———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSI他覚的機能検査法1.ERGa.ERGの種類と各成分の発生起源図1に示した暗順応ERGの最大応答に注目していただきたい(図1,左側の最下段).最初に現れる陰性波がa波で,視細胞および視細胞外節の機能を反映する.また,a波に続く陽性波はb波で,双極細胞に由来する.b波の上行脚にみられる律動様小波は,アマクリン細胞の機能を反映していると考えられている.したがって,それぞれの成分を評価することによって,網膜各層の機はじめに網膜の機能検査は他覚的と自覚的な検査に分けられ,それぞれ網脈絡膜疾患の診断で重要な役割を担っている.他覚的機能検査としては網膜電図(electroretino-gram:ERG)と眼球電図(electrooculogram:EOG)がある.また,自覚的機能検査としては,視野検査および暗順応検査があげられる.眼底検査,眼底造影検査および網膜機能検査を駆使することによって,多くの網脈絡膜疾患を正確に診断することができる.今回はこれらの検査の有用性を代表的な網脈絡膜疾患を列挙しながら解説する.(29)????*ShigekiMachida:岩手医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕町田繁樹:〒020-0015盛岡市内丸19-1岩手医科大学眼科学教室特集●網脈絡膜変性疾患のアップデートあたらしい眼科23(9):1139~1151,2006網脈絡膜疾患の網膜機能解析???????????????????????????????????????????????????????????町田繁樹*図1全視野刺激で得られる網膜電図(ERG)の種類杆体応答最大応答100?V100?V3msec3msec3msec128msec128msec128msec錐体応答30HzフリッカーERG50?V50?V50?V明順応ERG暗順応ERGa波b波律動様小波150msON応答OFF応答Long-?ash錐体応答———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006能変化を判定することが可能である.ERGは記録条件を変えることで,波形が大きく変化し,杆体系と錐体系の反応を分離記録することができる.国際臨床視覚電気生理学会(ISCEV)1)が推奨するプロトコールで記録された正常者のERG波形を示した(図1).代表的な網脈絡膜疾患のERG所見について後述する際に,図1に示した正常波形と病的な波形とを比較していただきたい.20~30分の暗順応後に暗順応下で弱い光で刺激すると,杆体のみが刺激されて杆体系の応答が得られる(杆体応答).波形はa波がなくb波のみで形成される.暗順応下で強い刺激光を用いると,杆体のみならず錐体が反応し,a波およびb波から構成される波形が得られる(最大応答).つぎに10分間の明順応を行い,明順応下で記録できるのが錐体応答で,錐体系の機能を反映している.さらに,30Hzの高頻度刺激で得られる30HzフリッカーERGも錐体系の反応を表している.以上のERGはすべて持続時間が短い刺激光で記録したものである.持続時間の長い刺激光を錐体応答に用いると,ONとOFF応答を分離することできる(図1,右側の最下段).錐体系は杆体系とは異なって,2つの経路がある.つまり,光が照射されると脱分極する双極細胞(ON型双極細胞),光が消えたときに脱分極する双極細胞(OFF型双極細胞)の2種類がある.それぞれ,ONとOFF経路を形成している(図2).ONとOFF応答は,それぞれON型とOFF型双極細胞の応答を反映していると考えられ2),どちらかの経路のみが選択的に障害される疾患がある.b.多局所ERG(multifocalERG:mERG)mERGは眼底後極部の各網膜局所を刺激し,そこからの応答を短時間で記録できるシステムである.各網膜局所からのERG波形が得られ(図3A),応答密度を3Dトポグラフィとして表現できる(図3B).病変が網膜に広範に及ぶ場合は,通常のERGで病変を捉えることができる.しかし,眼底後極部の局所網膜に病変が限局している場合に,mERGが診断に有用である.2.EOG眼球の前極(角膜側)と後極の間には電位差が存在し(前極が後極よりも相対的にプラスになっている),これを眼球の常存電位とよび,網膜色素上皮がその起源と考(30)ON経路視細胞双極細胞ON型ON型OFF型ON経路OFF経路杆体系錐体系図2杆体系と錐体系の伝達経路(文献2より改変)200nV80mSec0BA図3多局所網膜電図(mERG)の各刺激部位から得られた波形(A)とその波形に基づいた3Dトポグラフィ(B)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????えられている.常存電位は暗順応あるいは明順応によってゆっくりと変化し,その変化を波形に表したのがEOGである.記録方法の詳細は割愛するが,内・外眼角の皮膚上にそれぞれ平皿電極を設置する.眼球を1分ごとに1Hzの頻度で左右に約30?