0910-1810/10/\100/頁/JCOPY2.角膜上皮障害が原因となる場合光に対する感受性は正常であるが,角膜上皮障害による角膜表面の小さな凹凸が光の散乱を生じ,過度な光刺激が眼内に及んで羞明を生じる場合がある.この原因として,点状表層角膜症や角膜びらんの原因疾患をあげることができる.たとえば,春季カタルやアトピー性角結膜炎などの重症のアレルギー性結膜疾患において,増悪期に落屑様の角膜上皮障害やシールド潰瘍を伴うと眩しさが出現しうる.特に,これらの疾患を生じうる若年層では,角膜知覚が鋭敏であるため,小さな傷でも痛みや異物感を生じ,それによる反射性の流涙も上乗せされて,光の散乱が増強して,羞明を生じやすいと考えられる.また,再発性角膜びらんでは,上皮の接着不良を伴うため,角膜表層の三叉神経第一枝が強く刺激されて,強い痛みに加えて,強い羞明を伴いうる.3.角膜混濁が原因となる場合角膜の混濁には,角膜の変性やジストロフィにみられるような何らかの物質の沈着,炎症性の細胞浸潤,角膜の浮腫などが関係し,結果として,光の散乱を生じて羞明がひき起こされることがある.特に,膠様滴状角膜ジストロフィでは,特徴的な強い羞明を訴える.4.角膜炎が原因となる場合感染性,あるいは,非感染性の角膜炎において,強い羞明を訴えることがある.これには,体のなかで最も密はじめに「眼の羞明」は日常診療における患者の訴えのなかで頻度の高い症状の一つである.眼の羞明を訴える場合,眼の障害部位は,眼瞼・角結膜といった外眼部から水晶体・硝子体・網脈絡膜さらに視神経経路と幅広く,加えて眼球以外の異常が原因になることもありうる.また,原因となる疾患により,眩しさが主訴になる場合と随伴症状の一つになる場合があり,さらには原因により羞明の程度もさまざまである.本稿では,羞明の原因となりうる眼疾患のうち,代表的な眼表面疾患をとりあげて解説する.I眼表面疾患における羞明の発症機序羞明を生じる疾患の診断を進めるには,原因が多岐にわたるがゆえに発症機序を考えて検査を行う必要がある.以下に,眼表面疾患で生じうる羞明の発症機序について考えてみる.1.涙液の異常が原因となる場合近年,眼球の高次収差が波面センサーによって解析できるようになり,角膜前に形成される涙液層の破綻や,瞬目時の涙液の厚みの変化によって視機能に影響が及ぶことがわかってきた1,2).このような涙液の異常に伴う視機能異常の一つとして,羞明を生じることがあり,原因として,ドライアイや流涙症,結膜弛緩症などがあげられる.(9)581*HisayoHigashibara&NorihikoYokoi:京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕東原尚代:〒602-0841京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学特集●眼が眩しいあたらしい眼科27(5):581.587,2010眼の表面:ドライアイ,結膜炎,角膜炎OcularSurface:DryEye,Conjunctivitis,Keratitis東原尚代*横井則彦*582あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010(10)もあるため,外出時などで光をいやがっていないかどうかなど家族から情報を聴取することも大切である.さらに,眼疾患の手術既往歴,薬物治療,精神神経学疾患などの既往症の有無を確認する.III基本的眼科検査と鑑別診断に必要な補助検査眩しさを訴える患者の診断に至るまでの検査の流れを図1に示す.まず,眼瞼や睫毛の異常,結膜充血の有無,顔面皮膚の状態を視診する.診察室の照明やペンライトの光に対する患者の反応を観察し,参考にする.その際,swingingflashlighttestを行い,視神経疾患の鑑別診断に必要な相対的入力瞳孔反応異常(relativeafferentpapillarydefect:RAPD)や瞳孔不同の有無を調べる.つぎに,眼科検査の基本として,視力・屈折検査を行う.眼表面疾患が羞明の原因となる場合,問診である程度の病態を見きわめ,細隙灯顕微鏡検査を行って確定診断を進める.