———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSa.キセノン光源による照明装置キセノン光源の照明装置には,アルコン社のAccurusHighBrightnessIlluminator,シナジェティクス社のPhoton,ドルク社のBrightStarがある.キセノン光は網膜光障害をきたす短波長の光スペクトルを有するため,いずれの照明装置も短波長光をカットするバリアフィルターが内蔵されており,長時間の眼内照明による網膜光障害が生じないように安全性にも配慮した設計になっている.とりわけドルク社のBrightStarは4種類のバリアフィルター(420,435,475,515nm)が内蔵されており,用途に合わせてフィルターを選択することができる.同じキセノン光源でも各社のバリアフィルターの違いによって照明光の色に違いがあり,照明光の色分布を色度図(ChromaticityDiagram)に示した(図1).b.水銀蒸気灯光源による照明装置最近では,同じ出力パワーでキセノン光源よりも約2倍の明るさを有し,かつ網膜光障害の少ない水銀蒸気灯(mercuryvapor)を用いた光源装置(PhotonII)がシナジェティクス社より発売されている.PhotonIIの波長ピーク(図2)は550nmと580nmが中心なので,ややイエローグリーンな照明色(図1)であるが,術中の硝子体の観察がしやすく,網膜光毒性の観点からより長時間の手術に耐えうることが利点である.2.照明ファイバー照明装置が改良されたことに伴って,眼内照明に使うはじめに極小切開硝子体手術(microincisionvitrectomysur-gery:MIVS)が最近になって飛躍的に広まってきた背景には,新しい眼内照明系の開発と広角観察システムの存在があげられる.明るい照明装置とシャンデリア式眼内照明を用い,これに眼底を後極部から周辺部まで一度に見渡せる広角観察システムを組み合わせることによって,23ゲージや25ゲージのような細い器具を用いても,比較的に安全かつ快適な手術が可能となった.さらに,裂孔原性網膜離や増殖糖尿病網膜症などのような後極部操作に限らず赤道部周辺部までの眼内操作も必要な症例もMIVSでストレスなく行うことができるようになってきた.これらの周辺機器の普及に伴って,最近のMIVSの手術適応そのものが広がったようにも思われる.本稿では,現在のMIVSに欠かせない眼内照明システムおよび広角観察システムの特徴と使用上の留意点について概説する.I眼内照明系(光源装置と照明ファイバー)1.光源装置25ゲージのような細い口径の照明ファイバーからでも十分な眼内観察光が得られる出力輝度の高い照明装置として,キセノン(xenon)光源や水銀蒸気灯(mercuryvapor)光源による照明装置が新たに開発され,MIVSには欠かせない重要なアイテムの一つとなっている.現在市販されているこれらの照明装置を表1にまとめた.(17)1345a系眼56522.7系眼特集●極小切開硝子体手術あたらしい眼科25(10):13451353,2008眼内照明系と広角観察システムの進歩AdvancementsinEndo-IlluminationandWide-AngleViewingSystem大島佑介*———————————————————————-Page21346あたらしい眼科Vol.25,No.10,2008(18)て,照射角の広い,いわゆるトータルビューやワイドビューとよばれる23ゲージや25ゲージのライトパイプが開発された.さらに,最近では眼内を一度に広く照明できる,いわゆるシャンデリア式の照明ファイバーが照明ファイバーの選択肢も増えてきた(表2).従来のハロゲン照明装置では,20ゲージのライトパイプでも狭い範囲を照らすタイプのものしかなかったが,キセノンや水銀蒸気灯による輝度の高い照明装置の登場によっ表1各社のキセノン光源と水銀光源装置キセノン光源装置水銀蒸気灯光源装置光源装置AHBI(アルコン社)PhotonI(シナジェティクス社)BrightStar(ドルク社)PhotonII(シナジェティクス社)外観特徴,利点・420nm紫外線カットフィルター・赤外線フィルター・435nm紫外線カットフィルター・最大出力68lumen(20G)・最大出力40lumen(Awhシャンデリア25G)・4段階選択式の波長カットオフフィルター(420nm,435nm,475nm,515nm)・700nm以上の赤外線カットフィルターも搭載・lumen,ISOによる輝度表示・435nm紫外線カットフィルター・PhotonIよりも明るく安全(550nm,580nmにしか波長ピークを有さない,同じ出力(W)でPhotonIよりも2倍の照明輝度(lumens)を有する)接続可能な照明ファイバーの例・25Gライトパイプ・23Gライトパイプ・Torpedoシャンデリア・25Gシャンデリア・トロカール挿入用25Gシャンデリア・インフュージョン付25Gシャンデリア・27Gシャンデリア・トータルビューファイバープローブ(20G,23G)・エッカード氏ツインライトシャンデリア(25G,27G)・トータルビューシャンデリア23G・PhotonIに接続可能なシャンデリア照明が使用可・27/29Gシャンデリアも使用可AHBI:AccurusHighBrightnessIlluminator.PhantonIIAccurusHalogenXeunfilteredXeISO15752filteredReferenceWhiteMillenniumMetal-HalideBrightStar4200.80.60.4y0.8000.20.4×0.60.8435475515図1主要な照明装置による眼内照明光の色度図(ChromaticityDiagram)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.10,20081347(19)最近では,25ゲージ,27ゲージ(図3a,b)や29ゲージの極細ファイバー(図4a,b)のほか,さまざまなバリエーションのシャンデリア照明ファイバーが開発されている(図5a,b).疾患の特徴に合わせて,使いやすい種類のシャンデリア照明ファイバーを選択することができる(表3).b.シャンデリア照明ファイバーの利点と欠点シャンデリア方式の照明ファイバーを後述する広角眼底観察システムと組み合わせて用いれば,過度に眼球を動かすことなく,眼内を後極から網膜最周辺部まで一度に見渡すことができる.手術の安全性が向上するだけでかなり有用視されている.a.シャンデリア照明ファイバーのバリエーション市販するシャンデリア照明ファイバーはシナジェティクス社とドルク社のものが中心で,前者は自社の照明装置(Photonシリーズ)にしか接続できないが,後者は専用アダプターを用いれば,各社の照明装置とも接続可能である.1.000.800.600.400.200.00350400450500550600波長(nm)650700750800相対的図2水銀蒸気灯光源とキセノン光源の波長曲線黒実線:水銀蒸気灯光源の波長曲線(550nmと580nmの波長ピークを有する),灰色実線:キセノン光源の波長曲線,破線:健常人網膜の比視感度分布曲線,点線:無水晶体眼の網膜に対する光障害波長曲線.27ゲージ(0.35mm)25ゲージ(0.50mm)1,000μm図3a経結膜強膜固定式の25と27ゲージシャンデリア照明ファイバーの先端(シナジェティクス社)図3b経結膜強膜固定式の27ゲージ・ツインシャンデリア照明ファイバー(ドルク社)表2照明ファイバーの選択ライトパイプ式(術によるが要)従来通りのライトパイプ:明るさがやや暗く,照明範囲が狭いワイドビュー(トータルビュー)ライトパイプ:広角観察システムにも対応できる広い照明範囲を有するが,照明輝度はシャンデリア照明にやや劣るシャンデリア方式(広角観察できるうえ,術者による保持は不要)固定式スタンダードタイプ:27Gや27/29Gも開発されて,双手法の眼内操作にも便利カニューラに挿入可能なタイプ:固定式シャンデリア照明の利点を有するうえ,右手と左手の差し替えに便利インフュージョンライン付きのタイプ:黄斑手術なら,このタイプを用いて2ポートで事足りる———————————————————————-Page41348あたらしい眼科Vol.25,No.10,2008(20)子体を先に切除してしまうとよい.また,シャンデリア照明ファイバーは空気灌流下でもその先端が高熱となることが知られており,液-空気置換後は光量を下げることや必要以上に長時間にわたって空気灌流下で使用しないなどの対処が必要である.なく,25ゲージの欠点といわれる器具の剛性の問題もかなり解消される.また,網膜を局所的に照らすライトパイプとは異なり,シャンデリア照明は強膜壁に固定されるために黄斑部との距離が長くなる分,照明光が眼内全体に分散され,単位面積当たりの網膜光毒性も軽減できる可能性があるなどの利点が多い.しかし,大量の硝子体出血を認める症例にシャンデリア照明を用いる場合,まれに照明ファイバーの先端に凝血塊が付着し,それに伴う吸熱反応が原因でファイバー先端に熱溶解を生じることがある.このような懸念がある症例では手術開始時に照明ファイバー先端部周囲の硝図5a23ゲージのカニューラに挿入して用いるシャンデリア照明ファイバー(ドルク社)図5b25ゲージの灌流ライン付きシャンデリア照明ファイバー(シナジェティクス社)ab図427/29ゲージ・ワンステップシャンデリア照明ファイバーa:27ゲージ針の外套(矢印)の内部に29ゲージのシャンデリア照明ファイバーが通っている.b:強膜に刺入したのちに外套(矢印)を引くと29ゲージのシャンデリア照明ファイバーの先端(矢頭)が飛び出る構造になっている.