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眼鏡と眼の疲れ

2010年3月31日 水曜日

———————————————————————-Page10910-1810/10/\100/頁/JCOPY一様に進むため,遠視眼において最も早く,代償不全を生じて,近業時の視力障害や眼精疲労が発症する.正視眼であれば調節近点が30cm(図1,破線)を下回り,近見障害が発症するのは50歳前後と考えられる.これに対して,たとえば+3Dの遠視眼(図1,+3D)では,症状発症が約10歳早まり,40歳頃から近見障害が現れることになる.40歳を過ぎると調節近点は急速に遠方化するため,日常生活に及ぼす老視の問題は,遠視眼で最も深刻であると予想される.さらに50歳を超すと,調節近点は2mを超え,早晩,遠方も眼鏡なしにははっきり見えない状況になる.こうした代償不全症状は,瞳孔径が増大し,眼球の光学的な焦点深度(一度にはじめに眼鏡装用に関する眼精疲労の原因は多岐にわたる.しかしいずれの場合も,異なる因子の間で何らかの競合・衝突関係(コンフリクト)が発生した場合に,眼精疲労が発症するという点では変わりはない.これらのコンフリクトに対し中枢神経系は,感覚的順応力(sensoryadaptation)や,眼球運動系の適応能力(vergenceadaptation,ocularmotoradaptation)により眼位や眼球運動を調整することで,問題解決を図ろうとする.このため眼精疲労の多くは,眼鏡を続けて装用するうちに自然に消失する.「優れた眼鏡視力を獲得するためには,眼に眼鏡を合わせるだけでなく,眼鏡に眼を合わせる過程も必要である」といわれる所以である.しかし,一旦コンフリクトの程度が中枢神経系の適応力の限界を超えると,眼精疲労が持続し,日常生活の妨げとなる.本稿では,眼精疲労が起こるメカニズムと対処法について,眼鏡矯正における因子間のコンフリクトという観点から考察してみたい.I遠視眼にみられる眼精疲労遠視眼では,網膜の焦点ずれとこれを補正するための調節努力の間でコンフリクトが生じることによって,眼精疲労が発症する.軽度の遠視眼であれば,特に小児期においては豊富な調節力によって代償され,視力障害や眼精疲労を自覚することはない(潜伏遠視).しかし,加齢による調節力の低下は遠視,正視,近視眼を問わず(39)317aab眼7914251眼特集●眼の疲れあたらしい眼科27(3):317321,2010眼鏡と眼の疲れOcularFatigueAssociatedwithSpectacleCorrection長谷部聡*年齢調節近点+3D-3D正視眼図1年齢と裸眼での調節近点の関係(遠視,正視,近視眼の比較)遠視眼(+3D)では近見視力障害の発症が早く,しかも急激.破線は読書距離30cmを示す.近視眼(3D)では矯正眼鏡を外すと,近見は明視できる.———————————————————————-Page2318あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(40)このような調節誤差は通常,眼の焦点深度内に止まるため,像のボケを自覚することは少ない.しかし近視の過矯正眼鏡や遠視の低矯正眼鏡では,一定の視距離にある対象物を見る場合でも,正視眼に比べてより大きな調節を必要とする.このため近業での調節必要量が増大し,調節ラグが大きくなる傾向がある(図3-C)1,2).一旦,調節誤差が眼の焦点深度を超えると,調節努力と像のボケの間にコンフリクトが生じ,眼精疲労が発症する可能性がある.これらのコンフリクトを解決するためには,合理的なクリアな像が得られる距離範囲)が狭くなる夕方から夜間にかけて増悪するのが特徴である.成人に遠視眼鏡を処方するときには,眼鏡に対する心理的な抵抗感にも配慮すべきであろう.患者の多くは,小児期には裸眼視力が良好で,眼鏡装用の経験がない.自分の眼には自信をもつ者が多い.このため,せっかく矯正眼鏡を処方しても,それを使用せず,眼精疲労に対する点眼液を漫然と続ける患者は少なくない.このような,いわば心理的コンフリクトを解決するために,眼精疲労のしくみを説明するとともに,心理的な抵抗感を和らげるカウンセリングが必要かもしれない.II低矯正眼鏡や過矯正眼鏡にみられる眼精疲労近視の低矯正眼鏡や遠視の過矯正眼鏡では共通して,焦点が網膜前方へ偏位する.このため,遠見での視力障害が起こる.視覚の質における需要と供給の間にコンフリクトが生じる結果,眼精疲労が発症する.症状は,高い空間周波数を含む像や低いコントラストの像を詳しく見ようと努力するとき,つまり視覚の質に対する需要の増したときに増悪するのが特徴である.また,瞳孔径に応じて眼球の焦点深度が変動するため,眼鏡視力が変動しやすいという問題がみられる.たとえ昼間明所では不自由がなくても,夜間や雨天など暗所で瞳孔が広がると,眼鏡視力が低下し,眼精疲労を自覚する場合がある.逆に近視の過矯正眼鏡や遠視の低矯正眼鏡では,焦点は網膜後方へ偏位する.これに対しては調節反応が起こり,焦点ずれは補正される.このため調節力が豊富な小児期や青年期にあっては,遠見での眼鏡視力は良好に保たれることが多い.調節系を制御工学的な視点からみると,視距離(またはdioptricpower)の変動という外乱に対して,網膜像をクリアに保つためのフィードバック回路とみなせる(図2).しかし,これは生物学的なフィードバック回路であるため,健常者であっても調節反応には一定の誤差がみられることが知られている(図3-B).つまり視距離が短くなり,調節必要量が増大すると,調節反応が鈍り,焦点はわずかに網膜後方へ偏位することになる(調節ラグ:lagofaccommodation).663322131.53.04.56.0視距離(cm)レンズを含む総合的な調節量(D)0.0ABC図3眼鏡の低・過矯正に伴う調節誤差の概念図完全矯正または正視眼(B),近視低矯正または遠視過矯正(A),近視過矯正または遠視低矯正(C)の視距離と調節量の関係を示す.斜めの破線は100%反応直線.破線と曲線との垂直距離が調節誤差の大きさを示す.調節ラグは,近視の低矯正眼鏡または遠視の過矯正眼鏡では減少し,近視の過矯正眼鏡または遠視の低矯正眼鏡では逆に増大する.高速積分器調節運動輻湊運動調節制御ループ像のボケ視差ずれ輻湊制御ループ低速積分器低速積分器高速積分器++++++++++--CA/CAC/AD図2調節と輻湊のフィードバック制御系(CliftonSchor)3,4)フィードバック回路内では,低速神経積分器が調節または輻湊の順応を司っている.D:眼鏡レンズで矯正しきれない残余の屈折異常.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010319(41)査で得られた値をもとに完全矯正すべきある.つぎに問題となるのは,第2,第3眼位におけるプリズム効果である.眼鏡レンズの度数に左右差があると,水平方向の眼球運動に伴って水平方向の視差(binoculardisparity)が,上下方向の眼球運動に伴って垂直方向の視差が生ずる.水平方向では融像幅(fusionalrange)が広く,さらに輻湊制御系の輻湊順応(vergenceadapta-tion)の作用により,視差は短時間で代償されることが報告されている5).しかし,垂直方向では融像幅が狭く,特に順応力の低下した高齢者では,下方視で上下複視が自覚されることがある(図4).IV乱視矯正にみられる眼精疲労円柱レンズで乱視を矯正する場合には,乱視性の不等像視により,空間感覚の異常(distortionofspatiallocalization)が知覚されることがある6).両眼視に由来するこの異常感覚は,片眼性の奥行き情報(monoculardepthcue)─たとえば遠近法,テキスチャーの勾配,陰線効果から得られる空間感覚との間にコンフリクトをもたらすため,眼精疲労の原因となる.空間感覚の異常には,回転ドア感覚とスラント感覚の2種類があり(図5),前者は約1週間の眼鏡装用により感覚的順応が成立するのに対し,後者は成人では順応が期待しにくいと考えられている.従来この種の眼精疲労理由がない限り,屈折異常は完全矯正すべきであろう.III不同視矯正にみられる眼精疲労眼鏡レンズは角膜頂点から約12mm離れたところに置かれるため(頂間距離),レンズを通して見た像は,その度数に比例して(約1.25%/D)拡大(凸レンズ)または縮小(凹レンズ)される.もし左右に度数差がある眼(不同視)を完全矯正しようとすると,レンズを通して見た像の大きさは両眼間で異なるものになる(不等像視).一般に,45%を超える不等像視は,感覚的順応が及ばず,両眼単一視が妨げられる結果,眼精疲労の原因になる.レンズの度数差に換算すれば約3Dに相当する.したがって不同視に眼鏡矯正する場合には,レンズ度数差がこれを超えないように,度数調整が必要になる(モノビジョン眼鏡).ただし不等像の程度(%)は,必ずしもレンズの度数差のみに依存するわけではなく,不同視の原因が軸性であるか屈折性であるかによっても異なる(Knappの原理).粟屋のNewAnisekoniaTestなどを用いて,不等像視の程度を実際に測定することも参考になる.一方小児では,大きな不同視であっても,強力な感覚的順応力などにより,多くの場合完全矯正眼鏡を処方できる.特に不同視弱視の症例では,調節麻痺下の屈折検R)0DL)-3DL)-3DR)0D図4不同視矯正眼鏡による下方視での上下複視の例ント感覚qA左眼右眼左眼右眼BAABB回転ドア感覚fAB図5乱視矯正眼鏡にみられる2種類の空間感覚異常円柱レンズによる経線拡大・縮小効果により,点AやBに剪断性視差が生ずると(左),前額面に置かれた平面図形は奥行き方向に傾斜して見える(右).———————————————————————-Page4320あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(42)融像性開散運動によって両眼単一視を保とうとするが,その際,調節と輻湊系の間でコンフリクトが生じ,眼精疲労の原因となる.臨床的には,コンフリクトは調節ラグや固視ずれ(xationdisparity)の増加となって観察される.健常者では,神経的な順応機転(vergence&accom-modationadaptation)が作用して,このようなコンフリクトは時間とともに緩和される場合が多い.しかし残余の遠視が大きいと,代償不全を起こして,持続する眼精疲労の原因となりうる.一般に融像幅は,輻湊方向に広く,開散方向に狭い.近視の過矯正眼鏡が低矯正眼鏡に比べて,しばしば眼精疲労をひき起こす理由かもしれない.VI読書用眼鏡にみられる眼精疲労読書用眼鏡では,調節力の低下とともに加入(プラス)度数を増やす必要がある.また視距離が近い人ほど,必要となる加入度数は大きい.しかし加入度数を増やすへの対策として,円柱度数については低(控えめの)矯正にすることが推奨されてきた.しかし2種類の空間感覚異常に対する感覚的な順応力の違いを考慮すると,この方針が常に正しいとは言いきれない(詳しくは拙稿7)を参照のこと).〔ポイント〕球面,円柱レンズにかかわらず,眼鏡の不等像視による眼精疲労の鑑別法として,片眼遮閉があげられる.眼帯または遮閉シール(メンディングテープ,3M)で片眼を遮閉すると,不等像のコンフリクトが解消されるため,症状が消失する.V輻湊と調節運動の不均衡による眼精疲労先に(II)述べたように,近視の過矯正眼鏡や遠視の低矯正眼鏡では,一定の視距離に置かれた物体を明視するために必要な調節量は正視眼に比べて大きくなる.その結果,調節努力は調節・輻湊系の相互クロスリンク(図2)を介して,調節性輻湊をひき起こし,内斜位が発生する(図6a)4).この変化に対して輻湊の制御系は,1乱視性不等像視による異常空間感覚の臨床的特徴種類原因例感覚的順応*回転ドア感覚水平経線での不等像視R)1.00D(cyl3.00DAx180°L)3.00D(cyl1.00DAx180°約1週間スラント感覚交差する斜めの不等像視R)1.00D(cyl3.00DAx45°L)1.00D(cyl3.00DAx135°成立しにくい*成人の場合.OOLabOcLL図6眼鏡の矯正状況に依存する眼位Lは矯正レンズ,Oは遮閉を示す.a:近視の過矯正や遠視の低矯正では,対象を明視するためには過剰な調節反応が必要であるため,内斜位が生じる.b:完全矯正では偏位が生じない.c:近視の低矯正や遠視の過矯正では調節反応が少なくて済むため,外斜位が生ずる.輻湊制御系は融像性開散運動(a)または輻湊運動(b)により両眼単一視を保つ必要がある.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010321(43)疲労の原因となる因子間のコンフリクトの多くは,感覚的な順応力や,眼球運動系の適応力によって,時間とともに解消される.しかしコンフリクトの程度が適応能力の限界を超えると,眼精疲労が持続し,日常生活の妨げとなる.一般的に,屈折異常以外に眼疾患をもたない患者ではコンフリクトの程度は小さく,角膜疾患や眼科手術後の患者ではより大きなものになると予想される.眼鏡処方者は良好な眼鏡視力を提供すると同時に,眼精疲労の原因となるコンフリクトを発見し,その調整と解決に努める必要がある.文献1)NakatsukaC,HasebeS,NonakaF,OhtsukiH:Accommo-dativelagunderhabitualseeingconditions:comparisonbetweenadultmyopesandemmetropes.JpnJOphthalmol47:291-298,20032)NakatsukaC,HasebeS,NonakaFetal:Accommodativelagunderhabitualseeingconditions:comparisonbetweenmyopicandemmetropicchildren.JpnJOphthalmol49:189-194,20053)HasebeS,GrafEW,SchorCM:Fatiguereducestonicaccommodation.OphthalmicPhysiolOpt21:151-160,20014)HasebeS,NonakaF,OhtsukiH:Accuracyofaccommo-dationinheterophoricpatients:testinganinteractionmodelinalargeclinicalsample.OphthalmicPhysiolOpt25:582-591,20055)OohiraA,ZeeDS,GuytonDL:Disconjugateadaptationtolong-standing,large-amplitude,spectacle-correctedani-sometropia.InvestOphthalmolVisSci32:1693-1703,19916)GuytonDL:Prescribingcylinders:Theproblemofdis-tortion.SurvOphthalmol22:177-188,19777)長谷部聡:眼鏡レンズによる乱視矯正とスラント感─より優れた眼鏡視力を提供するために─.あたらしい眼科24:1145-1150,2007と,それに反比例して眼鏡装用下の明視域が狭くなるというコンフリクトに注意が必要である(図7).明視域が狭い(加入度数が大きい)眼鏡では,小さな視距離の変化であっても視力の変動を起こすため,眼精疲労の原因になる.近業時に視距離の変動がどの程度あるのか,加入度数を決めるうえで,年齢とともに考慮すべき点であろう.もし加入度数が大きい読書用眼鏡を処方する場合には,なるべく視距離を一定に保つような工夫(書見台の使用など)を患者にアドバイスすべきかもしれない.まとめ眼鏡装用に伴う眼精疲労の原因は多岐にわたる.眼精00.10.20.30.40.50.60.70.80.91012345600.10.20.30.40.50123456読書用眼鏡の加入度数(D)明視域(m)明視域の幅(m)図7調節力1Dの老視眼における明視域(遠,近点距離)と明視域の幅加入度数を増やすに従って,読書用眼鏡の明視域は狭くなる.明視域の幅は,加入度数+1Dで50cmであるが,+3Dで8cmになる.

