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硝子体手術のワンポイントアドバイス 106.多発性網膜細動脈瘤を伴う特発性網膜血管炎に対する硝子体手術(中級編)

2012年3月31日 土曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載106106多発性網膜細動脈瘤を伴う特発性網膜血管炎に対する硝子体手術(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科はじめに多発性網膜細動脈瘤を伴う特発性網膜血管炎(idiopathicretinitis,vasculitis,aneurysms,andneuroretini-tis:IRVAN)は1995年Changらによって提唱された疾患で,網膜血管炎,多発性網膜細動脈瘤,神経網膜炎を特徴とする1).後極部に細動脈瘤や硬性白斑を生じ,進行すると周辺部に広範な無血管野をきたし網膜新生血管が生じる.さらに進行すると網膜前出血,硝子体出血,牽引性網膜.離をきたすこともある.本疾患は比較的まれと考えられているが,原因不明の硝子体出血例のなかに混ざっていることがある.●IRVANの鑑別疾患新生血管からの色素漏出,周辺部網膜の無血管野と動静脈吻合,多発性細動脈瘤などの眼底所見を特徴としているため,大動脈炎症候群,サルコイドーシス,抗リン脂質抗体症候群,結核などの全身疾患との鑑別が必要である.IRVANはこれらの疾患を示唆する異常所見は認めない.一方,IRVANの近似疾患としてEales病やCoats病などがある.Eales病は通常両眼性で20.30歳代の男性に多く,おもに静脈閉塞をきたす.Coats病は10歳以下の男児に好発し,血管拡張と黄白色の滲出性病変が特徴的である.●IRVANに対する治療IRVANの治療としては,網膜無血管野や新生血管に対して汎網膜光凝固術,動脈炎症状に対してステロイド全身投与などが行われている.再発性の硝子体出血や牽引性網膜.離をきたした場合に硝子体手術の適応となる(図1~3).●硝子体手術時の注意点IRVANの網膜無血管野は,中間周辺部から周辺部に図1硝子体手術前の眼底写真右眼視神経乳頭鼻側から下方に線維血管性増殖膜とその周囲に牽引性網膜.離を認める.図2蛍光眼底写真右眼の耳側周辺部網膜の広範な無血管野,血管吻合を認める.図3硝子体手術後の眼底写真硝子体手術後網膜は復位し,血管炎も鎮静化している.かけて,虫食い状の不規則な形を呈することが多く,眼底透見可能例では術前に蛍光眼底検査を行い網膜虚血範囲に光凝固を確実に施行する必要がある.牽引性網膜.離は網膜虚血に起因する線維血管性増殖膜の発育と後部硝子体.離の進行によって生じるが,増殖糖尿病網膜症と同様の手術手技で対応する2).血管炎は硝子体手術後に鎮静化することが多いが,炎症が遷延する場合にはステロイド薬の追加投与を考慮する.文献1)ChangTS,AylwardGW,DavisJLetal:Idiopathicretinalvasculitis,aneurysmsandneuro-retinitis.Ophthalmology102:1089-1097,19952)鶴原泰子,石崎英介,服部秀嗣ほか:IRVANに対して硝子体手術を施行した1例.眼科手術24:63-66,2010(79)あたらしい眼科Vol.29,No.3,20123670910-1810/12/\100/頁/JCOPY

第12回眼科DNAチップ研究会 報告書

2012年3月31日 土曜日

第65回日本臨床眼科学会専門別研究会2011年10月7日(金)東京国際フォーラム第12回眼科DNAチップ研究会報告書*1京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学*2山形大学医学部眼科学講座上田真由美*1山下英俊*2木下茂*1はじめに今年(2011年)で第12回を迎える眼科DNAチップ研究会が第65回日本臨床眼科学会の専門別研究会の一つとして2011年10月7日金曜日に行われた.今年は,専門別研究会としては最後になることもあり,シンポジウム3演題,教育講演1題,そして特別講演1題と例年になく内容豊かなプログラムとなり,ゲノムワイド関連解析を中心とした遺伝子多型解析ならびにバイオインフォマティクスに関する高度な研究内容を聞くことができた.シンポジウム3人の演者によるシンポジウムが開催された.初めの演者は,京都大学の山城健児先生で,“病的近視感受性遺伝子の同定”という演題名で,ゲノムワイド関連解析の結果をもとに,病的近視関連遺伝子多型についてお話しされた.続いて,横浜市立大学の水木信久教授が,“ゲノム研究が拓く眼科医療の未来”という演題名で,最近NatureGeneticsに掲載されたベーチェット病のGenome-WideAssociationStudy(GWAS)解析の結果について詳細にご説明いただき,かつ,今後の進行性についてもご講演された.シンポジウム最後の演者は,京都府立医科大学眼科の上田真由美で,“眼合併症を伴うStevens-Johnson症候群の遺伝子多型解析”という演題名で,候補遺伝子解析からゲノムワイド関連解析の結果,さらには,疾患関連遺伝子の機能解析についてお話しさせていただいた.シンポジウムの発表はどれも,日本のゲノム解析を代表する素晴らしい発表であった.教育講演1時間のシンポジウムの後,京都府立医科大学ゲノム医科学の中野正和助教から“これからのゲノムワイド関連解析における次世代技術の活用法”という演題名の教育講演が行われた.次世代シークエンサーを中心にゲノムワイド関連解析の次世代技術についての詳細な説明とともに今後の方向性についてわかりやすくご講演いただいた.特別講演教育講演の後は,九州大学の生体防御医学研究所附属遺伝情報実験センターの山本健准教授により,“DNAチップの可能性─相関,連鎖,エピジェエネティクス─”という演題名の特別講演をしていただいた.ゲノムワイド関連解析による遺伝子多型解析,SNP(一塩基多型)チップを用いた単一遺伝病の連鎖領域同定,DNAメチル化サイトチップを用いたエピジェエネティクス固体差解析についてご講演いただいた.☆☆☆(77)あたらしい眼科Vol.29,No.3,20123650910-1810/12/\100/頁/JCOPY