表3シャンデリア照明ファイバーとライトパイプとの操作性の比較ライトパイプ固定式25Gや27Gシャンデリアトロカール挿入用23Gや25Gシャンデリアインフュージョン付き23Gや25Gシャンデリア自己閉鎖性△○○黄斑疾患○○○◎周辺部硝子体切除△○◎△双手法手術×◎△×◎:最適,○:使用可,△:やや難あり,×:不向き.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.10,20081349(21)観察像を得ることができる.逆に,広角観察システムの欠点として,屈折率の高い凸レンズを通じての眼底観察であるので立体感が乏しい,一部のセミ・ワイドタイプのものを除けば,倒像を直像に変換するインバーター装II広角観察システムMIVSに限らず,20ゲージ手術も含めて,最近の世界的な硝子体手術のトレンドの一つとして,広角観察システム(wide-angleviewingsystemもしくはpano-ramicviewingsystem)の普及があげられる.2006年のASRS(AmericanSocietyofRetinalSpecialists)による会員アンケート調査結果では,実に70%以上の網膜硝子体術者は何らかの広角観察システムを用いて手術している.すでに1990年代に開発された広角観察システムだが,ここ数年来の眼内照明系の進歩に伴って,その有用性が見直され,欧米では今や硝子体手術に欠かせないスタンダードアイテムであるといっても過言ではない.広角観察システムの利点と欠点を表4にまとめた.最大の利点は言うまでもなくその広い観察野にある.広角観察システムのいずれのタイプとも基本的には光学的に瞳孔中央付近に集光する倒像レンズの特性を利用しての眼底観察であるので,従来のフローディング式の硝子体コンタクトレンズのように頻繁にレンズを交換することなく,散瞳不良例でも,空気置換例でも,角膜形状や透明性に問題を有する症例でも,比較的に広く良好な眼底表4広角観察法の利点と欠点広角観察システムの利点周辺部病変の見落としが少ない眼内光凝固などの周辺部操作に便利周辺部観察や液-空気置換時のレンズ交換が不要空気置換下でも視認性が良い小瞳孔(3mm以上)でも視認性が良い前眼部,中間透光体の混濁に強い広角眼内照明やシャンデリア照明との相性が良い強膜圧迫の必要性が少ない広角観察システムの欠点倒像のため直像への変換装置(インバーター)が必要立体感が少ないため,黄斑部操作には不向き設備投資費用がかかる操作の習得に一定の期間(ランニングカーブ)が必要通常の硝子体コンタクトレンズと焦点距離が異なり,顕微鏡の粗動調整が必要広角眼内照明やシャンデリア照明がないと特性を生かせない接触型では,顕微鏡のX-Yの操作が逆非接触型では,前置レンズ縁が手術器具と当たりやすく,レンズの曇りや水滴付着が問題abc図6倒像を直像に変換するインバーター装置a:電動式のSDI(StereoscopicDiagonalInverter,オクルス社).b:切り替えレバーによる手動式のROLSReinverter(ボルク社).c:顕微鏡の対物レンズ(灰色丸)に内蔵される方式のInvertertube(ツァイス社).ノブ(矢印)を手動で切り換える.他社の装置と比べて画像切り替えのためのプリズムの追加がないので,インバーター装置の設置による観察像の画質低下が少ないのが特徴である.———————————————————————-Page61350あたらしい眼科Vol.25,No.10,2008(22)接触型に大別される.現在,わが国で使用されている非接触型と接触型の各システムの比較を簡単に表5にまとめた.また,参考までに各システムを用いた術中の観察像を図7acに示した.以下,わが国で使用されている各システムの特長と使い方のコツについて概説する.1.非接触型システム非接触型システムを眼底観察範囲が100°以上のいわゆるワイド・アングルタイプのものとそれ未満のいわゆ置が必要であることがあげられる.なお,インバーター装置には電動式のSDI(StereoscopicDiagonalInverter,オクルス社)と手動式のROLSReinverter(ボルク社)とInvertertube(ツァイス社)が市販されている(図6ac).広角観察システムには,顕微鏡や手台にシステム本体が固定されて,角膜前面に非接触式の前置レンズが降りてくる形式の非接触型と,従来の硝子体コンタクトレンズ同様に,直接角膜に広角観察レンズを前置するだけの表5主要な各種広角観察システムの比較接触型非接触型種類ClariVit,MiniQuadなどBIOMOFFISSPeyman-Wessels-Landers倒像変換システム必要必要必要不要対応する顕微鏡問わないツァイス社,ライカ社トプコン社(OMS-800)問わないシステム固定部位角膜上顕微鏡筒顕微鏡支持部手台(支持台)か顕微鏡支持部購入価廉価高価最も高価比較的に廉価X-Yの操作通常と反対通常と同様通常と同様通常と同様後極部操作支障なし前置レンズに当たりやすい前置レンズに当たりやすい支障なし強膜圧迫慣