老視と眼の疲れ

2010年3月31日 水曜日

———————————————————————-Page10910-1810/10/\100/頁/JCOPYとは“身体的あるいは精神的負荷を連続して与えられたときにみられる一時的な身体的および精神的パフォーマンスの質的あるいは量的な低下現象”と定義できる.一般的な物理的・肉体的な運動後の疲労では,生化学的には血液中に乳酸やピルビン酸などの物質が上昇することがよく知られている.しかし,日常生活のなかで感じている疲労感については客観的に評価する適切な方法はこれまで確立されていない.瞳孔反応,輻湊反応をアコモドメータやTri-IRIS,AA-1といった眼科機器で検査を実施することは可能で,これまでも多くの眼科的知見が得られている.ヒトは疲れてくると①刺激に対する反応が遅くなる,②思考力が低下して注意力が散漫になる,③動作が緩慢で行動量が低下するなどの変化がみられる.大阪大学医学部発のバイオベンチャーの梶本修身先生や疲労学会は疲労測定方法としてATMT(AdvancedTrailMakingTest)を開発して定量化を試みている.同検査にはいろいろな検査パターンがあるが,一例をあげて簡単に要約すると,コンピュータのスクリーン上に表示された25個の数字を1から順に番号を指で押す検査で,1を押すと1が消えて26が新たに出現.その際に,ほかのすべての番号の位置がランダムに変化するものがある(図1).この検査では,一つひとつの番号を押すまでの時間を計測して,脳の反応時間の変化で疲労を判定している.加えて,これは脳年齢測定つまり加齢性の変化もみている.単独の機械としては100万円近い価格のするI疲れについて前章の先生方による説明と重なる部分もあるが,「疲れ(疲労)」というのは非常に自覚的な所見であるので「同じ負担を加えても」疲れを非常に感じやすい人とそうでない人がいる.加えて,同一個人に同じ負荷を加えても疲れを感じやすい日とそうでない日がある.そもそも「疲れ(疲労)」というのは何なのだろうか?エネルギー切れの状態を指すのか?しかしそれだけなら食事をしっかり摂ることによって回復するはずだが,エネルギーをバランスよく摂取しても疲れが回復しないときもある.疲れというのはさまざまな負担がかかった結果だといってもよいであろう.「疲労感」というのは心地よい感覚ではないが,これがないと多分休むことなく働き続けて,過労死を迎えるような事態に陥ることになるであろう.一般に「疲労」と「疲労感」はほぼ同義に使われていることが多いが,実は“疲労”と“疲労感”とはまったく異なるものである.仕事上で同じ負荷の作業をしたときでも,やりがいを感じているときや楽しい作業では誰もが経験しているように総じて疲労感が少ない.このように“疲労感”は“意欲”や“達成感”にも大きく影響される.やりがいのある仕事は達成感を生むが,この達成感が疲労感をマスクしてしまい,その結果,“疲労感なき疲労”が蓄積し身体を壊すことになりかねない.では,疲労感とは異なる“疲労”とは何か.“疲労”(31)309TI17133114特集●眼の疲れあたらしい眼科27(3):309315,2010老視と眼の疲れPresbyopia-RelatedEyeFatigue井手武*———————————————————————-Page2310あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(32)III老視と眼の疲れについて今回は老視と眼の疲れという題目,2つともcut-o値がはっきりしない,つまり,連続的な変化をするものについての話であるので,すこしfocusの甘くなる話になることをご了承いただきたい.なぜ,最近になり老視や眼の疲れということが頻繁に議論されるようになったのだろうか.昔と異なり,最近は仕事のなかで端末作業をする時間が非常に増え,輝度,解像度コントラストの良い(良過ぎる)モニターの使用,そして何より超高齢化社会になり昔だと引退している年齢でも現役で仕事を続ける方が増えてきた.加えてwebアクセスが容易になったために一般の方の医療知識レベルの向上という要因もあり老視に関連した眼の訴えを聞く場面はさらに増えてきた.本稿では,老眼研究会で定義するところの老視(つまりは調節力の低下)に加えて,もう少し広義に加齢による眼の変化に伴う眼精疲労をメインに話を展開していくことにする.ものだが,コンピュータ用や任天堂DS用のソフトウェア(図2)は利用しやすい数千円で入手可能である1,2).II老眼について「老眼」というのはドライアイのような統一された定義や診断基準がこれまでなく,“共通言語”のないままに研究や診断が行われてきた.最近になってこれらの共通言語を策定して将来の臨床や研究を加速しようという機運が世界で高まってきたため,わが国でも老眼研究会(http://www.rougan.jp/)が設立され,まずは2009年度版の老視の定義が決定したという状況である(現在投稿中).その研究会のなかで老視を「加齢により調節力が減退した状態(Age-RelatedLossofAccommoda-tion)」と定義した.一般向けの定義としては,「見える範囲(明視域)が狭くなった状態」とした.この定義のポイントは静的な視力だけではなく,動的な視力が維持されていることが必要なことを明確にした点である.そして,介入が必要な状態であるので老視を疾患であると定義した.図1疲労測定法ATMT:脳年齢計ATMT(写真は株式会社エルクコーポレーションの御厚意による)図2疲労測定法ATMT:DS用ソフトアタマスキャン(写真は株式会社セガの御厚意による)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010311(33)ラに喩えることにより理解を得やすくしたいと思う.端的にいうとagingの進んだ眼というのは古いデジタルカメラに喩えることができるであろう.レンズであるがドライアイなどのocularsurfaceの異常がagingにより起こっており,これは古い世代の収差の大きい,コーティングのげたレンズに喩えることができるであろう.さらに白内障による水晶体の硬化・混濁や収差の増加や光学系の倒乱視化はレンズ性能が落ちていることに喩えることができるであろう.虹彩については,瞳孔運動の低下や反応時間の延長もあり,このせいでクリアに見えるのに時間がかかる.つまりカメラでいう絞り機能の低下に喩えられる.毛様体筋については,筋力が低下しており,これはピント調節のためのモーターの俊敏性やパワーが落ちていることになろうか.よく聞かれる眼精疲労の症状としては眼が熱くなる,複視,頭痛,調節力の低下,輻湊の低減,コントラスト変化や知覚対象物の動きに対して容易に視力低下を自覚するなどの代表的な症状があるが,これは個人によってバリエーションが異なるもであり,背後に基礎疾患が隠れていることもある.しかしそのような基礎疾患ベースの眼の疲れについては他書に譲ることとする.疲れということを眼科領域だけで語りつくすことは不可能であるので,今回は日常臨床で眼の疲れを訴える,特に基礎疾患などのない患者を眼の前にしたときにどのような説明や対応指示をすればいいのかというあくまで一つの指針を示すことにする.IV眼とデジタルカメラ(図4)今回の話を展開するにあたり,視覚系をデジタルカメ正常眼のFVABUT短縮型ドライアイ視標表示システム図3実用視力計(写真は海道美奈子先生の御厚意による)———————————————————————-Page4312あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(34)ラでは,テクニックを使うことなく簡単にきれいな画像を連続して撮影し続けることは困難であることは想像に難くない.つまり,老眼年齢の眼は加齢性の変化により長時間の視活動には耐えにくい眼になっている.Vピント調節機能と眼精疲労脳は絶えず送られてくる視覚情報を知覚しようと努力している.その情報が質の低い視覚情報の場合には運動器(眼)にfeedback信号を送り返して(つまり虹彩や毛様体や輻湊筋を動かして),網膜の明暗順応を通じて,もっと質の高い視覚情報を送るように努力せよと中枢から末梢に指令を出し続ける.つまり,視覚情報が悪いままだとfeedbackと眼の反応努力が絶えず行われるようになり中枢性にも末梢性にも疲労が蓄積する.そもそも,視対象というのは同じ位置,コントラスト,照度の条件下にあるわけではなく,絶えず微妙に変化している硝子体については飛蚊症の原因になる硝子体混濁が出てきているが,これはカメラのミラーやCCDに埃がたまっているのになぞらえられる.網膜については,加齢により網膜感度が低下しており,神経の数自体も減っており,暗・明順応に時間がかかるようになっている.これはデジタルカメラがCCD画素数が少なく,CCDの性能の低い〔S/N(signal/noise)比が低く画素数の少ないなど〕のと同じである.脳については,入力された情報を処理したりfeed-back信号を眼に返す機能が落ちており,これはデジタルカメラの心臓部であるイメージプロセシングのチップ(映像エンジン)の性能が低いことになぞらえられる.持続力については,加齢による眼のスタミナも低下しており,これはバッテリーの持ち時間が短くなっていることに喩えられる.このような各パーツの機能低下を有するデジタルカメ図4眼とデジタルカメラ視覚系はデジタルカメラに喩えることができる.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010313(35)ん,若年者のように何も工夫することなく楽に見えるというわけにはいかないが,それなりの工夫をすれば改善することは可能であろう.VI易疲労性が出現することへの対応策現在のデジタルカメラは顔認識などを含めて非常に多くのカンタン撮影機能が満載でほぼ希望通りの写真を撮影可能である.これは若者の健康な眼と同じで,どんな状況でも適切な矯正をしていれば遠くも近くも長時間仕事しても疲労感を感じることなく見ることができる(実際に疲労しているかどうかは前述のとおり不明).しかし,最新のデジタルカメラでもマクロ撮影(非常に近距離の撮影)や極端に明るい・暗い場面での撮影ではなかなかピントを合わせてきれいな写真を撮影できないことを体験済みだと思う.端的に言えば世代の古いデジタルカメラ(老眼年齢の眼)では同様のことが頻繁に起こっているのだ.つまり,まずデジタルカメラの性能が低いことは認めたうえで現実的な対応を練る必要がある.まず視対象を適切な状態に整える必要があるが,不適切な視対象とはどのようなものであろうか?①視対象が焦点や輻湊を適切に調整するには小さすぎたり,②視対象のコントラストが低すぎる,③視対象の表面が見にくい,④視対象が動く,⑤視対象のパターンが見にくい,⑥視対象の置き方が適切でない,などが考えられる.①に対しては,フォントを大きくしてピントが合いやすいようにする.②,③に対しては,発色のよい紙やモニターを用いる.④に対しては,動きを止めると仕事にならない方も大勢いるので性能の良い液晶モニターを用いること(このために,まだブラウン管モニターを好む人もいる).⑤に対しては一例として,紙と画面を交互に見る場合は,用紙上とモニター上のパターンを同じにするためにモニターの表示形式を「白地に黒」という配置にしたほうが良い.モニター画面を見続けるようなときには白地だと明るく眼の疲れを訴える人も多いので,黒地に白が良いとも言われている.⑥に対しては,液晶モニターなどは垂直近くに立ってので中枢と出力系で絶えず情報のやり取りをしなくてはならないので,眼や脳は静的な状態に落ち着く暇はない.上記で眼をデジタルカメラに喩えたが,静的でない,つまり動的である眼や脳でも無駄な動きをできるだけ少なくすれば,デジタルカメラで撮影対象に素早くピントを合わせればバッテリー消費も少なくなるように,眼精疲労は少なくなるであろうことは容易に想像できる.たとえば一輪車に乗るとする.これは身体のバランスの状況を絶えず脳に伝えてその結果を身体の筋肉にfeedbackするという情報のやり取りをくり返し行わないと上手く一輪車を乗りこなすことはできない.素面(しらふ)の状況とアルコールで酔った状況を考えてもらえば,明らかに後者のほうが情報のinputとoutputの連携スピードが遅くなり無駄に大きな動きが大きくなることが容易に想像できるであろう.眼に関しても同様で情報の入力が正確で脳(ここでは脳を広義の意味で使用)での情報処理が速いほど無駄な筋肉や脳の「動き」を少なくできるので良いと思われる.つまり脳に正確で素早く情報がinputされoutputされればされるほど眼精疲労は少なくなるといえるであろう.ではなぜ加齢とともに眼精疲労が出やすいのあろうか?先ほどのデジタルカメラの例を使って説明すると「動き」「素早さ」という面であるが,カメラのモーターのパワーと俊敏性が悪くなっておりかつバッテリーのスタミナが落ちており,モーター以外にも絞りやCCDの機能も落ちておりピントをすぐに合わせることができない状況になっている.当然outputに対する反応が遅いのと同時にinputする情報の精度が落ちている.加えてこの情報の精度が落ちているとそれに対して中枢にも迷いが生じ,ただでさえ加齢のせいで性能の落ちて遅いイメージプロセシングのチップが迷うことにより,時間もかかり不正確な情報を眼に伝えるという悪循環で,易疲労性が出るという考えももっともであろう.加えて加齢とは関係なく疲労によって調節時に瞳孔反応も遅くなり潜時も長くなるので,疲れれば疲れるほどさらに素早さが落ちるという悪循環に陥る3).このように,若年者よりも眼精疲労が出やすい状況にあるが,患者に前向きに対応させることもわれわれの仕事の一つである.もちろ———————————————————————-Page6314あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(36)どの進行に伴う度数変化,レンズコーティングの離などで低qualityの眼鏡になっている可能性もあるので,定期的にレンズチェックを行う必要がある.④に関しては眼科というよりも患者自身のセルフコントロールが必要になるので他書に譲る.⑤に関しては①でも述べたが,モニターを上方に置けば置くほど眼球の露出面積が大きくなりドライアイ傾向が加速される.モニターの性能については電器店に行っても同じサイズの液晶モニターでもかなり値段が異なる.“性能が良い”といわれるモニターは何がよいのであろうか?詳細は割愛するが,現在多用されている液晶モニターの性能をみるパラメータとしては視野角の広さ,画素数・解像度,応答速度,輝度,コントラスト比などの代表的なファクターがある.液晶の方式はTN(TwistedNematic),VA(VerticalAlignment),IPS(In-Place-Switching)方式が主流となっており.大まかな性質として,TN方式は応答速度がある程度速く,値段も安いが視野角が狭く,同じ方式内でも機種間の性能差が大きい.VA方式はコストは中間で,反応速度も遅いが画質も悪くなくオーバードライブ搭載しているものでは応答速度も速く動画も十分楽しめる.IPS方式は値段は高いが画質もよく何でもそつなくこなす.それぞれ技術的な限界が存在するが,仕事の内容に応じたモニターを選ぶ必要があると思われる.画素数・解像度:液晶モニターはフルスクリーン表示や拡大表示などで推奨解像度以外の解像度を表示させると,たとえば1つのドットで表示すべき情報を2つの画素で表示する部分も必要になるため,当然のことながら,シャープさは失われ,画質の劣化は否めないので,やはり液晶モニターにおいては「推奨解像度」どおりの解像度で表示するのが推奨される4).応答速度:液晶の弱点でもある,スピードあふれる場面をいかに再現できるかといった性能を表している数値で,動画を楽しむためにはできるだけ小さい応答速度のものが望ましい.輝度・コントラスト:液晶モニターのコントラストや輝度は,現在では実用的にはまったく問題ないレベルを実現されているので,輝度やコントラストが低すぎることによる見にくさというのは,今ではほとんどないと考えて差し支えない.最後に,ブラウン管モニターの使用時には焼けつき防止のたいるので眼からの距離はある程度一定に保たれているが,本や書類などは机の上において読むことが多く,これではページの上とページの下では眼からの距離が異なり,絶えずピントを合わせ続ける必要があるため疲労の原因になりかねない.書見台を用いて視距離を一定に保つのも解決策の一つであろう.つぎに視対象そのものでなくて視環境に関わることであるが,①瞬目不全によるドライアイ,②長時間の近見作業による調節や輻湊維持努力,③合っていない眼鏡,④年齢に応じた社会的責任からのストレスや睡眠不足,⑤モニター位置やモニター性能が良くない,⑥照明条件が不適切,蛍光灯のフリッカーなどが考えられる.①に関してはこれまで言われているように点眼,加湿器,そしてモニター位置を少し低い位置にして開瞼面積を小さくする,そして深い瞬きの回数を増やすなどの基本的な対策が考えられる.②に対しては,就業中に長時間休憩するというのは現実的ではないので,書類のページをめくったりパソコン作業でファイルの保存作業などの際に,数秒だけでも視線を遠くに向けたり,睡眠時に調節麻痺剤を使用して毛様体を弛緩させて過緊張状態を改善するようにする.その他,積極的に毛様体筋に働きかけるWOC(ワック),通電治療(図5),新しい3Dヘッドマウントモニターを用いたトレーニングなどが考案されている.③では年齢に応じた加入度数が必要であり,白内障な図5通電治療本治療は薬事未承認であり,眼科専門医のみの会員制による治療プログラムである.———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010315めに電源をこまめに切ったり,スクリーンセーバーを機能させる必要があったが,液晶モニターにも長時間同じ画面を表示すると,その画面が残像となる特性がある.これは焼けつきではなく液晶内部のイオン性不純物が堆積しているだけなので,電圧の掛け方を変える,つまりは表示する画面を別の画面にしたり,電源を切ったりすることで,この不純物が液晶層内に拡散され,残像がなくなっていく5,6).⑥蛍光灯は,ちかちかとちらつくフリッカー現象を起こす.通常,蛍光灯は電源の2倍,すなわち50Hzの電源地域ならば100Hz,60Hzの電源地域ならば120Hzで点滅をくり返している.この頻度は,人間の眼で感知できないほど大きなものだが,蛍光灯の寿命が近づき,一度の点滅の残光時間が短くなると,点滅の間隔が目立つようになってフリッカーとして認識されるようになるため適切な間隔で蛍光灯を変える必要がある.照明条件であるが,パソコン作業では眼の疲れ方が通常の読み書きと違うこともあり,特にVDT作業する際の注意点を以下に記す.全体照明としては天井からの照明で明るさを確保するが,その際,拡散・プリズムパネルやルーパーなどで反射を抑えたものが望ましく,部屋中の照度は,ディスプレイ,机上,周囲とできるだけ均一にするように努める.ディスプレイは,ディスプレイに光が映りこむと,反射で眼が疲れるので作業者の眼に照明や窓の直射光が入らず,かつ,作業者の背後からも光が反射しない位置に置く.光沢液晶は美しく見えるが長時間作業には向かないので非光沢液晶ディスプレイで,輝度・コントラストを控えめに設定するべきである.眼は明るいところを見るときには毛様体筋を緊張させてピント合わせを行う.明るいところでは瞳が小さいのでピンホール効果が手伝って調節ラグが大きくなっているが,暗いところでは瞳が大きくなっているためピンホール効果が得にくく,しっかりとピント合わせをしなくてはならず,調節を維持するための毛様体筋により大きく負担がかかる.そのため明るいところで見るよりも調節疲労が起こりやすい.しかし明るければ明るいほど良いかというとそうではない.明るいところでは瞳が小さくなり,ピンホール効果が得られるのだが,明るすぎるところではさらに瞳が小さくなり,光の回折という現象が起こり,にじんで見えるようになる.そのにじみを消そうとさらに調節が誘発されてやはり毛様体筋に過剰な緊張を強いることになる.まとめ以上,老眼研究会の定義した老視「加齢により調節力が減退した状態(Age-RelatedLossofAccommoda-tion)」を有する眼だけでなく,老眼年齢に達した一般の眼という広義の老視ということでデジタルカメラになぞらえて話を展開してきた.もちろん,これだけで説明できるわけではなく,もっと深いメカニズムが働いているが,あくまで臨床で患者に伝える対応策の一つを例示しただけにすぎないということに留意していただきたい.ここで述べたことは決して老眼年齢人口のみに当てはまるわけでなく,若年者にも,疲労感という自覚症状は出てきていないが,若さを過信して無理をすると眼精疲労は確実にたまり眼症状以外の全身症状などで症状発現してくることもあるので,若くても仕事の負担の程度によっては老眼鏡の装用や度数を落とした仕事用のコンタクトレンズなどの装用も望ましいと考える.文献1)http://www.hirou.jp/P04/01-1.html2)http://www.soiken.com/3)松井利一:眼の画像観測機構の応答特性を利用した視覚疲労の評価.ヒューマン情報処理研究会2002/7/194)http://www.eizo.co.jp/products/eizolibrary/resolution/index.html5)http://www.eizo.co.jp/products/eizolibrary/contrast/index.html6)http://www.xn--ddk0a0ew45ynvf21c772g.com/02.html>(37)

