であった4).PDTの問題点としては,PDTによるphotochemicalstressや照射領域の脈絡膜循環障害が,長期的な視力低下や,さらなるVEGFの発現に伴うCNV再発につながることが指摘されている.PDTは必要最小限におさえなければならず,視力良好例には抗VEGF薬単独療法を選択するのがよいと考える.また,PDTの侵襲を軽減するために,通常のPDTではなく,照射エネルギーを半分にした低照射エネルギーPDT(reduced-fluencePDT:RFPDT)を用いる場合もある.他には,トリアムシノロンを併用したPDTを行う場合がある.抗VEGF薬が使用可能になる以前にはトリアムシノロン硝子体内注射を併用したPDTが行われ,良好な成績を得ていたが,抗血管新生作用は抗VEGF薬のほうが優れることや,長期的には白内障の併発によって視力が低下すること,さらに高眼圧の問題から,あまり行われなくなった.抗VEGF薬併用PDTのほうがトリアムシノロン併用PDTよりも再発が少ないという報告も示されている5).しかしながら,ステロイドは抗VEGF薬とは作用機序が異なるため,場合によってはトリアムシノロンの硝子体内注射やTenon.下注射を併用してPDTを行う場合もある.日本眼科学会が推奨するAMD治療指針のガイドライabcdefg図1症例1:89歳,男性初診時の矯正視力は(0.3),インドシアニングリーン眼底造影写真(IA)(a)にて新生血管(矢頭)に連なる流出入血管(矢印)を認め,光干渉断層計(OCT)(b)で新生血管が網膜下に進展し,網膜色素上皮(RPE)と接しているのがわかる.StageIIのRAPと診断し,ラニビズマブ硝子体内注射を併用した低照射エネルギー光線力学的療法(RFPDT)を行った.治療後3カ月のIA(c)で流出入血管の閉塞と新生血管の退縮が確認でき,OCT(d)にて滲出性変化は消失しており,矯正視力は(0.3)を維持していた.治療後6カ月(e)でも再発はなかったが,治療後9カ月(f)で網膜の.胞様変化を認めた.矯正視力は(0.3)で,造影検査にて明らかな新生血管の再発はなく,ラニビズマブ硝子体内注射を行った.以後2カ月に1回のラニビズマブ硝子体内注射を継続している.網膜の.胞様変化は変わらないが,増悪はなく,視力治療後15カ月(g)が経過しているが矯正視力(0.3)のまま維持できている.(35)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131683ン6)では,RAPに対しては初回治療からPDT-抗VEGF薬併用療法が推奨されている.また,視力0.6以上の視力良好例においては抗VEGF療法の単独療法の選択もありうると付記されている.筆者らの施設では,網膜内病変のみにとどまるstageIの症例や視力良好例には抗VEGF薬単独療法を,stageII以上の症例にはRFPDT-抗VEGF薬併用療法を行うことを基本としている.症例1(図1)は,RFPDT-抗VEGF薬併用にて治療したstageIIの症例である.1回の併用療法でRRAの完全閉塞を確認し,以後9カ月まで滲出性変化の再発はなく,少ない治療回数でコントロールできた症例である.また,afliberceptが使用可能になってからは,stageII以上の症例にもafliberceptの硝子体内注射単独を試みている.前述したが,VEGF-AだけでなくVEGF-B,PlGFも阻害するafliberceptが,RRAの閉塞率や治療回数で他の抗VEGF薬よりも有利な治療が可能か,まだ結果は出ていない.Afliberceptの硝子体内注射単独にて治療した例を症例2(図2),症例3(図3)に示す.両症例ともstageIIの症例であるが,1カ月ごとに3回の連続投与終了時に症例2では流入血管が完全閉塞せず残存し,症例3では完全なRRAの閉塞を認めた.治療後早期の重篤な合併症として,RPE裂孔があり,著明な視力低下に至ることがある.治療による新生血管の収縮に伴い,RPEに裂孔が生じると考えられる.丈の高いPED,面積の大きなPED,RPEに皺襞のある症abcdefg図2症例2:84歳,男性初診時,矯正視力は(0.2)で,カラー眼底写真(a)で網膜出血,ドルーゼンの沈着を認める.IA(b)では,新生血管(矢頭)に連なる流出入血管(矢印)を認める.OCT(c)では,新生血管が網膜下まで進展し,SRDと色素上皮の隆起を認める.StageIIのRAPと診断し,アフリベルセプト硝子体内注射の単独療法を行った.アフリベルセプト硝子体内注射は,1カ月ごとに3回の導入期治療と,その後2カ月ごとの維持投与を施行している.初回3回治療後,カラー眼底写真(d)で網膜出血はわずかに残存している.本症例ではIA(e)で新生血管は不明瞭となり閉塞してると考えられるが,流入血管(矢印)は完全閉塞せず残存している.OCT(f)にて,滲出性変化は完全に消失している.初回治療後6カ月が経過しているが,滲出性変化は再発していない(g).1684あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(36)defghijabcdefghijabc図3症例3:82歳,女性初診時の矯正視力は(0.2)で,カラー眼底写真(a)で網膜出血を認め,IA(b)にて新生血管(矢頭)とそれに連なる流入血管(矢印)を認める.OCT(c)では新生血管が網膜下まで達しているのがわかり,SRDを認める.StageIIのRAPと診断し,アフリベルセプト硝子体内単独療法を計画した.1回目のアフリベルセプト硝子体内投与より1カ月で,滲出が減少してきているのがわかる(d).