0910-1810/11/\100/頁/JCOPYはじめに視機能低下の病因は,細隙灯検査や眼底検査で一見して診断できるものから,種々の検査を行うことにより初めて診断にたどり着くものまでさまざまである.眼底所見が正常な患者の視機能低下の原因は,表1に示すように角膜,水晶体,硝子体,網膜,視神経,頭蓋内までのさまざまな異常から生じる可能性があり,筆者らはさまざまな検査によりその診断を行っている.このなかでも,眼底が一見正常に見える網膜・黄斑ジストロフィは診断に苦慮する疾患群といえる.本稿では,眼底正常な網膜疾患をどのように診断していくかを,検査のポイントと症例をあげながら述べる.I網膜疾患を疑う前に原因不明の視力低下との訴えで受診する患者を診察した際,網膜疾患を鑑別する前に他の網膜疾患以外を鑑別することが大切である.名古屋大学病院(以下,当院)でしばしば経験する疾患としては,若年者での円錐角膜,意外に多いのがスリットで見落としがちな核白内障である.前?下白内障や後?下白内障は診断に苦慮することは少ないが,核白内障は見落とされることもあるので注意したい.当院では,角膜不正乱視の影響や白内障の影響を他覚的に評価するために,ウェーブフロントアナライザーを用いて角膜形状測定および波面収差測定を行っている.視神経疾患,頭蓋内疾患は,最も網膜疾患との鑑別が必要となっ(71)975*ShinjiUeno:名古屋大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器外科学講座〔別刷請求先〕上野真治:〒466-0065名古屋市昭和区鶴舞町65名古屋大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器外科学講座特集●遺伝性網膜・黄斑ジストロフィアップデートあたらしい眼科28(7):975?984,2011正常と紛らわしい網膜・黄斑ジストロフィの診断DiagnosisofRetinalandMacularDystrophywithNormalFundus上野真治*表1眼底正常で原因不明の視力低下の鑑別1.前眼部中間透光体の異常円錐角膜白内障2.網膜の異常眼底正常な錐体ジストロフィMiyake病(occultmaculardystrophy)無色素性網膜色素変性眼底正常な杆体ジストロフィ眼底変化の認められない初期のStargardt病ビタミンA欠乏症AZOOR(acutezonaloccultouterretinopathy)Cancerassociatedretinopathy(CAR:腫瘍関連網膜症)Melanomaassociatedretinopathy(MAR:メラノーマ関連網膜症)自己免疫網膜症杆体一色覚先天性停在性夜盲3.視神経疾患球後視神経炎虚血性視神経症常染色体優性視神経萎縮4.頭蓋内疾患,耳鼻科疾患下垂体腫瘍などの脳腫瘍脳梗塞鼻性視神経症5.その他弱視心因性視力障害詐盲976あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011(72)し,黄斑部が障害されていなければ低下しない.すなわち視力が良い場合に網膜疾患が見落とされやすいことを考慮しておかなければいけない.視野検査は網膜障害の範囲を知るうえで重要な検査である.網膜変性が局所的な場合では,視野検査で障害部位を正確に知ることができる.障害が網膜全体にある場合は全体の感度低下をきたすが,Goldmann視野で評価する際,V-4のイソプターは比較的保たれていても,I-4のイソプターが狭くなることが多い.またGoldmann視野の検査条件では,錐体機能が正常な場合,杆体機能が障害されても異常が出にくい点にも注意しておきたい.色覚は錐体機能を評価する重要な検査法の一つであり,錐体ジストロフィや杆体一色覚などの疾患の鑑別に有用である.暗順応検査は杆体機能の経時変化を評価できるため,夜盲をきたす疾患の診断に有用である.3.造影検査,眼底自発蛍光蛍光眼底造影検査(FA)は網膜変性疾患では網膜色素上皮の萎縮をwindowdefectという形でとらえることが診断の根拠になるだけでなく,血流障害による網膜機能不全の鑑別にも役立つ.網脈絡膜の血流の充盈遅延や,網膜の無灌流領域がある糖尿病や動脈硬化性の全身疾患を有する患者において,眼動脈の閉塞などを鑑別できる.Stargardt病ではダークコロイドとよばれる脈絡膜の蛍光がブロックされる所見があり,初期のStargardt病にて眼底異常を示さない段階での診断に非常に有用となる(図1).