———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.3,20093590910-1810/09/\100/頁/JCLS下って家路につきます.火曜日この日は一日手術場です.午前中は角膜移植が多くDSAEK(Descemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplasty),DLKP(深層表層角膜移植術),PKP(全層角膜移植術)などの手術助手をします.移植がない日は自分の硝子体手術症例を入れて,上級医の先生の指導を受けながら手術を行います.最先端の角膜移植を見て,新しい知見を出している現場にいられることは大変貴重な経験です.火曜日は手術が多いためお昼をとる時間があまりありません.大盛り弁当を5分で食べて午後の手術に臨みます.午後はおもに白内障,眼瞼手術,ごくまれに緑内障手術を行います.白内障手術はほとんどが日帰り手術で,入院の場合は1泊2日です.私の助手はおもに看護師ですが,硝子体・緑内障手術などの手術には指導医の先生が助手についてもらえるため安心して手術症例の勉強ができます.(77)バプテスト眼科クリニックは京都駅から40分ほどの比叡山の麓にある眼科クリニックです.ここでは私を含めた常勤医が5人勤務しています.また非常勤医師として,京都府立医科大学のスタッフの先生方に,外来や手術に来ていただいています.当院では屈折矯正,内皮移植を含めた角膜移植といった最先端の医療に加えて,白内障はもちろん,緑内障,網膜硝子体,眼瞼,斜視手術まで幅広く手術を行っています.外来も一般外来に加えて,特殊外来(角膜,緑内障,網膜,眼形成,ドライアイ,屈折・老視矯正)が曜日ごとにあります.一般臨床を学べる病院としては最適な病院で,そこで働く私の一週間をご紹介いたします.月曜日毎朝7時頃に起床し鴨川沿いにある自宅を出発して,晴れた日には朝日を浴びながら東山にある大文字を目指して病院に向かいます.病院は比叡山の入り口で,登り坂の途中にあります.京都の寒い冬の中,自転車で通う私は,病院に着くころには少し汗ばみます.8時前に病棟に行き入院患者を診察します.病床は9床で,角膜移植後,硝子体手術後,緑内障患者が入院しています.あわただしく診察を終了した後,午前は手術出番のため,症例を確認して手術室へ行きます.手術場は2ルームあります.月曜日の午前は白内障・眼瞼・結膜弛緩症・斜視・硝子体の手術を行います.私自身の手術がないときは,大学スタッフの先生のオペ助手について勉強させていただきます.専門の先生方の素晴らしい手術を生で見ながら自分の手術との比較を行い,反省の毎日です.午後は13時半から外来開始.新患に対応しながら予約再診をします.毎日140人を超える外来患者が集まるため,忙しく診察しているとあっという間に時間が過ぎてしまい,気づくと外は暗く夜になっています.そして,病院での長い一日が終わりまた自転車で坂を後期臨床研修医日記●シリーズ⑨バプテスト眼科クリニック北澤耕司▲月1回の京都府立医科大学スタッフの先生の講演会の後(写真は左から成瀬繁太先生,稗田牧院長,足立絋子先生,筆者,山村陽先生)———————————————————————-Page2360あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(78)が引き締まります.DSAEKやPKPのほかにIEKも当院では行っています.生でその手術をみることができ大変貴重な経験をさせていただいています.ドナー角膜をフェムトセカンドレーザーできれいにジグザグにカットできたときは,外回りですがホッとします.午前の手術が終われば木下教授と近所の中華料理屋にランチに行きます.ここでもいろいろなお話を聞くことができ,お昼時間も勉強になります.ただし,服が中華臭くなり,匂いが気になってしまい,消臭剤が手放せません.午後は相変わらずの外来でバタバタと時間が過ぎます.外来が終わると週に1回の医局会があります.毎週,屈折矯正外来の症例検討を行うほか,一般外来や手術症例の症例検討も月1回行っています.また月末には京都府立医大からスタッフの先生に講演に来ていただき,知識のレベルアップをはかります.土曜日いい天気の日に限って仕事があります.常勤医が隔週で外来診察を行います.外来がないときはオンコールですが,ときどき網膜離などの緊急手術が入ります.そのときは休日を返上して病院にかけつけます.携帯が鳴らないことを祈りながら残りの休日を過ごします.まとめ私の一週間をご紹介いたしました.眼科医になって3年経ちいろいろな手術もできるようになってきた時期ですが,常に専門の先生方が周囲にいる環境で仕事ができていることに刺激をうける毎日です.そういった先生方に少しでも近づけるようこれからも頑張っていく次第です.手術が終わった後は,NICU(新生児集中治療室)にいってベビーの診察を行います.バプテスト眼科クリニックから150mほど離れたところにバプテスト病院があります.新患が月に5人ほどいて,毎週3,4人の診察を行っています.700gぐらいの未熟児を診察することもあり,見落としがないか,急な変化がでていないかなど,いつも緊張しながら診察を行っています.水曜日昨日と代わって一日外来です.午前は府立病院のスタッフの先生が角膜外来をしに来てくださるため,その裏で新患に対応します.午前の新患は多岐にわたります.近くの開業医の先生からの紹介もたくさんあります.また手術症例も多く気が抜けません.白内障手術症例と思いきや水晶体亜脱臼だったなどの症例もあり大変勉強になります.京都の患者はすごく上品で外来にも着物で来られます.「どすえ」とか「でっしゃろ」など京都弁もでて,「私の人工レンズは一番いいレンズでっしゃろか?」などと言われたときにはその返答に困ってしまいます.木曜日この日は一日大学に研修にいっています.木曜日は網膜外来があり一般病院では出会わない珍しい症例や難治性疾患を目に焼き付けます.朝8時から網膜カンファランスで症例検討を行い,その後回診があります.そして外来.網膜外来だけに臨時手術となるような外傷や網膜離の紹介が多く,外来が終わるとそのまま臨時手術ということは日常茶飯事です.臨時手術が立て込むときは夜の12時くらいまで手術が続くこともあります.臨時手術がなければ,その日に診た患者さんのなかで珍しい症例をピックアップしてディスカッションしたり,英文論文の抄読会を行ったりします.網膜専門の先生方のディスカッションを聞くことができ大変勉強になり,充実した一日です.金曜日もうすぐ週末,とテンションが上がってくるところですが,その前に木下茂教授の移植手術があり気持ち?プロフィール?北澤耕司(きたざわこうじ)平成16年京都府立医科大学卒業.大阪府済生会吹田病院と京都府立医科大学で初期臨床研修.平成18年より京都府立医科大学医学部眼科学教室後期研修医.平成19年に町田病院に赴任.平成20年9月からバプテスト眼科クリニックに赴任.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009361(79)指導医からのメッセージ2年間のジェネラルな前期臨床研修を終了し,後期研修で専門とする眼科に入ったことになるわけですが,この後期研修では学会認定の専門医資格を取得することを目的とし,より高度で専門的な医学知識と医療技術を修得していくことになります.大学病院での研修はともすると,その眼科学教室の柱となる専門分野に偏った内容になりがちです.市中病院の当院では,屈折異常,前眼部炎症性疾患,白内障などの実際に多い症例に対する適切な治療を学びつつ,「こなす」テクニックを身につけながら,さらに自分の専門を磨くチャンスでもあります.後期研修医は新しい制度での新しい存在です.なにかと忙しいかもしれませんが,枠にとらわれることなく,興味があることに積極的かつ倫理的にチャレンジしていってください.バプテスト眼科クリニック・院長稗田牧☆☆☆