———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSる場合には明瞭な画像が得られにくく,また固視不良な場合には,歪んだ画像が得られる場合も多い.しかしながら,特に眼底後極の漿液性網膜離,黄斑浮腫などを患者に侵襲を加えずに負担が少なく行えるので経過を追って病態を観察記録したり,治療効果を客観的に判定したりするのに有用である.ただ,周辺部網膜の観察は困難なところが難点である.また,網膜色素上皮よりも外層の脈絡膜の情報は得にくい.OCTがその力を発揮する代表的な病態に黄斑浮腫や脈絡膜新生血管がある.黄斑浮腫に関して,検眼鏡的にはわからない軽微な浮腫でも,OCTでは検出することができ,視力低下の原因検索に役立つことがある.網膜の浮腫は,OCTでは,網膜外層への水分貯留により層構造の乱れや網膜厚の肥厚として検出される.胞様変化は中心窩と周辺に形成され,ぶどう膜炎でみられる浮腫はこのタイプの浮腫を呈することが多い(図1).原田病に伴う漿液性網膜離では,離した神経網膜と網膜色素上皮に囲まれた低反射領域として観察される(図3).ステロイド治療などにより,適切に炎症がコントロールできれば網膜浮腫の改善と視力向上が期待でき,結果として画像所見の改善として評価することができる(図2,4,5).脈絡膜新生血管に関しては,ぶどう膜炎の長期経過観察中に,脈絡膜新生血管を生じることがあり,検眼鏡的には検出されない微小な病変の検出と非侵襲的な経過観察が可能である(図6).はじめにぶどう膜炎患者の診察に際して,初診時に必ず行うべき眼科検査として,視力検査・眼圧測定・細隙灯顕微鏡による前眼部検査・隅角検査・眼底検査があげられる.加えて,網膜血管や脈絡膜血管の状態を評価するためのフルオレセイン蛍光眼底造影検査(uoresceinangiog-raphy:FA)・インドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(indocyaninegreenangiography:IA)などは,蛍光色素漏出の形態より血管炎や浮腫の存在を明らかにでき,診断に結びつく特徴的な所見が得られるため有効な検査である.超音波検査(ultrasonography:US)は,眼底が透見できないようなときに,眼内の状態を検索・評価する場合に有用で,光干渉断層計(opticalcoher-encetomography:OCT)も,非侵襲的に検査を施行できるために,黄斑浮腫のような網膜病変を経時的に評価するのに有効な検査である.上記の検査法は,鑑別診断に役立つ重要な情報を提供してくれるので,疾患ごとの特徴的検査所見を覚えておくことは診断と治療に大切なことである.I光干渉断層計(OCT)OCTは,近赤外領域の低干渉ビームにより網膜断層像を描出するものであり,後極部眼底の網膜断層像の評価や,黄斑部の網膜厚測定に通常使用されている.OCTは,光によるエコー断層造影検査であるので慢性のぶどう膜炎患者のように白内障や硝子体混濁が存在す(15)1485sushduuOu眼565087122眼特集●ぶどう膜炎検査の正しい使い方あたらしい眼科25(11):14851490,2008光干渉断層計,フルオレセイン蛍光眼底造影,インドシアニングリーン蛍光眼底造影,超音波検査OpticalCoherenceTomography,FluoresceinAngiography,IndocyanineGreenAngiographyandUltrasonography———————————————————————-Page21486あたらしい眼科Vol.25,No.11,2008(16)図1胞様黄斑浮腫網膜内に房状の低反射領域として,隔壁に囲まれたいくつかの部屋からなる胞様黄斑浮腫が認められる.胞様変化によって中心窩の陥凹が消失している.図2胞様黄斑浮腫(ケナコルトTenon下投与後)炎症所見が改善し浮腫が軽快した.図3原田病における漿液性網膜離(治療開始前)感覚網膜と網膜色素上皮が分離した網膜離が認められる.網膜下液は低反射領域になっている.図4原田病における漿液性網膜離(治療開始後)治療により改善傾向にある.図5原田病における漿液性網膜離(治療開始後)網膜下液は消退しつつあり,中心窩陥凹は回復してきている.このようにOCTは,非侵襲的に時間経過を追って治療効果の判定を行うことができる.図6脈絡膜新生血管———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.11,20081487(17)に得られる可能性があり,疾患ごとの特徴的な造影所見を覚えておくと便利である.例をあげるとBehcet病でよくみられる毛細血管レベルでの炎症は,検眼鏡では観察が困難であるがFA所見では網膜毛細血管からのシダ状の蛍光漏出として捉えることができる(図7).原田病における後極部の網膜離に一致した多発性蛍光漏出点と蛍光色素の貯留(図8),急性後極部多発性円板上網膜色素上皮症(acuteposteriormultifocalplacoidpigmentIIフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)の撮影の目的は,網膜循環動態の評価と,網膜血管および網膜色素上皮がもつ血液網膜関門の状態を把握することにある.FAでは,検眼鏡的には判然としない網膜血管炎の所在や蛍光漏出などが過蛍光として描出され,診断に有用である.FAでは,鑑別診断につながる特徴的な所見が疾患ごと図7Behcet病におけるシダ状の蛍光漏出網膜毛細血管からのびまん性色素漏出が認められる.