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硝子体手術のワンポイントアドバイス 96.膨張性ガスによる眼圧の推移(初級編)

2011年5月31日 火曜日

あたらしい眼科Vol.28,No.5,20116670910-1810/11/\100/頁/JCOPY●硝子体手術時の膨張性ガス濃度の調整硝子体手術ではガスタンポナーデ時にしばしば六フッ化硫黄(SF6)や八フッ化プロパン(C3F8)などの膨張性ガスを使用する.眼内をこれらのガス混合気体で充満させた場合,眼圧上昇をきたさないで,最も長期に眼内に滞留する濃度はSF6が約20%,C3F8が約12.14%とされている.よって硝子体手術終了時のガス濃度の調整には慎重を期する必要がある.インフュージョンポート抜去後に100%の膨張性ガスをワンショットで注入する場合には,その時点の眼内の空気量を推測したうえで,適量の膨張性ガスを注入する必要がある.通常,正視眼では硝子体腔内の容積は約4mlであるが,近視眼あるいは水晶体の有無などで,容積は大きくなる.インフュージョンポート抜去前に,別の大きめの注射筒に上記の濃度で膨張性ガスを作製しておき,灌流圧を低くした状態で眼内を灌流する方法は比較的正確な濃度調整が可能となる.●硝子体手術なしで膨張性ガスをワンショットで注入する場合の眼圧変動黄斑円孔網膜.離あるいは加齢黄斑変性などで黄斑部網膜下血腫をきたした症例では,硝子体手術を施行せずに,硝子体腔内に膨張性ガスをワンショットで注入し,その後伏臥位を保持させることがある.この場合は,通常100%SF6を0.5ml,100%C3F8を0.3ml程度注入することが多い.注入量が0.5mlであれば,注入直後の眼圧は50.60mmHgに上昇するが,房水流出率が正常の眼球であれば,通常30分以内で30mmHg以下に低下する.しかし,なかには隅角線維柱帯に何らかの病変を有し,房水流出抵抗が高くなっている症例では,眼(65)圧の下降が十分に得られない.その結果,網膜中心動脈閉塞症などの重篤な合併症をきたす危険性があるため,前房穿刺で適宜眼圧をその場で下降させておくべきである.もう一つの問題は,膨張性ガスによるその後の眼圧上昇である.一般にSF6は硝子体腔内に注入後8.10時間で約2倍の体積に膨張するとされている.注入量が0.5mlと少量であれば,8.10時間の経過中にSF6自体の膨張が眼圧に与える影響は少ない(図1)が,量が多いと影響を受ける.正常眼の房水流出率を約0.28×10.3ml/min/mmHgとすると,眼圧が15mmHgの場合,8時間で眼外へ約2.0mlの房水を排出することができる.さらに逆算すれば,房水流出率が正常であれば,100%SF6を1.0mlまでワンショットで注入しても,SF6の膨張による眼圧上昇は避けられることになる1).しかし,これはあくまでも房水流出率が正常であると仮定した場合の話で,もともと隅角癒着や線維柱帯の器質的な変化により房水流出率が低下している症例では,非常に危険である.筆者は100%SF6を落屑症候群の症例に0.6ml注入したところ,翌日に網膜中心動脈閉塞症をきたした苦い経験がある.よってSF6などの膨張性ガスを100%濃度にしてワンショットで注入する場合には,やはり0.5ml以下にしておいたほうが無難である.文献1)池田恒彦,田野保雄:ガスタンポナーデ時の眼圧の推移について.眼紀39:606-609,1988硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載96膨張性ガスによる眼圧の推移(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1100%SF60.5mlを硝子体腔内にワンショットで注入した場合の眼圧の推移SF6自体が徐々に膨張する8.10時間の間は,房水流出率が正常であれば,眼圧に与える影響は通常少ない.12345678605040302010経過時間(hr)眼圧(mmHg)

眼科医のための先端医療 125.視細胞における繊毛の長さの制御異常は網膜変性をひき起こす ―繊毛の長さを調節するキナーゼMak―

2011年5月31日 火曜日

あたらしい眼科Vol.28,No.5,20116650910-1810/11/\100/頁/JCOPY視細胞病変に関わる繊毛関連因子多くの種類の細胞には繊毛とよばれる微小管を基盤とした構造が細胞表面に存在し,細胞外からのシグナルをキャッチするアンテナとして機能しています.網膜視細胞にも繊毛が存在しており,外節軸糸と結合繊毛により構成されています(図1左).視細胞の外節は繊毛が発達した構造であり1),光センサーとして働いています.ロドプシンなどの光感知蛋白質は繊毛を経由して外節へと運ばれますが,繊毛における蛋白質の輸送機構はintraflagellartransport(IFT)とよばれています.興味深いことにIFTに関わる蛋白質や微小管結合蛋白質retinitispigmentosa1(RP1)をはじめとするいくつかの繊毛に存在する蛋白質の変異は視細胞の細胞死をひき起こし,網膜色素変性症などの視機能の低下や失明を伴う疾患をひき起こすことが知られています2,3).Makによる視細胞の繊毛の長さの制御筆者らは視細胞で特異的に発現する遺伝子を同定するためにマイクロアレイによるスクリーニングを行い,機能未知のセリン・スレオニンキナーゼmalegermcellassociatedkinase(Mak)が視細胞に特異的に発現することを見いだしました4).まずMakの視細胞での局在を調べたところMakは繊毛に局在していることがわかりました.Makの生体内での機能を調べるために,筆者らはMak欠損マウスの解析を行いました.Mak欠損マウスの網膜を観察すると,網膜色素変性症に似た視細胞の脱落が起こることがわかりました.Mak欠損マウスの視細胞の繊毛を調べると野生型マウスと比較してその長さが過剰に伸びていました(図1).さらに生後14日目のMak欠損マウスでは通常では外節に局在するロドプシンが細胞体にも蓄積していることがわかりました.これらのことからMak欠損マウスでは繊毛が過剰に伸びることによってIFTの障害が起き,ロドプシンなどの本来ならば外節へと運ばれるべき蛋白質が輸送されにくくなり,細胞死がひき起こされる可能性が示唆されました.MakとRP1による繊毛の長さ調節Mak欠損マウスの解析から,Makは視細胞の繊毛の長さを制御することがわかりました.この繊毛の長さの制御はどのようなメカニズムで起こるのでしょうか?筆者らは視細胞の繊毛においてMakとRP1が共局在することを見いだしました.RP1の変異マウスでは繊毛の長さが短くなることが知られています5)ので,筆者らはMakとRP1の機能に関連があるのではないかと考えました.まずMakとRP1を培養細胞に発現させたところ,これら2つの因子は拮抗的に繊毛の長さを調節することが明らかとなりました.また,生化学的な実験によりMakはRP1と相互作用し,RP1をリン酸化することがわかりました.これらの結果から,MakはRP1の機能を制御することによって視細胞の繊毛の長さを調節することが明らかとなりました.繊毛の長さ維持と視細胞の細胞死Mak欠損マウスは,進行性の視細胞の脱落を示す網膜色素変性症のモデルマウスであり,同時にMak欠損マウスにおいては視細胞の繊毛の過剰な伸長が見られま(63)◆シリーズ第125回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊茶屋太郎*1佐藤茂*2古川貴久*1(*1大阪バイオサイエンス研究所発生生物学部門第4研究部/*2東大阪市立総合病院眼科)視細胞における繊毛の長さの制御異常は網膜変性をひき起こす─繊毛の長さを調節するキナーゼMak─図1野生型マウスとMak欠損マウスの視細胞の繊毛視細胞の繊毛は外節軸糸と結合繊毛により構成される.Mak欠損マウスでは繊毛が過剰に長くなりIFTに障害が生じることによって細胞死がひき起こされると考えられる.野生型マウスの視細胞Mak欠損マウスの視細胞外節外節軸糸結合繊毛内節繊毛が過剰に長くなる細胞死視物質が細胞体に蓄積666あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011した.このような視細胞の繊毛が伸びる表現型は,これまでで初めての報告であり興味深い点です.Mak欠損マウスとは対照的に繊毛の長さが短くなるRP1変異マウスでも視細胞の細胞死がひき起こされる6)ことから,繊毛の適切な長さの維持が視細胞の生存に必要であることが示唆されます.今回筆者らが報告したMakの機能解析は網膜色素変性症の病態メカニズムの解明に貢献すると考えられ,これらの疾患に対する診断や治療法の確立に向けての足掛かりになる可能性が期待されます.文献1)TokuyasuK,YamadaE:Thefinestructureoftheretinastudiedwiththeelectronmicroscope.IV.Morphogenesisofoutersegmentsofretinalrods.JBiophysBiochemCytol6:225-230,19592)HartongDT,BersonEL,DryjaTP:Retinitispigmentosa.Lancet368:1795-1809,20063)FliegaufM,BenzingT,OmranH:Whenciliagobad:ciliadefectsandciliopathies.NatRevMolCellBiol8:880-893,20074)OmoriY,ChayaT,KatohKetal:Negativeregulationofciliarylengthbyciliarymalegermcell-associatedkinase(Mak)isrequiredforretinalphotoreceptorsurvival.ProcNatlAcadSciUSA107:22671-22676,20105)LiuQ,ZuoJ,PierceEA:Theretinitispigmentosa1proteinisaphotoreceptormicrotubule-associatedprotein.JNeurosci24:6427-6436,20046)GaoJ,CheonK,NusinowitzSetal:Progressivephotoreceptordegeneration,outersegmentdysplasia,andrhodopsinmislocalizationinmicewithtargeteddisruptionoftheretinitispigmentosa-1(RP1)gene.ProcNatlAcadSciUSA99:5698-5703,2002(64)■「視細胞における繊毛の長さの制御異常は網膜変性をひき起こす」を読んで■─繊毛の長さを調節するキナーゼMak─今回は茶屋太郎先生らが,視細胞に繊毛があること,その長さを調節する遺伝子が特定されたこと,その異常が網膜色素変性をひき起こすことをわかりやすく解説してくださいました.視細胞に繊毛があることを臨床医として知識で知っていても日常診療のなかで自覚することはほとんどありませんが,網膜色素変性の患者さんは頻繁に診察する機会があります.網膜色素変性は多くの遺伝子異常によりひき起こされる疾患であり,その原因遺伝子は多く同定されています.今回の茶屋先生の紹介されたたいへん美しいお仕事は,ヒトの疾患である網膜色素変性が機能のわかっている遺伝子の異常としてとらえられたことに意義があります.すなわち,視細胞の繊毛の長さを規定する遺伝子Makが網膜色素変性症の病態メカニズムの解明に貢献することが考えられ,診断や治療法の進歩に貢献する可能性があることが総説のなかでも述べられています.ぜひ,この研究から網膜色素変性の新しい治療法がつくり出されることを切に願うものです.このような研究のもう一つの意義は,視細胞の機能,構造の研究にMakと視細胞繊毛の長さの関連の研究はとても貢献するということです.視細胞の繊毛は解剖の教科書には触れられていますが,その長さの異常が遺伝子異常により起こることが解明されたのですから,構造と機能,そしてその異常としての疾患の分子病態などが非常に特徴的な細胞構造の研究から明らかになりつつあることがわかります.特に繊毛の長さを規定する遺伝子が存在し,網膜の視機能にきわめて重要な影響を与えるということは生命科学的な基本的な知見を豊かにすることにもつながり,細胞生物学の進歩に貢献すると考えられます.このように視細胞に特殊と思われている構造体の研究から非常に応用性の高い,生命科学的な基本的な知見が積み上げられること,それが疾患の病態解明という形で人類に貢献しつつ生命科学を進歩させるというのは今後の眼科,視覚科学のもつ無限の可能性を確信させるにたる素晴らしいご業績と考えます.山形大学医学部眼科山下英俊☆☆☆

