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眼感染症:ファンギフローラY®

2006年1月31日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006??0910-1810/06/\100/頁/JCLS■ファンギフローラY?とはファンギフローラY?(バイオメイト社)は,スチルベンジルスルホン酸系蛍光染料(構造式非公表)を利用した染色法であり,b構造をもつ多糖類であるキチン,セルロースを特異的に染色することができる.このため,真菌,アカントアメーバのcystを特異的・かつ非常に鋭敏に検出することができる.ファンギフローラY?は,A液(変性ヘマトキシリン)とB液(スチルベンジルスルホン酸系蛍光染料と共染防止剤)から構成されている.角膜真菌症やアカントアメーバ角膜炎の診断には直接塗抹鏡検が必須項目である.しかし,臨床サンプルにおいて角膜病巣部の生検材料は微量しか採取することができず,真菌あるいはアカントアメーバの同定率も十分高いとはいえない.迅速に治療を開始するため真菌やアカントアメーバが鏡検で検出されるかどうか,さらに薬剤に反応して病原体量が減少しているのかどうかは,臨床上大きな意義があると考えられる.このような定性的または定量的な判定に用いることができる検査法として,ファンギフローラY?染色があげられる.欧米では,同様の染色試薬としてもともと織物の漂白剤の一種であったcalco?uorが真菌,アカントアメーバのcystの同定(57)眼感染症セミナー─スキルアップ講座─●連載○32監修=大橋裕一井上幸次32.ファンギフローラY?染色宮?大鳥取大学医学部視覚病態学ファンギフローラY?染色を用いた真菌,アカントアメーバの検出法は,観察に蛍光顕微鏡を必要とするが,高感度な方法であり,試料の保存性にもすぐれ,観察に高度な熟練を要しない点において,角膜真菌症,アカントアメーバによる角膜炎の診断に非常に有用であると考えられる.図3潰瘍部の生検標本のファンギフローラY?染色くびれた隔壁をもつ糸状菌を多数認める.図1フザリウムによる角膜潰瘍不規則な辺縁のhyphateulcerを認め,前房蓄膿を伴っている.図2潰瘍部の生検標本のグラム染色フザリウムに特徴的な大分生子を認める(矢印).———————————————————————-Page2??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(58)に頻用されている.Calco?uorもキチン,セルロースを特異的に染色する試薬であるが,ファンギフローラY?に比べやや感度が劣るとされている.より一般的なパーカーインク?KOH法と比較した場合の相違点は,角膜実質がintactのまま保たれた状態での試料を作製することができる点と試料の保存性である.角膜組織への染色試薬の浸透性は非常によく,染色後も1年以上にわたって蛍光は退色しない.■染色方法角膜生検材料をスライドガラスに付着させ乾燥させる.この場合,できるだけ一塊となるよう26ゲージ針などで切除するように採取する(この際,セルロースを含む通常の綿棒などは使用しない).乾燥後,エタノールを滴下して固定する.なお,この状態で試料の保存は長期にわたって可能であり,手元に試薬や蛍光顕微鏡がない場合,後日他施設へ依頼することもできる.染色はまず,A液(変性ヘマトキシリン)を滴下し,一面に広げ約1~2分間染色し,生検材料がはがれないように,蒸留水(通常なら水道水でも可)で数回洗浄する.つぎに,B液を1~2滴生検材料に滴下し,2~5分染色する.再び蒸留水で数回洗浄する.乾燥後,400倍および1,000倍(油浸)の蛍光顕微鏡を用いて検鏡する.観察のみなら特に封入の必要はなく,試料の採取から診断まで30分以内で完了する.■染色結果の読み方本方法を用いれば,真菌の菌糸およびアカントアメーバのendocystを明瞭かつ非常に鋭敏に染色することができる.通常の観察光下での核染色との比較から(蛍光照明をつけたり消したりすることにより),菌糸およびendocystを鋭敏に検出することができ,ヘマトキシリン染色との対比により,角膜実質および炎症細胞との良好な空間的対比関係のもと観察できる.また,このためパーカーインク?KOH法に比べ,感度面においても真菌,アメーバの検出にすぐれている.結果の解釈として,もし陰性なら採取した試料のなかには真菌はないと判断している.ただし,診断を誤らないためにはできるだけ多くの組織を塊としてとることが重要となろう.このため,塗抹状態の標本を用いた場合,検出効率が低下する.つぎに,陽性と判断するための注意すべきポイントをあげたい.まず,壊死を起こした組織においては蛍光染料が非特異的に結合することがある.このため,非特異像が疑われる場合,蛍光像の形態が真菌と一致するかを確認する必要がある.ペーパータオルやほこりのかすなども,セルロースなら蛍光を発してしまうため,その形状と大きさの観察は必要である.ただ,真菌やアメーバの染色形態は非常に特徴的であるため,偽陽性像との形態的な区別は容易である.■染色結果の解釈と有用性基本的には熟練を要しない.未治療の症例の場合,試料が十分採取できていて,ファンギフローラY?が陰性なら,真菌症ではないと考えてもよかろう.一方,判断に困るのは,すでに前医において適切な検体をとることなく,やみくもに抗真菌薬の投与が開始されてしまっていたケースである.抗真菌薬の投与によりその症例を治癒させることができなかったとしても,耐性菌種である可能性もあり,その症例が真菌症であるのかないのかの診断には結びつかない.逆に,このようなケースでは,もともと表層に存在していた可能性のある真菌すら破壊され,明らかな真菌像として認識されがたくなる.このため,逆に診断の妨げとなってしまうことがよくあるので注意したい.文献1)宮崎大:真菌性角膜感染症.眼科プラクティス3,オキュラーサーフェスのすべて,p183-189,文光堂,2005■コメント■未治療で,かつ病巣から十分な材料を採取できる場合なら,通常の染色(たとえば,グラム染色やギムザ染色)にても病原体の検出は比較的容易であるが,サンプル量や病原体の数が少ない時などには,アーチファクトとの区別に戸惑うことも多い.そんなケースで威力を発揮するのがファンギフローラY?染色である.臨床所見から真菌やアカントアメーバによる感染が強く疑われる場合には,通常染色後のサンプルを二重染色してみることを強くお勧めする.通常染色所見の検証となるのみならず,診断への決定的な情報が得られることも少なくないからである.愛媛大学医学部眼科大橋裕一

緑内障:高脂血症治療薬と緑内障

2006年1月31日 火曜日

———————————————————————-Page1(55)あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006??0910-1810/06/\100/頁/JCLS■スタチンの多面的作用高脂血症治療薬であるスタチンは,コレステロール代謝の律速段階を規定する酵素(HMG-CoAリダクターゼ)阻害薬であり,動脈硬化病変の進行を抑制する.スタチンは,そのコレステロール低下作用のみならず,心血管保護作用を有することが多くの大規模臨床試験において明らかにされてきた.そしてその作用の一部はコレステロール低下作用に依存せず,細胞内シグナルに直接作用し,血管内皮機能の改善,平滑筋増殖抑制作用,血栓形成抑制作用,抗炎症作用,血管形成促進作用といった,いわゆる多面的作用(pleiotropice?ects)によることが明らかになってきている.■スタチンの神経保護効果筆者らはラット網膜虚血再潅流障害モデル眼において,スタチンの前投与が網膜における細胞接着分子のmRNA発現は抑制し(図1),その結果白血球の細胞内への浸潤を有意に抑制することを明らかにした(図2).また,スタチン前投与は神経保護効果を示し,虚血再潅流後24時間におけるTUNEL(terminaldeoxynucleo-tidyltransferase-mediateddeoxyuridinetriphosphatenick-endlabeling)陽性で描出されるアポトーシス細胞数を有意に減少させ,虚血再潅流障害1週間後における網膜組織障害を有意に抑制していた(図3).しかも,この神経保護効果は,NOS(一酸化窒素合成酵素)阻害薬であるL-NAMEにより抑制され,NO(一酸化窒素)代●連載○67緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄67.高脂血症治療薬と緑内障本庄恵北野病院眼科緑内障において神経保護治療の開発は大きな課題の一つである.臨床応用可能な薬物療法の可能性の一つとして,筆者らは高脂血症治療薬の組織保護作用に着目し,有意な神経保護効果を明らかにした.疫学的研究や眼圧下降効果に関する研究も行われており,高脂血症治療薬は今後さらなる可能性が期待できる薬物といえる.図1スタチン前投与による網膜における細胞接着分子の発現変化RT-PCR(reversetranscription-polymerasechainreaction)法による解析により,スタチン前投与によりラット虚血・再潅流障害12時間後網膜(I/R)におけるP-セレクチンとICAM-1(intracellularadhesionmolecule-1)の遺伝子発現が対照群(PBS投与)と比較し有意に抑制されていた.*p<0.05,**p<0.005.(文献1より改変)Non-operatedVehicle-treatedStatinDensity(fold)1.81.61.41.21.00.80.60.40.20*P-selectinI/RNon-operatedVehicle-treatedStatinDensity(fold)2.22.01.81.61.41.21.00.80.60.40.20**ICAM-1I/RNon-operatedVehicle-treatedPravastatinCerivastatinAccumulatedleukocyte(cells/mm2)7006005004003002001000##I/R図2スタチン前投与による網膜内への白血球の浸潤の抑制ラット網膜虚血再潅流モデルにおいて,スタチン(pravas-tatin,cerivastatin)を前投与することにより網膜内への白血球の浸潤が対照群(PBS投与)と比較し有意に抑制された.#p<0.001.(文献1より改変)———————————————————————-Page2??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(56)謝が関与した作用であることが判明した1).■スタチンの緑内障治療薬としての可能性さらに最近なって,スタチンにはRho-ROCK阻害作用があることが解明され,房水動態に影響を与える可能性が報告されている2).以前より筆者らはRho-ROCKシグナル伝達系の阻害が線維柱帯細胞の細胞内骨格の再構成を誘導し,局所投与でも有意に眼圧を下げることができることを報告しており3),スタチンの眼圧下降作用についても今後の研究が望まれる.また,疫学的研究においても,スタチンの長期投与が,緑内障の発症および進行を抑制することが報告されており4),スタチンが緑内障の病態にどのように関与しうるか,今後のさらなる検討が期待される.文献1)HonjoM,TaniharaH,NishijimaKetal:Statininhibitsleukocyte-endothelialinteractionandpreventsneuronaldeathinducedbyischemia-reperfusionintheratretina.???????????????120:1707-1713,20022)SongJ,DengPF,StinnettSSetal:E?ectsofcholesterol-loweringstatinsontheaqueoushumorout?owpathway.?????????????????????????46:2424-2432,20053)HonjoM,TaniharaH,InataniMetal:Effectsofrho-associatedproteinkinaseinhibitorY-27632onintraocularpressureandoutflowfacility.?????????????????????????42:137-144,20014)McGwinGJr,McNealS,OwsleyCetal:Statinsandothercholesterol-loweringmedicationsandthepresenceofglaucoma.???????????????122:822-826,2004GCLIPLINLILMONLOLMI/RStatin○-○-○-○+○-○-○+○+○-○+○-○+○+○+○+L-NAME図3スタチン前投与によるラット網膜虚血再潅流障害1週間後における網膜組織障害の抑制スタチン前投与により,ラット網膜虚血再潅流1週間後における網膜組織障害は対照(PBS投与)と比較し有意に抑制されていた(中パネル).このスタチンの神経保護効果はNOS阻害薬であるL-NAMEを同時に前投与することにより抑制されていた(右パネル).(文献1より改変)☆☆☆