図8原田病における多発性の過蛍光と貯留図9胞様黄斑浮腫菊花様の蛍光貯留造影後期に菊花様の過蛍光を認め,蛍光色素の貯留が認められる.図10サルコイドーシス静脈に沿って多発性結節状の蛍光漏出点を認める.———————————————————————-Page41488あたらしい眼科Vol.25,No.11,2008(18)後での網膜血管炎の活動状態を比較することにより,治療法の選択や投与量の検討を客観的に把握できる点で重要な検査である.IV超音波断層検査(US)ぶどう膜炎疾患における超音波診断は,さまざまな検査機器の進歩にかかわらず,依然として日常不可欠の重要な検査診断法の一つである.その理由として,ぶどうepitheliopathy:APMPPE)における早期の低蛍光と晩期の過蛍光などは診断的価値が高い所見である.また,胞様黄斑浮腫の検出や診断,血管閉塞の診断にも不可欠である(図9).その他,サルコイドーシス(図10)やトキソプラズマ症(図11)などにおいても特徴的な検査所見を得ることができる.IIIインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(IA)インドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(IA)では,FAでは検出が困難な脈絡膜新生血管や脈絡膜の循環障害の検出などに有用な検査である.具体例をあげると,原田病では,脈絡膜循環障害により充盈遅延が認められる(図12).これは,脈絡膜毛細管板での血管閉塞が局所に生じているからで,造影後期まで続く斑状低蛍光が認められる.脈絡膜の循環不全をきたす地図状脈絡膜炎・APMPPEでは,IAでは早期から後期まで低蛍光であり,脈絡毛細管板,毛細血管前細動脈の循環障害が観察され診断の根拠となる.また,multifocalchoroidi-tis(MFC)などのように脈絡膜を主座とする疾患の診断にも有効である(図13,14).以上述べてきたように,FA/IA蛍光眼底所見はぶどう膜炎の活動性と治療効果の判定に有用であり,治療前図11トキソプラズマEdmundJensen型視神経乳頭近傍に生じ,造影後期に組織染する蛍光漏出領域を認める.図12原田病のIA脈絡膜血管が不鮮明で低蛍光斑と脈絡膜血管の透過性亢進による過蛍光が認められる.図13多発性脈絡膜炎(MFC)のFA———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.11,20081489(19)おわりに以上述べてきたように,疾患ごとに特徴的な検査所見を得ることができるためにOCT,FA,IA,USは,臨床所見と検査結果を組み合わせて,鑑別診断から確定診断へと導くことのできる診療を進めるうえでの重要な検査方法であると考えられる.膜炎患者によくみられる硝子体混濁があっても観察でき,眼球内病変の診断が容易に可能であることがあげられる.眼炎症疾患でよく用いられるのは,B-modeである.これは,超音波の反射波の強度を直接,白黒の濃淡をつけることにより表示し観察する方式である.走査プローブの動きにより,組織の二次元的断層像を表示することにより眼球内の形態が捉えられるため,腫瘍などの眼球内構造物の全眼球における位置関係やその全体像,大きさの把握などが同時に行える点で有効な検査方法である.特に高度の前房炎症や硝子体混濁,出血により眼底の観察が困難な場合,エコーで眼底の状態を推察することができる(図15).その他の例として,後部強膜炎における強膜の肥厚像など診断に役立つ情報を得ることができる(図16).USによりびまん性の脈絡膜肥厚を認める所見は,原田病の診断基準の一つにもあげられている.一般的に,眼科領域で使用している超音波診断装置は520MHz周波数の振動数をもつものであるが,この低周波の超音波では毛様体を含んだ前眼部組織の描出には適しておらず,前眼部組織の超音波検査には最近実用化されている3050MHzの高周波超音波装置(ultrasoundbiomicroscopy:UBM)が使用されるようになった.UBMでは,隅角や毛様体の状態位置関係をはっきりと描出することができる.図14多発性脈絡膜炎(MFC)のIA図13のFA所見と比較して脈絡膜病変がより広範囲であることがわかる.図15細菌性眼内炎症例のUS所見前眼部の強い炎症のため眼底が透見不能であったが,USにより網膜全離していることが明らかにされた.図16後部強膜炎のTサイン像後極部組織の肥厚が明らかである.———————————————————————-Page61490あたらしい眼科Vol.25,No.11,2008(20)3)飯田知弘:インドシアニングリーン蛍光眼底造影.眼科検査ガイド,p606-613,文光堂,20044)大島佑介:超音波検査.眼科検査ガイド,p560-564,文光堂,20045)湯澤美都子(編著):インドシアニングリーン蛍光眼底アトラス─フルオレセイン蛍光眼底との比較,南山堂,1999参考文献1)大谷倫裕:OCT.眼科検査ガイド,p576-582,文光堂,20042)髙橋寛二:フルオレセイン蛍光眼底造影.眼科検査ガイド,p600-605,文光堂,2004