0910-1810/10/\100/頁/JCOPY間となるため,弱視の診断は正確にかつ迅速に行う.また,感受性期間は弱視治療に反応する時期でもあるため,至急弱視治療が開始されなければならず,特に先天白内障のうち,自然瞳孔で屈折検査が困難な完全型や核性白内障では,形態覚遮断弱視の発症予防・治療のためには片眼性では生後6週,両眼性では生後3カ月以内の手術と術後の屈折矯正が視力予後を左右する5).II両眼視の感受性期間両眼視には同時視,融像,立体視の3つがあるが,同時視は出生時にすでに存在し,融像は生後11週頃,立体視も生後12週頃から出現して発達していく3,6).しかし,両眼視の感受性期間は弱視の感受性期間より早期に終了してしまうため,両眼視治療は弱視治療より困難なことが多い.1.両眼視の視覚処理ヒトの視覚処理機構には,網膜神経節細胞から視覚中枢に平行して到達する独立した2つの経路,外側膝状体小細胞系(parvocellularsystem:P系)と大細胞系(magnocellularsystem:M系)に大別される.P系によって処理される視機能は,両眼性の60.未満の正常静的立体視と単眼性の形態覚,色覚であり,M系により処理される視機能のうち両眼性機能には融像,動的立体視,大まかな静的立体視が含まれる.M系の視覚反応は生直後より明らかに存在し,生後2カ月から4カ月はじめに弱視(amblyopia)とは,粟屋は「一眼または両眼に斜視や屈折異常があったり,形態覚の遮断が原因で生じた視機能の低下」と定義し1),vonNoordenも“adecreaseofvisualacuityinoneeyewhencausedbyabnormalbinocularinteractionoroccurringinoneorbotheyesasaresultofpatternvisiondeprivationduringvisualimmaturity,forwhichnocausecanbedetectedduringthephysicalexaminationoftheeye(s)andwhichinappropriatecasesisreversiblebytherapeuticmeasures”と述べている2).小児の視力は,生後9~10週目前後より急速に発達しはじめ,両眼視の発達も1~2週遅れて認められるようになる3)が,このような視機能の萌芽期以後に弱視起因が発症すると弱視ばかりでなく両眼視異常も合併するため,弱視起因の早期診断,早期治療の原則は不可欠である.I弱視の感受性期間視覚の感受性期間(sensitiveperiod)は,弱視を発症する可能性のある時期であり,弱視の危険期間(criticalperiod)ともよばれる.粟屋によると,生後1カ月までの感受性は低く,次第に高くなって1歳6カ月頃が最も高く,その後徐々に減衰して8歳までは残存する,と説明されている4).しかし,感受性期間の萌芽期に先天白内障などの形態覚遮断(formvisiondeprivation)起因が存在すると弱視発症の危険期間はより早期,より短期(13)1645*TeijiYagasaki:眼科やがさき医院〔別刷請求先〕矢ヶ.悌司:〒494-0001一宮市開明字郷中62-6眼科やがさき医院特集●弱視斜視診療のトレンドあたらしい眼科27(12):1645.1651,2010弱視と両眼視機能AmblyopiaandBinocularity矢ヶ.悌司*1646あたらしい眼科Vol.27,No.12,2010(14)においては,正常静的立体視のみならず大まかな静的立体視も障害され,2歳以降に内斜視手術を行っても視覚中枢に両眼視細胞は発達していないため立体視の獲得は非常に困難となる15,16).それに対し調節内斜視では,眼位異常の発症時期が立体視発達へ最も強く影響するが,最も発症しやすい1歳8カ月頃は視覚中枢における両眼視細胞の発達萌芽時期以降であるため,大まかな静的立体視のみならず60.より良好な正常静的立体視を獲得するものも認められる.III弱視の種類とその両眼視1.斜視弱視(strabismicamblyopia)視力発達の感受性期間内に一眼に斜視が固定すると,斜視眼への形態覚刺激が固視眼との相互作用によって抑制されて視力発達が阻害される弱視である.斜視のうち最も多く弱視を合併するものは生後6カ月以内の感受性が強い時期に発症する先天内斜視(本態性乳児内斜視,乳児内斜視)である.1歳半~3歳頃に発症のピークがある調節内斜視では弱視の合併は少ない.外斜視や上斜筋麻痺などの上下斜視に合併することも少ない.図3はサルに人為的内斜視を作製し,視覚中枢における視刺激に反応するニューロンの分布を示したものである17).