眼科医のための先端医療 135.眼内血管新生の治療標的としてのクリスタリン蛋白

2012年3月31日 土曜日

監修=坂本泰二◆シリーズ第135回◆眼科医のための先端医療山下英俊眼内血管新生の治療標的としてのクリスタリン蛋白加瀬諭(北海道大学大学院医学研究科眼科学分野)クリスタリン蛋白と眼疾患の関わり脊椎動物におけるクリスタリン(crystallin)蛋白は,a,b,gの3つのファミリーに分かれ,特に近年,aクリスタリンが種々の眼疾患に重要な役割を果たすことが示唆されてきました.a-クリスタリンは熱ショック蛋白(HSP)におけるaA,aBという二つの異なるファミリーより成ります.a-クリスタリンは水晶体構成蛋白として発見され,その後水晶体のみならず網膜や網膜色素上皮(RPE)にも発現されていることが確認されております.加えて,a-クリスタリンは,熱刺激のみならず虚血,低酸素や炎症など,種々のストレスでその発現が誘導され,細胞の増殖制御やアポトーシス,細胞の分化に関与しております.分子シャペロン機能を有しており,種々の蛋白質に結合して,標的蛋白の分解制御を行っています.眼疾患では,まず糖尿病眼と網膜芽細胞腫(RB)において,a-クリスタリン蛋白の関わりについて示します.網膜症の発生がみられない段階における糖尿病眼の網膜においては,正常に比較して,aA-クリスタリンが高発現していましたが,aB-クリスタリンの発現上昇はありませんでした1).同様に,最終糖化産物(AGE)の発現を調べたところ,糖尿病眼では網膜の血管に高発現していました.この結果を踏まえ,リコンビナントAGE蛋白をマウスの硝子体に注入し,網膜を摘出してa-クリスタリンの発現を調べたところ,aA-クリスタリンの発現が誘導されました1).以上より,糖尿病眼において,aA-クリスタリンの発現が網膜のアポトーシス制御に重要な役割を果たすことが示唆されました.RBにおいては,酸化ストレスに反応して培養RB細胞におけるa-クリスタリンの発現が誘導されました2).また,ヒトのRBによる摘出眼球においても,化学療法後に摘出された組織でaB-クリスタリンが残存する腫瘍細胞に高発現していることが判明しました3).(73)0910-1810/12/\100/頁/JCOPYこれは腫瘍細胞における化学療法への抵抗性の獲得に,a-クリスタリン蛋白の発現が関与していることを示唆します3).化学療法の既往のないRBの病理組織学的研究により,腫瘍細胞におけるa-クリスタリンの発現とそのアポトーシスに負の相関がありました2).a-クリスタリンは分子シャペロン機能により,アポトーシス関連蛋白と結合し,RBのアポトーシスに重要な役割を果たすことが示唆されました.以上の研究により,種々の眼疾患,病態において,aA-とaB-クリスタリンでは発現分布や発現量が異なり,各々異なる役割を果たす可能性があります.a.クリスタリンと眼内血管新生一方で,これまで眼内血管新生における分子シャペロンの役割を解析した報告はあまりみられません.Wuらは,熱ショック蛋白の一つであるHSP90の阻害薬を用いた実験を行い,HSP90を阻害することにより,低酸素に反応する血管内皮増殖因子(VEGF)の発現が抑制されたことを確認し,分子シャペロンが眼内血管新生疾患の治療標的になりうることを示しました4).筆者らは,マウス眼内血管新生の過程において,aB-クリスタリンがVEGFと結合し,VEGFの分解を抑制していることを見出しました5).さらに実際のヒトの組織について,a-クリスタリンの発現を糖尿病網膜症の増殖組織を用いて解析したところ,網膜新生血管の血管内皮細胞にaB-クリスタリンの発現がみられ,かつVEGFと共発現していることを二重染色法で確認しました6).脈絡膜新生血管(CNV)の形成において,RPE細胞におけるVEGFの発現,分泌が重要であることが知られております.aB-クリスタリンは水晶体構成蛋白の一つのみならずRPE細胞にも発現されています.加えて,aB-クリスタリンは,RPE細胞の増殖,アポトーシスの制御に重要な役割を果たすことも示されてきました.以上のことから,CNVの形成,発達においても,aBクリスタリンが関与している可能性が考えられました.実際,aB-クリスタリンノックアウト(KO)マウスと野生型(WT)マウスを使用して,レーザー誘導CNVモデルを作製したところ,aB-クリスタリンKOマウスにおいて,有意にCNVの形成が抑制されました5).Invitroの実験にてaB-クリスタリンのRNA干渉(siRNA)トランスフェクションを行い,aB-クリスタリンの発現を低下させると,VEGFの分解が促進され,血管内皮細あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012361 レーザー照射レーザー照射VEGFmRNA↑VEGFprotein産生↑aB-クリスタリン発現低下aB-クリスタリンとVEGFVEGF蛋白との結合凝集,変性↑機能的VEGF蛋白VEGF分解促進血管新生血管新生の抑制図1脈絡膜新生血管(CNV)におけるa.クリスタリンの関与虚血や炎症による刺激に対して,眼内血管内皮増殖因子(VEGF)のmRNAおよび蛋白発現が亢進する.aB-クリスタリンが正常に働く状況では,aB-クリスタリンはVEGFと結合してVEGF蛋白を保持し,VEGFのシグナル伝達をサポートする.しかし,aB-クリスタリンの発現が低下した場合には,VEGFの変性,凝集が起こり分解が促進され,眼内血管新生が結果的に抑制されることが示された.胞がアポトーシスに陥る現象を確認しました.これらのことから,眼内血管新生におけるa-クリスタリンの役割をまとめますと,虚血や炎症による刺激に対して,眼内VEGFのmRNAおよび蛋白発現が亢進します.aBクリスタリンが正常に働く状況では,aB-クリスタリンはVEGFと結合してVEGF蛋白を保持し,VEGFのシグナル伝達をサポートします.しかしaB-クリスタリンの発現が低下した場合には,VEGFの分解が促進され,眼内血管新生が結果的に抑制されることが示されました(図1).眼内新生血管の治療標的としてのa.クリスタリン加齢黄斑変性(AMD)は先進国における高齢者の主要な失明原因の一つとなっています.滲出型AMDは視力を脅かす疾患の一つであり,異常な血管漏出をきたすCNVによって黄斑部に出血や滲出性変化が起きます.CNVの発生病理に,黄斑部網膜下に浸潤したマクロファージやRPEが重要な役割を果たすと考えられています.これらはVEGFなどの血管新生因子の産生源であり,炎症部位における血管新生の発達に関与しています.CNVに対して以前は局所光凝固や手術的な治療が行われていましたが,CNVの近傍にある感覚網膜やRPEへの侵襲が強く,加療後の良好な視機能改善には限界がありました.これまでの病理学的な研究により,VEGFがCNVの血管膜において発現が上昇していることが明らかとなっています.実際,CNVに対して抗VEGF抗体の硝子体内注射が臨床応用されています.しかしながら臨床上の問題点として,CNV抑制のために抗VEGF抗体の反復投与が必要なこと,抗VEGF抗体の無効例が存在すること,抗VEGF抗体投与による網膜神経細胞の障害の可能性が報告されていることがあげられます.したがって,滲出型AMDの治療標的として,VEGFの直接的な抑制が主流ですが,課題も多く残されています.新生血管に対するa-クリスタリンの研究は,直接的なVEGF蛋白質を標的とするのではなく,その蛋白分解を制御している分子を治療標的にすることにより,抗VEGF抗体治療の効果の増強,反復投与の軽減効果が期待されます.文献1)KaseS,IshidaS,RaoNA:IncreasedexpressionofalphaA-crystallininhumandiabeticeye.IntJMolMed28:505-511,20112)KaseS,ParikhJG,RaoNA:Expressionofalpha-crystallininretinoblastoma.ArchOphthalmol127:187-192,20093)KaseS,ParikhJG,RaoNA:Expressionofheatshockprotein27andalpha-crystallinsinhumanretinoblastomaafterchemoreduction.BrJOphthalmol93:541-544,20094)WuWC,KaoYH,HuPSetal:Geldanamycin,aHSP90inhibitor,attenuatesthehypoxia-inducedvascularendothelialgrowthfactorexpressioninretinalpigmentepitheliumcellsinvitro.ExpEyeRes85:721-731,20075)KaseS,HeS,SonodaSetal:alphaB-crystallinregulationofangiogenesisbymodulationofVEGF.Blood115:33983406,20106)DongZ,KaseS,AndoRetal:AlphaB-crystallinexpressioninepiretinalmembraneofhumanproliferativediabeticretinopathy.Retina,inpress■「眼内血管新生の治療標的としてのクリスタリン蛋白」を読んで■多くの眼科医は,クリスタリンと聞くと,「あぁ,ストレスによって水晶体の透明性が低下しないように水晶体を構成している蛋白だ」と思うのではないでする能動的機能を備えています.たとえば,a-クリしょうか.しかし,クリスタリンはそれだけでなく,スタリンは,変性したb-およびg-クリスタリンを正362あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012(74) 常に戻し,会合を防ぐ機能(シャペロン)をもつことがあることです.つまり,病的あるいはストレス下にが判明しており,これによりb-とg-クリスタリンはおいては,VEGFとa-クリスタリンは血管新生の正水晶体の透明性維持や,光の屈折率を高める機能を保のフィードバックを形成して爆発的に血管新生を亢進つことができています.実際,a-クリスタリン欠損している可能性があります.免疫反応においては,生マウスは軽度のストレスにより水晶体混濁を起こしま体は必要なときには必要な生体反応だけを起こす特殊す.最近このクリスタリンが血管新生にも重要な働きな仕組みがありますが,血管新生においてもこの正のをしていることがわかってきました.固形腫瘍が増大フィードバックにより,必要な部位だけに血管新生をする過程で,腫瘍内部への酸素供給が不十分になり,起こすことができるのです.しかし,逆にいえば,こ腫瘍中心部は虚血状態になりますが,それが誘因になの正のフィードバックを抑制することで,血管新生をり血管新生が誘導され,その結果虚血状態が改善さ“爆発的に”抑制することも可能です.そのことを,れ,さらなる腫瘍の増大を招く現象は広く知られてい最初に眼科領域で示した加瀬諭先生の研究は画期的ます.ところが,a-クリスタリン欠損動物ではそのなものなのです.現在の血管新生抑制薬は,抗VEGF現象が起こらないことから,a-クリスタリンが血管薬が主体となっていますが,さらに効果的な薬物はあ新生のカギとなる物質であると考えられています.特まりなさそうです.しかし,この正のフィードバックに,重要なことはa-クリスタリンは部分的に変性しを抑制する薬物があれば,現行薬よりも効果的なものた血管内皮増殖因子(VEGF)を正常に修正して,そになりうる可能性があります.このことが,早く眼科の機能を高めるだけでなく,ストレス下ではVEGF領域で実現することを祈ります.がa-クリスタリンの発現とリン酸化を亢進する作用鹿児島大学医学部眼科坂本泰二☆☆☆(75)あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012363