屈折矯正手術:固体レーザーを用いた角膜切除の将来

2006年1月31日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006??0910-1810/06/\100/頁/JCLSフッ化アルゴンエキシマレーザー(波長:193nm,以下エキシマレーザー)は屈折矯正手術に用いられるレーザーとして広く普及している.しかし,有毒なガスの入れ替えが必要な点,またそれに伴い維持費が高額となる点,レーザー光の品質や出力を安定させるのがむずかしい点,などの問題点も抱えている.そのため今後の治療精度の向上や普及の促進を考えると,新たな線源を開発する必要性が生じると考えられる.エキシマレーザーに代わるものとして,それと似た紫外域の波長を発する固体レーザーが近年注目されている.これらの装置は,Nd:YAGレーザーなどから得られた赤外域付近の波長をもつレーザー光を光源とし,非線形光学結晶などを用いて紫外域の光線に変換している.これらの固体レーザーは,有毒ガスが不要で維持費が抑えられる点のみならず,スポットサイズが小さい点,高頻度にくり返し発振でき出力の安定性が高い点,装置の小型化が可能,などの点でエキシマレーザーよりも優れていると期待されている.今までに開発された固体紫外レーザーの多くは,210~213nm付近の波長を有するものであり,それらを用いた角膜切除についての報告がなされている.ヒト眼角膜による吸収実験では,190~220nmの波長の吸収率はほぼ横ばいの値を示し,角膜切除に適切なレーザー波長は190~220nmの範囲であるとされている1).213nmの固体レーザーを用いた有色家兎の角膜切除では,3カ月の観察で,臨床経過も組織学的所見もエキシマレーザーの結果に近似していた2).その後もエキシマレーザーに近い結果を示す報告が続き,実際に臨床応用も始まっている.現在わが国で認可を受けているものはないが,海外では認可を受け使用できるシステムもすでに販売されている.Andersonらは,213nm固体レーザーであるCustomVis?社のPulzar?レーザーシステム(図1)を用いて3眼の不正乱視眼にPRK(photorefrac-tivekeratectomy)を行い,矯正視力やコントラスト感(53)●連載○68屈折矯正手術セミナー監修=木下茂大橋裕一坪田一男68.固体レーザーを用いた角膜切除の将来中川智哉前田直之大阪大学大学院医学系研究科固体紫外レーザーはフッ化アルゴンエキシマレーザーに比べて,メンテナンスのしやすさやレーザー光の品質で優れた特徴をもっている.固体紫外レーザーのなかでも波長や装置の違いによりレーザーの性質が異なるため,今後もエキシマレーザーの代替を目指して研究開発が進んでいくと考えられる.←図1CustomVis?社Pulzar?レーザーシステム認可国では臨床使用が可能であり,良好な結果が報告されている.(文献3より)→図2独自開発の紫外固体レーザープロトタイプ2号機大きな電源の右上に設置された箱状のものがレーザー本体であり,非常にコンパクトである.———————————————————————-Page2??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006度の改善を得たと報告している3).またこの報告では,固体レーザーのもつ小さな照射径と高頻度のくり返しが,より精密なカスタムアブレーションを可能とし,加えて発熱が少なくなるなどの利点もあるとしている.これらエキシマレーザーに近い結果を示す報告が多いが,0.9%塩化ナトリウム溶液やBSS?(balancedsaltso-lution)による吸収率はエキシマレーザーに比べて213nm固体レーザーのほうがはるかに小さかった,という両者間の差異も報告されている4).このことは,部屋の湿度や角膜上の水分による矯正結果への影響が小さいという利点が考えられるが,水分を用いた角膜不整に対するスムージングが困難になるという欠点が生じうる.上に述べた水に対する吸収率の違いや,エキシマレーザーと異なった波長を用いることで治験・承認時のハードルが高くなる恐れがある,といった点を解消するためには,エキシマレーザーと同じ193nmの波長を利用できる固体レーザーの開発が望まれる.筆者らは,大阪大学工学部と㈱ニコンとの共同研究で,独自に開発した193nmの波長をもつ固体レーザー(図2)を用いて角膜切除を試みている.その基本原理は,1,547nm半導体レーザーをファイバーアンプで増幅後,CsLiB6O10波長変換素子などを用いて合計5段階の波長変換を行うことにより193nm紫外光を発生させるものであり(図3),高品質レーザー光を高頻度にくり返して照射可能である5).プロトタイプ1号機とXYステージを用いて,3mW/10kHzの条件でレーザーを試料に照射したところ,PMMA(ポリメチルメタクリレート)プレートの切除効率はエキシマレーザーと同等であった.また摘出豚眼角膜に対しても精密な加工が可能であった.本193nm固体レーザーは他の波長の固体レーザーに比べて,水による吸収がエキシマレーザーにより近いという特徴をもっている.DNA変異原性についてはエキシマレーザーと同様で問題がないと考えられ,発熱に関してはパルス幅が0.1~1.5nsecと非常に短く,有利であると考えられる.一方で現時点での課題として,出力や照射径の拡大,および高速でのスキャンニング技術の開発などがあげられる.固体紫外レーザーはエキシマレーザーに比べて,メンテナンスが容易,出力の安定性が高い,くり返し周波数が速い,照射スポット径が小さい,などのすぐれた特徴をもっている.固体紫外レーザーはエキシマレーザーの代替として,面精度の向上,環境保全,経費節減を目指して今後ますます研究開発が進んでいく可能性がある.文献1)LembaresA,HuXH,KalmusGW:Absorptionspectraofcorneasinthefarultravioletregion.?????????????????????????38:1283-1287,19972)RenQ,SimonG,LegeaisJMetal:Ultravioletsolid-statelaser(213-nm)photorefractivekeratectomy.Invivostudy.?????????????101:883-889,19943)AndersonI,SandersDR,vanSaarloosPetal:Treatmentofirregularastigmatismwitha213nmsolid-state,diode-pumpedneodymium:YAGablativelaser.???????????????????????30:2145-2151,20044)DairGT,AshmanRA,EikelboomRHetal:Absorptionof193-and213-nmlaserwavelengthsinsodiumchloridesolutionandbalancedsaltsolution.????????????????119:533-537,20015)SasakiT,MoriY,YoshimuraM:ProgressinthegrowthofaCsLiB6O10crystalanditsapplicationtoultravioletlightgeneration.?????????????????23:343-351,2003(54)図3新規レーザーの波長変換の模式図1,547nmの波長を5段階の過程により193nmの波長に変換する.FiberOptics=1,547nmλω=193nm8λωωω→3+2ωωω→4+22ωωω→7+43ωωω→8+7ωωω→2+ωω/1,547nm:ω/773nm:2ω/516nm:3ω/387nm:4ω/221nm:7ω/193nm:8LBOLBOBBOLBOCLBOEDFADFB-LD

眼内レンズ:Rescue Lensを用いた落下核皮質の処理

2006年1月31日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006??0910-1810/06/\100/頁/JCLS水晶体乳化吸引術(PEA)中に水晶体核,皮質が落下する場合がある.硝子体手術器械がない,近くに紹介可能な信頼できる熟練した硝子体手術者がいない,患者さんが転院を希望しないあるいはできないなど,種々のケースが存在する.このようなとき,白内障術者自身が安全に処理できる方法があることが望まれる.筆者らの調べた範囲では大塩の報告1)があるのみである.筆者らは,視認性を高めるために眼内ファイバーを使用できるなど工夫した同様なサンコンタクト社製中京式RescueLens(以下,レンズと略)2,3)を作製したので,具体的な手術手技を含め以下に紹介する.●手術手技1.術前準備落下水晶体核,皮質の処理法は,基本的に硝子体手術である.的確な手術を行わないと網膜?離などの重篤な合併症をひき起こす可能性がある.白内障術者は硝子体手術を経験したことが少ないため,事前に豚眼で十分に練習をしておく必要があり,患者さんに対する最低限のマナーである.合併症が発生した場合,気が動転していることも多く的確な判断ができない.あらかじめ必要なものをRes-cueセットとして準備しておくことが重要である(図1).2.観察粘弾性物質をレンズに塗布後,角膜に固定,眼内の状態を観察,処理方法をイメージする.眼内観察の際,通常の顕微鏡照明では限界があるため,ZEISS社顕微鏡に付属するスリット照明VISULUXか眼内ファイバーなど,眼内観察に優れる照明を使用するべきである(図2).眼内ファイバーは,硝子体の視認性の優れる短波長が主体のキセノン光などが有利である.片手による固定が必要であるが,眼内ファイバーは,視野が広く,眼内(51)加賀達志市川一夫社会保険中京病院眼科眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎233.RescueLensを用いた落下核皮質の処理落下水晶体核皮質の最も安全な処理は,熟練した術者が硝子体器械で毛様体扁平部硝子体切除術を行うことであるが,困難な場合がある.サンコンタクト社製中京式RescueLensを用いることで,白内障術者自身で比較的安全に処理できる方法を考案したので紹介する.図1Rescueセットいざというときのために中京式RescueLensを含め必要なものをセットで準備しておくことが重要である.超音波チップは,小さな切開創より入るようにスモールチップを準備する.トリアムシノロンを即座に作製できるように,フィルタ,三方活栓,注射器もセットのなかに準備する.トリアムシノロン作製キット前房メンテナースリットナイフ硝子体カッター超音波スモールチップ眼内ファイバー中京式RescueLens顕微鏡照明スリット照明眼内ファイバー眼内ファイバー図2各種照明による眼内の視認性の違いスリット照明は,視野が狭いが,落下水晶体核,眼底がはっきりと確認できる.眼内ファイバーは,視野が広く,落下水晶体核,眼底,硝子体が確実に視認できる.顕微鏡照明は,硝子体などの詳細な確認が困難であり,使用するべきではない.———————————————————————-Page2??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(00)の観察,特に硝子体の視認性に優れる(図2,右下).縮瞳状態であれば虹彩リトラクターなどで散瞳させるほうが容易である.眼内観察の結果,自身の手術技量と照らし合わせて処理が困難と思われれば,この方法はあきらめるべきである.3.前房,前部硝子体処理レンズを外し,使用する器具にあった創口を簡単に作れるスリットナイフで対角線上に2カ所の切開創を作製する.後に眼内ファイバーを観察光として使用する場合には,それらの切開創に対して90?の位置にもう1カ所切開創を作製する.白内障の手術時の切開創はこれらの器具には巨大であり,水の流出により前房が不安定になるため,基本的に使用しない.眼内操作では,一手法は水流によるキックバックがあり効率が悪いため,基本的に二手法で手術を行うべきである.硝子体カッターを用いて,二手法で前房ならびに前部硝子体を十分に処理する.この際,硝子体カッターを吸引のみのモードにして水晶体?に残存した皮質も吸引除去する.トリアムシノロンを硝子体に吹きかけると硝子体の視認性を向上できるため,安全に硝子体の処理が可能である4).4.後部硝子体,落下水晶体核,皮質処理レンズに粘弾性物質を塗布し角膜に固定する.手術中,創口からの逆流した水流で角膜上のレンズが浮遊し不安定になりやすいため,粘弾性物質は粘稠度の高いものが推奨される.それでも水流によりレンズは浮遊しやすいため,前房メンテナー,硝子体カッターあるいは眼内ファイバーを挿入する際それぞれの器具をレンズの対角線上に挿入し,レンズを挟むように機械的に固定することがレンズの浮遊を少なくする大事なポイントである.前房メンテナーを使用すると片手が自由になり,硝子体カッターなどの両手による固定あるいは眼内ファイバーの固定に使用できる.硝子体カッターで落下皮質を含め後部硝子体を十分処理をする.後部硝子体?離が起こっている症例では中心部の硝子体切除は完全に行えるが,起こっていない症例では後部硝子体?離を行わないかぎり完全切除は不可能であり,多少の残存は気にしない.最大の目的は,落下した水晶体核,皮質を吸収される限界以内まで除去することであり,硝子体?離まで行って硝子体を切除することではない.安全な処理のためには,硝子体の視認性を向上させるためのトリアムシノロンを適時塗布することが重要である.5.残存水晶体核,皮質処理水晶体核,皮質が残存していれば,超音波チップを挿入し,吸引で捕獲する.この際,硝子体を吸引していないことを十分に確認した後,眼球の中央部の安全な位置まで引き上げ,超音波で破砕することが網膜?離などの合併症を予防するうえで重要である.図1では,一手法による処理のため白内障手術時の創口よりスリーブを付けたまま挿入しているが,スリーブを外したスモールチップを他の切開創より挿入した二手法で行うほうが,核のキックバックが少なく圧倒的に容易である.後部硝子体?離が起こっていない場合には小さな落下水晶体核,皮質は捕獲困難であるが,多少の残存であれば吸収が期待できるため,無理をしないことが肝要である.文献1)大塩善幸:前部硝子体切除手術のためのコンタクトレンズ.眼科手術15:501-503,20022)加賀達志,市川一夫,吉田則彦ほか:水晶体落下時の白内障術者用の救助レンズ中京式EscapeLens.第18回日本眼内レンズ屈折矯正手術学会発表,20033)加賀達志,市川一夫,渡辺三訓ほか:中京式RescueLensを用いた水晶体核,皮質落下時の処理の方法.第19,20回日本眼内レンズ屈折矯正手術学会発表,2004,20054)PeymanGA,CheemaR,ConwayMDetal:Triamcinoloneacetonideasanaidtovisualizationofthevitreousandtheposteriorhyaloidduringparsplanavitrectomy.??????20:554-555,2000

