0910-1810/11/\100/頁/JCOPYOCTとして,VisanteTMOCT(CarlZeissMeditec)が開発され,臨床に用いられてきた.近年Fourierドメイン方式の一つであるスウェプトソース方式前眼部OCTとしてSS-1000CASIA(TOMEYCORPORATION)が開発され,より高速,高解像の解析が可能になっただけでなく,1スキャンでの撮影画像の増加により,前眼部三次元解析も可能となっている(図1,2).II前眼部OCTによる隅角解析前眼部OCTの緑内障診療への応用としては,おもに,疑いを含む原発閉塞隅角症(primaryangleclosure:PAC),原発閉塞隅角緑内障(primaryangleclosureI前眼部OCTとは光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)とは,近赤外光の干渉現象を利用したイメージング技術であり,それにより組織の断層像が得られる.従来の後眼部用OCTが840nmの波長帯域を使用しているのに対し,前眼部OCTでは1,310nmと,より長波長光を使用している.前眼部解析では後眼部(網膜)解析に比べ,より高い組織深達度が必要とされる.波長1,310nm光は眼底まで光が届きにくいため,840nm光に比べ約10倍の光パワーを照射可能なため,より高い組織深達度が得られる.初めにタイムドメイン方式の前眼部(11)763*KoichiMishima:東京逓信病院眼科〔別刷請求先〕三嶋弘一:〒102-8798東京都千代田区富士見2-14-23東京逓信病院眼科特集●光干渉断層計(OCT)の緑内障への応用あたらしい眼科28(6):763.768,2011前眼部OCTの緑内障への応用:現在ClinicalUseofAnteriorSegmentOCTinGlaucoma三嶋弘一*VisanteTMOCT(CarlZeissMeditec)SS-1000CASIA(TOMEYCORPORATION)図1前眼部OCT製品764あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(12)ロックにより,後房から前房への房水交通が遮断されることによる虹彩の膨隆による隅角狭細化,②虹彩が散瞳することのみで隅角の狭細化が起こるプラトー虹彩メカニズム(plateauirismechanism),③水晶体の膨化や亜脱臼による浅前房化,隅角の狭小化をきたす水晶体起因性メカニズム(lensinducedmechanism)の3つのメカニズムがあり,症例により主要なメカニズムが異なる.このマルチメカニズムの分解に関して,前眼部画像解析は威力を発揮する.なぜならば,それぞれのメカニズムにおいて,特徴的な前眼部形態がみられるからである.たとえば,瞳孔ブロックでは虹彩形状が前方(角膜側)に向かって凸な形状を示す(図4b).一方,プラトー虹彩では虹彩は平坦でありながら,暗所下での散瞳に伴い,隅角の狭小化,閉塞をきたす(図4c).水晶体起因glaucoma:PACG)を含む狭隅角眼における隅角解析が中心になっている.古典的には隅角解析には,隅角鏡を用いた直接観察が主要な検査であり,その重要性は今も変わっていない.しかし,狭隅角眼においての隅角閉塞は生理的条件では暗所下での散瞳時により起こりやすいと考えられるのに対し,隅角鏡検査では観察光を必要とし,物理的に暗所下での隅角の状態を解析できないという問題点があった.1990年代初頭に開発された超音波生体顕微鏡(ultrasoundbiomicroscopy:UBM)は事実上初めての前眼部断層構造解析装置であり,高周波超音波を用いることで,隅角解析が可能な断層像を得ることができるようになった.UBMの臨床応用により,PAC,PACGなどにおける隅角閉塞メカニズムに関する有用な知見が得られている.すなわち,隅角閉塞はマルチメカニズムによって起こると理解されている.図3に示すとおり,①瞳孔ブ図2SS.1000CASIAによる前眼部三次元表示abc図4前眼部OCTによる前眼部水平断(暗所)a:広隅角眼の水平断.b:瞳孔ブロックが優位な狭隅角眼の水平断.c:Plateauirismechanismが優位な狭隅角眼の水平断.瞳孔ブロックPlateauirismechanismLensinducedmechanism図3隅角閉塞のマルチメカニズム(13)あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011765III前眼部OCTの利点一方,前眼部OCTのUBMに対する利点としては,以下のものがあげられる.1.非接触での検査が可能UBMがアイカップによる接触を必要とするのに対し,前眼部OCTは非接触にて検査が可能である.UBM検査ではときにアイカップによる圧迫の影響が前眼部断層像に現れることがあり,隅角解析に影響が出ることがある.このような場合,同一部位でのUBM画像と前眼部OCT画像を比較してみることで,圧迫の影響の有無を推し量ることもできる.しかし,非接触で測定することで逆に前眼部OCTでは特に上下方向の隅角断層像の測定がむずかしい場合がある.