身体と眼の疲れ

2010年3月31日 水曜日

———————————————————————-Page10910-1810/10/\100/頁/JCOPY「負の調節」とよばれ,交感神経が担当し,調節安静位よりも近方への調節は「正の調節(単に調節)」とよばれ,副交感神経が担当する.通常は交感神経と副交感神経はホメオスタシスにあり,健全な調節機能が営まれる(図1).II交感神経と副交感神経通常の生活では,身体を活発に動かすときには遠方を見ることが多く,心身は交感神経が優位にある.調節機能は遠方視のために負の調節を働かせる必要があり,眼も交感神経が優位にある.食事を摂り,身体を休めるときには,内臓は消化活動を行い,身体をリラックスさせるために心身は副交感神経が優位になる.家族との団らんなどを円滑に行うために,調節機能は近方視のために「正の調節」を働かせる必要があり,眼も副交感神経がはじめに眼の調節は自律神経に支配されているため,自律神経系の異常は眼の疲労を伴いやすい.交通事故後の頸部交感神経損傷後には眼の疲労を発症することがあり,IT眼症(テクノストレス眼症)も自律神経失調状態を伴い,軽症うつ病や自律神経失調症も眼精疲労を発症することが多い.調節と自律神経の関係を理解していることは眼精疲労の診療には不可欠である.I調節の神経支配どこを見るともなくボーッと見ているときの屈折状態は毛様体筋が完全に弛緩した状態ではなく,ある程度緊張した状態にある.この状態は生理的な調節緊張状態であり,このときの屈折は調節安静位とよばれている.自律神経との関わりは,調節安静位よりも遠方への調節は(25)303aaoiKaia眼1823363眼特集●眼の疲れあたらしい眼科27(3):303308,2010身体と眼の疲れEyeFatigueandPhysicalAbnormality梶田雅義*遠点他覚遠点調節安静位他覚近点調節リード調節ラグ負の調節正の調節明視できる範囲(自覚調節域)自覚近点自覚遠点(他覚調節域)図1屈折と調節の名称遠点:調節麻痺薬を使用したときの屈折値.自覚遠点:自覚的に最も遠くが見える屈折値.他覚遠点:他覚屈折検査で最も遠視側に測定できる屈折値.調節安静位:どこを見るともなくボーッと見ているときの屈折状態.他覚近点:最大限に調節力を発揮したときに検出できる他覚屈折値.自覚近点:自覚的に明瞭に見える最も近い距離から換算する屈折値.調節リード:他覚屈折値に対する自覚屈折値の遠方へのずれ.調節ラグ:他覚屈折値に対する自覚屈折値の近方へのずれ.負の調節,正の調節は本文参照.他覚調節域(他覚調節力,あるいは最大調節反応量):最大他覚屈折値と最小他覚屈折値の範囲.自覚調節域(自覚調節力,あるいは単に調節力):自覚的に明視できる範囲(距離を屈折力に変換した値).———————————————————————-Page2304あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(26)なる.いずれにしても,現代社会は自律神経のバランスを崩しやすい環境にある.III調節微動と自律神経の関わり他覚屈折値を経時的に記録すると,屈折値は絶えず変動していることがわかる.この屈折値の揺らぎは調節微動とよばれる.調節微動の周波数分析を行うと,0.6Hz以下の緩やかな揺らぎと,1.02.4Hzの比較的速い揺れが観察される.前者は低周波成分,後者は高周波成分とよばれる1).前者は調節そのものの揺らぎであり,後者は毛様体筋の震えと考えられている.この高周波成分の出現頻度を分析してみると,毛様体筋の機能状態が推測できる2).これを可能にしたのが調節機能解析装置である.現在ではSpeedy-Kver.MF-1(ライト製作所社製),AA-2(ニデック社製)が提供されている(図2).この装置の表示図形はFk-map(図3)とよび,横軸に視標位置を,縦軸には屈折値を示し,カラーバーの上縁は被検者が呈示視標を注視しているときの屈折値を示し,カラーバーの色は調節微動高周波成分出現頻度(HFC)を示す.毛様体筋の震えが少ないときには緑色で,震えが大きいときには赤色で表示し,その間をグラデーションで示している.毛様体筋の負担が軽ければ緑色で,重ければ赤色で示されることになる.横軸の視標優位の状態にある.すなわち,心身と調節に必要な眼の自律神経は一致しており,調和が取れている.しかし,現代社会のオフィスワークでは,活発に作業を行うためにはパソコン画面などの近方を見ることが多く,アクティブに仕事を遂行するために,心身は交感神経を優位に維持しなければならないが,調節機能はディスプレイ画面上を見るために正の調節を発揮する必要があり,眼は副交感神経を優位に維持しなければならない.食事を摂り休養を取ろうとするときには,大型化したテレビ画面を離れた距離で見るなど,調節安静位よりも遠方を見る機会が多くなる.消化と身体をリラックスさせるためには,心身は副交感神経を優位に維持する必要があるが,調節機能は遠方視のために負の調節を発揮しなければならず,眼は交感神経を優位の状態に維持しなければならない.勤務中に交感神経が優位になれば,近くにピントを維持するのが困難になり,副交感神経が優位になれば,近くは見えても,作業を続ける気力は薄れる.休息中に調節安静位よりも遠方を注視し,負の調節を維持することは,交感神経を優位に保ち,食物の消化を遅らせ,体調不良を招く.休息中に副交感神経が優位になれば,遠方にはピントが合わず,眠くなり,楽しみのビデオ鑑賞ができないことがストレスを増し,体調不良を招くことに図2調節機能解析装置左:ライト製作所社製Speedy-Kver.MF1,右:ニデック社製AA-2(乱視眼でも固視標が明瞭に見えるようにAA-1から改良された).———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010305(27)頭痛(後頭部に最も強い),めまい(患者が頭を回転した瞬間に突然生じるもので,前庭器官の障害による症状を伴わない),耳鳴り,視障害などがある.頸部症状(局所症状)としては,短時間に出没する声のかすれ,無声,位置は,被検眼の最初のオートレフ値を基準にして,縦軸の左は+0.50D雲霧状態で,縦軸のすぐ右は無限遠である.その右はそれぞれ0.50Dステップで近接する.調節安静位はおよそ1.00Dであるので,1.00Dよりも遠方に呈示した視標に対する反応は交感神経に依存し,それよりも近方に呈示した視標に対する反応は副交感神経に支配されていると読み取ることができる(図4).もちろん,調節緊張が高じており,最初のオートレフ値が強く近視側にシフトして記録されている症例では,すべての視標に対する反応が,副交感神経に支配されている.Fk-mapを活用することによって,被検者が呈している自律神経系のバランス状態を推測することができる(図5).IV外傷性頭頸部症候群自動車の追突事故に代表される頸部の急激な過伸展によって起こるむち打ち症では,調節異常を生じ,眼精疲労の原因になることがある.むち打ち症に伴う愁訴は,1925年にフランスの神経学者J.A.Barreが後部頸交感神経症候群として発表した3).後部頸交感神経症候群の真の責任部位は椎骨神経であり,自覚的な症状がほとんどを占める.頭部症状と頸部症状に分けて報告されており,頭部症状としては,Refraction無限遠視標↓1m視標↓50cm視標↓33cm視標↓<<FarNear>>Distanceoftargets図3FKmap(調節微動の高周波成分出現頻度)横軸は視標位置,縦軸は屈折値,縦棒の高さは被検眼の示す屈折値,縦棒の色は高周波成分出現頻度(HFC)値を示す.AccommodationDistanceoftargets交感神経副交感神経図4正常者のFkmap正常者では調節安静位は1D付近にある.これよりも遠方の視標に対する応答は交感神経に依存し,これよりも近方の視標に対する応答は副交感神経に依存する.AccommodationDistanceoftargets副交感神経図5調節緊張症のFkmap調節緊張症を呈する場合には,初期のオートレフ値に強い調節が介入しており,交感神経に依存する応答は記録されない.———————————————————————-Page4306あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(28)異常が検出されないため,精神疾患として加療されることも多い.Fk-mapで調節機能を観察すると,特徴的な所見が検出される.〔症例2〕28歳の男性.現病歴:1年8カ月前から,パソコン画面を見るのが辛くなり,仕事ができなくなった.現症:視力右眼=0.08(1.5×5.00D),左眼=0.08(1.5×5.00D).所持眼鏡右眼5.00D,左眼5.00D.通常の眼科学的検査には異常なし.Fk-map所見(図7):調節負荷1.00Dよりも遠方の視標に対してはHFCが低い値を取り,調節負荷が1.00D以上になると,急にHFCが高い値を呈している.パソコン画面を見ると頭痛や眼の奥の痛みを呈する原因が明らかである.治療:0.05%シクロペントラート点眼液を1日1回両眼に点眼した.同時に,累進屈折力レンズ(右眼4.00Dadd+1.00D,左眼4.00Dadd+1.00D)を処方した.首の深部に感じる特殊な感覚(捻髪音や関節のきしみ音を伴う)などがある.その後,1928年にBarreの門下生Lieouがさらに症例を集めて報告し,Barre-Lieou症候群とよばれている4).この症候群は受傷後すぐには現れず,一定期間後に起こる.椎骨神経(後部交感神経)の刺激で起こり,症状は,頭痛(後頭部痛),めまい(特に首の回転に伴う突発性のもの),耳鳴り,視障害,嗄声,首の深部の違和感,摩擦音,易疲労性,血圧低下など,自覚症状を主体とする.最近では低髄液圧が関与しているという報告もある.VBarreLieou症候群の眼症状近方視障害が多く,近くがちらついて読書ができない.近方視をしようとすると頭痛が生じ,近方視を持続できないなどの訴えが多い.Fk-mapで調節機能を観察すると,正常者とは異なる反応を示していることが多い.〔症例1〕25歳の女性.現病歴:1年2カ月前に交通事故にあって以来,両眼のちらつき感と頭痛がひどく,整形外科に入院し,頸椎牽引療法を続けていた.担当の整形外科医の勧めで来院した.現症:視力右眼=1.5(1.5),左眼=1.5(1.5).近方視力右眼=1.2,左眼=1.2.通常の眼科学的検査には異常なし.Fk-map所見(図6):どの視標に対しても比較的高HFC値を呈しており,調節が正しく行われていない.視標が近づくと,調節はかえって遠方にシフトする方向に作動する.治療:0.05%シクロペントラート点眼液を1日1回両眼に点眼した.同時に,調節負荷を減じるための累進屈折力レンズを処方した.VIテクノストレス眼症日常生活では何ら異常を感じないが,パソコン画面に向かって仕事をしようとすると,眼の奥の痛みや,後頸部痛や頭痛が襲ってきて,作業ができないと訴えることが多い.全身的な検査や頭頸部の精密検査を受けても,Refraction<<FarNear>>Distanceoftargets図6BarreLieou症候群(症例1の初診時)のFkmap無限遠の視標に対しても,少し高いHFC値を示している.近接視標に対して,ピント位置はかえって遠方にシフトしている.もし,近方視が辛くて調節することを諦めたとすれば,そのときのHFC値は低く「緑色」になる.ところが,HFC値はかえって高く「赤色」になっており,副交感神経の興奮は強まっているが,ピント位置は遠方に移動するという通常とは逆の動きが起こっている.調節パニック状態である.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010307(29)する.症例1の経過:1カ月後には,整形外科を退院した.3カ月後には再就職し,勤務できるようになった.6カ月を経過しても症状の再発はなく(図8),診療を終了した.症例2の経過:2週後には,眼鏡の装用にもなれて,近方視をしても辛くなくなった.1カ月後には残業もでVII対処法調節機能から自律神経系の異常が推測される場合には,日常生活で調節機能が健全な自律神経に支配されるような治療と屈折矯正を行う.1.調節緊張の解除調節緊張状態が観察される場合には,これを解除することである.これには低濃度の調節麻痺薬を用いる.高濃度では散瞳による羞明などの訴えが多くなるので,0.0250.05%程度のシクロペントラートを用いるとよい.Fk-mapで観察しながら,調節反応量にはあまり影響がなく,HFCが低下する濃度を症例ごとに決めるのが望ましい.2.調節負荷を減じるための屈折矯正と調節補助低濃度調節麻痺薬の使用により,調節力はわずかに低下するため,矯正には単焦点レンズではなく,累進屈折力レンズを用いるのが望ましい.累進屈折力レンズが違和感なく装用できるようになり,眼の奥の痛みなどの自覚症状が消退すれば,調節麻痺薬の点眼を徐々に中止AccommodationDistanceoftargets図7テクノストレス眼症(症例2の初診時)のFkmap0.50Dの視標に対してまでは正常者と同じ程度のHFC値であるが,1.00Dよりも近接視標に対しては調節緊張症の反応を示す.日常生活では異常を生じないが,近見作業時に症状が出現する訴えに一致する.近方視時に副交感神経の異常興奮が推測される.RefractionDistanceoftargets図8症例1の快復後のFkmap正常者に近い調節応答を示しており,自覚症状の再発は認めなかった.AccommodationDistanceoftargets図9症例2の快復後のFkmap正常者とほぼ同等の調節応答を示しており,自覚症状は消退していた.———————————————————————-Page6308あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(30)ば,誤った矯正用具の使用は,容易に自律神経系のアンバランスをひき起こし,眼精疲労を発症させてしまう危険性を孕んでいる.文献1)CampbellFW,RebsorJG,WestheiroeyG:Fluctuationsofaccommodationundersteadyviewingconditions.JPhysiol145:579-585,19592)梶田雅義,伊藤由美子,山田文子ほか:調節疲労と調節微動.視覚の科学17:66-71,19963)BarreJA:Surunsyndromesympathiquecervicalpos-terieuretsacausefrequente:I’arthritecervical.RevueNeurologique33:1246-1248,19264)LieouYC:Syndromesympathiquecervicalposterieuretarthritecervicalchrnique,Etudecliniqueetradiologique(Thesis),Strasburg,19285)梶田雅義:詐病と心因性視覚障害.神経眼科21:405-411,2004きるようになった(図9).VIII精神疾患に伴う眼精疲労調節機能で衰弱傾向を認め,他に眼精疲労をもたらす眼科的な異常を認めなければ,精神科医と連携して治療に当たるのが望ましい5).この場合にも,調節に負担を与えずに生活に必要な屈折矯正度数を提供できるように,累進屈折力レンズ眼鏡の処方が必須である.累進屈折力レンズ眼鏡が常用できるようになるにつれて,精神科的にも安定したコントロールが可能になる症例も少なくない.おわりに調節は自律神経状態を観察するのには最適な機能である.そして,矯正用具は自律神経のバランス位置をコントロールできる唯一の道具であると考える.裏を返せ

眼精疲労と間欠性外斜視

2010年3月31日 水曜日

———————————————————————-Page10910-1810/10/\100/頁/JCOPY調節力が良好な小児期には,間欠性外斜視が原因で眼精疲労を訴えることはほとんどないが,中学生以上になると眼精疲労の訴えが聞かれるようになる.治療には,原因を取り除くこと,適切な屈折矯正をすること,プリズム眼鏡,手術などがある.II輻湊不全型外斜視近見時には,輻湊・調節・縮瞳の三者が互いに関連して作用するが,これを近見三徴候という1).輻湊とは,目標物を見る際に両眼の視線を目標物に合わせるために,内側に寄せることであり,近くのものを見るときにはより多くの輻湊が必要となる.輻湊には,融像性輻湊,緊張性輻湊,調節性輻湊,近接性輻湊がある.融像性輻湊は,両眼で見た際の左右眼の目標物の像のずれ(視差)を認識することでひき起こされ,両眼で見ていることが必要である.解剖学的な眼球の安静位置は,やや外側を向いているため,意識のある状態ではわずかな輻湊が起きる.これを緊張性輻湊といい,筋のトーヌスが関連している.調節性輻湊は,近くのものを見るために働く調節に付随してひき起こされる輻湊である.したがって,斜視や視力低下のために十分な融像性輻湊がひき起こされない場合や,加齢により筋のトーヌスが低下して緊張性輻湊が低下したり,調節力が低下して調節性輻湊が低下すると,輻湊不全となりやすくなる.そして,過剰な調節負荷や,外眼筋に過剰な緊張をかけて輻湊を起こそうとすることで眼精疲労となるが,逆にはじめに眼精疲労とは,眼を使う作業をしたために感じる全身の疲れである.ぼやけて見にくい,ピントが合わない,眼が重い,眼をあけていることがつらいといった眼症状から,肩が重い,頭が痛いといった全身症状まである.「疲れ目」は,休息をとることによって症状が消失する眼の疲れだが,休息をとっても残るような頑固な全身症状がある場合を眼精疲労とよぶ.眼精疲労の原因は,長時間の読書やコンピュータ作業など作業自体の負荷が高い場合,薄暗い部屋での作業など作業環境に問題がある場合,作業に対する精神的ストレス,眼鏡,コンタクトレンズや眼に問題がある場合がある.眼や眼鏡の原因としては,不適切な眼鏡装用,斜視,ドライアイなどがあげられるが,本稿では特に間欠性外斜視と眼精疲労について述べる.I間欠性外斜視の分類間欠性外斜視とは,外斜視と斜位の両方が存在する状態である.遠見と近見での眼位の差から基礎型(遠見=近見),開散過多型(遠見>近見),輻湊不全型(遠見<近見)に分類される.このうち,特に強い眼精疲労を訴えやすいのは,近見時の眼位ずれが大きい輻湊不全型外斜視である.また,過剰に調節することで斜位にもち込む際に近視化することによって視力低下を起こすことがある.この状態を斜位近視といい,眼精疲労の原因となる.(21)299眼43131921201眼特集●眼の疲れあたらしい眼科27(3):299302,2010眼精疲労と間欠性外斜視EyeFatigueandIntermittentExotropia土屋陽子*佐藤美保*———————————————————————-Page2300あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(22)近見で文字の書かれたカードなどを見せ,ベースアウトプリズムを装用していき,複視を自覚するプリズム度数を記録する.眼精疲労を他覚的に評価することは困難であるが,瞳孔反応を用いて推測する試みがなされている.トライイリスは固視目標を動かしながら瞳孔反応を記録する装置である.斜視手術の前後で記録することにより,瞳孔径の変化を測定することができる.瞳孔径の変化から調節の状態を知ることができる4).V治療1.原因除去輻湊不全型外斜視に伴う眼精疲労の場合,作業環境や作業時間を改善させたり,睡眠を十分にとるだけで改善することがある.抗コリン薬を内服している場合には,処方している医師と相談のうえ,内服量の調整を行うことで症状の改善をみることがある.2.屈折矯正眼精疲労治療の基本である.眼精疲労は成人に多いため,近視の過矯正眼鏡を装用していないか,近見用の適切な度数が加入されているかについてチェックする.小児期には調節性内斜視であったものが,徐々に外斜視化してきている場合,適切な屈折矯正が行われていないこともあるので注意が必要である.また,レンズのプリズム効果を目指す場合には,近視であればレンズ中心間距離を広めにとることで外斜視に対応することができる.3.プリズム眼鏡4プリズム以内であればレンズに組み込むことが可能である.軽度の間欠性外斜視や輻湊不全型外斜視で有効である.処方に際しては,トライアルレンズを装用して症状の改善を確認する.それ以上の度数が必要な場合には膜プリズムを使用することになるが,外見上の問題や視力の低下をきたすために推奨しない.4.視能訓練指を使ったプッシュアップや,3点カードなどを利用した輻湊訓練を行う.過剰な訓練は逆に眼精疲労を増す十分な輻湊が起きないと複視を自覚して,やはり眼精疲労の原因となる.III斜位近視斜位近視とは比較的大きな角度の間欠性外斜視があり,眼位を斜位に保つ際に近視が発現,もしくは増強することである.間欠性外斜視患者だからといって,すべてに斜位近視が起こるわけではない.過去の報告では,斜位近視での受診年齢は1639歳であり,小児期に受診することはないと言われている2).藤木らは,9歳以下,10代,20代,30代の4群間での近視化度数と縮瞳率についての検討を行っており,30代ではほとんどの症例で近視化を認めており,優位に縮瞳がみられたと報告している3).間欠性外斜視では融像性輻湊を用いて正位を保つが,その際に輻湊性調節が惹起されることにより近視化が起こると考えられている.加齢により輻湊力が低下すると,正位を保つためにはよりいっそうの輻湊努力が必要となり,過分な輻湊性調節が働くために,より強く近視化すると考えられている.そのため,片眼での視力検査では矯正視力は良好だが,両眼開放状態での視力は近視化のために低下するという症状が出現する.治療は間欠性外斜視に対しての手術が基本となる.IV診断外斜視が眼精疲労の原因であるかどうかを確認する.そのためには,眼精疲労が起こる作業の内容,作業時間,精神状態,睡眠状態,常用薬などについても十分な問診をとる.特に抗コリン薬(抗不安薬や睡眠薬,Par-kinson病治療薬など)の内服は調節力を低下させ,ひいては調節性輻湊も低下し,近見障害の原因となるので問診で確認しておく.小児期に遠視であったり斜視手術を受けていることもあるため,既往歴も確認する.一般的な眼科検査に加えて,屈折検査,眼位検査,調節検査を行う.眼位検査は遠見眼位と近見眼位を測定するが,近見眼位の測定には,調節視表(ペンライトでなく小さな絵や文字などの書かれたもの)を用いる.さらに,9方向眼位検査,輻湊近点測定,融像域測定,調節近点測定を行う.輻湊近点測定は,視表を近づけ,複視を自覚するまでの距離を測定する.融像域測定は,———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010301(23)近見視力:VD=0.5(1.0×+2.0D(cyl3.0DAx5°),VS=0.5(1.0×+2.0D).交代遮閉試験:遠見25ΔXP,近見45ΔXP¢.チトマス(Titmus)立体視検査:Fly(+),Animal(3/3),Circle(6/9).右眼外直筋5mm後転+内直筋5.5mm短縮術を施行.術後視力:VD=0.9(1.2×+0.5D(cyl1.5DAx5°),VS=1.5(矯正不能).術後交代遮閉試験:遠見6ΔXP,近見18ΔXP¢.チトマス立体視検査:Fly(+),Animal(3/3),Circle(7/9).術後は自覚的な右眼視力の改善と,眼精疲労の軽快が得られた(図2).<症例2:斜位近視>(図3)37歳,男性.主訴は両眼で見ると物がぼやけて見え,眼精疲労がある.初診時の視力:VD=0.06(1.5×7.5D(cyl0.75DAx10°),VS=0.07(1.5×7.0D(cyl1.0DAx160°).斜位での両眼開放視力:BVA=(0.4×上記レンズ).交代遮閉試験:遠見45+20ΔXP,近見40+20ΔXP¢.ことになるので注意する.5.斜視手術斜視角が20プリズム以上の間欠性外斜視は手術のよい対象である.小児では術後過矯正を目標とすることが多いが,成人では術後複視は日常生活への不都合が多いため,過矯正にならないように行う.外直筋の後転および内直筋の短縮術,あるいは両外直筋の後転術を行う.開散過多型斜視では両眼外直筋後転術が,輻湊不全型外斜視では前後転術がよい.術後複視を予防するために,術前にプリズムでシミュレーションを行うとよい.手術前の説明では術後の合併症について説明を行い,特に車のバックのときに複視の可能性があること,視野が狭くなることがあることなどを具体的に説明する.VI症例呈示<症例1:輻湊不全型外斜視>(図1)59歳,男性.主訴は眼精疲労.初診時視力:VD=0.5(0.9×cyl3.0DAx5°),VS=1.5(矯正不能).図1症例1:幅湊不全型外斜視左:術前,近見外斜位の状態,右:術前,近見で外斜視の状態.→図2症例1:術後術後ほとんど斜位の状態を保っている.図3症例2:斜位近視左:術前,斜位の状態.両眼開放視力はBVA=(0.4)と低下した.右:術前,外斜視の状態.———————————————————————-Page4302あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(24)VS=0.07(1.5×4.5D(cyl0.5DAx180°).術後交代遮閉試験:遠見16ΔXP,近見8ΔXP¢.チトマス立体視検査:Fly(+),Animal(3/3),Circle(5/9).手術前瞳孔径手術後瞳孔径右眼3.9mm5.66mm左眼3.44mm4.99mm術前後のトライイリスで測定した瞳孔径の変化である.術後は瞳孔径が拡大している.術前と比較し瞳孔径の拡大が認められ,輻湊努力が小さくなったと考えられた.まとめ間欠性外斜視を伴う眼精疲労は訴えが強いことが多いので背景も含めて詳細な問診が必要である.眼精疲労の原因が斜視であることを確認したら積極的に治療する必要がある.文献1)SchorCM:輻輳と調節の順応過程.眼臨92:624-628,19982)内海隆:斜位近視の病態と治療.眼臨97:222-224,20033)藤木かおり,阿曽沼早苗,小嶋由香ほか:間欠性外斜視にみられる斜位近視と年齢についての検討.眼臨101:80-84,20074)平岡満里:調節の他覚的測定.神眼22:348-353,2005チトマス立体視検査:Fly(+),Animal(0/3),Circle(1/9).右眼外直筋7mm後転+内直筋5.5mm短縮術を施行.術後視力:VD=0.06(1.5×7.75D),VS=0.07(1.5×7.0D°).正位での両眼開放視力:BVA=(1.2×上記眼鏡)と視力改善が得られた.チトマス立体視検査:Fly(+),Animal(0/3),Circle(1/9).手術前瞳孔径手術後瞳孔径右眼2.56mm2.60mm左眼3.65mm3.73mm術前後のトライイリスで測定した瞳孔径の変化である.術後は瞳孔径が拡大している.術前と比較し瞳孔径の拡大が認められ,輻湊努力が小さくなったと考えられた.<症例3:基礎型間欠性外斜視>(図4)30歳,男性.主訴は焦点が合いにくい.初診時視力:VD=0.07(1.5×4.5D(cyl0.75DAx180°),VS=0.08(1.5×4.0D(cyl0.75DAx180°).交代遮閉試験:遠見35ΔXP,近見25ΔXP¢.チトマス立体視検査:Fly(+),Animal(3/3),Circle(3/9).両眼外直筋7.5mm後転術を施行した.術後視力:VD=0.06(1.5×4.75D(cyl0.5DAx180°),図4症例3:基礎型間欠性外斜視左:術前,斜位の状態.外斜位の状態と比べ両眼縮瞳している.右:術前,外斜視の状態.