新しい治療と検査シリーズ 206.ルテインによる加齢黄斑変性予防の可能性

2012年3月31日 土曜日

新しい治療と検査シリーズ206.ルテインによる加齢黄斑変性予防の可能性プレゼンテーション:小沢洋子慶應義塾大学医学部眼科学教室コメント:尾花明聖隷浜松病院眼科.バックグラウンド加齢黄斑変性は国内の失明原因の4位を占め,高齢化社会にあっては避けて通れない疾患である.滲出型に対する治療法は普及したが,治療をうけても視機能障害を残すことは珍しくなく,また萎縮型には今のところ治療法がない.そこで,予防療法に期待が寄せられる.加齢黄斑変性発症の背景には,慢性炎症とそれに伴う酸化ストレスの遷延があると考えられており,その抑制が発症予防につながるという考え方は,受け入れやすい.この酸化ストレス抑制の観点から,米国ではビタミンC,E,b-カロテンと亜鉛からなるサプリメント(AREDSformula)の摂取により加齢黄斑変性の進行が予防できるかを検証する大規模臨床試験(Age-relatedEyeDiseaseStudy:AREDS)が行われた.米国では,その結果1)を受けて,すでに医師が患者にこれらのサプリメント摂取を勧めている2).米国では現在,さらなる予防効果を求めて新たな臨床試験AREDS2を行っている(図1).AREDS2では,AREDSformulaに加えて摂取するサプリメントとして,ドコサヘキサエン酸/エイコサペンタエン酸(DHA/EPA)とルテイン/ゼアキサンチンを取り上げた.ルテインはこれまでの小規模な介入試験から有望視され,AREDS2に組み込まれた..期待される予防療法(原理)元来,生物には,酸化ストレスを自己処理する機構がある.しかし,炎症などによりその能力を超えた酸化ストレスが発生すると,もしくは加齢によりその防衛能力が低下すると,酸化ストレスが蓄積し病態が発生すると考えられている.そこで,抗酸化作用のある物質を摂取して病態予防をもくろむ.現時点では,加齢黄斑変性予防のための認可をもつ抗酸化剤はなく,患者の選択でサプリメント(食品扱い)を摂取する方法が選択される.そのなかでもルテインに注目するには理由がある.ルテインは動物の生体内では産生できず,植物を食するこ(71)0910-1810/12/\100/頁/JCOPY1.Placebo2.Lutein/Zeaxanthin10mg/2mg3.DHA/EPA*350mg/650mg4.2+3*DHA:ドコサヘキサエン酸(docosahexsaenoicacid)EPA:エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoicacid)図1Age.RelatedEyeDiseaseStudy2(AREDS2)において検証中のサプリメントによる群わけAREDS2は50.85歳の加齢黄斑変性患者約4,000人を対象とした,米国における大規模臨床試験である.患者をAREDSformula(本文参照)に加え図のサプリメントを摂取する群に分け,5年後までに加齢黄斑変性の進行がみられるかを検証する.とで摂取される.ルテインは腸上皮から吸収され,血中を運ばれ,各臓器に蓄積されるが,そのなかでも網膜には皮膚などとともに,多く存在する.特に,黄斑には集中して存在しゼアキサンチンとともに黄斑色素を構成する.すなわち,ルテインには,元来,経口摂取したものが網膜に運搬される経路がある.サプリメントにより摂取強化を図れば,網膜に蓄積してより抗酸化能を発揮する可能性がある.また,ルテインの網膜内酸化ストレスの抑制効果については,動物実験の結果が各種報告され3),その面からも生体内の効果を期待できる抗酸化剤である..実際の勧め方まず,サプリメント摂取は,認可を受けた治療法ではないことをはっきりと説明する(表1).AREDS2は進行中でありまだ結果は出ていないこと,その結果は欧米人におけるものであり,日本人の加齢黄斑変性の予防効果に直結するかどうかは,検討の余地が残ることも,認識させることが重要である.そのうえで,AREDS2の結果を待っている間に発症してしまう可能性を少しでも減少させるためには,患者の理解のうえで,抗酸化剤の継続的摂取という選択肢があることをお話しする.まあたらしい眼科Vol.29,No.3,2012359 表1サプリメント(ルテイン)を勧める際の注意点1.サプリメント摂取は,認可を受けた治療法ではない2.AREDS2は進行中でありまだ結果は出ていない3.AREDS2の結果は欧米人における結果であり,日本人で加齢黄斑変性の予防効果があるかについては検討の余地が残る4.今後,AREDS2の結果が出ても,5年間摂取の結果に限られており,それ以上の期間の結果は出ない5.変化がなければ,予防効果を示していると考えられる6.年余にわたり継続摂取する方針が必要である7.AREDS2の結果を待っている間に発症してしまう可能性があるため,そのリスクを少しでも減少させるためには,以上のことを理解したうえで,抗酸化剤の継続的摂取をする選択肢がある=ルテインを選ぶ理由=・一般的に抗酸化作用をもつ物質である・元来動物においては,ルテインは体外から摂取されるものであり,網膜に運ばれる経路がある・動物実験から,生体網膜内での抗酸化作用が明らかになってきた患者には,加齢黄斑変性の病態や予後とともに,表の内容を伝える.た,摂取中に眼所見に変化がなければ,すなわちそれが予防効果を示していることに他ならず,年余にわたり継続摂取する方針が必要であることをお話しする.そして,ルテインを選ぶ理由(「期待される予防療法」の項参照)をお話しする.筆者らのアンケート結果からは,患者がサプリメントを摂取するかどうかの判断には,医師の言葉が大きく関与することが明らかになっており4),サプリメント摂取は(医師の処方ではなく)患者の自己選択・自己購入に任されるとはいえ,医師の言葉の重要性と責任は大きい..本方法の利点サプリメントは医師の処方なしに購入が可能であり,診断が確定していなくても摂取を開始することが可能である.また,ルテインにおいては,これまで各種小規模試験が行われたり,さらに食品として市販されたりしているが,大きな副作用が話題になったことは今のところない.ただし,世界的に公式な大規模臨床試験の結果はまだ出ておらず,効果・副作用いずれに関しても確固たるエビデンスが今のところないのは認識すべきである.文献1)Age-RelatedEyeDiseaseStudyResearchGroup:Arandomized,placebo-controlled,clinicaltrialofhigh-dosesupplementationwithvitaminsCandE,betacarotene,andzincforage-relatedmaculardegenerationandvisionloss:AREDSreportno.8.ArchOphthalmol119:14171436,20012)JagerRD,MielerWF,MillerJW:Age-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed358:2606-2617,2008.Review.Erratumin:NEnglJMed359:1736,20083)OzawaY,SasakiM,TakahashiNetal:Neuroprotectiveeffectsofluteinintheretina.CurrPharmDes18:51-56,20124)SasakiM,ShinodaH,KotoTetal:Useofmicronutrientsupplementforpreventingadvancedage-relatedmaculardegenerationinJapan.ArchofOphthalmol,130:254-255,2012■本方法に対するコメント■ルテインに関するエビデンスを一言で表すと,状況ンチンも存在します.AREDS2ではルテイン対ゼア証拠は多数あるが,決定的物証がない,というところキサンチンの比率が5:1の製剤を使用していますが,です.AREDS2試験がその物証になるものと期待さその妥当性の証明は不十分です.れています.ただ,注意すべきは,著者の指摘のよう小腸で吸収されたルテインが視細胞の神経突起に分に,AREDS2は欧米人中心の試験で,体格や食生活布するまでの経路はかなり解明され,複数の輸送蛋白の異なる日本人にそのまま当てはめてよいのかは疑問の関与が示されていますが,それら輸送系の遺伝的差です.また,AREDS2では他の抗酸化ビタミンやミ異により,網膜の蓄積量に個人差ができます.食べるネラルを併用しているので,ルテイン単独の効果はわ量は個人によって違うのに,サプリメントは一律同じからないこと,あくまでも予防効果の検討なので,す量というのも理にそぐわない話で,まだまだ,解明すでに発症した患者に対する治療効果は不明な点もあげべきことは多いと思います.られます.さらに,網膜にはルテイン以外にゼアキサ360あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012(72)