動かしてもらう.眼球の前極が電極に近づくと,その電極はプラスに,もう一方の電極は眼球の後極が近づくのでマイナスとなる.2つの電極間での電位差を記録する.暗順応を開始すると,EOG振幅は減少し10分程度で極小(darktrough)に達し,さらに暗順応を続けると再び上昇する(図4A).つぎに,明順応を開始すると,EOG振幅は徐々に増大し(明上昇),明順応開始6~9分で極大(lightpeak)に達する.その後,明順応を続けるとEOG振幅は減少する.明極大と暗極小の振幅比をL/D比とよび,正常ではL/D比は1.8以上になるが,視細胞あるいは網膜色素上皮に広範な障害が存在する場合は,L/D比は1.65未満となる.EOGは得られる情報量においてはERGにかなわないが,EOGが診断に不可欠な疾患がある.後述するBest病はEOGが診断の決め手となる疾患として重要である(図4A).II自覚的機能検査法1.視野検査網脈絡膜疾患では視野異常を訴えることが多く,視野変化を定量化することは,診断および経過観察に重要である.周辺部視野が障害される疾患では動的量的視野検査が適している.また,中心視野が侵される疾患では,Humphrey視野計などを用いた静的量的視野検査が適している.Humphrey視野計では黄色の背景に青色刺激を用いた(blue-on-yellow)視野検査のプログラムが組み込まれており,青錐体系の感度を測定できる.後述するが,青錐体系の感度に特徴的な変化をきたす疾患があり,病態解明や診断の一助となる.2.暗順応検査暗順応曲線は,暗順応の経過に伴った光覚閾値の変化を計測したものである(図4B).暗順応開始5~10分で急速に閾値が約3.0logunit低下する(第1次暗順応).屈曲点を形成して(rod-conebreak),再び閾値が低下し暗順応開始から約45分で最終閾値に達する(第2次暗順応).正常者では,暗順応中に光に対する感度が105~106倍となる.暗順応検査は夜盲をきたす疾患の診断に役立つ.III代表的な網脈絡膜疾患日常臨床で遭遇する可能性の高い網脈絡膜疾患をあげて,その病態,眼底所見および網膜機能検査の所見について述べる.1.網膜色素変性症網膜色素変性症は,視物質のサイクル(phototrans-ductionとretinoidcycle)に関与する蛋白質や視細胞外節の構造蛋白などをコードしている遺伝子異常によって発症する.原因が多いため,表現型にはバリエーションがあり,発症年齢,経過および予後はさまざまである.(31)図4正常者(●)およびBest病(◯)の眼球電図(EOG)(A),と正常者の暗順応曲線(B)0352025101500002004006008時間(分)時間(分)振幅(?V)室内光暗順応光照射0504030201001234567光覚閾値(対数)AB明極大暗極小Rod-conebreak———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006杆体の機能障害が錐体のそれに先行するため,夜盲が初発症状となり,視力は最後まで比較的保たれる.典型的な眼底所見としては血管アーケード付近から周辺部の網膜が萎縮し,特徴的な骨小体様の色素沈着がみられ,網膜血管は狭細化し,視神経乳頭は蒼白化する(図5A).しかし,非定型例では,眼底変化が軽度あるいは黄斑変性を伴うことがある.視野検査では,輪状暗点(図5B)や求心性視野狭窄がみられる.本症のERG所見としては,杆体応答はきわめて減弱するが,錐体応答と30HzフリッカーERGは記録可能なことがある(図5C).しかし,進行例では錐体系応答も記録不能となる.2.錐体ジストロフィ錐体ジストロフィでは,網膜色素変性症と同様にphototransductionおよび視細胞外節の構造蛋白などをコードしている遺伝子の異常が報告されている.20歳以前に発症することが多く,視力低下,羞明,中心暗点および色覚異常を主症状とする.錐体ジストロフィの典型的な眼底所見は,bull?seyepatternの黄斑変性である(図6A).しかし,非特異的な黄斑変性,変性近視様所見あるいは正常眼底を示すことがあって,眼底所見から診断するのは困難である.したがって,ERGが診断に必須な疾患といえる.また,杆体の機能障害を合併し,網膜色素変性症に類似した眼底所見を呈することがある(図6C).視野検査では,典型例では中心暗点がみられ(図6B),杆体機能障害を伴う症例では中心暗点および不完全な輪状暗点がみられる(図6D).錐体ジストロフィのERG所見は特徴的で,杆体応答および最大応答がほぼ正常に保たれているにもかかわらず,錐体応答と30HzフリッカーERGの減弱が目立つ(図7).杆体の機能障害を合併した症例でも,錐体応答の振幅低下が杆体応答の低下に比較して著しい.このように杆体の機能障害を伴った場合は,錐体?杆体ジストロフィと診断する.