調節障害と眼の疲れ

2010年3月31日 水曜日

———————————————————————-Page10910-1810/10/\100/頁/JCOPYの意味が病態を客観的に表せるか,どうか,確認できない点にある.「痙攣」,「衰弱」,「緊張」,あるいは「強直」など,いずれも対象組織,状況証拠,実測ができない表現が病名とされている.これらの表現は1970年を過ぎてもまったく変わっておらず,検査・実測手法がIT時代となった現在でも疑義をはさむ眼科医が皆無に近いということは不思議でならない.さて,調節機能を問題とする場合,基本的手法として提示される幾つかの要素があり,IT技術などを駆使した測定手法が開発され,それらの成果が報告されてきているが,上記の表現に対応する「診断的意義」としてのクライテリアは?となると明白な説明がなされていない.ところで,調節力とは本来自覚的な視標の明視領域に対応させて名付けられたものであり,加齢に伴う調節力(幅)〔amplitude(range)ofaccommodation〕としてDonders,Duane,あるいは石原ら多くの識者により報告されてきており,臨床医の診断・治療に供せられてきている.1988年山本ら7)は,パターン視覚誘発電位(PVECP)を用いた調節反応量に対して,他覚的調節力として従来の自覚的な調節力と比較した報告を行っている.その結果,加齢による相関は認めているものの自覚的測定結果(近点計による)と比較し3D程度大きい結果が得られたと結論付けている.PVECPによる成果を云々するものではないが,これらの結果は相互に比較対象とすべき群ではなくterminologyとして再考すべき内はじめに眼の疲れに関与する因子として,臨床の場において初めに想定するのは屈折・調節機能の異常であろう.これらのなかで,調節機能は年齢,内外の環境の影響を受けやすいが,その解析は必ずしも容易ではない.屈折条件を含めた老視は生理的加齢変化として除外し,本稿ではそれ以外の調節動態の異常について文献的考察を行い,私見を加えてみたい.なお,本論の内容は平成6年「第98回日本眼科学会総会」の宿題報告の一部を中心に眼疲労の実態を再構築してみようと試みたものであることをお断りしておきたい1).I調節異常とterminologyについて昭和9年に発刊された大日本眼科全書の「調節及其ノ障碍」2)によると,ドイツを中心とした欧州の眼科医療を導入,調節に関わる日本語訳が作られた経緯が理解できる(表1).その後,Duke-Elderの成書3),Cooperら4),わが国では加藤静一5),鈴村昭弘ら6)により異常調節動態について解説が加えられてきているが,必ずしも明白な定義(denition)がなされているとは言い難く,「老視」,および神経系麻痺に起因する病態である「調節麻痺」以外は臨床診断に苦慮する場合が多いのが実情かと思われる.表1は当初の邦訳が現在も採用され,臨床の場に引き継がれてきている幾つかの病態をあげたものであり,この辺の実態が理解されるものと考える.わが国のterminologyが不十分な大きな理由は,言葉(15)293eiiiroato900591特集●眼の疲れあたらしい眼科27(3):293298,2010調節障害と眼の疲れEyeFatigueRelatedtoAccommodativeDysfunction加藤桂一郎*———————————————————————-Page2294あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(16)臨床像をあげてみたものである.すなわち,1)調節時間2)調節反応量3)視標明視(の程度)などである.これらのなかで,1),2)は自覚的判断が困難な事項であり何らかの客観的(他覚的)手法に頼らざるえない評価項目であるが,3)は自覚的判断に依存する事象が主であり,客観的(他覚的)手法がとられることはあっても,その信憑性には乏しい場合も少なくない.容が含まれているともいえよう.いうなれば,明視域の別用語ともいえる調節力・幅(amplitudeofaccommo-dation)と,PVECPを用いた(明視の有無を問わない)調節反応量とは異なる位置付けをもつ対象である.「他覚的」という表現は医療レベルでは「より正確な」の意味で把握される傾向が強く,安易に使うべきではないものと愚考する.ちなみに,眼鏡処方,AC/Aratio(調整性輻湊対調節比)など,臨床で常時使われている調節力という用語が混乱する場合も想定され,ときには断り書きも必要となろう.強いて比較をするのであれば,調節力と調節反応量の相関であろうかと推察したい.II調節機能とその測定法調節機能はいくつかの動的過程(dynamicprocess)から構成されている.また,それらを評価する際に,臨床の場では自覚的・他覚的所見を部分的に取り出し結論付けられる傾向が強く,調節機能の全体像を見失っている場合が多いようにも思われる.図1は調節機能の評価において,おもな標的とされる表1調節異常の病名とその定義日本語訳英語独・羅語定義調節accommodationAkkommodation遠点内の任意の目標を明視するため,一時的に眼の屈折力を増加させる機能調節力調節幅amplitudeofaccommodationAmplitudoaccomodations調節休止(遠点明視)の位置から,近点明視の状態に至るまでに増加する眼の屈折力調節領調節域rangeofaccommodationRegioaccommodations遠点と近点との間の距離的範囲調節麻痺paralysis,accommodativepalsyParalysisetParesis動眼神経,または毛様筋自体が麻痺し,調節困難となる事象調節不全accommodativeinsuciecy調節力が年齢に相応した最低限より弱いもの(原による)調節不全麻痺paresisofaccommodation調節麻痺に準ずる調節衰弱ill-sustainedaccommodationAkkommodations-schwaeche,Astheniaaccommodations調節機能が衰弱し,疲労をきたしやすいものをいう石原式近点計により近点の延長を示すもの(石原による)調節痙攣spasmofaccommodationAkkommodations-krampf毛様筋の病的収縮状態をさす輻湊,縮瞳の有無については諸説あり(不定)調節緊張accommodativeconstrictionHypertonusaccommodations調節機が生理的範囲を超えて緊張状態を持続するもので,遠視に際し,毛様筋がまったく弛緩せず視力障害を生ずる調節強直(調節緊張症)inertiaofaccommodationAkkommodatonie,TonischeAkkommodation調節筋の収縮,ならびに弛緩の時間延長がみられ,幾分強直状態を呈するものをいう調節時間(A,C)視標明視(B)調節反応量(C,D)A:アコモドポリレコーダB:諸種近点計C:赤外線オプトメータD:パターンリバーサルVECP図1調節機能の評価———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010295(17)の位置を制御して調節反応を解析するために,2つの方法が採られている8).すなわち,1)準静的応答(連続刺激系)2)ステップ応答(非連続刺激系,遠・近,および近・遠)である.2.赤外線オプトメータによる調節反応の解析赤外線オプトメータ(現:アコモドメータ)は調節機能における眼内光学系の変化(調節反応時間)を経時的に記録できる装置であり,新たに多くの知見をもたらした.しかし本器の欠点は再現性が乏しい点にある.被検者に固視意欲がない場合においても,瞳孔反応によりある程度代償されること,あるいはpoor-responseとして処理されることはしばしば散見される.数回の反応形態で判断するか,VEP(視覚誘発電位)に準じた加算処理が行えれば検査結果の解析を誤ることも減らせるものとも考える.さて,反応形態のなかで,準静的応答は日常視では経験しにくい刺激・反応型であり,臨床的解釈・対応はむずかしい.一方,ステップ応答は日常視そのものともいえるので臨床的意義は大きい.赤外線オプトメータにおいて,遠方視を0.2D,近方視を3.2Dに置いた調節刺激条件でステップ応答を課した場合,一般に図2のような反応波形が得られる.すなわち,調節弛緩状態から仮に3Dの調節刺激を負荷すると,0.5sec前後までの急速な反応形態をとり,これら相互間に得てして乖離があるが故に調節機能の評価をむずかしくさせているとも考える.現在,調節機能検査として頻用されている2,3の検査法と課題について以下に述べてみたい.1.近点計視標明視領域の範囲を自覚的に計測する機種である近点計には,石原式近点計(等速度型)と両眼開放式定屈折近点計(ワック)がある.近点と遠点の明視限界を求め調節力(幅)を算出するもので,近用眼鏡の処方に際し基本的資料を提供する場合に使用される.これらのなかで,現在では視標の移動において誤差が少ない後者が頻用され,眼科臨床における評価も高い.2.アコモドポリレコーダ(accommodo-polyrecord-er)内部視標系を一定時間点灯させ,被検者の応答により遠・近方視標を反転させ,調節緊張・弛緩時間を測定する装置であり,手動により近点・遠点の測定も可能である.鈴村らによる詳細な報告がなされてきており,調節緊張・弛緩時間を量的に測定できる装置として臨床に頻用されてきたが,明視状態の確認がとれない欠点をもつのが課題といえよう6).3.赤外線オプトメータ(infra-redoptometer)眼球内光学系(調節・瞳孔反応)の動態が他覚的に確認できるため,アコモドポリレコーダに変わりうる装置として脚光を浴びてきている.本装置についての概念と,臨床における位置づけなどについては次項で述べたい.III調節異常の臨床1.赤外線オプトメータの概念赤外線オプトメータは眼底に投影された2個の赤外線スリット反射像を捉え,電圧の変化量として水晶体の屈折力に対応させて量定する装置で,光学系の動的実態を推察できる.現在アコモドメータ(NIDEK,AA-2000)として市販され,臨床の場で使用されるようになった.赤外線オプトメータの内部視標をレンズ系で刺激,視標0.50-3-2-101.201.5時間(sec)調節刺激量調節緊張調節ラグ調節(D)緩徐反応急速反応急速反応緩徐反応←?←?????調節弛緩←?図2調節反応の模式図———————————————————————-Page4296あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(18)3はフリー・スタート法の模式図を示したものであり,調節安静位の概念を示すものとして非常に理解しやすいものといえよう.すなわち,1.0D前後に最短のピークをもち+側に急峻で側に緩徐なカーブを描くものである.前者はnegativeaccommodation,後者は通常のpositiveaccommodationの反応型であり,1D前後を安静位とした調節反応を想定させるものである.「器具を覗く」という行為は予測調節が必然的に加味されるため,「調節安静位」の量定は困難となる.この問題について山野13)は「VDT作業前後の調節反ついで緩徐なスロープを描きピークに達する(調節緊張).調節弛緩刺激においても類似の反応波形を描くが,前者よりわずかに長い傾向がみられる.これを視標の明視レベルでみると,緊張・弛緩反応ともに急速・緩徐の移行時期に対応し,個人差はあるものの調節刺激量に対して調節ラグを残す.換言すれば,それぞれの急速・緩徐反応の角度を分析できれば,調節機能の本体に迫れるのではないかとも推察されよう.3.調節安静位の考え方と,VDT(visualdisplayterminal)作業前後における調節機能本器を用いた報告は多々あるが,「調節安静位」については疑義が多い.調節安静位はemptyeld,darkfocus(または夜間近視),instrumentmyopia(器械近視)に準ずる環境といわれるが,定量へのプロセスについては論じられてはおらず動的値として処理されているようにも思われる.赤外線オプトメータによる定量も論外ではなく,器械近視の量,そのもので対応させようとしているのであろうが,個々人における解釈はまちまちで定義は明瞭ではない.古い文献ではあるが,中林正雄9),山崎秀樹10,11),大橋利和12)らも安静位を,ある程度の幅を有する領域にあり,視環境の変化に応じて変動する可能性があることを示唆している.中林らのアコモドメータは,a)暗黒から視標設定距離(フリー・スタート法),およびb)視標提示距離が異なる2点を設定し,それぞれの明視可能な時間を制御し調節時間を測定する試みを行っている.図12345sec+10-1-2-3-4-5-6-7-8-9(D)図3アコモドメータによる明視時間(中林ら9)による模式図を改変)オプトメータミラーコントローラー回転式ミラーパコンレコーダ被検眼近視標遠視標図4外部視標を利用した赤外線オプトメータの模式図1D-0.2D-3.2D0DMyopicchangePre-workPre-workPost-workPost-workHyperopicchange図5VDT作業前後の調節反応量(赤外線オプトメータによる)表2VDT作業前後の調節反応量(赤外線オプトメータによる)調節刺激(D)調節反応量(D)作業前作業後Myopic-changeGroup3.21.902.410.2+0.220.37Range2.122.04Hyperopic-changeGroup3.21.971.510.20.09+0.41Range1.881.92———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010297(19)初期老視期(3545歳)である.生活環境において一般人が最も視機能を頻用する領域は中・近方,あるいは近・近方の距離であり,必要となればその距離に適した眼鏡を常用するのが快適な視機能をカバーすることにもなる.Sloaneらは個人が有する調節機能の1/2を残し,視距離に応じた不足分を眼鏡により補充するとする考え方を示しており,参考となる(表3)15).さて,VDT作業には側方視への配慮も重要であり,累進屈折度レンズは加入度が1D以内の近・近用デザインが好ましいと考える.個人的には遠用度数(5.5D)を1.5D程度弱めた単焦点レンズを常用し,生活環境の日常視として用い十分目的が達せられている(中・近明視野の確保,および収差の除去)ので重宝している.試みても良い方法かと考える.また,遠視眼の累進屈折度レンズによる矯正は側方の収差が非常に大きくなり,視空間の歪曲を起こし好まれない場合が多い.このような例では,上記と同様,作業距離に応じた専用の単焦点レンズで対応したほうが無難な選択であるともいえる.b.遠視,または学童期の眼鏡矯正小児期の屈折異常は調節性輻湊の関与が眼位異常を誘発する可能性があるので注意が必要である.遠視がベースとなり発症する調節性内斜視,あるいはその予防は早期に屈折矯正を行えば良く,過剰な調節性輻湊が避けられる.おわりに編集部の依頼内容は「調節緊張による眼の疲れ」であったが,調節緊張が何を意味するものかが明白でない現応」(赤外線オプトメータによるステップ応答)の小実験を行っているので簡単に紹介したい.VDT作業者13名(26眼)について作業前後の外部視標系(器械近視の除去を企図)を用いたステップ応答(0.2D⇔3.2D)について記録している(図4).表2,図5はそれらの結果を模式化したものである.興味のあることに,大部分の例は反応幅(amplitude)には変化がみられないにもかかわらず,作業後において遠方,あるいは近方にシフトする様子がうかがえる.これらを仮にHyperopic,およびMyopicchange群と名づけて考察を加えると,調節衰弱といわれるものが前者,調節緊張(あるいは,その一部)といわれるものが後者とすれば整合性が得られるのではとも思考している.ちなみに,この問題とvergenceを含めたdark-focusの動きをオプトメータを用いて精力的に追跡した米国の研究者にOwensDA14),AmosJFあるいはCooperJ4)らがおり,「Diagnosisandmanagementinvisioncare,Butter-worths,Boston1988」として纏められている.眼の疲れを「調節安静位の動的変化」として捉えようとした試みでもあろう.OwensDAらは若年者におけるVDT作業前後のdark-focusおよびvergenceが近視側に0.5D程度シフトし,遠方視力も低下すると述べている.眼鏡も含めた視環境の重要性を示唆したものとして興味深い.4.眼鏡レンズによる,いわゆる調節異常の矯正「調節障害による眼の疲れ」への対応は適切な眼鏡矯正が不可欠であり,作業環境に適したレンズの選択が必要となる.また,常に近方視における眼位の調整を念頭におくことも重要となる.ここでは上記で言及した,いわゆるaccommodativespasm(調節痙攣,あるいは強直),その亜型ともいわれるtonicaccommodation(調節緊張)を想定し,眼鏡矯正の要点を記してみたい.a.VDT作業と眼鏡矯正感染性疾患,あるいは脳内病変に伴う稀有な調節痙攣状態はさておき,日常頻用される機会の多い「VDT作業に伴う眼の疲れ(調節緊張状態)」について,中・近用眼鏡矯正に留意する必要があろう.調節反応が円滑な若年者はともあれ,問題となるのは表3快適な近方視のための調節区分(Sloane15)による)調節筋力残余調節力(総調節筋力×1/2)必要加入度(作業距離と必要調節力)25cm,4D33cm,3D40cm,2.5D50cm,2D6.0D3.0D1.0D5.0D2.5D1.5D0.5D4.0D2.0D2.0D1.0D0.5D3.0D1.5D2.5D1.5D1.0D0.5D2.0D1.0D3.0D2.0D1.5D1.0D1.0D0.5D3.5D2.5D2.0D1.5D———————————————————————-Page6298あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(20)5)加藤静一:調節及び調節障害.日本眼科全書7,眼機能(5),金原出版,19556)鈴村昭弘,谷口正子,三輪武次:Accommodo-Polyrecorder(HS-9B)による屈折異常者の調節機能について.眼紀23:150-157,19727)山本修一,安達恵美子,黒田紀子:パターン視覚誘発電位による調節力の他覚的検討,正常人における加齢による変化.日眼会誌92:981-986,19888)鵜飼一彦,石川哲:調節の準静的測定.日眼会誌87:1428-1434,19839)中林正雄,眞鍋禮三,片野隆正:調節機能の研究(VII).フリースタート法の簡易化について.眼紀14:257-261,196310)山崎秀樹:調節安静位の臨床的研究その1正常眼における調節安静位の生理的変化について.日眼会誌80:1668-1681,197611)山崎秀樹:調節安静位の臨床的研究その2屈折異常眼の調節安静位について.日眼会誌81:577-589,197712)大橋利和:器械近視に関する研究,日眼会誌71:1000-1009,196713)山野智敬:VisualDisplayTerminals(VDT)作業と調節反応の変化赤外線オプトメーターを用いた外部視標による検討.福島医学雑誌39:221-226,198914)OwensDA,Wolf-KellyK:Nearwork,visualfatigue,andvariationsofoculomotortonus.InvestOphthalmolVisSci28:743-749,198715)SloaneAE:ManualofRefraction2-nded,Little&BrownCo.,Boston,1970状にあり本題のようなタイトルとし,眼疲労を惹起する調節異常の全体像を眺めてみることとさせていただいた.ある程度の幅を有し,作業環境により変化しうる調節安静位(1D前後)を考慮に入れた適切な眼鏡を選択するのも,眼疲労を軽減するうえで重要かと考える.ダイナミックな調節機能をいかに評価すべきかは今後の課題とし,眼科医が調節機能を念頭におく際に,筆者の拙い経験ではあるがぜひ知っておいて欲しい実態(調節衰弱と調節緊張)を記してみた次第である.多少なりとも参考にしていただければ幸いに思う.文献1)加藤桂一郎:調節機能とその臨床評価.日眼会誌98:1238-1255,19942)畑文平:調節及其ノ障碍.大日本眼科全書6,眼機能学(第三冊),金原商店,19343)Duke-Elder:Anomaliesofaccommodation,SystemofOphthalmologyVol.V,OphthalmicOpticsRefraction,HenryKimpton,London,19704)CooperJ:Accommodativedysfunction,DiagnosisandManagementinVisionCare(edbyAmos,JF),p431-454,Butterworths,Boston,1988