れが必要簡便簡便簡便最大視野角130°以上120°130°以上100°観察範囲(灌流下)有水晶体眼偽水晶体眼無水晶体眼硝子体基底部硝子体基底部鋸状縁鋸状縁毛様体扁平部赤道部硝子体基底部硝子体基底部硝子体基底部鋸状縁硝子体基底部硝子体基底部鋸状縁鋸状縁毛様体扁平部赤道部赤道部硝子体基底部硝子体基底部観察範囲(空気下)有水晶体眼偽水晶体眼無水晶体眼鋸状縁鋸状縁毛様体扁平部毛様体扁平部皺襞部硝子体基底部硝子体基底部鋸状縁鋸状縁毛様体扁平部鋸状縁毛様体扁平部毛様体扁平部皺襞部赤道部硝子体基底部硝子体基底部硝子体基底部鋸状縁最周辺部の視認性鮮明やや不鮮明鮮明限界あり眼球回転時の視認性低下するやや歪む支障なし支障なし助手の必要性あれば助かるなしなしなしabc図7シャンデリア照明下での各広角観察システムによる眼底観察像の比較a:非接触型(BIOM)と水銀蒸気灯光源(PhotonII)の組み合わせ.b:非接触型(OFFISS)とキセノン光源(BrightStar,475nm)の組み合わせ.c:接触型(クラリビットレンズ)とキセノン光源(PhotonI)の組み合わせ.———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.10,20081351るセミ・ワイドタイプのものに分けると,前者にはBIOM(BinocularIndirectOphthalmomicroscope,オクルス社)(図8a)とOFFISS(OpticalFiberFreeIntrav-itrealSurgerySystem,トプコン社)(図8b)があり,後者にはPeyman-Wessels-Landerswideeldvitrecto-mylens(オキュラー・インスルメント社)(図9)がある.最近少し注目されているPeyman-Wessels-Land-erswideeldvitrectomylensは倒像を直像に変換するインバーター装置が必要ないのがBIOMやOFFISSよりも便利な点であるが,セミ・ワイドなために眼球を動かさないと隅々まで見えないのが難点である.一方,BIOMとOFFISSを比較すると,前者は顕微鏡の鏡筒と一体にして動くのに対して,後者は前置レンズを含めたシステム本体が顕微鏡の支持部に接続されて,鏡筒とは独立してピント調整できる点で操作性に優れている.さらに,OFFISSのほうは観察野の広さと鮮明度が(23)ab図8眼底観察野が100°以上の非接触型広角観察システムa:BIOM(BinocularIndirectOphthal-momicroscope,オクルス社).b:OFFISS(OpticalFiberFreeIntra-vitrealSurgerySystem,トプコン社).いずれも倒像を直像に変換するインバーター装置が必要.abab図9セミ・ワイドタイプの非接触型広角観察システムa:レンズを保持する支持アームとレンズ本体(Peyman-Wessels-Landerswideeldvitrectomylens).b:手術の実際.手術台に支持アームで接続しており,画像変換するインバーター装置を必要としない.———————————————————————-Page81352あたらしい眼科Vol.25,No.10,2008BIOMより数段優れていることを強調したい.しかし,BIOMは複数の会社の顕微鏡に簡単に装着できるのに対して,OFFISSは自社製の顕微鏡にしか接続できないので,汎用性の点において今後さらに改良する余地がある.一般的に非接触型は接触型に比べて,システム構築にかなりの費用がかかること,BIOMやOFFISSでは前置レンズと角膜の距離が近いために,手術操作がレンズ縁によって妨げられること,角膜の乾燥や患者の息遣いでレンズに生じる曇りが視認性の低下につながることなどの難点がある反面,強膜圧迫や双手法による眼内操作がしやすく,倒像観察時の顕微鏡のX-Y操作が接触型のような逆の動きを取らない点で初心者にはマスターしやすい.しかし,接眼レンズは水平方向の動きであるのに対して,眼球の動きは回転方向であるので,これまで眼球を動かしながら手術操作する術者にとって,使用当初は観察像のピント合わせに苦労することがある.一般的な使用上のコツとして,角膜の乾燥防止には粘弾性物質のコーティングによる保湿,レンズに生じる曇りはドレーピングの徹底と吸引付き開瞼器を使用することでほぼ解消できる.接触型にも共通して言えることであるが,良好な観察像を得るには,眼球を極力動かさないように心掛けて手術することが肝要である.2.接触型システム現在市販されている広角観察用硝子体コンタクトレンズにはボルク社のミニクアド,クラリビット・ワイドアングル(通称:クラリビット)(図10a,b)やオキュラー・インスルメント社のランダース・ワイドアングルレンズなどがある.いずれのレンズも,静置すれば有水晶体眼では約110°以上(硝子体基底部付近)の観察野が得られ,さらに少し傾けると130°以上(鋸状縁付近)の広い観察野が得られる.