(32)図5網膜色素変性症の眼底(A),動的量的視野(B)およびERG(C)50?V50?V100?V100?V杆体応答錐体応答30HzフリッカーERG最大応答ABC———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????3.Stargardt病常染色体劣性遺伝性疾患で,レチノイドサイクルに関与するATP-bindingtransportergene(????)の異常が報告されている3).リポフスチンの前駆物質のA2Eが過剰に生成され,網膜色素上皮にリポフスチンが蓄積する.特徴的な眼底所見は,黄斑変性と多発性の黄色斑(33)図6錐体(?杆体)ジストロフィのフルオレセイン蛍光眼底造影(AおよびC),静的量的視野(BおよびD)ACBD錐体-杆体ジストロフィ錐体ジストロフィ50?V25ms25ms25ms50ms50?V100?V100?V杆体応答錐体応答30HzフリッカーERG最大応答図7錐体ジストロフィおよび錐体?杆体ジストロフィのERG———————————————————————-Page6????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006である(図8A)が,進行すると,黄色斑は網膜色素上皮萎縮のために目立たなくなる.フルオレセイン蛍光眼底造影は非常に診断的価値が高く,リポフスチンによる蛍光遮断でdarkchoroidがみられる(図8B).また,黄色斑はwindowdefectによる過蛍光を示す.本症の網膜機能は病変の広がりや病期の進行によって異なるので,網膜機能検査は補助的なものとなる.ERGの所見から,正常な錐体・杆体機能,異常な錐体機能,異常な錐体・杆体機能の3つのタイプに分類される.本症例では錐体機能のみが低下していた(図8C).4.先天網膜分離症伴性劣性遺伝性疾患で男性のみが発症し,女性は保因者となる.小児の黄斑疾患のなかで最も高頻度にみられる疾患である.網膜内の細胞と細胞の接着に関与するretinoschisinをコードしている???遺伝子の異常によって発症する4).黄斑部病変は必発で?胞様変化を示し(図9A),光干渉断層法(OCT)では?胞様変化が網膜分離であることが確認できる(図9B).周辺部網膜には周辺部網膜分離,網膜内層円孔,銀箔様反射,白色樹枝血管がみられる.ERG所見は特徴的で,最大応答のa波はほぼ正常だが,b波の振幅が減弱し,a波よりもb波が小さくなるいわゆるnegativeERGを呈する(図9C).視細胞と双極細胞の接着に問題があり,シナプス間の伝達が障害されているためと考えられる.黄斑部の変化が,非特異的な病変となった症例や網膜分離と網膜?離を鑑別しにくい小児例などでは,ERG所見が診断に非常に役に立つ.(34)図8Stargardt病の眼底(A),フルオレセイン蛍光眼底造影(B)およびERG(C)ABC50?V25ms25ms25ms50ms50?V100?V100?V杆体応答錐体応答30HzフリッカーERG最大応答———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????(35)ABC図9先天網膜分離症の眼底(A),OCT(B)および最大応答ERG(C)図10完全型および不全型の先天停在性夜盲(CSNB)のERG(A)および病態(B,文献7より改変)完全型CSNB不全型CSNB完全型CSNB不全型CSNBON経路ON経路OFF経路ON経路ON経路OFF経路NO型NO型FFO型錐体系杆体系杆体系NO型NO型FFO型錐体系AB50?V25ms25ms25ms50ms50?V100?V100?V50ms100?V杆体応答錐体応答30HzフリッカーERG最大応答視細胞双極細胞Long-?ash錐体応答———————————————————————-Page8????あたらしい眼科Vol.23,No.9,20065.先天停在性夜盲(congenitalstationarynightblindness:CSNB)CSNBは,夜盲よりも,学校検診や就学時検診で視力低下を指摘されて眼科を受診することが多い.ERGの所見は特徴的であり,最大応答がnegativeERGとなる(図10A).ERG所見から完全型と不全型の2つに分類されている5).CSNBは眼底所見がほぼ正常であるが,完全型は近視を伴うため豹紋状眼底を呈する.完全型CSNBでは杆体応答がほぼ消失しているのに対して,不全型CSNBでは杆体応答が残存している.錐体応答と30HzフリッカーERGの振幅は,完全型CSNBでは保たれているが,不全型CSNBでは減弱している.完全型CSNBの錐体応答では,a波の底が広くsquare-typea-waveとよばれている.Long-?ash錐体応答は非常に特徴的で,完全型CSNBではON応答が消失している.一方,不全型CSNBではONおよびOFF応答がともに低下している6).ERGの所見からもわかるように,完全型CSNBでは杆体系と錐体系のON経路のみが障害され,不全型CSNBではすべての経路が不完全に障害されていると考えられる(図10B)7).完全型CSNBでは杆体系の機能が消失しているため,暗順応曲線は第1次暗順応のみとなり,杆体閾値は存在しない.一方,不全型CSNBでは杆体の最終閾値は正常者よりも1.5logunit高いが第2次暗順応が存在する(図11A)7).