両端の第1と第7反応ニューロンはほとんど単眼刺激にしか反応しないニューロンであり,第4反応ニューロンはほとんど両眼刺激にしか反応しないニューロンである.内斜視では両眼刺激反応ニューロンはほぼ認められないが,弱視を合併した内斜視では第1または第7反応ニューロンのいずれかが認められないため,両眼視はきわめて不良になる.臨床的には固視異常は斜視弱視の特徴の頃より急速に発達して生後6カ月頃には最大の視覚反応を示しながらほぼ成人の反応レベルに到達する.P系の視覚反応は生直後にはほとんどないものの,M系に遅れて発達し,1歳の終わり頃までに徐々に増大して,その後もP系機能の発達は継続し,4歳過ぎには成人の反応レベルまでに到達する7~9).2.融像の感受性期間両眼視のうち生直後にすでに存在している機能は同時視のみであり,融像は生後11週頃より急速に発達して1歳頃までにはほぼ成人レベルに到達する(図1)6).Ingは生後2歳から3歳の間に10Δ以内に眼位を矯正した乳児内斜視症例では12.5%に融像を認めたが,3歳以後では術後に融像を示した症例はなかったと報告している10).3歳以降に乳児内斜視を手術矯正した諸家の報告でも,約80%には網膜対応は証明されるものの,融像と立体視の獲得はむずかしいことより,融像の感受性期間は遅くとも3歳頃には終了していると推定される11,12).3.立体視の感受性期間Fawcettらは,乳児内斜視と調節内斜視の発症時期と立体視の関係について検討し,立体視の感受性期間は生後すぐに始まり,生後3.5カ月に急峻なピークを示した後急速に減退するが,少なくとも生後4.6歳まで続くと報告している(図2)13,14).しかし,立体視はP系機能である60.未満(少なくとも67.)の静的立体視とM系機能であるそれ以上の視差の立体視に大別されるが,P系機能はM系機能の発達に続いて発生してくるため,生後6カ月以内という立体視萌芽期に発症する乳児内斜視0カ月1008060402001カ月2カ月3カ月4カ月乳児数(%)5カ月6カ月7カ月図1融像の発達(文献6より改変)600200100700カ月2カ月立体視()4カ月6カ月8カ月10カ月12カ月14カ月16カ月18カ月nil1,00010010図2立体視の発達(文献14より改変)(15)あたらしい眼科Vol.27,No.12,20101647遮断起因の除去,すなわち白内障手術時期と両眼性か片眼性かである.片眼性症例において良好な視力予後を得るには生後6~8週までに手術がなされ,屈折管理と同時に健眼遮閉を行う必要がある20~22).以前は視力予後のみを考慮して覚醒時間の80~100%の遮閉時間が必要一つであり,1960年代では偏心固視を伴う割合は10~40%と高頻度であった.しかし,乳幼児視覚健診による早期発見・早期予防によって斜視弱視の発症頻度も数%までに低下し,周辺固視や固視欠損などの重症の固視異常はほとんどみられなくなってきている.2.形態覚遮断弱視(formvisiondeprivationamblyopia)視力発達の感受性期間内に,網膜中心窩への形態覚刺激が一定期間遮断されて生じる片眼性または両眼性弱視である.形態覚遮断の原因として,先天白内障,生後早期の外傷性白内障や角膜混濁,硝子体出血や前房出血,眼瞼完全閉鎖をきたすような眼瞼血管腫や眼瞼下垂などがある.弱視の程度は形態覚遮断の発生した時期や期間によって異なるが,両眼視への影響は形態覚遮断が片眼性か両眼性によってやや異なる.図4は子ネコの片眼を遮閉して作製した片眼性形態覚遮断弱視モデルであるが,視覚中枢では片眼刺激にしか反応しないニューロンのみであり,両眼刺激反応ニューロンはまったく認められない18).それに対し図5はサルの両眼を一定期間遮閉して作製した両眼性形態覚遮断弱視モデルであるが,単眼刺激にしか反応しないニューロンばかりでなく,わずかながら両眼視刺激に反応するニューロンも認められ,両眼性形態覚遮断弱視の両眼視の予後は決して悪いものではない19).臨床的には,先天白内障は形態覚遮断弱視の代表的疾患であるが,両眼視の予後に最も関連することは形態覚1234反応ニューロンの種類反応ニューロンの数(%)567454035302520151050図3サルの視覚中枢における両眼視および片眼視刺激反応ニューロン(内斜視)(文献17より改変)1234反応ニューロンの種類反応ニューロンの数(%)567454035302520151050図4子ネコの視覚中枢における両眼視および片眼視刺激反応ニューロン(片眼形態覚遮断)(文献18より改変)1234反応ニューロンの種類反応ニューロンの数(%)567454035302520151050図5サルの視覚中枢における両眼視および片眼視刺激反応ニューロン(両眼形態覚遮断)(文献19より改変)表1片眼性先天白内障における遮閉時間月齢遮閉時間(/日)0カ月01カ月12カ月23カ月34カ月45カ月56.11カ月覚醒時間の50%まで12カ月以降覚醒時間の80%まで月齢に応じて遮閉時間を増やして両眼視環境を維持する.