緑内障:緑内障Genome-Wide Association Study最新の知見: 2.次世代シーケンサーをいかに活用するか

2012年3月31日 土曜日

●連載141緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也141.緑内障Genome.WideAssociationStudy中野正和*1池田陽子*2森和彦*2京都府立医科大学大学院医学研究科*1ゲノム医科学*2同視覚機能再生外科学最新の知見:2.次世代シーケンサーをいかに活用するか最近,緑内障に関連する塩基配列の違い(バリアント)がゲノムワイド関連解析(Genome-WideAssociationStudy:GWAS)によりつぎつぎに同定されている.統計学的に関連付けられたバリアントと緑内障の病態とをつなぐ分子機序の解明がつぎの課題であり,次世代シーケンサーの有効活用が期待される.●遺伝子砂漠の生物学的役割DNAマイクロアレイを用いたGenome-WideAssociationStudy(GWAS)によって,現在までにさまざまな多因子疾患に関連する何千ものバリアントが同定されている.当初その勢いは“goldrush”といわれた1).しかし,筆者らが報告した原発開放隅角緑内障2)をはじめ大多数の疾患では,オッズ比の低い(1.2.1.5)バリアントが近傍に遺伝子の存在しない“genedesert(遺伝子砂漠)”から発見された.すなわち,統計学的に疾患に関連付けられたバリアントがどのように疾患の病態にかかわっているのか,その分子機序を解明する難問は今もなお残されている.つい最近までヒトゲノムの3%未満しか占めていない遺伝子をコードする配列から蛋白質が翻訳されることが生命現象の根幹であるとされ,それ以外のゲノム配列は“ジャンク(がらくた)”とさえよばれていた.しかし,ゲノム全体にわたるトランスクリプトーム(ある瞬間に発現している一次転写産物の総体)解析3)によって,現在では蛋白質に翻訳されない配列も遺伝子の発現調節などの重要な役割を担っていることが知られている.したがって,GWASで報告された遺伝子砂漠にも生物学的に何らかの意味のある配列が潜在し,その配列上のバリアントが疾患の病態に関与している可能性が高い.現在,遺伝子砂漠の生物学的役割として,1)rare(まれな)バリアント,2)調節配列/マイクロRNA,3)エピジェネティックマーク,のいずれかによる遠隔遺伝子の発現調節機構の存在が示唆されている(図1).そして,いずれの仮説を検証するためにも領域全体にわたる高精度な塩基配列情報の取得が必須となる.1.rare………:common………………….>1%;…………10/200…..=5%.:rare…………0.1%<……….<1%;…………1/200…..=0.5%.100….200……..DNA……………….GWAS…………………………1%……………common…………………………………………………………………………………1%…..rare………………………………………………………………2………/……..RNA……..RNA…………………………………………A………………………………………………………RNA……………………………………………………………3…………………………..CG…………………………….CGCGAG……………………………………………………………………………………………………………………………..CG……………..C………………………………………………………………DNA………………………….DNA………………………………………………………………………図1遺伝子砂漠領域の生物学的役割1)rareバリアント,2)調節配列/マイクロRNA配列,3)エピジェネティックマーク,が潜在している可能性が高い.(67)あたらしい眼科Vol.29,No.3,20123550910-1810/12/\100/頁/JCOPY ●次世代シーケンサーの活用法次世代シーケンサー(図2)の登場により,そのデータ産生量とカバー率の高さ(=精度)から,広範囲にわたるゲノム領域をこれ以上ない解像度(塩基配列)で解析できるようになった.したがって,次世代シーケンサーを活用することで上述した仮説(図1)の検証が可能になってきている.最近,次世代シーケンサーを用いたポストGWAS研…..DNADNA………………………DNA….1..1……………………………………………………………………….DNA………………究として,冠動脈疾患に関連する遺伝子砂漠(9p21)を題材とした例が報告された4).本研究では次世代シーケンサーを用いて領域内の塩基配列を決定後,1)rareバリアントを含めた全バリアントの抽出,2)調節配列予測プログラムによるエンハンサーの推定,3)Chromosomeconformationcapture(3C)法(図3)によるエンハンサーの標的配列の同定,を行っている.興味深いことにエンハンサー配列予測の結果,9p21は全ゲノムの遺伝子砂漠のなかでエンハンサーが2番目に高密度な領2.Sequencing-by-synthesis1.BridgeAmplificationReferenceGenome………………………ReferenceGenomeDNA…………………………………………………………………..㈹図2シーケンサーの技術革新次世代シーケンサーでは,1)一度に大量のDNA断片の塩基配列を決定(詳細な原理については文献5を参照)し,2)個々のDNA断片の塩基配列をReferenceGenome(ヒトゲノムプロジェクトで決定され現在も更新され続けている標準配列)に貼り付けて“答え合わせ”をすることで,高精度なシークエンスデータを短時間で取得できる.……………….図3Chromosomeconformationcapture法頭文字にCが3つ連続するので“3C”ともよばれる.エンハンサーとプロモーターが調節蛋白質を介して物理的に会合する現象を利用して,実際に………………………………….核内で相互作用している両者の塩基配列を決定することができる.(文献6より転載,一部改変)……………………………………………………………………………………………………………………DNA……………………..DNA……………….DNA………………………………………….356あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012(68) 域であることが判明し,本領域が多数の遠隔遺伝子の発現を調節する中継地点の役割を担っていることが示唆された.また,冠動脈疾患に関連するバリアントを含むエンハンサー配列の転写因子STAT1への結合能がリスクアレルの有無によって異なることを細胞レベルで示し,さらにこのエンハンサーが約950kbも離れたIFNA21領域を始め,複数の遺伝子領域と会合していることを3C法(図3)で明らかにした.以上の結果は,統計学的に疾患と関連付けられたバリアントの機能を初めて分子レベルで捉えた画期的な成果である.今後,本研究例のように次世代シーケンサーを活用しながらGWASで同定された多数の疾患の発症機序の糸口が“第2のgoldrush”としてつぎつぎに得られることが期待される.