コンタクトレンズ:コンタクトレンズによる視力補正(2)-コンタクトレンズの度数決定-

2006年1月31日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006??0910-1810/06/\100/頁/JCLSコンタクトレンズ(CL)の度数は,トライアルレンズを装用した状態で未矯正の屈折異常の程度を測定することによって求める.測定結果から必要と考えられる度数をトライアルレンズの度数に加えて処方するCLの度数を決定する.この際に注意すべき点を述べる.●トライアルレンズの選択他覚的屈折値ではなく,自覚的屈折値を参考にしてトライアルレンズの度数を選択する.ディスポーザブルレンズや頻回交換レンズなどでは豊富な度数のトライアルレンズがあるため,自覚的屈折値に近いものを選択するが,近視眼の場合は見えすぎるレンズ(過矯正レンズ)を装着すると,調節を強いられた状態になるため,自覚的屈折値よりも弱い度数のレンズを選択する.遠視眼の場合は自覚的屈折値より強い度数のレンズを選択する.±4.00D以上の近視,遠視では眼鏡レンズとCLでは角膜頂点間距離が異なるので,近視眼の場合にはさらに弱い度数を,遠視眼の場合には強い度数を選択したほうがよい.乱視眼に対するトーリックソフトコンタクトレンズ(SCL)の処方においては,なるべく乱視軸と一致した円柱軸を選択し,円柱度数は乱視度数よりも弱いものを選択する.乱視眼では検眼レンズによる矯正の値(球面レンズと円柱レンズの度数の和)が±4.00D以上になると角膜頂点間距離の違いによる補正が必要である(図1).ハードコンタクトレンズ(HCL)および従来型SCLのトライアルレンズの度数は-3.00Dのものが多く,-3.00D以下の近視眼や遠視眼に装用する場合は必ずトライアルレンズの上からプラスの検眼レンズをかけて雲霧状態を壊さないようにしなければならない.●トライアルレンズのセンタリングレンズのセンタリングが悪いと良好な安定した視力が得られない.特に,ハイマイナス,ハイプラスのレンズではレンズの中心部と周辺部では屈折力の差が大きい(49)図1レンズの度数補正a)乱視の矯正を必要としない場合:検眼レンズによる矯正の値(球面レンズの度数)が±4.00D以上のときは角膜頂点間距離の補正を行う(たとえば,-5.00Dの球面レンズは-4.75Dとなる).b)乱視の矯正を必要とする場合:検眼レンズによる矯正の値(球面レンズと円柱レンズの度数の和)が±4.00D以上のときは強主経線方向と弱主経線方向のそれぞれについて補正を行う(たとえば,強主経線方向が-8.00Dなら-7.25D,弱主経線方向が-6.00Dなら-5.50Dとなる).a)b)-5.00D-8.00D-6.00D-4.75D-5.00D-4.75DS-5.00DS-6.00DC-2.00DAx180°S-4.75D()-7.25D-5.50DS-5.50DC-1.75DAx180°()図2ハイマナスのHCL(-9.00D/8.8mm)の屈折力分布レンズの中心の屈折力は-9.00Dであるが,中心から離れるにつれて屈折力は強くなる.-8.50-9.00-9.50-10.00-10.50-11.00-11.50-12.00-12.50-13.00-13.500.01.02.03.04.05.06.07.08.0(mm)-8.50-8.75-9.00-9.25-9.50-9.75-10.00-10.25(D)(D)植田喜一ウエダ眼科コンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純TOPICS&FITTINGTECHNICS259.コンタクトレンズによる視力補正(2)─コンタクトレンズの度数決定─———————————————————————-Page2??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(00)(図2)ため,レンズの中心と瞳孔の中心が大きくずれることは好ましくない.●トライアルレンズによる追加矯正トライアルレンズを装用した状態でオートレフラクトメータや検影法による他覚的屈折検査を行った後に,検眼レンズによって自覚的な見え方を確認しながら必要なレンズ度数を測定する.前回に述べたように,両眼開放状態による検査が望ましい.赤緑試験(二色テスト)を行って低矯正,あるいは過矯正を確認する.遠方だけでなく,近方(30cmの距離ではなく患者の作業距離)の見え方を確認する必要がある.●処方レンズの度数決定追加矯正に要した検眼レンズの度数にトライアルレンズの度数を加えるが,検眼レンズの度数が±4.00D以上の場合は,角膜頂点間距離の違いを補正した換算表を用いて処方するCLの度数を決定する.HCLを角膜上に装着すると,HCLの後面と角膜前面との間隙は涙液で満たされるが,これがレンズとして働く(涙液レンズ).角膜形状に対してパラレルにフィットした場合には涙液レンズは±0Dであるが,1段階(0.05mm)フラットなベースカーブ(BC)のHCLを選択すると,涙液レンズは-0.25Dとして働く.同様に1段階スティープなBCのHCLを選択すると涙液レンズは+0.25Dとして働く(図3).仮に,-3.00Dのトライアルレンズを装用しても1段階スティープなBCのレンズでは-3.00D+0.25D=-2.75Dとして働くことになる.HCLの処方時にトライアルレンズのBCと異なるものを選択する場合には,レンズ度数も変更しなければならない(表1).次回は,定期検査時におけるCLの視力補正について述べる.フラット1段階(0.05mm)-0.25Dパラレル0Dスティープ1段階(0.05mm)+0.25D図3HCLのBCと涙液レンズ角膜形状に対するHCLのBCの違いで,涙液レンズの度数は変化する.BCを1段階(0.05mm)フラットにすると涙液レンズは-0.25Dの働きをし,1段階スティープにすると涙液レンズは+0.25Dの働きをする.表1HCLのBCの変更に伴う度数の変更BC:8.00mmレンズ度数:-3.00Da)BC:8.05mm?レンズ度数:-2.75Dを選択b)BC:7.95mm?レンズ度数:-3.25Dを選択BCが8.00mm,レンズ度数が-3.00DのHCLで適切な矯正ができている場合に,a)BCが8.05mm,レンズ度数が-3.00Dを選択するとレンズ度数と涙液レンズがトータルとして-3.25Dになる.0.25Dの過矯正になるので,選択するCLの度数は-2.75Dとなる.b)BCが7.95mm,レンズ度数が-3.00Dを選択するとレンズ度数と涙液レンズがトータルとして-2.75Dとなる.0.25Dの低矯正になるので,選択するCLの度数は-3.25Dとなる.

写真:落屑症候群

2006年1月31日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006??0910-1810/06/\100/頁/JCLS(47)富田剛司東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能医学講座眼科学写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦260.落屑症候群図1水晶体前面の落屑物質の沈着瞳孔領中央部における落屑物質の円盤状沈着(centraldisc)が明瞭に認められる例である.一部,膜様に沈着している部分もあり,偽落屑物質とよばれた所以である.虹彩角膜①②③図2図1のシェーマ①:虹彩のru?の消失.②:膜様に沈着した落屑物質.③:円盤状の落屑物質の沈着.図3瞳孔縁のフケ様沈着虹彩の瞳孔縁にみられる落屑物質の白色フケ様沈着.虹彩ひだ(ru?)部の脱色素も観察される.これがみられたら,落屑症候群を疑い,散瞳して水晶体前面の落屑物質沈着の有無を確認すべきである.図4落屑症候群の隅角隅角鏡による観察で,強い色素沈着を認める.Schwalbe線前方には,色素が波をうつようなSampaolesilineを認める.———————————————————————-Page2??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(00)落屑症候群(exfoliationsyndrome)は,眼組織が線維性細胞外物質(落屑物質)を産生し,水晶体,虹彩などの眼組織に進行性に沈着することを特徴とする.落屑物質は,眼組織のみならず,皮膚,心臓,肺,肝臓などの全身臓器にも存在することが知られている.落屑物質が線維柱帯組織に沈着すると同部における房水通過障害が生じ,続発緑内障の原因となることがある.落屑症候群に伴う続発開放隅角緑内障は落屑緑内障とよばれる.本症候群は,赤外線による水晶体?の表層?離との形態的類似性から,偽落屑症候群とよばれ,それに伴う緑内障を偽落屑緑内障,あるいは水晶体?に関連した緑内障という意味合いで,水晶体?性緑内障または?性緑内障(capsularglaucoma)とよばれることも多い.ただ最近では,日本緑内障学会による緑内障診療ガイドラインおよび日本眼科学会による眼科用語集第4版には落屑症候群および落屑緑内障の用語が採用されている.そのため,本セミナーでは“落屑症候群”を用いた.落屑症候群の有病率は,世界的にみて大きな地域差があり(北欧,スコットランド,ギリシャなどで多く,逆にイヌイットではゼロ),年齢とともに上昇する.特に60歳代後半から70歳前半で増加する.ただし,男女差が存在するかどうかは明確ではない.わが国では,多治見スタディの基礎データによれば,40歳以上で平均0.71%(うち緑内障は0.25%),70歳以上で3.29~3.68%(うち緑内障は0.82~0.86%)と報告されている1).高眼圧症を含む緑内障の有病率は,多治見スタディの結果からもわかるように,20~30%との報告が多い2).落屑物質は,水晶体前面,瞳孔縁,Zinn小帯,角膜内皮,隅角などに沈着する.特に瞳孔縁や水晶体前面の落屑症候群の沈着は本症候群に最も特徴的で(図1),細隙灯顕微鏡検査で瞳孔縁に白色のフケ様の沈着物やそれに伴って虹彩のひだ(ru?)の消失を認める場合は,散瞳して水晶体前面をよく観察すべきである(図2).落屑症候群の典型的な沈着パターンは,中央部に細かい沈着物が集合した円盤状の混濁(centraldisc),周辺部から瞳孔に向かって鋸歯状あるいは石筍様の不規則な辺縁を有する膜状の沈着(peripheralband)および,両者の間に介在する沈着物を欠く領域(intermediatezone)の3者よりなる.Peripheralbandはすべての症例に存在するが,centraldiscは,20~60%の症例では認めない.落屑症候群がZinn小帯に沈着すると同部の脆弱性を招き,水晶体動揺や水晶体脱臼が生じることがある.さらに,9~18%の症例で狭隅角がみられ,14%で周辺虹彩前癒着が観察されたと報告されている.また,散瞳不良とも相俟って白内障手術時に硝子体脱出などの合併症をきたしやすい.隅角色素沈着は高度で,また下方に沈着が強い傾向がある.Sampaolesilineとよばれる波状の色素沈着線が,Schwalbe線の前方に認められる(図4).治療は原発開放隅角緑内障に準じて行う.レーザー線維柱帯形成術は,原発開放隅角緑内障とほぼ同等の長期成績が報告されている.観血的治療では,線維柱帯切開術もその病態から比較的よく奏効する.文献1)澤田明,石田恭子,山本哲也:落屑緑内障.緑内障(北澤克明監修),p237-238,医学書院,20042)RitchR,Schlotzer-SchrehardtU:Exfoliationsyndrome.???????????????45:265,2001

