———————————————————————-Page1(131)4130910-1810/09/\100/頁/JCLSあたらしい眼科26(3):413417,2009cはじめに網膜色素変性症(RP)に伴う黄斑病変として,黄斑円孔や黄斑前膜,黄斑浮腫が報告1)されている.今回筆者らは,1年以上持続した薬物治療に抵抗するRPに伴う胞様黄斑浮腫(CME)に対して硝子体手術を行い,術後改善が認められた1例を経験したので報告する.I症例患者:47歳,男性.現病歴:3年前からの夜盲,視力低下を主訴に,2005年8月10日,近医を受診した.硝子体中に軽度の炎症細胞および黄斑浮腫を認め,後部ぶどう膜炎の疑いで,当院紹介とな〔別刷請求先〕田内慎吾:〒060-8604札幌市中央区北11西13市立札幌病院眼科Reprintrequests:ShingoTauchi,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SapporoCityGeneralHospital,West13,North11,Chuo-ku,Sapporo-shi,Hokkaido060-8604,JAPAN網膜色素変性症に伴う胞様黄斑浮腫に対して硝子体手術が有効と思われた1例田内慎吾木下貴正竹田宗泰市立札幌病院眼科ACaseinwhichVitrectomySeemedtobeEectiveforCystoidMacularEdemaAssociatedwithRetinitisPigmentosaShingoTauchi,TakamasaKinoshitaandMuneyasuTakedaDepartmentofOphthalmology,SapporoCityGeneralHospital目的:網膜色素変性症(RP)に伴う胞様黄斑浮腫(CME)に対して,硝子体手術が有効と思われた1例を経験したので報告する.症例:47歳,男性.3年前からの夜盲,視力低下を主訴に,2005年8月10日,近医を受診した.硝子体に軽度の炎症細胞および黄斑浮腫を認め,後部ぶどう膜炎の疑いで,当院紹介となった.初診時視力は右眼(0.8),左眼(0.9)であった.眼底は網膜動脈狭細化,色素沈着を伴う網膜変性があり,網膜電図(ERG)は消失型で典型的なRPを認めた.黄斑部に高度のCMEを伴っていた.炭酸脱水酵素阻害薬(アセタゾラミド)の投与を行い,一時的に改善傾向があるものの再燃と視力低下をくり返した.術前視力は右眼(0.8)(2007年8月8日)で,同年9月10日,右眼硝子体手術を施行した.術後,CMEは改善し,2008年4月15日,矯正視力は右眼(0.9)となった.結論:薬物治療に抵抗するRPに伴うCMEに対する硝子体手術は有効である可能性がある.Wereportacaseinwhichvitrectomyseemedtobeeectiveforcystoidmacularedema(CME)associatedwithretinitispigmentosa(RP).Thepatient,a47-year-oldmale,hadacheckupfromalocaldoctoronAugust10,2005,withchiefcomplaintofnightblindnessanddecreasedvisualacuityofthreeyears’duration.Mildinammatoryvitreouscellsandmacularedemawereseen.Becauseofsuspectedposterioruveitis,hewasreferredtoourdepartment.Atinitialexamination,hisvisualacuitywas(0.8)righteyeand(0.9)lefteye.Thefundusshowedretinalarterynarrowingandretinaldegenerationwithpigmentation.Asfortheelectroretinogram(ERG),itsatnessreectedtypicalRP.ExtensiveCMEwasalsonotedinthemaculararea.Weadministeredcarbonicanhydraseinhibitor(acetazolamide)fortheCME,butitshowedonlytemporaryimprovement,followedbyrecur-renceandvisualloss.OnApril8,2007,visualacuitywas(0.8)righteye;weperformedvitrectomyonSeptember10.CMEdecreasedpostoperatively;correctedvisualacuityhadimprovedto(0.9)righteyeonApril15,2008.Vit-rectomymaybeeectiveforCMEwithpharmacotherapy-resistantRP.