細隙灯顕微鏡検査では,まず,眼瞼内反や睫毛乱生で睫毛が角膜に接していないか,眼瞼外反や兎眼で眼表面の露出がないか弱い白色光で観察する.角膜混濁の有無やその混濁の原因の鑑別,結膜充血や強膜の充血を観察する.順を追って,前房深度や炎症性細胞の有無,虹彩・瞳孔の不整の有無,白内障の有無,眼内レンズ挿入眼では偏位についても観察する.つぎにフルオレセイン染色を用いて涙液メニスカスの高さ,涙液層破綻時間(breakuptime:BUT)の計測,角膜上皮障害の位置・範囲・程度を観察する.このとき,フルオレセインの量に過不足があると涙液の正確な性状を確認できないため,フルオレセインの染色の仕方に注意する.筆者らは,フルオレセイン試験紙に水分を2滴たらした後,よく振って余分な液をとり,下方の涙液メニスカスに過度に色素を流し込むようなイメージで,下眼瞼縁を刺激しないよう優しく接触させて染色している.また,過剰な光や眼瞼への強い刺激は反射性涙液分泌を促すため,光量についても過剰にならないよう調整する.眼瞼の反転やSchirmer試験などの刺激を伴う検査は最後に行う.その他,補助検査として,緑内障や網膜疾患の鑑別のために,眼圧検査,眼底検査を行う.さらに,色覚検査度が高い角膜の知覚神経に対して,炎症性に刺激が加わるだけでなく,炎症細胞による角膜混濁も上乗せされることが,その理由になっていると考えられる.特に,病変が表層性で,かつ広範に及ぶときに,その影響が大きいと考えられる.ヘルペス性角膜炎やアカントアメーバ角膜炎が代表的である.また,コンタクトレンズ装用による酸素欠乏においても,同様に強い角膜の炎症や細胞浸潤が生じて,強い痛みとともに開瞼不能となる.一般に,「眼の羞明」に関係する眼表面疾患は,1..4.の病態を合併してもつことも多く,目をあけていられない理由が,眩しさによるものか痛みによるものかを明確に区別できないこともありうる.したがって,涙液から角膜まで,病態にかかわる異常所見を的確に診断して,病態を整理し,鑑別診断を行うことが重要である.以下には鑑別診断に必要な診断ステップを述べる.II問診羞明は日常生活において,たとえ健常眼であっても,天候,目をとりまく環境からの光量や,日中,夜間といった時刻による違いなどの影響を受けながら,出現しうる.一方,病的な羞明は,健常者には苦痛を感じない程度の日常の光で誘発されるため,まず問診で患者の訴えが病的か否かを判断することが大切である.特に,眼表面疾患で生じる羞明の場合,眼痛,流涙,充血,眼乾燥感,視力低下など他の症状に随伴して,羞明が生じる場合も多い.発症の様式が急性か,亜急性か,慢性かといった点も鑑別診断のポイントになる.急性の羞明の原因としては,角膜異物や外傷による角膜上皮障害,感染性,あるいは非感染性の角膜炎,急性緑内障発作などによる角膜上皮浮腫などがある.一方,慢性の羞明には,ドライアイや結膜弛緩症,角膜ジストロフィによる角膜混濁などが関係しうる.両眼性か片眼性か,年齢や性別も参考になる.眼表面疾患としては,小児では眼瞼内反による角膜上皮障害や春季カタル,中高年ではドライアイや結膜弛緩症などが羞明の原因になりやすい.特に小児では症状を上手く訴えることができず,目が閉じ気味にしているだけの場合(11)あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010583………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………….LASIK…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………….CT..MRI……………………………………………………BUT……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………図1診断に至る検査の流れ584あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010(12)10回/日点眼を行い,自覚症状の改善がない場合はヒアルロン酸点眼薬6回/日を追加する.眼精疲労の症状が強い症例では自家調整希釈サイプレジン点眼液(0.025%)を眠前1回併用する.以上で改善がなければ上下涙点プラグ挿入を考慮する.