そのような場合に検者による開瞼補助を行う場合,圧迫を加えないように行う必要があるが,機械本体がUBMに比較しても大きく,むずかしい場合がある.2.高速,高解像の画像取得が可能表1に前眼部OCTの代表的な性能をUBMと比較した.前眼部OCTでは撮影自体が速いだけでなく,UBMのように仰臥位への移行やアイカップの装着などの撮影前準備の時間も短縮されるため,測定準備から完了までの時間も短縮できる.性メカニズムでは,水晶体厚の顕著な増加,水晶体位置の偏位がみられる.これらの解析に対する前眼部OCTとUBMに共通する利点としては,以下のものがあげられる.1.暗所下での前眼部断層解析が可能である前述したとおり,測定に光を必要としないため,暗所下における自然散瞳状態での測定が可能であり,隅角閉塞が最も起こりやすいと考えられる条件下での前眼部断層像を得ることができる.当然ながら,明所下での測定も可能であるため,散瞳,縮瞳条件での画像の比較も可能である.2.各種パラメータなどの計測による定量的解析が可能隅角鏡検査では,ある程度の熟練により再現性を高めることは可能であるものの,検査者の主観による隅角開大度などの評価が限界であり,客観的評価が理論的に不可能であるが,前眼部画像解析では得られた断層像から,AOD(angleopeningdistance)500,750,ARA(anglerecessarea),TISA(trabecularirisspacearea),隅角角度などのパラメータの測定が可能であり,各種条件下での比較や,経時的変化を客観的に定量化されたデータによって解析可能である.表1前眼部OCTの性能UBMAS-OCTTOMEYUD-6010VisanteTMOCTSS-1000CASIAメカニズムBモード超音波タイムドメインOCTスウェプトソースOCT(FourierドメインOCT)光(音)源40mHz超音波スーパールミネッセントダイオード:中心波長1,310nm高速スキャニングレーザー:中心波長1,310nm分解能(軸方向)50μm18μm8μm分解能(横方向)50μm60μm30μmスキャンスピード10枚/sec2,000A-scans/sec30,000A-scans/sec横方向スキャン範囲9mm16mm×1,2,4line(s)16mm×16mm深さ範囲6mm6mm6mm測定方法接触必要(アイカップ)仰臥位非接触座位非接触座位(文献1より改変)766あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(14)4.広範囲の隅角解析が可能2,3項と関連して,SS-1000CASIAでは約2秒で128枚の断層像を放射状に取得することで,画像に問題また,分解能においてもUBMでは軸方向にて50μmであるのに対し,タイムドメイン方式のVisanteTMOCTでは18μm,スウェプトソース方式のSS-1000CASIAでは8μmと大幅に向上している.図5は,SS-1000CASIAでの高解像度モードであるAngleHDモードによる隅角画像であるが,ぶどう膜強膜境界が明瞭に判別できるだけでなく,Schlemm管と思われる管腔構造も確認できる.3.広い撮影範囲UBMでは横方向スキャン範囲が9mmであるのに対し,前眼部OCTでは16mmと広く,両端隅角を含む前眼部断層像が得られる.これにより,前房面積や容積などの定量的解析が容易になると思われる.図6aCASIAによるITC解析(1)(図説明は次頁の図6b参照)図5SS.1000CASIAAngleHDモードでの隅角像ぶどう膜強膜境界が描出されている(白矢印).Schlemm管と思われる構造も認められる(黒矢印).(15)あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011767にはおもに上下方向にて隅角閉塞が認められているのがわかる(図6b).従来,UBMでは動画形式でサーチし,任意の画像をフリーズして取得する方式のため,網羅的な隅角の解析がむずかしく,1象限につき代表的な1画像を取得し,解析する方法が一般的と考えられるが,このようにスウェプトソース方式前眼部OCTを用いることで,より広範囲の隅角閉塞の解析が可能となる可能性がある.IV前眼部OCTの欠点1.組織深達度の限界:毛様体の評価が困難後眼部OCTに比べると高い組織深達度をもつ前眼部OCTも,光を用いたイメージング技術であるため,超音波診断装置であるUBMと比較すると,組織深達度では劣る.隅角解析において具体的に問題となるのは,毛がなければほぼ全周の隅角の解析が可能であり,三次元での画像再構成も可能である.図2はCASIAにより撮影された画像を三次元再構成し,かつ隅角鏡と同様なアングルからの観察となるgonioscopicviewとよばれるモードであり,任意の位置からの観察像を得ることができる.ITC(iridotrabecularcontact)解析ツールでは,128枚の各画像において強膜岬(SS)と角膜内皮面と虹彩点の接触点をプロットすることで,強膜岬を超えて閉塞している隅角部分を虹彩線維柱帯接触部(ITC)としてチャート方式に表示可能であり,その閉塞部位の割合をITCindexとして,全周および各象限に分け数値化することが可能である.