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(3):413417,2009〕Keywords:網膜色素変性症,胞様黄斑浮腫,硝子体手術.retinitispigmentosa,cystoidmacularedema,vitrectomy.———————————————————————-Page2414あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(132)った.既往歴:高血圧症で内服中.家族歴:母親に夜盲(+).初診時所見(2005年8月23日):視力は,右眼0.6(0.8×0.75D),左眼0.7(0.9×0.75D).眼圧は,右眼12mmHg,左眼13mmHg.細隙灯顕微鏡では,前眼部:角膜,前房は異常なし.中間透光体:初発白内障(両眼),硝子体cell+(右眼2+,左眼1+).眼底:両眼底で網膜動脈の狭細化,アーケード外の網膜の変性を認めた.視神経萎縮は認めなかった.両眼にCMEと思われる所見を認めた.フルオレセイン蛍光造影(FA)(2005年9月2日):右眼のFA早期像(図1)で,周辺部には点状の色素沈着が散在していた.Vasculararcade付近から赤道部にかけて,網膜色素上皮の萎縮によるびまん性顆粒状の過蛍光(windowdefect)があり,左眼も同様の所見を呈していた.FA後期像(図2)では,両眼のCMEと思われる蛍光貯留および乳頭部に蛍光漏出を認めた.GP(Goldmann視野計測)(2005年8月26日):両眼に地図状の暗点を認めた.フラッシュERG(網膜電図)(2005年8月26日):a波,b波の振幅低下(消失型)を認めた.光干渉断層計(OCT)(2005年9月2日):両眼の中心窩網膜の肥厚および内部に胞様変化を認めた.以上の所見より,RPおよびそれに伴うCMEと診断した.治療の経過:図3に示すように,2006年7月11日より,アセタゾラミド750mg/日(3×n)およびアスパラKR3T/日(3×n)の内服を開始した.9月13日,両眼の矯正視力1.0まで改善し,アセタゾラミドを休薬した.1カ月後,両眼の視力低下を認めたため,内服を再開した.再開後の視力は改善傾向で,アセタゾラミドの長期投与による全身性の副作用も懸念されたため,翌年2月28日,再び休薬とした.OCTの推移(図4)では,アセタゾラミド休薬後,両眼のCMEの悪化を認めた.内服再開後,CMEは左眼では軽減したが,右眼ではわずかな軽減にとどまった.経過のなかで,OCT上,両眼ともに後部硝子体膜は後極部網膜に広範囲で接着しており,膜の肥厚や黄斑にかかる牽引は認められなかった.図5に示すように,2月28日のアセタゾラミド休薬後,再び両眼の視力低下を認め,中心窩網膜は肥厚した.4月アセタゾラミド750mg/日数視力右眼OCT左眼OCT左眼右眼1.41.210.80.60.40.22006年7/118/99/13①④②⑤③⑥10/1812/202/282007年図3治療の経過(1)OCT欄の①⑥の数字は図4のOCT像に対応.図1フルオレセイン蛍光造影(右眼早期,2005年9月2日)周辺部に点状の色素沈着の散在を認めた.また,網膜色素上皮の萎縮による過蛍光(windowdefect)を認めた.右眼(12分53)左眼(13分43)図2フルオレセイン蛍光造影(後期,2005年9月2日)両側のCMEと思われる蛍光の貯留を認めた.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009415(133)13日に内服再開後,6月15日時点で両眼ともに視力は改善し,中心窩網膜厚も改善した.しかし,右眼ではわずかな改善にとどまり,8月8日の時点でCMEが持続していたため,患者への十分な説明と同意を得て,9月10日,右眼のみ硝子体手術を行った.手術の概要:アルコン社の23ゲージシステムを用いた.トリアムシノロンを使用して後部硝子体離(PVD)を作製し,内境界膜(ILM)は離しなかった.水晶体は温存した.術中,特に合併症はなかった.術後の経過:図5にみるように右眼硝子体手術後,OCTで中心窩網膜厚は244.2297.9μmと改善し,視力は,2008年4月15日現在,0.9を保っている.これに対して,左眼はアセタゾラミド休薬後,中心窩網膜の肥厚が449.3527.4μmと持続し,視力も(0.4)(0.7)と低下傾向である.2008年1月11日のOCT(図6)上,右眼のCMEは軽減し,左眼はCMEが持続している.現在まで手術を行っていない左眼に対し,硝子体手術を施行した右眼のみ,視力およびCMEの改善を認めた.II考按RPでCMEが生じるメカニズムとして,網膜色素上皮のポンプ作用の障害2),抗網膜抗体による自己免疫反応による炎症3),硝子体による黄斑の機械的牽引4),などが報告されているが,まだ不明なところが多い5).RPにおけるCMEの発生率は1020%という報告6,7)もある.本症例では,術前のOCT上,硝子体による黄斑の牽引は確認されなかった.RPに伴うCMEに対する治療は,薬物治療として,ステロイドや炭酸脱水酵素阻害薬の内服,眼内局所投与が報告8,9)①③②⑤④⑥悪化悪化軽減わずかに軽減図4OCTの推移①→②:CME悪化,②→③:CMEわずかに軽減,④→⑤:CME悪化,⑤→⑥:CME軽減.