小児のデルモイド

2006年1月31日 火曜日

———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSはじめに前眼部にみられるデルモイドには角膜デルモイド,輪部デルモイド,結膜デルモイドがある.角膜デルモイドおよび輪部デルモイドの患児は,生後まもなく産科医や小児科医,あるいは家族に発見されることが多く,家族は不安をかかえて眼科を受診する.一方,結膜デルモイドは学童期などに偶然発見されることが多い.いずれも良性腫瘍であり,特徴的な所見から診断は容易である.本稿では,観血的治療の適応となる輪部デルモイドを中心に治療戦略を述べたい.輪部デルモイドは角膜乱視による不同視弱視を生じることがあるため,美容的な手術治療のみならず弱視治療についても念頭においておかなければならない.検査が可能な年齢であれば必ず屈折検査・視力検査を行い,必要であれば弱視治療をはじめる.手術は腫瘍切除および表層角膜移植術を行うことが多い.当疾患をもつ患児を診療していくうえで,家族へ病気,治療,視力予後について十分に説明し,理解を得ることが治療を成功させる一歩となる.I輪部デルモイドの病因・病理輪部デルモイドは角膜輪部に生じる先天性の良性腫瘍(図1)であり,胎生期の鰓弓の分化異常により皮膚組織が角結膜に迷入して異所性に増殖した分離腫(choristo-ma)の一種である.眼球の前眼部表面に白色あるいは黄白色の球状に隆起した組織が認められ,角化上皮,毛髪,皮脂腺,平滑筋,まれであるが歯などの外胚葉組織(43)??*MinaKojo&ChieSotozono:京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕古城美奈:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学特集●小児眼科の新しい考え方あたらしい眼科23(1):43~46,2006小児のデルモイド??????????????????????????????????????古城美奈*外園千恵*図1輪部デルモイド耳下側の角膜輪部に黄白色の円形腫瘍を認める.図2病理組織学所見(ヘマトキシリン・エオジン染色)腫瘤表面は重層扁平上皮で覆われ,上皮下に膠原線維,毛根・毛?,神経線維束が認められる.———————————————————————-Page2??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(44)や脂肪,血管,軟骨などの中胚葉組織が混在している(図2).輪部デルモイド,副耳(図3),耳瘻孔の三主徴からなるものはGoldenhar症候群とよばれ,胎生期の第1鰓弓の異常によるとされているが,骨格系の奇形を伴うこともある.副耳は,輪部デルモイドと反対側に認められることもあるため,必ず両側を観察する.II診断出生時より角膜輪部に白色の円形充実性腫瘤を認める.大きさはさまざまであり,まれに10mmを超えるものや複数個認めるものもある.通常角膜輪部耳下側にできることが多いが,異なる部位にもできる(図4).まず肉眼で前眼部を観察し,副耳などの合併奇形についても検索する.その後,細隙灯顕微鏡を用いてよく観察する.ディフューザーは,輪部デルモイドの大きさや結膜デルモイドの合併の有無など全体像を捉えるのに有用であるため,直接照明法とともに使用したい.輪部デルモイドの約半数に角膜乱視の合併を認め,その多くが弱視治療を要する.そのため輪部デルモイドを診断する場合,検査の可能な年齢であれば必ず屈折検査,視力検査を行う.家族は美容的な問題で眼科を受診させることが多いが,輪部デルモイドによる不同視弱視についての治療が必要なことを十分に説明し理解を得ることが,視力予後を改善させる点で大切である.III治療1.弱視治療輪部デルモイドの約半数に2.0D(ジオプトリー)以上の角膜乱視を合併する.乱視性不同視は左右差が1.0D以上で有意に生じるとされているため,本症の視力予後に患眼の乱視が強く影響し,不同視弱視の治療が非常に重要である.手術による乱視の著しい軽減は期待できないため1~3),弱視と診断すれば手術を待たずにただちに眼鏡を処方し,アイパッチによる健眼遮閉を行って弱視治療をはじめる(図5).十分な弱視治療により視力発達が得られる.家族によく説明し理解と協力を得ることが,弱視治療成功のポイントである.図3副耳輪部デルモイドと同側に認めた.図4角膜下方に認められた輪部デルモイド図5弱視治療不同視弱視の治療のために眼鏡処方と健眼遮閉を行う.———————————————————————-Page3(45)あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006??2.手術治療a.時期術後に細隙灯顕微鏡での検査や抜糸が可能となる5~6歳ころに手術を行うのが一般的である.整容的な問題によるいじめを懸念するなどの社会的側面から就学前に手術を行うことが多く,その年齢での手術は全身麻酔で行う.患児の発達度や検査態度によって,手術を行う時期は多少前後するが,3,4歳の幼児期に手術を行うと術後に診察ができず術後管理が困難である.不同視弱視を認める場合は,手術前から弱視治療をはじめる.輪部デルモイドの大きさが小さく外見上目立たなければ,局所麻酔の可能となる中学生以降に手術を行う.手術後は点眼を継続すること,プールに入れないことなどの術後管理が必要であることも家族に説明し,手術時期を慎重に決定する.b.術式4)腫瘍の切除に加え,表層角膜移植術を行う(図6).単純切除のみは,術後に偽翼状片や再発が生じる可能性が高く,十分な切除ができない可能性もある.また,角膜の脆弱化も避けられない.表層角膜移植には,新鮮角膜だけでなく,冷凍保存角膜も使用できる.新鮮角膜を用いた場合は手術時期が予定できないこと,わが国で提供が不足していることなどの問題がある.一方,冷凍保存角膜を用いた場合は手術時期の予定を決めることが可能であり,新鮮角膜と同様の良好な治療成績が得られる3,5).手術方法はまずスプリング剪刀で腫瘍組織を可能な限り除去し(図7a),切除範囲を測定して,トレパンのサイズを決定する.トレパンは腫瘍より少し大きな口径を用いる.角膜および強膜を半層から2/3層の深さまでトレパンにより切開する(図7b).このとき穿孔に注意する.つぎに冷凍保存角膜(新鮮角膜)の中央部より,腫瘍切除に用いたトレパンと同一径,あるいは0.25mm大きい口径のトレパンを用いて移植片を作製し(図7c),術野にてドナー角膜とホストとの接合部位が合うようにドナー角膜の後面のトリミングを行う.10-0ナイロン糸を用いて端々縫合を行い結紮部を埋没する(図7d).c.術後管理術翌日は移植片上の上皮の状態や感染の有無,ホストとの接合性をチェックする.保存角膜を用いた場合は移植片の角膜上皮が脱落しているが,術後数日で,移植片周囲から伸展したホスト角膜上皮あるいは結膜上皮により覆われる.術後は抗菌薬とステロイド(ベタメタゾン)を1日4回程度点眼する.小児では副作用として,ステロイドによる眼圧上昇がしばしば認められる.眼圧上昇を認めたときはステロイド局所投与濃度を低くする(ベタメタゾンから0.1%フルオロメトロン).眼圧下降が十分得られなければ,抗緑内障点眼薬を追加する.表層角膜移植術では術後に拒絶反応を発症することが少ないので,比較的早期にステロイドの濃度を低下させても問題はない.緩んだ縫合糸は感染源となるので,縫合糸は緩みしだい点眼麻酔下に抜去する.術後2~3カ月をめどに全抜糸を行う.術後に乱視の著明な軽減は望めないため,引き続き弱視治療を継続しなければならない.図6輪部デルモイド左:術前,右:術後.腫瘍切除および表層角膜移植術を施行.———————————————————————-Page4??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(46)IV結膜デルモイド結膜デルモイドは,輪部デルモイドに合併するもの(図8)と単独に生じるものがある.いずれも手術による完全切除はむずかしく,外眼筋付着部に拡大していることもあるため,深追いすることは危険を伴う.通常手術を行わず経過観察を行う.おわりにデルモイドは診断後に整容的治療,視機能改善の双方を考慮して治療時期と方法を決定する.デルモイドの患児を診察した際には屈折・視力検査を行い,必要なら弱視治療をはじめる.手術による乱視の軽減は期待できず,手術の最大の目的は整容的治療である.手術を行う場合には角膜移植術ができる施設に紹介することになるが,それまでに弱視治療がなされていたか否かで患児の視力予後が決まる.文献1)真島行彦,村田博之,植村恭夫ほか:角膜輪部デルモイド手術例の視力予後.臨眼43:755-758,19892)堀純子,鈴木雅信,宮田和典ほか:角膜輪部デルモイドに対する表層角膜移植術後の角膜形状解析.臨眼47:1173-1175,19933)外園千恵,井田直子,西田幸二ほか:冷凍保存角膜を用いた輪部デルモイドと弱視の治療.臨眼51:179-182,19974)外園千恵,木下茂:輪部デルモイド.小児眼科手術(山本節,中川喬編),p151-155,中山書店,19985)奥村直毅,外園千恵,横井則彦ほか:表層角膜移植術を行なった輪部デルモイド21例.眼紀54:425-428,2003図8輪部デルモイドと結膜デルモイドの合併腫瘍表面に毛髪を伴う.図7術式a:腫瘍を切除.b:トレパンを用いて,角膜・強膜を切開.c:冷凍保存角膜を用いて移植片を作製.d:移植片を10-0ナイロン糸で端々縫合して埋没.abcd