眼の疲れの原因:VDT作業とドライアイ

2010年3月31日 水曜日

———————————————————————-Page10910-1810/10/\100/頁/JCOPYがあると考えられる.「眼疲労」は休息することでその疲れが解消するが,「眼精疲労」は休息してもその疲れが改善しない状態といえる1).しかしこの表現も非常に曖昧であり,本来であれば「眼疲労」のレベルであったものが精神的なストレスなどの影響により「眼精疲労」となる可能性もある.また,一人ひとりのストレスに対する耐性や感受性なども違うため,疲労の程度の感じ方は個人によって異なってくる.眼精疲労はさまざまの症状をひき起こす.たとえば,肩こり・頭痛・吐き気,眼痛,イライラや不安感,ひどい場合は抑うつ状態になったりすることもある.なかなか原因がはっきりせず苦労する場合も見受けられる.眼精疲労は生活環境や習慣が大きく影響するため,原因を突き止めそれに対処しなければならない.II眼精疲労の原因つぎに眼精疲労の原因について簡単に説明する2).1.調節性・屈折性老視による調節力の低下に起因する眼精疲労に対しては,適切な眼鏡装用が必要となる.遠視や正視では特に眼精疲労を起こしやすく,眼鏡の必要性について十分説明し納得してもらうことが大切である.一方,近視のためにコンタクトレンズや眼鏡を使用している場合,老視により調節力が低下しているにもかかわらず度数を調整していないこともあり眼精疲労の原因になっていることはじめに近年,情報処理のIT(情報技術)化が急速に進められVDT(visualdisplayterminal)が広く導入されたことで,多くの人がVDT作業に携わるようになった.携帯情報端末やノート型パソコンの普及により,いつでもどこでもインターネットやゲーム,メールをすることができる生活環境の変化により労働時間を超えて眼を酷使する機会が増えている.それに付随して多様な精神的,身体的な問題が生じてきている.特に眼科領域では眼精疲労や眼の乾燥感を訴える患者が急増している.これらの眼症状はわれわれの生活環境と密接に関連しているため眼の生活習慣病といっても過言ではない.こういったVDT作業に伴う眼症状はIT眼症ともよばれ,作業者に大きな負担を与え深刻な問題となっている.今後もIT化は進むことが予想され,VDT作業者における健康管理が重要な課題となってきている.われわれ眼科医は,VDT作業に関する諸問題における対応についてアドバイスする立場にあると考えられる.眼精疲労の原因はさまざまだが,本稿ではドライアイに伴って起こる眼精疲労,特にVDT作業との関連について的を絞って,その対処法も含めて解説する.I眼精疲労とはまず本題に入る前に眼精疲労とは何かについて触れておく.一般的に「目の疲れ」とひとまとめにしていうことが多いが,「眼疲労」と「眼精疲労」には大きな違い(9)287T:眼:160858235眼特集●眼の疲れあたらしい眼科27(3):287291,2010眼の疲れの原因:VDT作業とドライアイVisualDisplayTerminalandDryEye鴨居瑞加*坪田一男*———————————————————————-Page2288あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(10)IIIドライアイによる眼精疲労ドライアイは非常に頻度の高い疾患で,日本における患者数は約1,000万人といわれている.ドライアイの原因は,特に基礎疾患のない単純型のドライアイから,Sjogren症候群のような全身性の疾患に合併して起こる続発性のドライアイまでさまざまである.ここではVDT作業に伴うドライアイに的を絞って話を進める.近年,視覚情報化が進みわれわれの生活環境は大きく変化し,VDT作業は増加の一途をたどっている.それに伴いVDT作業によるドライアイや眼精疲労が急増している.ドライアイはすぐに失明につながるような疾患ではないが,その症状は患者にとって非常に深刻で,社会的な活動を著しく妨げる場合もある.さまざまな検査機器の進歩により,今までは単なる不定愁訴と考えられていたドライアイが,さまざまな角度から科学的なアプローチができるようになり,その病態メカニズムの解明に注目が集まっている.患者自身の関心も高まり,自分はドライアイではないか?と疑問に思い受診するケースもある.現在,VDT作業を行っている事業所は90%以上であり,VDT作業者における身体的疲労や自覚症状についての調査では,何らかの症状がある作業者が約77.6%であった.そのうち「目の疲れ・痛み」が一番多く,90.4%の作業者で自覚症状があるとのことである.続いて「首,肩こり・痛み」が69.3%で,「腕,手,指の疲れ・痛み」が22.5%であった3).このことはVDT作業がいかに眼の負担となっているかを示している(表1).ドライアイ患者の症状は多彩であるが,眼精疲労をあげる人がかなり多いのが特徴である.眼精疲労を訴える患者のうち51.4%にドライアイが認められたこと,またドライアイのある患者のうち71.3%に眼精疲労を認めた報告もあることから,ドライアイと眼精疲労には密接な関係があることがわかる4)(図1).がある.また,デスクワークとVDT作業などでは作業距離が異なっており,その作業距離に合わせた適切な眼鏡を処方することが肝要である.2.症候性眼精疲労の原因となる疾患としてはドライアイや緑内障,自律神経失調症など多岐にわたる.本稿ではこの後ドライアイと眼精疲労の関係について詳しく述べる.特に近年急増しているVDT作業に伴うドライアイでは強い眼精疲労を訴える患者が多く深刻な状況となっている.3.筋性間欠性外斜視や斜位がある場合,眼位を保つために輻湊することが必要になる.このとき,調節も同時に起こるため調節力が低下すると眼精疲労が起こりやすくなる.このような場合プリズム眼鏡を使用することで眼位が補正され有効である.眼位ずれの程度によっては斜視の手術を行うこともある.4.不等像視性左右の眼で網膜に写る像の大きさが異なることにより起きる眼精疲労である.一般的には2ジオプトリー以上の不同視の眼鏡装用は眼精疲労の原因となる.したがって,このような症例では眼鏡処方の際に片眼を完全矯正し,もう片眼を2ジオプトリー以内で矯正するとよい.もしくは不同視に伴う不等像視にはコンタクトレンズの装用も有効である.5.神経性不安神経症やうつ病などに起因するものである.まず眼科的に器質的な疾患が隠れていないか十分に精査を行ったうえで,精神科などへの受診も考慮することが大切である.表1身体的疲労・自覚症状のある労働者の疲労部位別割合目の疲れ・痛み首,肩のこり・痛み腕,手,指の疲れ・痛み腰の疲れ・痛み背中の疲れ・痛み頭痛足の疲れ・痛みその他全労働者(%)90.469.322.52219.518.73.31———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010289(11)3.その他内野らの報告ではVDT作業者のドライアイのリスクファクターとしてコンタクトレンズ装用をあげている7).コンタクトレンズ装用者は非装用者に比べ,ドライアイのリスクが約3.6倍となっている.これはコンタクトレンズを装用していると瞬目が浅くなり眼表面が乾きやすくなることが原因と考えられている.VDT作業の作業時間においても,作業時間が2時間未満の群と比べ作業時間が4時間以上の群ではドライアイのリスクが約1.8倍となっている.このことは,VDT作業時間が長くなればなるほど,ドライアイのリスクが高まることを示している(表2).■VDT作業におけるドライアイの要因1.瞬きの減少VDT作業に伴うドライアイの原因として,集中して画面を凝視することで瞬目が減少し,涙液の蒸発量が増えて眼表面の乾燥が起こり発症する.われわれの通常の瞬目は1分間に約20回程度といわれているが,読書やVDT作業,ゲームなどにより著明に減少することがわかっている.読書では約半分,VDT作業やゲームにいたっては1/31/4に減少する5,6)(図2).VDT作業者における涙液層破壊時間(tearlmbreakuptime:BUT)を測定した研究では,瞬目と瞬目との間の時間が,BUTを上回ることが証明されており,VDT作業者では眼表面が乾きやすいことを裏付けている6).2.瞼裂幅VDT作業をする際にディスプレイの置く位置により瞼裂幅が変わるため,眼球の露出面積が変わり,眼表面の乾燥に影響することがわかっている.通常パソコンのディスプレイは前方に置くことが多く,瞼裂幅が大きくなることで眼球の露出面積も大きくなり乾きやすくなってしまう(図3).読書などでは本をやや下方に置くことが多いので眼球の露出面積が小さくなるため,瞬目が減少しても眼表面の乾燥が緩和されると考えられる5).表2VDT作業者におけるドライアイのリスクファクターオッズ比コンタクトレンズ装用3.61VDT作業時間24時間1.284時間以上1.83性別(女性)1.6454人眼精疲労111人全患者524人中ドライアイ80人57人23人図1ドライアイと眼精疲労の合併瞬視ーコンーター図2各作業における瞬きの変化視視作業眼の露出面積図3視線と眼表面の露出面積———————————————————————-Page4290あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(12)ある症例にも比較的使いやすいと考えられる.5.近視矯正法の検討コンタクトレンズの使用がVDT作業者のドライアイのリスクファクターになることから,コンタクトレンズ装用をやめLASIK(laserinsitukeratomileusis)を受けるというのも一法である.ただ,LASIKの術後13カ月はドライアイが発症することがある.その後回復してくることが多いが,術前からドライアイがある症例では術後のドライアイにもなりやすく,また回復も遅いことが知られている.以上のことから術前のドライアイの程度を十分に検査してからLASIKを受けるべきと考えられる9,10).6.点眼長時間のVDT作業により乾燥感がでる場合は人工涙液やヒアルロン酸ナトリウム点眼薬の使用が効果的である.しかし乾燥感が強い症例では点眼回数が多くなりすぎることがあり,防腐剤の眼表面への影響が無視できなくなる.その場合は防腐剤無添加の点眼薬の使用が適している.ただ,涙液には水分だけでなく涙液の安定性を高め蒸発を防ぐ効果のある粘液や油分も含まれているため,過剰な点眼はこれらの必要な成分まで洗い流してしまうことになる.したがって防腐剤無添加の点眼といえども過度の使用は逆効果になってしまうことを十分に患者に説明しなければならない.7.温熱療法マイボーム腺から分泌される油分は涙液の蒸発を防ぐ役割を担っている.眼周囲を温めることでマイボーム腺からの油の分泌がよくなり涙の安定性が改善しドライアイに有効である11).また,眼周囲を温めることにより調節力が改善することがわかっている.メカニズムとしては副交感神経が優位になり,筋肉の緊張が低下し血管の拡張作用により循環が改善したことなどが考えられている12).8.作業環境の整備空調設備の普及により室内は一年中乾燥していることIVVDT作業に伴うドライアイへの対処法VDT作業に伴って起きるさまざまな症状への対処法について説明する.1.休息長時間のVDT作業は前述したとおりドライアイのリスクにもなりうるため,十分な休息をとる必要がある.長時間にわたって近方を凝視することは毛様体筋の過度の緊張を起こし,調節力の低下により眼精疲労が生じやすくなる.VDT作業における一連続作業時間は60分となっており,その間に1015分は休息を入れることを規定している7).2.姿勢や画面を置く位置VDT作業の特徴として長時間同じ姿勢をとり続けて作業をすることがあげられる.前述したとおり集中して作業すると瞬目が極端に減ってしまい,眼表面が乾燥してドライアイが起こりやすくなる.したがってディスプレイの置く位置にも配慮が必要で,正面に置くよりも少し下のほうに置くことで,下方視ができるようになり,眼表面の露出面積が小さくなり乾燥感が和らげられる.書類などはパソコンのディスプレイの近くに置くことや文字の大きさを工夫することも必要である.3.深い瞬き特にコンタクトレンズ装用者では瞬目が浅くなりがちなため,意識的に瞬目をしっかりするように心がけることも大切である.また,集中して凝視することにより瞬目の回数自体も減少するため,回数にも注意を払うことが必要である.4.コンタクトレンズの材質について高含水のソフトコンタクトレンズは装用感もよく,酸素透過性にも優れているが乾燥感が出やすく,長時間のVDT作業者にはドライアイの発症リスクが高まる危険性がある.シリコーンハイドロゲル素材のソフトコンタクトレンズは高い酸素透過性を維持したままで含水率を下げ乾燥感を和らげることができるため,ドライアイの———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010291(13)よってVDT作業者の精神的・肉体的ストレスをより軽減し,より快適な作業が行えるようになることを期待する.文献1)渥美一成:VDT作業と眼精疲労.現代医学39:465-474,19922)渡辺朗:眼精疲労.眼科45:1731-1736,20033)厚生労働省安全衛生部労働衛生課編:VDT作業における労働衛生管理・ガイドラインと解説.p147-160,20024)TodaI:Ocularfatigueisthemajorsymptomofdryeye.ActaOphthalmol71:347-352,19935)TsubotaK:Dryeyesandvideodisplayterminals.NEnglJMed328:584,19936)佐藤直樹,山田昌和,坪田一男:VDT作業とドライアイの関係.あたらしい眼科9:2103-2106,19927)UchinoM,SchaumbergDA,DogruMetal:PrevalenceofdryeyediseaseamongJapanesevisualdisplayterminalusers.Ophthalmology115:1982-1988,20088)中央労働災害防止協会編:VDT作業の労働衛生実務・厚生労働省ガイドラインに基づくVDT作業指導者用テキスト.20059)TodaI,Asano-KatoN,Komai-HoriYetal:Dryeyeafterlaserinsitukeratomileusis.AmJOphthalmol132:1-7,200110)TodaI,Asano-KatoN,Hori-KomaiYetal:Laser-assist-edinsitukeratomileusisforpatientswithdryeye.ArchOphthalmol120:1024-1028,200211)MoriA,ShimazakiJ,ShimmuraSetal:Disposableeye-lid-warmingdeviceforthetreatmentofmeibomianglanddysfunction.JpnJOphthalmol47:578-586,200312)TakahashiY,IgakiM,SuzukiAetal:Theeectofperio-cularwarmingonaccommodation.Ophthalmology112:1113-1118,200513NagymihayiA,DiksteinS,TianyJM:Theinuenceofeyelidtemperatureonthedeliveryofmiebomianoil.ExpEyeRes78:367-370,2004が多いため加湿器を用いて湿度を高めることが必要である.推奨される湿度は約4070%とされる.室温に関しては低温になりすぎると,マイボーム腺からの油の分泌が低下するため,いっそう涙液が蒸発しやすい状態になる13).特に夏場はエアコンの設定温度に注意する必要がある.個人差もあるが1827℃程度が推奨される8).また,適切な明るさを維持することも重要で,暗すぎるのも明るすぎるのも不快感の原因になりうる.作業面は300ルクス以上,ディスプレイ画面は500ルクス以下が適している8).ディスプレイと書類やキーボードの輝度が大きく異なる場合は,網膜の順応や瞳孔運動の影響も出てくるので,視野内の輝度を同レベルにすることも必要である.おわりに眼精疲労やドライアイは失明に至る疾患ではないが,その人のQOL(qualityoflife)に直結し近年ますますその重要性が高まっていると考えられる.今後はいっそう視覚情報化が進みコンピュータユーザーが増えることは間違いなく,眼精疲労やドライアイといった問題が増加することは必至である.しかし眼精疲労やドライアイを起こさないためVDT作業を減らせばよいというような単純なものではない.現代の社会生活においてVDT作業をなくすということは不可能であるからである.快適な生活を享受する反面,それによって生じた問題に積極的にアプローチしていくことが必要である.われわれ眼科医は,VDT作業における眼精疲労やドライアイのメカニズム,その対処法を周知させることで,この視覚情報化社会をより快適なものにしていくことができるように努めることが大切と考える.それに