緑内障:光干渉断層計(OCT)による緑内障進行評価

2011年5月31日 火曜日

あたらしい眼科Vol.28,No.5,20116610910-1810/11/\100/頁/JCOPY●緑内障進行評価の意義緑内障による網膜神経節細胞の障害は,眼底検査によって視神経乳頭や網膜の形態変化として観察され,自覚症状として視野障害をきたし,ゆっくりと不可逆的に進行する.進行速度は症例によって大きく異なり,眼圧下降を主とした治療による進行抑制効果は予測できない.緑内障の進行を評価することは疾患の予後を予測し,治療効果を評価することであり,緑内障診療と臨床研究には必須のプロセスである.現在まで,緑内障の進行評価はおもに自動視野計の検査結果をもとに行われてきた.視野は緑内障眼の視機能を直接反映し,過去の長期間のデータを利用できるメリットがある.一方で,視野検査は自覚的検査であり結果の変動が大きく,比較的長い検査時間と被検者の協力を必要とするため,検査を頻繁に行うことはむずかしい.視野をエンドポイントとした臨床研究には長い観察期間が必要で,臨床の場面では信頼性のある視野検査結果が得られないために進行評価が困難な患者も少なくない.これに対し,光学的機器によって視神経乳頭や網膜の経時的な形態変化を解析する方法は,再現性や客観性に優れることが期待されている.形態変化は神経節細胞の細胞死や機能障害の変化と必ずしも一致しているわけではなく,初期の機器では測定精度や再現性の問題があり,特に進行評価においては信頼性が十分とはいえなかった.しかし近年,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)が従来のタイムドメイン(TD)-OCTからスペクトラルドメイン(SD)-OCTに進歩し,緑内障の診断においてこれまでの画像解析装置より優れた能力をもつことが報告されている.緑内障進行評価においても,今後SD-OCTの有用性が期待される.●OCTによる進行評価の方法SD-OCTによる緑内障眼の評価方法として,①視神経乳頭(ONH)周囲の神経線維層(NFL)解析,②ONHの形状解析,③黄斑部網膜の解析,の3つが行われている(表1).ONH周囲のNFL厚を解析して神経線維層欠損を検出する方法はTD-OCTによる緑内障診断方法として確立されており,測定速度が大幅に高速化したSD-OCTでは,輪状の範囲を短時間で,あるいはONHを含んだ広い範囲を面状に撮影することができる.解像度の向上に加え,眼球運動などによる測定誤差の減少,広範囲の撮影によりONH位置を撮影後に同定することで再現性が向上し,診断における有用性が報告されてい(59)●連載131緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也131.光干渉断層計(OCT)による緑内障進行評価青山裕加間山千尋東京大学医学部附属病院眼科スペクトラルドメインOCTの進歩により視神経乳頭周囲の神経線維層厚,視神経乳頭の形態,黄斑部網膜内各層の層厚を詳細に評価することが可能になり,良好な再現性と視野検査結果との相関が認められている.今後さらに十分な検討が必要であるが,緑内障の診断に加え進行評価においてもOCTが利用できる可能性がある.表1SD.OCTによる緑内障性視神経症の評価方法と,考えられるメリット・デメリット緑内障性視神経症の評価方法メリットデメリットONH周囲網膜の解析ONHに収束するすべての神経線維を評価でき,緑内障に特徴的な眼底写真上のNFLDや視野障害との一致が確認しやすい大血管や近視眼におけるONHの傾斜の影響を受けやすいONHの形状解析ONH周囲の網膜と同時にデータを得られる個体差が大きく,微細な変化に対して鋭敏ではない黄斑部網膜の解析血管など個体差の影響が小さく,視野障害出現以前の障害を鋭敏に評価できる可能性がある緑内障以外の黄斑疾患や加齢変化の影響を受けやすく,黄斑部を通らない神経線維の障害は評価できないONH:視神経乳頭,NFLD:神経線維層欠損.662あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011る1~3)が,進行評価の検討は不十分である.また,SDOCTでONHを含めた広範囲の撮影をすることで,上記のようなNFL厚に加えてONHのトポグラフィが同時に得られ,Heidelbergretinatomograph(HRT)で行われるようなONHの形状解析が可能となるが,病期との相関はNFL厚に劣る傾向があり,進行評価における有用性は高くないと思われる.これらに加えSD-OCTにより初めて,黄斑部を広範囲に解析し網膜内のNFLや神経節細胞層などの層厚を評価することが可能となった(図1).緑内障で黄斑部に視野障害が出現するのは比較的進行例であるが,むしろ明らかな視野障害のないpreperimetric期とよばれるごく早期の段階から層厚の減少が認められ,層厚と視野の感度が相関することが報告されている4,5).筆者らの行った検討でも黄斑部網膜内各層の層厚は,網膜全層や外層を除き緑内障の病期,視野のmeandeviation値と良好な相関を示し,特にNFLやNFL・神経節細胞層・内網状層の和(GCC)で相関が強かった(図2).●今後の展望OCTの進歩によって緑内障性視神経障害のより詳細な評価が可能になり,特に視野による評価の困難な症例や,preperimetric期を含む早期例では視野に代わる検査になりうる可能性がある.一方で長期にわたってOCTによる進行評価を行うには,データの再現性の確認や白内障,硝子体牽引などの加齢変化の影響,また病期を通じての視野と対応した進行様式の検討が十分になされる必要がある.病期や症例に応じてONH周囲と黄斑部のデータを併用することが有用と考えられ,今後ハードとソフトのさらなる進歩が期待できるが,長期の進行評価にはそれまで蓄積されたデータとの互換性を確(60)保する必要もある.文献1)SungKR,KimDY,ParkSBetal:ComparisonofretinalnervefiberlayerthicknessmeasuredbyCirrusHDandStratusopticalcoherencetomography.Ophthalmology116:1264-1270,20092)ParkSB,SungKR,KangSYetal:ComparisonofglaucomadiagnosticCapabilitiesofCirrusHDandStratusopticalcoherencetomography.ArchOphthalmol127:1603-1609,20093)LeungCK,LamS,WeinrebRNetal:Retinalnervefiberlayerimagingwithspectral-domainopticalcoherencetomography:analysisoftheretinalnervefiberlayermapforglaucomadetection.Ophthalmology117:1684-1691,20104)KimNR,LeeES,SeongGJetal:Structure-functionrelationshipanddiagnosticvalueofmacularganglioncellcomplexmeasurementusingFourier-domainOCTinglaucoma.InvestOphthalmolVisSci51:4646-4651,20105)ChoJW,SungKR,LeeSetal:Relationshipbetweenvisualfieldsensitivityandmacularganglioncellcomplexthicknessasmeasuredbyspectral-domainopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci51:6401-6407,2010図2緑内障の病期(上),視野のmeandeviation(MD)値と黄斑部網膜内各層厚(下)の相関神経線維層,神経節細胞層を中心とした黄斑部網膜内各層の層厚は,視野障害のないpreperimetric期を含む緑内障の病期や,視野のMD値と良好な相関を示す.350300250200150100500RetinaOuterretinaGCCGCL+GCLIPLNFLPreperimetric初期中期後期正常緑内障層厚(μm)50-5-10-15-20-25MD(dB)RetinaOuterretinaGCCGCLGCL+IPLNFL350300250200150100500層厚(μm)図1SD.OCTによる黄斑部網膜内の層厚の解析黄斑部を広範囲にスキャンし,網膜内の各層を区別して層厚を自動的に測定することができる.

