特集●ドライアイの本質に迫る―炎症仮説から涙液安定性仮説へ―あたらしい眼科29(3):339.344,2012特集●ドライアイの本質に迫る―炎症仮説から涙液安定性仮説へ―あたらしい眼科29(3):339.344,2012ドライシンドロームの現状RecentAdvancesinDrySyndrome梁洪淵*斎藤一郎*はじめにドライアイの原因の一つに全身疾患であるシェーグレン症候群(Sjogrensyndrome:SS)が知られている.本症は中年女性に好発し涙腺と唾液腺を標的とする臓器特異的自己免疫疾患であり,全身性の臓器病変を伴う疾患の一つであることは周知である.SSの初発症状の多くは目と口が乾燥することを主徴とし,この他にも全身の外分泌腺の機能低下を示す.このような乾燥症状の病態の成立としてSSでは涙腺や唾液腺などを標的臓器とした自己免疫による発症機序が一般的な理解だが,本学附属病院のドライマウス外来受診者(4,400名)の統計学的な解析では,その大半がSSと診断されず,約9割の受診者がSS以外の要因により全身的な乾燥に伴うさまざまな症状を有しており,その乾燥症状も軽度な症例から重度なものまで多岐に及ぶ傾向がある.このことより,受診に至らないが潜在的な乾燥症状を自覚し,それに起因して生活の質(QOL)の低下をきたしている症例は相当数が推察される.しかしながら,現在の医学・歯学は臓器別や診療科に細分化されており,全身の乾燥症状に対する医学情報の収集はきわめて困難である.このような医療の実践には身体全体を視野に入れ,「こころの渇き」や思考に至るまでの横断的な対応が不可欠であることから,最新の乾燥症状に関する各科の総合的な理解が求められている.さらに近年の科学技術の発達に伴い,乾燥のメカニズムの解明が飛躍的に進み,これらの研究成果が医療に取り入れられようとしている.このことから,本稿では全身の乾燥症候群(ドライシンドローム)について現在までに得られた一般的な知見を紹介するが,ドライアイについては本誌が眼科専門誌であることからその詳細は割愛させていただく.I水分の構成地球は多くが水で覆われており,海が占める割合は70%といわれている.ヒトも同程度である60%が液体成分で構成され,一日に約2.5lの水分が出入りしている.ヒトは,一日に不感蒸泄として皮膚や呼吸から約1.2lの水分を無意識に蒸気として喪失している.これは,代謝で発生した熱を,気化熱に変化させ体外へ放出するためである.さらに,老廃物質などを含有した水分を,尿・便として一日に1.3l程度体外へ排泄している.一方,水分の摂取量は一日3食の食事で約1l程度,蛋白質や炭水化物,脂肪などの代謝により得られる体内の水分として0.3l,飲水として1.2l程度を身体に摂取しているといわれ,このような生理的作用により安静時におけるヒトの水分代謝は決定されている.尿,汗などの喪失量に見合う水分を適当量摂取すれば,血漿浸透圧は一定に保持されるが,水分摂取量が不足すると血漿浸透圧が上昇することにより口渇を生じ,尿は濃縮する.さらに,熱中症,脳梗塞,ロングフライト症候群など生命危機状態に陥る疾患を招く可能性もあり,健康に著しい障害を与える要因の一つとなる.*KoufuchiRyo&IchiroSaito:鶴見大学歯学部病理学講座〔別刷請求先〕梁洪淵:〒230-8501横浜市鶴見区鶴見2-1-3鶴見大学歯学部病理学講座0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(51)339さらに,前述のような直接的な生命に対する影響力は少ないが,加齢,ホルモンバランスの変化,口呼吸,パソコン・OA機器の汎用,地球の温暖化,ストレス,食生活の変化などさまざまな要因を背景に,身体から水分が不足した結果,ドライシンドロームを訴えることがある.