最近,造影剤を使わない非侵襲的な検査として眼底自発蛍光を診断に利用する施設も増えてきている.この検査はおもに網膜色素上皮中のリポフスチンの発する蛍光の有無および多寡から網膜色素上皮の状態を推測するものである.通常の眼底検査ではとらえられない異常をとらえることができ,今後診断機器の一つとして有用なものになる可能性がある(図2).Adaptiveopticsを用いた視細胞形態の評価なども将来的に有用な検査となる可能性がある.4.OCTOCTは網膜・黄斑ジストロフィの診断には必須の検てくる.網膜疾患は診療機器の進歩により現在ではほとんどの場合において,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)やERG(網膜電図)などを組み合わせて異常を検出することができるため,これらの検査を用いた除外診断と,瞳孔反応,視野,限界フリッカ値などの一般検査,MRI(磁気共鳴画像)などの画像所見,VEP(視覚誘発電位)を用いた電気生理検査,Leber病や優性視神経萎縮などでは遺伝子検査などを活用して視神経疾患,頭蓋内疾患の診断をしている.II網膜疾患診断のための検査1.問診患者を診察する前に問診を行うが,この問診でさまざまな重要な情報を得ることができる.まず問診では,視機能障害が停在性か進行性か,またその進行が急激なのか緩徐なのかを確実に聴取する.急激な発症の場合はAZOOR(acutezonaloccultouterretinopathy)やCAR(cancer-associatedretinopathy)などの疾患を考慮しなくてはいけない.発症の好発年齢が疾患によって異なるので発症時期がいつ頃からかということも診断の一つのポイントになる.遺伝性網膜疾患を疑う場合は,家族歴の聴取が大切である.たとえばoccultmaculardystrophy(Miyake病)などでは,症状が軽微な患者が家系にいることもあり,疑わしい症例は検査に来ていただくことも必要である.停在性夜盲などの伴性劣性遺伝の多い疾患では,家族歴などを聴取することにより診断がつきやすくなる.また,杆体系の異常がある場合は夜盲を訴え,錐体系の異常の場合には昼盲や色覚の異常を訴えるので,これらは問診の際の重要なポイントである.糖尿病や膠原病などの全身疾患の有無は,視機能障害の原因が虚血や炎症などのよるものか鑑別となりうる.消化管の手術を受けた患者はビタミンAの欠乏に注意しなければいけない.また,ジギタリスやクロロキンなど投薬によっても網膜機能障害を生じるため,どのような投薬を受けているかも把握しておく必要がある.2.視力,視野,色覚,暗順応検査網膜疾患において,視力は黄斑部が障害されれば低下(73)あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011977できる.Occultmaculardystrophy(Miyake病)など,元来は眼底が正常で局所ERGでしか診断ができないといわれていた疾患も,最近のOCTではCOSTラインやIS/OSラインとよばれるレベルでほとんどの症例において異常が認められることが報告されている(図3B)1,2).中心窩のわずかな形態異常の場合,局所ERGでは異常をとらえられないが,OCTではとらえられるような疾患もみ査機器となっている.OCTの解像度が近年著しく改善され,わずかな構造の異常もとらえられるようになっている.図3AにZeiss社製のCirrusOCTで記録した正常者のOCT画像を示す.視細胞-色素上皮レベルでは,外境界膜(ELM),視細胞内節外節境界(IS/OS),錐体外節先端(coneoutersegmenttip:COST),網膜色素上皮(RPE)というような微細な構造物をとらえることがabcd図1Stargardt病の10歳,女児視力:右眼矯正0.6,左眼矯正0.4.a,b:眼底所見はわずかに黄斑部の反射の異常を認めるのみ.c,d:FAでは脈絡膜の蛍光がブロックされたdarkchoroidとよばれる所見がStargardt病の特徴である.また黄斑部には網膜色素上皮萎縮に伴うwindowdefectがみられる.ab図2視力低下にて受診した9歳,男児眼底自発蛍光検査にて黄斑部の異常がみられる.