屈折矯正手術:後房型有水晶体眼内レンズ眼の調節力

2011年5月31日 火曜日

あたらしい眼科Vol.28,No.5,20116590910-1810/11/\100/頁/JCOPY後房型有水晶体眼内レンズ(phakicIOL;VisianICLTM:STAARSurgical社)は,2010年2月2日に厚生労働省より正式に認可を受けた.これまで屈折矯正手術のスタンダードであるlaserinsitukeratomileusis(LASIK)に比較して,高い安全性・有効性だけでなく術後視機能の優位性が報告されている1,2).理由としては,第一にLASIKは角膜中央部の切除により,prolateからoblateへの角膜形状変化に伴い球面収差が増加することやフラップ作製や照射ずれによりコマ収差が増加すること,第二にphakicIOLでは瞳孔面上で矯正を行うため,網膜像の倍率変化を生じにくいことが考えられる.角膜創傷治癒反応も受けにくいため,予測精度・安定性もきわめて良好である3).当初高度近視における屈折矯正方法として注目されていたが,中等度近視まで適応が拡大しつつある.通常の眼内レンズ挿入術と異なり,本術式は水晶体を温存する手術手技であり,調節機能への影響は少ないと考えられてきたが,毛様溝に固定されるレンズであり,調節能に影響を及ぼす可能性が否定できない(図1).しかしながら,これまでICLTM術後の調節機能は検討されていない.今回筆者らは,ICLTM挿入術を施行した症例40例69眼(年齢36.0±10.2歳,術前屈折度数は.10.1±3.5D,平均±標準偏差)を対象として,術前および術後1,3,6,12カ月の時点において,定屈折近点計(D’ACOMO,WOC社)により自覚的調節力を各5回ずつ測定した.(57)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載132監修=木下茂大橋裕一坪田一男132.後房型有水晶体眼内レンズ眼の調節力神谷和孝北里大学医学部眼科後房型有水晶体眼内レンズ挿入術後は一過性に調節力は減少するが,経過とともに回復する.本機序としてレンズ固定に伴う毛様体筋への一過性の機能低下が示唆された.また,本レンズ挿入眼においても,高齢者や白内障の発症は調節力低下の要因となり得る.図1後房型有水晶体眼内レンズ(ICLTM)のシェーマ水晶体を温存する手術手技であるが,直接毛様溝にレンズが固定されるため,調節能に影響を及ぼす可能性がある.6.36D***4.89D4.98D5.16D5.72D調節力(D)術前1カ月3カ月6カ月1年1086420図2調節力の経時的変化ICLTM挿入術後に一過性に調節力は減少するが,経過とともに回復する.*p<0.05.Pearsonの相関係数,r=-0.665,p<0.01調節力(D)年齢(歳)2030405060151050図3ICLTM術後の調節力と年齢ICLTM挿入眼においても,加齢に伴い調節力は有意に低下する.660あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011その結果,調節力は術前6.36±3.94Dから術後1,3,6,12カ月で,それぞれ4.89±2.72,4.98±2.67,5.16±2.72,5.72±2.85Dと有意に変化した(p=0.02,ANOVA)(図2).術前と術後1,3,6カ月の調節力に有意差を認めた(p=0.004,0.007,0.01,Fisher’sLSDtest)4).ICLTM術前および術後1年における年齢と調節力は有意な負の相関を認めた(Pearsonの相関係数,r=.0.665,.0.803,p<0.01)(図3)4).今回の結果より,ICLTM挿入術後は一過性に調節力は減少するが,経過とともに回復することが明らかとなった.もともとの研究の発端は,ICLTM術直後に遠方視力が良好であるにもかかわらず,近方視に不満を訴える症例が散見され,時間経過とともに不満が消失する印象をもったことにある.本結果から,時間経過とともに改善することを客観的に示せたので,患者や医師にとっても有益な情報であると考える.本機序としてレンズ固定による毛様体筋への一過性の機能低下が示唆された.また,ICLTM挿入眼においても年齢は調節力低下の要因となることが示された.各年代別の調節力は20.50歳代でそれぞれ8.06,5.42,3.42,2.24Dであった(図4).自験例における白内障術後の眼内レンズ挿入眼の調節力が2.01Dであることから考えると,50歳代以降の症例に対するICLTM手術は水晶体を温存するメリットは少ない.さらに,経過観察中に白内障を発症した症例2眼と非発症の67眼の平均調節力はそれぞれ2.15,5.82Dであった(図5).よって白内障を発症した眼では,視力低下の有無にかかわらず,調節力が低下しやすいと考えられた.一方,レンズサイズと調節力には有意な相関を認めなかった(Spearmanの順位相関係数,r=.0.19,p=0.13)(図6).適切なレンズサイズを選択すれば,調節力に有意な影響を与えないことが示唆された.文献1)KamiyaK,ShimizuK,AizawaDetal:One-yearfollowupofposteriorchambertoricphakicintraocularlensimplantationformoderatetohighmyopicastigmatism.Ophthalmology2010Jul1.[Epubaheadofprint]2)KamiyaK,ShimizuK,IgarashiAetal:Four-yearfollowupofposteriorchamberphakicintraocularlensimplantationformoderatetohighmyopia.ArchOphthalmol127:845-850,20093)IgarashiA,KamiyaK,ShimizuKetal:Visualperformanceafterimplantablecollamerlensimplantationandwavefront-guidedlaserinsitukeratomileusisforhighmyopia.AmJOphthalmol148:164-170,20094)KamiyaK,ShimizuK,AizawaDetal:Timecourseofaccommodationafterimplantablecollamerlensimplantation.AmJOphthalmol146:674-678,2008(58)Pearsonの相関係数,r=-0.802,p<0.001調節力(D)年齢(歳)2030405060151050図4各年代におけるICLTM術後,白内障術後の調節力の比較50歳代ではICLTM術後の調節力が,白内障術後のそれとほぼ変わらない.0246810121411.51212.5調節力(D)ICLTMサイズ(mm)Spearmanの順位相関係数,r=-0.19,p=0.13図6ICLサイズと調節力ICLTMサイズと調節力は有意な相関を認めない.2眼(3%)67眼(97%)2.15D5.82D86420調節力(D)白内障(+)白内障(-)図5白内障の発症の有無による調節力の比較白内障発症眼では調節力が低下しやすい.

多焦点眼内レンズ:多焦点眼内レンズと後発白内障

2011年5月31日 火曜日

あたらしい眼科Vol.28,No.5,20116570910-1810/11/\100/頁/JCOPYわが国では屈折型多焦点眼内レンズ(IOL)ReZoomR(AMO社)に続き,回折型多焦点IOLTecnismultifocalR(AMO社)とReSTORR(Alcon社)の2種類の新世代の多焦点IOLが承認された.これら新世代の回折型多焦点IOLは,これまで問題となっていたコントラスト感度の低下を抑制することができ,安定して良好な遠近視力を得ることができるようになった.その良好な術後成績についてはすでに多数の報告がなされている1,2).さらに,術後視力に影響を与える因子として後発白内障が指摘されている1).本稿では,多焦点IOL挿入眼において後発白内障により視力低下した症例をもとに,多焦点IOL挿入眼の後発白内障の影響を解説したい.症例患者:59歳,女性.経過:左眼白内障に対し,超音波水晶体乳化吸引術およびIOL挿入術を行い,回折型多焦点IOL,ZM900(AMO社)を.内固定した.術後の視力経過を図1に示す.術後1カ月で遠方視力はVS=1.2(n.c.),裸眼近方(55)●連載⑰多焦点眼内レンズセミナー監修=ビッセン宮島弘子17.多焦点眼内レンズと後発白内障松永次郎宮田和典宮田眼科病院多焦点眼内レンズ(IOL)挿入眼は,単焦点IOLでは問題とならないような軽度の後発白内障でも視機能に影響を受ける.初期の後発白内障では,近方視力や高周波領域のコントラスト感度が低下しやすいため,早期にYAGレーザー後発白内障切開術が必要となることがある.:裸眼近方視力:矯正遠方視力:裸眼遠方視力-0.2-0.100.10.20.31M6M12M18M19MlogMAR視力術後経過期間………………………………………………………………………………..図1多焦点IOL挿入後の視力経過視力は後発白内障の進行に伴い,術後6カ月で裸眼近方視力,12カ月で裸眼遠方視力,18カ月で矯正遠方視力の順に低下していった.YAGレーザー後発白内障切開術により遠近視力とも回復した(矢印は視力低下を示す).30020010050201052.33.51251020501.5361218コントラスト感度空間周波数(c/d)図2術後1カ月の遠方コントラスト感度コントラスト感度は正常領域である.30020010050201052.33.51251020501.5361218コントラスト感度空間周波数(c/d)図3術後6カ月の遠方コントラスト感度コントラスト感度は高周波領域で低下を認めた.658あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011視力は1.0と良好で(図1),遠方コントラスト感度も正常範囲であった(図2).術後6カ月で裸眼および矯正遠方視力は安定していたが,後発白内障により裸眼近方視力は0.6に低下し(図1),遠方コントラスト感度も高周波領域での低下を認めた(図3).以後,後発白内障はさらに進行し,術後12カ月で遠方視力はVS=0.8(1.2)と裸眼視力が低下し(図1),遠方コントラスト感度は高周波領域でさらに低下した(図4).術後18カ月で遠方視力はVS=0.6(0.7)と矯正視力も低下したため,YAGレーザー後発白内障切開術を行い,遠近視力とも改善した(図1).後発白内障が多焦点IOLに及ぼす影響多焦点IOLの後発白内障の発生率は,IOL形状が表面の回折格子以外は単焦点IOLと同じであるため,従来の単焦点IOLと同等であると考えられる.しかし,多焦点IOLの後発白内障に対するYAGレーザー後発白内障切開術の頻度は,単焦点IOLより高いとされる3).多焦点IOL症例では,眼鏡に依存しない良好な裸眼遠近視力が望まれる.そのため,遠方視力のみではなく,近方視力やコントラスト感度など,複数の術後視機能が安定していることが必要である.後発白内障はこれら複数の視機能に影響を与えるため,結果として,多焦点IOLの後発白内障に対するYAGレーザー後発白内障切開術の頻度が高くなるものと考えられている4).多焦点IOLのコントラスト感度については,等価球面度数が小さい場合は,従来の単焦点IOLと差がないことが報告(56)されている5).しかしIOLの構造上,入射光が遠近に二分し,少ないエネルギーで網膜に結像するため,高周波領域においてコントラス感度が低下しやすいことも指摘されている1).そのため,後発白内障のコントラスト感度への影響は,単焦点IOLより大きいことが考えられ,本症例においても初期から,高周波領域でのコントラスト感度低下を認めた.また,近方視力も後発白内障の影響を受けやすく4),本症例でも裸眼近方視力が裸眼遠方視力に先行して低下していた.近方視力が先行して低下する原因については解明されていないが,多焦点IOL挿入眼の近方視時MTF(modulationtransferfunction)は遠方視時MTFに劣ることが報告されており6),近方視時の網膜像は遠方視時に劣るため後発白内障の影響を受けやすいと考えられる.したがって,多焦点IOL挿入眼では,遠方視力低下がない比較的軽度の後発白内障でも,近方視力やコントラスト感度が低下するため,早期にYAGレーザー後発白内障切開術を検討する必要がある.YAGレーザー後発白内障切開術の留意点後発白内障切開術において,レーザー照射時の焦点については,単焦点IOLと同様の焦点で問題なく切開を行うことができる.瞳孔領のIOL光学部の破損を避けるために,円形切開が基本と考えられる.また,瞳孔が開いた状態でも,回折格子が十分機能するように,比較的大きめの切開が必要である.文献1)大木孝太郎:〔多焦点眼内レンズ〕テクニス型多焦点眼内レンズの治療成績.あたらしい眼科25:1066-1070,20082)ビッセン宮島弘子,林研,平容子:アクリソフApodized回折型多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズ挿入成績の比較.あたらしい眼科24:1099-1103,20073)BiberJM,SandovalHP,TrivediRHetal:Comparisonoftheincidenceandvisualsignificanceofposteriorcapsuleopacificationbetweenmultifocalspherical,monofocalspherical,andmonofocalasphericintraocularlenses.JCataractRefractSurg35:1234-1238,20094)ElgoharyMA,BeckingsaleAB:Effectofposteriorcapsularopacificationonvisualfunctioninpatientswithmonofocalandmultifocalintraocularlenses.Eye22:613-619,20085)片岡康志,大谷伸一郎,加賀谷文絵ほか:回折型多焦点眼内レンズ挿入眼の視機能に対する検討.眼科手術23:277-281,20106)ArtalP,MarcosS,NavarroRetal:Throughfocusimagequalityofeyesimplantedwithmonofocalandmultifocalintraocularlenses.OptEmg34:772-779,199530020010050201052.33.51251020501.5361218コントラスト感度空間周波数(c/d)図4術後12カ月の遠方コントラスト感度コントラスト感度は術後6カ月と比べ,高周波領域でさらに低下している.