網膜芽細胞腫-最近の治療法

2006年1月31日 火曜日

———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSや冷凍凝固を眼内に局所的に使用する(chemothermo-therapy)方法を発表した.表1に最近行われている化学療法1コース分を示したが,各施設により使用薬剤は多少異なるが,プラチナ製剤を使用する点では共通している.VEC療法とは,vincristine,etoposide,carboplatinの併用,EC療法とはetoposide,carboplatinの併用,白血病など二次癌発生のリスクの高いetoposideを省いて,vincristine,cyclophosphamide,pirarubicin,carboplatinを用いる方法である.通常はこれらの化学療法を2~6コースくり返して用いる.また,超大量化学療法(mega-therapy)としてmelphalan,ifosfamideを大量に使用する方法もとられることがある.通常の化学療法では効果が少ないときで,どうしても眼球の保存が必要とされる場合に用いられるが,極度の骨髄抑制が起きるため,自家骨髄移植を併用して行う必要がある.Chemoreduc-tion法で腫瘍を縮小化したうえで,従来から行われていたレーザー光凝固や冷凍凝固を使用して腫瘍を完全に消滅ないし凝固する方法がとられる.実際の腫瘍の縮小効果を図1に示した.最近のShieldsらの治療成績を図2にまとめたが,Shieldsらの成績ではReese-Ellsworthはじめに網膜芽細胞腫が放射線により保存的に治療されたのは1900年代初めであった.さらに,1950年代からは冷凍凝固,光凝固が応用されて,保存療法は大きな進歩を遂げた.しかし,保存療法の主役であった放射線治療では,照射部を中心に二次癌の発生の問題が明らかになったこと,また,顔面の醜形を残すということもQOL(qualityoflife)での大きな問題であった.1990年代後半になって網膜芽細胞腫には効果の乏しかった化学療法に大きな進歩がみられ,これまで保存的な治療のむずかしかった10乳頭径以上の大きな腫瘍や多発性の腫瘍に対して保存的な治療が可能になってきた.また,わが国で独自に開発された保存療法も注目すべき進歩を遂げている.網膜芽細胞腫の新しい治療法では,眼球保存よりもさらに積極的に視機能の温存を目的とした保存療法が行われている.本稿では,近年の新しい治療法とその問題点を指摘する.IChemoreduction法,chemothermotherapyこれまで化学療法剤が網膜芽細胞腫に効果がなかったのはblood-retinalbarrierが原因の一つであった.Murphreeら(1996),Shieldsら(1996)は,blood-brainbarrierの移行性の良いとされていたcarboplatinを網膜芽細胞腫に応用して非常に有効であることを確認した.さらに,etoposide,vincristineを併用して腫瘍を縮小させ(chemoreduction),そのうえで必要があれば光凝固(39)??表1網膜芽細胞腫に対する化学療法(VEC法)Day12Vincristine(VCR)×Etoposide(VP-16)××Carboplatin(CBDCA)×*YoshikazuHatsukawa:大阪府立母子保健総合医療センター眼科〔別刷請求先〕初川嘉一:〒594-1101和泉市室堂町840大阪府立母子保健総合医療センター眼科特集●小児眼科の新しい考え方あたらしい眼科23(1):39~42,2006網膜芽細胞腫─最近の治療法????????????????????????????????????初川嘉一*———————————————————————-Page2??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(40)分類(以下,R-E分類)のⅠ~Ⅳ群では5年後の眼球保存率は85%,Ⅴ群では47%であり,眼球を摘出せずに保存的に治療され視力の温存に成功することも少なくないことがわかる.抗癌剤の副作用としては,骨髄抑制,消化器症状,肝機能障害,腎機能障害,感染症などの短期副作用のほかに,中長期的な副作用として白血病その他の二次癌の発生,性機能障害,卵巣障害などが一般的である.このような重篤な副作用があるため,使用にあたっては熟練した小児科医または腫瘍内科医との緊密な連携と患者家族への十分な意思疎通が必須のこととなる.Thermotherapyとは,腫瘍に42~60℃の熱を加えて縮小化させる方法で,熱源としては超音波,マイクロ波,赤外線などが用いられ,わが国では金子らが超音波を用いた方法を発表している.厚さ3mm以下の小腫瘍であれば810nmの近赤外光である半導体レーザーが簡単な温熱療法として臨床的に最も使用しやすい.化学療法と温熱療法を組み合わせた方法はchemothermother-apyとよばれる.Shieldsらは,化学療法の4時間前に温熱療法を行ったうえで化学療法を開始している.II最近の光凝固療法,冷凍凝固療法光凝固の適応は,①4乳頭径以下の小腫瘍,②視神経乳頭・黄斑を含まない,③硝子体播種がないなどである.箕田はレーザー光凝固による治療法を表2のようにまとめているが,非常に重要である.ぜひ,この表を活用することが望ましい.流入動脈の閉塞と腫瘍周囲の凝固はアルゴンレーザーまたは半波長YAG(グリーン)レーザーを用いる.完全な血管の閉塞には,出力0.5wattで0.5秒以上の凝固を1カ所に2~3回行う必要がある.血管閉塞を目的とする.キセノン光凝固やアルゴンレーザー光凝固の治療では腫瘍の栄養血管を閉塞させて腫瘍を壊死させることであり,腫瘍への直接的な凝固は,腫瘍の厚さが薄い場合に限られていた.最近の半導体レーザーは深部への直接凝固が可能であり,凝固しなくとも温熱効果も腫瘍に対して効果的である.Chemoreduction法と半導体レーザー表2腫瘍の発育方向と大きさによる光凝固法(箕田2))内長型外長型腫瘍径≦2乳頭径ダイオードレーザーの直接凝固またはアルゴンレーザーの腫瘍周囲凝固ダイオードレーザーの直接凝固腫瘍径>2乳頭径ダイオードレーザーの直接凝固およびアルゴンレーザーの周囲凝固図2Reese-Ellsworth分類による眼球保存の成功と不成功1009080706050403020100(?)ⅠaⅠbⅡaⅡbⅢaⅢbⅣaⅣbⅤbⅤa:成功:不成功Reese?Ellsworth分類図1温熱化学療法前(上段)と療法後の腫瘍の瘢痕化(下段)———————————————————————-Page3(41)あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006??光凝固との併用で,腫瘍の縮小効果が増強される.単独で用いた場合,光凝固,冷凍凝固ともに数回の凝固を行っても3mm程度の厚さが限界であろう.III選択的眼動脈注入法わが国の金子が開発した方法で,抗癌剤を全身的に大量に用いるchemoreduction法と異なり,熟練した放射線医と眼科医により,melphalanを眼動脈に選択的に注入して眼局所に抗癌剤を投与する方法である(図3).薬効は眼内のみであるので,副作用はほとんど考える必要がなく,1回の入院期間も1週間程度の優れた方法である.国立がんセンターでは頻繁に応用されているが,欠点は一般病院での応用がむずかしいことと,全身への遠隔転移には無効である点である.IV硝子体内注入法これも国立がんセンターで開発された方法である.Melphalan0.008mgを30ゲージ針で硝子体に注入する方法で,R-E分類Vb群の硝子体内播種をきたした症例には,chemoreduction法でも眼球保存の成功率は低いが,この方法ではVb群で51.3%の眼球保存に成功している(図4).ただし,不用意に硝子体に注入すると,注入部位から腫瘍細胞を眼外に散布してしまう危険があるので,熟練した技術が必要である.VX線外照射,小線源治療従来の保存療法の主役はX線外照射であった.国立がんセンターでの外照射による眼球保存の成功率は,R-E分類Ⅰ~Ⅳ群では94.3%と高い成功率であったが,Ⅴ群では40.0%とのことである.X線外照射も高精度で行われるが,最近の報告でも1歳未満に照射すると二次癌の発生率が有意に上昇することが明らかになっている.外照射の大きな欠点として,眼窩,顔面骨の発育に障害をきたして醜形を残すことである.この点はQOLを重視する現在の医療では大きな問題と考えられる.小線源治療は放射線同位元素を収納した金属片を腫瘍の付近の強膜に縫着する方法である(図5).網膜芽細胞腫は放射線感受性が高いため,非常に有効な方法と考えられるが,わが国では放射線治療の法律的な規制が厳し図5強膜小線源縫着法(文献4より)図4硝子体内melphalan注入法注射針は30ゲージまたは32ゲージを使用.(文献4より)ab図3選択的眼動脈注入法(文献3より)———————————————————————-Page4??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(42)く,鉛の壁で作られた特別の病室を作らなければならないため,国立がんセンターのみで使用可能である.顔面骨への影響も無視でき,二次癌の発生もないとされるので,化学療法などで縮小しない症例には非常に有効と考えられる.VI保存療法と経過観察保存療法では腫瘍内科とともに行う経過観察が重要なことはいうまでもない.網膜芽細胞腫では,局所の再発,遠隔転移のほかに,二次癌の発生があり,しかも適当な腫瘍マーカーが見つかっていないことなどから眼科医が背負う責任はきわめて重大である.筆者の経験では眼内に腫瘍が残存している場合,治療後の最初の1年間は1カ月ごとの眼底検査,特に生後1歳までの間は2週間あるいは1週間ごとの眼底検査が必要になることもある.遠隔転移,二次癌の検索に数年間は年1回の骨シンチは必要である.また,必要に応じて全身のCT(コンピュータ断層撮影)スキャンも行うが,照射線量が多いことは二次癌誘発の可能性がある点に注意を要する.二次癌として最も多いのが骨肉腫(図6),松果体腫瘍,扁平上皮癌,マイボーム腺癌その他である.40年間の累積発生率は40%に達するという報告もあり,しかも,生後1年未満に外照射を受けると二次癌発生率が上昇するという報告もあり,経過観察では遠隔転移のみならず二次癌のことを常に念頭におく必要がある.保存療法が一般化しつつある現在において,初回治療後の経過観察の方法論の確立が早急に求められる.文献1)ShieldsCL,MashayekhiA,ShieldsJAetal:Practicalapproachtomanagementofretinoblastoma.????????????????122:729-735,20042)箕田健生:網膜腫瘍,眼内腫瘍(箕田健生編),p193,金原出版,19993)金子明博:眼部腫瘍性疾患の診療に携わって.眼科診療プラクティス59,p108,文光堂,20004)金子明博,鈴木茂伸:我々の最近の網膜芽細胞腫の治療.眼臨98:498-504,2004図6化学療法後5年での二次癌の発生:上腕骨の骨肉腫■用語解説■Chemoreduction法:固形腫瘍に対して化学療法で腫瘍を縮小化させる方法.完全に消失できなくても腫瘍の摘出を容易にする.Chemothermotherapyまたはthermochemotherapy:温熱化学療法と訳す.腫瘍に対する化学療法と温熱療法の組み合わせ.二次癌:化学療法後に医原性に発生した癌,原疾患に関連して発生した癌,治療後に発生した他の癌などの概念が含まれる.