涙点プラグ挿入により,流涙症状を認めることもあるが,角膜上の涙液層が安定すれば他の愁訴とともに,羞明は軽減もしくは消失する.b.結膜弛緩症結膜弛緩症とは,加齢に関連した結膜の皺襞状の構造変化であり,ドライアイや流涙症のリスクファクターとなるため,いずれによっても羞明に関係する3).しかし,強い結膜弛緩は,下方の涙液メニスカスを占拠する形でや網膜電位図,視野検査を必要に応じて行う.以上の検査で眼球に異常が認められない場合は,頭蓋内病変や副鼻腔病変の検索のためX線撮影,CT(コンピュータ断層撮影),MRI(磁気共鳴画像法)を施行する.もしも,視器に何らかの異常が認められない場合は,改めて,生活環境,患者の疲労の有無などを含め,精神神経疾患の関与についても考えてみる必要がある.IV羞明を生じる代表的な眼表面疾患とその治療つぎに,羞明をきたす代表的な眼表面疾患を示しながら,その治療のポイントを解説する.1.涙液異常で生じる場合a.ドライアイドライアイは,涙液減少型と蒸発亢進型の2つに大別され,いずれのタイプも上皮障害を伴うと,羞明を訴えることがあり,涙液減少型ドライアイの重症例では,涙液破綻が早く,上皮障害も強いために,羞明を生じやすい.現在,一般にドライアイの診断基準を満たすわけではないが,涙液破綻が非常に顕著で,強い症状を訴えるBUT短縮型ドライアイ(図2)とよばれる病型がある.本疾患は,まだ,世界的に認識されているわけではないものの,涙液の破綻をドライアイの中心メカニズムに置くわが国においては,難治性のドライアイの一型として知られている.本疾患は,一般に反射性涙液分泌やメニスカスの涙液量は正常であるが,BUTの著明な短縮を特徴とし,それに基づくと考えられる多彩な不定愁訴を生じ,乾燥感だけでなく,眼精疲労などの視機能に関係する視覚に症状を強く訴えることも多い.角膜上皮障害を伴いにくいにもかかわらず,羞明が生じる理由として,本疾患では,reflexloopが保たれているため,涙液の破綻とそれに伴う眼表面の刺激で反射性涙液分泌が生じ,涙液層に動揺が生じることや,涙液の表面形状の変動を補正するための調節過多によって眼精疲労を伴いやすく,それにより眩しさを自覚する可能性があると考えられる.典型的には,開瞼直後から,円形の涙液破綻がみられる.比較的若い年代の男性や,中高年女性にみられる場合がある.治療は,防腐剤フリーの人工涙液の図2BUT短縮型ドライアイ開瞼直後から円形の涙液破綻を認める.図3結膜弛緩症弛緩した結膜と少し離れた角膜面に点状表層角膜症を認める.(13)あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010585る.顔面神経麻痺で兎眼を生じている場合は,まず点眼,眼軟膏などで保存的に管理し,必要に応じて眼瞼の手術を行う.急性や亜急性に発症する羞明で,角膜に機械的な擦過傷がある場合は,まず,角結膜異物を疑うが,美容外科のプチ整形に関連した二重瞼後の糸の刺激による可能性もあるため,注意が必要である.b.角膜びらん角膜びらん,あるいは,再発角膜びらんでは,強い眼痛,流涙とともに羞明を訴えうる.遷延性角膜上皮欠損では,刺激症状を伴わず,羞明だけが生じることもありうる.特に,瞳孔領に角膜びらんが及んでいると眩しさ出現し,その表面で光の散乱を生むため,強い光の状況下で,羞明を生じやすい.フルオレセイン染色では,弛緩した結膜が下方涙液メニスカスを占拠する形で存在する様子が観察され,瞬目により増強する.しばしば合併するドライアイや弛緩した結膜と角膜表面との摩擦により点状表層角膜症を伴う(図3).本症は中高年以上でみられるため,初期の老視や白内障,ドライアイなど他の眼疾患が羞明を修飾している場合もある.したがって,基本となる眼科検査を進めながら,症状の主たる原因が何であるかを見きわめる必要がある.一般に,本症では羞明よりも異物感や間欠性流涙が主症状となっていることも多いが,いわゆる眼不定愁訴の原因疾患の代表疾患ともいえるものであるため,その主症状を見きわめ,必要に応じて手術を考慮する必要がある4).2.角膜上皮障害で生じる場合a.点状表層角膜症点状表層角膜症(superficialpunctuatekeratopathy:SPK)を伴う代表的疾患がドライアイである.