視力両眼矯正0.4.a:眼底はほぼ正常所見.b:萎縮した黄斑部に一致して,低蛍光領域の拡大と斑状の過蛍光がみられる.978あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011(74)方法の他に,より精密に杆体系と錐体系の機能を分離して評価する方法がある3).局所ERGを記録する方法にはおもに2つの方法があり,三宅らによって開発された局所ERG4)と米国のSutterら5)が開発した多局所ERGのシステムがある.ERGは眼底に異常のない網膜,黄斑ジストロフィの診断のカギとなる検査なのでここでは,普通のERG,国際臨床視覚電気生理学会(ISCEV)プロトコールに従った杆体と錐体系を分離したERG,局所ERGにつき少し詳述させていただく.a.暗順応下の強いフラッシュ刺激によるERG最も重要で診断的価値の高いERGで,トーメー社製のフラッシュERGが一般的で多くの施設で利用されている.眼科臨床に最もよく用いられる応答であり,通常ERGといえばこの反応のことを意味する場合が多い.暗順応後に,カメラのストロボのような強いフラッシュ刺激もしくはLED(発光ダイオード)内蔵電極の場合はコンタクトレンズ自体が発光し,網膜の最大電気反応を記録するERGである.これによって得られる反応は錐体系と杆体系の混合反応である.ただ,網膜は杆体系の細胞が錐体系の細胞の数よりも圧倒的に多いので,正常の反応の場合,ほとんどが杆体系の記録である.この方法で記録されるERGでは,陰性波のa波,それに続く陽性波のb波,それにb波の上行脚にみられる律動用小波,の3つの成分が評価の対象となる.a波の起源は視細胞,b波の起源はおもに双極細胞であり,律動様小波の起源は網膜内網状層付近(アマクリン細胞など)と考えられている.この反応には網膜神経節細胞の電位はほとんど含まれていないので,視神経疾患ではこのERGでの異常は基本的に認められない.網膜色素変性のように視細胞レベルで障害が著しい場合は,ERGが著しく減弱したり,すべての成分が消失して消失型となる.遺伝性網膜疾患で覚えておくべき波形は,a波の振幅は正常だがb波の振幅がa波より小さくなる陰性型(negative-type)で,疾患には,先天停在性夜盲,先天網膜分離症などがある.欠点としては,局所的な異常はとらえられないこと,錐体にのみ異常がある場合にはこのERGでは異常がとらえきれない場合もあるということである.つかってきている.緑内障や視神経疾患において網膜視神経線維や網膜神経節細胞層の厚みが変化することが知られており,網膜疾患と視神経疾患の鑑別にも有用である.5.ERGERGは,眼科臨床においてさまざまな網膜疾患の診断に有用であるが,特に網膜ジストロフィの診断には必須の検査である.網膜ジストロフィには錐体ジストロフィや杆体ジストロフィなど錐体と杆体が分離して変性するもの,黄斑変性などの一部が変性するものなどがある.ERGは杆体や錐体の機能を区別して評価でき,局所ERGなどでは網膜の部位別の機能が評価をすることにより網膜ジストロフィの正しい診断が行える.ERGにはいくつかの記録法があるが,網膜全体から発生する電位を記録する,いわゆる全視野ERG(full-fieldERG)と,網膜の局所の電位を記録する局所ERGや多局所ERGに区別される.全視野ERGは,一般臨床でよく用いられている暗順応後にフラッシュ刺激にて記録されるabcdABef図3Zeiss社製のCirrusOCTで記録した正常者のOCT(A)とMiyake病の患者のOCT(B)a:ELM(外境界膜),b:IS/OS(視細胞内節外節境界),c:COST(coneoutersegmenttip,錐体外節先端),d:RPE(網膜色素上皮).e:Miyake病の患者では,ELMとIS/OSが中心で不明瞭となっている.f:COSTとRPEは一体化している.(75)あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011979いような速い点滅光刺激を使用して記録した応答である.30Hz付近の刺激周波数が推奨されている.c.局所ERG全視野ERGで異常が認められない場合,黄斑などに限局した機能障害が存在するかを見きわめる大切な検査である.特にMiyake病やAZOORなどの眼底所見がほぼ正常の疾患で網膜の局所が障害される疾患の診断には不可欠である.OCTの結果と照らし合わせることで,機能と形態の両方を評価でき非常に有用な検査である.