青錐体系は緑・赤錐体とは異なって,OFF経路をもたずON経路のみからなる.したがって,完全型CSNBでは青錐体系の機能は著しく低下すると考えられる.しかし,色覚機能検査では正常である.Blue-on-yellow視野検査で青錐体系の感度を測定すると,完全型CSNBではドーナッツ状に視野が欠損し,中心10~15?の青錐体系の感度が保たれている(図11B)8).黄斑部の青錐体系の機能が保たれているために,色覚検査では異常を示さないと考えられる.完全型CSNBは,伴性劣性および常染色体劣性の遺伝形式をとる.伴性劣性遺伝性の完全型CSNBでは,ON経路の発達を促すnyctalopinをコードしている???遺伝子の異常が見つかっている9).(36)ABCase1Case2Case3Case4Case5W/WB/Y7654321005101520253035暗順応時間(分)光覚閾値(対数)完全型CSNB不全型CSNB正常図11完全型および不全型の先天停在性夜盲(CSNB)の暗順応曲線(A,文献7より)完全型CSNBのwhite-on-white(W/W)およびblue-on-yellow(B/Y)を用いた静的量的視野(B,文献8より)———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????不全型CSNBは伴性劣性遺伝であり,L-typevolt-age-gatedcalciumchannel(???????)の変異がみられる.???????は杆体と錐体へのカルシウムイオンの流入をコントロールし,視細胞からの神経伝達物質の放出に関与している.したがって,???????に変異があれば,視細胞から双極細胞への伝達が障害される10).CSNBは,遺伝子の機能と網膜機能異常との関連性が明らかとなった疾患である.ERGがその病態解明に重要な役割を果たした.6.小口病小口病は,常染色体劣性遺伝性の停在性夜盲症である.光によって活性化したロドプシンが不活化するために必要なarrestinあるいはrhodopsinkinaseに変異がある11,12).ロドプシンは不活化されると光を受け取り反応することができる.したがって,ロドプシンが常に活性化した状態にあると,光に反応できず,杆体機能は著しく低下する.眼底には金箔様の反射がみられ(図12A),長時間の暗順応後に反射は消失する(水尾?中村現象).杆体応答は消失しており,最大応答はnegativeERGとなる(図12B).先天網膜分離症やCSNBのnegativeERGとは波形が異なっており,a波振幅は正常に比較して減弱している.錐体系のERGはまったく正常である.7.白点状眼底遺伝性で非進行性の夜盲症の一つである.そのほとんどが常染色体劣性遺伝を示し,レチノイドサイクルに関与している11-???retinoldehydrogenaseの異常によって発症する13).つまり,網膜色素上皮から視細胞へのレチナールの供給が減少し,ロドプシンの再生が著しく遅延しているものと考えられる.したがって,杆体機能が著しく低下している.眼底には網膜色素上皮レベルの小白点が無数に認められる.通常,視力は正常であるが,錐体ジストロフィを合併することがある.ERGでは,杆体および最大応答は非常に小さいが,錐体系のERGは正常である.暗順応時間を2時間程度に延長すると,杆体および最大応答は正常まで増大す(37)50?V25ms25ms25ms50ms50?V100?V100?V杆体応答錐体応答30HzフリッカーERG最大応答AB図12小口病の眼底(A)およびERG(B)図13正常者,小口病および白点状眼底の暗順応曲線(文献14より)654321001020504030200100300500400暗順応時間(分)光覚閾値の対数白点状眼底小口病正常———————————————————————-Page10????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006(38)左眼右眼AB200nV80mSec0200nV80mSec0図14Occultmaculardystrophy(OMD)の眼底(A)およびmERG(B)ABCBlue-on-yellowWhite-on-white左眼(患眼)右眼(健眼)図15Acutezonaloccultouterretinopathy(AZOOR)の眼底(A),静的量的視野(B)およびmERG(C)———————————————————————-Page11あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????る.本症の暗順応検査では,正常の杆体閾値に達するまでの時間が延長し,約2時間を要する.小口病でも最終杆体閾値は正常であるが,白点状眼底とは異なり,正常閾値に達するまで5時間以上を要する(図13)14).網膜色素変性症の一つに白点状網膜炎がある.白点状網膜炎は,白点状眼底に眼底所見が類似しているが,進行性の視細胞変性疾患である.