なかでも涙液減少型ドライアイは,慢性のSPKを伴いやすく,自己抗体が陽性でドライマウスを伴うSjogren症候群とSjogren症候群以外に分けられる.軽症.中等症では,SPKは角膜下方に集積するため羞明を生じることは比較的少ないが,重症になると瞳孔領を含む角膜全体にSPKが及んだり(図4),mucusplaqueを伴うと光の散乱が生じやすくなり,異物感・乾燥感とともに羞明を訴えることがある.治療は,軽症.中等症では,塩化ベンザルコニウムフリーの人工涙液点眼を7.10回/日に,症状改善に応じて,低濃度ステロイド点眼を2回/日程度併用する.さらなる改善をめざして,ヒアルロン酸点眼6回/日の併用を行うこともある.重症例では,上下の涙点プラグ挿入を行う.SPKが消失,もしくは角膜下方へシフトして軽症化すると他の症状とともに羞明は軽減する.その他,睫毛乱生や内反症・兎眼などの眼瞼異常や,角結膜異物でもSPKを生じる.小児で羞明を主訴に受診した症例のなかに内反症を認めることがあり,外科手術で内反症を治癒せしめると,目の開瞼状態がよくなることで術前の羞明の強さがわかり,驚かされることもあ図4涙液減少型ドライアイ重症例では瞳孔領に及ぶ点状表層角膜症を生じる.図5再発性角膜びらんフルオレセイン染色で染色性の異なる少し盛り上がった領域を認める.586あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010(14)斑状角膜ジストロフィ,格子状角膜ジストロフィ,顆粒状角膜ジストロフィでも角膜混濁のために視力低下と眩しさを訴える.特に,格子状角膜ジストロフィでは再発角膜びらんを生じやすく,羞明のほかに眼痛,充血を訴えやすい.4.結膜炎で生じる場合アレルギー性結膜疾患のうち,アトピー性角結膜炎や春季カタルは急性増悪期に強い角膜上皮障害を伴い,羞明を生じることがある.a.春季カタル春季カタルは学童期の男児に好発し,眼瞼結膜に増殖性変化を伴うアレルギー性結膜疾患である.慢性期の症状は,眼脂,掻痒感,結膜充血を主体とするものであるが,急性増悪時には,本疾患に特徴的な落屑様のSPK,シールド潰瘍,角膜プラークを生じて,開瞼が困難になるほどの強い羞明を訴えることがある.上眼瞼結膜を翻転し巨大乳頭の有無とフルオレセイン染色にて角膜上皮障害の有無を観察する(図7).治療は,慢性期には,抗アレルギー点眼薬を主体とする治療を行うが,急性増悪時には,ステロイドの内服を必要とする場合もある.しかし,最近では,急性増悪期をステロイドの局所あるいは内服投与(たとえば,ベタメタゾン1.2mgを4日間程度)で乗り切りながら,免疫抑制薬点眼を併用することで,急性増悪を予防することができるようになり,かなり,治療しやすくなってきた.学を伴いやすい(図5).外傷による急性の角膜びらんは,抗菌点眼液や抗菌眼軟膏を点入しながら,必要に応じてアイパッチを併用し,保存的に安静を保つ.再発角膜びらんは,爪や紙などの鋭利なものによる外傷の既往があり,受傷後数カ月から数年して起床時の眼痛で発症するのが特徴的である.これは外傷により,基底膜に対する上皮基底細胞の接着障害を生じることが原因とされる.細隙灯顕微鏡検査では,結膜充血とともに,角膜に上皮の接着不良を示唆するフルオレセインの上皮下への貯留や慢性期には,SPKとは異なる上皮のフルオレセイン染色像とともに同領域に微小.胞を認める.強い炎症を伴うため,低力価ステロイドと抗菌薬の点眼を数回/日程度併用しながら回復を待つ.角膜びらんが治癒すると強い刺激症状が消失するため,自己判断で治療が中断されることが多いが,上皮の接着が回復するまで少なくとも1カ月半程度は眠前の眼軟膏点入を継続することが再発予防に重要である.3.角膜混濁で生じる場合角膜ジストロフィ角膜ジストロフィでは,さまざまな外観の角膜混濁がみられるが,強い羞明と関係する疾患として,膠様滴状角膜症がある.幼少時からの両眼性の羞明と眼異物感,視力低下,流涙を訴え,ときに開瞼困難になるほどに症状は強い.本疾患の羞明には,角膜混濁に加えて角膜表面の凹凸に伴う散乱光の影響が考えられる.初期には角膜上皮下に乳白色のびまん性混濁を認め,進行すると黄色みを帯びた膠様隆起物が出現する(図6).フルオレセイン染色では上皮の異常な透過性亢進がみられるのが特徴である.