現在臨床では,局所ERGと多局所ERGの2つの記録法がある.1)局所ERG眼底を赤外線カメラで観察しながら目的とする部位を確実に刺激できるだけでなく,錐体ERGのa波,b波,律動揺小波などの全成分の記録ができる.固視不良の患者にもモニターを見ながら刺激部位を合わせることができ,信頼のおける反応が得られる6).局所ERGの反応は背景光をつけた状態で記録しており錐体の機能を評価している.2)多局所ERG多局所ERGの刺激には,TVモニターの多数の六角形が使われる(図5a).この六角形は検査中に,ランダb.錐体系と杆体系の分離記録網膜変性には杆体優位に異常が生じる場合,逆に錐体優位に異常が生じる場合がある.このような場合には,杆体系と錐体系の機能を分離して評価しなければならない.そのため,ISCEVでは,これらの反応を記録するための推奨刺激条件を定めている3)(ISCEVStandardERG).これらのERGは,トーメー社から現在発売されているERG装置で記録可能である(図4).1)杆体応答暗順応後に,弱い光刺激を用いて記録する応答である.錐体は反応せず,杆体系細胞のみが反応するために,この条件で杆体応答のみを分離することができる.2)杆体-錐体混合(最大)応答暗順応後に,強めの光刺激を網膜に照射して記録する応答である.この条件で記録されるERGは,上に述べた「強いフラッシュ刺激によるERG」と基本的に同じ波形をしている.3)錐体応答錐体の応答だけを記録するために背景光をつけて杆体を抑制して記録したERGである.4)30HzフリッカERG錐体の応答だけを記録するために,杆体が追従できな1342図4トーメー社製LE4000にて記録した杆体系と錐体系のERG1:杆体反応,2:50cd・s・m?2で記録した最大応答,3:錐体応答,4:30HzフリッカERG.980あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011(76)主訴:両眼の視力低下.眼病歴:徐々に進行する両眼の視力障害のため近医眼科受診.強いフラッシュ刺激によるERGにて反応が減弱しており精査目的で当院受診.仕事は運転手だが,仕事,普段の生活でも大きな問題を感じてはいない.夜は少し苦手と以前から感じていた,昼盲はない.ビタミンAを含む採血データに異常は認められず,全身状態に問題はなかった.既往歴:家族歴に特記すべきものなし.視力:両眼矯正1.0.細隙灯所見:軽度の白内障を認めるのみ.眼底所見・蛍光眼底造影:明らかな異常を認めないムに白か黒のどちらかに変化する.各局所ERGは相互相関という数学的手法により抽出される.多局所ERGのメリットは,短時間に網膜の多数の部位の反応を記録できる点である.表示は各部位の個々のERG波形とトポグラフィが示され,振幅の異常をわかりやすくしてある.AZOORやMiyake病のような網膜の局所的な障害を呈する疾患の診断に適している(図5d,e).III眼底正常な網膜ジストロフィの症例最後に症例を2例提示する.〔症例1〕59歳,女性.右眼左眼100ms100ms200nV200nVabcde1μV100ms図5正常者とAZOOR患者の多局所ERGa:VERISによる103点の刺激条件.b:正常者の多局所ERGの波形.c:bのトポグラフィ.d:両眼の中心型のAZOORの患者の多局所ERGの波形.両眼の中心の振幅が減弱している.e:dのトポグラフィ.(77)あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011981abcd図6症例1の所見a,b:右眼,左眼の眼底写真.c,d:蛍光眼底造影.眼底,蛍光眼底造影では大きな異常はない.e:網膜全体の菲薄化と周辺部でのIS-OSを含む視細胞レベルで異常所見を認めた(→).eILMRPE982あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011(図6a?d).OCT:網膜全体の菲薄化と周辺部でのIS-OSを含む視細胞レベルで異常所見を認めた(図6e).Goldmann視野:ほぼ正常(図6f).ERG:ISCEVプロトコールのERG.杆体はほぼ消失,杆体-錐体混合(最大)応答では緩やかな陰性波が認められるのみで大幅に減弱していた.錐体機能を評価する錐体応答と30HzフリッカERGは振幅は低下しているものの杆体ERGに比較して残存していた(図6g).黄斑部局所ERG:黄斑部の局所ERGは正常下限であった(図6h).