未熟児網膜症に対する早期硝子体手術

2006年1月31日 火曜日

———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLS出によって滲出性網膜?離をひき起こす.さらに,これに網膜裂孔を伴うこともある.牽引性網膜?離に対する治療には牽引の解除が,滲出性網膜?離に対する治療には滲出原因の除去と滲出成分の吸収促進が必要となる.1.輪状締結術おもにstage4のROPに対して施行される2~4).牽引性網膜?離が主体のstage5に対しては輪状締結術のみでは効果はない3).輪状締結術の作用機序については,輪状締結によって硝子体牽引が軽減される,色素上皮の網膜下液吸収が促進される,?離網膜の虚血が改善されるなどと考えられている2~4)が,その効果を疑問視する意見もある.輪状締結術は硝子体手術に比べて,水晶体を温存できる2),侵襲が少ない13),などの利点がある一方で,眼内から直接硝子体牽引を解除できない,また,ROPでの網膜硝子体牽引の方向がridgeから前方(水晶体方向や硝子体基底部)に向かう場合が多いのに対して,輪状締結術では内陥効果は眼球の中心に向かうので,牽引解除はじめに2005年,未熟児網膜症(retinopathyofprematuri-ty:ROP)の国際病期分類が改訂され1),わが国で厚生省分類Ⅱ型として定義されていた病態が「aggressiveposteriorROP」として追加定義された.これは,周産期医療の発達からきわめて未熟な児でも生存可能となり,アメリカでも非典型的かつ急激に増悪する厚生省分類Ⅱ型に相当する重症ROP症例を認知せざるをえなくなったことが背景にあると思われる.このような重症ROPでは十分な網膜光凝固を行っても網膜?離に至ることがある.網膜?離を発症したROPに対してはこれまで輪状締結術もしくは硝子体手術が施行されてきたが,術後視力はもちろん,網膜復位率に関しても決して満足できる状況ではない2~8).近年,網膜?離を合併したROPの解剖学的および機能的予後を改善するため,網膜?離発症の早い段階で硝子体手術を行い,硝子体牽引を解除し網膜を復位させることにより,さらなる病期進行を防ぎ視力予後を向上させる試みが行われている9~12).本稿ではこの新しい治療法について現在までの治療法と比較して記述する.I網膜?離を合併したROPの治療法(表1)ROPにおける網膜?離は牽引性と滲出性の要素を併せもつ.すなわち,stage3以降に出現する網膜外線維血管増殖に硝子体牽引が加わることによって牽引性網膜?離をひき起こし,脆弱な新生血管からの血液成分の滲(33)??*TatsuhikoSato&ShunjiKusaka:大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学〔別刷請求先〕佐藤達彦:〒565-0871吹田市山田丘2-2大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学特集●小児眼科の新しい考え方あたらしい眼科23(1):33~37,2006未熟児網膜症に対する早期硝子体手術?????????????????????????????????????????????????????佐藤達彦*日下俊次*表1これまでの標準的な治療方針Stage1,2:経過観察Stage3:光凝固(もしくは冷凍凝固)Stage4A:輪状締結術Stage4B:水晶体切除併用硝子体手術Stage5:水晶体切除併用硝子体手術———————————————————————-Page2??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(34)の効果も限られるといった欠点がある.このため,術後の残存硝子体牽引が原因となり,復位までに長時間を要したり,あるいは復位が得られなかったりする場合がある.早期に網膜復位を得るために術中に網膜下液排液を施行するか否かは議論の分かれるところである2~4,13).輪状締結術特有の問題として術後の強度近視およびそれに伴う不同視,不同視弱視があり14),そのため,術後復位が得られれば早期に輪状締結を解除し近視化を防ぐという考え方もある3,4)が,あまり早期に輪状締結を解除すると,残存した硝子体牽引から再?離をきたす恐れがある14).網膜復位率は70%前後の症例で得られている2~4)(表2)が,術後視力に関しては固視,追視が可能なものはわずかである2,4).2.硝子体手術硝子体手術は輪状締結術が適応とならなかった,あるいは輪状締結術でも復位が得られなかった症例に対して施行される.硝子体手術により,眼内から直接的に硝子体牽引を解除し,眼内の生理活性因子を除去することができる13)図2ROPstage4B症例(同一症例)Stage3で光凝固術を施行されているが,網膜?離を進行した.20ゲージの硝子体剪刀を用いて広範に形成された増殖膜を切除している.このとき,医原性裂孔を形成しないように細心の注意を払う必要がある.表2輪状締結術による網膜復位率NoorilySWらStage4B:67%(10眼/15眼)1992OphthalmologyTreseMTStage4A:70%(12眼/17眼)Stage4B:68%(29眼/43眼)Stage5:40%(4眼/10眼)1994Ophthalmology(ただし,復位した4眼ともに網膜裂孔併発例)HinzBJらStage4A:75%(6眼/8眼)1998Ophthalmologyab図1ROPstage4A症例(同一症例)Stage3で光凝固術を施行されたものの,網膜?離を発症した.a:20ゲージの潅流付きライトパイプと硝子体カッターを用いた2ポート法にて,毛様体皺襞部より眼内にアプローチしている.b:硝子体カッターで増殖膜を吸引切除している.増殖膜の血管活動性は高くない.———————————————————————-Page3(35)あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006??が,手術施行に際してROP特有のいくつかの問題点がある.まず,硝子体手術の適応となるROPでは,成人の網膜?離や糖尿病網膜症のように,術中に網膜下液の排液を行い,網膜を復位させて光凝固や冷凍凝固を行うといった手技は原則的には行わない.その理由としてROPにおける網膜上の増殖組織や網膜硝子体癒着は非常に強固で,術中にこれらを完全に除去して網膜を伸展,接着させることがきわめて困難であること,乳児の網膜は柔らかく,伸展しやすいため,網膜へのある程度の牽引が解除されると網膜復位が得られること,網膜への牽引が残存した状態で液?空気置換を行い,網膜を復位させようとすると網膜裂孔を生じることがあり,後極部に裂孔が生じた場合には網膜復位を得ることはほとんど不可能となることなどがあげられる.さらに,成人と違って眼球がまだまだ発育途上にある新生児の網膜を瘢痕癒着させることは網膜の成長・伸展を妨げ,将来的に眼球の成長に網膜の成長が追いつかず,凝固縁や後極部に大きな網膜裂孔を生じて網膜?離をきたしたりする危険性も高まると考えられる.つまり,このROPにおける牽引性網膜?離に対しては硝子体手術で増殖組織と硝子体を可能な限り切除して,網膜への牽引を解除することが基本である.網膜復位は術後に網膜下液が吸収されるとともに徐々に得られるものである.したがって,手術時期としては,比較的増殖膜が柔らかくて癒着も緩い,網膜?離を合併した早い時期が増殖膜の除去のみを考えるとよいわけであるが,この時期は新生血管の活動性が高く,手術を施行すると,術中の出血により手術続行が困難となったり,術後出血やフィブリン析出などにより網膜復位が困難となったりする可能性が高くなる.このため,新生血管の活動性が鎮静化してくる時期まで待って復位を目指すことが一般に行われているが,この場合,たとえ解剖学的復位が得られた場合でも,長期?離から視力予後はきわめて不良5~8)である.また,症例によっては網膜を復位させるために複数回の手術を要し,患児やその家族の負担は非常に大きなものとなる.これらの理由により,10年ほど前から一部の施設で重症化する前の段階で硝子体手術を行うことが試みられている.II早期硝子体手術(表3)硝子体手術はstage4B以上,多くはstage5に進展した症例に対して行われるのが一般的であったが,これをより早期の段階,すなわちstage4Bや黄斑部がまだ?離していないstage4Aの段階で手術を行うことが試みられている.この段階での手術をここでは“早期硝子体手術”と定義する.1.手術時期黄斑部が?離していないstage4Aが理想的である.ただし,stage4以降の症例のすべてで網膜?離が進行するわけではなく,自然に復位する例もあるので,不必要な手術がなされないよう,進行する傾向がある症例に対してのみ行われなければならない13).この段階で網膜牽引が解除され網膜復位が得られれば,良好な視力予後が期待できる.術前に血管の活動性がある程度鎮静化されていることが硝子体手術施行の条件となるが,術前に無血管野に対して十分な光凝固術を施行されている症例では,手術可能な場合が多い9~12).2.術式原則として水晶体温存硝子体手術(lens-sparingvit-rectomy:LSV)を行う15).水晶体を温存することで,水晶体摘出に伴う不同視弱視を避けることができ,調節力を保つことができる.ただし,水晶体を温存すると,前部硝子体の処理は不完全になるので,牽引性変化が赤道部より後方に限局した症例にのみ施行可能であり,増殖組織が水晶体と癒着しているような症例では水晶体温存は困難である.〔術式の詳細〕手術は2ポート法あるいは3ポート法によって行われ表3早期硝子体手術を取り入れた治療方針Stage1,2:経過観察Stage3:光凝固(もしくは冷凍凝固)Stage4A:水晶体温存硝子体手術(LSV)Stage4B:LSVまたは水晶体切除併用硝子体手術Stage5:水晶体切除併用硝子体手術———————————————————————-Page4??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(36)る.2ポート法で行う場合には潅流ポートを設けずに潅流付きライトパイプと硝子体カッター,潅流付き硝子体鑷子・剪刀などを用いて手術を行う.この方法を行うのは潅流ポートが水晶体を損傷するのを防ぐためである.一方,3ポート法の場合には通常の硝子体手術と同様に潅流ポートを設置するが,この場合には潅流ポートが水晶体を損傷しないように細心の注意が必要である.2ポート法なら20ゲージで行うことになるが,3ポート法なら20ゲージ,23ゲージのいずれも使用可能である.いずれの場合も角膜輪部から0.5mmの位置(毛様体皺襞部)で水晶体を損傷しないように眼球中心方向ではなく,真下に向けてVランスで強膜創を輪部に平行に作製する.その後,まずridgeと前方(水晶体,周辺部網膜や硝子体基底部)との間の牽引を解除する.ついでridge~後極部網膜,ridge~ridgeの牽引を解除する.この順序を逆にして後方の牽引を先に解除してしまうとridgeが周辺~前方に引っ張られて後の操作が困難となる.剪刀で増殖膜を切開することも場合によっては必要であるが,医原性裂孔を形成しないように細心の注意が必要である.強膜は成人と違って非常に柔らかいので,特に2ポート法の場合には常に潅流を保つように心がける.ただし,潅流圧を上げると容易に角膜浮腫をきたして眼底の視認性が低下するので,潅流圧は低めに設定する必要がある.Ridgeへの牽引が十分に解除されれば目的は達成であるが,最後に強膜創への硝子体嵌頓を防止する目的で液?空気置換を行い,硝子体腔の半分ほどに空気を入れて手術を終了する.万が一,裂孔を形成した場合には周囲の増殖膜を可能な限り切除し,液?空気置換を行い,術中に網膜を復位させて裂孔周囲に光凝固を行うといった成人例での硝子体手術と同じ対処法を行うが,後極部に裂孔を生じると予後不良である.周辺部の裂孔では強膜バックリング法を併用する.いずれの場合も水晶体温存より,網膜復位を第一の目標とすべきである.3.術後管理眼内炎や網膜?離など,内眼手術一般の合併症の有無はもちろん,温存した水晶体の混濁の有無にも注意して観察する必要がある.また,成人に比べて術後炎症は強く,眼圧も上昇しやすいので,これらの点にも注意して観察する.眼内炎は成人に対する硝子体手術例と同様にきわめてまれである.術後早期に網膜復位が得られない,あるいは網膜?離が悪化する場合には取り残した増殖膜の牽引や術後フィブリンや新たな増殖膜の牽引が原因であることが多い.医原性裂孔形成の頻度は成人に対する硝子体手術例に比べて低いと報告されている.術後の水晶体の透明性に関しては,術後観察期間10~55カ月(平均27カ月)で,85眼中57眼(67%)の症例で維持可能であったと報告されている16).4.手術成績網膜復位率に関しては,おおむね90%前後の復位率が得られており9~12)(表4),ほぼ同じ病期に対して施行される輪状締結術での復位率(70%前後)と比較してLSVのほうが良好である.術後視力に関して,Caponeはstage4Aで手術を行った33症例中75%で20/40以上,3歳時の平均視力が20/50ときわめて良好な成績を報告している17).おわりに周産期医療の発達とともに,きわめて未熟な児でも生存できるようになり,今後もⅡ型あるいはaggressiveposteriorROPとよばれる重症ROP症例の増加が見込まれる.このような症例では,病状が急激に進行してあっという間に網膜?離に至ることも少なくない.全身状態も不良で,眼底検査すらままならない場合もある表4LSVによる網膜復位率CaponeAJrらStage4A:90%(36眼/40眼)2001OphthalmologyPrennerJLらStage4A:97%(32眼/33眼)2004OphthalmologyHubbardGBⅢらStage4A:84%(21眼/25眼)Stage4B:92%(11眼/12眼)2004OphthalmologyLakhanpalRRらStage4A:100%(32眼/32眼)Stage4B:92%(70眼/76眼)2005Ophthalmology———————————————————————-Page5(37)あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006??が,頻繁に経過をみて,適切な時期にしっかりと光凝固を行うことが基本である.それでも病状悪化が抑制できず網膜?離に至った場合には,早期に硝子体手術を行い,網膜牽引を直接的に解除し,健常な網膜,特に黄斑をできるだけ良い状態で温存し,可能ならば水晶体も温存して,患児が将来より良い視機能が得られるようにするのが理想ではないかと思われる.文献1)AnInternationalCommitteefortheClassi?cationofReti-nopathyofPrematurity:Theinternationalclassi?cationofretinopathyofprematurityrevisited.???????????????123:991-999,20052)NoorilySW,SmallK,deJuanEJretal:Scleralbucklingsurgeryforstage4Bretinopathyofprematurity.??????????????99:263-268,19923)TreseMT:Scleralbucklingforretinopathyofprematuri-ty.?????????????101:23-26,19944)HinzBJ,deJuanEJr,RepkaM:Scleralbucklingsurgeryforactivestage4Aretinopathyofprematurity.??????????????105:1827-1830,19985)SeaberJH,MachemerR,EliottDetal:Long-termvisualresultsofchildrenafterinitiallysuccessfulvitrectomyforstageⅤretinopathyofprematurity.?????????????102:199-204,19956)QuinnGE,DobsonV,BarrCCetal:Visualacuityofeyesaftervitrectomyforretinopathyofprematurityfollow-upat51/2years.TheCryotherapyforRetinopathyofPre-maturityCooperativeGroup.?????????????103:595-600,19967)Mintz-HittnerHA,O?MalleyRE,KretzerFL:Long-termformidenti?cationvisionafterearly,closed,lensectomy-vitrectomyforstage5retinopathyofprematurity.??????????????104:454-459,19978)TreseMT,DrostePJ:Long-termpostoperativeresultsofaconsecutiveseriesofstages4and5retinopathyofpre-maturity.?????????????105:992-997,19989)CaponeAJr,TreseMT:Lens-sparingvitreoussurgeryfortractionalstage4Aretinopathyofprematurityretinaldetachments.?????????????108:2068-2070,200110)PrennerJL,CaponeAJr,TreseMT:Visualoutcomesafterlens-sparingvitrectomyforstage4Aretinopathyofprematurity.?????????????111:2271-2273,200411)HubbardGBⅢ,CherwickDH,BurianG:Lens-sparingvitrectomyforstage4retinopathyofprematurity.??????????????111:2274-2277,200412)LakhanpalRR,SunRL,AlbiniTAetal:Anatomicsuc-cessrateafter3-portlens-sparingvitrectomyinstage4Aor4Bretinopathyofprematurity.?????????????112:1569-1573,200513)HartnettME,MaguluriS,ThompsonHWetal:Compari-sonofretinaloutcomesafterscleralbuckleorlens-spar-ingvitrectomyforstage4retinopathyofprematurity.??????24:753-757,200414)ChowDR,FerronePJ,TreseMT:Refractivechangesassociatedwithscleralbucklinganddivisioninretinopa-thyofprematurity.???????????????116:1446-1448,199815)MaguireAM,TreseMT:Lens-sparingvitreoretinalsur-geryininfants.???????????????110:284-286,199216)FerronePJ,HarrisonC,TreseMT:Lensclarityafterlens-sparingvitrectomyinapediatricpopulation.??????????????104:273-278,199717)CaponeA:EvolusionofRetinalDetachmentinROP.硝子体手術講習会,2003年10月3,4日(東京)

