———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.12,200716270910-1810/07/\100/頁/JCLS平成19年10月現在,日本では15種類の緑内障点眼薬が発売されている(表1).多くの緑内障治療薬が発売されている現在,新たな治療薬の開発の余地がないように思われるが,今なお厳しい開発競争が行われている.本稿では,欧米と日本における緑内障点眼薬を比較しながら,今後日本で発売が予測される緑内障新薬を紹介する.(77)連載緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄90.今後発売が予測される緑内障新薬池田博昭*1塚本秀利*2*1広島大学病院臨床研究部*2高山眼科国内で今後発売が予測される緑内障新薬の候補として,プロスタグランジン関連薬は配合薬を含めて3種類,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬1種類,Rho-キナーゼ阻害薬3種類,a刺激薬1種類,カルシウムチャネルブロッカーは点眼および内服各1種類の計10種類があげられる.これら新薬の開発が順調に進めば,数年後には日本も欧米と同等以上の医療環境になると期待される.表1緑内障点眼薬の欧米と日本の発売状況の比較欧米日本交感神経動薬ロカルンカルール×コリンエステラーゼ阻害薬ジスチグミン×○交感神経刺激薬ab刺激薬ジピベフリン○○エピネフリン○×a刺激薬ブリモニジン○×アプラクロニジン○×交感神経遮断薬b遮断薬チモロール○○チモロールゲル○○ベタキソロール○○カルテオロール○○メチプラノロール○×ab遮断薬ニプラジロール×○レボブノロール○○a遮断薬ブナゾシン×○プロスタグランジン関連薬ウノプロストン○○ラタノプロスト○○ビマプロスト○×トラボプロスト○○炭酸脱水酵素阻害薬ドルゾラミド○○ブリンゾラミド○○2種類の薬剤を配合b遮断薬とプロスタグランジン関連薬チモロールとラタノプロスト○×b遮断薬と炭酸脱水酵素阻害薬チモロールとドルゾラミド○×○:発売,×:未発売.平成19年10月現在.———————————————————————-Page21628あたらしい眼科Vol.24,No.12,2007■米と日本における緑内障点眼薬の比較(表1)欧米と日本で発売されているおもな緑内障点眼薬を表1に示した.欧米で発売されていない点眼薬はジスチグミン,ニプラジロール,ブナゾシンの3種類であるが,日本では,カルバコール,エピネフィリン,ブリモニジン,アプラクロニジン(レーザー前後の使用は可能),メチプラノロール,ビマプロスト,配合薬(チモロール+ラタノプロスト,チモロール+ドルゾラミド)の8種類が発売されていない(表1).本における緑内障治療薬の開発の動向(表2)日本において新たに開発される治療薬は,欧米で最初に開発された新薬が日本へ技術提携される場合と,逆に,まず日本で開発されその後欧米へ技術提携される場合に大別される(表2).欧米から日本へ導入された治療薬のほとんどは欧米ではすでに発売されており,逆に日本から欧米へ導出された治療薬は日本が先行している.しかし,今後の治療薬は開発期間の短縮やコスト削減を目的に欧米および日本で同時に行う傾向であることから,欧米との医療環境は類似するであろう.後発売が予測される緑内障新薬(表3)プロスタグランジン関連薬欧米ではウノプロストン,ラタノプロスト,ビマトプロスト,トラボプロストの4種類が使用可能であるのに対し,日本では平成19年10月よりトラボプロストが発売となりウノプロストン,ラタノプロストの3種類が処方できるようになった.ビマトプロストは治験を終了している.5番目のプロスタグランジン関連薬となるタフルプロストが日本と欧米において開発中で,これが日本で先行発売されると,米国を追い越しプロスタグランジン関連薬5種類が選択できる時代になる.配合薬日本は今まで配合薬を承認しない傾向にあったが,現在,すでに発売されている2種類の薬剤を配合した製剤(78)表2新薬開発の動向従来欧米から日本へ導入欧米で開発され承認を得た薬を欧米データを利用して治験を実施日本から欧米へ導出日本で開発した薬を技術提携により欧米で治験を実施↓今後日本と欧米で同時開発日本・欧米データの同時相互利用による開発期間の短縮・費用の削減表3日本で開発中の緑内障治療薬(平成19年10月現在)点眼薬開発中の新薬成分名製薬会社国内開発状況*プロスタグランジン関連薬ビマトプロスト千寿製薬治験終了医薬品製造販売承認申請中タフルプロスト参天製薬治験終了医薬品製造販売承認申請中プロスタグランジン関連薬+b遮断薬配合薬ラタノプロスト+チモロールファイザー第Ⅱ/Ⅲ相アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬オルメサルタン参天製薬第Ⅱ相(パイロット試験準備中)Rho-キナーゼ阻害薬未公表参天製薬米国第Ⅰ相千寿製薬第Ⅱ相準備中興和第Ⅰ相a刺激薬ブリモニジン千寿製薬第Ⅲ相カルシウムチャネルブロッカーイガニジピン千寿製薬第Ⅱ相経口薬ロメリジン参天製薬第Ⅱ相*:日本製薬工業会の新薬・治験情報および各製薬会社のホームページに記載された内容とした(第Ⅱ相の前期・後期,実施中・終了などの詳細情報は不明).———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.12,20071629(79)時間間隔の点眼が必要で,1525℃の保管温度が記載されているが日本ではどうなるであろうか.カルシウムチャネルブロッカーイガニジピンはジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬で正常眼圧緑内障治療点眼液として欧米と日本で開発中である.ロメリジンは片頭痛の適応で発売されているテラナスR錠は視野欠損の進行を抑制する適応症の拡大として開発が進められている.おわりに以上,欧米と日本における緑内障点眼薬を比較しながら,今後日本で発売が予測される緑内障新薬を紹介した.これら新薬の開発が順調に進めば,数年後には日本においても欧米と同等の薬物療法が行える環境になることが期待できる.出典:本稿で取り上げた国内開発状況は,日本製薬工業会の新薬・治験情報および製薬会社のホームページを参照した.の開発が進行している.配合薬は,患者の点眼コンプライアンスの向上や医療経済的なメリットを考えて認可される可能性がある.アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬作用機序は,アンジオテンシンⅡタイプ1受容体拮抗作用により,ぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促進とされる.Rhoキナーゼ(ROCK)阻害薬ROCKはさまざまな細胞において,その基質をリン酸化することによりアクトミオシン依存の収縮を制御している.そのためROCK阻害薬は,線維柱帯の収縮を用量依存的に抑制すると考えられている.つまり眼房水の流出とそれに伴う眼圧を制御し,房水の主要流出経路からの流出を促進することで眼圧を持続的に低下させ,かつ網膜の血液の流れを良くすることが期待される.ROCK阻害薬の開発は,論文を見る限り日本が先行している.交感神経a2刺激薬ブリモニジンの米国の添付文書によれば1日3回,8☆☆☆