診断:視力や視野検査,眼底検査では異常をとらえることができない.OCTより視細胞の障害をきたしており,眼底に異常のない網膜変性疾患であることがわかる.ERGの結果より,杆体系が錐体系より優位に障害されている.黄斑部局所ERGは保たれており,黄斑部の視機能がよく視力が維持されている.杆体-錐体ジストロフィと診断し,現在も経過観察中である.(78)????????????????????????????????????????????????????????????f????????gh(図6つづき)f:Goldmann視野計では明らかな異常は認められない.g:杆体と錐体を分離したERG記録(トーメー社製LE2000).杆体系のERGである杆体反応(1),最大応答(2)振幅が著しく減弱しているのに対し,錐体系のERGである錐体応答(3)と30HzフリッカERG(4)は振幅が正常の半分ほどの減弱にとどまっている.h:黄斑部局所ERGの反応は正常範囲内であった.(79)あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011983abcdea,b:右眼,左眼の眼底写真.c,d:蛍光眼底造影.眼底,蛍光眼底造影では大きな異常はない.e:COSTとRPEが一体化している.杆体応答30HzフリッカNormalPatient最大応答錐体応答100μV50ms200μV25ms100μV25ms25μV25msff:杆体と錐体を分離したERG記録(全視野ドームを使用).杆体系のERGである杆体反応,最大応答は,ほぼ正常.錐体系のERGである錐体応答と30Hzフリッカは振幅が大幅に減弱している.図7症例2の所見984あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011〔症例2〕62歳,女性.主訴:視野異常,昼盲.現病歴:中心に近い視野が欠損しており,明所ではものが見にくいことを自覚し近医受診.ERGにて異常を認めたため当院紹介となる.視力:両眼矯正1.0.Humphrey視野にて全体的な感度低下.細隙灯所見:軽度の白内障を認めるのみ.眼底所見:正常で蛍光眼底造影検査も異常を認めなかった(図7a?d).OCT:COSTとRPEが一体化している(図7e).ERG:ISCEVプロトコールのERGでは杆体と,杆体-錐体混合(最大)応答は正常反応であった.錐体機能を評価する錐体応答と30HzフリッカERGは消失していた.局所ERGも平坦型であった(図7f).診断:眼底正常の錐体ジストロフィ.この疾患は杆体機能と錐体機能を分離して反応を記録することによって診断できる疾患である.通常,錐体ジストロフィは黄斑変性をきたし視力が低下するが,この症例のように眼底が正常で,中心窩の錐体細胞の形態が保たれていて視力が良好な症例もある.文献1)KondoM,ItoY,UenoSetal:Fovealthicknessinoccultmaculardystrophy.AmJOphthalmol135:725-728,20032)ParkSJ,WooSJ,ParkKHetal:Morphologicphotoreceptorabnormalityinoccultmaculardystrophyonspectraldomainopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci51:3673-3679,20103)MarmorMF,FultonAB,HolderGEetal:ISCEVStandardforfull-fieldclinicalelectroretinography(2008update).DocOphthalmol118:69-77,20094)MiyakeY,ShiroyamaN,OtaIetal:Localmacularelectroretinographicresponsesinidiopathiccentralserouschorioretinopathy.AmJOphthalmol106:546-550,19885)SutterEE,TranD:ThefieldtopographyofERGcomponentsinman─I.Thephotopicluminanceresponse.VisionRes32:433-446,19926)三宅養三:黄斑部疾患の基礎と臨床.黄斑部局所ERGの研究.日眼会誌92:1419-1449,1988(80)