最近の未熟児網膜症発症状況と光凝固治療の動向

2006年1月31日 火曜日

———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSプローチがあるといわれている6).まず,第一は,“Waituntilcertainty”アプローチで,不確かな場合,すべての人に積極的に治療を開始する方法であり,アメリカや日本で行われている.第二は,“statistic”アプローチで,統計上予後が悪いこれらの子どもを救命すると,限られた医療資源が無駄になる可能性があるので,在胎25週,600g未満は救命しないなどとする方法で,おもに北欧で行われている.第三は,“individualized”アプローチで,生存可能な場合,個別に治療を開始し,予後の見通しが悪い場合,できるだけ早く治療を中止する方法で,イギリスで行われている.北欧やイギリスのROP発症率や治療率7~9)が,わが国やアメリカのそれと比べて明らかに低いのは,未熟な症例の生存率がまったく異なることが影響している可能性がある.現在,アメリカと日本では,在胎22週以上の症例に対し積極的に救命を行っており,特に在胎26週未満の未熟な症例に発症するような重症ROPに直面しているといえる.ROPの発症率に関する報告は数多くみられるが,上記の理由により,本稿ではアメリカで行われた多施設研究の結果を中心に解説する.II未熟児網膜症の活動期病期分類ROPの治療適応を理解する際には,まずROPに特異的に用いられる用語を理解する必要がある.ROPの病期分類にはわが国独自の厚生省新臨床経過分類10)(いわゆる厚生省新分類)と国際分類11,12)がある.どちらも相はじめに未熟児網膜症(retinopathyofprematurity:ROP)は,おもに出生体重1,500g未満の極低出生体重児に発症する血管増殖性疾患である.周産期医療の進歩に伴って,在胎28週未満の超早産児の救命率が上昇し,血管成長が不良で重症なROPが増えている1).アメリカで治療適応とされてきたthresholdROPは,もはや至適治療時期ではなく,より早期に治療を開始することで予後が改善されることが明らかとなり,治療適応が変更された2).また,未熟児網膜症の病期分類である国際分類も改変され3),より重症な症例に対する対応が求められている.I新生児医療の進歩と成育限界1990年代には,呼吸管理の進歩と人工肺サーファクタント補充療法,出生前ステロイド投与療法などによって,おもに呼吸窮迫症候群による死亡が大幅に減少した.わが国における超低出生体重児(出生体重1,000g未満)の救命率は次第に上昇し,出生体重500~1,000g未満の死亡率は1985年の32.9%から,1990年には19.3%,2000年には10.5%にまで低下している4).成育限界thresholdofviabilityとは胎外で正常に成長することのできる限界をさすが,成育限界を決定するためは,その国における医学的観点,社会的・経済的観点,法律的観点,倫理的観点からの検討が必要となる5).きわめて未熟な児に対する医療行為については3つのア(25)??*MiinaHiraoka:都立墨東病院周産期センター新生児科〔別刷請求先〕平岡美依奈:〒130-8575東京都墨田区江東橋4-23-15都立墨東病院周産期センター新生児科特集●小児眼科の新しい考え方あたらしい眼科23(1):25~31,2006最近の未熟児網膜症発症状況と光凝固治療の動向????????????????????????????????????????????????????????????????????????????平岡美依奈*———————————————————————-Page2??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(26)互に書き換えが可能だが,近年の治療適応を理解するために国際分類について示す.国際分類Stage1は境界線demarcationlineで,網膜の有血管帯とそれより周辺の無血管帯を分ける白色の線で,網膜面上に存在する.Stage2は境界線が厚みと高さを増し,ピンク色になったものでridgeとよばれ,ときに小さく孤立性の新生血管の発芽(tuft)を数個伴うことがある.Stage3は網膜上に線維血管性増殖がみられる.Stage4は部分的網膜?離で,中心窩を含まない状態がStage4A,中心窩を含む状態がStage4Bである.Stage5は全網膜?離である.病変の位置はZoneで表す.ZoneⅠ(最も内側のZone)は視神経乳頭を中心とし,乳頭と黄斑部の距離の2倍を半径として描いた円である.ZoneⅡは乳頭を中心とし,鼻側の鋸状縁までを半径として描いた円からZoneⅠを除いた部分であり,ZoneⅢは残りの耳側周辺部の三日月状の部分である.Zoneは,網膜血管が最も伸展していない部分で判定する.増殖組織の範囲は時計の時刻で表し,1時間=30?の範囲を示す.Plusdiseaseは,後極部の静脈怒張と動脈蛇行が2象限以上みられる場合に,病期に続いて記載する.IICRYO-ROPstudyわが国では,1968年に永田らがROPに対するキセノン光凝固による治療効果13)を,1972年に山下が冷凍凝固による治療効果を発表14)して以来,網膜凝固治療が定着した.アメリカでも活動期における治療の必要性と効果に関心が高まり,1986年から1987年にかけて全米23施設における多施設での無作為化比較試験(multi-centertrialofcryotherapyforretinopathyofprema-turity:CRYO-ROP)が行われた15).これは,限界域網膜症thresholdROPに達した症例の片眼を冷凍凝固で治療,もう片眼を無治療で経過観察し,予後を比較するというものであった.ThresholdROPとは,ZoneⅠまたはZoneⅡに,線維血管性増殖組織の範囲が連続なら5時間(150?),不連続なら8時間(240?)以上みられ,plusdiseaseを伴う状態を指す.多施設研究の結果,thresholdROPに達した症例のうち,無治療では43%が予後不良(後極部の網膜?離,黄斑を含む網膜襞,または後部水晶体組織)となったが,冷凍凝固施行眼では21.8%と,約半分に減らすことが明らかとなった.これは,ROPに対する網膜凝固治療のエビデンスとなった歴史的に最も重要な研究であり,その後の報告によってROP活動期および瘢痕期のさまざまな問題が明らかにされた.CRYO-ROPにおけるROP発症率は,出生体重1,251g未満で65.8%,1,000g未満では81.6%であった.このうち,出生体重750g未満での発症率は90.0%,750~999gでは78.2%,1,000~1,250gでは46.9%であり,在胎週数27週以下での発症率は83.4%,28~31週では55.3%,32週以上では29.5%と,出生体重が小さいほど,在胎週数が短いほどROPの発症率は高いことが明らかとなった16).■用語解説■ZoneⅠ:未熟児網膜症国際分類で,病変の位置を表すのに用いられる.視神経乳頭を中心とし,乳頭と黄斑部の距離の2倍を半径として描いた円.ZoneⅡ:乳頭を中心とし,鼻側の鋸状縁までを半径として描いた円からZoneⅠを除いた部分.ZoneⅢ:ZoneⅠ・Ⅱを除いた,残りの耳側周辺部の三日月状の部分.Plusdisease:後極部の静脈怒張と動脈蛇行が2象限以上みられる状態.ThresholdROP:限界域網膜症.ZoneⅠまたはZoneⅡに,線維血管性増殖組織の範囲が連続なら5時間(150?),不連続なら8時間(240?)以上みられ,plusdiseaseを伴う状態.以前,未熟児網膜症の治療適応とされていた所見.PrethresholdROP:前限界域網膜症.ZoneⅠのすべてのROP,またはZoneⅡのstage2ROPwithplusdisease,またはZoneⅡ,stage3ROPwithoutplusdiseaseまたはZoneⅡ,stage3ROPwithplusdis-ease(線維血管性増殖組織の範囲は連続5時間未満あるいは合計8時間未満)のいずれかの状態.Type1ROP:現在の治療適応.ZoneⅠ,anystageROPwithplusdisease,またはZoneⅠ,stage3ROPwithoutplusdisease,またはZoneⅡ,stage2or3ROPwithplusdisease.Type2ROP:ZoneⅠ,stage1or2ROPwithoutplusdisease,またはZoneⅡ,stage3ROPwithoutplusdiseaseでは,引き続き経過観察を行う.———————————————————————-Page3(27)あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006??IIIPrethresholdROPCRYO-ROPでは,放置すれば約50%が失明すると予想される状態で冷凍凝固が行われた.この重症度をthresholdROPという言葉で表し,最近までROPの標準的な治療適応とされてきた.しかし,特にZoneⅠの治療成績が非常に不良であったため,この治療適応とされる時期より早期に治療を開始し,予後が改善されたとする報告がみられるようになった17).早期治療を行うことは,自然治癒する可能性のある症例を治療する機会が増えるのではないかという懸念があり,まず,その前段階である前限界域網膜症prethresh-oldROPについて詳細な検討が行われた18).Prethresh-oldROPとは,ZoneⅠのすべてのROP,またはZoneⅡのstage2ROPwithplusdisease,またはZoneⅡ,stage3ROPwithoutplusdisease,またはZoneⅡ,stage3ROPwithplusdisease(線維血管性増殖組織の範囲は連続5時間未満あるいは合計8時間未満)のいずれかの状態である.CRYO-ROPにおいて,prethresholdROPとなったが無治療で経過観察された613眼について,眼底予後に影響する因子を検討した.多変量解析の結果,3カ月後に予後不良(黄斑を含む網膜襞,黄斑を含む網膜?離,全網膜?離など)と診断されることと有意に関連していたのは,非黒人種であること,ZoneⅠに発症していること,発症からprethresholdROPまでの期間が早いこと,plusdiseaseがあること,stage3であることであった.IVEarlytreatmentforROPrandomizedtrial(ETROP)2000年から2002年に出生した出生体重1,251g未満の症例を対象として,全米26施設での無作為化比較試験(Earlytreatmentforretinopathyofprematurityrandomizedtrial:ETROP)が行われた2).リスクモデルに基づきhigh-riskと判定された症例を,両眼がpre-thresholdROPの場合,片眼は48時間以内に早期治療,もう片眼はthresholdROPでの従来治療に無作為に振り分けた.片眼性の場合は,早期治療あるいは従来治療に振り分けた.修正9カ月時に形態的予後不良(黄斑を含む網膜襞,黄斑を含む網膜?離,水晶体後部組織,vitrectomyあるいはbucklingを施行されたもの)と判定されたものは,従来治療の15.6%から早期治療の9.1%へと有意に減少した.国際分類の各病期と予後不良率を表1に示す.最も予後が悪く,かつ早期治療の効果が高かったのはZoneⅠ,stage3であり,従来治療では55.6%が,早期治療では29.6%が予後不良となった.ついで,ZoneⅠ,stage1or2withplusdiseaseとZoneⅡ,stage2withplusdiseaseでは,それぞれ22.2%,20.6%が予後不良となった.逆に,ZoneⅡ,stage3withoutplusdiseaseでは,表1High-RiskPrethresholdRetinopathyofPrematurityにおける国際分類病期と修正9カ月時眼底予後国際分類病期早期治療眼(Unfavorable%)従来治療眼(Unfavorable%)ZoneⅠ,stage3withorwithoutplusdiseaseZoneⅠ,stage1or2withplusdiseaseZoneⅠ,stage1or2withoutplusdiseaseZoneⅡ,stage3withplusdiseaseZoneⅡ,stage3withoutplusdiseaseZoneⅡ,stage2withplusdisease27眼(29.6%)9眼(22.2%)75眼(2.7%)108眼(7.4%)3眼(0)34眼(20.6%)27眼(55.6%)9眼(22.2%)75眼(9.3%)109眼(11.0%)3眼(0)34眼(20.6%)PrethresholdROP:ZoneⅠ,anystageROP;ZoneⅡ,stage2ROPwithplusdisease;ZoneⅡ,stage3ROPwithoutplusdisease;orZoneⅡ,stage3ROPwithplusdiseasebutfewerthan5contiguousor8cumulativeclockhours.Plusdisease:後極部網膜血管の拡張蛇行が2象限以上.Unfavorable:黄斑を含む網膜襞,黄斑を含む網膜?離,水晶体後部組織,またはvitrectomyやbuck-lingを受けたもの.(文献2より改変して引用)———————————————————————-Page4??