———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.9,200812670910-1810/08/\100/頁/JCLS症の患者などは小椋祐一郎教授を頼って遠方から受診されることも少なくありません.そして午後には緑内障外来があり,ようやく外来業務が終わるとつぎは病棟業務に移ります.病棟業務では入院患者の検査,診察,検査手術の説明などを行い,18時からの症例検討会に備えます.症例検討会ではその週の手術症例についてディスカッションを行います.私たちは(一生懸命ながらも…)まだまだ視野が狭く,このディスカッションのなかで,手術に向けての先生方のさまざまな配慮を知ることができ,いつも大変勉強になっています.火曜日手術日にあたります.白内障,硝子体手術を中心に12件ほどの手術が行われます.手術室ではほとんどの場合,後期研修医が第一助手に入ります.教授の手術に第一助手として入り,間近に学ぶことのできる貴重な機会です.素晴らしい手術につい見とれてしまうこともしばしばです.(79)名古屋市立大学病院眼科では4月より3名の新しい後期研修医を迎えました.彼らに2年間の臨床研修のうち8カ月を当科で研修し,後期研修1年目を関連病院で過ごした2名を加え,現在,計5名の後期研修医が働いています.私たち5人は出身大学も研修病院も異なりますが,個性的な面々が力を合わせ,忙しいながらも充実した後期研修医生活を送っています.当科では1人の入院患者を12名の指導医と1名の後期研修医で担当しています.全体では平均3035人の入院患者を5名の後期研修医で分担することになります.当科の方針により,基本的には外来が始まる9時までに受け持ち患者の診察をすべて終えなければなりませんので,受け持ち患者が多い場合や手術翌日,また午前に代務のある日などは午前7時には回診を始めなければなりません.そして外来の時間帯になると,(手術や代務のない限り)検査や診察を手伝うことになります.それでは私たち5人の怒濤の1週間を紹介させていただきます.月曜日忙しい1週間の始まりの日であり,また,容赦なく1週間のうちで一番忙しい日でもあります.朝8時から教授回診が始まるため,それまでに余裕をもって自分たちの受け持ち患者の診察を終わらせておかなくてはいけません.そして8時になると,(もちろん悪い意味ではなく,「手際良く回診が進んでいく」という意味で)淡々と教授回診が進んでいきます.その短い時間のなかで,私たちが毎日診察していても気づかない点を鋭く指摘していただくこともしばしばです.回診後には教授外来があります.教授外来は月曜日のみであり,毎回多くの紹介初診患者と再診患者が受診され,診察は午後まで続きます.おもな疾患は黄斑疾患,糖尿病網膜症,網膜離などで,重症な増殖糖尿病網膜後期臨床研修医日記●シリーズ⑦名古屋市立大学病院眼科石神裕子▲写真は左から臼井嘉先生,石神,植田次郎先生,日江井佐知子先生,高井祐輔先生———————————————————————-Page21268あたらしい眼科Vol.25,No.9,2008(80)緊急手術が入る場合もあり,また,そのような日が連日のように続く週もあります.大学病院は朝早くから夜遅くまで忙しく,比較的時間に余裕のあった関連病院にいた頃を懐かしく思うこともあります.しかし,大学病院での勤務でしか得ることのできない良い点も数多くあります.関連病院では加齢黄斑変性,重症糖尿病網膜症,網膜離などの症例はそれほど多くはありませんが,大学病院ではこれらの症例に接する機会も多く,さまざまな経験を積むことができます.また,入院患者の診察では,時間をかけて注意深く診療することができ,疑問に思ったことも職場の同僚や上級医師にその場で聞くことができるため,フィードバックと経験の蓄積において非常に大きなメリットがあります.さて,最後に少しばかり私自身のことについて触れてみたいと思います.現在,私は(大学病院での勤務以外に)名古屋市内の2カ所の関連病院と名古屋市児童福祉センターで週1回ずつ非常勤勤務を行っています.児童福祉センターではハンディキャップをもつ児童が対象となります.私はけっして子供は嫌いではないものの,これまでプライベートで子供と接する機会がそれほど多くなかったため,ときどき子供たちとの会話にとまどってしまうこともあります.コミュニケーションは良い診察の第一歩!頑張らねば!水曜日午前は通常の外来,午後は網膜疾患の専門外来にあたります.網膜外来では糖尿病網膜症,加齢黄斑変性などの症例が中心となります.木曜日に手術予定の患者は水曜日に入院されるケースが多いため,にわかに病棟業務が忙しくなる日でもあります.木曜日火曜日と同じく手術日にあたります.また夜には抄読会,ケースカンファレンスがあります.(忙しさに追われ…)普段は論文を読む機会があまりありませんが,このときばかりは辞書を片手に英語論文と格闘します.ケースカンファレンスでは自分が経験したことのない珍しい症例を知ることができ,また自身の発表の練習にもなります.金曜日この日は,午前は通常の外来,午後は網膜外来,そして小児疾患専門外来があります.小児外来は斜視弱視や未熟児網膜症を経験できる集中的に学べる機会です.未熟児網膜症の診療については教科書で読んだり,講演で聞いたりする程度で,初めのころは「D-lineRidge」といった具合に用語すら馴染みの薄いものでした.しかし実際の症例に触れるうちに徐々に理解できるようになり,今では私自身,興味のある分野の一つです.以上,大まかに私たちの1週間について紹介させていただきましたが,これらの通常業務に加え,緊急手術が入ることも少なくありません.多いときは1日に複数の?プロフィール?石神裕子(いしがみひろこ)2005年,名古屋市立大学を卒業後,同大学病院で2年間の臨床研修(うち8カ月を眼科で研修)を終える.2007年より,大同病院(名古屋市南区)に勤務した後,2008年4月より本大学病院に勤務.教授からのメッセージ非常に忙しい毎日を送っている後期研修医の生活がよく伝わってきます.研修医はいろいろな雑用を含めて仕事量がきわめて多く,本当にたいへんなことと思います.私も自分が研修医の頃,朝早くから夜遅くまで病棟で仕事をしていたことを思い出します.しかし,研修時代は初めて経験する疾患や珍しい症例に遭遇することで,毎日が新たな発見の連続だと思います.学究的好奇心をもって,多くの知識・技術を身につけていってください.何とか若い先生の負担を減らして勉強する時間をつくってあげようと努力をしていますが,大学病院という大きなシステムのなかではなかなか困難なことが多いです.これからも,高いモチベーションと広い視野をもって,立派な眼科医に成長することを期待しています.名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学・教授小椋祐一郎