監修=大橋裕一連載⑱MyboomMyboom第18回「兒玉達夫」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)連載⑱MyboomMyboom第18回「兒玉達夫」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)自己紹介兒玉達夫(こだま・たつお)島根大学医学部眼科学講座私は昭和60年に島根医科大学を卒業し,眼科入局後は病理学教室で学位を取得しました.「胃癌培養細胞における癌胎児性抗原の発現」という,眼科と直接関係のない研究でしたが,後の専門性を方向付けました.大平明弘教授赴任後,米国ミシガン大学へ留学させていただき,KelloggEyeCenterでD.G.Puro先生の下,網膜毛細血管の細胞生理を研究しました.帰国後は病理学的研究手法を生かし,もっぱら眼部腫瘍の臨床に携わっています.友人関係は眼腫瘍とミシガン仲間が多く,今回,ミシガン繋がりで吉田茂男先生からご紹介いただきました.眼科のmyboom「免疫組織化学」腫瘍性病変の確定診断に病理組織検査は不可欠です.系統的に学ばれた眼病理専門の先生が多いなか,私は免疫染色の腕をたよりに眼腫瘍と眼病理の戦場を駆け抜けてきました.駆け出しの頃は,学問に厳しい御大の先生方から毎回発表内容へのダメ出しをいただきましたが,現在の腫瘍仲間に励まされながら歩んできました.当時の研究会は,口演時間より討論時間が長くなるほどバトルが繰り広げられておりましたが,近年の腫瘍関連学会・研究会は,非常にアットホームな雰囲気です.2015年は島根県で第33回日本眼腫瘍学会を主催しますので,是非,水の都松江市へお越しください.免疫染色は従来,形態観察だけでは診断確定が困難なとき,腫瘍細胞起源を検索する補助診断目的で発展してきました.免疫組織化学は現在,診断だけでなく,治療(109)0910-1810/13/\100/頁/JCOPYに欠かせない重要なツールとなっています.眼科領域のリンパ腫は,ほとんどがB細胞由来で,B細胞マーカーのCD20抗原が表現されるため,抗CD20抗体(rituximab)が治療応用されています.抗体を用いた分子標的治療は副作用も少なく,リンパ腫の生命予後を大幅に改善しました.また,眼科で臨床応用されるようになった抗VEGF(血管内皮増殖因子)抗体の治療成果は,皆様ご存じのとおりです.今後は上皮性腫瘍における抗体治療の可能性を探りたいと思っています.Muir-Torre症候群というまれな疾患があります.常染色体優性遺伝で,脂腺系腫瘍と内臓悪性腫瘍を合併します.DNAmismatch修復遺伝子であるMSH2やMLH1geneの変異で発症するため,これらの蛋白質に対する免疫染色が陰性化します.それゆえ修復遺伝子に対する免疫染色で,Muir-Torre症候群のスクリーニングが可能となります.眼瞼脂腺癌や脂腺腫を免疫染色することで全身に潜む悪性腫瘍を発見できれば,眼科医冥利に尽きるというものです.免疫組織化学には,いまだ臨床応用の可能性が秘められています.趣味のmyboom「サッカー」この原稿を引き受けた動機であり,本コーナーの意図・執筆要領を一切無視しますがご容赦ください.サッカー魂に火をつけたのは,1978年のアルゼンチンW杯です.アルゼンチン対オランダの決勝戦で,紙吹雪の舞うなか,マリオ・ケンぺスがゴールを決めた映像に釘付けとなりました.1992年に日本対アルゼンチン戦を初めて国立競技場で観戦.1993年のJリーグ発足とドーハの悲劇を境に,サッカー行脚が始まりました.当時島根には券売所がなく,空前のサッカーブームの中,チケット入手は困難を極めました.しかしながら,サッカーに関する抽選運は相当強かったといえます.1993年のJリーグ開幕試合は抽選倍率80倍でしたが,60通の往復葉書でマリノスのゴール裏席を確保しましあたらしい眼科Vol.30,No.7,2013991〔写真〕蹴球関連履歴1:1993年5月15日Jリーグ開幕戦チケット(国立競技場:マリノスvsヴェルディ).2:1995年ジーコ氏と(出雲).3:1998年川淵チェアマンと(リヨン).4:2002年日韓W杯,日本vsチュニジア(大阪).5:1998年フランスW杯,日本vsジャマイカ(リヨン).6:2002年日韓W杯,日本vsベルギー(埼玉).7:2002年日韓W杯,日本vsロシア(横浜).8:2008年山本浩先生と(東京).た.1998年はアムステルダムでの国際眼科学会に出席.現地旅行業者からチケットを入手してジュネーブへ移動.TGVでリヨンを往復し,フランスW杯日本対ジャマイカ戦を日帰りで観戦しました.2002年の日韓W杯では,日本対ベルギー,ロシア,チュニジアの1次リーグ3試合,家族4人分すべてカテゴリー1で当選という幸運に恵まれました.W杯の2年前,サッカー雑誌の片隅に英国のインターネット申し込みサイトを発見し,現在では考えられない細さの回線で慎重に申し込んだのです.その後,国内でも試合ごとの抽選申し込み受付が始まりましたが,日本戦はどれも230倍以上でした.人生の運をすべて使い切ったかもしれません.また,教授と医局の先生方の寛容さがなければ,これらの観戦は実現できませんでした.お蔭様で,家族には日本のW杯初勝利(対ロシア戦)を目撃させることができました.サッカー観戦と並行し,サッカーグッズも収集しています.膨大な資料を保管・陳列するため,7年前に家を建てました.2008年にはサッカー解説で有名なNHKの山本浩先生(現法政大学教授)と知合いになり,2010年のW杯直前BS特番に2分間ほど出演させていただきました.これからの人生,どのようなサッカーイベントが待ち構えているか楽しみです.次回のプレゼンターは東北大学の布施昇男先生(ゲノム解析部門教授)です.やはりミシガン繋がりですが,私と異なりアカデミックな話題を綴られると思います.よろしくお願いいたします.注)「Myboom」は和製英語であり,正しくは「Myobsession」と表現します.ただ,国内で広く使われているため,本誌ではこの言葉を採用しています.992あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(110)