白点状網膜炎では暗順応時間を延長しても,ERG振幅および杆体閾値の回復がみられない.8.Best病常染色体優性遺伝性の黄斑ジストロフィで,黄斑部に特徴的な卵黄様病変をきたす.????遺伝子がコード(39)256ms3ms128ms3ms128ms3ms128ms256ms150ms左眼右眼AB20?V20?V100?V100?V100?V杆体応答錐体応答30HzフリッカーERG最大応答Long-?ash錐体応答図16Unilateralconedysfunction(UCD)の眼底(A)およびERG(B)———————————————————————-Page12????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006しているbestrophinsに変異がみられる15).Bestrophinsは網膜色素上皮の脈絡膜側の細胞膜Clチャンネルで,EOGの明上昇に関与している.小児期に発症し,前卵黄期,卵黄期,いり卵期,偽蓄膿期,萎縮期と病変は進行してゆく.黄斑部の特徴的な卵黄様病変は,網膜色素上皮下の沈着物で,リポフスチン様の物質と考えられている.本症では,ERGはほぼ正常である.EOGはほぼ平坦でそのL/D比が1.65未満となる(図4A).遺伝子異常があっても,特徴的な黄斑病変が発症しないことがあり,眼底所見の浸透率は高くない.一方,EOG所見の浸透率は100%であり,保因者を同定するのにも役立つ.30~50歳代でBest病に類似した眼底所見で発症する成人型卵黄様黄斑ジストロフィがある.Best病とは異なり,EOG所見は正常で鑑別のポイントとなる.9.眼底がほぼ正常な疾患群眼底後極部に限局性の網膜機能障害をきたす網脈絡膜疾患として,occultmaculardystrophy(OMD)16)とacutezonaloccultouterretinopathy(AZOOR)17)があげられる.これらの疾患は,眼底所見がほとんどみられないため,網膜機能検査が診断に必須である.特に,眼底後極部の局所網膜からの応答を記録できるmERGが診断に威力を発揮する.OMDの主症状は両眼の視力低下であるが,進行は緩徐で0.1程度の視力を保つ.眼底所見と全視野刺激で得られるERGはまったくの正常である(図14A).しかし,mERGでは,両眼の黄斑部とその周囲からの応答が選択的に低下する(図14B).AZOORは若年から中年の女性にみられる疾患で,急激な視野欠損および光視症を主訴とする.眼底疾患でありながら眼底はほぼ正常である(図15A).視野欠損は,Mariotte盲点の拡大からそれが周辺視野へ穿破するものまで程度はさまざまである(図15B).視野欠損が中心視野に及ぶ場合は,視力が低下する.視野欠損に一致あるいはそれよりも広い範囲でmERGの応答が低下する(図15C).通常の視野検査で暗点がはっきりしなくても,blue-on-yellowを使うと広範囲に広がる暗点を検出することができる(図15B)18).眼底所見がほぼ正常であるにもかかわらず,片眼の錐体機能がきわめて低下する疾患があり,unilateralconedysfunction(UCD)と命名されている.若い女性に多く,急激な片眼性の視力低下と中心暗点を訴える.代表症例のように,眼底所見では左右差を認めないものの(図16A),左眼の錐体系のERGがきわめて低下している(図16B).筆者らは,UCDの反対眼に典型的なAZOORが発症した症例を経験したことから,UCDはAZOORの表現型の一つと考えている19).おわりに今回列挙した網脈絡膜疾患のほとんどは,治療不可能である.しかし,その予後は疾患によって大きく異なる.停止性であり,日常生活には何ら支障をきたさない疾患も含まれている.正確な診断に基づいた患者への説明が,最も重要な疾患群と思われる.正確な診断のためには網膜機能検査が必須と考えられ,網膜機能検査を理解しその重要性を認識することが大切である.謝辞:多くの症例のERG記録を行っていただいた岩手医科大学眼科学教室助手木澤純也先生に深謝いたします.文献1)MarmorMF,ZrennerE:Standardforclinicalelectroreti-nography(1999update).??????????????97:143-156,19992)SievingPA:Photopicon-ando?-pathwayabnormalitiesinretinaldystrophies.???????????????????????91:701-773,19933)AllikmetersR,SinghN,SunHetal:Aphotoreceptorcell-speci?cATP-bindingtransportergene(ABCR)ismutatedinrecessiveStargardtmaculardystrophy.?????????15:236-246,19974)TheRetinoschisisConsortium:Functionalimplicationofthespectrumofmutationsfoundin234caseswithX-linkedjuvenileretinoschsis(XLRS).?????????????7:1185-1192,19985)MiyakeY,YagasakiK,HoriguchiMetal:Congenitalsta-tionarynightblindnesswithnegativeelectroretinogram:anewclassi?cation.???????????????104:1013-1020,19866)MiyakeY,YagasakiK,HoriguchiMetal:On-ando?