同日,2回目の注射を行った.初回投与から2カ月で,滲出性変化は完全に消失し(e),同日,3回目の投与を行った.初回投与から3カ月(f),4カ月(g)では,滲出性変化の再発はなく,新生血管が徐々に収縮してきているのがわかる.4カ月目では,矯正視力(0.5)と改善し,維持のため4回目の注射を施行した.初回投与より6カ月の矯正視力は(0.5),カラー眼底写真(h)で出血は完全に吸収されており,IA(i)で新生血管,流入血管ともに閉塞していることがわかる.OCT(j)でも,滲出性変化の再発を認めない.維持のため5回目の注射を施行した.例ではリスクが高いといわれており7,8),特に注意が必要である.RAPでは,stageの進行とともに新生血管が網膜下に達し,RPEに接してPEDを生じるため,治療後にRPE裂孔を生じやすいと考えられる.症例4(図4,5)はstageIIIのRAPの症例で,治療前に丈の高く,面積の大きいPEDを伴っており,RFPDT-抗VEGF薬併用療法後早期にRPE裂孔をきたした.IIIフォローアップのポイントRAPは,再発・再燃が多く,網膜浮腫などの網膜内病変が初期に出現するため,早期から著しく視力が低下する.早期発見に努めること,再発のサインを見逃さないこと,僚眼の初期病変を見逃さない工夫が必要である.維持期には,おもに視力とOCTの所見を基本としてフォローを続ける.最も鋭敏に滲出性変化の再発を検出できるのはOCTであるが,中心窩を通るクロススキャンだけでなく,病変全体のボリュームスキャンを撮らなければ,わずかな所見を見逃してしまいやすい.また,必ず検眼鏡で眼底をよく観察することも重要である.滲出性変化の再発がなくても,わずかな網膜出血が再発のサインとなることがある.併用療法による初回治療後,再発が疑われたときは,造影検査にて新生血管の有無と進展の度合いを確認する.当院では,明らかな新生血管がない場合や,網膜内病変のみの場合は抗VEGF薬単独の追加,新生血管が網膜下まで進展している場合にはRFPDT-抗VEGF薬(37)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131685acdbacdb図4症例4:77歳,男性初診時の矯正視力は(0.1),カラー眼底写真(a)にて硬性白斑,ドルーゼンを認める.IA(b)にて新生血管(矢頭)に連なる流出入血管(矢印)を認める.水平断のOCT(c)で網膜内新生血管が網膜下へ進展し,RPEと接しているのがわかり(矢印),網膜色素上皮.離(PED)を認める.新生血管を通る垂直断のOCT(d)にて,RPEが断裂し,新生血管がRPE下へ進展しているように見える(矢頭).StageIIIのRAPと診断し,ルセンティス硝子体内注射と低照射エネルギー量PDTの併用を行った.→図5症例4(2)症例4の治療後1カ月のカラー眼底写真(a),眼底自発蛍光(FAF)(b),OCT(c)にて,滲出性変化は消失したが,RPEtear(矢印)をきたしていることがわかる.矯正視力は(0.09)となった.治療後のRPEtearは,治療前に大きなPEDを認めていた症例でリスクが高いといわれている.治療後3カ月では,カラー眼底写真(d),FAF(e)でRPE欠損部(矢印)が自然経過にて拡大している.矯正視力は(0.1)であった.OCT(f)にてrollingしたRPEが重責した所見(矢印)を認める.併用療法を再度行う.抗VEGF薬単独療法の場合,通常のAMDの場合と同様,1カ月ごとに3回の連続投与後,維持期に定期的に抗VEGF薬投与を継続する方法,滲出性変化の再発が認められた時点で再投与する方法(prorenata:PRN),維持のための投与を継続しながら滲出性変化の再発がなければ投与間隔を延ばすというTreat&abcExtendという方法があるが,欧米ではTreat&Extenddef1686あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(38)efgabchdefgabchd図6症例5:80歳,女性初診時,右眼の矯正視力は(0.4),カラー眼底写真(a)では,ドルーゼンの沈着を認める.検眼鏡的には網膜内の異常血管は検出できなかったが,IA(b)にて網膜内新生血管(IRN)を認めた.IRNを通る垂直断のOCT(c)では,IRNが網膜下まで達しているように見える(矢印).滲出性変化がないため当初は経過観察とした.経過中白内障手術を行い,矯正視力は(1.0)となったが,初診時より12カ月で網膜浮腫が出現し(d),ラニビズマブ硝子体内注射の単独療法を行った.初診時の左眼の矯正視力は(1.0),カラー眼底写真(e)にて網膜内出血,ドルーゼンの沈着を認める.IA(f)で新生血管と連なる流出入血管が確認できる.新生血管を通る垂直断のOCT(g)では,網膜浮腫を認め,新生血管が網膜下まで進展しているのがわかる.StageIIのRAPと診断したが,視力が良好なため,ラニビズマブ硝子体内注射の単独療法を3回施行後,滲出性変化は消失した(h).が主流になりつつある.前述のように,RAPは両眼発症も多いので,患眼のフォローの際,時々僚眼も散瞳してチェックしておく.特に,造影検査をするときには,僚眼も必ず撮影しておく.検眼鏡やOCTで異常を検出できなかった場合でも,網膜内の異常血管がみつかることもある.