(文献20より)1648あたらしい眼科Vol.27,No.12,2010(16)弱視を発症しうる屈折度は,+3.00D以上の遠視,+2.25D以上の遠視および1.00D以上の乱視,2.00D以上の混合乱視である..10.00Dを超える強度近視でも未矯正状態の明視域は眼前数cm以内となるためで,頻度は少ないものの視性刺激不足より屈折異常弱視となりうる32).屈折異常弱視の程度は軽度であり,完全矯正眼鏡装用によって視力予後は良好である.しかし,両眼視は決して良好ではなく,同時視や融像はほぼ認められるものの,Friedmanら33),Klimekら34)によると立体視が得られても周辺立体視が限界であると述べている.大北らも6D以上の高度遠視に起因する屈折異常弱視13症例の予後について報告しているが,治療後全例で視力1.0を獲得したものの,立体視は平均221.と中心立体視の獲得はむずかしい35).4.不同視弱視(anisometropicamblyopia)両眼の屈折値にある程度以上の差,特に遠視の不同視が存在すると,遠視が軽度のほうの眼では調節により屈折異常は代償されて黄斑部中心窩には鮮明な網膜像が結像される.しかし,屈折値の強いほうの眼の黄斑部中心窩では網膜像のぼけが生じているため,その眼側の視性刺激が不足して片眼性弱視が発症する.1歳半児視覚健診や3歳児視覚健診の際に発見されることがほとんどである.弱視を発症しうる不同視度は,+2.00D以上の遠視,球面等価度で+1.50D以上の遠視性乱視,球面等価度で+2.50D以上の混合乱視である..5.00Dを超える近視性不同視でも未矯正状態の明視域は眼前20cm以内となるためで,頻度は少ないものの視性刺激不足より不同視弱視となりうる.また,両眼とも+2.00Dの遠視の場合には+1.00Dの不同視でも弱視になりうる32).2001年にWeakley36)も,1.00D以上の遠視性不同視,2.00D以上の近視性不同視,1.50D以上の乱視性不同視が,弱視と両眼視障害の両面からみた発症起因となる屈折度であると述べている.弱視の程度と不同視度の間には強い相関があることはよく知られているが,両眼視の程度と不同視度の間にも強い関連がある.これらの所見は,Brooksら37)が正常成人に人為的に不同視を作製して測定した立体視の低下と所見は一致しており,不同視によと考えられていたが,このような集中(intensive)遮閉治療は視力獲得には高い効果が期待されるものの,両眼視環境はほとんど維持できないため両眼視獲得には不利であり,斜視の発症起因となる可能性も高い.しかし,術後早期の両眼視環境の維持が片眼性先天白内障における両眼視の予後を向上させうるとの報告が数多くなされ23~29),現在では表1に示すように,生後6カ月までは月齢に応じた遮閉時間,生後6カ月から1歳までは1日の覚醒時間の50%まで,1歳以降は視力経過とともに覚醒時間の80%までに加減する累進(progressive)遮閉時間を採用して,立体視を含む両眼視の獲得を目指すようになっている20).両眼性先天白内障においても生後6~8週までに手術がなされれば視力予後は比較的良好である5)が,Birchらは手術時期と視力予後の関係について検討し,手術時期生後1週の視力予後0.7前後から手術時期生後14週の視力予後0.25まで直線的に低下するが,手術時期生後14週を超えると視力予後は0.25から横ばいになり,良好な視力予後は期待できないと報告している30).Lambertらも生後10週までの手術によって0.5以上の視力が期待できるが,生後10週を超えると視力予後は0.2以下と不良になると報告している31).さらにこれらの症例の67%で術前に眼振が合併しており,術前の眼振は視力予後不良の要因になるとも述べている.両眼性先天白内障における両眼視の予後については,片眼性症例よりやや良好であり,生後1歳以内の手術でも同時視や融像の獲得はほぼ半数に認められる.しかし,立体視の獲得はむずかしく今後も大きな課題として残されている.3歳以下,特に1歳半までの感受性期間は決して低くなっておらず,外傷や手術後の眼帯による1週間以下の短期間の遮閉でも形態覚遮断弱視は発症しうることに注意する1).3.