眼内レンズ:多焦点眼内レンズ挿入眼における硝子体手術時の眼内視認性

2011年5月31日 火曜日

あたらしい眼科Vol.28,No.5,20116550910-1810/11/\100/頁/JCOPY硝子体手術時の眼内透見性は手術の結果を左右する重要なポイントの一つである.さらに60歳以上の高齢者では硝子体手術単独では白内障が進行し手術が必要になるとの報告がある.このため硝子体手術と白内障+眼内レンズ挿入術の同時手術は一般的になっている.あるいは白内障手術後の患者が硝子体手術を受けるケースも増加している.このため,眼内レンズを通した術中の眼底透見性を知ることは硝子体術者にとっても白内障術者にとっても患者にとっても重要である.多焦点眼内レンズ(以下,MF-IOL)は高度先進医療として厚生労働省の承認を受け,手術を行っている施設や症例数も増加しつつある.現在のところMF-IOLの適応は眼底疾患のない症例とされ,進行性の糖尿病網膜症や網膜.離などは禁忌と考えられている.しかし,白内障手術後に網膜.離が発生する確率が増加するなどの報告もあり,症例が増加すると将来的にMF-IOLが挿(53)入された眼が網膜硝子体疾患を発症し硝子体手術が必要となってしまう可能性がある.筆者らは今後必要となるであろうMF-IOLでの硝子体手術を想定して豚眼を用いてシミュレーションを行った.豚眼に超音波水晶体乳化吸引術を行った後,単焦点眼内レンズおよびMF-IOL(回折型および屈折型)を挿入し.内固定した後,23ゲージトロッカーを設置し,3ポートを作製した.硝子体手術用コンタクトレンズを用いて硝子体手術を行った.単焦点眼内レンズでは通常臨床で行っているとおり眼内レンズ光学部を通しての視認性は良好であった.回折型MF-IOLでは前部硝子体処理時,後極観察時ともに光学部中心で回折輪によるわずかな視認性の低下がみられた.視認性の低下は特に眼内レンズに近い前部硝子体の処理時に顕著であった(図1).また,屈折型MF-IOLでは中心の視認性は良好であるが,後極観察時に屈折が変化する部分で網膜血管な宮本武和歌山県立医科大学眼科眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎297.多焦点眼内レンズ挿入眼における硝子体手術時の眼内視認性多焦点眼内レンズでの硝子体手術時の視認性について豚眼を用いて検討した.回折型多焦点眼内レンズでは光学部中心で回折輪による視認性の低下がみられ,屈折型多焦点眼内レンズでは光学部周辺の屈折変化に伴って眼底の像が屈曲していた.いずれも硝子体手術は可能であるが視認性が低下することを念頭に置く必要がある.ACBD図1回折型多焦点眼内レンズ下での硝子体手術中所見A,B:前眼部所見,C,D:眼底所見.いずれも焦点を合わせると(A,C)単焦点と差はないが,少しでも焦点がずれると(B,D)回折輪の部分でグレア様に視認性が低下している.ど眼底の像がわずかに屈曲していた(図2).しかし,いずれも硝子体手術は可能であった.MF-IOL挿入眼ではレンズの形状によって特有の微細な視認性の低下がみられたが,硝子体手術用コンタクトレンズを用いての簡単な硝子体切除は可能であると考える.特に回折型MF-IOLでは回折輪による視認性の低下,屈折型では屈折の変わる部分での像の屈曲がみられた.これらの結果は回折型,屈折型それぞれの眼内レンズを挿入された患者自身の視認性とほぼ同様であった.これらの視認性の低下により,単焦点眼内レンズ挿入眼と比較してMF-IOL挿入眼では内境界膜.離や動静脈血管鞘切開などの微細な操作は困難である可能性がある.MF-IOL挿入眼の硝子体手術に際し,視認性が低下することによって手術が困難となる可能性があることを十分認識して手術にあたる必要がある.特に長眼軸眼においては白内障手術後には網膜.離が発生する確率が上がるとの報告もあり,MF-IOL挿入後に硝子体手術が必要となるケースに遭遇する可能性はある.MF-IOL挿入後には硝子体手術がやや困難になるということを,これから手術を受けようとする患者にも十分説明しておく必要がある.文献1)ErieJC,RaeckerMA,BaratzKHetal:Riskofretinaldetachmentaftercataractextraction,1980-2004:apopulation-basedstudy.Ophthalmology113:2026-2032,20062)SheuSJ,GerLP,HoWL:Lateincreasedriskofretinaldetachmentaftercataractextraction.AmJOphthalmol149:113-119,20103)AlfonsoJF,PuchadesC,Fernandez-VegaLetal:Visualacuitycomparisonof2modelsofbifocalasphericintraocularlenses.JCataractRefractSurg35:672-676,20094)Ferrer-BlascoT,Montes-MicoR,CervinoAetal:Contrastsensitivityafterrefractivelensexchangewithdiffractivemultifocalintraocularlensimplantationinhyperopiceyes.JCataractRefractSurg34:2043-2048,2008ACBD図2屈折型多焦点眼内レンズ下での硝子体手術中所見A:眼内レンズを通してみた硝子体カッター.矢印の部分でカッターが屈曲して見えるB,C,D:眼底所見.通常通り見える部分もある(B)が,血管が屈曲して見えたり(C),焦点の合わせ方によっては血管が二重に見える場合もある(D).

コンタクトレンズ:私のコンタクトレンズ選択法 カラーコンタクトレンズ(その2)