本症では,角膜上皮の透過性が著しく亢進しているために,角膜上皮,実質にアミロイドの沈着をきたすことが病因と考えられている.治療は,抗菌薬と低濃度ステロイド点眼を行いながら,ソフトコンタクトレンズ(SCL)の連続装用を行う.進行例では角膜表面の不整のためにSCLの装用が困難となるため,可能であれば,エキシマレーザーによる治療的角膜切除術を考慮する.角膜表面が滑らかになるとSCL装用が容易になり,羞明が軽減して,視力改善にもつながる.その他,図6膠様滴状角膜変性角膜に乳白色の粒状隆起物を認める.あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010587童期の児童が治療対象になることもあるため,ステロイドの局所投与による眼圧上昇には特に注意する必要がある.上眼瞼結膜の乳頭切除は角膜上皮病変に対して即効性があるが,術後の管理を免疫抑制薬点眼を用いてうまく行わないと,再発を招きうる.b.アトピー性角結膜炎アトピー性角結膜炎はアトピー性皮膚炎に合併して生じるアレルギー性結膜疾患である.特に,顔面に皮疹が及ぶと,重症になりやすい.重症の眼表面疾患としての性格も併せ持ち,角膜への血管侵入や,角膜混濁,表面の不整をきたして視機能の低下につながることもある.それらの眼表面の異常に関連して羞明を訴える.さらに,本疾患そのものの合併症として,あるいは,全身あるいは眼局所のステロイド治療により白内障を合併することもあり,これが羞明の原因になっていることもある.治療は,抗アレルギー薬とステロイド点眼を中心に行い,急性増悪期の治療は,春季カタルに準ずる.いずれにしても,皮膚科医と連携が重要である.5.角膜炎で生じる場合アカントアメーバ角膜炎近年,増加しているコンタクトレンズ装用者にみられる角膜感染症で,強い眼痛と視力低下,羞明,流涙を症状とする.強い羞明は,開瞼を不能にするほどであり,角膜の炎症性混濁と三叉神経刺激によるものと考えられる.病型により多彩な所見を呈し,初期では多発性の角膜上皮下の細胞浸潤,偽樹枝状病変,放射状角膜神経炎を認める.移行期には実質浮腫,細胞浸潤が角膜中央部に生じ実質型ヘルペスに類似した所見を呈する.さらに進行すると,輪状の角膜浸潤を認める.治療は診断を兼ねて病巣部の広い掻爬を行い,抗菌点眼薬(4回/日)とともに,抗真菌治療に準じてフルコナゾール原液もしくは10倍希釈のミコナゾール点眼を6回/日点眼,ピマリシン眼軟膏6回/日,イトラコナゾール内服(150.200mg[3.4錠]を1日1回朝食後30分)あるいは,フルコナゾール(1回200.400mgを1日1回)かミコナゾール点滴(1回200.400mgを1日2.3回)の全身投与を行う.可能であれば,自家調整の0.02%polyhexamethylenebiganaid(PHMB)の1時間毎点眼やグルコン酸クロルヘキシジン(0.02%,6回/日)の点眼を行う.早期診断・早期治療で角膜は透明性を回復できるが,角膜瘢痕が残れば視力不良とともに羞明が残るため,角膜移植を必要とすることもある.V眩しさへの対策眼表面疾患が原因で羞明を生じる場合,眼痛,流涙,視力低下などの他の症状が主体で,羞明はむしろ随伴症状としてみられることが多い.しかし,羞明を訴える疾患のなかに重篤な視機能障害に至る可能性のあるものも含まれるため,系統だてて検査を行い,原因を特定し,その原因となる眼疾患に対する治療を行うことが重要である.羞明の原因となりうる眼疾患が特定され,それに対して適切な治療を行えば症状は軽減もしくは消失する.完全に羞明が消失しない例には,対症療法として羞明を軽減させるべく短波長成分を選択的に遮断するサングラスの装用などを併用すると良い.文献1)島.潤:2006年ドライアイ診断基準.あたらしい眼科24:181-184,20072)高静花:涙液と高次収差.あたらしい眼科24:181-184,20073)横井則彦:眼の不定愁訴と結膜弛緩症.臨眼61:1985-1992,20074)YokoiN,InatomiT,KinoshitaS:Surgeryoftheconjunctiva.DevOphthalmol41:138-158,2008(15)図7春季カタルによる角膜病変落屑様の点状表層角膜症(角膜最上方)とその下方にシールド潰瘍を認める.