文献1)TopolEJ,MurraySS,FrazerKA:Thegenomicsgoldrush.JAMA298:218-221,20072)NakanoM,IkedaY,TaniguchiTetal:Threesusceptiblelociassociatedwithprimaryopen-angleglaucomaidentifiedbygenome-wideassociationstudyinJapanesepopulation.ProcNatlAcadSciUSA106:12838-12842,20093)CarninciP,KasukawaT,KatayamaSetal:Thetranscriptionallandscapeofmammaliangenome.Science309:1559-1563,20054)HarismendyO,NotaniD,SongXetal:9p21DNAvariantsassociatedwithcoronaryarterydiseaseimpairinterferon-gammasignallingresponse.Nature470:264-268,20115)MetzkerML:SequencingTechnologies─thenextgeneration.NatGenet11:31-46,20106)三浦尚,CrutchleyJ:3C法による核内DNAの位置関係の解析.実験医学28:1433-1440,2010☆☆☆(69)あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012357

屈折矯正手術:ジグザグ全層角膜移植(PKP)のヒステレーシス

2012年3月31日 土曜日

●連載142屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─142.ジグザグ全層角膜移植(PKP)のヒステレーシス監修=木下茂大橋裕一坪田一男脇舛耕一*1稗田牧*2*1バプテスト眼科クリニック*2京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学フェムトセカンドレーザーを用いたジグザグ形状の全層角膜移植(PKP)が可能となり,術後角膜強度の向上が期待されている.ヒステレーシスは粘弾性体の変形時における現象であり,これを応用した角膜生体力学特性は角膜弾性強度を反映するとされる.ジグザグPKPではこの特性が正常眼に近く,実際に術後創強度が安定している可能性を示唆している.近年,フェムトセカンドレーザー(femtosecondlaser:FSL)を用いた全層角膜移植(penetratingkeratoplasty:PKP)が可能となってきている1).FSLによる角膜切開は水平・垂直・傾斜方向の切開を組み合わせることでジグザグ形状の切開面を得られることができ(ジグザグPKP),従来のトレパンブレードによる垂直方向のみの角膜切開と比べ術後創強度の安定性が期待されている.しかし,生体の角膜強度を定量的に評価することはむずかしく,ジグザクPKP術後において実際にどれくらいの強度を保っているのかを把握する方法はまだ確立されていない.しかし,角膜強度を反映する方法として,角膜生体力学特性という概念が用いられるようになってきた.これは,粘弾性体では加圧時と減圧時の変形過程が一致しない現象(履歴現象=ヒステレーシス)を利用して,角膜図1OcularResponseAnalyzerTM(ORA)の外観(65)0910-1810/12/\100/頁/JCOPYにおけるこの粘弾性体としての性質(角膜生体力学特性)を評価する考え方である.筆者らはOcularResponseAnalyzerTM(ORA)(Reichert社,図1)2)を用いて,ジグザグPKP術後(図2)における角膜生体力学特性を解析した3).本解析では角膜生体力学特性を定量化した指標としてcornealhysteresis(CH)およびcornealresistancefactor(CRF)を測定し,FSLとしてFS-60TMまたはiFSTM(AMO社製)を用いて行ったジグザクPKPにおけるCH,CRFを,正常眼や従来のトレパンブレードによるPKPでの数値と比較検討を行った.図3が,ジグザグPKP術後における測定結果の1例である.この症例ではCH=9.3mmHg,CRF=9.8mmHgで,正常眼における結果(図4)に近い値であった.一方,トレパンブレードによるPKP術後での測定結果(図5)ではCH=5.2mmHg,CRF=5.7mmHgで,ジグザグPKP術後や正常眼に比べ低値であった.群間比較においても,CHはジグザクPKP群9.87±1.71mmHg(n=11),トレパンブレードによるPKP群8.29±1.53mmHg(n=23),正常群10.7±1.43mmHg(n=27)という結果であり,同様にCRFはそれぞれ9.86±2.30mmHg,7.73±2.29mmHg,9.90±1.58mmHgであっ図2前眼部OCT(VisanteTM)によるジグザグPKP術後画像(文献3より)あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012353 SignalAnalysisSignalAnalysisSignalAnalysisSIGNALTIMERESPONSESIGNALTIMERESPONSESignalAnalysisTimeTime図3ジグザグPKP術後眼でのORA測定結果図4正常眼でのORA測定結果症例ではCH=9.3mmHg,CRF=9.8mmHgであった.症例ではCH=9.2mmHg,CRF=8.7mmHgであった.SIGNALTIMERESPONSEグザグPKPにおける術後の角膜弾性強度が生理的な状態に近い可能性を示唆しており,創構造が垂直方向の二次元的な切開面のみであるよりは,水平・斜め方向を加えた三次元的な切開面のほうが垂直方向の外力による位置ずれに対する抵抗性が高いとする考えを支持するものと思われる.そのことはさらに,術後早期の角膜抜糸やその後のlaserinsitukeratomileusis(LASIK)に代表されるレーザー角膜屈折矯正手術の早期施行によって,PKP術後の視機能を向上できる可能性がある.現時点ではORAによる角膜生体力学特性の定量評価が角膜強度を反映する方法であると考えられるが,ジグザグPKPにおける角膜強度をより正確に測定できる方法の開発が今後も期待されるところである.文献1)稗田牧:フェムト秒レーザーを用いた角膜移植.眼科手術24:45-48,20112)神谷和孝:新しい予防法OcularResponseAnalyzer.IOL&RS22:164-168,20083)脇舛耕一,稗田牧,加藤浩晃ほか:フェムトセカンドレーザーを用いた全層角膜移植における角膜生体力学特性.あたらしい眼科28:1034-1038,2011Time図5トレパンブレードによるPKP術後眼でのORA測定結果症例ではCH=5.2mmHg,CRF=5.7mmHgであった.た.この結果から,CH,CRFともジグザグPKP術後ではトレパンブレードによるPKP術後より有意に高く,正常群と有意差を認めなかった.CHやCRFの数値と角膜強度の間に直接的な関係があるかということは明確にはされておらず,この解析結果だけでは即座にジグザグPKPにおける術後創強度が向上しているとは言い切れない.しかし,角膜の粘弾性体としての性質をとらえた角膜生体力学特性の値がジグザグPKP術後において正常眼に近いということは,ジ☆☆☆354あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012(66)