2011年5月31日 火曜日

あたらしい眼科Vol.28,No.5,20116530910-1810/11/\100/頁/JCOPY今回は,虹彩付きカラーコンタクトレンズ(カラーCL)の障害について述べたい.カラーCLには,表1に示したようにいくつかの障害をひき起こしやすい要因がある.前回に述べたように,カラーCLには承認されたものと未承認のものがあるが,承認されたカラーCLであっても透明なCLと同様の眼障害をひき起こす.承認されたカラーCLには,従来型,頻回交換,1日使い捨てなどの装用スケジュールがある.2000年頃,カラーCLは従来型しかなく,透明のソフトCLに比べて寿命が短いという印象があった.当時の消毒方法は煮沸であり,熱により6カ月くらい使用するとオムレツ状に丸まってくるからであった.これは色素とレンズ素材の膨張率の違いによると考える.したがって,筆者は従来型カラーCLの寿命は6カ月程度であると説明し,煮沸消毒ではなく,コールド消毒と蛋白除去の組み合わせを指示してきた.巨大乳頭結膜炎(giantpapillaryconjunctivitis:GPC)を多発しているのも蛋白除去を怠る装用者が多いためと考える.従来型カラーCLは,充血などの症状や障害が起きるまで使用することが多い.それに比べると,頻回交換のカラーCLは障害が少なく,さらに,1日使い捨てのカラーCLは透明なCLと同じくらいの頻度でしか障害を認めない.使用時間が少ないだけでなく,ケアなどの誤用がないためと考える.デザインが問題であったカラーCLもあった.虹彩色(51)渡邉潔ワタナベ眼科コンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純私のコンタクトレンズ選択法323.カラーコンタクトレンズ(その2)表1カラーCLが眼障害をひき起こしやすい要因.装用者のコンプライアンスによる要因(承認カラーCL,未承認カラーCL)診察(処方)を受けずに購入定期的な診察を受けない誤ったケア(消毒など)寿命を超えた使用破損や変形したカラーCLの使用.デザインによる要因(未承認カラーCL)色素による機械的刺激色素溶出図1カラーCLによって生じたびまん性のSPK図2カラーCLによって生じたSEAL図3カラーCLによって生じたドーナツ状のSPK654あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011(00)が封入されている場所は,レンズの表面,内面,中央部など,いろいろなデザインがある.内面に虹彩色が印刷されているものは,当然,SEAL(superiorepithelialarcuatelesion)などの角膜障害を起こしやすい.●特徴的な角膜上皮障害カラーCLによって生じる点状表層角膜症(superficialpunctatekeratopathy:SPK)は,びまん性,SEAL,ドーナツ状などを示す.びまん性のSPK(図1)は,角膜への機械的刺激や角膜の酸素不足が原因である.機械的刺激とは,レンズ内面の汚れや虹彩色のプリント部分により角膜が擦過される場合が多い.酸素不足は,擦り洗いをしないで汚れが蓄積したCLによるものが多い.SEAL(図2)は,上眼瞼がCLを角膜側へ押すため,レンズ内面の汚れや虹彩色のプリント部分に上皮障害を起こした状態である.ドーナツ状のSPK(図3)は,角膜中央部に近いところの虹彩色のプリント部分が擦れて,ご存じのように,CLは瞬目の度に回転するためドーナツ状のSPKとなる.●コンプライアンスの問題2003年4月から2009年3月の間にワタナベ眼科を受診した未承認カラーCL(図4)使用者58例を対象に調査した.全例(58例)に角膜上皮障害を認めた.角膜びらん16例,角膜浸潤3例,SPK39例であった.未承認カラーCLの購入先は,インターネット通信販売46例,韓国など海外で購入5例,雑貨店3例,CL販売チェーン店2例,洋服屋1例,エステサロン1例であった.ケアの方法を問診したところ,CL販売チェーン店で購入した2例だけが正しいケアを行っており,他は誤用をしていた.消毒をしていなかった13例,擦り洗いをしていなかった54例,レンズケースを交換していなかった56例,蛋白除去をしていなかった56例であった.障害の治癒後に,追跡調査をしたところ未承認カラーCLを再び使用している者が59%もいた.未承認カラーCLを使わないように指導しても,承認されたカラーCLには満足できるデザインがないとの理由で,眼障害を起こしやすいことがわかりながらも使用していることがわかった.したがって,承認されたカラーCLを製造しているレンズメーカーがもっとデザインの多様化をしてくれれば,未承認のカラーCLは市場から減るであろう.参考文献・渡邉潔:CLによって生じる角膜上皮障害の新しい分類と治療法.ディスポーザブルコンタクトレンズ(渡邉潔著),p55-90,メジカルビュー社,1998図4未承認のカラーCLのデザイン

写真:免疫抑制薬が著効したMooren潰瘍の穿孔例

2011年5月31日 火曜日

あたらしい眼科Vol.28,No.5,20116510910-1810/11/\100/頁/JCOPY(49)写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦324.免疫抑制薬が著効したMooren潰瘍の穿孔例服部昌子大阪医科大学眼科図1当院初診時の右眼前眼部写真(55歳,男性)上方結膜および輪部に充血と血管侵入を認める.角膜上方に浸潤と穿孔を認め,前房は消失していた.潰瘍部周囲に角膜浸潤を認め,細菌感染の合併も疑われた.①②図2図1のシェーマ①:結膜および輪部の充血と血管侵入,②:角膜浸潤および穿孔.図3治療4日後の右眼前眼部写真潰瘍底が薄い膜様のもので覆われてきている.穿孔部が縮小し,前房が形成されてきた.図4治療1カ月後の右眼前眼部写真上方結膜および輪部の充血は消退している.角膜穿孔部は上皮化して覆われ,前房が形成された.652あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011(00)症例は55歳,男性.右眼の眼痛を主訴に近医を受診し,細菌性角膜潰瘍と診断され治療を受けていたが,角膜穿孔をきたし当院に紹介受診となった.当院初診時,右眼視力は(0.5)に低下し,右眼上方結膜および輪部に充血を認め,右眼角膜上方に浸潤と穿孔を認めた.前房はほぼ消失していた(図1).既往歴はなく,全身検索にて特記すべき異常は認められず,Mooren潰瘍(蚕食性角膜潰瘍)と診断した.治療用コンタクトレンズを装用し,抗菌薬点眼およびベタメタゾン点眼を行ったが軽快せず,プレドニゾロン0.4mg/kg/dayとシクロスポリン3mg/kg/dayの内服を追加した.結膜および輪部の充血は軽快し,角膜上皮が再生し,前房が形成された.右眼視力は(1.2)に回復した.プレドニゾロンとシクロスポリンは4カ月かけて漸減した.Mooren潰瘍は角膜周辺部に発生し,輪部に沿って進行する難治性の無菌性潰瘍である.潰瘍は一般に深く,進行するとまれに角膜穿孔に至ることもある.角膜抗原に対する輪部結膜を介した自己免疫異常が病因として考えられている1).治療としてはステロイドや免疫抑制薬の内服や局所療法が有効である.進行例には結膜角膜上皮形成術,表層角膜移植術,羊膜移植術などの外科的治療が適応となる.本症例は前医で細菌性角膜潰瘍と診断され,ステロイドによる治療が遅れたために穿孔に至ったと考えられる.潰瘍周囲に角膜浸潤を認めていたことから感染性角膜潰瘍を否定するのが困難だったと思われる.穿孔例では外科的治療が選択されることが多いが,本症例では潰瘍部・穿孔部が比較的小さい範囲であったことからシクロスポリンの内服治療を選択した.シクロスポリンの全身投与は投与量や投与期間の決定がむずかしく,副作用に対する観察も必要となることから使用は容易ではない2).本症例ではMooren潰瘍の穿孔例に対してシクロスポリン内服治療が奏効し,重篤な副作用も認められなかった.現在のところ再発も認めていないが,Mooren潰瘍は進行性で,再燃することががあるため,長期的にステロイド点眼を使用し経過観察を行う必要がある.文献1)GottschJD,LiuSH,MinkovitzJBetal:Autoimmunitytoacornea-associatedstromalantigeninpatientswithMooren’sulcer.InvestOphthalmolVisSci36:1541-1547,19952)StammenJ,AlthausC,SundmacherR:Moorenulcer.4severebilateraldiseasecourseswithsystemiccyclosporinAtherapy.KlinMonblAugenheilkd211:306-311,1997