このような症状は増加の一途を示し,潜在患者数を含めると,現在かなりの割合がドライシンドロームに罹患しているこが想定される.IIドライシンドロームとはドライシンドロームの代表的なものとして,目が乾く「乾性角結膜炎:ドライアイ」,口が渇く「口腔乾燥症:ドライマウス」,肌が乾く「乾皮症:ドライスキン」,腟が乾燥する「萎縮性腟炎:ドライバジャイナ」などが知られているが,これ以外にも鼻腔,耳の他に心因的な乾きが全身のあらゆるところに乾燥症状を呈することも報告されていることから,これらを含めて「ドライシンドローム」という一つの症候群として捉えたいと筆者らは考えている.目が乾く,口が渇いて食べ物が飲み込みにくい,皮膚がカサカサしてかゆい,性交痛,腟炎などの「乾燥」による症状は,全身の外分泌腺の機能低下により発症し,本来あるべき潤いのバランスが崩れ,多彩な症状を呈することによりQOLが大きく低下し,日常生活に支障をきたすことになる.「乾燥」から保護してくれる唾液,涙,汗,腟液などを産生し分泌する器官は,それぞれ唾液腺,涙腺,汗腺,子宮やバルトリン(Bartholin)腺などの分泌腺が関与しているが,それ以外にも各臓器で,何らかの要因により水分や油分が蒸発・不足することで乾燥を呈することが知られている.以下に各部位の乾燥メカニズムや対処について解説する.1.口腔ドライマウスは,唾液分泌量の減少ならびに唾液の質が変化する疾病と定義されている.本症を介してう蝕や歯周病のリスクが上がるだけでなく感染症,誤嚥性肺炎,摂食嚥下機能の低下などさまざまな全身的な疾患の原因となり,QOLに及ぼす影響は大きいことが明らか340あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012……………………………………………………………………………………図1ドライマウスに起因する病態ドライマウスにより多岐にわたる症状が生じる.である(図1).本症の原因は多様であり,大半は降圧薬や心療内科的な薬の副作用として発症し,さらに食習慣による筋力の低下なども加わり原因は複合的である.加えて,多くの症例がさまざまなストレスに起因しており,精神的ストレスによるドライマウスも少なくない.このような唾液分泌障害が改善されると,唾液による口腔内の自浄作用や免疫作用などの効果が期待でき,高齢者の死因の上位を占める誤嚥性肺炎を防ぐことも可能となる.2.皮膚皮膚は外界と接し,みずみずしく潤いのある皮膚では最表層の角層水分は20.30%であるといわれている.角層の水分はNMF(naturalmoisturizingfactor:天然保湿因子),セラミドを中心とする細胞間脂質,皮脂膜の3者による保持が重要と考えられているが,何らかの要因により水分を喪失すると乾燥を招く.乾燥により皮膚はカサカサしたドライスキンへ変化し,単に整容的な問題だけでなく,皮膚疾患にもなりうる.健康な肌の角層は皮膚を覆う密なラップのような構造を有するが,乾燥によりこの構造が維持できなくなり,バリア機能が破綻すると,アレルゲンや微生物の侵入が容易となる.乾燥肌の原因としては,魚鱗癬(いわゆるサメ肌)などの遺伝的疾患や,アトピー性皮膚炎,湿疹や掌蹠角化症などの皮膚病,加齢による変化などがあげられる.特に,アトピー性皮膚炎は季節を問わずに一年中ドライスキン(52)ケラチン層状構造疎水性セラミド親水性(角質細胞間脂質)図2角質細胞間脂質による保湿「ラメラ」とは「層状」という意味.角質細胞間脂質では油相と水相の層を繰り返すことによりバリア機能となる保湿が維持されている.(文献1より)の状態が続くとされている.乾皮症は,セラミドや発汗,皮脂分泌の減少が生じたうえに,知覚神経の表皮内伸張などによりかゆみの閾値が低下し掻痒感が誘起される.特に,空気が乾燥する秋から冬にかけて症状が悪化する.水分の保持機能を担うセラミドは,角質細胞間脂質のスフィンゴ脂質の95%を占める.角質細胞間脂質の水分保持機能の特徴の一つとしてラメラ構造が知られている.これは,角層間で水分子と水素結合のネットワークを形成し,水分子を構造単位で層状に含み(図2),水分を保持している1).さらに,皮脂は性ホルモンの支配を受けるため,加齢に伴い分泌が低下することでドライスキンを生じる.このような皮脂は,結合水を抱えることは不可能であるが,角層上に皮脂膜を構成することで水分の蒸散を抑制し,角層水分量を維持する.