屈折異常弱視(ametropicorisometropicamblyopia)両眼にある程度以上の遠視,乱視,近視の屈折異常に起因する黄斑部中心窩への網膜像のぼけ(defocus)によって視性刺激が不足となり発症する両眼性弱視である.(17)あたらしい眼科Vol.27,No.12,20101649眼鏡矯正装用のみでなく健眼遮閉を早期から併用すべき症例を見分けることができる39).完全眼鏡矯正装用に追加すべき治療法には,アイパッチなどの遮閉法のほかにアトロピン点眼法があるが,立体視の予後に関して斜視弱視では両者間に差はないものの,不同視弱視では1日2時間の遮閉法のほうが立体視予後に有意に良好であったとの報告40)もみられ,遮閉することによって両眼視環境を障害することが立体視予後に不利に働くことはない.5.微小斜視弱視(microtropicamblyopia)微小斜視(microtropia)とは,8~10Δ以内のごくわずかな顕性の斜視角を有し,正常ではないものの網膜対応異常(anomalousretinalcorrespondence:ARC)を基盤にした両眼視を維持している.通常の遮閉試験では斜視は証明されないものの,運動融像は正常であり,正常立体視を示すものはまれである.中心窩に抑制暗点を伴うものは弱視ばかりでなく立体視を認めないものも少なくない41,42).6.経線弱視(meridionalamblyopia)先天性の強度乱視を未矯正下に放置すると,経線方向の網膜像のぼけのためにその方向での視力発達が障害されて弱視が生じる.子ネコを用いた実験がその根拠であるが,実際の臨床上では弱経線弱視は広義の屈折異常弱視や不同視弱視として取り扱われ,両眼視の異常も屈折異常弱視や不同視弱視に近似している.IV不同視弱視と微小斜視弱視不同視弱視と微小斜視弱視の共通点の一つに不同視の存在が指摘されているが,不同視弱視症例のなかにも抑制暗点を有するものもあり,両者の鑑別診断を行うのに苦慮することも少なくない.しかし,渡辺は微小斜視におけるわずかな眼位ずれも斜視であって,微小斜視の感覚異常は斜視である運動異常の結果であると考え,不同視弱視と微小斜視弱視の鑑別を注意深く行って明確にするよう注意している43).しかし,微小斜視の感覚異常は斜視の感覚異常が複視や混乱視を避けるために生じた運動異常への適応現象とは大きく異なり,現在では両中心る黄斑抑制の程度に相関して両眼視も障害されると考えられている.弱視治療によって視力と同時に立体視も向上してくる.LeeとIsenbergは,不同視弱視26症例の立体視は,治療前は平均値837.7.から治療後の平均値65.8.まで有意に改善したと報告している38).筆者らも39症例の不同視症例の両眼視について報告したが,治療前には60.未満の中心立体視を示したものは2例しかなく,21例は周辺立体視を示すのみで,立体視を示さなかった症例は8例も存在した.治療後には25例で中心立体視を認め,残りの14例全例が周辺立体視を獲得しており,有意な改善を示している(表2).しかし,偏光4ドット検査器(日本点眼薬研究所)を用いて抑制暗点を測定し,治療前の抑制暗点の有無によって症例を分類して比較する(表3)と,視力1.0を獲得するまでの時間と治療後の中心立体視獲得の2項目で治療前抑制暗点の存在が有意に関連しており,治療前の抑制暗点の存在を検査することが治療予後を予想することに役立ち,完全表2不同視弱視の立体視立体視の程度治療前治療後Grade1(<60.)2例(5.1%)25例(64.1%)Grade2(60.≦,<200.)8例(20.5%)11例(28.2%)Grade3(200.≦,<800.)10例(25.6%)2例(5.1%)Grade4(800.≦)3例(7.7%)1例(2.6%)立体視(.)8例(20.5%)0例(0.0%)測定不能8例(20.5%)0例(0.0%)治療によって立体視は向上するが,中心立体視の獲得は約64%にとどまっている.(文献39より改変)表3抑制暗点(-)群(23例)と抑制暗点(+)群(16例)の比較抑制暗点(.)群抑制暗点(+)群有意差初診時年齢4.71歳±1.82歳4.50歳±1.74歳NS視力(弱視眼)0.360.29NS視力(健眼)0.980.96NS屈折度(弱視眼)+4.80D±1.46D+5.48D±2.44DNS不同視度3.13D±1.15D3.81D±1.50DNS不同視減少量0.93D±1.04D0.73D±1.33DNS観察期間2.81年±1.99年3.18±1.99年NS視力1.0までの期間15.2カ月±19.5カ月26.3カ月±19.5カ月p<0.05立体視(<60.)20例(87.0%)5例(31.3%)p<0.01視力1.0を獲得するまでの時間と治療後の中心立体視獲得に有意差が認められる.