眼の疲れ総論

2010年3月31日 水曜日

———————————————————————-Page10910-1810/10/\100/頁/JCOPY退状態といわれる1).眼の疲れは「見る」という活動,すなわち視覚を通して情報を得る活動が過度であった場合にひき起こされる.したがって,眼の疲れのメカニズムを知るには,われわれが無意識に行っている視覚情報処理のしくみを理解する必要がある.本稿ではまず,視覚情報処理のしくみについて概観し,そのシステムの疲労という視点に立って眼の疲れを考察する.I見ることのしくみ生体の感覚系は必要な情報のみを効果的に選択し,それらを中枢で処理できる条件にするための構造と機能を備えている.「見る」ことに関しての構造は眼球である.眼球はしばしば高性能カメラに例えられるが,角膜,水晶体を中心とする眼光学系は光学的にみれば欠点が多く,決して優れたものとはいえない.その欠点を補っているのが網膜視細胞に始まる視覚神経系である2,3).はじめに20世紀半ばにコンピュータが発明されると,それを用いてOA(OceAutomation)化が急速に進行し事務作業の形態を一変させた.21世紀になると,さらに技術革新が進み,IT(InformationTechnology)を応用したパソコンや携帯電話,携帯情報端末と,それらをインフラとした各種サービスの普及で,職場のみならず一般生活での利便性も驚異的に向上した.文明の進化により,われわれが入手できる情報の量は飛躍的に増大したが,その大部分は視覚を通して得られるものである.現代社会において最も酷使されているのが視覚であり,最も疲れを感じるのが「眼」であることは,厚生労働省の「技術革新と労働に関する実態調査」からも明らかである(表1).疲労とは過度の肉体的,精神的な活動によって惹起される,独特の病的不快感と休養欲求を伴う身体機能の減(3)281TT54342264TT特集●眼の疲れあたらしい眼科27(3):281286,2010眼の疲れ総論Eyestrain:AnOverview中村芳子*表1VDT作業における身体的な疲労や症状がある労働者および内容別労働者割合実施年度身体的な疲労や症状がある労働者計身体的な疲労や症状の内容(複数回答)身体的な疲労や症状がない労働者頭痛目の疲れ・痛み首・肩のこり・痛み腰の疲れ・痛みH20年[68.9%]100%23.3%90.8%74.8%26.9%[31.1%]H15年[78%]100%23%91.6%70.4%26.6%[22.0%]H10年[77.6%]100%18.7%90.4%69.3%22.0%[22.4%][]内はコンピュータ機器を使用している労働者のうち「身体的な疲労や症状がある労働者」および「ない労働者」の割合.斜体数字は「ある労働者計」を100%としたきの内容別割合である.VDT作業で身体的な疲労や症状を感じている労働者の割合は,H20年度:68.9%で前2回(H10年度:77.6%,H15年度:78%)より減少がみられた.一方,身体的疲労や症状の内容では,「目の疲れ・痛み」が最も多く,3回の調査ともに9割以上(90.491.6%)であった.(厚生労働省:技術革新と労働に関する実態調査結果より抜粋)———————————————————————-Page2282あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(4)系,視床下部,視床などの情報と統合あるいは照会,選択される2,57).その結果に基づいて認識が成立し,意思決定がなされ,運動中枢への働きかけが行われる.人間の眼にとって「必要な情報のみを効果的に選択する」ために求められる機能は,対象物を両眼の網膜中心窩で捉え,網膜上に鮮明に結像させることである.この役割を担うのが外眼筋による眼球運動,毛様体筋による焦点調節,虹彩筋による瞳孔運動である.いずれの機能も筋肉によって情報の位置や強度などを制御するので,モーター制御系と総称することができる8).視覚情報処理系とモーター制御系は密接に連携して「ものを見ること」を可能にしている(図2).II眼の疲れのメカニズム疲労は筋線維の疲労が中心となる肉体疲労と精神疲労の2つに分類される.精神疲労は大脳の興奮水準を高めた状態で行う精神・神経活動が長く続いたときに起こり,高頻度のインパルスによりシナプス前終末部の伝達物質が枯渇して起こるシナプス疲労が原因と考えられる.眼の疲れは,視力を必要とする作業を続けるときに起こるシナプス疲労が原因といわれ,肉体疲労の関与は否定的である9).明視に関連する筋肉は,3組の外眼筋,毛様体筋,瞳網膜上に投影された光学像を視覚情報として脳に送るため,網膜視細胞で光の強度がパルス電気信号に変えられ(光電変換),双極細胞を経て神経節細胞に伝えられる.視細胞と双極細胞の間には水平細胞,双極細胞と神経節細胞の間にはアマクリン細胞が介在し,それぞれの細胞と細胞間シナプスの特性により網膜内で情報処理の最初のステップが進行する.網膜は光変換器であると同時に,積極的に情報処理を行う中枢神経の機能を有している2,4).神経節細胞の軸策は視神経を形成して眼球外へ出,外側膝状体細胞に終止する.外側膝状体は網膜からの情報を大脳皮質視覚野へ伝える中継点であるが,ここでさらに情報の整理,強調,増幅が行われる.外側膝状体からの情報は大脳皮質第一次視覚野へ送られ,特有のコラム構造でさらに処理された後,視覚前野の各領域を経て,物体の動きや位置に関する運動視情報は頭頂葉に(背側経路),視対象の色や形といった物体視情報は側頭葉に出力される(腹側経路).これらの経路で並列に処理された情報はともに前頭前野に送られ(図1),大脳辺縁図1視覚情報の流れ視覚認識には大きく分けて2種類の課題がある.1つは運動視に関するもので,周囲の物体の位置や動き,環境の3次元構造などについて,情報の高速処理が求められる.他の1つは物体視に関するもので,物の形態,色,質などを正確に識別することが求められる.この課題に対し脳は,運動視情報はV1から頭頂葉に至る「背側経路」で処理し,物体視情報はV1から側頭葉に至る「腹側経路」で処理するという,並列処理で対応している.この2つの投射路を経た視覚情報は前頭前野に出力され認識される.(文献6,7より引用改変)モーター制御系視覚情報処理系眼球運動焦点調節瞳孔運動眼球運動中枢近見反応中枢外眼筋・毛様体筋虹彩筋入力感覚(sensation)知覚(perception)認識(cognition)【眼球】【網膜】【大脳視覚領】【大脳高次中枢】神経系Ⅳ(記憶)神経系Ⅲ(識別)神経系Ⅱ特徴抽出神経系Ⅰ情報整理変換系結像系出力図2ものを見るしくみ「ものを見る」ためには,見たい物を網膜中心窩で捉え,網膜上に焦点あわせをする「モーター制御系」と網膜上の像を高次中枢に伝えて認識できるようにする「視覚情報処理系」がうまく連携することが求められる.(文献8より引用改変)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010283(5)束点を維持しようとする,あるいは収束点変更の際に誤りを避けようとすることが,眼に疲労感を生じさせる原因と考えられる9).以上のことから,眼の疲れは視覚情報処理系のシナプス疲労による精神疲労と考えられる.刺激の質が悪いとき,結像系やモーター制御系に問題があるときなど,誤差の大きい視情報が伝達される状況では,知覚・認識系の負荷も大きく,眼の疲れを誘発しやすい.さらに認識には過去に学習した結果との照合も関与する.したがって,慣れた道であれば視力が不良であっても速やかに目的地に着けるが,初めての道であれば大変な労力を必要とする,というように記憶の補佐の有無で情報処理効率が変化する.同じ視作業であっても,習熟度によって眼の疲れ具合が違うのはこのためである.III眼の疲れ誘因「見難いものを判読しようとすると眼が疲れる」「老眼は眼の疲れで始まる」といったことを多くの人が経験する.眼科臨床の場では遠視や乱視,眼位異常があれば眼が疲れるというのも周知の事実である.視覚情報処理モデルに照らし合わせると,これらはいずれも入力から出力に至る過程のどこかで,情報処理の負荷要因となりシ孔括約筋と散大筋であるが,いずれも筋局所の疲労はないか,あっても眼疲労の原因にはならないといわれる.その理由として,これらの筋肉は休みなく微小運動をくり返している(外眼筋の固視微動,毛様体筋の調節微動,虹彩筋による瞳孔動揺)が,眼の疲れを誘発しないこと.頭位変化に伴う視線のブレの修正も絶え間なく行われており(前庭動眼反射),視線の揺れを防止するために外眼筋は絶えず活動しているが,これも眼の疲れを誘発しないことなどがあげられる.一方,同じく外眼筋の活動であっても,輻湊運動に関しては眼の疲れを誘発することが知られている.輻湊運動は左右の眼の網膜像のズレによりひき起こされる.条件によっては「快適に見える範囲」を超えた視線の収束を大脳の興奮水準を高めた状態で行わなければならず,シナプス疲労を招く.毛様体筋の活動による調節作用においても,最大調節量の2/3未満を使用するだけで網膜像を維持できるのであれば問題ないが,それを超えると眼の疲れを誘発するといわれる.瞳孔の動きについても同様の報告がみられ,外眼筋,内眼筋ともに快適な視覚の範囲内で働いていれば,常に運動していても疲労現象は生じないと推測される.したがって,眼筋線維の疲労ではなく,誤った視覚信号が脳に伝達され,視線の収1.光刺激(ディスプレイ注視など)2.照明の不良3.印刷面の反射・上方視での近業・不慣れな作業1.疲労,不2.ストレス(テクストレスをむ)3.全身疾患4.精神疾患5.頭部外症1.部疾患2.内障1.屈折異常(遠視,乱視)2.調節異常(老視など)3.眼位異常4.不適切な眼鏡,C5.ドライアイ入力(A)(B)(C)(D)(F)(E)【眼球】【網膜】【大脳視覚領】【大脳高次中枢】神経系Ⅳ(記憶)神経系Ⅲ(識別)神経系Ⅱ神経系Ⅰ変換系結像系出力図3視覚情報処理系への負荷要因負荷要因(AF)とそれぞれが影響する部位を→で示す.(A)視情報の画質低下の要因となる,(B)輻湊安静位の遠方化・斜位量の増加をきたす,(C)網膜像のボケあるいはズレを大きくする,(D)網膜像のゆがみや欠損が生じる,(E)情報処理能力の低下をきたす,(F)情報処理効率の低下をきたす.———————————————————————-Page4284あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(6)10:1以下が望ましいといわれる10).さらにデスクトップパソコンの場合には,ディスプレイ注視時に視線が下を向かないという負荷も加わる.視線が下を向かない近業では,輻湊安静位の遠方化や斜位量の増加がみられ,両眼同時視のために過剰な努力が必要となる.また,眼表面の露出面積が増加し,蒸発亢進型ドライアイを発症しやすいという弊害もある.ディスプレイの負荷は一般に理解されている以上に大きいものであり,2002年に厚生労働省より出された「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」にも,快適にディスプレイを使用するための詳細な指示がみられる(表2).結像系・変換系に影響するのは視器の性能である.遠視,乱視,調節機能の低下や斜位,斜視などがあれば,誤差の大きい情報を処理する必要があり視覚情報処理系に負荷がかかる.しかし,視機能異常の程度と眼の疲れステムの疲労をひき起こすと推測される(図3).IT社会において,入力に関する最大の負荷要因はディスプレイ(情報表示装置)の注視である.書籍,新聞などの印刷紙面は反射物体であるため,ちらつきがない.周囲の明るさによって紙面の輝度は変化するが,文字と背景のコントラストは変化しない.したがって,極端に暗い場所以外では,文字の読み取りやすさは同じである.一方,ディスプレイは自ら光を発する発光型表示装置で,光点の点滅によって情報を表示する.このため,自覚の有無にかかわらず画面は常時ちらついている.発光型表示装置の特性として暗室でも視認性が高い一面,周囲が明るくなると文字と背景のコントラストが低下し読み取りにくくなる.すなわち,周囲の光環境が変われば,容易に画質不良の画面に変化する.暗所での作業においても,作業面の輝度と周囲の輝度比が大きくなり過ぎると視覚負担を招く可能性があり,輝度バランスは表2VDT作業ガイドライン※に記載されたディスプレイ関連の指示事項作業環境管理<照明及び採光>・ディスプレイを用いる場合のディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下,書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とすること.・ディスプレイ画面の明るさ,書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること.・ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は,必要に応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け,適切な明るさとなるようにすること.<グレアの防止>・ディスプレイについては,必要に応じ,次に掲げる措置を講じること等により,グレアの防止を図ること.(イ)ディスプレイ画面の位置,前後の傾き,左右の向き等を調整させること.(ロ)反射防止型ディスプレイを用いること.(ハ)間接照明等のグレア防止用照明器具を用いること.(ニ)その他グレアを防止するための有効な措置を講じること.作業管理<VDT機器等>・ディスプレイは,次の要件を満たすものを用いること.(イ)目的とするVDT作業を負担なく遂行できる画面サイズであること.(ロ)フリッカーは,知覚されないものであること.(ハ)ディスプレイ画面上の輝度又はコントラストは作業者が容易に調整できるものであることが望ましい.<調整>・ディスプレイに関して(イ)おおむね40cm以上の視距離が確保できるようにし,この距離で見やすいように必要に応じて適切な眼鏡による矯正を行うこと.(ロ)ディスプレイは,その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか,やや下になる高さにすることが望ましい.(ハ)ディスプレイ画面とキーボード又は書類との視距離の差が極端に大きくなく,かつ,適切な視野範囲になるようにすること.(ニ)ディスプレイは,作業者にとって好ましい位置,角度,明るさ等に調整すること.(ホ)ディスプレイに表示する文字の大きさは,小さすぎないように配慮し,文字高さが概ね3mm以上とするのが望ましい.※「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(厚生労働省:2002年)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010285(7)となる可能性をもつ,という点においては見解が一致しているようである.眼精疲労の発症メカニズムとしては,外環境要因(眼の使用),視器要因(眼の能力),内環境要因(個体の耐える力)の三者が関与し,そのバランスの崩れにより発症するという考え方が一般的である9).鈴村は,これらの因子が単独で発症することは少なく,複雑に絡み合って,それらが悪循環をして生じると考え,眼精疲労の原因として単一なものをあげることはむずかしいと述べている.Duke-Elderは“EYE-SATRAImaybedenedasthesymptomsexperiencedintheconsciousstriv-ingofthevisualapparatustoclarifyvisionbyineec-tualadjustments.”と記載し,鈴村のいう悪循環を「明視を目的とした無駄な調整」と表現した.外環境要因,視器要因,内環境要因を視覚情報処理系に当てはめると,それぞれ入力,結像・変換系,知覚・認識系の要因となる.すなわち図3に示したすべての因子は,眼の生理的疲労とともに眼精疲労の発症要因となるが,単独では発症に至らないということである.では,単一因子が発端となり,複数の因子が絡み合って悪循環する状態に至る過程でどのようなトラブルが起こるのだろうか.眼の疲れは視覚情報処理系の処理能力が低下し出力量が低下したときに自覚されると推測する.このとき,個体の要求が出力量に見合うものであればバランスの崩れは起こらない.そうでなければ,出力に見合うところまで要求水準を下げる,あるいは休息などにより出力が回復するまで待つことが必要となる.しかし,出力量の低下が容認されず,情報処理効率の改善が指示されるとすれば,指示が伝達される所はモーター制御系である.なかでも網膜像のボケをトリガーとしてひき起こされる調節系が最も標的になりやすいものと思われる.赤外線オプトメーターを用いて眼精疲労症例の調節機能を測定すると,しばしば調節痙攣型の異常が検出される12).調節痙攣型の特徴は,調節無刺激状態においてみられる屈折度の大きな変動と近方への偏位であり,調節系が解放制御下にあっても不必要な調整をくり返していることを示している.この無駄な調整のために,調節刺激を与えた場合の実質反応量は低下することが多い.したがって,自覚的調節検査では調節不全や麻痺と診断されるのであやすさは相関しない.本人の努力で矯正可能な軽度の視機能異常があり,無意識のうちに矯正努力を持続する状況が最も疲れやすいといわれる.眼位異常を例にとれば,両眼視努力が強制される斜位のほうが斜視より症状が強い.眼鏡やコンタクトレンズについても,「よく見えること」と「装用して疲れないこと」は別の問題である.近視の完全矯正や遠視の低矯正レンズは,装用により調節負荷を強いることになり眼の疲れを誘発する.老視の矯正に繁用される累進多焦点レンズ眼鏡についても,単焦点レンズの鮮明な視感覚とは異なることを意識して装用させなければ,やはり無意識の矯正努力に繋がる危険性がある.知覚・認識系に影響を与える可能性があるという意味では,ほとんどの全身疾患,精神疾患,体質的要素や生体リズムまでもが該当する.そのなかで特に今日的な要因をあげるとすれば,疲労の影響と思われる.「過労死(Karoushi)」なる和製国際語が生まれるほどに日本の労働者に慢性的疲労が蔓延しているといわれる.2006年に始まった「長時間労働者への医師による面接指導」(改正労働安全衛生法第66条の8,9)に準じて面談を実施すると,身体的疲労を自覚するケースの多くが眼の疲労も感じている.うつや疲労を訴える症例では脳の血流が低下すると報告されており11),視覚情報処理の高次中枢にも影響があるものと推測される.IV眼精疲労のメカニズム疲労は適当な休息で速やかに改善する生理的疲労と,容易に回復せず不快な症状が持続する病的疲労に分類される.眼精疲労は眼の病的疲労で,WilliamMackenzieが1843年に視矇,流涙,頭痛を示す女工らの症状をasthenopiaとして最初に報告して以来,現代病,文明病の一つとして研究されてきた.わが国でも,戦後の眼科診療において患者が急増したことを受けて多数の報告がなされた.その本態については報告者によって理解がまちまちで不明点も多いが,本症は,①眼痛,視矇,流涙,頭痛などの症状があり,眼の疲れを主症状とする眼疲労とは異なる,②詳細に検査すれば多くの症例で調節機能の変化を認める,③発症に関与する要因は多彩であり,ほとんどの眼疾患,全身疾患から外環境までが誘引———————————————————————-Page6286あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(8)人は19%で,2割に達しなかった.この結果にみられるように,眼の疲れを感じている人は多いものの,大多数は自助努力で対応しているようである.眼科を受診する症例があれば,そのこと自体が症状の重さの証といえる.受診例に対しては,視情報の入力に始まる視覚情報処理過程のどこに問題があって訴えに繋がっているのかを慎重に検証することが望まれる.一方,未受診の症例に関しても,なんらかの形で支援が必要である.日本眼科啓発会議(http://www.ganka-kaigi.org/)などの新しい支援活動に期待したい.文献1)木谷照夫,渡辺恭良:疲労の実体と研究の現状.疲労の科学(井上正康,倉恒弘彦,渡辺恭良編),p2-4,講談社,20012)福田忠彦:視覚神経情報処理.生体情報論,p81-105,朝倉書店,19973)若倉雅登,三村治:視覚.視覚と眼球運動のすべて(若倉雅登,三村治編),p8-23,メジカルビュー社,20074)花沢明俊:神経生理I─網膜からV1まで─.視覚Ⅰ視覚系の構造と初期機能(篠森敬三編),p24-44,朝倉書店,20075)花沢明俊:神経生理II─高次の視覚領野─.視覚I視覚系の構造と初期機能(篠森敬三編),p45-63,朝倉書店,20076)乾敏郎,堀江長春,清澤源弘ほか:視覚認知の中枢機構.視覚と眼球運動のすべて(若倉雅登,三村治編),p48-69,メジカルビュー社,20077)佐藤宏道,津本忠治:大脳における視覚情報処理とその可塑性.眼科NewInsight①視覚情報処理(若倉雅登編),p60-73,メジカルビュー社,19948)福田忠彦:視覚補助系の機能(1)(2).生体情報論,p106-136,朝倉書店,19979)蒲山俊夫,松崎浩:眼精疲労.新臨床眼科全書,第2巻B(市川宏編),p189-203,金原出版,199310)吉武良治:VDT作業の作業環境管理のすすめ方.VDT作業と健康障害(和田攻監修),p98-108,産業医学振興財団,200511)小山文彦,北條敬,大月健郎ほか:脳血流99mTc-ECDSPECTを用いたうつ病像の客観的評価.日職災医誌56:122-127,200812)中村芳子:眼精疲労の診断と対策.あたらしい眼科14:1319-1326,1997るが,毛様体筋は休んでいるわけではなく緊張と弛緩をくり返している.このような調節微動の粗大化を特徴とする所見は,短時間の視作業負荷によって誘発されることはまれである.眼精疲労症例では,瞳孔動揺もまた動きが粗大になる,あるいは固視微動が顕在化し固視動揺が起こることも知られている3).以上のことから,眼精疲労は「視覚情報処理速度が低下し出力量が減ったときに,それをカバーすべく,高位中枢からモーター制御系に不当で無駄な賦活化指令が出ること」により発症するのではないかと推測する.臨床の場で最も身近に「不当で無駄な指示」に遭遇するのが老視初期の眼精疲労症例である.正視あるいは軽度遠視の個体は「網膜像のボケは焦点調節によって必ず解消される」と学習している.したがって,水晶体硬化のために調節応答が悪くなり情報処理効率が低下した場合にも,まずは調節系賦活化指令によって対処しようとするはずである.最良の対策は近用眼鏡処方により「見える」状態から「容易に見える」状態に戻すことであるが,眼鏡に対する抵抗が強く,裸眼ではどうしても見えなくなって眼鏡をかけるようになるまで眼精疲労が続く症例もある.さらに全年齢を通じて中枢の判断を誤らせる要因となるのが,情報社会における「生きること≒見ること」という構図である.視覚情報処理の効率低下は,能動的に生きるための障壁であり容認できないといった状況がみられる.このため,疲れても見ることを休めずに眼精疲労をひき起こすケースも少なくないと思われる.おわりに日本経済新聞社がインターネット調査会社マクロミルを通じて,1日1時間以上パソコンを使用する成人男女を対象に2009年10月に行ったアンケート調査(有効回答数1,032)の結果では,ディスプレイを見ていて「目に疲れや症状を感じることがある」と回答した人は83%と,8割を超えていた.そのうち医師の診断を仰いだ

序説:眼の疲れ

2010年3月31日 水曜日

———————————————————————-Page10910-1810/10/\100/頁/JCOPYVDT(visualdisplayterminal)作業とドライアイの視点から鴨居瑞加先生と坪田が解説した.もうひとつの眼の疲れの大きな原因である調節障害については仁泉会医学研究所の加藤桂一郎先生に解説をお願いした.ドライアイと調節障害の2つの病態は眼の疲れと最も関連するといわれており,まずは臨床的にもこれらを十分評価することが必要となる.治療としてもまずは対応すべき領域である.さらに従来より眼の疲れの原因と考えられてきた間欠性外斜視については,浜松医科大学の土屋陽子・佐藤美保両先生に治療法も含めて解説をお願いした.また,身体と眼の疲れについて梶田眼科の梶田雅義先生に執筆をお願いした.サプリメントなどの全身的アプローチによって眼精疲労が軽減できる可能性など新しい視点が学べると思う.40代以降の眼の疲れとして基本中の基本である老視との関連については南青山アイクリニックの井手武先生に,そして過矯正など医原性の眼の疲れを起こす可能性のある眼鏡については岡山大学の長谷部聡先生に丁寧に解説していただいた.これらの特集によって眼の疲れのかなりの部分がカバーされる.眼の疲れを訴えて受診する患者数は多く,今では眼精疲労はひとつの国民病にまでなろうとしている.コンピュータや携帯端末の普及によって眼は酷使されており,眼精疲労増加の原因となっている.従来眼の疲れや慢性的に起きる眼精疲労に対しての診断や治療に対しての研究は少なく,臨床でのエビデンスに基づいた対応は難しかった.しかしながら眼精疲労への理解が進み,一部は身体全体のストレスとの関連もあるものの,多くのものはドライアイや調節力障害,そして外斜視などの眼の問題であることがわかってきた.失明には至らないことが多いため,従来軽視されてきた感もあるが,quali-tyoflifeの重要性が認識されるようになり,眼科領域での不定愁訴の第一番に位置する眼の疲れに対しても理解が進みつつあると考えられる.眼の疲れへの眼科学的アプローチが始まりつつあるのだ.そこで今回は“眼の疲れ”という観点から特集を組んだ.まずは眼の疲れ総論としてNTT西日本関西健康管理センタの中村芳子先生にレビューをお願いした.そして近年増加中のドライアイとの関連について慶應義塾大学眼科の(1)279眼●序説あたらしい眼科27(3):279280,2010眼の疲れFatigueoftheEye坪田一男*木下茂**———————————————————————-Page2280あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(2)超高齢化社会,VDT作業環境の増大,視覚情報化社会となってますます眼の疲れは社会的に大きな問題になりつつある.国民調査によれば不定愁訴のうち,腰痛,肩こりに並んで眼の疲れは常に上位を占める問題となっており,特にVDTユーザーにおいては効率の低下ばかりでなく,うつ病や離職の原因にもなりかねないなど単なる眼の問題にとどまらない場合もある.これから増えることはあっても減る可能性は少ない“眼の疲れ”を訴える患者さんに対して本特集が少しでもお役にたてば幸いである.お申込方法:おとりつけの書店,また,その便宜のない場合は直接弊社あてご注文ください.メディカル葵出版年間予約購読ご案内あたらしい眼科Vol.27月刊/毎月30日発行A4変形判総140頁定価/通常号2,415円(本体2,300円+税)(送料140円)増刊号6,300円(本体6,000円+税)(送料204円)年間予約購読料32,382円(増刊1冊含13冊)(本体30,840円+税)(送料弊社負担)最新情報を,整理された総説として提供!眼科手術Vol.23(本体2,400円+税)(送料160円)年間予約購読料10,080円(本体9,600円+税)(4冊)(送料弊社負担)日本眼科手術学会誌特集】毎号特集テーマと編集者を定め,基本的事項と境界領域についての解説記事を掲載.【原著】眼科の未来を切り開く原著論文を医学・薬学・理学・工学など多方面から募って掲載.【連載】セミナー(写真・コンタクトレンズ・眼内レンズ・屈折矯正手術・緑内障・眼感染アレルギーなど)/新しい治療と検査/眼科医のための先端医療他【その他】トピックス・ニュース他毎号の【特集】あらゆる眼科手術のそれぞれの時点における最も新しい考え方を総説の形で読者に伝達.【原著】査読に合格した質の高い原著論文を掲載.【その他】トピックス・ニューインストルメント他株式会社〒1130033東京都文京区本郷2395片岡ビル5F振替00100569315電話(03)38110544http://www.medical-aoi.co.jp