加えて,NMFはケラチン分子間の水素結合を介した相互作用を中和し,ケラチン分子の分子運動を促進することでケラチンの柔軟性を高めていると考えられている.これらのことより,皮脂の分泌が低下し天然の皮脂膜の形成が困難な際には,人工的な代替膜をつくる必要がある.水分のある状態でクリームやオイルなどによる保護膜を作り,水分の蒸散を防ぐことが大切とされ,種々の製品が研究開発されている.3.腟ドライバジャイナ(腟の乾燥)は加齢,ストレスなど(53)により女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下する更年期以降に発症頻度が高いとされているが,近年,女性の社会進出に伴う過度なストレスやダイエットによる女性ホルモンの異常が一因となり,腟周辺の粘膜が乾燥し,灼熱間や性交痛に悩む若い女性も多いといわれている.腟は内性器と外性器をつなぐ導管で,温かく湿気を帯びている.外陰部の腟前庭にある腟口には左右対称性にスキーン腺(小前庭腺)とバルトリン腺(大前庭腺)があるが,腟粘膜には腺構造を認めず,粘液は子宮ならびに前庭腺由来の分泌液に由来する.子宮頸部の内腔である頸管は頸管腺上皮で被覆され頸管腺が開口しており,頸管粘液はエストロゲンの活性で増加し,プロゲステロンの影響で減少する.さらに,腟粘膜は女性ホルモンの作用により重層扁平上皮の細胞質内にグリコーゲンが蓄積しブドウ糖へ分解され,腟内の腟常在菌である乳酸桿菌により乳酸となることで腟内を酸性に保持して,細菌の増殖を抑制し自浄作用を示す.しかしながら,ホルモンの分泌が低下することにより腟の乾燥を介してさまざまな不快症状を呈する.更年期以降は加齢により卵巣は軽量化を認め,子宮内膜は菲薄化し,萎縮性の形態を呈する.子宮の腺上皮は高さを減じ立方状となり,腺腔は狭小化し分泌機能もほぼ停止する.腟粘膜は角層の消失,菲薄化,平坦化が進行する.しかし,閉経後10年は中層細胞がほぼ保たれるため菲薄化は弱いが,加齢に伴い性生活の影響を受けるといわれている.老年期にむかうに従い,中層細胞層は萎縮し,腟粘膜の含水量やグリコーゲン含有量が減少することにより常在菌も減少し萎縮性腟炎が惹起されて,疼痛や灼熱感,掻痒感,性交痛,性交時出血や外的刺激により腟不快症状を呈する.さらに,外陰に位置するスキーン腺,バルトリン腺,などの分泌機能も低下し,適度な湿潤性が維持できなくなるため外陰掻痒症が生じる.閉経後の女性の多くは分泌機能の低下により,このような状態に陥るといわれているが,症状を感じ訴える人,症状を認めても気にならない人などさまざまで,すべての女性が外来を受診するわけではない.治療方法として,エストロゲンの経口薬や貼付薬を使用するホルモン補充療法はその選択肢の一つとして,疾あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012341患の予防や症状緩和に有効とする報告もあり,閉経後女性のQOLを改善し,健康の保持・増進へつながるとされている.4.鼻腔住・職場環境の湿度の低下,抗アレルギー薬など薬剤の副作用により,鼻腔粘膜の乾燥状態を招くことが知られている.鼻腔粘膜は多列線毛上皮(呼吸上皮)で覆われ,豊富な杯細胞や鼻腺が散在し,粘膜表面は粘液膜で覆われ湿気を帯びている.この粘膜は豊富な毛細血管の網目と静脈洞で構築され,吸気に適度の温度を与えることで体温調節を行い,鼻粘膜上皮下の毛細血管からの漏出液の水分や呼気温の低下により,呼気中の水蒸気が鼻粘膜上で水となり付着することで呼気は適度に加湿される.一日に分泌される粘液量は約1lで,このうち700mlは吸気に湿度を与えて咽喉頭や下気道を乾燥から守り,残りの300mlはmucousblanket(粘膜層)として線毛を介して咽頭へ運ばれ嚥下されるといわれている.加えて,花粉やほこりなどは鼻毛がフィルター役となるほか,線毛と線毛の間にある線毛間液,線毛の先端部にある外層粘液が異物を付着し,線毛による線毛運動で咽頭への侵入を排除する粘液線毛輸送機能が作用する.