これを無水晶体眼(白内障同時手術時)で観察すると,静置状態でほぼ鋸状縁付近まで観察できるので,シャンデリア照明と組み合わせれば,ほとんど強膜圧迫なしで網膜最周辺部まで硝子体切除を完遂でき,MIVSとの相性がよい.接触型の広角観察システムはインバーター装置と広角観察レンズのみで構成されるので,非接触型システムに比べてはるかに廉価であるうえ,非接触型のような前置レンズと角膜間で生じる光収差や観察軸のずれがないため,非常に鮮明な眼底観察像を得ることができる.また自己固定式のシャンデリア照明の登場によって,術者は自らこれまでライトパイプを把持していた手でレンズを支持することや強膜圧迫を行うことができるので,助手の力を頼らずとも,接触型システムでストレスなく手術を完遂することができる.しかし,倒像観察時の顕微鏡のX-Yの操作は直像時の操作とまったく逆となるので,操作に慣れるのには少し時間がかかる.ピント調節の距離も従来の硝子体コンタクトレンズに比べてかなり長く,微動調節以上の範囲での鏡筒の上下調節を行う必要があるので,上下の粗動調節がフットスイッチによる電動でできる顕微鏡がより便利である.以上,新しい眼内照明系と広角観察システムについて概説した.MIVSの登場によって,硝子体手術はますますその安全性と確実性を求められる手術となってきた.新しい眼内照明系と広角観察システムを組み合わせることによる視認性の向上と眼底観察野の拡大は,合併症の発生率の軽減と手術時間の短縮につながるさまざまなメリットが期待でき,まさにMIVSとベストマッチするシステム構築であると思われる.文献1)大島佑介:ニューインスルメント:硝子体手術用キセノン光源装置とシャンデリア方式の眼内照明.眼科手術18:515-518,20052)若林卓,大島佑介:ニューインスルメント:経結膜無縫合硝子体手術における新しいシャンデリア方式の眼内照明.眼科手術20:61-65,20073)OshimaY,AwhC,TanoY:Self-retaining27-gauge(24)ba図10広角観察用の硝子体コンタクトレンズ―ボルク社のミニクアド(a)とクラリビット・ワイドアングル(b)———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.25,No.10,20081353transconjunctivalchandelierendoilluminationforpanoram-icviewingduringvitreoussurgery.AmJOphthalmol143:166-167,20074)OshimaY,ChowDR,AwhCCetal:Novelmercuryvaporilluminatorcombinedwitha27/29-gaugechande-lierlightberforvitreoussurgery.Retina28:171-173,20085)EckardtC,EckertT,EckardtU:27-gaugeTwinlightchandelierilluminationsystemforbimanualtransconjunc-tivalvitrectomy.Retina28:518-519,20086)ShimadaH,NakashizukaH,HattoriTetal:Thermalinjurycausedbychandelierberprobe.AmJOphthalmol143:167-169,20077)SpitznasM:Abinocularindirectophthalmomicroscope(BIOM)fornon-contactwide-anglevitreoussurgery.GraefesArchClinExpOphthalmol225:13-15,19878)林仁,日下俊次,大橋裕一ほか:PanoramicViewingSystemを用いた硝子体手術.眼科手術8:117-120,19959)HoriguchiM,KojimaY,ShimadaY:Newsystemforberoptic-freebimanualvitreoussurgery.ArchOphthal-mol120:491-494,200210)LandersMB,PeymanGA,WesselsIFetal:Anew,non-contactwideeldviewingsystemforvitreoussurgery.AmJOphthalmol136:199-201,200311)NakataK:Wide-angleviewinglensforvitrectomy.AmJOphthalmol137:760-762,200412)川村肇:ワイドビューイングシステムを使用した裂孔原性網膜離の硝子体手術.眼科手術19:447-450,200613)白神史雄:ワイドビューイング硝子体手術:接触型.眼科手術20:520-522,2007(25)