光干渉断層計による黄斑部網膜厚 ―屈折,眼軸長の影響―

2010年2月28日 日曜日

270 ( 132)あたらしい眼科Vol. 27,No. 2,2010 0910-1810/10/\100/頁/JC(O0P0Y)《原著》 あたらしい眼科 27(2):270.273,2010cはじめに光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)1,2)は黄斑疾患における病態の観察だけでなく,黄斑浮腫などの治療効果の判定3)などにも用いることができる有用な機器である.強度近視眼では,特に後局部で網膜は薄く変性していると考えられており4),屈折が網膜厚に関与している可能性が考えられる.そこで筆者らは,OCT を用い正常眼を対象に屈〔別刷請求先〕髙橋慶子:〒228-8555 相模原市北里1 丁目15 番1 号北里大学医学部眼科学教室Reprint requests:Keiko Takahashi, Department of Ophthalmology, Kitasato University School of Medicine, 1-15-1 Kitasato,Sagamihara-shi 228-8555, JAPAN光干渉断層計による黄斑部網膜厚―屈折,眼軸長の影響―髙橋慶子清水公也柳田智彦大本文子中西基庄司信行永野幸一山口純北里大学医学部眼科学教室Retinal Thickness of Macula as Evaluated by Optical Coherence Tomography─ Influence of Refractive Error and Axial Length─Keiko Takahashi, Kimiya Shimizu, Tomohiko Yanagita, Fumiko Ohmoto, Motoi Nakanishi, Nobuyuki Shouji,Kouichi Nagano and Jyun YamaguchiDepartment of Ophthalmology, Kitasato University School of Medicine目的:Optical coherence tomography(OCT)を用い,黄斑部網膜厚に対する屈折と眼軸長の影響を検討する.対象:186 例186 眼(男性84 眼,女性102 眼)の年齢4.59 歳(28.8±19.1 歳)を対象とした.屈折は+8.50..11.50 D(.0.93±3.96 D),眼軸長は19.90.29.36 mm(24.02±1.97 mm)であった.OCT3000TM で網膜厚を測定し,屈折と眼軸長との相関を調べた.結果:屈折の近視化とfoveal minimum は正の相関を示したが,fovea とは相関がなかった.Inner/outer 領域の4 象限では負の相関を示した.また,眼軸長ではfoveal minimum と正の相関を示したが,inner 領域のtemporal,superior,inferior とouter 領域の4 象限で負の相関を示した.Fovea とnasal inner では相関はなかった.結論:屈折の近視化,眼軸の延長に伴いfoveal minimum は厚くなり,nasal inner 以外の inner/outer 領域では薄くなった.Purpose:To evaluate the retinal thickness of the macula by optical coherence tomography(OCT)of eyeswith different refractive errors and axial lengths. Methods:The study involved 186 eyes of 186 patients, rangingin age from 4 to 59 years(mean age:29 years), with spherical equivalence ranging from +8.50 to .11.50diopters(mean spherical equivalence:.0.93 diopters), and axial length ranging from 19.90 to 29.36 mm(meanaxial lengths:24.02 mm). The retinal thickness of the macula was measured by OCT3000TM, and correlations torefraction and axial length were evaluated. Results:Although retinal thickness in the foveal minimum wasinversely correlated with the spherical equivalence, the fovea showed no correlation. All quadrants of the inner/outer retina were significantly positive in correlation. Regarding correlation to axial length, retinal thickness in thefoveal minimum was directly proportional;the temporal, superior and inferior quadrants of the inner retina, andall quadrants of the outer retina, were inversely correlated. The fovea and the nasal quadrant of the inner retinashowed no correlation with axial length. Conclusion:With myopic change and longer axial length, the retinalthickness at the foveal minimum became thicker, but the inner/outer retina became thinner, excluding the nasalquadrant of the inner retina.〔Atarashii Ganka(Journal of the Eye)27(2):270.273, 2010〕Key words:光干渉断層計,黄斑部網膜厚,屈折,眼軸長.optical coherence tomography,retinal thickness ofmacula, refractive errors, axial lengths.(133) あたらしい眼科Vol. 27,No. 2,2010271折,眼軸長が黄斑部網膜厚に及ぼす影響を検討した.I対象および方法対象眼に屈折異常以外の眼疾患を有さない186 例186 眼(男性84 眼,女性102 眼)で年齢は4.59 歳(平均±標準偏差:28.8±19.1 歳),矯正視力は1.0 以上,乱視は2.00D 未満で中心固視が可能なものとした.屈折度は+8.50..11.50 D(.0.93±3.96 D),眼軸長は19.90.29.36 mm(24.02±1.97 mm)であった.網膜厚測定にはOCT3000TM(Carl Zeiss)の黄斑部網膜厚定量解析プログラムFast macular thickness を用いた.画質を示す信頼係数signal strength は6 以上のものを採用した.このプログラムによって測定される黄斑各部位を図1 に示す.黄斑部網膜厚の測定領域は, foveal minimum(測定部位中央の中心窩領域),fovea(中心部から直径1 mm 領域),inner retina(中心部から直径1.3 mm 領域),outer retina(中心部から直径3.6 mm 領域)に分けられ,うちinnerretina とouter retina ではtemporal,superior,nasal,inferiorの4 象限に分けて網膜厚が算出される.屈折測定にはオ10 5 0 0 -5 -10 -15屈折(D)y=-0.4558x+23.59r2=0.8496眼軸(mm)10203040図 1Fast macular thickness プログラムによる黄斑測定部位(1 mm)①:Foveal minimum②:Fovea③:Temporal inner④:Superior inner⑤:Nasal inner⑥:Inferior inner⑦:Temporal outer⑧:Superior inner⑨:Nasal outer⑩:Inferior outer(3 mm)(6 mm)⑦ ③ ② ⑤ ⑨①③ ②④⑤⑥⑦⑧⑨⑩図 2屈折と眼軸の分布(r=.0.922, p<0.0001)網膜厚(μm)網膜厚(μm)網膜厚(μm)網膜厚(μm)FoveaTemporal innerFoveal minimum Average inner Average outer屈折(D) 屈折(D) 屈折(D) 屈折(D)網膜厚(μm)網膜厚(μm)網膜厚(μm)網膜厚(μm)屈折(D) 屈折(D) 屈折(D) 屈折(D)網膜厚(μm)網膜厚(μm)網膜厚(μm)網膜厚(μm)屈折(D) 屈折(D) 屈折(D) 屈折(D)010020030040010 5 0 -5 -10 -15 010020030040010 5 0 -5 -10 -15 010020030040010 5 0 -5 -10 -15 010020030040010 5 0 -5 -10 -15010020030040010 5 0 -5 -10 -15 010020030040010 5 0 -5 -10 -15 010020030040010 5 0 -5 -10 -15 010020030040010 5 0 -5 -10 -15010020030040010 5 0 -5 -10 -15 010020030040010 5 0 -5 -10 -15 010020030040010 5 0 -5 -10 -15 010020030040010 5 0 -5 -10 -15Superior inner Nasal inner Inferior innerTemporal outer Superior outer Nasal outer Inferior outer図 3黄斑部網膜厚と屈折の分布272あたらしい眼科Vol. 27,No. 2,2010 (134)ートレフラクトメータARK-700A(NIDEK)を用い,乱視を有するものは等価球面値を屈折度とした.眼軸長測定にはIOLMasterTM(Carl Zeiss)を用いた.両者の相関にはPearson’scorrelation coefficient を用いた.II結果今回測定をした186 例186 眼の年齢,屈折,眼軸長に性差はなかった(表1).屈折と眼軸長の関係を図2 に示す.両者は強く相関した(r=.0.922, p<0.0001).Fast macular thickness プログラムから算出された数値をもとにした網膜厚と屈折の関係を図3 に示す.Foveal minimumでは屈折の近視化とともに網膜厚は厚くなり(r=0.179, p=0.0144),inner retina 全象限(temporal;r=0.173, p=0.0175,superior;r=0.247, p=0.0006,nasal;r=0.166, p=0.0232,inferior;r=0.196, p=0.0070) とouter retina 全象限(temporal;r=0.579, p<0.0001,superior;r=0.462, p<0.0001,nasal;r=0.462, p<0.0001,inferior;r=0.462, p<0.0001)で,屈折の近視化とともに網膜厚は減少した.Fovea(r=.0.117, p=0.1115)では相関はなかった.図4 に網膜厚と眼軸長との結果を示す.Foveal minimumでは眼軸長の延長とともに網膜厚は厚くなり(r=0.209, p=0.0041),inner retina のtemporal(r=.0.148, p=0.0435),superior(r=.0.214, p=0.0032),inferior(r=.0.150, p=0.0406)とouter retina 全象限(temporal;r=.0.602, p<0.0001,superior;r=.0.489, p<0.0001,nasal;r=.0.363, p<0.0001,inferior;r=.0.536, p<0.0001)では眼軸長の延長とともに網膜厚は減少した.Fovea(r=0.127, p=0.0830)とnasal inner(r=.0.126, p=0.0874)では相関網膜厚(μm)FoveaTemporal innerFoveal minimum Average inner Average outerSuperior inner Nasal inner Inferior innerTemporal outer Superior outer Nasal outer Inferior outer400300200100015 25 35網膜厚(μm)400300200100015 25 35網膜厚(μm)400300200100015 25 35網膜厚(μm)400300200100015 25眼軸長(mm) 眼軸長(mm) 眼軸長(mm) 眼軸長(mm)35網膜厚(μm)400300200100015 25 35網膜厚(μm)400300200100015 25 35網膜厚(μm)400300200100015 25 35網膜厚(μm)400300200100015 25眼軸長(mm) 眼軸長(mm) 眼軸長(mm) 眼軸長(mm)35網膜厚(μm)400300200100015 25 35網膜厚(μm)400300200100015 25 35網膜厚(μm)400300200100015 25 35網膜厚(μm)400300200100015 25眼軸長(mm) 眼軸長(mm) 眼軸長(mm) 眼軸長(mm)35図 4黄斑部網膜厚と眼軸の分布表 1対象者の内訳男性(n=85) 女性(n=102) p 値年齢(歳) 28.7±19.6 29.3±19.0 0.9578屈折(D) .1.04±4.22 .0.84±3.76 0.6446眼軸(mm) 24.31±2.06 23.77±1.85 0.0714Mann-Whitney’s U 検定:Not significantly.(135) あたらしい眼科Vol. 27,No. 2,2010273はなかった.III考按屈折の近視化に伴いfoveal minimum は厚く,innerretina とouter retina の全象限は薄くなり,眼軸長の延長に伴いfoveal minimum は厚く,inner retina のtemporal,superior,inferior 象限とouter retina 全象限で薄くなるという結果を得た.過去にLam ら5)は屈折の近視化,眼軸長の延長に伴いfoveal minimum は厚くなり,outer macula 全象限で薄くなったと報告しており,筆者らと同様の結果であった.図2 で示すとおり,今回の対象者は屈折と眼軸長が相関を示し,軸性による屈折異常であることがわかる.以前より屈折の近視化に伴い強膜は厚く網膜が薄くなることがわかっており4,6,7),眼軸長の延長により網膜が引き伸ばされ,結果として網膜が薄くなると推察できる.特に網膜の菲薄化は周辺部において著明であると考えられていた8)が,今回の結果より中心窩から3.6 mm 領域においても網膜の菲薄化がみられ,その変化は中心窩近傍まで及んでいると考えられる.Foveal minimum が厚くなるという結果は,Lam ら5),Lim ら9)と同様であり,近視眼の動物モデルで中心窩の視細胞外節が伸展していたとの報告10)から,Lam らは視細胞の移動が関与しているのではないかと推察しているが,今回測定に用いたOCT3000TM は視細胞内節外節接合部までの距離を網膜厚として算出しており,その関与は明らかでない.なぜfoveal minimum のみ厚くなったのかは不明だが,測定中の固視ずれなどにより最も薄い中心窩領域では周辺網膜の厚さの影響を受けやすく厚く測定されてしまう可能性もあげられ,今後のさらなる検討が必要と考える.一方で,網膜厚が屈折や眼軸長と相関がなかったとの報告もある11,12).過去の報告が異なる要因として,対象としている人数,人種などが異なることに加え,測定機器のバージョンやその測定部位,スキャン方法がさまざまであることがあげられる.黄斑厚は女性のほうが薄いことがわかっている12)が,過去の屈折や眼軸長の影響を検討した報告5,9,11)では性差による影響を考慮せずに検討されていた.今回の測定では対象者の年齢,屈折,眼軸に性差はなく,より正しい屈折,眼軸による網膜変化を捉えることができたと考えられる.OCT を用いた黄斑部網膜厚測定は,今回の対象であった.11.00D.+8.50 D の屈折範囲でも測定可能な他覚的検査装置であった.OCT を測定の際には屈折や眼軸長が網膜厚に影響することを念頭に測定値を評価すべきと考える.文献1) Huang D, Swanson ER, Lin CP et al:Optical coherencetomography. Science 254:1178-1181, 19912) Puliafito CA, Hee HR, Schuman JS et al:Optical CoherenceTomography of Ocular Disease. p3-15, Slack, Thorofare,NJ, 19963) Sanchez-Tocino H, Alvarez-Vidal A, Maldolnado MJ etal:Retinal thickness study with optical coherence tomographyin patients with diabetes. Invest Ophthalmol Vis Sci43:1588-1594, 20024) Yanoff M, Fine BS:Ocular pathology. In Spencer WHed:A Text and Atlas, p513-514, Harper&Row, Philadelphia,19825) Lam DS, Leung KS, Mohamed S et al:Reginal variationsin the relationship between macular thickness measurementsand myopia. Invest Ophthalmol Vis Sci 48:376-382, 20076) Spencer WH:Ophthalmic Pathology. In Spencer WHed:An Atlas and Textbook. 3rd ed, p395-400, WB Saunders,Philadelphia, 19857) Curtin BJ:The posterior staphyloma of pathologic myopia.Trans Am Ophthalmol Soc 75:67-86, 19778) 中条真也,小林雄二,江見和雄ほか:超音波による強度近視眼の網膜,脈絡膜,強膜の厚さの生体計測について(予報).日眼会誌 87:70-73, 19839) Lim MC, Hoh ST, Foster PJ et al:Use of optical coherencetomography to assess variations in macular retinalthickness in myopia. Invest Ophthalmol Vis Sci 46:974-978, 200510) Liang H, Crewther DP, Crewther SG et al:A role forphotoreceptor outer segments in the induction of deprivationmyopia. Vision Res 35:1217-1225, 199511) Tewari HK, Wagh VB, Sony P et al:Macular thicknessevaluation using the optical coherence tomography in normalIndian eyes. Indian J Ophthalmol 52:199-204, 200412) Wakitani Y, Sasoh M, Sugimoto M et al:Macular thicknessmeasurement in healthy subjects with different axiallengths using optical coherence tomography. Retina 23:177-182, 2003***270(13あ2)たらしい眼科Vol.27,No.2,20100910-1810/10/\100/頁/JC(O0P0Y)《原著》あたらしい眼科27(2):270.273,2010cはじめに光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)1,2)は黄斑疾患における病態の観察だけでなく,黄斑浮腫などの治療効果の判定3)などにも用いることができる有用な機器である.強度近視眼では,特に後局部で網膜は薄く変性していると考えられており4),屈折が網膜厚に関与している可能性が考えられる.そこで筆者らは,OCTを用い正常眼を対象に屈〔別刷請求先〕髙橋慶子:〒228-8555相模原市北里1丁目15番1号北里大学医学部眼科学教室Reprintrequests:KeikoTakahashi,DepartmentofOphthalmology,KitasatoUniversitySchoolofMedicine,1-15-1Kitasato,Sagamihara-shi228-8555,JAPAN光干渉断層計による黄斑部網膜厚―屈折,眼軸長の影響―髙橋慶子清水公也柳田智彦大本文子中西基庄司信行永野幸一山口純北里大学医学部眼科学教室RetinalThicknessofMaculaasEvaluatedbyOpticalCoherenceTomography─InfluenceofRefractiveErrorandAxialLength─KeikoTakahashi,KimiyaShimizu,TomohikoYanagita,FumikoOhmoto,MotoiNakanishi,NobuyukiShouji,KouichiNaganoandJyunYamaguchiDepartmentofOphthalmology,KitasatoUniversitySchoolofMedicine目的:Opticalcoherencetomography(OCT)を用い,黄斑部網膜厚に対する屈折と眼軸長の影響を検討する.対象:186例186眼(男性84眼,女性102眼)の年齢4.59歳(28.8±19.1歳)を対象とした.屈折は+8.50..11.50D(.0.93±3.96D),眼軸長は19.90.29.36mm(24.02±1.97mm)であった.OCT3000TMで網膜厚を測定し,屈折と眼軸長との相関を調べた.結果:屈折の近視化とfovealminimumは正の相関を示したが,foveaとは相関がなかった.Inner/outer領域の4象限では負の相関を示した.また,眼軸長ではfovealminimumと正の相関を示したが,inner領域のtemporal,superior,inferiorとouter領域の4象限で負の相関を示した.Foveaとnasalinnerでは相関はなかった.結論:屈折の近視化,眼軸の延長に伴いfovealminimumは厚くなり,nasalinner以外のinner/outer領域では薄くなった.Purpose:Toevaluatetheretinalthicknessofthemaculabyopticalcoherencetomography(OCT)ofeyeswithdifferentrefractiveerrorsandaxiallengths.Methods:Thestudyinvolved186eyesof186patients,ranginginagefrom4to59years(meanage:29years),withsphericalequivalencerangingfrom+8.50to.11.50diopters(meansphericalequivalence:.0.93diopters),andaxiallengthrangingfrom19.90to29.36mm(meanaxiallengths:24.02mm).TheretinalthicknessofthemaculawasmeasuredbyOCT3000TM,andcorrelationstorefractionandaxiallengthwereevaluated.Results:Althoughretinalthicknessinthefovealminimumwasinverselycorrelatedwiththesphericalequivalence,thefoveashowednocorrelation.Allquadrantsoftheinner/outerretinaweresignificantlypositiveincorrelation.Regardingcorrelationtoaxiallength,retinalthicknessinthefovealminimumwasdirectlyproportional;thetemporal,superiorandinferiorquadrantsoftheinnerretina,andallquadrantsoftheouterretina,wereinverselycorrelated.Thefoveaandthenasalquadrantoftheinnerretinashowednocorrelationwithaxiallength.Conclusion:Withmyopicchangeandlongeraxiallength,theretinalthicknessatthefovealminimumbecamethicker,buttheinner/outerretinabecamethinner,excludingthenasalquadrantoftheinnerretina.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(2):270.273,2010〕Keywords:光干渉断層計,黄斑部網膜厚,屈折,眼軸長.opticalcoherencetomography,retinalthicknessofmacula,refractiveerrors,axiallengths.(133)あたらしい眼科Vol.27,No.2,2010271折,眼軸長が黄斑部網膜厚に及ぼす影響を検討した.I対象および方法対象眼に屈折異常以外の眼疾患を有さない186例186眼(男性84眼,女性102眼)で年齢は4.59歳(平均±標準偏差:28.8±19.1歳),矯正視力は1.0以上,乱視は2.00D未満で中心固視が可能なものとした.屈折度は+8.50..11.50D(.0.93±3.96D),眼軸長は19.90.29.36mm(24.02±1.97mm)であった.網膜厚測定にはOCT3000TM(CarlZeiss)の黄斑部網膜厚定量解析プログラムFastmacularthicknessを用いた.画質を示す信頼係数signalstrengthは6以上のものを採用した.このプログラムによって測定される黄斑各部位を図1に示す.黄斑部網膜厚の測定領域は,fovealminimum(測定部位中央の中心窩領域),fovea(中心部から直径1mm領域),innerretina(中心部から直径1.3mm領域),outerretina(中心部から直径3.6mm領域)に分けられ,うちinnerretinaとouterretinaではtemporal,superior,nasal,inferiorの4象限に分けて網膜厚が算出される.屈折測定にはオ10500-5-10-15屈折(D)y=-0.4558x+23.59r2=0.8496眼軸(mm)10203040図1Fastmacularthicknessプログラムによる黄斑測定部位(1mm)①:Fovealminimum②:Fovea③:Temporalinner④:Superiorinner⑤:Nasalinner⑥:Inferiorinner⑦:Temporalouter⑧:Superiorinner⑨:Nasalouter⑩:Inferiorouter(3mm)(6mm)⑦③②⑤⑨①③②④⑤⑥⑦⑧⑨⑩図2屈折と眼軸の分布(r=.0.922,p<0.0001)網膜厚(μm)網膜厚(μm)網膜厚(μm)網膜厚(μm)FoveaTemporalinnerFovealminimumAverageinnerAverageouter屈折(D)屈折(D)屈折(D)屈折(D)網膜厚(μm)網膜厚(μm)網膜厚(μm)網膜厚(μm)屈折(D)屈折(D)屈折(D)屈折(D)網膜厚(μm)網膜厚(μm)網膜厚(μm)網膜厚(μm)屈折(D)屈折(D)屈折(D)屈折(D)01002003004001050-5-10-1501002003004001050-5-10-1501002003004001050-5-10-1501002003004001050-5-10-1501002003004001050-5-10-1501002003004001050-5-10-1501002003004001050-5-10-1501002003004001050-5-10-1501002003004001050-5-10-1501002003004001050-5-10-1501002003004001050-5-10-1501002003004001050-5-10-15SuperiorinnerNasalinnerInferiorinnerTemporalouterSuperiorouterNasalouterInferiorouter図3黄斑部網膜厚と屈折の分布272あたらしい眼科Vol.27,No.2,2010(134)ートレフラクトメータARK-700A(NIDEK)を用い,乱視を有するものは等価球面値を屈折度とした.眼軸長測定にはIOLMasterTM(CarlZeiss)を用いた.両者の相関にはPearson’scorrelationcoefficientを用いた.II結果今回測定をした186例186眼の年齢,屈折,眼軸長に性差はなかった(表1).屈折と眼軸長の関係を図2に示す.両者は強く相関した(r=.0.922,p<0.0001).Fastmacularthicknessプログラムから算出された数値をもとにした網膜厚と屈折の関係を図3に示す.Fovealminimumでは屈折の近視化とともに網膜厚は厚くなり(r=0.179,p=0.0144),innerretina全象限(temporal;r=0.173,p=0.0175,superior;r=0.247,p=0.0006,nasal;r=0.166,p=0.0232,inferior;r=0.196,p=0.0070)とouterretina全象限(temporal;r=0.579,p<0.0001,superior;r=0.462,p<0.0001,nasal;r=0.462,p<0.0001,inferior;r=0.462,p<0.0001)で,屈折の近視化とともに網膜厚は減少した.Fovea(r=.0.117,p=0.1115)では相関はなかった.図4に網膜厚と眼軸長との結果を示す.Fovealminimumでは眼軸長の延長とともに網膜厚は厚くなり(r=0.209,p=0.0041),innerretinaのtemporal(r=.0.148,p=0.0435),superior(r=.0.214,p=0.0032),inferior(r=.0.150,p=0.0406)とouterretina全象限(temporal;r=.0.602,p<0.0001,superior;r=.0.489,p<0.0001,nasal;r=.0.363,p<0.0001,inferior;r=.0.536,p<0.0001)では眼軸長の延長とともに網膜厚は減少した.Fovea(r=0.127,p=0.0830)とnasalinner(r=.0.126,p=0.0874)では相関網膜厚(μm)FoveaTemporalinnerFovealminimumAverageinnerAverageouterSuperiorinnerNasalinnerInferiorinnerTemporalouterSuperiorouterNasalouterInferiorouter4003002001000152535網膜厚(μm)4003002001000152535網膜厚(μm)4003002001000152535網膜厚(μm)40030020010001525眼軸長(mm)眼軸長(mm)眼軸長(mm)眼軸長(mm)35網膜厚(μm)4003002001000152535網膜厚(μm)4003002001000152535網膜厚(μm)4003002001000152535網膜厚(μm)40030020010001525眼軸長(mm)眼軸長(mm)眼軸長(mm)眼軸長(mm)35網膜厚(μm)4003002001000152535網膜厚(μm)4003002001000152535網膜厚(μm)4003002001000152535網膜厚(μm)40030020010001525眼軸長(mm)眼軸長(mm)眼軸長(mm)眼軸長(mm)35図4黄斑部網膜厚と眼軸の分布表1対象者の内訳男性(n=85)女性(n=102)p値年齢(歳)28.7±19.629.3±19.00.9578屈折(D).1.04±4.22.0.84±3.760.6446眼軸(mm)24.31±2.0623.77±1.850.0714Mann-Whitney’sU検定:Notsignificantly.(135)あたらしい眼科Vol.27,No.2,2010273はなかった.III考按屈折の近視化に伴いfovealminimumは厚く,innerretinaとouterretinaの全象限は薄くなり,眼軸長の延長に伴いfovealminimumは厚く,innerretinaのtemporal,superior,inferior象限とouterretina全象限で薄くなるという結果を得た.過去にLamら5)は屈折の近視化,眼軸長の延長に伴いfovealminimumは厚くなり,outermacula全象限で薄くなったと報告しており,筆者らと同様の結果であった.図2で示すとおり,今回の対象者は屈折と眼軸長が相関を示し,軸性による屈折異常であることがわかる.以前より屈折の近視化に伴い強膜は厚く網膜が薄くなることがわかっており4,6,7),眼軸長の延長により網膜が引き伸ばされ,結果として網膜が薄くなると推察できる.特に網膜の菲薄化は周辺部において著明であると考えられていた8)が,今回の結果より中心窩から3.6mm領域においても網膜の菲薄化がみられ,その変化は中心窩近傍まで及んでいると考えられる.Fovealminimumが厚くなるという結果は,Lamら5),Limら9)と同様であり,近視眼の動物モデルで中心窩の視細胞外節が伸展していたとの報告10)から,Lamらは視細胞の移動が関与しているのではないかと推察しているが,今回測定に用いたOCT3000TMは視細胞内節外節接合部までの距離を網膜厚として算出しており,その関与は明らかでない.なぜfovealminimumのみ厚くなったのかは不明だが,測定中の固視ずれなどにより最も薄い中心窩領域では周辺網膜の厚さの影響を受けやすく厚く測定されてしまう可能性もあげられ,今後のさらなる検討が必要と考える.一方で,網膜厚が屈折や眼軸長と相関がなかったとの報告もある11,12).過去の報告が異なる要因として,対象としている人数,人種などが異なることに加え,測定機器のバージョンやその測定部位,スキャン方法がさまざまであることがあげられる.黄斑厚は女性のほうが薄いことがわかっている12)が,過去の屈折や眼軸長の影響を検討した報告5,9,11)では性差による影響を考慮せずに検討されていた.今回の測定では対象者の年齢,屈折,眼軸に性差はなく,より正しい屈折,眼軸による網膜変化を捉えることができたと考えられる.OCTを用いた黄斑部網膜厚測定は,今回の対象であった.11.00D.+8.50Dの屈折範囲でも測定可能な他覚的検査装置であった.OCTを測定の際には屈折や眼軸長が網膜厚に影響することを念頭に測定値を評価すべきと考える.文献1)HuangD,SwansonER,LinCPetal:Opticalcoherencetomography.Science254:1178-1181,19912)PuliafitoCA,HeeHR,SchumanJSetal:OpticalCoherenceTomographyofOcularDisease.p3-15,Slack,Thorofare,NJ,19963)Sanchez-TocinoH,Alvarez-VidalA,MaldolnadoMJetal:Retinalthicknessstudywithopticalcoherencetomographyinpatientswithdiabetes.InvestOphthalmolVisSci43:1588-1594,20024)YanoffM,FineBS:Ocularpathology.InSpencerWHed:ATextandAtlas,p513-514,Harper&Row,Philadelphia,19825)LamDS,LeungKS,MohamedSetal:Reginalvariationsintherelationshipbetweenmacularthicknessmeasurementsandmyopia.InvestOphthalmolVisSci48:376-382,20076)SpencerWH:OphthalmicPathology.InSpencerWHed:AnAtlasandTextbook.3rded,p395-400,WBSaunders,Philadelphia,19857)CurtinBJ:Theposteriorstaphylomaofpathologicmyopia.TransAmOphthalmolSoc75:67-86,19778)中条真也,小林雄二,江見和雄ほか:超音波による強度近視眼の網膜,脈絡膜,強膜の厚さの生体計測について(予報).日眼会誌87:70-73,19839)LimMC,HohST,FosterPJetal:Useofopticalcoherencetomographytoassessvariationsinmacularretinalthicknessinmyopia.InvestOphthalmolVisSci46:974-978,200510)LiangH,CrewtherDP,CrewtherSGetal:Aroleforphotoreceptoroutersegmentsintheinductionofdeprivationmyopia.VisionRes35:1217-1225,199511)TewariHK,WaghVB,SonyPetal:MacularthicknessevaluationusingtheopticalcoherencetomographyinnormalIndianeyes.IndianJOphthalmol52:199-204,200412)WakitaniY,SasohM,SugimotoMetal:Macularthicknessmeasurementinhealthysubjectswithdifferentaxiallengthsusingopticalcoherencetomography.Retina23:177-182,2003***