さらに,病原微生物からの感染防御には粘液中のリゾチームや分泌型IgAなどの特異的な免疫物質もその役割を担うため,鼻腔は常に粘液で洗浄されている状態である.線毛は粘液の中でのみ運動が可能であり,粘膜の乾燥や病的な分泌物では作用しないため,体内の水分が減少したり,ドライノーズが生じると線毛間液が減少し,線毛が外層粘液に絡まったり,粘液が濃くなると粘液線毛輸送機能は低下する.対処として,一般的にマスクの装着や加湿器による湿度の維持は,線毛運動の機能低下予防や改善に作用し,加えて積極的な水分摂取も効果的であることが示されている.5.耳外耳道は重層扁平上皮で覆われ,耳介と外耳道の外側半分に毛や分泌腺は存在するが,内側半分や鼓膜は腺を認めない.外耳道には耳垢腺が脂腺とともに毛.に開い342あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012ており,耳垢腺,脂腺,汗腺の分泌物と脱落上皮により耳垢が形成される.耳垢の性状は常染色体遺伝で湿性耳垢が乾性耳垢に対して優性であるとされており2),2006年にはDNAの塩基配列の1カ所の違いにより先天的に耳垢が生成されないことも報告されている3).耳垢の性質は人種により大きな差があり,日本では湿性が約20%,欧米は90%以上,国内でも地域によりその割合は異なるという報告もある.耳垢腺はアポクリン腺の一種に分類され,分泌物は酸性の黄色透明水様性で,殺菌効果や外耳道の乾燥防止に作用するといわれている.湿性耳垢は塞栓しやすく,耳垢塞栓という疾患により難聴,耳鳴,耳痛などの不快症状が出現する.耳管は成人で全長約3.5cmの中耳腔と鼻咽腔,つまり外界を結ぶ唯一の管である.耳管は中耳に対して換気・調圧,排泄,防御の機能がある.中耳からの排泄は耳管粘膜表面の線毛が働き,耳管周囲の耳管腺や耳管粘膜の線毛細胞,杯細胞などは耳管下半部に多く認める.耳管は,通常安静時に閉鎖し嚥下動作などに伴い瞬間的に開大する.安静時の耳管内腔の閉鎖にはいくつかの規定要因が考えられており,耳管粘膜の湿潤状態や耳管内腔粘膜に豊富に存在する耳管腺からの粘液の分泌状態も重要な要因の一つと考えられる.耳管が常時開放状態となる耳管開放症の原因はさまざまで,素因や体重減少,運動時の発汗による脱水など複数の要因,さらに耳管内腔側の環境条件因子として粘液貯留の有無,粘膜の湿潤状態も重要とみられる.マウスの耳管粘膜にアポクリンの発現を認める報告もあり4),アポクリンに異常を認めるSSの分泌障害では耳の乾燥が併発している可能性も考えられる.6.こころ現代の社会では,多くの人間が多様な心理的問題に直面している.職場での人間関係,職務,家庭や介護などによるストレスに起因する悩みや,さまざまな“こころ”の病により出社拒否などの言動や行動に障害を認め,これらのことから交感神経優位による外分泌腺の機能の低下が乾燥症状を招くケースも少なくない(図3).さらに,精神症状(意欲低下,悲哀感,自責感,抑うつ(54)水分泌機能促進水分泌機能抑制優位優位水分泌機能促進水分泌機能抑制優位優位…図3外分泌腺機能における神経支配唾液の分泌は自律神経の二重支配を受けているが,水分は副交感神経終末から放出されるアセチルコリンにより分泌される.ストレスが多い状態では交感神経が優位となり水分の分泌が低下する.気分など)を訴えることができずに,身体症状として仮面うつ病などに罹患する症例も増加の一途をたどり,自殺者3万人といわれる社会になった.目や肌などの乾燥症状については,現在の情報社会において適正な診療科を受診し対処方法を得ることは可能であるが,こころの問題は自身をはじめ周囲の気づきも遅れがちなことや,受診の機会を逃すことも多い.身体のどこかにドライシンドロームを感じていると,少なからず生活の質はマイナスへ影響し,うつ病やストレスにつながることでネガティブなこころの動きへと変化することが多い.近年,「PositivePsychology(ポジティブ心理学)」という新しい分野の報告が注目を浴びている.