———————————————————————-Page1(1)????非感染性ぶどう膜炎に対する治療は近年大きく変わってきている.海外で行われている治療で,まだ国内には取り入れられていないものも数多くある.本特集では,現在よく使用されているものから,将来的にわが国でも利用可能になることを期待するものまで,ぶどう膜炎に対する治療の最先端を紹介したい.非感染性ぶどう膜炎の治療は,一般的には3つのカテゴリーに分類される.第一は伝統的な副腎質ステロイド(以下,ステロイド)で,抗炎症作用だけでなく免疫抑制作用をもち,非常に効果的でありながらも全身的副作用の危険性が高い薬剤である.全身的副作用を軽減するために,最近はTenon?下あるいは硝子体内に積極的に局所投与をすることもあるが,むしろ眼副作用に悩まされるようになった.眼科医にとっては,自分の領域範囲内で,ある意味管理しやすい副作用と考えがちである.しかし,特にステロイド緑内障は不可逆的な視機能低下をきたす可能性があるため,決して軽く考えてはいけない.本特集のステロイド療法については,河原澄枝(点眼,眼球周囲投与),菅原道孝(全身投与)と大黒伸行(硝子体内投与)の3氏に現場の臨床医にとって欠かせない情報をまとめていただいた.非感染性ぶどう膜炎に対する治療の二つめは,免疫抑制薬であり,これはわが国のぶどう膜炎領域では最も利用が進んでいない.海外では,患者の病態に応じてさまざまな免疫抑制薬が「免疫抑制療法」(immunosuppressivetherapy)あるいは「免疫調整療法」(immunomodulatorytherapy)として使われているにもかかわらず,わが国で利用できるのはシクロスポリン1剤のみである.しかも,Beh?et病の病名がなければ保険適用はない.膠原病のような全身疾患を伴うぶどう膜炎の場合は,薬剤の種類は若干広がるが,基本的にほとんどの非感染性ぶどう膜炎に使用できない.しかし,免疫抑制薬はいずれも,単に免疫を抑制する目的に用いられている.薬剤の選択は,病名だけでなく患者の病状および全身状態に依存する.たとえば,Beh?et病といえどもシクロスポリンしか効果がないという訳ではない.シクロスポリンおよびステロイドの全身投与で炎症発作が抑制されない患者には,視機能を失う前に他の免疫抑制薬であるアザチオプリンなどを使いたいところであるが,残念ながらわが国の保険医療制度,厚生労働省の薬剤承認制度では認められていない.わが国における免疫抑制薬の使用については,毛塚剛司氏に詳しく述べていただいた.非感染性ぶどう膜炎の治療のカテゴリーの三つめは,近い将来わが国で認可される予定の生物学的療法である.これは,ぶどう膜炎領域では画期的なできごとである.この20年ほど新しい治療法はなく,コントロールできない疾患には徐々に免疫抑制療法をエスカレートすることしか手段がないうえに,副0910-1810/06/\100/頁/JCLS*AnnabelleAyameOkada:杏林大学医学部眼科●序説あたらしい眼科23(11):1385-1386,2006非感染性ぶどう膜炎治療の最先端??????????????????????????????????????????????????岡田アナベルあやめ*———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006作用に悩ませられてきた.無論,生物学的療法においても副作用は多く存在するが,薬理作用が疾患の発症機序に対して選択的であるため,効果が高いと考えられる.欧米のぶどう膜炎専門家が,特にtumornecrosisfactoraを阻害するモノクローナル抗体であるin?iximabを広く使用するようになり,さまざまな疾患で効果が確認されている.わが国においても,大野ら1)によりBeh?et病におけるin?iximabの有用性が報告されている.しかし,本薬剤の使用に際してわが国ではひとつ大きな懸念がある.これは,in?iximab治療中の日和見感染症,特に結核の危険性である.周知のとおり,結核は潜伏感染を含め,諸外国に比べわが国ではまだまだ比較的高率である.杏林アイセンターの眼炎症外来において全身検査を必要とした患者の調査では,約20%が強陽性(硬結≧10mm)であった2).しかし,これらの患者の胸部X線はほとんど正常と読影されており,潜伏結核感染の有無がわかりにくい.結核感染症の3割から4割が肺外結核であるため,潜伏感染は必ずしも胸部X線に異常所見が生じないという事実を忘れてはならない.潜伏感染の可能性を除外するには,Quantiferon?-TBGoldという検査があるが,海外ではすでに応用されているにもかかわらず残念ながら結核の多いわが国ではまだ導入されていない3).本特集では,生物学的療法について南場研一氏と大野重昭氏に詳しく解説していただいた.薬剤以外の療法も近年生まれつつある.これはわが国特有の状況である.顆粒球除去療法(granulo-cytapheresis)は大腸炎のために開発されたものであるが,最近,Beh?et病のぶどう膜炎にも効果が示された.より多症例での臨床調査を必要とするが,副作用の少ない治療法であるため,保険医療上の応用が非常に期待されている.これについては,Beh?et病に初めて使用した園田康平氏と南場研一氏に解りやすく紹介していただいた.さらに非感染性ぶどう膜炎の治療の一部に合併症に対する手術のあることはいうまでもない.特に,白内障および緑内障が最も頻度が高い外科的に処置できる合併症である.この両者に注目し,慶野博氏に手術のevi-dence-basedmedicine(EBM)を細かくまとめていただいた.最後に一言付け加えておきたい.ぶどう膜炎領域では専門家の意見が分かれることも少なくないし,エキスパートを集めて議論すると,考え方がかなり異なることがわかる.本特集で述べられている内容は,あくまでその著者個人の意見ということになる.しかしながら,いずれも多くのぶどう膜炎を診察し治療した経験に基づくものであり,述べられている意見はガイドラインとして受けとっていただければよいと思う.文献1)OhnoS,NakamuraS,HoriSetal:Ef?cacy,safetyandpharmacokineticsofmultipleadministrationofin?iximabinBeh?et?sdiseasewithrefractoryuveoretinitis.????????????31:1362-1368,20042)MorimuraY,OkadaAA,KawaharaSetal:Tuberculinskintestinginuveitispatientsandtreatmentofpre-sumedoculartuberculosisinJapan.?????????????109:851-857,20023)MoriT,SakataniM,YamagishiFetal:Speci?cdetec-tionoftuberculosisinfection:aninterferon-g-basedassayusingnewantigens.?????????????????????????170:59-64,2004(2)