光干渉断層計による黄斑部網膜厚 ―部位別,年齢の影響―

2010年2月28日 日曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY (127) 265《原著》 あたらしい眼科 27(2):265.269,2010cはじめにOCT3000TM(Carl Zeiss)は,非接触式でかつ短時間に画像取得が可能であることに加え,高度な解像度を持ち備え,網膜断層像の取得だけでなく,網膜厚の計測,視神経乳頭周囲の神経線維層厚の測定,視神経乳頭の形状解析などに用いることが可能である.とりわけ網膜厚に関しては,黄斑疾患における病態,病期,治療効果の判定のみならず1),緑内障2)や弱視3)との関連も報告され,今後,黄斑部網膜厚は黄斑疾患以外においても重要な指標になると考えられる.OCT による黄斑部網膜厚の検討では,年齢変化による影響の有無についてはいまだ一定の見解が得られていない4.7).強度近視眼において網膜の菲薄化を認めたとの報告8)や部位〔別刷請求先〕髙橋慶子:〒228-8555 相模原市北里1 丁目15 番1 号北里大学医学部眼科学教室Reprint requests:Keiko Takahashi, Department of Ophthalmology, Kitasato University School of Medicine, 1-15-1 Kitasato,Sagamihara-shi 228-8555, JAPAN光干渉断層計による黄斑部網膜厚―部位別,年齢の影響―髙橋慶子清水公也柳田智彦大本文子中西基庄司信行永野幸一山口純北里大学医学部眼科学教室Retinal Thickness of Macula as Evaluated by Optical Coherence Tomography─ Sectional and Age Influences─Keiko Takahashi, Kimiya Shimizu, Tomohiko Yanagita, Fumiko Ohmoto, Motoi Nakanishi, Nobuyuki Shouji,Kouichi Nagano and Jyun YamaguchiDepartment of Ophthalmology, Kitasato University School of Medicine目的:Optical coherence tomography(OCT)を用い黄斑部網膜厚に対する年齢の影響を検討する.対象および方法:年齢4.81 歳(平均±標準偏差,44.5±24.4 歳),屈折±2.00 D 以内の153 例153 眼を対象に,OCT3000TM を用いて黄斑部網膜厚を測定し,部位による差と年齢との関係を調べた.結果:Foveal minimum:155.9 μm,fovea:193.8 μm,average inner retina:270.3 μm,average outer retina:240.5 μm であった.Inner retina 領域においてはtemporal が薄かった.Outer retina 領域ではtemporal,inferior,superior,nasal の順に薄かった.Foveal minimum,fovea,inner retina で年齢との相関がなかったが,outer retina ではtemporal,superior,inferior で負の相関を認めた.結論:OCT による黄斑部網膜厚は,temporal が他象限に比べ薄く,またouter retina のtemporal,superior,inferior で年齢の増加に伴い薄くなった.Purpose:To evaluate normal macular thickness by optical coherence tomography(OCT)and determine itsrelation to age. Methods:This study comprised 153 eyes of 153 healthy volunteers, ranging in age from 4 to 81years(mean age:44 years), with refractive equivalents up to±2.00 diopters. Retinal thickness was measured byOCT3000TM. Results:The foveal minimum was 155.9 μm, fovea 193.8 μm, average inner retina 270.3 μm and averageouter retina 240.5 μm. In the inner retinal area, the temporal quadrant was significantly thinner than the otherquadrants. In the outer retinal area, the retina thinned in the quadrant order:temporal, inferior, superior andnasal. Although no correlation was found between age and thickness of the foveal minimum, fovea and inner retina,the outer retina became thinner as age increased. Thicknesses of the temporal, superior and inferior quadrants ofthe outer retina were inversely correlated with age. Conclusion:According to the retinal thickness of the maculaas evaluated by OCT, both the inner and outer temporal quadrants were thinner than in the other quadrants. Theouter areas of the temporal, superior and inferior retinal quadrants thinned as age increased.〔Atarashii Ganka(Journal of the Eye)27(2):265.269, 2010〕Key words:光干渉断層計,黄斑部網膜厚,年齢変化.optical coherence tomography, retinal thickness of macula,age related.266あたらしい眼科Vol. 27,No. 2,2010 (128)により屈折の影響を受けるとする報告があり9),黄斑部網膜厚の検討においては屈折の影響を除外する必要があると考えられる.そこで今回,筆者らは屈折の影響を考慮し,黄斑部網膜厚の部位による差と加齢による影響を検討した.I対象および方法屈折異常以外の眼疾患を有さない4.81 歳(平均±標準偏差,44.5±24.4 歳)の153 例153 眼(男性72 眼, 女性81眼),屈折度+2.00..2.00 D,乱視2.00 D 未満とし,矯正視力が1.0 以上で中心固視が可能であったものを対象とした.測定眼は基本的に右眼とし,上記の条件に合わない場合にのみ左眼とした.黄斑部網膜厚測定にはOCT3000TM のFast macular thickness プログラムを用い,画質を示すsignalstrength(信頼係数)が6 以上の測定を採用した.黄斑部網膜厚の測定領域は,foveal minimum thickness(測定画面中央の最も薄い部位),fovea thickness(中心部の直径1mm 部位),inner retina thickness(直径1.3 mm 部位),outer retina thickness(直径3.6 mm 部位)とし, うちinner retina とouter retina ではtemporal, superior, nasal,inferior の4 象限に分け検討した.黄斑部網膜厚の評価は,各部位における平均網膜厚を算出し,inner とouter retina 領域はKruskal-Wallis 検定を用いて4 象限の比較を行った.そこで有意差が得られた場合はScheffe 多重比較法を行った.黄斑部網膜厚の年齢変化は,各部位でSpearman 順位相関を用い検討した.II結果各部位における網膜厚(平均±標準偏差,μm)は,fovealminimum:155.9±16.0,fovea:193.8±17.8,averageinner retina:270.3±13.3(temporal inner:261.7±13.8,superior inner:274.1±13.9,nasal inner:274.1±14.7,inferior inner:271.3±14.6),average outer retina:240.5±13.9(temporal outer:225.5±14.2,superior outer:242.2±15.7,nasal outer:261.1±16.2,inferior outer:Foveal minimum FoveaInner retina Outer retina0 20 40 60 80400300200100年齢(歳)網膜厚(μm)0 20 40 60 80400300200100年齢(歳)網膜厚(μm)0 20 40 60 80400300200100年齢(歳)網膜厚(μm)0 20 40 60 80400300200100年齢(歳)網膜厚(μm)図 3各部位における年齢との相関Superior Nasal網膜厚(μm)象限部位Temporal Inferiorp-valueT vs S< 0.0001**T vs N< 0.0001**T vs I< 0.0001**S vs N> 0.9999S vs I0.3788N vs I0.3893** p<0.01(Scheffe 多重比較法)******3002000図 1Inner retina thickness における各象限の比較**** ********Superior Nasal網膜厚(μm)象限部位Temporal Inferiorp-valueT vs S< 0.0001**T vs N< 0.0001**T vs I0.0003 **S vs N< 0.0001**S vs I< 0.0001**N vs I< 0.0001**** p<0.01(Scheffe 多重比較法)3002000図 2Outer retina thickness における各象限の比較(129) あたらしい眼科Vol. 27,No. 2,2010267233.1±15.1)であった.Inner retina において4 象限を比較したものを図1 に,outer retina の4 象限を比較した結果を図2 に示す.Inner retina ではtemporal のみ他象限に比して薄かった(p<0.0001).Outer retina においてはnasal が最も厚く,以下superior,inferior,temporal の順で薄かった(p<0.0001).網膜厚と年齢との関係は,foveal minimum(r=0.153, p=0.1309),fovea(r=0.154, p=0.1928),inner retina(r=.0.024, p=0.4586)の各部位で相関はみられなかった(図3).Inner retina では,temporal inner(r=.0.027, p=0.4323),superior inner(r=.0.029, p=0.5178),nasalinner(r=0.003, p=0.7537),inferior inner(r=.0.036, p=0.3710)のいずれの部位も年齢との相関はみられなかった(図4).Outer retina では年齢の増加に伴い網膜厚が薄くなる負の相関がみられた(r=.0.222, p=0.0019).Outerretina 領域を各象限に分けると,temporal outer(r=.0 20 40 60 80年齢(歳)網膜厚(μm)400300200100Temporal inner Superior innerNasal inner Inferior inner0 20 40 60 80年齢(歳)網膜厚(μm)4003002001000 20 40 60 80年齢(歳)網膜厚(μm)400300200100 0 20 40 60 80年齢(歳)網膜厚(μm)400300200100図 4Inner retina における各象限網膜厚と年齢の分布0 20 40 60 80年齢(歳)網膜厚(μm)400300200100 0 20 40 60 80年齢(歳)網膜厚(μm) 4003002001000 20 40 60 80年齢(歳)網膜厚(μm)400300200100 0 20 40 60 80年齢(歳)網膜厚(μm)400300200100Temporal outer Superior outerNasal outer Inferior outer図 5Outer retina における各象限網膜厚と年齢の分布268あたらしい眼科Vol. 27,No. 2,2010 (130)0.222, p=0.0012),superior outer(r=.0.244, p=0.0004),inferior outer(r=.0.25, p=0.0013)の各部位で負の相関がみられたが,nasal outer(r=.0.098, p=0.0500)では相関を認めなかった(図5).III考按黄斑部網膜厚は中心小窩で最も薄く,直径1.3 mm 領域で厚くなり,6 mm 領域にかけて薄くなることがわかった.これらの結果は,ほぼ同じ測定領域である金井らの報告4)およびChan らの報告7)と同様の結果であり(表1),解剖学的所見と一致するものであった.黄斑部網膜厚の部位による差は,inner retina ではtemporalが他象限に比べ薄く,outer retina ではnasal が最も厚くtemporal が最も薄かった.以前より耳側に比べて鼻側が厚いと報告されており,helium-neon laser を用いて測定したものでは鼻側網膜は耳側よりも25%厚いと述べられている10).また,ヒト網膜伸展標本を用いた研究においても神経節細胞の分布密度が耳側より鼻側のほうが高いことが確認されており11),これらの報告は筆者らの結果を裏付けるものである.黄斑部網膜厚の年齢変化については,OCT 機種の違いや測定部位,対象者の屈折もさまざまであることから,いまだ表 1黄斑部網膜厚の報告眼(例) 機種屈折(D) FovealminimumFovea(1 mm)Inner retina(3 mm)Outer retina(6 mm)金井ら,20024) 47(47) OCT2000TM +3.00..3.00 142±15 T:246±20 NS NSS:257±18N:246±20I:255±18Tewari HK et al, 20045) 340(170) OCT3000TM +5.80..8.00 149±21 181±18 T:224±25 T:209±17S:255±21 S:228±16N:258±21 N:245±17I:256±19 I:218±15Gobel et al, 20026) 159(205) OCT2000TM +7.25..11.13 142±18 T:272±13 NS NSS:268±11N:258±8I:270±10Chan A et al, 20067) 37(37) OCT3000TM +6.00..6.00 182±23 212±20 S:255±17 S:239±16I:260±15 I:210±13T:251±13 T:210±14N:267±16 N:246±14Present study 153(153) OCT3000TM +2.00..2.00 156±16 194±18 T:262±14 T:226±14S:274±14 S:242±16N:274±15 N:261±16I:271±15 I:233±15T:Temporal,S:Superior,N:Nasal,I:Inner. NS:Not significantly.表 2年齢変化の報告眼数(人) 年齢(歳) 屈折(D) 機種年齢との相関金井ら,20024) 47(47) 21.79 +3.00..3.00 OCT2000TM 中心小窩では相関なし中心小窩から0.25 mm(耳・上・鼻・下側) 相関なし中心小窩から0.75 mm(耳・上・鼻・下側) 負相関あり中心小窩から1.0 mm(耳・上・鼻・下側) 負相関ありTewari HK et al, 20045) 340(170) 10.78 +5.80..8.00 OCT3000TM Minimum foveal thickness 正相関ありAverage foveal thickness 相関なしGobel et al, 20026) 159(205) 13.92 +7.25..11.13 OCT2000TM Mean retinal thickness 相関なしChan A et al, 20067) 37(37) 22.71 +6.0..6.0 OCT3000TM Foveal thickness 相関なしPresent study 153(153) 4.81 +2.00..2.00 OCT3000TM Foveal minimum thickness 相関なしFovea thickness 相関なしInner retina thickness(耳・上・鼻・下側) 相関なしOuter retina thickness(耳・上・下側) 負相関ありOuter retina thickness(鼻側) 相関なし(131) あたらしい眼科Vol. 27,No. 2,2010269一定の見解が出ていない(表2).今回筆者らはouter retinaにおいて耳側,上側,下側で負の相関がみられたが,それ以外の部位では変化はみられなかった.対象者の屈折も軽度で筆者らと類似した測定領域である金井ら4)は,中心小窩においては変化がないものの中心小窩から0.75 mm,1 mm における網膜厚で加齢とともに減少したと述べている.これらの領域は今回測定したinner retina に相当する領域であるが,本研究ではinner retina において年齢による影響はみられなかった.結果の異なる理由として,金井らの用いたOCT2000TM は各測定部位を手動で任意の2 点間を設定しその距離を網膜厚とする方法であるのに対し,今回の測定に用いたOCT3000TM では自動的に測定部位の網膜厚が算出されるという測定機種の違いが考えられる.今回の結果より,年齢の増加に伴い網膜厚に減少がみられたことに関しては,Alamouti ら12)は網膜厚減少の約80%は網膜神経線維層の減少によるものと論じている.神経線維層は年0.44 μm の減少12)が起こることから,網膜内層,特に網膜神経線維層の菲薄化が影響して,網膜厚が減少した可能性が考えられる.本研究で計測した黄斑部網膜厚は,屈折による影響を無視しうる軽度屈折異常のみを対象としており,より正確な網膜厚の部位による差と年齢変化を捉えられたと考える.これらは今後,眼科疾患の重要な指標となるであろう.文献1) Sanchez-Tocino H, Alvarez-Vidal A, Maldonado MJ etal:Retinal thickness study with optical coherence tomographyin patients with diabetes. Invest Ophthalmol Vis Sci43:1588-1594, 20022) Guedes V, Schumun JS, Hertzmark E et al:Opticalcoherence tomography measurement of macular andnerve layer thickness in normal and glaucomatous humaneyes. Ophthalmology 110:177-189, 20033) Altintas O, Yuksel N, Ozkan B et al:Thickness of theretinal nerve fiber layer, macular thickness, and macularvolume in patients with strabismic amblyopia. J PediatrOphthalmol Strabismus 42:216-221, 20054) 金井要,阿部友厚,村山耕一郎ほか:正常眼における黄斑部網膜厚と加齢性変化.日眼会誌 106:162-165, 20025) Tewari HK, Wagh VB, Sony P et al:Macular thicknessevaluation using the optical coherence tomography in normalIndian eyes. Indian J Ophthalmol 52:199-204, 20046) Gobel W, Hartmann F, Haigis W:Determination of retinalthickness in relation to the age and axial length usingoptical coherence tomography. Ophthalmology 98:157-162, 20017) Chan A, Duker JS, Ko TH et al:Normal macular thicknessmeasurements in healthy eyes using stratus opticalcoherence tomography. 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