ペンシルバニア大学のSeligman先生が推進している心理学で,「人が充実した活動を行うことのできる組織や社会の条件は何か」というテーマに対して多角的な研究を追求している.今まではネガティブな心理が個人に影響していると考えられていたが,プラスのこころの動きがストレスをコントロールするために大きく影響すると唱えている.このような領域からのアプローチは,こころの渇きの対処の一助として貢献できると筆者らは注目している.このように,身体と同様にこころの乾燥も,早急に予防や早期発見,専門家による対処,セルフケアの方法を拡充させることは医療従事者の責務と考えている.(55)IIIドライシンドローム学会の設立2004年に実施した研究では,ドライアイ患者の50%はドライマウスを呈し,SSと診断されないドライアイとドライマウスを同時に併発する“ドライシンドローム”患者が多数いることも報告されている5).最近のドライマウスの研究でも,同様な事象が指摘されていることから,全身に乾燥症状を呈するドライシンドロームの病態の解明が急務とされている.眼科,歯科領域に限らず,今回解説したドライスキン,ドライバジャイナ,ドライノーズなど,他の部位の“乾燥症状”についても強い関心がもたれはじめ,全科横断的な研究の必要性が求められている.乾燥症状は一般的に致死的な病態ではないことから,医療従事者さえも患者の訴えを軽視する傾向にあるが,日々の生活で計り知れないQOLの低下を招いていることを真摯に受け止めたい.さらに,加齢やストレスとの結びつきも指摘されていることから,超高齢社会の日本においてはさらに重要視されると考えている.加えて,乾燥によりドライアイは実用視力が,ドライマウスは口腔機能,ドライスキンにおいてはアトピー性皮膚炎などの症状が悪化するなど,多彩な病態の原因の一つになっていることも指摘されている.そこで全身の“乾燥”という病態をキーワードとして,臨床と研究の推進を目的にドライシンドローム学会(坪田一男理事長)を設立するに至った.本学会を通して,ドライシンドロームの本質,患者数,治療方法など各科と連携した活発な研究,啓発活動ができることを目指したい.おわりに増加傾向を示すドライアイやドライマウスは,医薬品や健康食品業界からも有望視される市場として,注目を浴びている.さらに,超高齢社会において加齢に伴う組織・器官の退行変性による乾燥以外に,若年・中高年層でもVDT(visualdisplayterminals)作業や季節などの環境変化による乾燥はQOLを著しく低下させることから,これらの総合的な対応が求められている.“こころ”を含めて全身がうるおい,充実した生活をあたらしい眼科Vol.29,No.3,2012343営める状態こそ健康とされるが,現在までの専門性に特化した診療体制では対応不十分であることから,患者の全身を総括的に捉え,医科と歯科の連携により得た十分な知識・情報を提供し,適切な診断・診療を積極的に取り入れる医療従事者が増えることを期待する.文献1)石川治,宮地良樹:図解皮膚科学テキスト.p38,中外医学社,20032)松永英:ミミアカへの遺伝学(I).遺伝13:15-18,19593)YoshiuraK,KinoshitaA,IshidaTetal:ASNPintheABCC11geneisthedeterminantofhumanearwaxtype.NatureGenetics38:324-330,20064)TakahashiE,KikuchiT,KatoriYetal:Localizationofaquaporins,water9channelproteins,inthemouseeustachiantube.ActaOtolaryngolSuppl562:67-70,20095)KosekiM,MakiY,MatsukuboTetal:Salivaryflowanditsrelationshiptooralsignsandsymptomsinpatientswithdryeyes.OralDis10:75-80,2004344あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012(56)