アンチエイジングアプローチによる老視対策 ―体の老化を予防することで老視の予防は可能なのか? サプリメントの可能性なども含めて―

2011年5月31日 火曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPY膜分野では日常的な治療になりつつあり,これは細胞・分子レベルのアンチエイジングアプローチとみなすことができる.今回の話題である老視については,個人によって程度の差はあるにせよ加齢により避けられないものである.わが国で2008年に老眼研究会(http://www.rougan.jp/about/index.html)が設立された.会員間の議論の末,現時点において診断基準については「医学的老視」と「臨床的老視」の2つを作成し(表1),老視の定義を「加齢による調節幅の減退(age-relatedlossofaccommodation)」とした.その調節のメカニズムについては研修医時代から主に教えられているHelmholtz説のほかにもSchacher説など諸説が提唱されている.しかし,一つの説だけではすべての現象を説明しきれないため,それぞれの説の理論が混在している状態なのであろう.そうしたなかで,おおよそ合意が得られているのは水晶体の硬化・膨化とそれに伴う毛様体筋の過緊張が調節力の低下,つまり老視に関連しているということである.毛様体と水晶体について下記に述べる.Iアンチエイジングと老視「アンチエイジング(抗加齢医学)の研究は出生から死亡に至るまでのさまざまな過程で生じる現象を科学的に捉えるうえで非常に有意義であり,その成果は生活習慣病をはじめとするさまざまな疾患を予防し,ストレスや疲労,免疫低下などの疾病発生促進因子を改善し,健康長寿の実現を可能とするものです.研究を利用したアンチエイジング医学の実践は,栄養学,内分泌学を用いた補充療法と運動や休養などの生活習慣の改善によって可能となります.」(日本抗加齢医学会のホームページより.http://www.anti-aging.gr.jp/about/index.phtml)とある.すでに発症した疾患に対する治療のみでなく,罹患する前から介入するアンチエイジング医学はこれからの医学には必須のものになるであろう.しかし,広義に考えれば医学はすでにアンチエイジング医学を実践している.たとえば,サイレントキラー(静かなる殺人者)とよばれる高血圧症や糖尿病,高脂血症は,本人が気づかないうちに脳血管障害,心血管障害,腎不全などを進行させ,最終的には死に至る怖い状態である.降圧薬,糖尿病薬,高脂血症薬はそれぞれ血圧,血糖値,脂質を下げるが,間接的に死に至る合併症の発症率を下げることにより長寿につなげている.つまり,抗加齢(アンチエイジング)を行っていることにほかならない.眼科領域において失明原因の上位を占める加齢黄斑変性に対するanti-VEGF(抗血管内皮増殖因子)治療が網(43)645*TakeshiIde:南青山アイクリニック**TetsuyaKawakita&KazuoTsubota:慶應義塾大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕井出武:〒107-0061東京都港区北青山3-3-11ルネ青山ビル4階南青山アイクリニック特集●老視アップデートあたらしい眼科28(5):645.649,2011アンチエイジングアプローチによる老視対策─体の老化を予防することで老視の予防は可能なのか?サプリメントの可能性なども含めて─Anti-AgingApproachtoPresbyopia井手武*川北哲也**坪田一男**表1医学的老視と臨床的老視医学的老視臨床的老視視力測定条件片眼完全矯正下両眼生活視力自覚症状有無は問わない近見視力障害あり診断基準調節幅2.5D未満*40cm視力0.4未満*医学的老視は,基本的には調節幅2.5D未満であるが,アコモドメータなどを有さない場合に簡便法として40cm視力0.4未満を用いてもよい.646あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011(44)な手術が可能になった.その症例数の多さの一因は白内障が誰においても加齢性に進行するという生理的要因,そして老齢人口の増加と一般の医療知識の蓄積という社会的要因,以前なら視力低下が著明になった時点で手術を行っていたのが,現在では技術進歩のために白内障の初期の段階でもQOV(qualityofvision)の向上のために早期に手術を行えるようになったという技術的要因が考えられる.この白内障手術(水晶体再建術)は視力の改善という意味では究極のアンチエイジング医学かもしれない.白内障の進行加速については糖尿病,眼の外II老視と毛様体過緊張老視の自覚症状は近見視力の低下,ピント調節に時間がかかるというのが主なものであるが,それ以外に頭痛,眼精疲労なども起こる.これは毛様体筋の筋力低下と水晶体の硬化・膨化とのバランスで,相対的に毛様体筋に対する負担が増え過緊張状態になることによると考えられている.毛様体筋が過緊張を起こさせないためには,眼鏡やコンタクトレンズで眼への負担を軽減する方法が侵襲の少ないファーストチョイスである.水晶体の硬化・膨化が視力低下をひき起こすほどの白内障に至っている場合にはマルチIOL(眼内レンズ),アコモIOL,白内障モノビジョン,そして白内障手術をするほどではないが眼鏡・コンタクトレンズなどの補助具が耐えられない症例に対してはモノビジョン・老視LASIK(laserinsitukeratomileusis),CK(conductivekeratoplasty),Acu-Focus,phakicIOLで対応するのが広義のアンチエイジングであろう.その他,後述するがアスタキサンチンは非常に強い抗酸化力をもつカロテノイドである.わが国では梶田先生,富山大学,藤田保健衛生大学からアスタキサンチンの摂取で眼精疲労や調節緊張を軽減するとの報告がみられる1).しかし,これらはいずれも老視になったものに対する治療や対応であるので,本稿の趣旨(老化予防)からは離れる.III老視と水晶体近見調節は毛様体筋の収縮により水晶体にかかる牽引が解除され水晶体の受動的な弾性力により膨らむことにより起こるとされる.近見調節時に水晶体に積極的な外力を加えることはできないので,加齢により水晶体の硬化・膨化(白内障)が起こるとその受動的な弾性力が低下して調節が働かなくなる.もう一つの説として,水晶体が水平方向そして垂直方向にも膨化することにより,毛様体筋と水晶体の距離関係やZinn小帯の水晶体付着位置が変化して毛様体筋が努力しても牽引力が解除できないことにより調節力が低下するという説もある(図1,2).白内障に関しては技術的進歩のおかげで短時間・安全調節時調節弛緩時図1調節のメカニズム(Helmholtzの説)破線は毛様体の内径の変化を示す.(長谷部聡:あたらしい眼科22:1023-1028,2005より)調節時調節弛緩時図2調節のメカニズム(Schacharの新しい仮説)(長谷部聡:あたらしい眼科22:1023-1028,2005より)(45)あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011647という明らかな効果はなかったと報告されている2)が,抗酸化を行うことは全身的なアンチエイジングを行うことで,結果として水晶体だけでなく,毛様体筋の過緊張や眼精疲労に対して良いと考えることもできる3).V白内障とクロスリンククロスリンクに関して,水晶体は水晶体蛋白質が相互作用して秩序だった巨大構造と透明性を維持している.白内障は,水晶体を構成する可溶性のクリスタリン蛋白が変性し不溶性になることで起きるとされており,クロスリンク説が適用される代表例である.クリスタリンの構成比率が変わることにより会合そして変性を起こすという説が最も支持されている.水晶体は蛋白質に富む組織であるが,実にその98%は水晶体に特有のクリスタリン(a,b,gの3種類が存在)という蛋白質で占められている.a-クリスタリンは部分的に変性したb-およびg-クリスタリンを元の状態に戻す機能(シャペロン機能)をもっている.一方,b-とg-クリスタリンは水晶体の透明性の維持や光の屈折率を高める働きをしている.シャペロンにはさまざまなものがあり詳細な機能については不明な部分が多いが,他の蛋白分子が正しい折りたたみ(folding)をして機能を獲得するのを助ける蛋白質の総称である.ヒトは決まった量のa-クリスタリンをもって生まれ徐々に消費するとされ,水晶体は生涯を通じて光の通り道になるため,クリスタリンは長いあいだ紫外線という酸化障害に曝されて構造や機能に変化(変性)をきたす.水晶体以外の組織では変性した蛋白質は新陳代謝によって新しい成分に置き換えられるが,水晶体では新陳代謝が起こらないため,変性した蛋白質はどんどん蓄積して不溶性となり濁りを生ずると考えら傷,紫外線,アトピー性皮膚炎,栄養不良,遺伝,放射線赤外線照射,ステロイド薬,抗精神病薬などの副作用,ぶどう膜炎網膜.離や硝子体手術,緑内障手術などのさまざまな要因との関連が報告されているが,第一の原因は老化であると考えられている.老化と白内障進行に関連があるものには,下記のようなものがある.1.われわれの体はエネルギー代謝過程で酸化力の強い活性酸素を生成.活性酸素は体内で病原体を殺すのに役立っているが,その反面,過剰に発生すると細胞や組織を傷つけ老化や疾患をひき起こすといわれている.2.クロスリンク説:蛋白質や核酸などの生体高分子間や分子間に不要な結合(これをクロスリンクという)が起こりその構造が変化して変質する.分子が結合して不溶性となり分子同士の働きを阻害するクロスリンクが溜まっていくと老化が促進されるという説.3.老廃物蓄積説:汗や尿などの代謝による老廃物とは別に,体に不必要な老廃物が蓄積すると体に支障をきたす.これが,老化を促進するという説.