眼内レンズ:嚢内固定眼内レンズ脱臼例の走査電子顕微鏡所見

2012年3月31日 土曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎平田憲佐賀大学大学院医学系研究科眼科学307..内固定眼内レンズ脱臼例の走査電子顕微鏡所見.内固定眼内レンズ脱臼は,日常診療でときに遭遇する.特に落屑症候群はZinn小帯が脆弱で,術後数年で眼内レンズが脱臼する場合がある.外傷や硝子体手術の既往,ぶどう膜炎や高度近視,網膜色素変性なども同様の眼内レンズ脱臼をきたす.摘出した水晶体.を観察すると,前者はZinn小帯の断裂がみられ,後者は水晶体.の層状分離がみられる.眼内レンズ(intraocularlens:IOL)の偏位,脱臼はよく知られた白内障手術の術後合併症である.術中に水晶体.の破損やZinn小帯の断裂が生じ,IOLを.内に固定できずに手術を終了し,術後早期にIOLが偏位する場合(.外固定IOL脱臼)は,その機序が明確で,ほとんどの症例で術後早期(3カ月以内)に偏位がみられるため,その対処も速やかに行うことができる.一方,術中に明らかな合併症を認めず,術後も問題なかったにもかかわらず.内に固定したままでIOLが偏位,脱臼をきたす場合(.内固定IOL脱臼)は,まれであると思われてきたが,近年これらの症例に遭遇する機会が増えている.前.切開法,超音波乳化吸引術の導入,IOLの改良など,低侵襲の白内障手術が普及し,白内障手術件数が増えたこともその要因となっているのであろう..内固定IOL脱臼は硝子体腔内に落下する頻度も高く,重篤な晩期合併症となる..内固定IOL脱臼の発生頻度は,報告によりさまざまであるが,おおよそ10年で0.1.1%である1,2).落屑症候群の割合が高くなるほどその頻度も高くなる..内固定IOL脱臼に関連するとされる疾患・状態として,落屑症候群以外に外傷の既往,硝子体手術の既往,ぶどう膜炎,高度近視,網膜色素変性などがある3,4).自験例20眼の検討では,.内固定IOL脱臼の発症時平均年齢は71.2歳で,関連因子として40%に落屑症候群,15%に高度近視,外傷の既往,硝子体手術の既往がそれぞれ10%に,網膜色素変性およびぶどう膜炎の既往も各1眼にみられた.初回白内障手術からIOL脱臼までの期間は平均9.2年であった.使用されたIOLの材質に偏りはなかった5).摘出した標本を走査電子顕微鏡にて観察すると,落屑症候群を伴うか否かで所見が大きく異なることがわかる.落屑症候群を伴う.内固定IOL脱臼例(図1)では,水晶体.表面に無数の線維状の物質(落屑物質)の沈着がみられる.落屑物質はZinn小帯にも数珠状に付着し(63)0910-1810/12/\100/頁/JCOPYている.Zinn小帯は赤道部付近で全周にわたり断裂している.前.の切開縁は線維組織に覆われ,高度の前.収縮がみられる(図2).落屑物質の沈着が機械的に,あるいは蛋白分解酵素作用によりZinn小帯を断裂させると考えられており,走査電子顕微鏡所見からも,高度の前.収縮とあいまって,Zinn小帯が進行性かつ全周性に断裂し,.内固定IOL脱臼を生じていることがわかる5).図1.内固定IOL脱臼の実体顕微鏡所見落屑症候群があり水晶体.に無数のZinn小帯の付着がみられる.図2.内固定IOL脱臼の走査電子顕微鏡所見水晶体.およびZinn小帯に無数の落屑物質の付着がみられる.あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012351 ←図3.内固定IOL脱臼の実体顕微鏡所見危険因子となる関連疾患はなく,水晶体.表面は平滑である.→図4図3と同標本の走査電子顕微鏡所見水晶体.表面はZinn小帯付着部で層状分離がみられる.一方,落屑症候群のない症例の.内固定IOL脱臼例(図3)では,摘出した水晶体.表面はきわめて平滑で,Zinn小帯の付着はほとんどみられないか,あってもわずかである.詳細に観察すると,Zinn小帯が付着していた部分は水晶体.の表層部が層状に分離し,下層の部分が露出している.分離した表層の水晶体.の縁はロールしている(図4).落屑症候群例に高頻度にみられた高度の前.収縮は3割程度で観察されるのみで,いずれも軽度である5).Zinn小帯は水晶体.との接着部位に.周囲膜(zonularlamella)とよばれる水晶体.最外層を赤道部付近で形成していることが知られている.したがって,落屑症候群のない症例の.内固定IOL脱臼例では,.周囲膜とその下層の水晶体.固有層の間の分離が生じていることが示唆される..周囲膜の分離がなぜ起こるのかは不明であるが,外傷による機械的.離,炎症や加齢による.周囲膜の脆弱化が関与しているであろうことは予想できる.これらの所見を総合すると,.内固定IOL脱臼は,Zinn小帯の進行性の断裂(zonularweakness)と,.周囲膜の脆弱化による.離(capsularweakness)があるといえよう.水晶体.の形状維持を目的に水晶体.拡張リング(capsulartensionring:CTR)を用いる場合がある.しかしながら,CTR挿入後に.内固定IOL脱臼をきたす例も多数報告されており,十分とはいえない.水晶体.の安定化を目的としたIOLのデザインも再考する必要性を感じる..内固定IOL脱臼までの平均期間が9年以上であることは,今後もますます増える合併症であることが想像できる.白内障手術は完成された術式と考えられてはいるが,今後もさらなる研究を要する領域であると思われる.文献1)MonestamEI:Incidenceofdislocationofintraocularlensesandpseudophakodonesis10yearsaftercataractsurgery.Ophthalmology116:2315-2320,20092)PueringerSL,HodgeDO,ErieJC:Riskoflateintraocularlensdislocationaftercataractsurgery,1980-2009:apop-ulation-basedstudy.AmJOphthalmol152:618-623,20113)DavisD,BrubakerJ,EspandarLetal:Latein-the-bagspontaneousintraocularlensdislocation:evaluationof86consecutivecases.Ophthalmology116:664-670,20094)HayashiK,HirataA,HayashiH:Possiblepredisposingfactorsforin-the-bagandout-of-the-bagintraocularlensdislocationandoutcomesofintraocularlensexchangesurgery.Ophthalmology114:969-975,20075)HirataA,OkinamiS,HayashiK:Occurrenceofcapsulardelaminationinthedislocatedin-the-bagintraocularlens.GraefesArchClinExpOphthalmol249:1409-1415,2011