(文献39より改変)1650あたらしい眼科Vol.27,No.12,2010(18)行わなければならない.文献1)粟屋忍:形態覚遮断弱視.日眼会誌91:519-544,19872)vonNoordenGK:Examinationofthepatient─IV:Amblyopia.InvonNoordenGKandCamposEC,editors.BinocularVisionandOcularMotility:Theoryandmanagementofstrabismus,6thed.p246-297,CVMosby,StLouis,Missouri,20023)BirchE:Stereopsisininfantsanditsdevelopmentalrelationshiptovisualacuity.In:SimonsK,editor.EarlyVisualDevelopment:NormalandAbnormal.p224-236,OxfordUniversityPress,NewYork,19914)粟屋忍:弱視総論原因別診断の要点.眼科学大系6A,弱視・斜視.粟屋忍ほか編,p177-178,中山書店,19945)矢ヶ.悌司:形態覚遮断弱視.眼科37:1059-1067,19956)BirchEE,ShimojoS,HeldR:Preferential-lookingassessmentoffusionandstereopsisininfantsaged1-6months.InvestOphthalmolVisSci26:366-370,19857)BassiCJ,LehmkuhleS:Clinicalimplicationsofparallelvisualpathways.JAmOptomAssoc61:98-110,19908)KontsevichLL,TylerCW:Relativecontributionsofsustainedandtransientpathwaystohumanstereoprocessing.VisionRes40:3245-3255,20009)HammarrengerB,LeporeF,LippeSetal:Magnocellularandparvocellulardevelopementalcourseininfantsduringthefirstyearoflife.DocOphthalmol107:225-233,200310)IngMR:Earlysurgicalalignmentforcongenitalesotropia.TransAmOphthalmolSoc79:625-652,198111)KushnerBJ,MortonGV:Postoperativebinocularityinadultswithlongstandingstrabismus.Ophthalmology99:316-319,199212)MurrayADE,OrpenJ,CalcuttC:Changesinthefunctionalbinocularstatusofolderchildrenandadultswithpreviouslyuntreatedinfantileesotropiafollowinglatesurgicalrealignment.JAAPOS11:125-130,200713)FawcettSL,WangYZ,BirchEE:Thecriticalperiodforsusceptibilityofhumanstereopsis.InvestOphthalmolVisSci46:521-525,200514)BirchEE,MoraleSE,JeffreyBGetal:Measurementofstereoacuityoutcomesatages1to24months:RandotRStereocards.JAAPOS9:31-36,200515)IngMR,OkinoLM:Outcomestudyofstereopsisinrelationtodurationofmisalignmentincongenitalesotropia.JAAPOS6:3-8,200216)矢ヶ.悌司:乳児内斜視の手術時期と両眼視機能.眼臨100:35-41,200617)CrawfordMLJ,vonNoordenGK:Opticallyinducedconcomitantstrabismusinmonkeys.InvestOphthalmolVisSci19:1105-1109,198018)WieselTN,Hu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