-responsesinphotopicelectroretinogramincompleteandincompletetypesofcongenitalstationarynightblindness.????????????????31:81-87,1987(40)———————————————————————-Page13あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????7)MiyakeY:CompleteandincompletetypesofCSNB.Elec-trodiagnosisofRetinalDiseases(edbyMiyakeY),p90-113,Springer,Tokyo,20068)TerasakiH,MiyakeY,NomuraRetal:Blue-on-yellowperimetryinthecompletetypeofcongenitalstationarynightblindness.?????????????????????????40:2761-2764,19999)Bech-HansenNT,NaylorMJ,MaybaumTAetal:Muta-tionsinNYX,encodingtheleucine-richproteoglycannyc-talopin,causeX-linkedcompletecongenitalstationarynightblindness.?????????26:319-323,200010)StormTM,NyakaturaG,Apfelstedt-SyllaEetal:AnL-typecalcium-channelgenemutatedinincompleteX-linkedcongenitalstationarynightblindness.?????????19:260-263,199811)FuchsS,NakazawaM,MawMetal:Ahomozygonous1-basepairdeletioninthearrestingeneisafrequentcauseofOguchidiseaseinJapanese.?????????10:360-362,199512)YamamotoS,SippelKC,BersonELetal:DefectsintherhodopsinkinasegeneinpatientswiththeOguchiformofstationarynightblindness.?????????15:175-178,199713)YamamotoH,SimonA,ErikssonUetal:Mutationsinthegeneencodig11-cisretinoldehydrogenasecausedelayeddarkadaptationandfundusalbipunctatus.?????????22:188-191,199914)近藤峰生:小口病.どうとる?どう読む?ERG(山本修一,新井三樹,菅原岳史,近藤峰生編),p94-95,メジカルビュー社,200415)MarquardtA:Mutationsinanovelgene,VMD2,encod-ingaproteinofunknownpropertiescausejuvenile-onsetvitelliformmaculardystrophy(Bestdisease).?????????????7:1517-1525,199816)MiyakeY,HoriguchiM,TomitaNetal:Occultmaculardystrophy.???????????????122:6446-6453,199617)GassJDM:Acutezonaloccultouterretinopathy.??????????????????????13:79-97,199318)MachidaS,Haga-SanoM,IshibeTetal:Decreaseofblueconesensitivityinacuteidiopathicblindspotenlarge-mentsyndrome.???????????????138:296-299,200419)MachidaS,KizawaJ,FujiwaraTetal:Unilateralconedysfunctionasamanifestationofacutezonaloccultouterretinopathy.??????,2006,inpress(41)