老廃物には,鉛や水銀などの有害な重金属類も含まれる.IV白内障とフリーラジカルフリーラジカルに対しては抗酸化治療を行うが,従来眼科では早期において進行を遅らせる目的で酸化防止剤などの薬剤(おもに点眼薬)を使用していた.点眼治療に関しては厚生労働省研究班が「有効性に関する十分な科学的根拠がない」ということを報告した.しかし,比較的早期においては進行を遅らせるという効果があるという考え方も依然存在する.そのほか全身的にビタミンC,ビタミンE,ナイアシンやカロテノイドなどの抗酸化物質を摂取して介入するのが進行防止に有効という報告もある.カロテノイドについては最近話題のものが多く,カロテン類(b-カロテン,リコピン),キサントフィル類(ルテインやアスタキサンチン)など抗酸化作用の強いものが多くある.特に,アスタキサンチンはビタミンCの6,000倍,ビタミンEの550倍の一重項酸素除去活性をもつといわれる.NIH(NationalInstituteofHealth)が施行したAge-RelatedEyeDiseaseStudy(AREDS)ではビタミンC,Eとb-カロテンの大量投与を6年にわたり行っても白内障の発症や進行を止めるCXL図3角膜クロスリンキング(CXL)の原理角膜実質のコラーゲン線維間の架橋を強めることにより角膜の強度を上げる.(加藤直子,坪田一男:あたらしい眼科27:453-457,2010より)648あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011(46)年1月23日のNewYorkTimes紙にニューヨーク市内の寿司店などのマグロから高水準の水銀が検出されたとの記事が掲載された.日本人は,世界のマグロの1/3を消費しているといわれるほどマグロ好きである.水銀は工業排水や汚染土壌から海に流れ込むが,海の中の生態系を通って上位の生物に蓄積されるので,海の生態系の頂点に君臨する大型回遊魚であるマグロにはかなりの量の水銀が蓄積されている.妊婦への注意点として病院での配布資料に大型回遊魚の食べすぎには注意との記載があるほどである.最近,眼科医にとって非常に興味深い研究結果が報告された.水銀曝露されたゼブラフィッシュの水銀蓄積部位を確認したところ,これまで重金属汚染で脳や腎臓にたまることはわかっていたのだが,今回の研究で神経系などよりも水晶体に圧倒的に高濃度に水銀蓄積が確認されたとのことである4).この水銀蓄積と白内障進行度とに相関関係が存在するかはこれからの非常に興味深い研究課題であるが,面白いことに眼科医でさえあまり知らない白内障治療薬として古くから保険適用となっているチオプラニンが白内障予防薬でありなおかつ水銀排泄薬であったことは偶然ではないのかもしれない(チオラR錠の薬効:代謝改善解毒,シスチン尿症治療,水銀排泄,白内障治療).この古くて新しい解毒剤が白内障治療そしてアンチエイジング医学において再び脚光を浴びる可能性がある.水銀を代表とする有害重金属汚染は有害重金属の曝露を減らすことである.たとえば魚の摂取であるが,水銀の多いもの(カジキ,キンメダイ,サメ,カツオ,スズキ,マグロは有機水銀が濃縮している)は極力避け,水れている.a-クリスタリンは生下時から減る一方,生体で作られないので,この減少スピードをアンチエイジングによる介入により遅くさせることが大切である.しかし詳細についてはまだ不明であるので,現在は紫外線を避けたり,抗酸化のためのサプリメント摂取などでできるだけ進行を遅らせることも大切である.クロスリンクは,円錐角膜の治療に応用されている.円錐角膜の病態の一つに,角膜を構成するコラーゲン線維間の架橋(クロスリンク)が足りないことが指摘されている.クロスリンクが足りないことで,コラーゲン線維がスライドして角膜が突出してくるともいわれている.このような角膜に対してリボフラビン点眼の後にUVA(ultravioletA)を照射してコラーゲンを架橋することにより円錐角膜の進行の抑制,角膜の平坦化といった治療は角膜UV(ultraviolet)クロスリンキングといわれ角膜の分野では非常に脚光を浴びている(図3,4).VI白内障と老廃物蓄積老廃物蓄積に関して,重金属による健康障害というとイタイイタイ病(カドミウム),水俣病(水銀),和歌山カレー事件(砒素)などが有名である.これらの重金属は一般に細胞にフリーラジカルダメージを与え,神経の変性に関与,必須ミネラルの機能を損なう,不妊,腫瘍形成,ATP(アデノシン三リン酸)合成阻害などの影響が報告されている.このような汚染は決して特殊な限られた環境だけで起こるわけではなく,われわれの身近でもこの重金属汚染は存在している.代表例として水銀汚染があるが,水銀は汚染された魚介類,農薬,化粧品,アマルガム(歯科充.金属)などから体内に入る.2008図4角膜クロスリンキングの手術風景左:リボフラビンが十分に角膜に浸透したのちに紫外線照射を行っているところ.照射中もリボフラビンを点眼する.右:角膜上皮細胞が存在するといわれている角膜輪部は避けて紫外線を照射する.(加藤直子,坪田一男:あたらしい眼科27:453-457,2010より)(47)あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011649め,眼のみに注目するのみでなく全身的なアンチエイジングを行うことにより結果として眼の老化を防ぐというまとめとしたい.現在のエイジング仮説であるが,すでに現時点において,カロリーリストリクション仮説と酸化ストレス仮説は,エビデンスの存在するサイエンスとして認識されつつある.前者はなじみが少ないかもしれないが,これは摂取カロリーを65%程度とする(ビタミン,必須ミネラルといった栄養素は制限しない)と,多くの生物で寿命の延長がみられるというもので,メタボリックシンドロームに代表される摂取カロリーオーバーは加齢を促進する.後者に関しては紫外線・大気汚染・タバコ・過度の飲酒・農薬・殺虫剤・発癌物質・高血糖・酸化した油脂・睡眠時無呼吸症候群などのストレスを避け,葉緑野菜の大量摂取・オメガ3摂取(青魚)・フルーツ積極摂取・ビタミンの最適量摂取・微量ミネラルの摂取などの抗酸化物質の摂取,適切な水摂取・整腸・発汗・オーラルキレーション・EDTAキレーションなどの酸化物質の除去なども行うことを心がけることにより酸化ストレスを減らすことができる.本稿では,老視とアンチエイジングということで書き進めてきたが,その疾患にだけアプローチするというよりも体をトータルにケアするという日常生活習慣改善が大切なことに改めて気づかされる.文献1)NagakiY,HayasakaS,YamadaTetal:EffectsofAstaxanthinonaccommodation,criticalflickerfusions,andpatternevokedpotentialinvisualdisplayterminalworkers.JTradMed19:170-173,20022)<http://www.aao.org/eyecare/treatment/alternativetherapies/antioxidant-cataract-prevention.cfm>3)AgteV,TarwadiK:Theimportanceofnutritioninthepreventionofoculardiseasewithspecialreferencetocataract.OphthalmicRes44:166-172,20104)KorbasM,BlechingerSR,KronePHetal:Localizingorganomercuryuptakeandaccumulationinzebrafishlarvaeatthetissueandcellularlevel.ProcNatlAcadSciUSA105:12108-12112,2008銀の少ないもの(サケ,マス,ニシン,サンマ,アジ,イワシ,キスなどは無機水銀がほとんど)を中心に摂取するように心がけることである.ミネラルは体の中で作ることができないために食品やサプリメントから摂るしかないが,ミネラルには生命維持に欠かすことができない必須ミネラル(カルシウム,ナトリウム,マグネシウムなど)と有害ミネラル(水銀,カドミウム,砒素など)がある.必須ミネラルのなかではナトリウム,カリウムなど1価の陽イオン元素が加齢とともに高くなり,カルシウム,マグネシウム,銅,亜鉛など2価の陽イオン元素は低くなることが明らかにされている.ミネラルには拮抗作用というものがあり,あるミネラルの存在によって他のミネラルが吸収されるのを抑制し,有害な作用を抑制するので,必須ミネラルが不足することによって有害ミネラルが体内に蓄積されてしまう.その拮抗・対抗関係の代表例には括弧内に示すようなものがある(鉛に対してはSe,Fe,Zn,Mg.砒素に対してはSe.カドミウムに対してはSe,Fe,Zn,Ca,Mg.水銀に対してはSe,Ca,Zn).つまり,有害ミネラル対策の基本は必須ミネラルが欠乏しないようにすることであるが,必須ミネラルだからといって過剰摂取するのも避けるべきである.特に,必須ミネラルは必要量と過剰量の幅が狭いのでバランスを取ることも大切である.より積極的な介入としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)キレーションをはじめとするキレーション療法も選択肢に入るが,問題点としては保険適用でなく必須ミネラルも同時に排泄されてしまうので経験の豊富な施設で行うことが重要で,同時にこのような重金属汚染を意識して,血液,毛髪,爪,尿,便検査などで定期的にスクリーニング・モニタリングしていくことも大切である.まとめ毛様体・水晶体の老化による調節幅の減少のみならず,網膜感度の低下,オキュラーサーフェス環境悪化,視覚中枢の老化などが絡み合い視覚のフィードバックが劣化してさらに老視が加速されている可能性もあるた