図6は具体例であるが,明所下での縮瞳時には隅角閉塞はみられないものの(図6a),暗所下での自然散瞳時図6bCASIAによるITC解析(2)左下にチャート形式で虹彩線維柱帯接触(ITC)境界(緑線),および接触領域(水色)が表示されている.右中段にITCの割合が表示される.明所下ではITCは少ないのに対し(a),暗所下では上下方向において増えている(b).768あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(16)において補正後の画像を用いているが,SS-1000CASIAでは,最初の画像は補正前の画像であり,また三次元解析の画像では現時点では屈折補正がかけられないことに注意が必要である.V前眼部OCTの現在,そして未来前眼部OCTは特にスウェプトソース方式のものが実用化されるに伴い,より高速,高解像となり,利便性が高まっただけでなく,さまざまな解析への応用が期待される.例として,紹介したように高解像モードではこれまでは同定困難であったSchlemm管などの隅角の微細組織構造が観察できる可能性があり,その他の構造も含め,生理的,病的状態による変化など今後の解析が期待される.しかし,飛躍的に増えた情報量をどう処理していくかという問題点も残る.ITC解析は画像解析装置による隅角閉塞領域の検出という今後有望なツールとなりうるが,現時点では手動解析の部分が多く,実際の臨床上で用いるのはむずかしい.約2秒でほぼ全周隅角の画像を取得可能となったが,その膨大な画像情報をどのように解析し,臨床上で有効に活用するかという点に関しては,今後のさらなる研究,開発が必要と考えられる.前眼部OCTのみによって隅角診断が完結することはありえない.基本となる隅角鏡検査やUBMなどと組み合わせた診療を行うことが重要である.文献1)三嶋弘一:前眼部OCTによる隅角検査の長所短所を教えてください.あたらしい眼科27(臨増):163-167,20102)RadhakrishmanS,GoldsmithJ,SmithSD:Comparisonofopticalcoherencetomographyandultrasoundbiomicroscopyfordetectionofnarrowanteriorchamberangles.ArchOphthalmol123:1053-1059,20053)DadaT,SihotaR,GuptaVetal:Comparisonofanteriorsegmentopticalcoherencetomographyandultrasoundbiomicroscopyforassessmentoftheanteriorsegment.JCataractRefractSurg33:837-840,20074)WangD,PekmezciM,BashmanRPetal:Comparisonofdifferentmodesinopticalcoherencetomographyandultrasoundbiomicroscopyinanteriorchamberangleassessment.JGlaucoma18:472-478,2009様体がほとんど描出不可能なことである.前述したプラトー虹彩では,定義上では平坦な虹彩のほかに毛様体の前方付着,毛様溝の不在などの所見が含まれているが,前眼部OCTではその評価ができず,この点においてはUBMは絶対的な利点をもつ.2.上下方向隅角の解析が困難前眼部OCTは両端隅角を含む画像が取得できる利点を有するが,当然,遮閉されなければという条件がつく.狭隅角眼では瞼裂も狭い症例が多く,特に上下方向隅角の撮影は困難な場合が多い.開瞼補助を行っても撮影できないこともあるだけでなく,その場合,圧迫しないよう注意が必要である.3.UBMでのパラメータの相関前眼部OCTとUBMでの数値的解析を比較した報告では,中心角膜厚,中心前房深度,隅角角度などのパラメータにおいて良好な相関を示しているとの報告もあるが,一方で前眼部OCTの異なる撮影モードではUBMでのパラメータと有意差を認めるものもあったとの報告もあり,今後の検討を要する2,3).4.機能的隅角閉塞と器質的隅角閉塞の区別が困難原則的に前眼部OCTを含む前眼部画像解析装置では,隅角閉塞を認めたとしてもそれは画像上にて隅角部が接触していることを示しているだけなので,その部位が器質的に癒着している器質的隅角閉塞(synechialangleclosure)なのかあるいは,癒着はなく接触し閉塞している機能的隅角閉塞(appositionalangleclosure)なのかの区別は困難である.前述したITCとは上記2つの状態を含んだ概念としたものである.5.正確な屈折補正が必須光を用いたイメージングであるため,正確な屈折補正がかかっていることを確認し,さらに補正後の画像を見る必要がある.補正が不正確であるとそれにより,画像は極端にゆがみ,組織位置情報が誤ったものになり,特に数値的な解析には注意が必要である.VisanteTMOCTではその屈折補正ラインを示す画像を含むすべての画像