特に,軟性ドルーゼンやreticularpseudodrusenなどの前駆病変があ(39)abc図7症例5(2)症例5の初診時の眼底自発蛍光(FAF)写真(a)では,右眼で色素上皮が萎縮した部分が低蛍光となっている.左眼では,出血の部位が蛍光のブロックとなっているが,RPEが萎縮して低蛍光となっている部分もある.初診時より24カ月間で,右眼は計6回,左眼は計8回のラニビズマブ硝子体内注射を施行しており,24カ月後の右眼矯正視力は(0.07),左眼矯正視力は(0.2)であった.FAF(b)では,左右眼とも低蛍光の面積が広がっており,経過に伴って地図状萎縮が進行していることがわかる.同日のOCT(c)では,滲出性変化は完全に消失している.る症例では要注意である.実際,当院で治療したstageIの症例のほとんどがstageII以上のRAP症例のフォロー中,僚眼に認めたものであった.僚眼をきちんとフォローすることで早期発見,早期治療ができ,良好な視力を維持できる症例がある.初診時に僚眼にもIRNを認めた例として,症例5(図6,図7)を示す.この症例は,初診時に検眼鏡にて左眼に網膜浮腫と網膜出血,両眼にドルーゼンの沈着を認めた.検眼鏡では左眼のみRAPを発症していると思われたが,造影検査をすると滲出性変化のない右眼にもIRNを認めた.左眼のフォロー中,右眼の観察も続けたが,初診時より12カ月で網膜浮腫が出現し治療を開始した.AMDでは,治療後,地図状萎縮(geographicatrophy:GA)がみられることが知られており,滲出消失後もGAは経時的に拡大する.RAPでは,GAの発生率あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131687が高いという報告9)がある.滲出性変化の再発がなく,追加治療が不要であってもGAは拡大し,視機能の低下につながると考えられるが,現在,GAの進行に対する治療は確立されていない.おわりに現在日本では,RAPの治療のメインはPDT-抗VEGF薬併用療法である.Afliberceptが使用可能となり,抗VEGF薬の選択肢が増えた.難治性で再発の多いRAPに対し,再治療回数などの点でより有利な治療法が確立されていくことが期待される.文献1)YannuzziLA,NegraoS,IidaTetal:Retinalangiomatousproliferationinage-relatedmaculardegeneration.Retina21:416-434,20012)Ueda-ArakawaN,OotoS,NakataIetal:Prevalenceandgenomicassociationofreticularpseudodruseninage-relatedmaculardegeneration.AmJOphthalmol155:260-269.e2,20133)OkamotoN,TobeT,HackettSFetal:Transgenicmicewithincreasedexpressionofvascularendothelialgrowthfactorintheretina:anewmodelofintraretinalandsub-retinalneovascularization.AmJPathol151:281-291,19974)SaitoM,IidaT,KanoM:Two-yearresultsofcombinedintravitrealanti-VEGFagentsandphotodynamictherapyforretinalangiomatousproliferation.JpnJOphthalmol57:211-220,20135)SaitoM,ShiragamiC,ShiragaFetal:Comparisonofintravitrealtriamcinoloneacetonidewithphotodynamictherapyandintravitrealbevacizumabwithphotodynamictherapyforretinalangiomatousproliferation.AmJOphthalmol149:472-481.e1,20106)髙橋寛二,小椋祐一郎,石橋達朗ほか:加齢黄斑変性の治療方針.日眼会誌116:1150-1155,20127)ChiangA,ChangLK,YuF,SarrafD:PredictorsofantiVEGF-associatedretinalpigmentepithelialtearusingFAandOCTanalysis.Retina28:1265-1269,20088)NagielA,FreundKB,SpaideRFetal:Mechanismofretinalpigmentepitheliumtearformationfollowingintravitrealanti-vascularendothelialgrowthfactortherapyrevealedbyspectral-domainopticalcoherencetomography.AmJOphthalmol156:981-988.e1,20139)McBainVA,KumariR,TownendJetal:Geographicatrophyinretinalangiomatousproliferation.Retina31:1043-1052,20111688あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(40)