水晶体アプローチによる老眼治療

2011年5月31日 火曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPY1.0から1.5Dぐらいの差をつけることで,ある程度幅のある距離を裸眼で見ることが可能になるので,コンタクトレンズやエキシマレーザーによる屈折矯正手術に限らずIOL挿入においても可能である.IOLが白内障手術に導入されてからしばらくの間,挿入後の屈折値を.0.5から.1.0Dに合わせる術者が多かった.これはある意味で失われた調節機能を考慮し,遠方視力を完全に出すのではなく,裸眼で日常生活しやすいように,少し手前に焦点を合わせることを意図したからである.しかし,laserinsitukeratomileusis(LASIK)に代表される屈折矯正手術の普及により,良好な裸眼遠方視力を望む症例が増え,IOL挿入後の屈折は正視狙いにする割合が増えた.良好な遠方視力を保ちつつ,ある程度の近方視力を得る工夫として,片眼を遠方視,もう片眼をやや手前に焦点が合うようにするモノビジョン法が用いられている.優位眼を遠方視,非優位眼を近方視に合わせるのが一般的であるが,優位性の問題,優位眼の逆転などいまだ議論が多い部分である4.6).利点は多焦点IOLで最も危惧されるコントラスト感度低下がないこと,問題点は両眼視,屈折差の許容範囲から長時間の読書に耐えうる十分な近方視力が得られないことである.II多焦点IOL多焦点IOLは,大きく分けて屈折型と回折型がある.白内障における多焦点IOL挿入を検討する場合,高齢者が多いため瞳孔径が小さく,屈折型の近用ゾーンを十はじめに海外の白内障および屈折矯正手術関連の学会では,老眼に対する対策として,“presbyopiacorrection”が注目されている.老眼治療“presbyopiatreatment”ではなく,老眼矯正という表現がおもに用いられていることからも,老眼の根本的治療が容易ではないことが推察される.老眼矯正の一つである水晶体によるアプローチは,加齢により調節機能が弱くなった水晶体を摘出し,眼内レンズ(IOL)を挿入する方法がrefractivelensexchange(RLE)として一般的である1.3).しかし,単焦点IOLあるいは多焦点IOL挿入は,IOLそのものが調節機能を回復するわけではないので,厳密には老眼治療には該当しない.理想的な老眼治療を目的としたIOLは,老眼年齢前の水晶体のように見たい距離に合わせて自動的に焦点を合わせる調節IOLである.今まで臨床使用されてきた調節IOLの多くは,統一した手術成績が得られず,残念ながら高い評価を得られなかった.本稿では老眼アップデートとして,単焦点IOLによるモノビジョン,多焦点眼内レンズ,近年,新しい概念のもとに開発された調節IOLを紹介する.Iモノビジョン以前より,老眼年齢のコンタクトレンズ装用者に広く行われてきた方法で,近年ではエキシマレーザーによる屈折矯正手術においても応用されている.モノビジョン法は,両眼をまったく同じ屈折状態にするのではなく,(37)639*HirokoBissen-Miyajima:東京歯科大学水道橋病院眼科〔別刷請求先〕ビッセン宮島弘子:〒101-0061東京都千代田区三崎町2-9-18東京歯科大学水道橋病院眼科特集●老視アップデートあたらしい眼科28(5):639.643,2011水晶体アプローチによる老眼治療PresbyopiaCorrection:LensApproachビッセン宮島弘子*640あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011(38)ともいえる欠点はコントラスト感度の低下であるが,両眼挿入例では両眼視におけるコントラスト感度は症例の年齢層における正常範囲内に入っていることが多い.屈折型のように瞳孔径に依存せず近方視力が得られる点で,適応範囲が広い8).一部の回折デザインは光学部全体でなく一定範囲のため,このタイプでは,瞳孔径の違いによって遠方と近方へのエネルギー配分が異なる.わが国で承認されている回折型多焦点IOLはZMA00(Abbott社)(図2)とSN6AD(アルコン社)(図3)で,前者は光学部全体が回折デザイン,後者は中央3.6mm径が回折デザインである.近方加入度数は+4.0D(ZMA00,SN6AD3)が主体であったが,近年,加入度数を減らした+3.0D(SN6AD1)が登場した.加入度数が少ないタイプは,中間距離における視力の落ち込みが少なく,欧米で需要が高まっている9,10).遠近の2点をよく見たいという症例には+4.0Dが好まれ,症例によって+3.0Dあるいは+4.0D近方加入度を選択する時代に入ったともいえる.さらに,モノビジョンとは異なるが,屈折型と回折型多焦点IOLの組み合わせ,異なる近方加入度の回折型多焦点IOL,さらには多焦点IOLと単焦点IOLの組み合わせにより,各IOLの利点を生かす方法が取り入れられている11,12).多焦点IOLにおいては,術後に乱視が少ないほど良好な裸眼遠方および近方視力が得られるので,術前に角膜乱視に留意する.今のところ,角膜乱視が強い症例では,多焦点IOL挿入後2,3カ月してからLASIKなどの方法で追加屈折矯正(タッチアップ)を行っている.角膜乱視矯正法としてトーリックIOLが普及しているが,多焦点IOLにトーリック機能が加わることで,1回の手術で多焦点IOL挿入後に良好な視機能が得られることが期待される.III調節IOL調節IOL(accommodativeIOL)は,老眼治療の理想的な方法として注目されている.毛様体筋の収縮により水晶体.内に固定されているIOLが前方移動することで,遠方から近方にわたって焦点を合わせるという概念である.よって,若いころの水晶体と類似した機能をもち,多焦点IOLの光学デザインの欠点であるコントラ分生かすことができず,回折型が選択されることが多い.しかし,老眼治療として50歳代の症例で検討する場合には屈折型も選択肢に入る.屈折型多焦点IOLは,光学部を中心から同心円状に遠用ゾーンと近用ゾーンを交互に変えるデザインになっており(図1),利点は遠方視力の質が,単焦点IOLとほぼ同等であることである.したがって良好な遠方裸眼視力が保証された状態で,近方裸眼視力も単焦点IOLより良好な結果が得られる7).欠点は瞳孔径が近方ゾーンを使うのに十分でない場合,単焦点IOLと同じ機能になり,近方視力の改善が望めないこと,近方の見え方は回折型に比べて劣ること,夜間ハロー,グレアの自覚が他のIOLに比べ強いことである.回折型多焦点IOLは,光学部の回折デザインにより遠方と近方の2カ所に焦点が合う.このIOLの宿命的図1屈折型多焦点眼内レンズ(ReZoom)図3回折型多焦点眼内レンズ(SN6AD1)図2回折型多焦点眼内レンズ(ZMA00)(39)あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011641ることで度数が変わる.現在,臨床試験中である.4.FluidVison(PowerVision社)(図10)他のIOLとはまったく異なった機能で,液体により光学部の形状が変わるデザインである.詳細なメカニズムや実験結果については報告されていない.スト感度低下,夜間ハロー,グレアの心配がない.米国FDA(FoodandDrugAdministration)によりPremiumレンズとして承認されたCrystalens(ボシュロム社)(図4)が世界で最も挿入数が多いが,非常に良好な結果の報告もあれば,ほとんど調節効果が期待できないという報告もある13).類似した機能をもつとされる1CU(HumanOptics社)(図5)についてわが国での挿入成績が報告されているが,老眼治療に見合う結果は得られていない14).現在FDA承認待ちのTetraflex(Lenstec社)(図6)も同様で,良好な遠方,中間視力,そして読書が可能と海外の学会で報告されている.筆者も,これらの調節IOLが挿入された症例を診察する機会を得ており,症例数が限られているが,遠方視力は良好だが,近方視力については単焦点IOLとほぼ同等の結果で,老眼矯正目的のIOLとするにはまだ問題があると認識している.近年,これらの調節IOLとは異なった機能で近方視力を得るものが登場し,注目を集めているので,代表的なものを紹介する.1.Synchorony(Abbott社)(図7)2枚のIOLがスプリング機能をもつ支持部でつながっている.前方IOLは+32D,後方IOLは症例に合わせたマイナス度数である.良好な調節力が報告されている15,16)が,前.切開の大きさが重要で,前.切開が光学部より大きい,あるいは亀裂が入った場合には本IOL挿入は適応外とされている.2.AkkoLens(Akkolens社)(図8)Synchoronyと同じ2枚の光学部をもつデザインであるが,毛様溝固定で,現在海外で臨床試験中である.光学部がそれぞれスライドすることで屈折力を変えることが期待されている.この効果に加え,毛様溝固定の長期安定性がどうなのかが今後の課題である.3.DynaCurve(NuLens社)(図9)PMMA(poly〔methylmetacrylate〕)の硬い部分とシリコーンジェルの軟らかい部分からなるマルチピースIOLである.調節によって軟らかい部分が前方に押され図4Crystalens図6Tetraflex図51CU図7Synchorony図8AkkoLens図9DynaCurve642あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011(40)た調節IOLだけでも以前の3種類を含めて8種類になる.まだ試行錯誤の時代かもしれないが,着々と老眼治療としてのIOLが開発されている.水晶体アプローチにとって,成績を向上させる水晶体摘出技術の進歩もめざましい.超音波水晶体乳化吸引術が小切開から水晶体を摘出できる有力な手技であるが,フェムトセカンドレーザーによる角膜切開,水晶体前.切開,水晶体液化あるいは分割が可能になり,すでに安全な水晶体摘出術がさらに精度の高い手術となりつつある.予定した大きさと位置に前.切開が確実にでき,水晶体の厚さをあらかじめ測定し,設定した深さで水晶体核を分割することで,老眼矯正を目的とした手術で危惧される後.破.の危険性が減る.さらに,レーザーによる角膜切開創の閉鎖が良好なため,術後感染の危険性が減ることが期待されている.IOLとともにレーザーによる水晶体手術も一緒に急速な進歩を遂げている.水晶体アプローチとして,水晶体を摘出してIOLを挿入する方法以外に,水晶体を摘出せずに多焦点機能をもった有水晶体IOLを挿入する方法,水晶体にフェムトセカンドレーザーを照射し弾力性をだす方法も試みられている.水晶体アプローチは急速に進歩しているので,1年ごとのアップデートが必要かもしれない.おわりに老眼治療は眼科医の夢であるが,水晶体アプローチは,多くの可能性があり,着実に目標に向かって前進していると思われる.老眼年齢の水晶体を若いころのように戻すことよりも,新しい水晶体に取りかえる方法が今のところ現実的である.モノビジョン,多焦点IOLは最終目標に達するまでの途中経過ともいえるが,今のところ,効果と安全性が確認された方法である.調節IOLはIOLという自由にデザインできる特徴を生かし,今後さらに多くの開発がなされていくであろう.文献1)AlioIL,TavolatM,DelaHozFetal:Nearvisionrestorationwithrefractivelensexchangeandpseudoaccommodatingandmultifocalrefractiveanddiffractiveintraocularlenses:comparativeclinicalstudy.JCataractRefractSurg30:2494-2503,20045.Electro.activeAutoFocalIOL(ELENZA社)(図11)縮瞳や輻湊を感知するphotosensorによってIOL度数が変わる.IOLの動きに頼らない点で優れているが,1週間に1回,2時間程度の充電が必要で,具体的には,特殊なアイマスクやまくらが検討されている.これらの安全性など確認しなくてはならない点が多いが,新しい概念として,これからの開発が望まれるIOLである.IV今後の発展現在,老眼治療への水晶体アプローチとして,最も開発に力が入っているのは調節IOLであろう.構想段階というより,実際のデザインができあがり,臨床試験,あるいは動物実験での評価が始まっている.単焦点IOLを用いたモノビジョン,各種多焦点IOLは,ある距離に焦点を合わせることはできるが,距離によって合わせる動的な老眼矯正ではない.調節IOLは,老眼になる前のように,見たい距離に自然に焦点を合わせることを可能にしてくれる理想的なIOLである.ここで紹介し図11Electro.activeAutoFocalIOL図10FluidVison(41)あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011643dipoterand+4.00dipoteradditionsinmultifocalintraocularlensesondefocusprofiles,patientsatisfaction,andcontrastsensitivity.JCataractRefractSurg37:720-726,201111)GoesFJ:VisualresultsfollowingimplantationofarefractivemultifocalIOLinoneeyeandadiffractivemultifocalIOLinthecontralateraleye.JRefarctSurg24:300-305,200812)PeposeJS,QaziAM,DaviesJetal:VisualperformanceofpatientswithbilateralvscombinationCrystalens,ReZoom,andReSTORintraocularlensimplants.AmJOphthalmol144:347-357,200713)FindlO,LeydoltC:Meta-analysisofaccommodatingintraocularlenses.JCataractRefractSurg33:522-527,200714)DogruM,HondaR,OmotoMetal:Earlyvisualresultswiththe1CUaccommodatingintraocularlens.JCataractRefractSurg31:895-902,200515)McLeodSD,PortneyV,TingA:Adualopticaccommodatingfoldableintraocularlens.BrJOphthalmol87:1083-1085,200316)McLeodSD,VargasLG,PortneyVetal:Synchoronydual-opticaccommodatingintraocularlensPart1:Opitcalandbiomechanicalprincipalsanddesignconsiderations.JCataractRefractSurg33:37-46,20072)Bissen-MiyajimaH:MultifocalIOLsforpresbyopia.In:HyperopiaandPresbyopia(edbyTsubotaK,BoxerWachlerBS,AzarDT,KochDD),p237-248,MercelDekker,NewYork,20033)GoesFJ:RefractivelensexchangewiththediffractivemultifocalTecnisZM900intraocularlens.JRefractSurg24:265-273,20084)清水公也:白内障術後における老視の克服.IOL&RS18:30-35,20045)清水公也,疋田朋子:モノビジョンによる白内障術後の労使矯正.坪田一男編.眼科診療プラクティス9,屈折矯正完全版,p119-123,文光堂,20066)HandaT,ShimizuK,MukunoKetal:Effectsofoculardominanceonbinocularsimmationaftermonocularreadingadds.JCataractRefractSurg31:1588-1592,20057)中村邦彦,ビッセン宮島弘子,大木伸一ほか:アクリル製屈折型多焦点眼内レンズ(ReZoom)の挿入成績.あたらしい眼科25:103-108,20088)ビッセン宮島弘子,林研,平容子:アクリソフApodized回折型多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズ挿入成績の比較.あたらしい眼科24:1099-1103,20079)ビッセン宮島弘子,林研,吉野真未ほか:近方加入+3.0D多焦点眼内レンズSN6ADの白内障摘出眼を対象とした臨床試験成績.あたらしい眼科27:1737-1742,201010)PetermeierK,MessiasA,GekelerFetal:Effectof+3.00