0910-1810/11/\100/頁/JCOPY循環」の考え方を裏付けるように,感染症の患者はレンズケアの不良な頻回交換ソフトコンタクトレンズとMPS(多目的用剤:multi-purposesolution)の使用者に頻発した.それから数年,眼科医によるレンズケア指導の徹底,マスメディアでの啓発,製品への注意喚起文の記載などが後押ししたのか,感染症の発生も少しずつ下火になってきているようであるが,何事にも油断は禁物である.そこで,今回,「コンタクトレンズケアを見直す」と題し,正しいレンズケアを普及させることの重要性を改めて伝えることを目的にこの特集を企画した.ここでは,レンズケアの基本原理を復習するとともに,先のoutbreakを契機に明らかとなったいくつかのエビデンスも紹介したいと思う.まずは,編者の一人(糸井素純)から,「安全性を優先したコンタクトレンズのケア」というタイトルで,本特集の基調メッセージを発信している.お読みになればおわかりのように,「装用後のこすり洗い」,「装用前のすすぎ」,「消毒剤開封後の速やかな使用」が,リスクを最小限にとどめるレンズケアのキーポイントである.引き続いて各論に移り,植田喜一先生には「ハードコンタクトレンズのケアの問題点とその対策(ハードコンタクトレンズのレンズケースの管理を含めて)」,樋口裕彦先生には「ソフトコンタクトレンズコンタクトレンズの歴史は,ロマンで語れば,ルネッサンスの昔に行われたレオナルド・ダ・ヴィンチの水槽実験に,実践面で語れば,19世紀後半,Fickによるガラス製強角膜レンズの装用実体験に始まる.その後,「角膜組織への酸素供給」という至上命題と闘うなかで,ハードコンタクトレンズ,ソフトコンタクトレンズが相次いで生み出され,現在では,そのハイブリッドともいえるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが登場し,大きなシェアを占めつつある.他方,遠近両用や乱視矯正などの特殊機能レンズや,1日使い捨てから定期交換型,そして従来型までの多様な装用形態も生み出され,個々のユーザーの生活様式に合わせたフレキシブルな処方が可能な時代となっている.このなかで,2週間交換型や1カ月交換型に代表される頻回あるいは定期交換型レンズでは,快適かつ安全な装用のために,日々の着実なレンズケアは不可欠である.たとえ,眼科専門医で処方されたコンタクトレンズであっても,不適切なレンズケアによってレンズが汚れていたりすると,快適な装用はもはや望めなくなり,一方で重篤な眼障害のリスクも高まる.2000年代の半ば頃より,アカントアメーバと緑膿菌を二大病原体とする重症のコンタクトレンズ関連角膜感染症が急増し,大きな社会的問題となったのは周知のとおりであるが,上述した「悪(1)1663*YuichiOhashi:愛媛大学大学院感覚機能医学講座視機能外科学分野(眼科学)**MotozumiItoi:道玄坂糸井眼科医院●序説あたらしい眼科28(12):1663?1664,2011コンタクトレンズケアを見直すContactwithImprovedLensCare大橋裕一*糸井素純**1664あたらしい眼科Vol.28,No.12,2011(2)ケアの現状」,岩崎直樹先生には「シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに対するレンズケアの注意点」というテーマで,個々のレンズが抱えるレンズケアの課題について解説していただいた.植田先生からは,消毒操作が義務づけられていないハードレンズにおいても重篤な障害が発生する可能性があるため,「洗浄」と「こすり洗い」,「すすぎ」が重要である点,樋口先生からは,ソフトコンタクトレンズケアの大半が消毒力の劣るMPSで行われている現状のなかで,手洗いを怠るようなユーザーやレンズケースへ気配りのないユーザーがいまだ多くみられる点,岩崎先生からは,女性に特有の化粧品(アイメイク,ファウンデーション)のレンズ付着が意外に厄介な問題で,「レンズ・ファースト」の考え方をユーザーに植え付ける必要がある点などが指摘された.さらに,コンタクトレンズを取り巻く環境因子として,レンズケースと消毒剤を採り上げ,稲葉昌丸先生には「レンズケースの汚染とその対策」,白石敦先生には「コンタクトレンズ消毒法の変遷と課題」について解説していただいた.稲葉先生からは,コンプライアンスの良好なユーザーでもレンズケースの汚染は避けられないため,地道なレンズケースのケアが欠かせないこと,白石先生からは,1日使い捨てレンズへの完全移行が望めないなか,MPSの消毒力不足を補う意味での教育指導の重要性が強調された.最後に,最も重篤な合併症である角膜感染症については,「角膜感染症からみたレンズケアの問題点」というタイトルで,宇野敏彦先生にスペシャリストの立場から解説していただき,レンズケース内の汚染がこうした感染症の温床であり,患者の不良なケア実態がそれを助長していることが示された.さて,コンタクトレンズユーザーは千差万別,実にさまざまなキャラクターの方がおられる.したがって,眼科医として,使用コンタクトレンズの種類,汚れの質と程度,ユーザーの性格などを考慮しつつ,それぞれのユーザーに適したレンズケアを選択,指導していく必要がある.「正しいコンタクトレンズのケア」とは,個々のコンタクトレンズ使用者が安全かつ快適に使い続けることができるレンズケアである.その人に合った「正しいレンズケア」を一緒にみつけることができれば,継続実行していくことも容易となるであろう.他方,消毒剤の主力であるMPSの認可基準の見直しは急務である.最近,複数の消毒剤を組み合わせた合剤MPSが相次いで登場し,アカントアメーバを含む病原体に比較的良好な効果が確認されている.わが国での認可が待たれるところであるが,その一方で,ハードコンタクトレンズの有用性を見直すとともに,コンタクトレンズの装用形態を1日使い捨てへと積極的にシフトさせていくような議論が必要だと考える.