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(28)従来治療,早期治療とも予後不良と判定されたものはなかった.この結果から,治療適応は変更され,Type1ROP(ZoneⅠ,anystageROPwithplusdisease,またはZoneⅠ,stage3ROPwithoutplusdisease,またはZoneⅡ,stage2or3withplusdisease)に対しては治療を行い,Type2ROP(ZoneⅠ,stage1or2withoutplusdisease,またはZoneⅡ,stage3withoutplusdisease)では引き続き経過観察を行い,Type1ROPかthresholdROPに進行したら治療を行うこととした.治療適応を図に示す.図1は,ZoneⅠ,stage3ROPwithplusdisease(Type1ROP)である.鼻側中心に線維血管性増殖組織がみられ,出血を伴っている.後極部の拡張蛇行は全周にみられ,進行が非常に早く,重症であった.レーザー治療を1,035shots行い,瘢痕期1度で治癒した.図2は,ZoneⅠ,stage3ROPwithoutplusdisease(Type1ROP)である.耳側の境界線は黄斑のごく近傍まで彎入している.境界線の後極側に線維血管性増殖組織がみられ,静脈は拡張しているが,動脈の蛇行はない.図3に同一症例のレーザー治療直後の写真を示す.治療後,耳側の線維血管性増殖組織に牽引性変化がみられたため,さらに追加凝固を行い(合計で661shots),瘢痕期1度で治癒した.図4は,ZoneⅡ,stage3ROPwithplusdisease(Type1ROP)である.鼻側と耳側の境界線の後極側に線維血管性増殖組織がみられ,拡張蛇行は特に耳側で強い.図5に同一症例の治療直後の写真を示す.治療は1回のみ(459shots)で,瘢痕期1度で治癒した.図6は,ZoneⅡ,stage3ROPwithoutplusdisease(Type2ROP)である.耳側に連続2時間の線維血管性増殖組織がみられたが,後極部の拡張蛇行はないため経過を観察したところ,増殖組織は徐々に硝子体混濁となって消失した.図1在胎23週の症例修正31週2日の右眼.ZoneⅠ,stage3withplusdisease.図2在胎22週の症例修正32週3日の右眼.ZoneⅠ,stage3withoutplusdisease.図3図2と同一症例修正31週2日にレーザー治療を施行(0.3sec,300mW,580shots)し,瘢痕期1度で治癒.———————————————————————-Page5(29)あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006??V最近の未熟児網膜症発症率ETROPでは,出生体重1,251g未満の症例におけるROP発症率は68.0%であり,CRYO-ROPの65.8%とほぼ変化していない.出生体重750g未満での発症率は92.7%(CRYO-ROPでは90.0%),750~999gでは75.8%(78.2%),1,000~1,250gでは43.7%(46.9%)であり,在胎週数27週以下での発症率は89.0%(CRYO-ROPでは83.4%),28~31週では51.7%(55.3%),32週以上では14.2%(29.5%)であった.しかし,ZoneⅠの症例の占める割合は,CRYO-ROPでの2.0%からETROPでは9.1%へ,prethresholdROPの割合も27.1%から36.9%へと増加しており,全体の発症率は変化していないが,重症な症例が増加していることを報告している1).2002年に行った東京都多施設研究19)では,出生体重1,000g未満の症例におけるROP発症率は86.1%であり,ETROPでの発症率(82.5%)とほぼ同様の結果であった.各在胎週数別のROP発症率,治療率を表2に示す.在胎27週以下の症例では発症率は90%以上であるが,在胎22週の1例を除外すると,治療率は約50%表2在胎週数別未熟児網膜症発症率・治療率在胎週数症例数発症例発症率(%)治療例治療率(%)重症瘢痕例22週23週24週25週26週27週28週29週30週以上1711251916199151710241815177610010090.996.094.793.889.577.840.01361413723110042.954.556.068.443.810.533.36.7000312000計12210586.15041.06(文献19より改変して引用)図5図4と同一症例修正33週3日にレーザー治療を施行(0.3sec,360mW,459shots)し,瘢痕期1度で治癒.図4在胎22週の症例修正33週3日の右眼.ZoneⅡ,stage3withplusdisease.図6在胎26週の症例修正40週2日の右眼.ZoneⅡ,stage3withoutplusdisease.耳側の増殖組織は自然に消失し,瘢痕期1度で治癒.———————————————————————-Page6??あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006(30)で,在胎23~24週の症例でさえも自然治癒する症例が約半数存在することがわかる.VI国際分類の改定わが国独自の病期分類は1974年に厚生省研究班報告として発表されたが,その時点ですでに,通常の臨床経過と異なり,非常に速い経過で網膜?離へと至る予後不良の型が存在することを明らかにし,これをⅡ型と分類した20).未熟児網膜症国際分類は1984年に発表11)され,1987年に網膜?離に関する記述が一部改正された12)が,Ⅱ型に相当する病型は分類として取り入れられなかった.しかし,近年,ZoneⅠやZoneⅡの後極部側に発症し,非常に進行の速いROPが増加しており,国際分類の再評価が行われた.2005年に発表された国際分類のおもな改正点3)は,(1)特に体重の小さな症例にみられる重篤なROPをaggressiveposteriorROP(AP-ROP)と定義した.(2)正常な後極部血管と,著しい拡張蛇行との中間レベルの拡張蛇行をpre-plusdiseaseと定義した.(3)ZoneⅠの範囲を明確にし,25Dまたは28Dのレンズを用いた視野で,片方を乳頭の鼻側の端に合わせたときの耳側の端までと定義した.AggressiveposteriorROPの特徴をあげると,(1)後極部に発症し,多くはZoneⅠにみられるが,ZoneⅡの後極部側でも発症することがある.(2)後極部の血管の拡張蛇行(plusdisease)が顕著で,全方向にみられ,血管の変化は非常に速い.網膜内で血管のシャントが形成されるが,これは有血管帯と無血管帯の境界のみでなく,その他の部位にも起こることがある.出血もみられる.(3)有血管帯と無血管帯の境界は明瞭ではなく,新生血管のネットワークは平坦なために見逃しやすい.特徴的なのは円周方向に走行する血管がみられることである.(4)古典的なstage1からstage2,stage3という進行をたどらず,治療をしなければ速やかにstage5に至る.これらはわが国でいうⅡ型の概念の再認識に他ならない.このような症例では,plusdiseaseが顕著になる前に治療を開始するのが理想的であるが,発症直後は網膜血管の狭細化が著明であり,その後数日で拡張蛇行が出現するため,初期の診断はむずかしい.特に未熟な症例では,日を空けずに眼底検査を行うことが望ましい.おわりに現在の日本では,生物学的,医学的観点からの成育限界をおおよそ400~500g,22~23週としている.新生児医療レベルとしては世界最高水準となっているが,それに対応して重篤なROPも増えつつある.治療を必要とする症例には,適切な時期に治療を行うことができるよう細心の注意が必要である.文献1)EarlyTreatmentforRetinopathyofPrematurityCoopera-tiveGroup:Theincidenceandcourseofretinopathyofprematurity:?ndingsfromtheearlytreatmentforreti-nopathyofprematuritystudy.??????????116:15-23,20052)EarlyTreatmentforRetinopathyofPrematurityCoopera-tiveGroup:Revisedindicationsforthetreatmentofreti-nopathyofprematurity:resultsoftheearlytreatmentforretinopathyofprematurityrandomizedtrial.???????????????121:1684-1696,20033)AnInternationalCommitteefortheClassi?cationofReti-nopathyofPrematurity:Theinternationalclassi?cationofretinopathyofprematurityrevisited.???????????????123:991-999,20054)堀内勁,猪谷泰史,大野勉ほか:わが国の主要施設におけるハイリスク新生児医療の現状(2001年1月)と新生児期死亡率(2000年1~12月).日本小児科学会新生児委員会新生児医療調査小委員会.日児誌106:603-613,20025)仁志田博司:胎児はいつから人とみなされるか.出生をめぐるバイオエシックス周産期の臨床にみる「母と子のいのち」,p75-94,メジカルビュー社,19996)KinlawK:Thechangingnatureofneonatalethicsinpractice.??????????????23:417-428,19967)CosteloeK,HennessyE,GibsonATetal:TheEPICurestudy:outcomestodischargefromhospitalforinfantsbornatthethresholdofviability.??????????106:659-671,20008)LarssonE,Carle-PetreliusB,CernerudGetal:IncidenceofROPintwoconsecutiveSwedishpopulationbasedstudies.???????????????86:1122-1126,20029)MarkestadT,KaaresenPI,RonnestadAetal:Earlydeath,morbidity,andneedoftreatmentamongextremelyprematureinfants.??????????115:1289-1298,200510)植村恭夫,馬嶋昭生,永田誠ほか:未熟児網膜症の分類(厚生省未熟児網膜症診断基準,昭和49年度報告)の再検討について.眼紀34:1940-1944,1983———————————————————————-Page7(31)あたらしい眼科Vol.23,No.1,2006??11)TheCommitteefortheClassi?cationofRetinopathyofPrematurity:Aninternationalclassi?cationofretinopathyofprematurity.???????????????102:1130-1134,198412)TheInternationalCommitteefortheClassi?cationoftheLateStagesofRetinopathyofPrematurity:Aninterna-tionalclassi?cationofretinopathyofprematurity.II.Theclassi?cationofretinaldetachment.????????????????105:906-912,198713)永田誠,小林裕,福田潤ほか:未熟児網膜症の光凝固による治療.臨眼26:419-427,196814)山下由紀子:未熟児網膜症の検索(Ⅲ)未熟児網膜症の冷凍療法について.臨眼26:385-393,197215)CryotherapyforRetinopathyofPrematurityCooperativeGroup:Multicentertrialofcryotherapyforretinopathyofprematurity.Preliminaryresults.???????????????106:471-479,198816)PalmerEA,FlynnJT,HardyRJetal:Incidenceandearlycourseofretinopathyofprematurity.?????????????98:1628-1640,199117)VanderJF,HandaJ,McNamaraJAetal:Earlytreat-mentofposteriorretinopathyofprematurity:acontrolledtrial.?????????????104:1731-1736,199718)HardyRJ,PalmerEA,DobsonVetal:Riskanalysisofprethresholdretinopathyofprematurity.???????????????121:1697-1701,200319)平岡美依奈,渡辺とよ子,川上義ほか:超低出生体重児における未熟児網膜症:東京都多施設研究.日眼会誌108:600-605,200420)植村恭夫,塚原勇,永田誠ほか:未熟児網膜症の診断および治療に関する研究,厚生省特別研究費補助金昭和49年度報告