コンタクトレンズ:コンタクトレンズ基礎講座【ハードコンタクトレンズ編】 ハードコンタクトレンズのベースカーブとレンズサイズについて考える(2)

2012年3月31日 土曜日

コンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純コンタクトレンズ基礎講座【ハードコンタクトレンズ編】333.ハードコンタクトレンズのベースカーブとレンズサイズについて考える(2)植田喜一ウエダ眼科/山口大学大学院医学系研究科眼科学ードコンタクトレンズ(HCL)のベースカーブハ(BC)とレンズサイズは,角膜曲率半径だけでなく角膜全体の形状や角膜径,さらに瞼裂幅,眼瞼の形状などによって決定するが,実際にはトライアルレンズを装用してフィッティングを判定する.このフィッティングの判定はレンズの静止位置と動き,フルオレセインパターン,瞬目に伴うレンズ下の涙液交換,装用感の良否で行う.●角膜とBCなるべく角膜形状に適合したBCを選定するが,角膜形状は単一な曲率ではなく,周辺部にいくにつれてしだいにフラットになっている.さらに,強主経線と弱主経線では角膜曲率に差があることが多く,特に強度の乱視ではその差が著しい.しかし,HCLを角膜にフィットする際の基本的な考え方は,レンズをなるべく角膜の広い範囲にパラレルに接触するということであり,フルオレセインで染色してベストフィットを求めなければならない.●眼瞼とレンズサイズHCLが角膜表面に静止できるのは,レンズのエッジ図1眼瞼と角膜の位置関係a:上眼瞼が角膜上部を覆っている場合は上眼瞼によるレンズの保持が期待できる.b:上眼瞼が角膜上部を覆っていない場合は上眼瞼によるレンズの保持が期待できない.レンズサイズ8.5mmレンズサイズ8.8mmレンズサイズ9.1mmレンズサイズ8.5mmレンズサイズ8.8mmレンズサイズ9.1mm図2瞼裂幅とレンズサイズa:瞼裂幅の狭い症例ではレンズサイズの違いによりセンタリングが変化することは少ない.b:瞼裂幅の広い症例では大きなレンズサイズを選定しないと良好なセンタリングが得られないことが多い.(61)あたらしい眼科Vol.29,No.3,20123490910-1810/12/\100/頁/JCOPY SAG大レンズサイズ小レンズサイズ大(BCは同じ)図3レンズサイズとSAGレンズサイズを大きくするとSAGが大きくなる.SAG小(BCは同じ)レンズサイズ小レンズサイズ大SAG小SAG大図4角膜とレンズサイズレンズサイズを大きくするとSAGが大きくなって,角膜上でHCLが安定しやすくなる.のメニスカスによる陰圧の働きと,角膜表面が周辺部にいくに従ってフラットになっている形状によるが,上眼瞼がレンズをくわえ込むようにフィットさせるとレンズの安定性は増す.したがって,眼瞼の形状については上眼瞼が角膜上部を覆っているような場合は,上眼瞼による保持が期待できるのでHCLの処方は可能であるが,上眼瞼が角膜上部を覆っていない場合はHCLの処方はむずかしい(図1).しかしながら,上眼瞼による保持を期待せずにレンズサイズを小さくして,ややスティープなBCのHCLを角膜中央にフィットさせるという方法もある.一般的には,瞼裂幅の広い症例には大きなレンズサイズを選定しないと良好なセンタリングが得られないことが多い.逆に,瞼裂幅の狭い症例ではレンズサイズの違いによりセンタリングが変化することは少ない(図2)が,レンズサイズが大きいと異物感を訴えることがあ350あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012SAG小BC大(レンズサイズは同じ)BC小レンズサイズSAG大図5BCとSAGBCを小さくする(スティープにする)とSAGが大きくなる.る.上眼瞼が張り出している症例や眼瞼圧の強い症例ではレンズサイズを大きくし,下眼瞼が張り出している症例や眼瞼圧の弱い症例ではレンズサイズを小さくするとよい.●BCとレンズサイズHCLを処方する際に,HCLの断面の弧の深さ(sagittaldepth:SAG)がどうなるかを考えるとよい.SAGが大きいHCLは角膜上で安定しやすい.これは深い帽子が浅いものに比べて,かぶったときに風で帽子が飛ばされにくいことを考えてみると理解しやすい.BCが同じである場合,レンズサイズを大きくするとSAGは大きくなる(図3,4).レンズサイズが同じである場合,BCを小さくする(スティープにする)とSAGは大きくなる(図5).スティープなBCを選択するとHCLの動きがタイトになることはよく経験することである.したがって,レンズサイズを変更する場合には症例によっては選択するBCの値を変える必要がある.SAGとの関係から大きなレンズサイズを選定した場合はややフラットめのBCを,小さなレンズサイズを選定した場合はややスティープめのBCを選択したほうがよい.理論上で適切なBCやレンズサイズを選択しても,実際にうまくフィットしない場合もあるので,tryanderrorを繰り返して適切なものを決定することが大切である.(62)