経過のなかで,OCT上,両眼ともに硝子体による黄斑の牽引は認められなかった.1.41.210.80.60.40.27006005004003002001000中心窩網膜厚小数視力右眼OCT⑦9/10,右眼硝子体手術施行アセタゾラミド750mg/日視力1.41.210.80.60.40.26005004003002001000(μm)2/282007年2008年4/136/158/810/411/1512/271/114/15中心窩網膜厚小数視力左眼OCT⑧視力図5治療の経過(2)図中の⑦,⑧の数字は図6のOCT像に対応.———————————————————————-Page4416あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(134)されている.海外では,アバスチンRを硝子体腔に投与したという報告10)もある.今回筆者らは,CMEに対してアセタゾラミドを3度にわたり750mg/日(3×n)使用し,一時的に効果を認めたが,休薬により再燃をくり返した.このため,右眼のみ硝子体手術を実施した.RPに伴うCMEに対する薬物治療については,投与間隔および効果の持続,長期投与による副作用などの問題点が残されている.RPに伴うCMEに対して硝子体手術を行った最近の報告では,国内では,玉井らが,術後2カ月でCMEが再発したと報告4)している.海外では,Garciaらが,術後観察期間1年で,12例中10例(83.3%)で視力,CMEが改善したと報告11)している.今回筆者らは,薬物治療に抵抗するRPに伴うCMEに対して硝子体手術を施行し,術後の経過は良好であった.このような病態に対して,症例によっては硝子体手術は有効である可能性があり,薬物治療に抵抗し,中心窩網膜厚や視力が進行性に悪化する症例には試みても良い治療と考えられる.しかし,今回は1例のみの経験であり,引き続き慎重な経過観察をしていく予定である.本論文の要旨は,第46回北日本眼科学会(ポスター講演)にて報告した.文献1)高橋政代:網膜色素変性の黄斑病変.眼科44:65-70,20022)NewsomeDA:Retinaluoresceinleakageinretinitispig-mentosa.AmJOphthalmol101:354-360,19863)HeckenlivelyJR,JordanBL,AptsiauriN:Associationofantiretinalantibodiesandcystoidmacularedemainpatientswithretinitispigmentosa.AmJOphthalmol127:565-573,19994)玉井洋,和田裕子,阿部俊明ほか:網膜色素変性に伴う胞様黄斑浮腫と硝子体手術.臨眼56:1443-1446,20025)高橋牧,岸章治:胞様黄斑浮腫をきたす疾患.眼科50:721-727,20086)FetkenhourCL,ChoromokosE,WeinsteinJetal:Cystoidmacularedemainretinitispigmentosa.TransSectOph-thalmolAmAcadOphthalmolOtolaryngol83:515-521,19777)FishmanGA,MaggianoJM,FishmanM:Foveallesionsseeninretinitispigmentosa.ArchOphthalmol95:1993-1996,1977⑦右眼左眼⑧図6術後のOCT(2008年1月11日)硝子体手術を施行した右眼にCMEの改善が認められた.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009417(135)8)KimJE:Intravitrealtriamcinoloneacetonidefortreat-mentofcystoidmacularedemaassociatedwithretinitispigmentosa.Retina26:1094-1096,20069)ScorolliL,MoraraM,MeduriAetal:Treatmentofcys-toidmacularedemainretinitispigmentosawithintravit-realtriamcinolone.ArchOphthalmol125:759-764,200710)MeloGB,FarahME,AggioFB:Intravitrealinjectionofbevacizumabforcystoidmacularedemainretinitispig-mentosa.ActaOphthalmolScand85:461-463,200711)Garcia-ArumiJ,MartinezV,SararolsLetal:Vitreoreti-nalsurgeryforcystoidmacularedemaassociatedwithretinitispigmentosa.Ophthalmology110:1164-1169,2003***