写真:パンクタルプラグ®Fとその挿入上の注意点

2012年3月31日 土曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦334.パンクタルプラグRFとその挿入上の木村健一*1,2横井則彦*2*1公立山城病院眼科注意点*2京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学図2図1のシェーマ矢印はパンクタルプラグRF.図1上・下涙点に挿入されたパンクタルプラグRF図3図1と同一症例(涙点焼灼後の再疎通例)のプラグ挿入前の上・下涙点涙管洗浄用の二段針が入るサイズ(0.4mm径).図4パンクタルプラグRFa:挿入前.b:インサーターによる鍔の支持が解除された直後の状態.c:インサーターから開放された状態.d:従来のパンクタルプラグR(SSサイズ).パンクタルプラグRFは,伸展した状態でインサーターに固定されており(a),挿入後に先端部が1.1mm径まで横に広がる(c)仕組みになっている.(59)あたらしい眼科Vol.29,No.3,20123470910-1810/12/\100/頁/JCOPY 涙点プラグ挿入術は,重症の涙液減少型ドライアイの治療にきわめて有効である.わが国で使用されているシリコーン製の涙点プラグには,EagleVision社製のフレックスプラグR,スーパーフレックスプラグR,スーパーイーグルプラグR,および,FCI社製のパンクタルプラグR(PP)があるが,2010年5月からはFCI社製のパンクタルプラグRF(PPF)が新たに使用可能となった(図1,4).PPは脱落しにくいという利点があるが,肉芽を生じやすいという欠点があった(ただし,肉芽は完全に涙小管を閉塞するとプラグが不要になるため必ずしも欠点とはいえない側面もある)1,2).PPFは,その特徴的な形状(図4)から,脱落しにくいという従来のPPの利点を活かしつつ,新たに以下の4つの利点が期待できる涙点プラグと考えられる.まず,PPで欠点となることがあった肉芽が生じにくい可能性があげられる.PPではプラグの頭部の最大径の部分がシャープな角になっている(図4d)ため,涙小管壁を刺激して肉芽が生じやすくなると考えられる2)が,PPFではPPのようなシャープさがないため,涙小管壁に対する刺激が緩和されて肉芽が生じにくい可能性がある.つぎに,異物感の軽減が期待される.PPは鍔に傾斜をもたせている(図4d)ため,一般に涙点にフィットしやすいが,フィットしにくい形状の涙点の場合や肉芽によりプラグが突出してきた場合には,この利点があだになり,鍔によって眼表面が刺激されることがある3).しかし,PPFはPPに比べ鍔の傾斜がなく,小さくデザインされているため異物感が少ない可能性がある.さらに,PPFは涙点サイズが0.4mm径あれば挿入が可能である.涙点プラグの挿入時には,涙点ゲージを使用して涙点の内径を計測するが,涙点ゲージ径は0.5mmのものが最小である.PPFは涙管洗浄用の二段針(0.4mm径)が入れば挿入が可能である.最後に,PPFはPPと比べて挿入が容易で,かつ,迷入の心配がない.PPはプラグの頭部の最先端が平坦(図4d)であるため,たとえ眼瞼を外側に引いても挿入がむずかしい場合があるが,PPFはプラグの先端部がペンシル状に尖っている(図4a)ため,挿入しやすい.さらにPPFはプラグの鍔がインサーターに抱え込まれる形で保持されているため,プラグが涙小管に迷入することがない.一方で,挿入上の注意点として,以下の2つがあげられる.まず,すでに涙小管内に肉芽を生じている場合である.肉芽の手前で先端部が膨らむと肉芽を越すことができず,挿入できないことがある3).あらかじめ涙管洗浄用の二段針を涙小管に挿入し,二段針の先を動かして(筆者らはこの操作をプロービングとよんでいる)肉芽の状態をよく探索しておくことが大切である.また,PPFはインサーターから開放されると頭部の最大径の部分が横に広がり,インサーターに再び装着できない.そのため,挿入が完了していない状態でリリースボタンを押してしまうと再挿入できなくなる.PPFは使用可能となってから2年近く経過し,各施設での臨床成績の報告が待たれるが,特徴的な形状を生かして使用すれば使いやすい涙点プラグであると考えられる.文献1)西井正和,横井則彦,小室青ほか:涙点プラグの違いによる脱落率の検討.日眼会誌107:322-325,20032)那須直子,横井則彦,西井正和ほか:新しい涙点プラグ(スーパーフレックスプラグR)と従来のプラグの脱落率と合併症の検討.日眼会誌112:601-606,20083)横井則彦:涙点プラグの効果的な使い方.眼科53:15891598,2011348あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012(00)

時の人 川島 秀俊 先生

2012年3月31日 土曜日

人人の時自治医科大学眼科学・教授かわしまひでとし川島秀俊先生昨年(2011年)5月,自治医科大学眼科学教室の第4代の主任教授として川島秀俊先生が就任された.川島先生の経歴を振り返ると,先生は栃木市出身で,昭和58年東京大学医学部を卒業後,同大附属病院にて眼科医としてのスタートを切り,一般眼科の修練を積むとともに,当時の増田寛次郎教授や望月學助教授の指導を受け,眼免疫の初歩を学ばれた.そして,当時FK506とよばれていたタクロリムス(商品名プログラフ)を扱った免疫学的検討により学位を取得した後米国ミネソタ大学へ留学,グレガーソン教授のもとで3年間眼免疫の研究を続け,特に角膜内皮の持つ免疫学的制御機能について研究された.この間,一時はECFMGcertificationの資格を活かしそのままレジデントとして米国にとどまることも考えられたが,先生の奥様がアメリカ人で,留学期間の3年の間,二人のお嬢さんが日本語をまったく話さなくなったことを心配し帰国することに進路変更された.帰国後は,FEVR(家族性滲出性硝子体網膜症),眼内レンズ,レーザーセルフレアメーターに関して大きな業績を残しておられた自治医科大学の(故)清水昊幸教授のもとで講師として奉職,前眼部の免疫学的特殊性の解明をテーマに研究を続けられた.その後東大病院分院に戻り,さらにその閉院にも携わられた.その間,ベーチェット病に対するインフリキシマブ(商品名レミケード)治療の臨床治験に参加,ベーチェット病の臨床研究を続けられ,さらにその後のさいたま赤十字病院での8年間では小島孚允副院長のめざす“強い”地域医療の実現に努められた.*自治医科大学の目指すところの原点はさいたま赤十字病院のモットーと非常に似通っている.「強い」地域医療の担い手である若い医師を育て,そしてハイレベルな医療を提供することである.「強い」地域医療とは,専門分野のみに固執することなく,幅広い疾患に対処し,346あたらしい眼科Vol.29,No.3,2012近隣のフロントラインで診療している先生方および患者のニーズに対応するというものである.そうしたニーズに応えるべく,同教室では,清水教授の後を引き継がれた2代目水流忠彦教授は角膜部門の,3代目茨木信博教授は白内障分野の権威であり,それぞれ多大な足跡を残された.そして現在,先生は,主として眼内炎(ぶどう膜炎)およびその合併症に対しての内科的・外科的治療に当たっておられるが,他に,網膜硝子体疾患を数多く手がけられている全国的にも高名な佐藤幸裕教授,病理に関して造詣の深い角膜担当の小幡博人准教授,患者数は全国トップクラスで信頼も厚い弱視斜視担当の牧野伸二講師,ドライビングシミュレータを用いた緑内障患者の自動車運転能力の研究に関して高い評価を得ている緑内障担当の国松志保講師,などなど充実したスタッフを揃えておられる.いま地方大学はどこも医局員不足に悩まされているが,同教室も例外ではない.しかし,そうした状況のなかにあって医局員が一丸となって「強い」地域医療の実現に向けて邁進しているとのこと.栃木県出身の先生にとって,講師を務めて以来故郷への二度目の赴任となった今回の教授就任は,お国ことばを通して患者さんの言わんとする心底を十分に汲み取り,そのうえでの地域医療の実践につながることにもなり,まさにうってつけと言えそうである.*最後に,先生の趣味・特技をお聞きしたところ,スポーツは中学で弓道(初段),高校で柔道(二段),大学以降はテニス,そして今でも「ウィークエンドプレーヤーの星」となるのが目標とのこと.また,映画鑑賞(洋画が多い),英会話(英検1級,TOEFL-PBT600点だが家庭内ではbyfar一番下手),なども楽しまれる.そして最近では,読書の楽しみに遅ればせながら開眼したとのことである.(58)0910-1810/12/\100/頁/JCOPY